(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によるエレベーターの点検作業支援システムは、エレベーター制御部と接続する端末装置と、映像(動画と静止画を含む)を撮影する映像カメラと、サーバーなどで構成された点検作業支援装置とを備え、エレベーターの状態と映像カメラから取得した点検作業者の位置などの情報をもとに点検作業者が行おうとしている作業に危険があるかを判断することができ、点検作業者の身の危険を事前に点検作業者に報知することができるとともに、作業漏れを点検作業者に報知することができる。
【0011】
以下、本発明の実施例によるエレベーターの点検作業支援システムと点検作業支援装置を説明する。
【0012】
図1は、本実施例によるエレベーターの点検作業支援システムの概略構成を示す図である。本実施例によるエレベーターの点検作業支援システム20は、端末装置1と、点検作業支援装置2と、映像カメラ10を備える。端末装置1と点検作業支援装置2は、通信回線3を介して互いに接続可能であり、保守点検作業の間、互いにデータを送受信することができる。端末装置1は、映像カメラ10とエレベーターのエレベーター制御部8とに無線通信で接続可能であり、映像カメラ10とエレベーター制御部8とからデータを受信することができる。
【0013】
端末装置1は、エレベーターの保守点検作業を行う点検作業者5に携行され、画像収集部11、エレベーター状態収集部9、点検結果データ入力部6、及び作業指示部4を備える。また、端末装置1は、作業指示やデータを表示する出力部4aを備える。出力部4aは、文字の他に音や振動を出力してもよい。画像収集部11は、映像カメラ10が撮影した映像を取得し、画像データとして点検作業支援装置2に送信する。エレベーター状態収集部9は、エレベーター制御部8からエレベーターの状態(例えば、乗かごの位置、運転モード、及びエレベーターの各スイッチの状態など)の情報を取得し、点検作業支援装置2に送信する。点検結果データ入力部6には、点検作業者5が点検した結果が入力される。作業指示部4は、作業指示、表示すべきデータ、及び後述する注意情報と警告情報を出力部4aに出力する。
【0014】
点検作業支援装置2は、エレベーターの管理センターに備えられており、サーバーなどで構成され、画像情報格納部12、画像解析部13、異常検出部14、作業指示決定部15、及びコンテンツ格納部7を備える。画像情報格納部12は、端末装置1から送信された画像データを解析するために用いられる画像情報を予め格納している。画像解析部13は、端末装置1から送信された画像データ(映像カメラ10の撮影した映像から画像収集部11が取得した画像データ)を解析する。画像データを解析するときには、画像解析部13は、画像情報格納部12に格納されている画像情報を利用することもできる。異常検出部14は、エレベーター制御部8と映像カメラ10とから得られた情報を用いて、点検作業者5が行っている保守点検作業に異常状態がないかを判定し、作業の異常(例えば、危険と作業漏れ)を検出する。作業指示決定部15は、次の作業手順をコンテンツ格納部7から選定し、端末装置1を介して点検作業者5に通知する。また、作業指示決定部15は、後述する注意情報と警告情報を、作業指示部4を介して出力部4aに出力させる。コンテンツ格納部7には、保守点検作業の作業手順が、実施すべき順序と共に予め格納されている。
【0015】
映像カメラ10は、点検作業者5に保持され、映像を撮影する。点検作業者5は、自らの視線に合わせて映像カメラ10の撮影範囲が動くように映像カメラ10を保持するのが好ましい。例えば、点検作業者5は、自らの頭部や胸部に映像カメラ10を装着するのが好ましい。
【0016】
エレベーター制御部8は、例えば制御盤であり、エレベーターの運転を制御し、エレベーターの状態を把握する。エレベーター制御部8は、例えば、乗かごの昇降、及び乗かごドアと乗場ドアの開閉などを行うとともに、乗かごの位置、運転モード、及びエレベーターの各スイッチの状態(オンになっているかオフになっているかなど)の情報などを把握することができる。
【0017】
図2は、
図1と同様に、本実施例によるエレベーターの点検作業支援システムの概略構成を示す図である。
図2に示す点検作業支援システム21は、
図1に示す点検作業支援システム20と同様の構成を備えるが、出力部4aが端末装置1から分離している点が
図1の点検作業支援システム20と異なる。出力部4aは、
図2に示すように、端末装置1から分離して設置することができる。例えば、出力部4aを眼鏡型のウェアラブル端末に設けると、このウェアラブル端末を装着した点検作業者5の視線の先に出力部4aを設置することができるので、点検作業者5は出力部4aが表示する作業指示を確認し易いという利点がある。
【0018】
一般に、エレベーターの保守点検作業は、次のようにして実施される。点検作業者5は、点検作業支援装置2の作業指示決定部15から端末装置1の作業指示部4に送られてきた作業手順を確認し、エレベーターの保守点検作業を実施する。点検作業者5が点検した結果を端末装置1の点検結果データ入力部6に入力すると、端末装置1は、点検結果のデータを点検作業支援装置2の作業指示決定部15に送信する。作業指示決定部15は、点検結果のデータを受け取ると、次の作業手順をコンテンツ格納部7から選定し、端末装置1の作業指示部4に送信する。これらの手順を繰返し行うことで、エレベーターの保守点検作業が実施される。
【0019】
しかし、点検作業者5は、作業指示決定部15から送られてきた作業手順の通りに正しく行動しているとは限らない。例えば、5階建の建物で乗かご上に乗って行う作業を実施する際に、点検作業者5が、乗かごを4階に止めて5階から乗かご上に乗り込もうとしているときに、お客様から1階に呼び出されたとする。点検作業者5は、乗かごを4階に止めたまま1階に行った後、お客様との用事が済んだら、作業を再開するため乗かご上に乗り込もうとする。このとき、点検作業者5は、乗かごを1階に止めていたと勘違いすると、2階から乗かご上に乗り込もうとする。すると、実際には乗かごは4階にあるため、点検作業者5が2階乗場からエレベーターの昇降路の底部まで転落する恐れがある。
【0020】
本実施例によるエレベーターの点検作業支援システムは、エレベーターの保守点検作業におけるこのような危険を点検作業者5に報知することができ、点検作業者5が安全に保守点検作業を実施できるようにすることができる。
【0021】
以下に、本実施例によるエレベーターの点検作業支援システムを用いたエレベーターの保守点検作業の一連の手順を、
図3と
図4を用いて説明する。なお、以下では、点検作業者5が乗かご上に乗り込んで保守点検作業を行う場合を例に挙げて説明する。本実施例によるエレベーターの点検作業支援システムは、これ以外の保守点検作業、例えば、巻上機の点検作業や昇降路の底部(ピット)での点検作業にも用いることができる。
【0022】
図3は、本実施例によるエレベーターの点検作業支援システムを用いた保守点検作業において、点検作業者5が乗場から乗かご上に乗り込んで、乗かご上での点検作業をするときの手順を示すフローチャートである。
【0023】
S1で、点検作業支援装置2の作業指示決定部15は、作業スケジュールに基づいて作業手順をコンテンツ格納部7から選定し、端末装置1の作業指示部4に送信する。作業指示部4は、送信された作業手順(作業指示)を出力部4aに表示する。点検作業者5は、出力部4aに表示された作業指示に従って作業を実施する。本実施例では、乗かご上での点検作業が作業指示であり、点検作業者5は、乗かご上に乗り込もうとする。
【0024】
S2で、端末装置1のエレベーター状態収集部9は、エレベーター制御部8からエレベーターの状態の情報を取得し、エレベーターの運転モードが低速モードになっているかを判定する。点検作業者5は、低速モードであれば安全に乗かご上に乗り込めるが、低速モードでなければ乗かご上に乗り込むのは危険である。エレベーターの運転モードが低速モードでなければS3に進み、低速モードであればS6に進む。
【0025】
S3で、作業指示部4は、点検作業者5が行っている保守点検作業に異常(危険)が検出されたので、この異常を点検作業者5に知らせるための注意情報を出力部4aに出力する。この注意情報は、点検作業者5が乗かご上に乗り込むのは危険であることを点検作業者5に知らせる通知である。出力部4aは、注意情報として、文字の表示を出力してもよいし、音や振動を出力してもよい。
【0026】
S4で、エレベーター状態収集部9は、エレベーター制御部8からエレベーターの状態の情報を取得し、任意の階床で乗場ドアのスイッチがオフになったかを判定する。乗場ドアのスイッチがオフになったということは、点検作業者5が乗場ドアを開けようとしていることを示す。乗場ドアのスイッチがオフになった場合はS5に進み、オフにならなければS2に戻る。
【0027】
S5で、作業指示部4は、点検作業者5が行っている保守点検作業に異常(危険)が検出されたので、この異常を点検作業者5に知らせるための警告情報を出力部4aに出力する。この警告情報は、点検作業者5が乗かご上に乗り込もうとして乗場ドアを開けるのは非常に危険であることを点検作業者5に知らせる通知である。出力部4aは、警告情報として、文字の表示を出力してもよいし、音や振動を出力してもよい。但し、警告情報は、文字の色、文字の点滅、音の大きさ、及び振動の大きさなどのうちの1つ以上を注意情報と異なるものとし、注意情報以上に強く危険を知らせるように出力する。
【0028】
S6は、S2でエレベーターの運転モードが低速モードであると判定された場合の処理である。S6で、エレベーター状態収集部9は、エレベーター制御部8からエレベーターの状態の情報を取得し、乗かごの停止階床を取得する。
【0029】
S7で、点検作業支援装置2の画像解析部13は、次に述べる方法で、映像カメラ10が撮影した映像から点検作業者5がいる位置(階床)を取得する。映像カメラ10は、エレベーターの乗場や建物の階段室などに設置されている階床表示を撮影する。画像解析部13は、映像カメラ10が撮影した映像の画像データが端末装置1の画像収集部11から送信され、この画像データの中から既存の画像処理技術を用いて数字を抽出し、抽出した数字が点検作業者5のいる階床を表すと判断する。
【0030】
端末装置1の出力部4aは、画像解析部13が点検作業者5のいる階床を表すと判断した数字を表示する。点検作業者5は、出力部4aが表示した数字を見て、画像解析部13が点検作業者5のいる階床を正しく判断したかを確認することができる。画像解析部13が点検作業者5のいる階床を正しく判断していない場合は、点検作業者5は、映像カメラ10で階床表示を撮影し、画像解析部13に点検作業者5のいる階床を正しく判断させることができる。また、画像解析部13が画像データの中から数字を抽出できない場合には、作業指示決定部15は、作業指示部4を介して出力部4aに、点検作業者5に映像カメラ10で階床表示を撮影するように促す指示を表示させて、画像解析部13が画像データの中から数字を抽出できるようにする。
【0031】
S8で、点検作業支援装置2の異常検出部14は、点検作業者5が安全な位置にいるか否かを判定する。本実施例では、異常検出部14は、S6でエレベーター状態収集部9が取得した乗かごの停止階床と、S7で画像解析部13が取得した点検作業者5のいる階床とを比較して、判定を行う。比較した結果、点検作業者5が安全な階床(位置)にいると判断した場合はS9に進み、安全でない階床(位置)にいると判断した場合はS3に進む。点検作業者5が安全な階床にいる場合とは、点検作業者5が乗かごの停止階床にいる、又は乗かごの停止階床より1階床上の階床にいる場合である。
【0032】
点検作業者5が安全でない階床にいる場合、すなわち、点検作業者5が乗かごの停止階床と乗かごの停止階床より1階床上の階床とのどちらにもいない場合には、点検作業者5は、乗かご上に乗り込もうとして乗場ドアを開けると、エレベーターの昇降路に転落する危険がある。このため、S3〜S5の処理を実施して注意情報や警告情報を出力することで、行おうとしている作業に危険があることを点検作業者5に知らせる。これらの注意情報や警告情報は、作業指示決定部15が作業指示部4を介して出力部4aに出力させる。
【0033】
S9は、S8で点検作業者5が安全な階床(位置)にいると判定された場合の処理である。点検作業者5は、乗場ドアを手動で開けて乗かご上に乗り込んで、乗かご上での点検作業を実施する。この際、点検作業者5は、点検作業を実施するために、乗かご上の制御箱に設置されているスイッチをオンにする。本実施例では、点検作業者5は、ドア止めスイッチ、運転スイッチ、及び停止スイッチをオンにする。端末装置1の点検結果データ入力部6は、点検作業者5から点検結果が入力されるまで待機する。なお、乗かご上での点検作業中は、点検作業者5が乗場ドアを閉めているため、乗場ドアのスイッチはオンになっている。
【0034】
図4は、本実施例によるエレベーターの点検作業支援システムを用いた保守点検作業において、点検作業者5が乗かご上から乗場に出るときの手順を示すフローチャートである。
【0035】
S10で、点検作業支援装置2の作業指示決定部15は、作業スケジュールに基づいて次の作業手順をコンテンツ格納部7から選定し、端末装置1の作業指示部4に送信する。作業指示部4は、送信された作業手順(作業指示)を出力部4aに表示する。点検作業者5は、出力部4aに表示された作業指示に従って作業を実施する。本実施例では、乗場で行う点検作業(例えば表示器の点検)が次の作業指示であり、点検作業者5は、次の点検作業を行うために乗かご上から乗場に出ようとする。
【0036】
S11で、端末装置1のエレベーター状態収集部9は、エレベーター制御部8からエレベーターの状態の情報を取得し、任意の階床で乗場ドアのスイッチがオフになったかを判定する。乗場ドアのスイッチがオフになったということは、点検作業者5が乗場に出るために乗場ドアを開けようとしていることを示す。乗場ドアのスイッチがオフになった場合は、S12に進む。点検作業者5は、S12の処理の開始前に、乗場ドアを開けて乗かご上から乗場に出る。但し、点検作業者5は、乗かご上に設置されているスイッチ(例えば、ドア止めスイッチ、運転スイッチ、及び停止スイッチ)をオフにしてから、乗場に出ることになっている。
【0037】
S12で、点検作業支援装置2の異常検出部14は、エレベーター制御部8からのエレベーターの状態の情報を用いて、乗かご上に設置されているドア止めスイッチがオフになっているか(ドア止めスイッチが通常状態に復帰しているか)を判定する。ドア止めスイッチは、オンになると乗場ドアが開かないようにするスイッチである。ドア止めスイッチがオフになっている場合はS17に進み、ドア止めスイッチがオフになっていない場合はS13に進む。
【0038】
S17で、点検作業支援装置2の異常検出部14は、エレベーター制御部8からのエレベーターの状態の情報を用いて、乗かご上に設置されている運転スイッチがオフになっているか(運転スイッチが通常状態に復帰しているか)を判定する。運転スイッチは、オンになると乗かご上でのみ乗かごを運転できるようにするスイッチである。運転スイッチがオフになっている場合はS18に進み、運転スイッチがオフになっていない場合はS13に進む。
【0039】
S18で、点検作業支援装置2の異常検出部14は、エレベーター制御部8からのエレベーターの状態の情報を用いて、乗かご上に設置されている停止スイッチがオフになっているか(停止スイッチが通常状態に復帰しているか)を判定する。停止スイッチは、オンになると乗かごが動かないようにするスイッチである。停止スイッチがオフになっている場合はS19に進み、停止スイッチがオフになっていない場合はS13に進む。
【0040】
S13は、S12でドア止めスイッチがオフになっていない場合と、S17で運転スイッチがオフになっていない場合と、S18で停止スイッチがオフになっていない場合に実行する処理である。
【0041】
S13で、点検作業支援装置2の画像解析部13は、次に述べる方法で、映像カメラ10が撮影した映像から点検作業者5のいる位置を取得する。本実施例では、乗場にいる点検作業者5が乗場ドアを手動で閉めるので、画像解析部13は、乗場ドアが閉まり始めたら点検作業者5が乗場にいると判断する。映像カメラ10は、乗場にいる点検作業者5が乗場ドアを手動で閉め、乗場ドアが閉まり始める様子を撮影する。画像解析部13は、映像カメラ10が撮影した映像の画像データが端末装置1の画像収集部11から送信され、この画像データの中から既存の画像処理技術を用いて乗場の開口部(乗場ドアが開くと形成される、乗かごの乗降口)を抽出し、この開口部の大きさが時間とともに小さくなっていくと乗場ドアが閉まり始めたと判断する。乗場ドアが閉まり始めたと判断した場合はS14に進み、乗場ドアが閉まり始めたと判断しなかった場合はS12に戻る。
【0042】
なお、点検作業では点検作業者5が手動で乗場ドアを開閉するので(すなわち、乗場ドアがモーターで動かされていないので)、エレベーター制御部8は、乗場ドアが閉まり始めたか否かを認識できない。このため、本実施例では、映像カメラ10が撮影した映像を用いて、乗場ドアが閉まり始めたか否かを判断する。映像カメラ10の映像を用いて判断することで、点検作業者5のいる位置を取得できるという利点もある。
【0043】
S14で、点検作業支援装置2の異常検出部14は、作業漏れがあることを検出する。本実施例では、異常検出部14は、S12、S17、又はS18で乗かご上のスイッチがオフになっていないと判定されており、S13で点検作業者5が乗場にいると判断されているので、点検作業者5がオフにしなかった乗かご上のスイッチがあるという作業漏れを検出する。異常検出部14が作業漏れを検出したら、作業指示部4は、注意情報を出力部4aに出力する。この注意情報は、乗かご上のスイッチにオフになっていないものがあること(すなわち、点検作業者5がオフにしなかった乗かご上のスイッチがあり、作業漏れという作業の異常になり得ること)を点検作業者5に知らせる通知である。出力部4aは、注意情報として、文字の表示を出力してもよいし、音や振動を出力してもよい。注意情報は、作業指示決定部15が作業指示部4を介して出力部4aに出力させる。
【0044】
S15で、エレベーター状態収集部9は、エレベーター制御部8からエレベーターの状態の情報を取得し、S11でオフになった乗場ドアのスイッチがオンになったかを判定する。この乗場ドアのスイッチがオンになったということは、乗場にいる点検作業者5が乗場ドアを完全に閉めたことを示す。乗場ドアのスイッチがオンになった場合はS16に進み、オンにならなければS12に戻る。
【0045】
S16で、異常検出部14は、作業漏れがあることを検出する。本実施例では、異常検出部14は、S12、S17、又はS18で乗かご上のスイッチがオフになっていないと判定されており、S13で点検作業者5が乗場にいると判断されており、S15で点検作業者5が乗場ドアを完全に閉めたと判断されているので、オフになっていない乗かご上のスイッチがあるのにもかかわらず点検作業者5が作業を終了しようとしており、点検作業者5がオフにするのを忘れている乗かご上のスイッチがあるという作業漏れを検出する。異常検出部14が作業漏れを検出したら、作業指示部4は、警告情報を出力部4aに出力する。この警告情報は、乗かご上のスイッチにオフになっていないものがあるのにもかかわらず乗場ドアが完全に閉まったこと(すなわち、点検作業者5がオフにしなかった乗かご上のスイッチがあり、作業漏れという作業の異常があること)を点検作業者5に知らせる通知である。出力部4aは、警告情報として、文字の表示を出力してもよいし、音や振動を出力してもよい。但し、警告情報は、文字の色、文字の点滅、音の大きさ、及び振動の大きさなどのうちの1つ以上を注意情報と異なるものとし、注意情報以上に強く作業漏れを知らせるように出力する。警告情報は、作業指示決定部15が作業指示部4を介して出力部4aに出力させる。
【0046】
S19は、S12でドア止めスイッチがオフになっており、S17で運転スイッチがオフになっており、かつS18で停止スイッチがオフになっている場合に実行する処理である。この場合には、乗かご上のスイッチは、全てオフになっており通常状態に復帰している。点検作業者5は、S10で出力部4aに表示された作業指示に従って、次の点検作業を実施する。端末装置1の点検結果データ入力部6は、点検作業者5から点検結果が入力されるまで待機する。
【0047】
以上の実施例では、点検作業者5が乗かご上に乗り込んで保守点検作業を行う場合を例に挙げて説明した。本実施例によるエレベーターの点検作業支援システムは、エレベーターの巻上機の点検作業や、昇降路の底部(ピット)での点検作業にも用いることができる。
【0048】
本実施例によるエレベーターの点検作業支援システムを巻上機の点検作業に用いる場合は、点検作業者5に保持された映像カメラ10が巻上機の映像を撮影し、画像解析部13が、画像情報格納部12に画像情報として予め格納されている巻上機の画像と既存の画像処理技術とを利用して、映像カメラ10が撮影した映像の画像データの中から巻上機の画像を抽出することで、点検作業者5がいる位置を取得する(点検作業者5が巻上機の付近にいることがわかる)。
【0049】
例えば、点検作業者5が巻上機を動かす作業を実施する場合に、異常検出部14は、エレベーター状態収集部9がエレベーター制御部8から取得したエレベーターの状態の情報から、巻上機が作動したことを把握する。そして、異常検出部14は、画像解析部13が抽出した画像中の巻上機の大きさが予め定めた大きさ以下である場合には、点検作業者5が作動している巻上機から離れた位置にいる、すなわち安全な位置にいると判定する。
【0050】
本実施例によるエレベーターの点検作業支援システムをピットでの点検作業に用いる場合は、点検作業者5に保持された映像カメラ10がピット内の映像を撮影し、画像解析部13が、画像情報格納部12に画像情報として予め格納されているピット内に存在する物体(例えば、緩衝器)の画像と既存の画像処理技術とを利用して、映像カメラ10が撮影した映像の画像データの中からピット内に存在する物体の画像を抽出することで、点検作業者5がいる位置を取得する(点検作業者5がピット内にいることがわかる)。
【0051】
例えば、点検作業者5が乗かごを昇降させる作業を実施する場合に、異常検出部14は、エレベーター状態収集部9がエレベーター制御部8から取得したエレベーターの状態の情報から、乗かごが昇降したことを把握する。そして、異常検出部14は、画像解析部13が抽出したピット内に存在する物体の画像から点検作業者5のピット内での位置を推定し、点検作業者5が乗かご又は乗かごに接続された錘の下方にいなければ、点検作業者5が安全な位置にいると判定する。なお、異常検出部14は、ピット内に存在する物体の配置についてのデータと乗かごと錘の位置についてのデータが予め入力されており、これらのデータと画像解析部13が抽出した画像中の物体の大きさとを用いて、点検作業者5のいる位置を推定し、点検作業者5が安全な位置にいるか否かを判定する。
【0052】
本発明によるエレベーターの点検作業支援装置と点検作業支援システムは、以上のようにして、点検作業中の危険と作業漏れを点検作業者5に報知することができ、点検作業者5に作業の異常を報知することが可能である。
【0053】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。