(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪本開示の態様≫
本開示の一態様に係る有機EL表示パネルは、樹脂材料からなり可撓性を有する基板と、前記基板上に互いに離間して配された複数の発光素子と、前記基板上の前記発光素子間に配され前記発光素子を電気的に接続する複数の配線部とを備え、前記基板の前記発光素子の下方に位置する第1領域の剛性が、前記基板の前記第1領域を除いた第2領域の剛性よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記配線部は、前記第2領域に配されている構成であってもよい。係る構成により、有機EL表示パネルにしわや断裂を生じることなく、有機EL表示パネルを多様な3次元曲面に適合するように成形することが可能となり、3次元曲面からなる画像表示面を有する有機EL表示装置を提供できる。そのため、従来に比べ多様な形状の曲面ディスプレイを実現することができる。
【0012】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記基板の前記第1領域における平均厚みは、前記基板の前記第2領域における平均厚みよりも大きい構成であってもよい。係る構成により、基板において、第1領域に相当する部は高い剛性により発光素子の変形が抑制される。第2領域は低い剛性を有しているので変形しやすく、基板全体として高い可撓性を実現できる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記基板は、第1層と第2層とを有し、前記第2層には開口が設けられ、前記第2層の非開口部には、平面視において離間して配された複数の立体部と、前記立体部同士を接続する複数のフェンス部とが存在し、平面視において前記立体部が存在する前記基板の領域は前記第1領域に相当し、前記立体部上方には発光素子が配設され、前記フェンス部上方には前記配線部が配設されている構成であってもよい。係る構成により、基板において、第1領域に相当する立体部の上面には発光素子が配設されており、高い剛性により発光素子の変形が抑制される。第2領域は低い剛性を有しているので変形しやすく、基板全体として高い可撓性を実現できる。
【0013】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記第1層と前記第2層とは同一の材料からなり、前記第1層と前記第2層とは前記第1領域において厚み方向に連続している構成であってもよい。係る構成により、基板の断面形状を第1領域と第2領域とで異ならせるだけで基板全体として高い可撓性を実現できる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記第2層は、前記第1層より剛性が高い異種の材料からなる構成であってもよい。係る構成により、基板において、第1領域に相当する立体部のさらに高い剛性により上面にある発光素子の変形がより一層抑制される。他方、第2領域は低い剛性を有しているので変形しやすく、基板全体としてより一層高い可撓性を実現することができる。
【0014】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記フェンス部は前記基板の平面視において屈曲している構成であってもよい。係る構成により、フェンス部は第2領域の変形に追従することができる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記基板は透光性である構成であってもよい。係る構成により、基板の裏面側からも表示画像を視認することができる。
【0015】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記発光素子間の距離は、前記基板の周縁に近い発光素子間の距離が、前記基板の中央に近い発光素子間の距離よりも大きい構成であってもよい。係る構成により、シート状の基板上に複数の発光素子が、被装着基板に装着された状態において被装着基板の内表面上で略均一に分布するよう構成することができる。
【0016】
本開示の一態様に係る有機EL表示装置は、上記何れかの態様の有機EL表示パネルと、3次元曲面を有する被装着基板とが積層されてなることを特徴とする。係る構成により、多様な3次元曲面からなる画像表示面を有する有機EL表示装置を提供でき、従来に比べ多様な形状の曲面ディスプレイを実現することができる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、封止層、前記有機EL表示パネル、接合層、前記被装着基板の順に積層されてなる構成であってもよい。係る構成により、接合層が、有機EL表示パネルと被装着基板との表面形状の相違を吸収し、有機EL表示パネルと被装着基板とを貼り合わせるとともに、有機EL表示パネルが水分や空気に晒されることを防止する機能を有する。
【0017】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、被装着基板90は透光性であり、有機EL表示パネル100は、表示面を前記被装着基板に対向させて積層されている構成であってもよい。係る構成により、使用者は被装着基板90を通して複数の画素23に表示される画像を視認することができる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、有機EL表示パネル100は、表示面を被装着基板90に背向させて積層されている構成であってもよい。係る構成により、被装着基板90が、例えば、金属、非透明樹脂等からなる遮光性である場合でも、使用者は封止層92を通して複数の画素23に表示される画像を視認することができる。
【0018】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記基板上における前記発光素子間の距離の分布は、前記被装着基板の形状に応じて適宜設定される構成であってもよい。係る構成により、被装着基板の形状が異なる場合でも、複数の発光素子を被装着基板の内表面上で略均一に分布させることができる。
本開示の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、上記何れかの態様の有機EL表示パネルを準備する工程と、3次元曲面を有する被装着基板に沿って前記有機EL表示パネルを延伸して接合層を介して貼り付ける工程と、前記有機EL表示パネルの前記被装着基板の反対側の面に封止層を被覆する工程とを備えたことを特徴とする。係る構成により、有機EL表示パネルにしわや断裂を生じることなく有機EL表示パネルを多様な3次元曲面形状に対し適合するよう成形することが可能となり、3次元曲面からなる画像表示面を有する有機EL表示装置を製造できる。
【0019】
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記貼り付ける工程における前記有機EL表示パネルの延伸率が面内の方向により異なる構成であってもよい。係る構成により、有機表示パネルにしわや断裂を生じることなく、3次元曲面形状の被装着基板に適合した有機EL表示装置を実現することができる。
また、別の態様では、上記何れかの態様において、前記貼り付ける工程における前記有機EL表示パネルの延伸率が面内において不均一である構成であってもよい。係る構成により、さらに多様な3次元曲面形状の被装着基板に適合した有機EL表示装置を実現できる。
【0020】
≪実施の形態≫
1 回路構成
1.1 表示装置1の回路構成
以下では、実施の形態に係る有機EL表示装置1(以後、「表示装置1」とする)の回路構成について、
図1を用い説明する。
【0021】
図1に示すように、表示装置1は、有機EL表示パネル100(以後、「表示パネル100」とする)と、これに接続された駆動制御回路部30とを有し構成されている。
表示パネル100は、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)パネルであって、複数の有機EL素子が、例えば、マトリクス状に配列され構成されている。駆動制御回路部30は、4つの駆動回路31〜34と制御回路35とにより構成されている。
【0022】
なお、表示装置1において、表示パネル100に対する駆動制御回路部30の各回路の配置形態については、
図3に示した形態に限定されない。
1.2 表示パネル100の回路構成
表示パネル100における、複数の有機EL素子は、R(赤)、G(緑)、B(青)に発光する3色のサブ画素(不図示)から構成される。各サブ画素10saの回路構成について、
図2を用い説明する。
【0023】
図2に示すように、本実施の形態に係る表示パネル100では、各サブ画素10saが2つのトランジスタTr
1、Tr
2と一つの容量C、および発光部としての有機EL素子部ELとを有し構成されている。トランジスタTr
1は、駆動トランジスタであり、トランジスタTr
2は、スイッチングトランジスタである。
スイッチングトランジスタTr
2のゲートG
2は、走査ラインVscnに接続され、ソースS
2は、データラインVdatに接続されている。スイッチングトランジスタTr
2のドレインD
2は、駆動トランジスタTr
1のゲートG
1に接続されている。
【0024】
駆動トランジスタTr
1のドレインD
1は、電源ラインVaに接続されており、ソースS
1は、EL素子部ELのアノードに接続されている。EL素子部ELにおけるカソードは、接地ラインVcatに接続されている。
なお、容量Cは、スイッチングトランジスタTr
2のドレインD
2および駆動トランジスタTr
1のゲートG
1と、電源ラインVaとを結ぶように設けられている。
【0025】
表示パネル100においては、隣接する複数のサブ画素10sa(例えば、赤色(R)と緑色(G)と青色(B)の発光色の3つのサブ画素10sa)を組合せて1の画素10aを構成し、各画素10aが分布するように配されて画素領域を構成している。そして、各サブ画素saのゲートG
2からゲートラインGLが各々引き出され、表示パネル100の外部から接続される走査ラインVscnに接続されている。同様に、各サブ画素saのソースS
2からソースラインSLが各々引き出され表示パネル100の外部から接続されるデータラインVdatに接続されている。
【0026】
また、各サブ画素saの電源ラインVa及び各サブ画素saの接地ラインVcatは集約され電源ラインVa及び接地ラインVcatに接続されている。
2.表示装置1の構成
以下では、表示装置1の全体構成について、
図3及び
図4を用い説明する。
図3は、表示装置1の外観を模式的に示した斜視図である。
【0027】
図3に示すように、表示装置1は、曲面形状をした被装着基板90に、基板50上に複数の有機EL発光素子10(以後、「発光素子10」とする)が配された表示パネル100が装着されてなる曲面ディスプレイである。
被装着基板90は、表示パネル100が装着される対象部材であり、3次元曲面形状を有する。ここで、3次元曲面とは、平面に展開することが困難な曲面を指す。被装着基板90は、3次元曲面形状を有する部材であり、例えば、半球状または半楕円球状等の窓ガラス、航空機、自動車、バイク、船等、乗り物の窓や風防、等の各種部材から選択される。あるいは、被装着基板90は、部材の一部に3次元曲面形状を有する構造物であってもよい。被装着基板90は、例えば、ガラス、透明樹脂等からなる透光性であってもよく、また、例えば、金属、非透明樹脂等からなる遮光性であってもよい。
【0028】
本実施の形態では、表示パネル100の具体例として、
図3に示すように被装着基板90は半球形をした透光性の部材であり、被装着基板90の内表面90a上において、略均一に分布した複数の発光素子10が配された表示パネル100が曲面形状に沿って接着されてなる構成を例に説明をする。発光素子10は1画素23を構成し、画素23はR(赤)、G(緑)、B(青)に発光する3色のサブ画素(不図示)から構成される。係る構成では、使用者は被装着基板90を通して複数の画素23に表示される画像を視認することができる。
【0029】
図4は、表示装置1の側断面図である。
図4に示すように、表示パネル100は、シート状の基板50上に複数の発光素子10が、被装着基板90の内表面90a上において、略均一に分布した状態で配され、発光素子10間には発光素子10を電気的に接続する配線部40が配されている。被装着基板90の内表面90aには封止層91が形成されており、表示パネル100は、発光素子10が存在する面(以後、「表示面」とする)側から、接合層93を介して封止層91に接着され、表示面の反対側の面(以後、「裏面」とする)側から封止層92が表示パネル100を被覆して表示装置1が構成されている。
【0030】
基板50は、パネル10の支持部材であり、可撓性を有する材料からなるフィルムである。基板50は、裏面側に第1層51と表示面側に第1層51よりも層剛性が低い第2層52とを備えた。これにより、基板50全体として高い可撓性を有するように構成されている。基板50の詳細については、後述する。
接合層93は、表示パネル100と被装着基板90との表面形状の相違を吸収し、表示パネル100と被装着基板90とを貼り合わせる機能を有する。接合層93の材料は、例えば、樹脂接着剤等からなる。接合層93は、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの透光性材料樹脂材料を採用することができる。
【0031】
封止層91、92は、表示パネル100、接合層93が水分や空気に晒されることを防止する機能を有する。封止層91、92は、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用い形成される。また、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの材料を用い形成された層の上に、又はそれらに替えて、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0032】
3.表示パネル100の構成
3.1 表示パネル100の全体構成
表示パネル100について、図面を用いて説明する。なお、図面は模式図であって、その縮尺は実際とは異なる場合がある。
図5は、表示パネル100の外観を模式的に示した斜視図である。
図5は、被装着基板90に装着される前の表示パネル100の外観を示した模式図である。
【0033】
図5に示すように、表示パネル100は、シート状の基板50上に複数の発光素子10が配され、発光素子10間には発光素子10を電気的に接続する配線部40が配されている。基板50上の発光素子10が配された領域は表示パネル100の表示領域50xyとなり、表示領域50xyを取り囲む領域が基板50の周辺部50zとなる。
上述のとおり、表示パネル100は、シート状の基板50上に複数の発光素子10が、被装着基板90に装着された状態において被装着基板90の内表面90a上で略均一に分布するように配されている。そのために、被装着基板90に装着される前の状態では、発光素子10間のピッチPx、Pyは、被装着基板90の中央部90oに装着される基板50中心50o近傍において小さく、基板50の周辺部50zに近付くほど大きくなるように、発光素子10が配置されている。発光素子10間のピッチPx、Pyの分布は、被装着基板90の内表面90aの曲面形状に応じて適宜設定することが好ましい。被装着基板90の形状が異なる場合でも、複数の発光素子10を被装着基板90の内表面90a上で略均一に分布させることができる。
【0034】
各配線部40は、発光素子10から基板50の周辺部50zまで延出され、周辺部50z内の基板50周囲の四辺近傍に、データライン入力端子部Vdat、走査ラインn入力端子部Vscn、接地ライン端子部Vcat、及び電源ライン端子部Vaがそれぞれ形成されている。
3.2 発光素子10、配線部40及び基板50の概要
表示パネル100における基板50上の発光素子10及び配線部40の概要について、図面を用いて説明する。
図6(a)は、
図5のX部を平面視した拡大図、(b)は、(a)におけるA1−A1断面図である。
図7は、有機EL表示パネル100表示面の一部を模式的に示した拡大斜視図である。
【0035】
基板50は、可撓性を有する材料からなるフィルムである。基材の材料としては、電気絶縁性を有する材料、例えば、樹脂材料を用いることができる。基板50は、
図6(b)に示すように、裏面側に第1層51と表示面側に第2層52とを備えた構成である。第1層51と第2層52とは連続する同一の樹脂材料から構成される。第1層51は基板50全体にわたり構成部材が連続した層である。他方、第2層52は、
図6(a)及び
図7に示すように、第1層51上にX、Y方向にそれぞれ所定のピッチPxi、Pyj(i、jは自然数)離間して配された複数の立体形状の立体部521と、立体部521同士をつなぐ複数の板状又は波板状のフェンス部522からなる層である。
【0036】
複数の立体部521と複数の立体部521とを接続する複数のフェンス部522に囲まれた空間には開口523が存在し、複数の開口523が存在することにより、立体部521が存在する第1領域501は、フェンス部522及び開口523が占める(立体部521を除く)第2領域502よりも高い剛性を有している。基板50に第2層が存在することにより、基板50は全体として高い可撓性を有する。
【0037】
基板50において、第1領域501に相当する立体部521の上面には発光素子10が配設されており、立体部521の高い剛性により発光素子10の変形が抑制される。
第2領域502は低い剛性を有しているので変形しやすく、基板50全体として高い可撓性に資するものである。第2領域502が変形した場合でも、フェンス部522は板状又は波板状であるので、フェンス部522は第2領域502の変形に追従することができる。第2領域502にあるフェンス部522の上面には、発光素子10同士を電気的に接続する配線部40が配設されている。複数の発光素子10と複数の配線部40によって表示パネル100の表示領域50xyが構成される。
【0038】
なお、上述した第1層と第2層とに同一の材料を用いる場合には、第2層52の少なくとも一部が第2領域502において波板状をなしていればよい。しかしながら、第2層52と第1層51との材料としての剛性は、第1層が第2層よりも延伸性が高く、第2層が第1層よりも材料として剛性が高い材料からなる構成であってもよい。この場合、第2層52と第1層51を異種の材料で形成してもよい。
【0039】
図6(a)に示すように、シート状の基板50上に複数の発光素子10が所定のピッチPx、Pyで配置されており、発光素子10間には各発光素子10をつなぐように配線部40が配されている。
第1層51の厚み51z及び第2層52の厚み52z、立体部521のX、Y方向の長さ10x、10y、立体部521のX、Y方向のピッチPxi、Pyjは、基板50を構成する樹脂材料の剛性、基板50全体として実現すべき可撓性、輝度等の仕様に応じて、適宜設定することができる。例えば、51zと52zとの比を1:0.8以上1.2以下、10xのPxiの最小値に対する比を0.5以下、10yのPyiの最小値に対する比を0.5以下としてもよい。本実施の形態では、51z及び52zを約50μmとした。
10xの最小値、10yの最小値は、約100μm、Pxiの最小値、Pyiの最小値は、約50μmとした。
第1領域501の剛性は、第2領域502の剛性に対し、5倍以上となることが好ましい。
【0040】
3.3 発光素子10、配線部40及び基板50の詳細
<発光素子10構成の概要>
表示パネル100における発光素子10及び配線部40の詳細について、図面を用いて説明する。
図8は、表示パネル100上の1画素23を構成する発光素子10及び配線部40の平面図である。
図9は、
図8におけるA2−A2断面図である。
図10は、
図8におけるB1−B1断面図である。
【0041】
発光素子10は、有機化合物の電界発光現象を利用した発光素子である。一例として、図面のZ方向を表示面とする、いわゆるトップエミッション型を採用している。なお、以下においてはZ方向を発光素子10の上方として説明する。
図9及び
図10に示すように、基板50は、厚み方向に第1層51と第2層52とから構成されている。第2層52は、立体部521とフェンス部522と開口523とから構成され、立体部521の上方には発光素子10が、フェンス部522の上方には配線部40がそれぞれ配設されている。
【0042】
平面視においては、
図8に示すように、発光素子10は、ピクセルバンクを採用している。本実施の形態では、サブ画素21には、赤色に発光する赤色サブ画素21R、緑色に発光する緑色サブ画素21G、青色に発光する青色サブ画素21B(以後、21R、21G、21Bを区別しない場合は、「サブ画素21」と略称する)が存在する。また、間隙20には、内部のサブ画素21が赤色サブ画素21Rである赤色間隙20R、緑色サブ画素21Gである緑色間隙20G、青色サブ画素21Bである青色間隙20B(以後、間隙20R、間隙20G、間隙20Bを区別しない場合は、「間隙20」と略称する)が存在する。さらに、赤色サブ画素21R、緑色サブ画素21G、青色サブ画素21Bの3つのサブ画素21が行方向に並んで組となっており、1画素23を構成している。
【0043】
各色サブ画素21の列方向における外縁の位置は、後述するピクセルバンク短辺14により規定され、各色サブ画素21において列方向の同一位置に存在している。また、各色サブ画素21の行方向における外縁の位置は、後述するピクセルバンク長辺16により規定される。
発光素子10の内側には対向電極18が形成されており、発光素子10のX及びY方向の周縁のから延出した配線部40に沿って対向電極18が延出している。
【0044】
<各部構成>
表示パネル100においては、基板50上に発光素子10及び配線部40が配設されており、発光素子10は、TFT(Thin Film Transistor) 層11、画素電極12、下地層13、ピクセルバンク短辺14、ピクセルバンク長辺16、発光層17、対向電極18、封止層19を備える。また、配線部40は、TFT層11、下地層13、ピクセルバンク短辺14、ピクセルバンク長辺16、対向電極18、封止層19を備える。
【0045】
以下、各部構成を
図9及び
図10を用いて説明する。
(1)基板
基板50は、発光素子10の支持部材であり、可撓性を有する材料からなるフィルムである。基材の材料としては、電気絶縁性を有する材料、例えば、樹脂材料を用いることができる。具体的には、基板50に用いることが可能な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリイミドベンゾオキサゾール、ポリイミドベンゾイミダゾールのほかにポリイミドを単位構造として含む共重合体、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンナフタレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリル−スチレン共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、変形ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。また、これらの材料のうち1種または2種以上を組み合わせた多層構造であってもよい。
【0046】
(2)TFT層11
TFT層11は、図示しない第1封止層、第1封止層に形成されたTFT回路と、第1封止層上及びTFT回路上に形成された層間絶縁層とを有する。
第1封止層は、ガスバリア性を有する無機化合物からなる。第1封止層に用いることが可能な材料としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0047】
TFT回路は、第1封止層上面に形成された複数のTFT及び配線からなる。TFTは、発光素子10の外部回路からの駆動信号に応じ、自身に対応する画素電極12と外部電源とを電気的に接続するものであり、電極、半導体層、絶縁層などの多層構造からなる。配線は、TFT、画素電極12、外部電源、外部回路などを電気的に接続している。
層間絶縁層は、TFTによって凹凸が存在する上面の少なくともサブ画素21領域内を平坦化するものである。また、層間絶縁層は、配線及びTFTの間を埋め、配線及びTFTの間を電気的に絶縁している。層間絶縁層の材料としては、例えば電気絶縁性を有するポジ型の感光性有機材料、具体的には、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂などを用いることができる。
【0048】
TFT層11は、発光素子10のX及びY方向の周縁のから延出した配線部40に沿って隣接する発光素子10まで延出されている。
(3)画素電極
基板50上方の赤色サブ画素21Rに画素電極12Rが、緑色サブ画素21Gに画素電極12Gが、青色サブ画素21Bに画素電極12B(以後、画素電極12R、画素電極12G、画素電極12Bを区別しない場合は、「画素電極12」と略称する)が各々形成されている。画素電極12は、発光層17へキャリアを供給するためのものであり、例えば陽極として機能した場合は、発光層17へ正孔を供給する。画素電極12の形状は、平板状であるが、例えば、TFTとの接続を層間絶縁層に開口したコンタクトホールを通じて行う場合は、コンタクトホールに沿った凹凸部を有する。画素電極12は、間隙20のそれぞれにおいて、列方向に間隔をあけて基板50上方、TFT層11上に配されている。
【0049】
画素電極12の材料としては、発光素子10がトップエミッション型であるため、光反射性を有する導電材料、例えば銀、アルミニウム、モリブデンなどの金属や、これらを用いた合金などを用いることが好ましい。
また、基板50上の行方向に隣り合う画素と画素との間に列方向に発光素子10全体に渡って延伸するよう並設された信号線又は電源線の配線領域15が形成されている。配線領域15は、対向電極18と下地層13を介して電気的に接続されている。配線領域15は画素電極12と同じ材料から構成される。
【0050】
(4)下地層
下地層13は、例えば、本実施の形態では正孔注入層であって、画素電極12の上方に連続したべた膜として形成されている。このように、下地層13が連続したべた膜として形成されていれば、製造工程の簡略化を図ることができる。
また、下地層13は、遷移金属酸化物からなり、正孔注入層として機能する。ここで遷移金属とは、周期表の第3族元素から第51族元素までの間に存在する元素である。遷移金属の中でも、タングステン、モリブデン、ニッケル、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニオブ、ハフニウム、タンタル等は、酸化した後に高い正孔注入性を有するため好ましい。特に、タングステンは、高い正孔注入性を有する正孔注入層を形成するのに適している。なお、下地層13は、遷移金属酸化物からなる場合に限定されず、例えば遷移金属の合金等、遷移金属酸化物以外の酸化物からなっていてもよい。また、下地層13は、正孔注入層に限定されず、画素電極12と発光層17との間に形成される層であればどのような層であってもよい。
【0051】
(5)ピクセルバンク短辺
ピクセルバンク短辺14は、その材料となる有機化合物を含んだインクの列方向への流動を規制するためのものである。ピクセルバンク短辺14は、画素電極12の列方向における周縁部上方に存在し、画素電極12の一部と重なった状態で形成されている。そのため、上述のとおり列方向における各色サブ画素21の外縁を規定している。ピクセルバンク短辺14の形状は、行方向に延伸する線状であり、列方向の断面は上方を先細りとする順テーパー台形状である。ピクセルバンク短辺14は、各ピクセルバンク長辺16と交差するようにして、列方向と直交する行方向に沿った状態で設けられており、各々がピクセルバンク長辺16の上面16aと同じ高さに上面14aを有する。
【0052】
ピクセルバンク短辺14の材料としては、電気絶縁性を有する材料、例えば酸化シリコン、窒化シリコンなどの無機材料、並びに、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂など有機材料などを用いることができる。
また、上述のとおり、基板50上の列方向に隣り合う画素と画素との間に行方向に発光素子10全体に渡って延伸するよう並設された信号線又は電源線の配線領域15が形成されている。
【0053】
(6)ピクセルバンク長辺
ピクセルバンク長辺16は、発光層17形成時に、インクが間隙20内において行方向へ流動することを規制するためのものである。ピクセルバンク長辺16は、画素電極12の行方向における周縁部上方に存在し、画素電極12の一部と重なった状態で形成されている。そのため、上述のとおり行方向における各色サブ画素21の外縁を規定している。ピクセルバンク長辺16の形状は、列方向に延伸する線状であり、行方向の断面は上方を先細りとする順テーパーの台形状である。ピクセルバンク長辺16は、各画素電極12を行方向から挟むように、且つ、各ピクセルバンク短辺14と交差するように、下地層13上に形成されている。
【0054】
ピクセルバンク長辺16の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂など有機材料などを用いることができる。なお、ピクセルバンク長辺16は、有機溶剤への耐性を有し、エッチング処理やベーク処理に対して過度に変形、変質などをしない材料で形成されることが好ましい。また、表面に撥液性をもたせるために、表面をフッ素処理してもよい。
【0055】
また、上述のとおり、基板50上の行方向に隣り合う画素と画素との間に列方向に発光素子10全体に渡って延伸するよう並設された信号線又は電源線の配線領域15が形成されている。
(7)発光層
基板50の上方であって隣り合うピクセルバンク長辺16と隣り合うピクセルバンク短編14に囲まれた間隙20内に列方向に沿って順に形成された赤色有機発光層17R、緑色有機発光層17G、及び青色有機発光層17G(以後、赤色有機発光層17R、緑色有機発光層17G、青色有機発光層17Bを区別しない場合は、「発光層17」と略称する)とが形成されている。発光層17は、有機化合物からなる層であり、内部で正孔と電子が再結合することで光を発する機能を有する。各発光層17は、間隙20内に列方向に延伸するように線状に設けられており、サブ画素21においては下地層13の上面13a上に位置する。
【0056】
ここで、発光層17は、画素電極12からキャリアが供給される部分のみが発光する。したがって、
図8に示すように、発光層17のうち、画素電極12上にあるサブ画素21の部分のみが発光する。
発光層17の材料としては、湿式プロセスを用いて成膜できる発光性の有機材料を用いる。具体的には、例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属鎖体、2−ビピリジン化合物の金属鎖体、シッフ塩とIII族金属との鎖体、オキシン金属鎖体、希土類鎖体等の蛍光物質(いずれも特開平5−163488号公報に記載)の化合物、誘導体、錯体など、公知の蛍光物質、燐光物質を用いることができる。
【0057】
(8)対向電極
赤色有機発光層17R、緑色有機発光層17G、青色有機発光層17Bの上方に、赤色サブ画素21R内において画素電極12Rと対向し、緑色サブ画素21G内において画素電極12Gと対向し、青色サブ画素21B内において画素電極12Bと対向する対向電極18とを備えている。また、対向電極18は、発光素子10のX及びY方向の周縁のから延出した配線部40に沿って隣接する発光素子10まで延出されている。
【0058】
対向電極18は、画素電極12と対になって発光層17を挟むことで通電経路を作り、発光層17へキャリアを供給するものであり、例えば陰極として機能した場合は、発光層17へ電子を供給する。対向電極18は、各発光層17の上面17a及び発光層17から露出する各ピクセルバンク長辺16及び各ピクセルバンク短辺14の表面に沿って形成され、各発光層17に共通の電極となっている。
【0059】
対向電極18の材料としては、発光素子10がトップエミッション型であるため、光透過性を有する導電材料が用いられる。例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)などを用いることができる。
対向電極18は、基板50上の行方向に隣り合う画素と画素との間に列方向に延伸するよう並設された配線領域15と下地層13を介して電気的に接続されている。
【0060】
(8)封止層
封止層19は、発光層17が水分や空気などに触れて劣化することを抑制するためのものである。封止層19は、対向電極18の上面を覆うように発光素子10及び配線部40全面に渡って設けられている。封止層19は、ガスバリア性を有する無機化合物からなる。封止層19の材料としては、発光素子10がトップエミッション型であるため、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの光透過性材料が用いられる。
【0061】
(9)接合層24
接合層24は、封止層19とカラーフィルタ基板26とを接着する材料からなる。接合層24に用いることが可能な材料としては、アクリル樹脂等が挙げられる。
(10)カラーフィルタ基板
図9及び
図10に示すように、発光素子10全面に渡って封止層19の上にカラーフィルタ基板26や上部基板を設置・接合してもよい。これにより、発光素子10の表示色の調整や、剛性向上、水分や空気などの侵入防止などを図ることができる。
【0062】
カラーフィルタ基板26は、可撓性を有する材料からなるフィルムである。カラーフィルタ基板26には、基板50で例示した材料と同様の材料を用いることができる。
カラーフィルタ基板26には、赤色サブ画素21Rの領域である赤色間隙20R、緑色サブ画素21Gの領域である緑色間隙20G、青色サブ画素21Bの領域である青色間隙20Bの上方に、赤色フィルタ26R、緑色フィルタ26G、青色フィルタ26Bが各々形成されている。
【0063】
カラーフィルタ26B、26G、26Bは、R、G、Bに対応する波長の可視光を透過させるために設けられる透明層であり、各色サブ画素から出射された光を透過させて、その色度を矯正する機能を有する。カラーフィルタ26G、26R、26Bは、具体的には、例えば、複数の開口部をサブ画素21単位に行列状に形成した隔壁が設けられたカラーフィルタ形成用のカバーガラスに対し、カラーフィルタ材料および溶媒を含有したインクを塗布する工程により形成される。
【0064】
4.製造方法
4.1 表示パネル100の製造方法
表示パネル100の製造方法について
図11、
図12及び
図13を用いて説明する。
図11(a)〜(d)、
図12(a)〜(d)及び
図13(a)〜(d)は、表示パネルの製造工程を示す
図8におけるA1−A1と同じ位置で切断した断面図である。
【0065】
(1)基板準備工程
まず、基板50にTFT層11を形成する。具体的には、例えば、基材にスパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スピンコート法などによって必要な膜を形成し、フォトリソグラフィー法によって膜をパターニングすることで第1封止層、第1封止層上にTFT回路と、第1封止層上及びTFT回路上に層間絶縁層を形成する。この際、必要に応じて、プラズマ処理、イオン注入、ベーキングなどの処理を行ってもよい。
【0066】
(2)画素電極形成工程
次に、基板50上に画素電極12と配線領域15とを形成する。具体的には、例えば、まず真空蒸着法又はスパッタリング法によって基板50上に金属膜を形成する。次に、フォトリソグラフィー法によって金属膜をパターニングし、基板50上に間隔をあけて列方向に画素電極12を複数並べ、さらにそのような画素電極12の列を複数並設する。このようにして、基板50上に二次元配置された画素電極12を形成する。
【0067】
(3)下地層形成工程
次に、
図11(a)に示すように、画素電極12を形成後の基板50上に下地層13を形成する。具体的には、下地層13として、例えば、スパッタリング法により全ての画素電極12を覆い隠すようにべた膜の酸化物層を基板50上に成膜する。
(4)ピクセルバンク形成工程
次に、
図11(b)に示すように、下地層13上にピクセルバンク短辺14及びピクセルバンク長辺16を形成する。具体的には、例えば、スピンコート法によって、ポジ型の感光性有機材料(アクリル系樹脂など)を塗布する。この際、塗布した材料の膜厚はピクセルバンク短辺14の膜厚よりも大きくする。そして、フォトリソグラフィー法によって感光性有機材料をパターニングし、画素電極12列のそれぞれを挟む位置に、行列方向に延伸するように線状のピクセルバンク短辺14及びピクセルバンク長辺16を形成する。
【0068】
なお、印刷法などによって直接ピクセルバンク短辺14及びピクセルバンク長辺16を形成してもよい。また、ピクセルバンク短辺14及びピクセルバンク長辺16に対し、アルカリ性溶液、水、有機溶媒、プラズマなどによる表面処理を行って、の表面に以降の工程で塗布するインクに対する撥液性を付与してもよい。このようにすることで、以降の発光層形成工程で、インクがピクセルバンク短辺14及びピクセルバンク長辺16を超えて流動することを抑制できる。
【0069】
なお、この工程により、隣り合うピクセルバンク長辺16とピクセルバンク短辺14とに囲まれた間隙20が形成され、サブ画素21がなす列は、それぞれ間隙20内に存在することになる。
(6)発光層形成工程
次に、
図11(c)に示すように、間隙20内にインク17Aを塗布する。具体的には、例えば、発光層17の材料となる有機化合物と溶媒とを所定の比率で混合してインク17Aを作成し、印刷法を用いて、このインク17Aを間隙20内に塗布する。そして、インク17Aに含まれる溶媒を蒸発乾燥させることにより、発光層17を形成する。なお、インク17Aの塗布方法としては、ディスペンサー法、ノズルコード法、スピンコート法、インクジェット法などを用いてもよい。
【0070】
また、本実施の形態では、発光層17は、赤、緑、青の3色のサブ画素21を有するため、それぞれ異なるインク17Aを用いて形成する。具体的には、例えば、赤、緑、青のいずれかに対応するインク17Aのみを吐出するノズル(吐出口)を用いて、3色のインク17Aを順に塗布する方法や、赤、緑、青の各色に対応するインク17Aを同時に吐出可能な3連ノズルを用いて、3色のインク17Aを同時に塗布する方法などがある。表示パネル100では、各色有機発光層のインクと同じ材料から構成することが好ましい。同時に塗布することができ製造が容易となり低コスト化に資するからである。
【0071】
また、ピクセルバンクを採用した表示パネル100であるため、同色のインク17Aのみを吐出する複数のノズルを列方向(又は行方向)に並べ、列方向(又は行方向)と交差する行方向(又は列方向)に移動させながら、ピクセルバンク短辺14及びピクセルバンク長辺16に囲まれた間隙20内へインク17Aを吐出して発光層17を形成する方法が好ましい。この方法によると、まず複数のノズルを用いるため、インク17Aの塗布時間が短くなり工程を短縮できる。
【0072】
塗布したインク17Aが乾燥すると、
図11(d)に示すように、間隙20に発光層17が形成される。間隙20では、ピクセルバンク短辺14及びピクセルバンク長辺16に被覆されていない下地層13が存在するサブ画素21に発光層17を形成することができる。
(7)対向電極形成工程
その後、
図12(a)に示すように、各発光層17の上面17a及び発光層17から露出する各ピクセルバンク短辺14及び各ピクセルバンク長辺16の表面に沿って、対向電極18を形成する。具体的には、例えば、真空蒸着法又はスパッタリング法などによって、各発光層17の上面17a及び発光層17から露出する各ピクセルバンク短辺14及び各ピクセルバンク長辺16の表面に沿って、ITO、IZOなどの光透過性導電材料からなる膜を形成する。
【0073】
このとき、対向電極18は、基板50上に列方向に延伸するよう並設された配線領域15と下地層13を介して電気的に接続される。
(8)封止層形成工程
次に、
図12(b)に示すように、対向電極18の上面を覆う封止層19を形成する。具体的には、例えば、スパッタリング法又はCVD法によって、対向電極18上に無機絶縁膜(酸化シリコンなど)を形成する。
【0074】
(9)カラーフィルタ基板26との貼り合わせ
次に、封止層19までが形成されたパネルに、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの透光性紫外線硬化型樹脂を主成分とする接合層24の材料を塗布する(
図12(c))。
続いて、塗布した材料に紫外線照射を行い、背面パネルとカラーフィルタ基板26との相対的位置関係を合せた状態で両基板を貼り合わせる。このとき、両者の間にガスが入らないように注意する。その後、両基板を焼成して封止工程を完了すると、表示パネル100が完成する(
図12(d))。
【0075】
なお、カラーフィルタ基板26の製造工程を、以下に例示する。
遮光層を形成した透光性基板の表面に、紫外線硬化樹脂成分を主成分とするカラーフィルタ基板26(例えば、G)の材料を溶媒に分散させ、ペーストを塗布し、溶媒を一定除去した後、所定のパターンマスクPM2を載置し、紫外線照射を行う。その後はキュアを行い、パターンマスクPM2及び未硬化のペーストを除去して現像すると、カラーフィルタ基板26Gを形成する。この工程を各色のカラーフィルタ材料について同様に繰り返すことで、カラーフィルタ基板26R、26Bを形成する。なお、ペーストを用いる代わりに市販されているカラーフィルタ製品を利用してもよい。
【0076】
(10)基板50における第1層51及び第2層52の形成工程
次に、表示パネル100の成形工程を例示する。
紫外線硬化樹脂(例えば紫外線硬化アクリル樹脂)材料を主成分とし、これに感光性材料を溶媒に分散させたフォトレジスト層ペースト27Xを調整し、カラーフィルタ基板26までが形成された表示パネル100の上面に塗布する(
図13(a))。
【0077】
塗布したフォトレジスト層ペースト27Xを乾燥し、溶媒をある程度揮発させてから、所定の開口部が施されたパターンマスクPM1を重ね、その上から紫外線照射を行いパターンを露光する(
図13(b))。その後、アルカリ水溶液を用いて現像してフォトレジストパターン27を形成する(
図13(c))。さらに、エッチング酸液によりエッチング処理を行い表示パネル100の開口523を除去した後、フォトレジストパターン27を除去して表示パネル100を完成する(
図13(d))。プラズマエッチング処理を行ってもよい。完成した表示パネル100は、基板50が立体部521とフェンス部522からなる第2層52と第1層51とを備え、発光素子10が立体部521の上方に、配線部40がフェンス部522の上方にそれぞれ形成されている構成を採る。
【0078】
4.2 表示装置1の製造方法
表示装置1の製造方法について
図14を用いて説明する。
図14(a)〜(f)は、表示装置1の製造工程を示す側断面図である。
先ず、曲面形状をした被装着基板90を準備し(
図14(a))、被装着基板90の内表面90aに窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を蒸着することにより封止層91を形成する(
図14(b))。窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)に加えて、又は、それらに替えて、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0079】
次に、樹脂接着剤等からなる接合層93を表示パネル100の表示面側に貼り付け(
図14(c))、真空成形法等により封止層91が形成された被装着基板90の内表面90aに表示パネル100を接合層93を介して接着し、接合層93を有機EL素子に影響を与えない温度、例えば100℃以下において硬化させる(
図14(d))。
次に、表示パネル100裏面側から窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などを蒸着することにより封止層92を形成して表示パネル100を被覆する(
図14(e))。封止層91、92の形成は、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)層の形成に加えて、又は、それらに替えて、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料からなる封止樹脂層を設けてもよい。
【0080】
以上の工程により、表示装置1を完成する(
図14(f))。
5.表示装置1の利用例
表示装置1の利用例について
図15を用いて説明する。
図15(a)〜(c)は、有機EL表示装置1の利用例を示す模式図である。
図15(a)では、被装着基板90として航空機の座席に装着された透明なフード90Aを利用した例である。フード90Aの内面に表示パネル100が装置されて表示装置1が構成されている。利用者は、フード90Aの内方から表示装置1に表示される画像や情報を視認するとともに、同時にフード90Aを通して機内の状況も視認することができる。
【0081】
図15(b)では、被装着基板90として娯楽施設等に用いられる遊戯用車両に装着された透明な風防90Bを利用した例である。風防90Bの内面に表示パネル100が装置されて表示装置1が構成されている。利用者は、遊戯用車両の内方から表示装置1に表示される画像を視認するとともに、風防90Bを通して同時に外の風景を視認して楽しむことができる。
【0082】
図15(C)では、被装着基板90として自動車のサイドウインドウ90C、フロントウインドウ90Dを利用した例である。ウインドウ90C及び90Dの内面にそれぞれ表示パネル100が装置されて表示装置1が構成されている。運転者は、運転席から表示装置1に表示される画像や情報を視認するとともに、ウインドウ90C及び90Dを通して同時に路上の状況を視認して運転することができる。
【0083】
6.効 果
以上、説明した実施の形態に係る有機EL表示パネル100では、樹脂材料からなり可撓性を有する基板50と、基板50上に互いに離間して配された複数の発光素子10と、基板50上の発光素子10間に配され発光素子10を電気的に接続する配線部40を複数備え、基板50の発光素子10の下方に位置する第1領域の剛性が、基板の第1領域を除いた第2領域の剛性よりも大きい構成とした。また、別の態様では、基板50は、厚み方向に第1層51と第2層52とを有し、第2層52には、平面視において離間して配された複数の立体部521と、立体部521同士を接続する複数のフェンス部522とが存在し、複数の立体部521と当該複数の立体部521をつなぐ複数のフェンス部522とに囲まれた領域には開口523が開設され、平面視において立体部521が存在する基板の領域は第1領域に相当し、立体部上方521には発光素子10が配設され、フェンス部522上方には配線部40が配設されている構成としてもよい。
【0084】
これにより、基板50において、第1領域501に相当する立体部521の高い剛性により上面にある発光素子10の変形が抑制される。他方、第2領域502は低い剛性を有しているので変形しやすく、基板50全体として高い可撓性に資するものである。しかしながら、第2領域502が変形した場合でも、フェンス部522は板状又は波板状であるので、フェンス部522は第2領域502の変形に追従することができる。すなわち、基板50に第2層52が存在することにより、基板50は全体として高い可撓性を有する。すなわち、第1層51と第2層52とは同一の材料からなる構成とし、基板の断面形状を第1領域と第2領域とで異ならせるだけで基板全体として高い可撓性を実現できる。
【0085】
その結果、3次元曲面を有する被装着基板90に沿って前記有機EL表示パネルを延伸して接合層を介して貼り付けることができるので、表示パネル100にしわや断裂を生じることなく多様な3次元曲面形状に対し適合するように成形可能な有機EL表示パネル及びこれを用いた有機EL表示装置を提供することができる。そのため、従来に比べ多様な形状の曲面ディスプレイを実現することができる。
【0086】
≪変形例≫
実施の形態では、本開示一態様に係る表示パネル100、表示装置1を説明したが、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。例えば、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。以下では、そのような形態の一例として、表示パネル100の変形例を説明する。
【0087】
1.第2層は第1層より材料としての剛性が高い材料からなる構成
実施の形態に係る表示パネル100では、第1層51と第2層52とは同一の材料からなる構成とした。これにより、基板の断面形状を第1領域と第2領域とで異ならせるだけで基板全体として高い可撓性を実現できる。
しかしながら、例示した表示パネル100において、第2層52Aは第1層51Aより剛性が高い材料からなる構成としてもよい。
図16(a)は、変形例に係る有機EL表示パネル100Aを平面視したときの、
図5におけるX部と同じ位置での拡大図、(b)は、変形例に係る有機EL表示パネル100Aを、
図6(a)におけるA1−A1と同じ位置で切断した断面図である。
【0088】
基板50Aは、
図16(a)(b)に示すように、第1層51Aと第2層52Aとは異なる樹脂材料から構成され、裏面側の第1層51A、表示面側の第2層52Aとを積層した構成である。第1層51Aは第2層52Aよりも延伸性が高い材料からなり、第1層51Aは基板50A全体にわたり構成部材が連続した稠密な層である。第2層52Aは、第1層51Aより剛性が高い材料からなるとともに、第1層51A上に離間して配された複数の立体形状の立体部521Aと、立体部521A同士をつなぐ複数の板状又は波板状のフェンス部522Aからなる層である。複数の立体部521Aと複数の立体部521Aとを接続する複数のフェンス部522Aに囲まれた空間には開口523Aが存在する。第2層52Aは第1層51Aより剛性が高い材料からなることに加え、複数の開口523Aが存在することにより、立体部521Aが存在する第1領域501Aは、フェンス部522A及び開口523Aが占める(立体部521Aを除く)第2領域502Aよりも低い剛性を有している。
【0089】
これにより、基板50において、第1領域501Aに相当する立体部521Aのさらに高い剛性により上面にある発光素子10の変形がより一層抑制される。他方、第2領域502Aは低い剛性を有しているので変形しやすく、基板50A全体としてより一層高い可撓性を実現することができる。
2.その他の変形例
実施の形態に係る表示パネル100では、フェンス部522は基板50の平面視において屈曲している構成とした。しかしながら、フェンス部522は基板50の平面視において、直線状又は円弧状等変形が容易な各種形状にて構成してもよい。係る構成により、フェンス部は第2領域の変形に追従することができる。
【0090】
また、表示パネル100では、発光素子10間の距離は、基板50の周縁50zに近い発光素子10間の距離が、基板50の中央50oに近い発光素子10間の距離よりも大きい構成とした。しかしながら、基板50上における発光素子50間の距離の分布は、被装着基板90の形状に応じて適宜設定される構成であってもよい。係る構成により、被装着基板90の形状が異なる場合でも、複数の発光素子10を被装着基板90の内表面90a上で略均一に分布させることができる。
【0091】
また、表示装置1では、被装着基板90は、例えば、ガラス、透明樹脂等からなる透光性を有する構成を例とし、3次元曲面を有する被装着基板90に沿って前記有機EL表示パネル10を延伸して表示面側から接合層93を介して貼り付ける工程と、有機EL表示パネル10の裏面側の面に封止層92を被覆する工程により表示装置1を製造する構成とした。係る構成により、使用者は被装着基板90を通して複数の画素23に表示される画像を視認することができる。
【0092】
しかしながら、3次元曲面を有する被装着基90に沿って有機EL表示パネル10を延伸して裏面側から接合層を介して貼り付ける工程と、有機EL表示パネル10の表示面側の面に封止層を被覆する工程により表示装置1を製造する構成としてもよい。係る構成により、被装着基板90が、例えば、金属、非透明樹脂等からなる遮光性である場合でも、使用者は封止層92を通して複数の画素23に表示される画像を視認することができる。
【0093】
実施の形態に係る表示パネル100では、各色サブ画素21である間隙20の上方に、カラーフィルタ26が形成されている構成とした。しかしながら、例示した表示パネル100において、間隙20の上方にはカラーフィルタ26を設けない構成としてもよい。
また、上記実施の形態では、画素電極12と対向電極18の間に、及び発光層17のみが存在する構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、正孔注入層である下地層13を用いずに、画素電極12と対向電極18の間に発光層17のみが存在する構成としてもよい。
【0094】
また、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などを備える構成や、これらの複数又は全部を同時に備える構成であってもよい。また、これらの層はすべて有機化合物からなる必要はなく、無機物などで構成されていてもよい。
また、上記実施の形態では、サブ画素21には、赤色サブ画素21R、緑色サブ画素21G、青色サブ画素21Bの3種類があったが、本発明はこれに限られない。例えば、発光層が1種類であってもよいし、発光層が赤、緑、青、黄色に発光する4種類であってもよい。
【0095】
また、上記実施の形態では、画素23が、X、Y方向に直線状に並んだ構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、画素領域の間隔を1ピッチとするとき、隣り合う間隙同士で画素領域が列方向に半ピッチずれている構成に対しても、本発明は効果を有する。
また、上記実施の形態では、発光層17の形成方法としては、印刷法、スピンコート法、インクジェット法などの湿式成膜プロセスを用いる構成であったが、本発明はこれに限られない。例えば、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、気相成長法等の乾式成膜プロセスを用いることもできる。
【0096】
また、上記実施の形態に係るパネル1では、すべての間隙20に画素電極12が配されていたが、本発明はこの構成に限られない。例えば、バスバーなどを形成するために、画素電極12が形成されない間隙20が存在してもよい。
また、上記実施の形態では、表示パネル100がトップエミッション型の構成であったが、ボトムエミッション型を採用することもできる。その場合には、各構成について、適宜の変更が可能である。