(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608654
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】複数の移動機械を制御するための無線通信装置
(51)【国際特許分類】
B65G 63/00 20060101AFI20191111BHJP
B66C 13/40 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
B65G63/00 B
B66C13/40 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-174935(P2015-174935)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-48039(P2017-48039A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005924
【氏名又は名称】株式会社三井三池製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(72)【発明者】
【氏名】李 巍
【審査官】
土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭63−24635(JP,B2)
【文献】
特公平3−47639(JP,B2)
【文献】
特開2000−86156(JP,A)
【文献】
特開平11−136753(JP,A)
【文献】
特開2007−158827(JP,A)
【文献】
特許第5895791(JP,B2)
【文献】
特開2007−13554(JP,A)
【文献】
特開2016−201735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 63/00
B66C 13/40
G05D 1/02
H04W 4/00 − 99/00
H01Q 3/00 − 3/46;21/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントロールセンターおよび複数の移動機械に指向性アンテナを接続した無線LANのアクセスポイントをそれぞれ設置するとともに固定基準局から前記コントロールセンターに設置したアクセスポイントとを介して前記各移動機械に設置した各アクセスポイントに指令信号を送信することにより前記複数の移動機械を制御するための無線通信装置において、前記各移動機械に設置したアクセスポイントに接続する指向性アンテナを前記各移動機械の少なくとも両側に配置し、前記コントロールセンターに設置したアクセスポイントと前記各移動機械に設置したアクセスポイントを前記コントロールセンターに配置した指向性アンテナと前記各移動機械の両側に配置した指向性アンテナのいずれか一方を用いて指令信号を伝送することを特徴とする複数の移動機械を制御するための無線通信装置。
【請求項2】
前記各移動機械の両側に配置した前記各アクセスポイントに接続される指向性アンテナをそれぞれ複数配置する場合には、それらの指向性アンテナ間で最適のよい組み合わせを選択して指令信号を伝送できることを特徴とする請求項1記載の複数の移動機械を制御するための無線通信装置。
【請求項3】
前記コントロールセンターに設置したアクセスポイントに接続された指向性アンテナを複数個設置するとともにそれぞれの指向性アンテナから複数の異なる周波数の多重通信により複数のクライアントの内の1つを選択して通信を行うことを特徴とする請求項1または2記載の複数の移動機械を制御するための無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石炭などのばら物を積み着けるスタッカ、積み着けたばら物を払い出すリクレーマ、工場内で使用されるクレーンや各種の搬送機、更には建設現場において使用されるバックホー、ホイールローダ、ブルドーザ、クレーンなどの移動機械を制御するための無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば石炭などのばら物を積み着けるスタッカ、積み着けたばら物を払い出すリクレーマ、工場内で使用されるクレーンや各種の搬送機、更には道路等の建設現場において使用されるバックホー、ホイールローダ、ブルドーザ、クレーン等の各種の移動機械の複数個を配置するとともにそれらの移動機械をコントロールセンターからの指令により無人で稼働させる制御が行われており、例えば特公昭63−24635号公報に提示されているように多くの場合はコントロールセンターと各移動機械を配線ケーブルにより接続して制御していた。
【0003】
しかしながら、有線による制御では移動範囲に制限があり、制御の内容によってケーブルの本数を増やさなければならず制御のプログラムが複雑化するなどの問題点があり、また、有線ケーブルの保守・点検・交換等のメンテナンスが必要であるばかりかケーブル接触部の接触不良や断線等により信頼性やデータ品質性が劣ることになり、更に、移動機械の構造や配置場所によってはケーブルの配線が困難な場合もある。
【0004】
そこで、無線により移動機械を制御する手段が採用されているが、同一箇所で複数の移動機械を制御するにはそれぞれの送受信機ごとに異なる周波数を用いて制御する必要があり、制御がきわめて煩雑になり、特に1つの周波数を用いる場合には混信が生じる。
【0005】
そのため、例えば特公平3−47639号公報に提示されているように双方向通信が可能な一対の送受信機ごとにそれぞれアドレスを付与して、混信した場合に互いに通信して異なる周波数のチャンネルを使用することにより効率よく使用するものや特開2007−19733号公報に提示されているように1チャンネルの送信信号を用いて優先操作指示装置からの指示信号の出力を検知したときには、当該指示信号により優先的に稼働される移動機械を操作する操作機から出力される操作信号が他の操作機から出力される操作信号よりも優先的に前記各移動機械に送信されるように各操作信号の間引き率を変更して1チャンネルの送信信号を生成するなどの手段が講じられている。
【0006】
ところが、前記従来の複数の移動機械を制御する無線通信装置は、各移動機械を制御するための無線電波の衝突を回避する手段が十分でなく、安定した通信による制御が行えにくいという問題があった。
【0007】
そこで、特開2000−86156号公報に、一定の範囲を移動する例えばクレーンのような移動機械とコントロールセンターとの間でデータ伝送を行うことによって、移動機械についての情報をコントロールセンターにて管理する無線LAN(Local Area Network)システムであって、移動機械とコントロールセンターとの間のデータ伝送を指向性無線装置により行う方法が提示されており、特に、データ伝送のために指向性無線を利用することにより高品質かつ長距離(約3km)のデータ伝送を可能としている。
【0008】
しかしながら、この無線LANを用いた移動機械を制御する無線通信装置は、移動機械が一定の範囲を移動してもデータ伝送が保持されるように、指向性無線アンテナの方向を、無線の方向性パターンに適合するように、移動機械の移動距離に応じた角度で制御する手段、或いはコントロールセンター側のアンテナを複数設けることで移動機械が無線有効範囲から出るのを防止するものである。
【0009】
そのため、指向性無線アンテナは有効な立体角が小さいので通信を維持できるように移動機械の移動につれてアンテナの方向を制御しなければならず制御がきわめて煩雑である。また、コントロールセンターに複数のアンテナを設けた場合にも移動機械はいろいろな方向に向きをかえるので移動機械のアンテナの設置箇所によって通信が途絶えてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭63−24635号公報
【特許文献2】特公昭63−24635号公報
【特許文献3】特開2000−86156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来の無線LANを用いた移動機械を制御するための無線通信装置において、通信距離が長い指向性無線アンテナを用いても移動機械の移動に伴って通信が途切れることなく通信制御が可能な複数の移動機械を制御するための無線通信装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するためになされた本発明は、コントロールセンターおよび複数の移動機械に指向性アンテナを接続した無線LANのアクセスポイントをそれぞれ設置するとともに固定基準局から前記コントロールセンターに設置したアクセスポイントとを介して前記各移動機械に設置した各アクセスポイントに指令信号を送信することにより前記複数の移動機械を制御するための無線通信装置において、前記各移動機械に設置したアクセスポイントに接続する指向性アンテナを前記各移動機械の少なくとも両側に配置し、前記コントロールセンターに設置したアクセスポイントと前記各移動機械に設置したアクセスポイントを前記コントロールセンターに配置した指向性アンテナと前記各移動機械の両側に配置した指向性アンテナのいずれか一方を用いて指令信号を伝送することを特徴とする。
【0013】
また、本発明において、前記各移動機械の両側に配置した前記各アクセスポイントに接続される指向性アンテナをそれぞれ複数配置する場合には、それらの指向性アンテナ間で最適のよい組み合わせを選択して指令信号を伝送できるのでより品質の高い通信を行うことができる。
【0014】
更に、本発明において、前記コントロールセンターに設置したアクセスポイントに接続された指向性アンテナを複数個設置するとともにそれぞれの指向性アンテナから複数の異なる周波数の多重通信により複数のクライアントの内の1つを選択して通信を行うことができるので、例えば制御と管理などの制御信号を分けて伝送可能にし、或いは多数の通信の中から最適なものを適宜選択して使用することで途切れのない円滑な作業制御を行うなど品質のよい制御をすることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成を有する本発明は、複数の移動機械を無線電波の衝突を回避して有効に制御する無線LANを用いるとともに有効通信距離が長い指向性アンテナを用いてコントロールセンターからの指令により制御するための無線通信装置において、きわめて安定した高品質の制御を可能にすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の好ましい実施の形態を示す斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明を例えば一定の作業場Y内で移動する例えば2台のブレンディングリクレーマである移動機械BR1,BR2をコントロールセンターCCに配置した制御機器となる固定基準局1により無線LANを用いて遠隔操作する場合についての本発明の好ましい実施の形態を示すものである。
【0019】
尚、無線LANの構成については、従来から通常的に使用されているように、主として前記作業場Yのエリアに沿って設置されたコントロールセンターCCに設置された例えばパーソナルコンピュータにより構成される固定基準局1と、前記固定基準局1と通信をすることが可能なコントロールセンターCCに設置された無線LAN用のアクセスポイントAP3、前記移動機械BR1,移動機械BR2にそれぞれ設置された無線LAN用のアクセスポイントAP1およびアクセスポイントAP2から構成される。
【0020】
また、コントロールセンターCCに設置した固定基準局1にブリッジを設け、アクセスポイントAP3に設けたブリッジとケーブルで接続することにより、また、前記アクセスポイントAP1,AP2,AP3間は無線によりブリッジを形成することによりアドレスに従って双方向通信を可能としている。そのため、前記アクセスポイントAP1,AP2,AP3に接続される各種デバイスのアドレスの共通化を図ることができる。
【0021】
更に、本実施の形態では、アクセスポイントAP1,AP2,AP3はそれぞれアドレスまたは周波数の異なる複数(本実施の形態では2つ)チャンネルの無線インターフェイス(WLAN1およびWLAN2)を有しており、例えば一方をデータ通信チャンネルとして使用し、もう一方を管理チャンネルとして使用することができる。
【0022】
以上のように、本実施の形態に用いられる無線LAN環境そのものについての基本構造は、従来のこの種の無線LANの場合とほぼ同様であるので詳細な説明は省略する。
【0023】
そして、本実施の形態で特筆すべき点は、図面に示すように、前記移動機械BR1およびBR2に設置された無線LAN用のアクセスポイントAP1およびAP2は、それぞれに接置された指向性アンテナ11A,11Bおよび指向性アンテナ21A,21Bを介して前記コントロールセンターCCに配置されたアクセスポイントAP3に接続された指向性アンテナ31A,31Bとの間で例えば1つのチャンネルWLAN1(図示する白抜矢印)のインターフェイスを用いて双方向通信が可能であるとともに、移動機械BR1およびBR2に接置されたアクセスポイントAP1およびAP2はそれぞれに接置された指向性アンテナ12A,12Bおよび指向性アンテナ22A,22Bを介してWLAN2(図示する黒塗矢印)のインターフェイスを用いて互いに双方向通信が可能な点である。
【0024】
そして、本実施の形態では、前記移動機械BR1および移動機械BR2に設置された指向性アンテナ11A,11Bおよび指向性アンテナ21A,21Bと前記コントロールセンターCCに設置されたアクセスポイントAP3に接続された指向性アンテナ31A,31Bとを前記チャンネルWLAN1のインターフェイスを用いて双方向通信するための指向性アンテナ31Aおよび前記移動機械BR1および移動機械BR2に設置された指向性アンテナ11B,12B,21B,22Bと前記チャンネルWLAN2のインターフェイスを用いて送受信するための指向性アンテナ31Bが前記作業場Yに向けて配置されている。
【0025】
また、本実施の形態では
図3に示すように、前記コントロールセンターCCに設置された前記固定基準局1から予め定めてあるPLC(Programmable Logic Controller)の指令をアクセスポイントAP3に接続された指向性アンテナ31A,31Bを介してチャンネルWLAN1のインターフェイスにより指向性アンテナ31Aおよび指向性アンテナ31Bから送信する。
【0026】
そして、前記移動機械BR1および移動機械BR2に設置されているアクセスポイントAP1およびAP2は、前記アクセスポイントAP3からの指令信号を受信してそれぞれのアクセスポイントAP1およびAP2に有線或いは無線により接続される各種のクライアントデバイスを駆動して移動および作業を行う(図示せず)ものであるが、その際に、移動機械BR1および移動機械BR2は作業場Y(
図2参照)内で移動して向きを変えることになる。
【0027】
このとき、本実施の形態では、
図2および
図3に示すように、作業に際して前記コントロールセンターCCに対して移動機械BR1および移動機械BR2の向きが両側方向と前後方向に異なる4通りの状態を考慮することになる。通信の接続状態を示すものである。尚、本実施の形態では、無線LANを構成する各アクセスポイントAP1,AP2,AP3同士についても例えば異なるインターフェイスであるWLAN2を用いてインターフェイス間においてはそれぞれの指向性アンテナを介して双方通信が可能である。
【0028】
本実施の形態は、前記
図3の移動機械BR1,BR2の移動位置と各指向性アンテナについての通信の接続状態に示したように例えばコントロールセンターCCに設置されているアクセスポイントAP3に接続した指向性アンテナ31A,から移動機械BR1,BR2に接置されているアクセスポイントAP1,AP2の指向性アンテナ12A,22Aに、コントロールセンターCCに設置されているアクセスポイントAP3に接続した指向性アンテナ31Bから移動機械BR1,BR2に接置されているアクセスポイントAP1,AP2の指向性アンテナ12B,22Bにパラレルに前記送信するとともに移動機械BR1,BR2のアクセスポイントAP1,AP2に接続された指向性アンテナ11A,11Bと21A,21同士が異なるチャンネルWLAN2により同士で送信することで移動機械BR1,BR2の移動位置に拘わらず途切れることなく連続して双方向通信が可能であり、移動機械BR1,BR2を確実に且つ連続して円滑に制御することが可能である。
【0029】
また、本実施の形態では、ブリッジにより2つのチャンネルWLAN1およびWLAN2を用いており、前記実施例において、移動機械BR1,BR2に接置したアクセスポイントAP1,AP2と、コントロールセンターCCに設置したアクセスポイントAP3との双方向通信についても二重のインターフェイスにより双受信する(図示せず)これらの内の1つを選択して使用することにより更に品質のよい通信状態を維持することができるばかりかそれぞれを管理用と制御用などに分けて実施することも可能であり多用途に用いることができるが、本発明は、各移動機械BR1およびBR2の両側に少なくとも1つずつの指向性アンテナを設置すればよく、また、2以上であってもよく、勿論チャンネルも更に多くても実施可能なこと、移動機械の台数についても本実施の形態に限らないことは言うまでもない。
【0030】
更に、本実施の形態では、無線LANを採用したことにより、無線電波の衝突が回避できるとともに、特定のアドレスにより通信可能であることから秘匿性に優れ、アクセスポイント、クライアントを最適な箇所に設置することが可能であり、入力感度に影響を与えるアクセスポイントとアンテナ間のケーブルを最短にすることができるなどの利点を有している。
【符号の説明】
【0031】
1 固定基準局,11A,11B,12A,12B,21A,21B,22A,22B,31A,31B 指向性アンテナ、AP1,AP2,AP3 アクセスポイント、BR1,BR2 移動機械、CC コントロールセンター、WLAN1,WLAN2 チャンネル