(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転子(110)の回動に基づいて雄型スナップボタン(200)の係合突起(210)の離脱を許容する非ロック状態と前記係合突起(210)の離脱を制限するロック状態を切り替えることができる雌型スナップボタン(100)であって、
前記雄型スナップボタン(200)の係合突起(210)を保持するべく配置される2以上の可動片(121、122)を含み、前記雄型スナップボタン(200)の係合突起(210)の挿脱過程で各可動片(121、122)が外側に変位される突起保持部(120)と、
前記突起保持部(120)の外側に設けられ、前記突起保持部(120)を周囲する周方向に延びる板バネ(130)と、
少なくとも前記突起保持部(120)及び前記板バネ(130)が配される収容部材(140)を備え、
前記板バネ(130)が、前記周方向において各可動片(121、122)よりも長く延び、外側に変位した各可動片(121、122)を内側に付勢することができる、雌型スナップボタン。
前記板バネ(130)が、C字状若しくはランドルト環状に構成され、板バネ(130)の両端間の隙間を除いて前記突起保持部(120)を周囲する、請求項1に記載の雌型スナップボタン。
前記収容部材(140)には内側に突出する2以上の制限突起(145)が設けられ、前記突起保持部(120)及び前記板バネ(130)が前記回転子(110)からの回転力を受けて回転する請求項2又は3に記載の雌型スナップボタン(100)であって、
前記非ロック状態から前記ロック状態に推移する過程で前記板バネ(130)の一端(131)が前記制限突起(145)を乗り越える、雌型スナップボタン。
前記板バネ(130)の両端の間には外側に突出する2以上の屈曲部(133、134)が設けられ、前記非ロック状態において各屈曲部(133、134)が前記収容部材(140)に接触する、請求項4に記載の雌型スナップボタン。
前記突起保持部(120)が2つの可動片(121、122)を有し、前記収容部材(140)には2つの制限突起(145)が設けられ、前記板バネ(130)には2つの屈曲部(133、134)が設けられる、請求項5に記載の雌型スナップボタン(100)であって、
前記板バネ(130)が前記2つの屈曲部(133、134)の間にて円弧状に構成される、雌型スナップボタン。
前記2以上の可動片(121、122)が一対のU字部であり、各U字部の各端部には外側に隆起した隆起部(128)が設けられる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の雌型スナップボタン。
回転子(110)の回動に基づいて雄型スナップボタン(200)の係合突起(210)の離脱を許容する非ロック状態と前記係合突起(210)の離脱を制限するロック状態を切り替えることができる雌型スナップボタン(100)の製造方法であって、
前記雄型スナップボタン(200)の係合突起(210)を保持するべく配置される2以上の可動片(121、122)を収容部材(140)内に配置する工程と、
周方向において各可動片(121、122)よりも長く延びる板バネ(130)を収容部材(140)内に配置する工程を含み、
前記収容部材(140)内に前記2以上の可動片(121、122)及び前記板バネ(130)が配置された状態において、前記板バネ(130)が各可動片(121、122)の外側に配され、前記板バネ(130)が、外側に変位した各可動片(121、122)を内側に付勢することができる、雌型スナップボタンの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の雌型スナップボタンでは、各U字部に関連づけて各板バネが収容部材内に収容されている。この場合、各U字部の位置変動を各板バネにより個別制御できる利点があるが、製造の複雑化や製造コストの増加を招き得る。本願発明者らは、製造の簡素化や製造コストの低減に寄与する技術の提供の意義を新たに見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る雌型スナップボタンは、回転子(110)の回動に基づいて雄型スナップボタン(200)の係合突起(210)の離脱を許容する非ロック状態と前記係合突起(210)の離脱を制限するロック状態を切り替えることができる雌型スナップボタン(100)であって、
前記雄型スナップボタン(200)の係合突起(210)を保持するべく配置される2以上の可動片(121、122)を含み、前記雄型スナップボタン(200)の係合突起(210)の挿脱過程で各可動片(121、122)が外側に変位される突起保持部(120)と、
前記突起保持部(120)の外側に設けられ、前記突起保持部(120)を周囲する周方向に延びる板バネ(130)と、
少なくとも前記突起保持部(120)及び前記板バネ(130)が配される収容部材(140)を備え、
前記板バネ(130)が、前記周方向において各可動片(121、122)よりも長く延び、外側に変位した各可動片(121、122)を内側に付勢することができる。
【0007】
幾つかの実施形態においては、前記板バネ(130)が、C字状若しくはランドルト環状に構成され、板バネ(130)の両端間の隙間を除いて前記突起保持部(120)を周囲する。
【0008】
幾つかの実施形態においては、前記板バネ(130)の両端間の隙間は、前記周方向における前記可動片(121、122)の長さよりも短い。
【0009】
前記収容部材(140)には内側に突出する2以上の制限突起(145)が設けられ、前記突起保持部(120)及び前記板バネ(130)が前記回転子(110)からの回転力を受けて回転する場合、
前記非ロック状態から前記ロック状態に推移する過程で前記板バネ(130)の一端(131)が前記制限突起(145)を乗り越える。
【0010】
幾つかの実施形態においては、前記板バネ(130)の両端の間には外側に突出する2以上の屈曲部(133、134)が設けられ、前記非ロック状態において各屈曲部(133、134)が前記収容部材(140)に接触する。
【0011】
前記突起保持部(120)が2つの可動片(121、122)を有し、前記収容部材(140)には2つの制限突起(145)が設けられ、前記板バネ(130)には2つの屈曲部(133、134)が設けられる場合、
前記板バネ(130)が前記2つの屈曲部(133、134)の間にて円弧状に構成される。
【0012】
幾つかの実施形態においては、前記2以上の可動片(121、122)が一対のU字部であり、各U字部の各端部には外側に隆起した隆起部(128)が設けられる。
【0013】
本発明の他の形態に係るスナップボタンは、上述のいずれかに記載の雌型スナップボタン(100)と、
前記雄型スナップボタン(200)を備える。
【0014】
回転子(110)の回動に基づいて雄型スナップボタン(200)の係合突起(210)の離脱を許容する非ロック状態と前記係合突起(210)の離脱を制限するロック状態を切り替えることができる雌型スナップボタン(100)の製造方法も開示される。当該方法は、
前記雄型スナップボタン(200)の係合突起(210)を保持するべく配置される2以上の可動片(121、122)を収容部材(140)内に配置する工程と、
周方向において各可動片(121、122)よりも長く延びる板バネ(130)を収容部材(140)内に配置する工程を含み、
前記収容部材(140)内に前記2以上の可動片(121、122)及び前記板バネ(130)が配置された状態において、前記板バネ(130)が各可動片(121、122)の外側に配され、前記板バネ(130)が、外側に変位した各可動片(121、122)を内側に付勢することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の例示態様によれば、製造の簡素化や製造コストの低減に寄与する技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の非限定の例示の実施の形態について説明する。開示の1以上の実施形態及び実施形態に包含される各特徴は、個々に独立したものではない。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、また、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている場合がある。
【0018】
図1乃至
図11を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、スナップボタンの概略的な垂直断面模式図であり、雄型スナップボタンと雌型スナップボタンがスナップ結合した状態が示される。
図2は、スナップボタンの概略的な垂直断面模式図であり、雄型スナップボタンと雌型スナップボタンがスナップ結合から脱した非係合状態が示される。
図3は、雌型スナップボタンの概略的な水平断面模式図である。
図4は、雌型スナップボタンの概略的な上面模式図である。
図5は、雌型スナップボタンの概略的な垂直断面模式図であり、鍵部材も併せて図示する。
図6は、雌型スナップボタンの概略的な水平断面模式図であり、雌型スナップボタンが非ロック状態にある。
図7は、雌型スナップボタンの概略的な水平断面模式図であり、雌型スナップボタンが非ロック状態とロック状態の間の状態にある。
図8は、雌型スナップボタンの概略的な水平断面模式図であり、雌型スナップボタンが非ロック状態とロック状態の間の状態にある。
図9は、雌型スナップボタンの概略的な水平断面模式図であり、雌型スナップボタンがロック状態にある。
図10は、雌型スナップボタンの板バネの模式図である。
図11は、雌型スナップボタンの板バネの模式図である。
【0019】
まず、方向を示す用語を次のように定義する。なお、各用語は、本明細書の理解を促進するためのものであり、請求項に記載された発明を限界解釈するために用いられるべきではないことに留意されたい。
【0020】
内側は、
図1及び
図2に図示の軸線AX10に直交する任意の平面において軸線AX10に近づく方向を表わす。外側は、
図1及び
図2に図示の軸線AX10に直交する任意の平面において軸線AX10から離れる方向を表わす。
【0021】
半径方向は、
図1及び
図2に図示の軸線AX10に直交する任意の平面において軸線AX10から離れる方向又は近づく方向を表わす。半径方向内側は、
図1及び
図2に図示の軸線AX10に直交する任意の平面において軸線AX10に近づく方向を表わす。半径方向外側は、
図1及び
図2に図示の軸線AX10に直交する任意の平面において軸線AX10から離れる方向を表わす。上面視及び下面視したときの雄型スナップボタンや雌型スナップボタンの円形状の形状を基礎として半径方向が理解される。
【0022】
周方向は、後述の雌型スナップボタン100の突起保持部120を周囲する方向である。周方向は、後述の雄型スナップボタン200の係合突起210を周囲する方向でもある。
【0023】
図1及び
図2に示すように、スナップボタン900は、雌型スナップボタン100と、雄型スナップボタン200を含む。図示例においては、各スナップボタンが金属製であるが、必ずしもこの限りではなく、両方若しくは一方のスナップボタンの全体又は一部が樹脂部品により代替され得る。雌型スナップボタン100及び雄型スナップボタン200は、各々、生地300に対して取り付けられていることが図示されている。当業者は、本願の全開示に基づいて各生地300に対する各スナップボタンの取り付け方法も理解することができるだろう。
【0024】
雄型スナップボタン200は、上面視及び下面視して円盤状に構成される基部205と、基部205の上面の中央に起立して設けられた略円柱状の係合突起210を有する。係合突起210は、軸線AX10に沿って上方に延びる。係合突起210は、その延在方向において首部211と頭部212を有する。係合突起210の頭部212は、係合突起210の首部211よりも外側及び半径方向外側に突出する。このように係合突起210の頭部212が首部211に比して拡径され、雌型スナップボタン100との良好なスナップ結合が確保される。
【0025】
図示例においては、雄型スナップボタン200は、2枚の金属部材201、202から構築されている。各金属部材201、202の各突起部分が重ね合わされ、上述の係合突起210が構成され、係合突起210の十分な強度が確保される。生地300の開口を通して生地300上に現れる金属部材201の突起部分を金属部材202の突起部分で被覆し、この半製品をプレス機によりプレス処理し、雄型スナップボタンを製造することができる。なお、雄型スナップボタン200の具体的な構成は任意であり、他の形態においては、樹脂の射出成形により製造される雄型スナップボタンが採用され得る。
【0026】
雌型スナップボタン100は、回転子110、突起保持部120、板バネ130、及び収容部材140を含む。収容部材140内に回転子110、突起保持部120、及び板バネ130が配され及び収容される。収容部材140は、軸線AX10上における一対の開口を有する。収容部材140の上側の開口の開口幅は、下側の開口の開口幅よりも僅かに広い。回転子110は、収容部材140の上側の開口から突出した突出部117を有するが、突起保持部120や板バネ130と同様に収容部材140からの離脱が制限されており、従って、回転子110も収容部材140内に収容されているものと理解される。
【0027】
突起保持部120は、雄型スナップボタン200の係合突起210の外周若しくは軸線AX10周りに配置される複数の「可動片」として一対のU字部121、122を含む。U字部121、122は、半径方向において移動することができる可動片である。雄型スナップボタン200の係合突起210の挿脱過程で各U字部121、122が外側及び半径方向外側に変位される。これら一対のU字部に関して、一方を第1U字部121と呼び、他方を第2U字部122と呼ぶ場合がある。なお、可動片の個数は、突起保持部120の分割数に依存する。突起保持部120を三分割する場合には、120°の範囲の三個の弧状部が可動片として働くことが予期される。
【0028】
U字部121、122は、雄型スナップボタン200の係合突起210を保持するように配され、各U字部121、122の各端部が隣接する時に略楕円形状の開口を形成する。雄型スナップボタン200の係合突起210の頭部212が円形状の上面視形状を呈し、従って、係合突起210が各U字部121、122の間で挟まれる時に係合突起210の抜き出しを阻止するように各U字部121、122が作用する。
【0029】
各U字部121、122の各端部には外側及び半径方向外側に隆起した隆起部128が設けられる。隆起部128により収容部材140の内壁と突起保持部120間の隙間が減少し、安定した回動が促進される。
【0030】
収容部材140の底部147上に一対のU字部121、122及び板バネ130が載置され、一対のU字部121、122及び板バネ130上に回転子110が載置される。このようにして収容部材140の筒部146内に一対のU字部121、122、板バネ130、及び回転子110が配される。
【0031】
回転子110、突起保持部120(一対のU字部121、122)、及び板バネ130が一緒に回転する回転ユニットを構築する。回転子110の上面には鍵部材400を嵌め合わせることができる上溝118が設けられている。回転子110に付与される回転力が、突起保持部120及び板バネ130に伝達される。
【0032】
図示例においては、回転子110から突起保持部120及び板バネ130に回転力を伝達するため、回転子110の下面には上溝118に直交する方向に延びる下溝119が設けられる。各U字部121、122には回転子110の下溝119に嵌め合わされる上方凸部129が設けられる。板バネ130にも回転子110の下溝119に嵌め合わされる上方凸部139が設けられる。このようにして回転子110からの回転力が、各U字部121、122に伝達し、また同様に板バネ130に伝達する。なお、回転ユニット内における各部品の配置態様、連結態様、及び各部品間の回転力の伝達方法は任意であり、他の様々な形態も想定される。
【0033】
図示例においては、収容部材140が、3つの金属部材141、142、143から構築されている。金属部材141は、突起保持部120及び板バネ130が載置される円形状の底部147を有し、底部147の中央には雄型スナップボタン200の係合突起210の通過用の円形状の開口が設けられる。円形状の底部147の外周から壁板が起立し、これにより筒部146の内壁部分が構成される。生地300への取り付け後、
図1及び
図2に示すように、金属部材141の筒部の上端部が外側及び半径方向外側に巻かれる。
【0034】
金属部材142は、金属部材141の外周に設けられる。金属部材142は、生地300の下面を押さえる環状の押圧部を有し、押圧部の内周から壁板が起立し、これにより筒部の外壁部分が構成される。金属部材142の筒部の内面が金属部材141の筒部の外面に接触し、高められた強度の2層構造の筒部146が構築される。生地300への取り付け後、
図1及び
図2に示すように、金属部材142の筒部の上端部が外側及び半径方向外側に巻かれ、金属部材141の筒部の上端部の巻き部内に保持される。
【0035】
金属部材143は、回転子110の外周部上に配される環状の表板部を含む。環状の表板部の開口から上述の回転子110の突出部117が突出する。金属部材143は、更に、環状の表板部の外周から下降して金属部材141及び金属部材142の各上端の巻き部に係合するスカート部を含む。生地300が金属部材142と金属部材143により挟み込まれ、これにより生地300への雌型スナップボタン100の取り付けが完了する。
【0036】
図3は、雄型スナップボタン200の係合突起210の離脱を許容する非ロック状態を示す。
図3に示すように、収容部材140内において突起保持部120が内側に配され、板バネ130が外側及び半径方向外側に配される。板バネ130は、突起保持部120を周囲する周方向に延びる板バネである。板バネ130は、周方向に長尺な板バネである。板バネ130は、周方向において各U字部121よりも長く延びる。板バネ130は、雄型スナップボタン200の係合突起210の挿脱時に外側及び半径方向外側に変位した各U字部121、122を内側に付勢することができる。
【0037】
本実施形態においては、複数の可動片若しくはU字部に対して共通の板バネが採用される。これにより、各可動片若しくはU字部に対応して各板バネを用意し、これらの細々した部品を収容部材内に適切に配置することの労力が低減される。雌型スナップボタンの組み立ての簡素化及び雌型スナップボタンの製造コストの低減が促進される。
【0038】
板バネ130は、C字状若しくはランドルト環状に構成される。板バネ130は、両端の間の隙間を除いて突起保持部120を周囲する。板バネ130は、一端131と他端132を有し、その間に隙間が存在する。板バネ130は、一端131と他端132の間に1以上又は複数の屈曲部を有し、図示例においては第1屈曲部133と第2屈曲部134を有する。板バネ130は、第1屈曲部133と第2屈曲部134において収容部材140の内壁に強く接触する。
【0039】
幾つかの実施形態においては、板バネ130の両端間の隙間は、上述の周方向における各可動片121、122の長さよりも短い。幾つかの実施形態においては、板バネ130の両端間の隙間が、突起保持部120により保持された雄型スナップボタン200の係合突起210の全周の1/4未満の範囲の周方向における長さを有する。係合突起210の全周は360°であり、その1/4は90°である。適切な隙間の設定により適切なバネ力が設定可能である。幾つかの実施形態においては、
図3に示す直交関係の第1及び第2仮想線により区画される4つの領域の一つ領域内に板バネ130の両方の端部が存在する。
図3に示す時、第1仮想線が、各可動片121、122の可動方向に一致する。第2仮想線は、第1仮想線に直交する。
【0040】
第1屈曲部133と一端131の間の部分が角度αを有するように内側に曲げられており、一端131が後述の制限突起145mを乗り越える際の板バネ130の変形量が低減される。なお、板バネ130の変形量が大きいと、板バネ130が塑性変形してしまうおそれがある。
【0041】
第1屈曲部133と第2屈曲部134の間には円弧状の弧状部135が設けられる。第1屈曲部133と第2屈曲部134の間に更なる屈曲部が設けられず、これにより、非ロック状態からロック状態への切り替え時の回転の容易性が確保される。弧状部135は、収容部材140の中心軸を中心とした同心円上であり、第1屈曲部133と第2屈曲部134は、この弧状部135の同心円の仮想線から半径方向外側に突出する部分と言うこともできる。
【0042】
なお、一端131と第1屈曲部133の間に第1の上方凸部139が設けられる。他端132と第2屈曲部134の間に第2の上方凸部139が設けられる。第1屈曲部133と第2屈曲部134は突起保持部120を挟んで反対の位置に設けられる。
【0043】
非ロック状態において、雄型スナップボタン200の係合突起210の上面視正円状の頭部212が第1U字部121と第2U字部122の間の楕円形状の開口を通過する際、係合突起210の頭部212が第1U字部121と第2U字部122を半径方向外側へ変位させ、これにより第1U字部121と第2U字部122の間隔が広がり、係合突起210の頭部212の通過が許容される。次に、板バネ130は、半径方向外側へ変位した第1U字部121と第2U字部122のそれぞれを半径方向内側へ変位させ、それぞれを元の位置若しくは元の位置側へ押し戻すべく作動する。
【0044】
詳細には、係合突起210の頭部212の通過の過程で、板バネ130の一端131と第1屈曲部133の間の区分が第1U字部121により半径方向外側へ押され、その後、同区分が第1U字部121を内側へ押し戻す。同様に、係合突起210の頭部212の通過の過程で、第1屈曲部133よりも第2屈曲部134の近傍にある弧状部135の区分が第2U字部122により半径方向外側へ押され、その後、同区分が第2U字部122を内側へ押し戻す。板バネ130のこのような作動に基づいて、第1U字部121と第2U字部122の間隔が狭まり、雄型スナップボタン200の係合突起210が第1U字部121と第2U字部122から構成された突起保持部120により保持される。つまり、非ロック状態では、雌型スナップボタン100に対して雄型スナップボタン200が着脱可能である。後述のロック状態では、雌型スナップボタン100に保持された雄型スナップボタン200が雌型スナップボタン100から離脱し難い状態にある。
【0045】
図4に示すように、回転子110の上面には鍵部材400を嵌め合わせることができる上溝118が設けられている。
図5に鍵部材400の一例が図示されている。回転子110に対して鍵部材400を嵌合し、鍵部材400を回転させることにより回転子110が回転し、これに従い、突起保持部120及び板バネ130が回転する。上溝118をH字状としても良く、これ以外の文字・模様としても構わない。回転子110に凸部を設け、鍵部材400に凹部を設け、これにより両者の嵌合を確保しても構わない。つまり、回転子110と鍵部材400の各嵌合部が相補的に形状付けられて回転子110と鍵部材400の嵌合が達成される。
【0046】
突起保持部120及び板バネ130の回転過程が
図6乃至
図9に図示されている。なお、
図6は、雌型スナップボタン100の非ロック状態を示す。
図9は、雌型スナップボタン100のロック状態を示す。上述のように回転子110、突起保持部120、及び板バネ130が一緒に回転し、これらにより回転ユニットが構築される。
図6に示す時、第1U字部121と第2U字部122の間隔が広がる方向上に各制限突起145が存在せず、回転ユニットが非ロック位置にある。
図9に示す時、第1U字部121と第2U字部122の間隔が広がる方向上に各制限突起145が存在し、回転ユニットがロック位置にある。
【0047】
収容部材140には2以上の制限突起145が設けられる。図示例においては、2つの制限突起145が設けられ、2つの制限突起145が突起保持部120を挟んで反対の位置に設けられる。以下、第1制限突起145mと第2制限突起145nと区別して説明する場合がある。回転子110の回動に応じて板バネ130が時計回りに回転する時、板バネ130の一端131が第1制限突起145mを乗り越える。
図7に図示のごとく、板バネ130の一端131が第1制限突起145mの傾斜面を上る。
図8に図示のごとく、板バネ130の一端131が第1制限突起145mを乗り越え、板バネ130の一端131が第1制限突起145mの頂部に沿って移動する。
図9に図示のごとく、板バネ130の一端131が第1制限突起145mを通過する。非ロック状態からロック状態への切り替えの過程(非ロック状態からロック状態への推移の過程、とも言う)で板バネ130の一端131が制限突起145を乗り越えることにより切り替えの操作感を得ることが可能になる。
図9に示す時、板バネ130の一端131は、
図9に示す第1U字部121の端部と第2U字部122の端部の隙間及び収容部材140の中心軸を通る第1仮想線と、この第1仮想線に直交する第2仮想線の間に位置している。
【0048】
非ロック状態とロック状態の間の状態切り替えの過程で、板バネ130の各屈曲部133、134は各制限突起145を乗り越えることがなく、回転子110の相対的に軽い回転が確保される。板バネ130の第1屈曲部133と第2屈曲部134の間には弧状部135が設けられる。非ロック状態からロック状態への切り替え過程で弧状部135が第2制限突起145nに接触する。しかしながら、弧状部135は屈曲部を持たないため、第2制限突起145nと弧状部135とが強く接触することが回避され、回転子110の相対的に軽い回転が確保される。
【0049】
図9に示すロック状態においては、雄型スナップボタン200の係合突起210が雌型スナップボタン100の突起保持部120に保持される。突起保持部120から係合突起210を抜き出させる場合、係合突起210の頭部212から受ける力に応じて各U字部121、122が半径方向外側へ変位しようとする。しかしながら、
図9に示すごとく、各U字部121、122の両端間の中央部の半径方向外側には各制限突起145が位置し、これにより各U字部121、122の半径方向外側の変位が各制限突起145により制限される。従って、雌型スナップボタン100の突起保持部120からの雄型スナップボタン200の係合突起210の離脱が阻止される。なお、各U字部121、122の両端間の中央部は、板バネ130を間に挟んで制限突起145により動きが制限されるため被制限部と呼んでも構わない。
【0050】
なお、
図6の非ロック状態においては、各U字部121、122の両端間の中央部の半径方向外側には制限突起145が配されていない。むしろ、各U字部121、122の端部の半径方向外側に制限突起145が配されている。この場合、各U字部121、122の半径方向外側への移動が制限突起145により何ら制限されず、従って、雄型スナップボタン200の係合突起210を雌型スナップボタン100の突起保持部120に挿入し、また雌型スナップボタン100の突起保持部120から雄型スナップボタン200の係合突起210を離脱することが許容される。
【0051】
板バネ130は、
図10に示すような形状を収容部材140内において取るが、収容部材140から板バネ130を取り出せば、当然、そのバネ性に基づいて板バネ130の両端間の隙間が減じられた形状に変化する。
【0052】
雌型スナップボタン100の製造方法については、U字部121、122を収容部材140内に配置する工程と、板バネ130を収容部材140内に配置する工程を含む。収容部材140内に突起保持部120を先に配置し、次に収容部材140内に板バネ130を配置しても良く、この逆であっても構わない。
【0053】
上述の実施形態とは異なり、
図11に示すような通常形状の板バネ130を用いることも想定される。
図11に示す場合、第1屈曲部133と第2屈曲部134の間に第3屈曲部136が設けられる。突起保持部120により拡径されて
図11の板バネ130が、その一端131、第1屈曲部133、第2屈曲部134、及び第3屈曲部136の4カ所で収容部材140の内壁に接触する。この場合、板バネ130の一端131が制限突起145mに衝突するよりも第3屈曲部136が制限突起145nに衝突し、回転子110の回転が重くなることが予想される。また、板バネ130の一端131が制限突起145mを乗り越えるとき、板バネ130の一端131の近傍での板バネの変形量が大きくなり、板バネ130が塑性変形してしまうおそれもある。
【0054】
図12乃至
図14を参照して他の実施形態について説明する。
図12は、別の実施形態に係る雌型スナップボタンの概略的な垂直断面模式図である。
図13は、別の実施形態に係る雌型スナップボタンの概略的な水平断面模式図であり、雌型スナップボタンが非ロック状態にある。
図14は、別の実施形態に係る雌型スナップボタンの概略的な水平断面模式図であり、雌型スナップボタンがロック状態にある。
【0055】
第1の実施形態においては、非ロック状態とロック状態の間で突起保持部120及び板バネ130が回転子110に同調して回転し、他方、収容部材140に設けられた制限突起145が回転していなかった。他方、
図12乃至
図14に提示の本実施形態においては、非ロック状態とロック状態の間で突起保持部120及び板バネ130が回転せず、他方、回転子110の底面の外周部に設けられた一対の制限脚部115が回転する。このような形態においても上述の実施形態において説明したものと同様の利益を得ることができる。なお、第1の実施形態の制限突起145と本実施形態の制限脚部115を包括して制限部若しくは制限手段若しくは制限構造と呼ぶ場合がある。
【0056】
図12に示すように、板バネ130と収容部材140の筒部146の間には回転子110の制限脚部115が配される。
図13の非ロック状態から
図14のロック状態へ回転子110が反時計回りに回転される。このとき、回転子110の第1制限脚部115mが板バネ130の一端131を通過し、回転子110の第2制限脚部115nが板バネ130の弧状部135に沿って移動する。このような場合においても、非ロック状態からロック状態への切り替え過程での操作感を得ることができ、また相対的に軽い回転子110の回転を確保することができる。
【0057】
図15を参照して更なる他の実施形態について説明する。
図15は、更に別の実施形態に係る雌型スナップボタンの概略的な垂直断面模式図である。なお、
図15を参照して説明する本実施形態は、上述した二つの実施形態に対して追加の特徴を提供する。しかしながら、
図15を参照して説明する本実施形態は、上述した二つの実施形態とは無関係に独立して実施することもできる。
【0058】
図15に示すように回転子110には被覆部材500が嵌め合わされる。被覆部材500は、回転子110に対して着脱可能であるか、若しくは着脱不能である。被覆部材500を設けることにより、回転子110よりもサイズが大きい被覆部材500を回転させることにより、鍵部材400を用いることなく簡単に回転子110を回転させることができる。被覆部材500の外観は、意匠が施された又は施されていない任意形状のボタンであり得る。被覆部材500は、雌型スナップボタン100のロック機能の隠蔽にも寄与する。
【0059】
図示例の被覆部材500は、円形状の平板部510と、円形状の平板部510の中心に設けられた凸部520と、円形状の平板部510の外周から下方に延びるフランジ部530を有する。被覆部材500の平板部510が収容部材140の直径若しくは幅よりも大きい直径若しくは幅を有する。従って、被覆部材500を把持することが簡単に確保される。被覆部材500の凸部520は、回転子110の上溝118に対して相補的な形状を有する。回転子110と鍵部材400の関係と同様、回転子110と被覆部材500の各嵌合部が相補的な形状に構成されて回転子110と被覆部材500の嵌合が達成される。被覆部材500を回転させることにより回転子110が回転し、従って、第1の実施形態と同様、突起保持部120及び板バネ130が周方向に回転する。このようにして雌型スナップボタン100のロック状態と非ロック状態の切り替えが実行される。
【0060】
本願には以下の付記にて特定の雌型スナップボタンも開示されている。この雌型スナップボタンで特定される付勢手段は、本願に開示の単一の板バネ130に限られず、特許文献1及び2に開示のような複数の板バネ130の使用も包含する点に留意されたい。制限手段についても、制限突起や制限脚部若しくはこれら以外の部分、構造を含む。
【0061】
−付記−
雌型スナップボタン100は、
ロック位置と非ロック位置の間で回動可能である回転子110と、
雄型スナップボタン200の係合突起210を保持するべく設けられた2以上の可動片121、122を含み、各可動片121、122が、雄型スナップボタン200の係合突起210の挿脱過程で外側へ変位可能である突起保持部120と、
前記突起保持部120の各可動片121、122を内側へ付勢するための付勢手段130と、
少なくとも前記回転子110、前記突起保持部120、及び前記付勢手段130が配される収容部材140と、
前記回転子110がロック位置にある時、各可動片121、122の外側への変位を制限する制限手段115、145と、
前記回転子110及び前記収容部材140を被覆し、前記回転子110に対して回転力を伝達可能に結合する被覆部材500を備える。
【0062】
上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。