【文献】
GT20Q-SM取扱説明書,日本,株式会社デンソーウェーブ,2015年 4月13日,第1版,p.1,インターネット<URL:https://www.denso-wave.com/authupd/20031/8064_contents4.pdf>
【文献】
水谷 友一,113−038 G06K7/10 光学式画像入力装置,デンソー公開技報 113,株式会社デンソー 知的財産部
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための携帯型光学読取装置を例示するものであって、本発明は携帯型光学読取装置を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0019】
携帯型光学読取装置(以下、ハンディスキャナともいう。)における基本原理は、レーザ光を照射し、反射光の濃淡でバーコードなどのシンボル(以下、一例として、バーコードまたはコードともいう。)の識別をしている。近年、携帯電話やスマートフォンなどでは、二次元のコード(QRコード(登録商標)など)が一般的になってきており、このタイプはレーザ光ではスキャンできず、主にカメラで画像として撮像し、画像を解析してコードを識別している。
【0020】
大きく分けるとレーザ式とカメラ式があり、更に大別すると、固定式と手持式がある。固定式は、一般に、日常生活の中ではあまり取り扱われないが、例えば工場の中で、トレーサビリティのために、自動化ラインで固定式を使用することがある。手持式は、レジなどの日常生活の中で使用されるような民生品もあれば、工場の中でも、人が介在するところでは、使用することがある。
【0021】
更に細かく分類すると、コードの種類で一次元のバーコードと二次元のバーコードとがある。多くは紙やラベラーに印字されたものを読み取るが、中には、ダイレクトパーツマーキング(DPM)と一般的に言われているような直接エンジンなどの金属製品・部品にレーザマーカーで印字をして、それを読み取るような携帯型光学読取装置もある。
【0022】
本発明に係る携帯型光学読取装置は、ユーザが手で持って読取作業を行うタイプである。適用対象は、民生品からDPMなど多岐に亘ってよく、特に限定されない。
【0023】
なお、シンボルには、一次元コードや二次元コードに加え、これらを組み合わせた合成シンボルも含む。一次元コードは、バーコードや一次元シンボル等とも呼ばれ、Code39やCode128等が挙げられる。
【0024】
二次元コードも同様に二次元バーコードや二次元シンボル等とも呼ばれ、QRコード(登録商標)、マイクロQRコード、データマトリクス(DataMatrix)、ベリコード(VeriCode)、アズテックコード(AztecCode)、PDF417、MicroPDF417、マキシコード(MaxiCode)などがある。
【0025】
また合成シンボルには、一次元コードと二次元コードが混在するGS1合成シンボルなどがある。GS1合成シンボルはベースになる一次元コードとしてEAN/UPC(EAN-13、EAN-8、UPC-A、UPC-E)、GS1-128及びGS1データバーの三種が利用できる。また、付加情報には、MicroPDF417又はPDF417の二次元コードが利用できる。また、本実施の形態は、バーコードと、マイクロQRコードなどのマトリクス型二次元コードとを組み合わせたものにも適用できる。
(ハンディスキャナ1の構成)
【0026】
本発明の一実施形態に係るハンディスキャナ1の構成を示す模式図を
図1に示す。この図において、符号ILは照明光を示している。以下、便宜上、ハンディスキャナ1の読取口4側から見
た面を正面、ヘッド部3側から
把持部2の端面側に向かって見た面を平面、把持部2の端面側から見
た面を底面として、夫々の面
(背面、右側面、左側面)を正投影図法に準拠して定義する。また、ハンディスキャナ1のうち読取口4がある方を前方、その反対側を後方として定義する。
【0027】
図2は、ハンディスキャナ1の正面図、
図3は、同右側面図、
図4は、同背面図である。
図1〜
図4に示すように、ハンディスキャナ1は、正面の上部に、バーコードを読み取るための矩形状の読取口4を有し、読取口4から背面に向けて両側面及び平面が連設されて形成されるヘッド部3を備えている。また、ヘッド部3に連設されるとともに連設方向、すなわち底面方向に延在し、その外形が断面略円形の棒状となるよう、ユーザによって把持される把持部2が設けられている。把持部2は、その延在方向が読取ロ4を含む平面
(なお、ここでいう「平面」は前段落において正投影図法に準拠して定義した平面ではなく、平らな面を意味する。特許請求の範囲における「平面」も同様である。)と略平行になるようヘッド部3に連設されている。
【0028】
把持部2の底面方向には端面が形成されており、そこに充電ユニット接続部11が配設されている。充電ユニット101は、この充電ユニット接続部11に接続される。
図5は、ハンディスキャナ1に充電ユニット101を接続した状態を示す図である。また、
図6は、ハンディスキャナ1から充電ユニット101を取り外した状態を示す図である。これらの図に示すように、ハンディスキャナ1は、充電ユニット101を接続したまま使用することもできるし、ハンディスキャナ1をコードレスの単体として使用することもできる。
【0029】
ハンディスキャナ1を駆動するための駆動電力は、バッテリ5または充電ユニット101から供給されるが、両方から供給可能な場合には、電圧の高い方が優先され、通常、電圧の高い充電ユニット101から供給される。ユーザは、この図に示すように、ハンディスキャナ1を充電ユニット101に接続したまま、バッテリ5の充電状態を気にすることなく、あるいは、バッテリ5の有無に拘わらず、バーコードの読取作業を行うことができる。
【0030】
図7は、ハンディスキャナ1からバッテリ5を外した状態を示す図である。この図に示すように、バッテリ5は、円筒型の形状をしており、例えばリチウムイオン電池が用いられ、バッテリ蓋6を閉じて、把持部2の内部に収納されるようになっている。バッテリ蓋6の
図7において下方に、バッテリ蓋ロック7が設けられており、これを押すと、バッテリ蓋6が開くように構成されている。
【0031】
図8〜
図10は、ハンディスキャナ1の内部構成を示す構造図である。ハンディスキャナ1は、これらの図に示すように、主として、フロントケース43と、読取部41と、バッテリ部42と、リアケース44と、充電ユニット接続部11とから構成されている。
【0032】
読取部41は、
図8〜
図10に示すように、読取対象にLED照明光ILをリフレクタ36並びに偏光素子24の投光用偏光素子242を介して投光するためのLED照明2915(図示していない。)と、拡散板23を介して読取対象に対して側面から拡散光ILを出射するためのLED照明2911〜LED照明2914(図示していない。)と、LED照明2911〜LED照明2915を制御するための照明基板29と、読取に有用な反射光を効率良く反射させるための反射板28とを含む投光部46、カメラフレーム32と、カメラカバー30と、読取対象からの反射光を投光用偏光素子242と位相が90°異なる偏光素子24の受光用偏光素子241を介して受光し光像を形成するための受光レンズ31と、受光レンズ31で形成された光像からデジタル画像を作成するためのCMOSイメージセンサ34とを含む受光部47、ユーザが操作するためのトリガースイッチ25と、トリガーパッキン26と、各種モードに切り替えるためのファンクションスイッチ50とを含む操作部48、ユーザに種々の情報を通知するためのバイブレータ27とインジケータLED21(図示していない。)とインジケータレンズ22とを含む通知部49、読取結果をPLC(Programmable Logic Controller)やPC(Personal Computer)に送信するための別体の通信ユニット(図示していない。)との間で例えばBluetooth(登録商標)などの無線通信をするための通信部(図示していない。)、投光部46と受光部47と操作部48と通知部49と通信部とを制御するためのメイン基板33、各種部材に電力を供給するための電源基板37を主要部として備えている。
【0033】
バッテリ部42は、円筒型の形状をした3.7Vのバッテリ5、バッテリ5を収納して閉じるためのバッテリ蓋6、バッテリ5からメイン基板33に給電するためのバッテリ充電コントローラ35を主要部として備えている。
【0034】
フロントケース43及びリアケース44は、読取部41とバッテリ部42とを収容し、両者が合わさって筐体が形成される。筐体の把持部2の端面に充電ユニット接続部11が配設されている。
(ハンディスキャナ1の回路ブロック)
【0035】
図11は、ハンディスキャナ1のハードウェア構成を示すブロック図である。
図11に示すように、メイン基板33は、DSP331等を備えており、ハンディスキャナ1の投光部46及び受光部47、操作部48、通知部49の動作を制御するとともに、取得した画像に対して読取処理を実行する。またメイン基板33は、通信部を動作させて読取結果を通信ユニットに送信する。
【0036】
DSP331は、ROM332に記憶されている(又はRAM333に展開された)プログラム及び設定に基づいて、トリガースイッチがONになったことを検出すると、LEDドライバ292を介して、LED照明2911〜LED照明2915を設定した態様で点灯するよう制御する。例えば、LED照明2911〜LED照明2914を拡散板23の背部に周上に夫々配設してブロックを形成し、ブロック毎に点灯を制御する。このブロック点灯によって、拡散照明でありながら、特定の方向からバーコードに照明を当てることができる。ブロック点灯についての詳細は後述する。
【0037】
続いて、DSP331は、CMOSイメージセンサ34が画像データをRAM333に保存し、RAM333に保存された画像データに基づいてデコード処理をする。読取処理が終了し、通信部を制御してBluetooth(登録商標)で読取結果を出力する。またDSP331は、ブザードライバ511を介して、ブザー51から正常に読取完了を知らせる音を鳴らし、同時に、モータドライバ271を介して、バイブレータ27を動作させる。さらにまた、DSP331は、インジケータドライバ211を介して、インジケータLED21を点灯させ、ユーザに対して、インジケータケース22を介して、読取の完了や各種の進捗などを通知する。インジケータ22についての詳細は後述する。
【0038】
図12は、電源基板37におけるメイン基板33へ電力を供給するためのハードウェア構成を示すブロック図である。ACアダプタに繋がる充電ユニット101から電気接点12を介して電源供給する系統は所定の電圧がかけられており、バッテリ5からの系統は、所定の電圧がかけられている。電源基板37において、スイッチ52とバッテリ充電コントローラ35とが並列になっており、バッテリ充電コントローラ35を介してバッテリ5を充電することも、スイッチ52を介してメイン基板33へ電力供給することもできる。充電ユニット101がハンディスキャナ1と繋がっており、かつ、ハンディスキャナ1にバッテリ5が入っている場合、すなわち、両方とも繋がっている場合、通常、メイン基板33へは充電ユニット101から電力が供給されることになる。この場合において、バッテリ5の電圧が所定の電圧より低い場合、バッテリ5が充電される。
【0039】
また、充電ユニット101がハンディスキャナ1と繋がっていない場合、バッテリ5から電力が供給される。ハンディスキャナ1にバッテリ5が入っていない場合は、充電ユニット101から電力が供給される。
(インジケータ22の構成)
【0040】
前述したように、ハンディスキャナにて読取作業を行うときのユーザの目線は、商品や梱包箱に付されたバーコードそのものに向けられることが多い。そのため、従来のように、視線の先から遠い位置に配置されたインジケータは、依然として視認性に欠ける面がある。そこで、本実施の形態では、
図13に示すように、ハンディスキャナ1は、読取結果などを表示するためのインジケータ22a(特許請求の範囲における「第一表示部」の一例に対応する。)及びインジケータ22b(特許請求の範囲における「第二表示部」の一例に対応する。)が、ヘッド部3の右側面及び左側面に設けられている。また
図14は、ヘッド部3の右側面図である。これらの図に示すように、インジケータ221aが平面から右側面に跨がるように配設されている。また同様に、インジケータ221bが平面から左側面に跨がるように配設されている。言い換えると、平面右側にはインジケータ221aが配設されており、同様に、左側にはインジケータ221bが配設されている。このように、この実施例においては、平面、右側面、左側面の三面のいずれにもインジケータ22が配設されている。
【0041】
この態様の他にも、例えば、平面、右側面、左側面の三面の内、二面にインジケータ22が配設されるような実施態様も考えられる。
図15Aは、
図13と同じ実施形態のインジケータ22a及びインジケータ22bが設けられたヘッド部3を示しており、
図15Bは、右側面にのみインジケータ22aが設けられたヘッド部3を示しており、
図15Cは、左側面にのみインジケータ22bが設けられたヘッド部3を示している。
図15Bまたは
図15Cに示すハンディスキャナ1には、右側面及び平面、または、左側面及び平面の二面に、インジケータ22が配設されている。このように、ヘッド部3において、インジケータ22を三面中少なくとも二面に配設されることで、インジケータ22にユーザの目線が向かう可能性が高まり、インジケータ22の視認性が向上する。
【0042】
また、インジケータ22は、読取口4の近傍に、周
囲に沿っ
た方向に延伸するよう構成されている。読取作業時のユーザの目線はバーコードに向かうところ、読取作業時にバーコードに最も接近することとなる読取ロ4の近傍にインジケータ22を設け、加えて、インジケータ22の形状を周
囲に沿っ
た方向に延伸するバー状にすることで、さらに視認性が向上する。なお、インジケータ22の形状を周方向に沿ってバー状に延伸させることで、特に、ヘッド部の側面が読取ロの周方向に丸みを帯びる場合にはインジケータの視野角が広がる。
【0043】
さらにまた、インジケータ22は、同形同大の矩形状の表示要素222〜225が、長手方向が周方向となるよう連設されており、平面と側面に跨がる箇所には、
図14に示すように、表示要素222とは異なる形状の表示要素221が表示要素222に連設されている。表示要素222〜225については、後述する各種モードが選択された際に、選択されたモードに対応する表示要素が点灯するようになっている。なお、右側面に位置するインジケータに関連する部材についてはaを付し、左側面に位置するインジケータに関連する部材についてはbを付しており、いずれかに限定されない場合には特に付さずに説明する。
【0044】
これらの表示要素221〜225は、各々を独立して表示させる非同期表示と、各々を一体的に表示させる同期表示とが可能となっている。これにより、ハンディスキャナ1の動作や状態などの多様な表示が可能となる。例えば、非同期表示では、各表示要素が選択されたモード表示したり、あるいは、例えば動作の進み具合をバーの長さと関連付けて、動作が完了に近くなるとバーが長くなるよう各表示要素を連関させて点灯させることで、動作の進捗を表示できる。同期表示では、例えば、読取完了した際には、すべてのインジケータを同時に緑色に点灯させるというように、多方向に対して同一の情報を報知することで、視認性を向上させることができる。このように、インジケータに複数の機能を持たせる実施形態についての詳細は後述する。側面において、これらの表示要素221〜225の上には、
図14に示すように、図中、右から「SCAN」、「TUNE」、「TEST」、「USER」の各種モードを示す表記があり、表示要素222〜225に夫々対応している。また、
図14の拡大表示された図に示すように、側面の平面側に、バッテリ5の残量を示すバッテリ残量表示54が設けられており、例えばバッテリの残量が分かるよう電池のアイコンが液晶表示されている。
【0045】
また、インジケータ22は、
図13及び
図14に示すように、ヘッド部3が、読取口4に向けて外側に広がる略角錐台形状をしており、また、インジケータ22自体が、読取口4に向けて外側に広がるよう傾斜を有しているため、
図16に示すように、ユーザがヘッド部3の背後から見ても視認することができる。
【0046】
続いて、インジケータ22の内部構造について、
図17〜
図19に基づいて説明する。
図17は、インジケータレンズ22を取り付ける前の照明基板29の模式図である。
図18は、インジケータレンズ22の模式図である。
図19は、インジケータレンズ22が取り付けられた照明基板29の模式図である。
図17に示すように、照明基板29には、インジケータLED211〜215が両側に配設されている。本実施の形態では、LEDを用いているが、例えば液晶や有機ELなど、表示要素が一列に並ぶ態様を構成できればこれに限られない。
【0047】
また、
図18に示すように、インジケータレンズ22は、右側のインジケータレンズ22aと左側のインジケータレンズ22bとの2つの部材からなる。各インジケータレンズ22a、インジケータレンズ22bは、夫々、表示要素221a〜225a、表示要素221b〜225bに対応する部材を備えている。
【0048】
そして、
図19に示すように、インジケータレンズ22を照明基板29に取り付け、表示要素を点灯すると、表示要素が例えば拡散部材で形成されており、その表示要素の全面が光るようになっている。
(ブロック点灯)
【0049】
難読性の高いバーコードを読み取るための一つの手段として、照明光をブロック単位で点灯させるブロック点灯がある。
図20は、ヘッド部3の部位の正面図である。このブロック点灯によって、この図に示すように、拡散板23(特許請求の範囲における拡散部材に対応する。)を、上側面部231、左側面部232、下側面部233、右側面部234にブロックとして4つに区画し、各々をブロック単位で任意に点灯させることができる。したがって、特定のブロックを点灯させることによって、特定の方向からバーコードに照明を当てることができる。
【0050】
図21は、拡散板23の背後に配設される照明基板29の模式図である。
図21に示すように、照明基板29には、拡散板23の上側面部231、左側面部232、下側面部233、右側面部234に対応するように、LED照明2911、LED照明2912、LED照明2913、LED照明2914が夫々配設されている。LED照明2911〜LED照明2914は、夫々、例えば4つの青色光を発するLEDが照明基板29上に配設されている。このLEDは、120°程度の出射角があり、ブロード状にLED照明光ILを出射する。このLED照明光ILが拡散板23を通過するときに拡散して、輝度が均一な拡散光となる。拡散板23についての詳細は後述する。
【0051】
このブロック点灯の役割の一つに、照明光の天頂角を変えられることが挙げられる。例えば、撮像軸と略平行な下側面部233をブロック点灯させることで、バーコードに対して、斜めから拡散光を出射でき、上方に開放された上側面部231をブロック点灯させることで、バーコードに対して、より鉛直に近い方向から拡散光を出射できる。
【0052】
この照明光の天頂角を変えられる利点は、例えばダイレクトパーツマーキング(DPM)のように、バーコードが傷でマーキングされている場合、バーコードの周囲が梨地や鋳肌地のようにザラついている場合、斜めから拡散光を当てると、ザラついている面では乱反射し、マーキングされた箇所での反射光を受光することで、良好に読み取れることがあり、一方、バーコードの周囲が鏡面のように入射光が反射しやすい場合には、より鉛直に近い角度から拡散光を当てた方が良好に読み取れることがある。すなわち、バーコードの読取特性が照明光の天頂角によって変わる場合には、最適な天頂角を選択することで良好に読み取ることが可能となる。
【0053】
また、ブロック点灯の他の役割として、照明光の方位角を変えられることが挙げられる。例えば、撮像軸に対して、上下左右に、夫々、上側面部231、下側面部233、左側面部232、右側面部234が配設されているので、それらをブロック単位で発光させることで、バーコードに対して、方位角を変えて拡散光を出射できる。
【0054】
この照明光の方位角を変えられる利点は、例えば、ダイレクトパーツマーキング(DPM)されたヘアライン状の読取対象に対して、ヘアラインの線方向に垂直に照明光を当てても良好に読み取れない場合があり、これに対して、このような場合であっても、ヘアラインの線方向に照明光を当てると、良好に読み取れることがある。すなわち、バーコードの読取特性が照明光の方位角によって変わる場合には、最適な方位角を選択することで良好に読み取ることが可能となる。
(拡散部材の構成)
【0055】
拡散板23の背後からLED照明291を点灯させてブロック点灯させる場合を考える。例えば、
図22に示すように、下側面部233をブロック点灯させる場合、LED照明2913から出射したLED照明光は、拡散板23の下側面部233を通過する際に乱反射することによって、輝度が均一な拡散光となる。この図においては、下側面部233が発光面ESとなり、下側面部233に対向する上側面部231が対向面OSに対応する。発光面ESからの拡散光は、そのままバーコードに当たり、反射光を受光して撮像できれば、良好に読み取ることができるが、
図22に示すように、一部の拡散光が対向面OSに当たる。この対向面OSで反射した光がバーコードに当たると、ブロック点灯によって特定の方向から拡散光を当て、コントラストを高めたいにも拘わらず、対向面OSからの反射光の影響を受けて、
図23に示すように、バーコードのコントラストが低下してしまう。
【0056】
これに対して、対向面OSでの反射を抑制できれば、対向面OSからバーコードに向かう拡散光を少なくし、コントラストの低下を防止できる。対向面OSでの反射を抑える方法として、
図24に示すように、発光面ESからの拡散光を対向面OSでそのまま透過させ、対向面OSで透過するよう対向面OSの透過率を例えば70%以上に高めることで、結果として、対向面OSからバーコードに向かう拡散光を少なくでき、
図25に示すように、バーコードのコントラストを高めることができる。
【0057】
一方、発光面ESの透過率は、少なくとも、拡散光を発光可能とすべく、90%以下に留める方が好適である。これは以下の理由による。拡散板23は、透明な樹脂の中に粒状の拡散材が混入しており、この拡散材によって入射したLED照明光が散乱し、輝度が均一となる拡散光が得られるところ、透過率を高めるには拡散材の分量を減らす必要があり、輝度が十分に均一な拡散光を出射できなくなるからである。
【0058】
本実施の形態では、ブロック点灯をさせることによって、拡散板23に、発光面ESの役割と対向面OSの役割とを併せ持たせている。
図26に示すように、ヘッド部下側が発光面ESでヘッド部上側が対向面OSとなる場合と、ヘッド部上側が発光面ESでヘッド部下側が対向面OSとなる場合とがある。また、
図27に示すように、ヘッド部右側が発光面ESでヘッド部左側が対向面OSとなる場合と、ヘッド部左側が発光面ESでヘッド部右側が対向面OSとなる場合とがある。したがって、拡散板23の透過率は、一律に、70%以上、90%以下としている。これにより、発光面ESまたは対向面OSのいずれも透過率が70%〜90%を満たすことになり、また、一の材料から拡散板23を成形できようになる。
【0059】
一方、対向面OSを、例えば、拡散板で構成しなくてもよい場合には、発光面ESで出射された照明光をすべて透過する部材で構成してもよいし、あるいは、完全に吸収する部材で構成してもよい。
(拡散照明と偏光照明との併用構造)
【0060】
偏光照明は、投光用の偏光素子で特定方向に偏波する光以外の光を遮断し、受光用の偏光素子で90°位相の異なる特定方向に偏波する光以外の光を遮断することにより、両偏光素子間で偏波した光を通過させる照明であるから、1つの偏光素子を介在させることで光量が1/2となるところ、2つの偏光素子を介在させるので、光量は発光量の1/4となる。したがって、従来、画像処理装置などで拡散照明と偏光照明とを併用する場合、偏光照明には環状に配された光源などの発光量を大きくできる光源が採用され、また、拡散照明での撮像の際に、受光用の偏光素子が介在すると、光量が発光量の1/2となることから、拡散照明と偏光照明とでは別の光路で撮像するのが望ましいため、拡散照明と偏光照明とは別体として構成され、これらを用いた装置は大型化してしまうという問題があった。
【0061】
拡散照明と偏光照明との併用をハンディスキャナで実現しようとした場合、ハンディスキャナの性質上、コンパクト化する必要がある。ヘッド部のコンパクト化を図りながら、拡散照明と偏光照明とを上手く併用するため、本実施の形態では、まず、四角錐台状の拡散板23の後端面(背面)に、偏光照明を投光するための投光用開口を設け、その近傍に偏波光を受光するための受光用開口を設ける。また、拡散照明は四角錐台状の拡散板23の側面である上側面部231〜右側面部234によって行い、拡散照明と偏光照明とで撮像部41への光路は一部で共有する。これにより、受光用偏光素子241は、拡散照明でも介在することになるが、その分、光源に高出力のLED照明2411〜LED照明2415を採用することで、光量の問題を解消し、1つの撮像部41で撮像できる利点も相俟って、ヘッド部3のコンパクト化を実現している。
(ヘッド部3及び拡散板23の形態がドーム状の場合の実施例)
【0062】
ハンディスキャナ1のヘッド部3の形態は、前述のとおり、ドーム状であってもよい。この場合、例えば、以下のような実施形態とすることができる。
【0063】
まず、拡散板23も同様に、ドーム状の形状とすることができる。この拡散板23は拡散部材に限定されないので、ここではドーム状部材という。言い換えると、このドーム状部材は、透明であっても、半透明であっても、不透明であってもよい。ヘッド部3は、読取部41及び前記ドーム状部材を収納すると共に、後方から前方に向けて連続的又は段階的に径が大きくなる側面を有する。
【0064】
ドーム状部材は、読取
部41から前方に遠ざかるにつれて連続的又は段階的に径が大きくなる側壁面が設けられており、読取部41の前方にある読取部41と対向する底面に読取部41の読取光軸が位置(通過)するよう受光用開口(特許請求の範囲における「第一開口」の一例に対応する。)が形成されると共に、その側壁面の前方端に読取口4に対向する開口(特許請求の範囲における「第二開口」の一例に対応する。)が形成されている。すなわち、ドーム状部材について別の言い方をすれば、第一開口が形成された底面の径と、第二開口が形成された側壁面の前方端(開放端)の径とを比較したとき、少なくとも側壁面の前方端の径の方が大きくなるように側壁面が形成されるといえる。したがって、例えば
図10等に図示されるように、側壁面の外側に突起が設けられていてもよいし、側壁面の一部において、読取
部41から前方に遠ざかるにつれて径が小さくなる部分が含まれていてもよい。なお、ドーム状の形状には、円錐(コーン)形状や多角錐形状など、各種形状が含まれる。
【0065】
この実施形態においては、ハンディスキャナ1は、ヘッド部3の読取口4が、前記ドーム状部材の前方端に形成された開口と対向する位置に形成されおり、把持部2が、読取部41の読取光軸から遠ざかる方向に延在するようヘッド部3の側面に取り付けられている。また、ハンディスキャナ1のヘッド部3には、インジケータ22が、ヘッド部3の側面の内、把持部2の取り付け箇所を除いた側面に、側面の周囲に沿った方向を長手方向とする細長形状に形成されている。なお、細長形状に形成された表示部は、後述するように、読取部41の読取光軸の周囲の一部に沿って、複数の表示要素が一列に並んでいてもよい。
【0066】
この実施形態によれば、前記ドーム状部材を収納するドーム状のヘッド部3の斜面にインジケータ22を設けることができ、これにより、インジケータ22の視認性を高めることができる。
(ハンディスキャナ1の読取動作の基本的な手順)
【0067】
次に、このように構成されたハンディスキャナ1の読取動作の手順を、
図28のフローチャートに基づいて説明する。まずステップST101において、ハンディスキャナ1がバッテリ5で動作しているとした前提で、現在、ハンディスキャナ1がスリープモードに入っているか否かを判定する。ここで、スリープモードとは、ハンディスキャナ1がバッテリ5で動作している場合に、ハンディスキャナ1を低消費電力で動作させるためのモードである。
【0068】
スリープモードに入っていない場合、ステップST102において、スリープモードに入るか否かを判定する。スリープモードに入るか否かは時間で決めている。ユーザの操作は、トリガーを押すことに限られるので、トリガーが押されていない時間が設定時間を経過した場合にスリープモードに入る。この設定時間は、ユーザが設定できる。この設定時間が経過してもトリガーが押されなければスリープモードに入る。
【0069】
ステップST102において、スリープモードに入らない場合、ステップST103において、トリガーが押されたか否かを判定する。トリガーが押されていれば、ステップSTにおいて、撮像して、デコード処理をする。撮像してデコードした時に、正常に読み取れたか否かを判定し、正常に読み取れなければ、ステップST103に戻り、トリガーがまた押されていれば、このステップST103〜ステップST105を繰り返す。ステップST105において、最初に、正常に読み取れた場合、読取結果を出力する。
【0070】
ステップST101において、スリープモードに入っていると判定された場合、ステップST107において、トリガーが押されたか否かを判定する。トリガーが押されれば、ステップST103の動作を実行する。トリガーが押されなければ、ステップST106のスリープモードを継続する。すなわち、ハンディスキャナ1がスリープモードに入っている時、最初、トリガーを押さないと起動しないシステムになっている。
(各種モードにおけるインジケータ22の動作)
【0071】
図29は、ヘッド部3の斜視図であり、
図30は、ヘッド部3の背面図である。これらの図に示すファンクションスイッチ50を押すことで、ハンディスキャナ1は、各種モードに切り替わる。ハンディスキャナ1の動作モードは、
図14に示すように、図中、右から、スキャンモード、チューンモード、テストモード、ユーザモードの4つある。スキャンモードは、通常の読取作業を行うためのモードである。また、チューンモードは、バーコードの読み取る際のパラメータを最適化するためのモードである。またテストモードは、読み取り率をテストするためのモードである。最後にユーザモードは、ユーザが各種の動作または設定をするためのモードである。
【0072】
図30に示すファンクションスイッチ50は、押される度に、
図31に示すフローチャートの手順で、動作モードを切り替える。この図に示すように、ステップST201のスキャンモード、ステップST202のチューンモード、ステップST203のテストモード、ステップST204のユーザモードの順で切り替わり、ユーザモードの時にファンクションスイッチを押すと、またスキャンモードに戻り、この手順を繰り返し実行する。具体的には、動作モードを切り替えることで、
図32A〜
図32Dに示すように、図番の順に、緑色に点灯する表示要素が切り替わり、トリガースイッチ25を押したときのハンディスキャナ1の動作がその動作モードに応じて変わる。以下、動作モード毎にインジケータ22の動作を詳述する。
(スキャンモード)
【0073】
スキャンモードは、通常の読取作業を行うためのモードである。
図33A〜
図33Eは、スキャンモードにおけるインジケータ22の動作を示す説明図である。また、
図34A〜
図34Dは、インジケータ22の点灯態様の例を示している。読取動作を行っていないとき、インジケータ22は消灯している。また、ハンディスキャナ1が読取中の場合も、
図33Aに示すように、インジケータ22は消灯している。読取動作が成功したら、
図33B及び
図34Aに示すように、インジケータ22a及びインジケータ22bが緑に点灯する。
【0074】
一方、読取動作が失敗したら、
図33C及び
図34Bに示すように、インジケータ22a及びインジケータ22bが赤色に点灯する。
【0075】
読取完了後、エラーがない場合には、読取動作を行っていないときと同様、
図33Dに示すように、インジケータ22は消灯している。一方、例えば、読取完了後にバッテリ残量が少なくなっている場合には、
図33Eに示すように、先端の表示要素221a及び表示要素221bを赤色に点灯させる。
【0076】
読取動作が成功した場合の点灯の仕方は色々考えられる。例えば、
図34Aに示すように、表示要素221〜225のすべてが緑色に点灯する態様の他、例えば、
図34Cに示すように、表示要素221及び表示要素225を緑色に点灯させたり、
図34Dに示すように、表示要素224及び表示要素225を緑色に点灯させてもよい。
【0077】
読取動作が失敗した場合の点灯の仕方も色々考えられる。例えば、
図34Bに示すように、表示要素221〜225のすべてが赤色に点灯する態様の他、読取動作の成功の場合と同様に、
図33C及び
図33Dに示す表示要素を赤色に点灯させてもよい。要するに、スキャンモードでは、インジケータ22の点灯態様は、ハンディスキャナ1の読取動作に応じて変化するのである。言い換えると、読取部による読取動作の成否に基づいて、インジケータ22の点灯態様は変化する。なお、本実施形態では、点灯の有無や色に着目しているが、点滅させることでユーザに読取動作の成否を報知してもよい。
(チューンモード)
【0078】
チューンモードは、バーコードの読み取る際のパラメータを最適化するためのモードである。バーコードを読み取る際には、例えば、カメラのゲイン、明るさ、デコードするためのパラメータなどの種々のパラメータがある。バーコード毎に最適となるそれらのパラメータの組合せが異なるので、読取動作の成功率を上げるためには、これから読み取ろうとするバーコード毎に最適となるパラメータの組合せを探す必要がある。
【0079】
このパラメータの組合せを探すために、例えばブロック点灯や偏光照明などを行いながら撮像条件を変えて、実際に読取作業を行い、最も読取精度の高いパラメータの組合せを選択することでパラメータの最適化を行う。このチューンモードで各種パラメータを最適化する流れは、6つのステップに体系化できる。
図35は、6つのステップの流れを示すフローチャートである。
図36A〜
図36Gは、
図35に示すフローチャートの各ステップの説明図である。
【0080】
まずステップST301において、トリガースイッチ25をチューンモードに変更する。ファンクションスイッチ50を押して切り替える。
図36Aに示すように、右から2番目がチューンモードである。チューンモードに切り替えることで、トリガースイッチ25がチューンモードのボタンに切り替わる。
【0081】
次に、ステップST302において、トリガースイッチ25を押して、トリガーを引くことでステップST303のモニタリングが始まる。
(チューンモード:モニタリング)
【0082】
続いて、ステップST303において、モニタリングを行う。モニタリングは、予め設定した撮像条件の組み合わせの中で、組み合わせを変えて、撮像して、解析するという一連の動作を繰り返し、大まかなパラメータを探すことをいう。このモニタリングによって、大まかなパラメータが決定できたら、そのパラメータに基づいて、確からしいパラメータの範囲内に制限して、再度、撮像して、解析するという一連の動作を繰り返すことで、パラメータを最適化していく。ここで、最初にモニタリングというステップを実行するのは、当たりを付けてから最適な値に絞り込んでいくことで、最適化が完了するまでの時間を短縮化できるからである。このモニタリングの際、インジケータ22は、
図36Bに示すように、表示要素221、表示要素222、表示要素225の3つが緑色に点灯する。これにより、ユーザに読取が可能か否かを通知する。
(チューンモード:撮像)
【0083】
ステップST304において、ステップST303にて決定したパラメータの範囲内で複数回撮像する。撮像条件には、例えば、明るさ、ブロック点灯の照明の位置、偏光照明の有無が含まれる。すべてのパラメータに対して撮像し、撮像したすべての画像は、RAM333に記憶する。このRAM333への撮り溜めには時間を要するため、ユーザに対して処理の進捗を表示する。処理の進捗を表示するには、例えば以下のように行う。
【0084】
予定される全撮像枚数(または全記憶枚数)と、現在の撮像枚数(または現在の記憶枚数)との比から、処理の進捗率を算出する。インジケータ22は、5つの表示要素221〜表示要素225を有するから、1つの表示要素に20%の幅を持たせ、進捗率と対応付けることで、処理の進捗を表示することができる。表示要素はバー状に連設されているので、
図36Cに示すように、右から進捗率に応じて表示要素を点灯させて行く。例えば、進捗率が、0より大きく、20%未満なら、表示要素225のみを点灯させ、20%以上、40%未満なら、表示要素224を追加して点灯させる、というように、作業または動作の進捗率と、連設され、全体ではバー状に見える複数の表示要素とを連関させることにより、処理あるいは動作の進捗を表現することができる。また表現できる対象は、作業あるいは動作の進捗に限られない。例えば読取結果のクオリティをバー表示で表現してもよい。
【0085】
このように、表示要素は、各々を同期させて一体的に点灯させることも、非同期にて個別的に点灯させることも可能であり、非同期表示の一の態様として、動作モード表示の役割を担い、また他の態様として、作業あるいは動作の進捗を表現する役割も担う。すなわち、表示要素は、モードを示すことと結果を示すこととが兼用になっている。
【0086】
図36Cにおいて、すべての表示要素が点灯すると、RAM333への撮り溜めが完了する。撮像が完全に完了したことをユーザに知らせるため、
図36Dに示すように、インジケータ22のすべての表示要素221〜表示要素225を一旦赤色に点灯させる。また同時に、ビープ音がなる。これにより、ユーザは、撮像が完全に完了したことを知り、これ以降は、解析に移行するため、これまで撮像のためにトリガースイッチ25を押し続けていた手を離すことができる。
(チューンモード:画像の解析)
【0087】
撮像が完全に完了すると、自動的に、ステップST305において、撮像した画像をRAM333から読み出して、解析し、最適化されたパラメータを探す。具体的には、最適画像が得られたときのパラメータが最適化されたパラメータとなる。最適画像か否かは、例えばバーコードを撮像したときの画像の白黒であったり、太さ細さなどをスコア化し、そのスコアが一番高くなった画像を最適画像と判断する。このステップST305においては、ユーザは、トリガースイッチ25から手を離して解析の完了を待つことができる。これにより、解析の完了を待つまでトリガースイッチ25を押し続けなければならない、といった不便さを解消し、使い勝手を向上することができる。
【0088】
図36Eは、解析動作の進捗を示しており、ステップST306において、画像の解析が完了すると、ビープ音が鳴ると共に、
図36Fに示すように、インジケータ22のすべての表示要素221〜表示要素225が緑色に点灯する。そして、所定時間の経過により、
図36Gに示すように、動作モードが自動でスキャンモードに遷移する。
【0089】
以上説明したように、本実施形態に係るハンディスキャナ1(例えばDSP331)は、通常の読取動作を行うためのスキャンモードから、読取部で用いられる読取パラメータを最適化するためのチューンモードに遷移させるモード遷移機能を有している。チューンモードに遷移した後、読取部は、読取パラメータを最適化するために、読取パラメータを所定条件の下で変化させながらシンボルの撮像を所定回数繰り返し行う。このとき、表示部は、読取部による撮像処理の進捗状況に基づいて、その進捗状況を示すように表示要素を点灯又は点滅する。具体的には、例えば上述したように、各表示要素を順番に点灯してもよいし、各表示要素の色を変えてもよい。そして、表示部は、読取部による撮像処理が完了すると、撮像処理の完了を示すように表示要素を点灯又は点滅する。ユーザは、この点灯状態を確認したときに、ハンディスキャナ1を手から離すことができるので、ハンディスキャナ1(例えばDSP331)が画像の解析をしている際に把持部2を持ち続ける必要がない。
【0090】
言い換えると、本発明に係る表示部は、読取パラメータを最適化するためのチューンモードにおいて、読取部による撮像処理の進捗状況と、読取部による撮像処理の完了とを示すように、表示要素を点灯又は点滅させるので、読取パラメータを最適化する際の使い勝手や利便性を向上することができる。
(テストモード)
【0091】
テストモードは、読取率をテストするためのモードである。読取がし易い場合、表示要素221〜表示要素225が多く点灯し、読取がし難い場合、点灯する数が減ることで、ユーザは、読取率のテスト結果を知ることができる。
図37は、テストモードにおける動作の手順を示すフローチャートである。
図38A〜
図38Dは、
図37に示すフローチャートの各ステップの説明図である。
【0092】
まず操作として、ステップST401において、ファンクションスイッチ50を押して、
図38Aに示すように、テストモードに対応する表示要素223のところが点灯するようにする。
【0093】
次に、ステップST402において、ユーザがトリガースイッチ25を押して、トリガーを引く。
【0094】
ステップST402にてユーザがトリガーを引いている間は、ステップST403において、テストをし続け、ステップST404において、ユーザが手を離すことによって、テストモードが終了する。
【0095】
ステップST403において、上手く読み取れる場合は、
図38Cに示すように、表示要素221〜表示要素225がすべて緑色に点灯する。読取率が下がってくると、表示要素の点灯が左から減ってくる。ステップST402でトリガースイッチ25を押し続けている間は、「ピピピ」というビープ音が鳴り続き、その間、読取率を算出し続けると同時に、読取率を表示要素の点灯数で表現する。
【0096】
ステップST404において、ユーザが手を離すことによって、テストモードが終了すると、
図38Dに示すように、動作モードが自動でスキャンモードに遷移する。
【0097】
このテストモードは、チューンモードでパラメータを最適化したとしても、すべてが最適化されるわけではなく、例えば、バーコードとの距離が遠すぎるなど間違った距離でチューニングをしてしまうことがあり、このような場合でも、このテストモードによれば、チューニングが上手くできているか否かを確認することができる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態に係るハンディスキャナ1(例えばDSP331)は、通常の読取動作を行うためのスキャンモードから、ハンディスキャナ1の読取姿勢(又は読取位置)に応じて読取テストを行うためのテストモードに遷移させるモード遷移機能を有している。テストモードに移行した後、読取部は、シンボルの撮像を繰り返し行い、そのシンボルの読取テストを行う。そして、読取部は、所定回数の読取テストのうち読取に成功した割合を示す読取率を算出する。表示部は、この読取部により算出された読取率に基づいて、ハンディスキャナ1の読取姿勢の適否を示すように表示要素を点灯又は点滅する。このような表示部の処理動作は、テストモードの間、繰り返し行われる。したがって、ユーザは、ハンディスキャナ1の把持部2を握って、シンボルとの相対的位置関係において、どの位置に、また、どの姿勢にすれば、読取率が向上するかを視覚的又は聴覚的に認識することができ、ひいては使い勝手を向上させることができる。
(ユーザモード)
【0099】
ユーザモードは、ユーザが各種の動作または設定をするためのモードである。このモードでは、ユーザは、(1)通信品質テスト、(2)照合登録、(3)固定文字出力(トリガースイッチ25を押すと、内部で決めていた文字を出す。)、の3つの動作または設定ができる。以下、ユーザが行う動作または設定毎に説明する。
(ユーザモード:通信品質テスト)
【0100】
図39は、通信品質テストをするためのユーザモードにおける動作の手順を示すフローチャートである。
図40A〜
図40Dは、
図39に示すフローチャートの各ステップの説明図である。
【0101】
まず操作として、ステップST501において、ファンクションスイッチ50を押して、
図40Aに示すように、ユーザモードに対応する表示要素222のところが点灯するようにする。
【0102】
次に、ステップST502において、ユーザがトリガースイッチ25を押して、トリガーを引く。
【0103】
ステップST502にてユーザがトリガーを引いている間は、ステップST503において、通信品質テストをし続け、ステップST504において、ユーザが手を離すことによって、通信品質テストが終了する。
【0104】
ステップST503において、通信品質が良好な場合は、
図40Cに示すように、表示要素221〜表示要素225がすべて緑色に点灯する。通信品質が下がってくると、表示要素の点灯が左から減ってくる。ステップST502でトリガースイッチ25を押し続けている間は、「ピピピ」というビープ音が鳴り続き、その間、通信品質テストをし続けると同時に、通信品質を表示要素の点灯数で表現する。
【0105】
ステップST504において、ユーザが手を離すことによって、通信品質テストが終了すると、
図40Dに示すように、動作モードが自動でスキャンモードに遷移する。
【0106】
この通信品質テストは、工場内では、中継機器の無線が届きにくい遠くで作業しなければならない場合や、金属の装置が多くあり、そこで電波が反射して通信ができない場合があるところ、この通信品質テストによれば、最初に中継機器やハンディスキャナ1を設置するときに、何処まで使えるかをサーベイしておくことができる。
(ユーザモード:照合登録)
【0107】
図41は、照合登録をするためのユーザモードにおける動作の手順を示すフローチャートである。
図42A〜
図42Dは、
図41に示すフローチャートの各ステップの説明図である。
【0108】
まず操作として、ステップST601において、ファンクションスイッチ50を押して、
図42Aに示すように、ユーザモードに対応する表示要素222のところが点灯するようにする。
【0109】
次に、ステップST602において、ユーザがトリガースイッチ25を押して、トリガーを引く。これにより、ステップST603において、読み取りを開始し、バーコードを1つ読み取ったタイミングでそのバーコード文字列を照合文字列として登録し、処理を完了する。
【0110】
ステップST603において、照合登録が完了した場合は、
図42Bに示すように、表示要素221〜表示要素225がすべて緑色に点灯する。照合登録が失敗した場合、
図42Cに示すように、表示要素221〜表示要素225がすべて赤色に点灯する。
【0111】
またステップST604において、照合登録が完了すると、
図42Dに示すように、動作モードが自動的にスキャンモードに遷移する。また、照合コード読取中にトリガーから手を放したタイミングでも照合文字列の登録を実行せずにスキャンモードに遷移する。このスキャンモードにおいては、通常とは異なり、照合登録されたバーコードと一致するか否かを判断し、読取が完了していても、照合登録されたバーコードと一致していなければ失敗となる。すなわち、読取結果は、成功か失敗のいずれかに限られる。
(ユーザモード:固定文字出力)
【0112】
図43は、固定文字出力をするためのユーザモードにおける動作の手順を示すフローチャートである。
図44A〜
図44Dは、
図43に示すフローチャートの各ステップの説明図である。
【0113】
予め、ハンディスキャナ1から固定文字出力をするための文字をPCからUSBメモリなどを介してハンディスキャナ1に登録しておく。まず操作として、ステップST701において、ファンクションスイッチ50を押して、
図44Aに示すように、ユーザモードに対応する表示要素222のところが点灯するようにする。
【0114】
次に、ステップST702において、ユーザがトリガースイッチ25を押して、トリガーを引く。
【0115】
ステップST702にてユーザがトリガーを引いている間は、ステップST703において、固定文字出力をし続け、ステップST704において、ユーザが手を離すことによって、固定文字出力が終了する。ユーザが、トリガースイッチ25を一回押して直ぐに離せば、登録した固定文字を一回だけ出力できる。なお、本実施形態では、トリガーを引いている間、固定文字出力をし続けるようにしているが、例えば、トリガーを引いたら固定文字が1回分だけ出力されるようにしてもよい。
【0116】
ステップST703において、固定文字出力が完了した場合は、
図44Bに示すように、表示要素221〜表示要素225がすべて緑色に点灯する。ステップST702でトリガースイッチ25を押し続けている間は、「ピピピ」というビープ音が鳴り続き、その間、固定文字出力をし続ける。
【0117】
ステップST704において、ユーザが手を離すことによって、固定文字出力が終了すると、
図44Cに示すように、動作モードが自動でスキャンモードに遷移する。
【0118】
この固定文字出力は、例えば、タブキーを固定文字として予め登録しておき、スキャンモードにて通常の読取を行った後に、ユーザモードに切り替えて、固定文字出力をすると、読取を行った文字列の後にタブキーが挿入されるため、例えばEXCEL(登録商標)で読み込んだ時に、文字列をセル毎に入力できる。
(インジケータのその他の点灯方法)
【0119】
本実施の形態では、インジケータ22の光源としてはLED(インジケータLED21)を使用しているが、例えば液晶や有機ELでもよく、特に限定されない。インジケータのその他の点灯方法として、例えば、色を変えることが考えられる。
図45A〜
図45Dは、光源の色を変えることによるインジケータ22の種々の表示態様を示す図である。
図45A〜
図45Dに示すように、インジケータ22の色を緑色、赤色、黄色、青色と変化させることができる。
【0120】
また、インジケータのその他の点灯方法として、例えば、明るさを変えることが考えられる。
図46A〜
図46Dは、光源の明るさを変えることによるインジケータ22の種々の表示態様を示す図である。
図46A〜
図46Dに示すように、インジケータ22の明るさを例えば4段階で変化させることができる。
【0121】
さらにまた、インジケータのその他の点灯方法として、例えば、点滅の速さを変えることが考えられる。
図47A〜
図47Dは、点滅の速さを変えることによるインジケータ22の種々の表示態様を示す図である。
図47A〜
図47Dに示すように、インジケータ22の点滅の速さを例えば4段階で変化させることができる。
【0122】
さらにまた、インジケート方法は色々あり得る。例えば液晶などのディスプレイで数値表示してもよいし、他にも、音のテンポや大きさ、バイブレータの強度や周波数なども考えられる。