特許第6608846号(P6608846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6608846平鋼製品を処理するためのノズル装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608846
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】平鋼製品を処理するためのノズル装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 1/14 20060101AFI20191111BHJP
   C23C 8/26 20060101ALI20191111BHJP
   C21D 1/06 20060101ALI20191111BHJP
   B05B 1/06 20060101ALI20191111BHJP
   F27D 7/02 20060101ALI20191111BHJP
   C21D 9/56 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   B05B1/14
   C23C8/26
   C21D1/06 A
   B05B1/06
   F27D7/02 A
   C21D9/56 101Z
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-565269(P2016-565269)
(86)(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公表番号】特表2017-528302(P2017-528302A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】EP2015058818
(87)【国際公開番号】WO2015165799
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2018年4月18日
(31)【優先権主張番号】102014106135.7
(32)【優先日】2014年4月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510041496
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
(73)【特許権者】
【識別番号】501186597
【氏名又は名称】ティッセンクルップ アクチェンゲゼルシャフト
(73)【特許権者】
【識別番号】513213841
【氏名又は名称】ティッセンクルップ ラッセルシュタイン ゲー エム ベー ハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】アダムス,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】フルストラング,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ペーター,イェンス
【審査官】 塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−225620(JP,A)
【文献】 米国特許第04927359(US,A)
【文献】 特開2013−095963(JP,A)
【文献】 特開平02−070057(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/027900(WO,A2)
【文献】 特開平09−217162(JP,A)
【文献】 特開昭58−048656(JP,A)
【文献】 特開2005−256084(JP,A)
【文献】 特開2010−185101(JP,A)
【文献】 特開2004−217958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−3/18
7/00−9/08
C21D 1/02−1/84
9/52−9/66
C23C 2/00−2/40
8/00−12/02
F27D 7/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平鋼製品(3)の熱処理のために連続加熱炉において該平鋼製品(3)を窒化する方法であって、
前記連続加熱炉がノズル装置(10)を有し
該ノズル装置(10)が、外側チューブ(2)及び内側チューブ(1)を備え、
該内側チューブ(1)が、前記外側チューブ(2)の内部に配置され、
前記内側チューブ(1)が、当該ノズル装置(10)を通って流れるガスを前記外側チューブ(2)に供給するための一次開口(11)を備え、
前記外側チューブ(2)が、当該ノズル装置(10)から前記平鋼製品(3)の方向に流出する前記ガスのための二次開口(12)を備え、
前記一次開口(11)及び前記二次開口(12)が、前記ガスの流れる方向に沿って互いにずらされており、
当該ノズル装置(10)が、追加の外側チューブ(2')及び追加の内側チューブ(1')を備え、
該追加の内側チューブ(1')が前記追加の外側チューブ(2')の内部に配置され、
前記追加の内側チューブ(1')が、当該ノズル装置(10)を通って流れる前記ガスを前記追加の外側チューブ(2')に供給するための追加の一次開口(11')を備え、
前記追加の外側チューブ(2')が、当該ノズル装置(10)から前記平鋼製品(3)の方向に流出する前記ガスのための追加の二次開口(12')を備え、
前記追加の一次開口(11')及び前記追加の二次開口(12')が、前記ガスの流れる方向に沿って互いにずらされている方法
【請求項2】
前記一次開口(11)及び前記二次開口(12)が、前記ガスの流れる方向に沿って本質的に90°〜180°だけ互いにずらされる、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記一次開口(11)及び/又は前記二次開口(12)が、前記ガスの流れ方向(5)を方向付けるためのガス誘導システム(5)を備える、請求項1又は請求項2に記載の方法
【請求項4】
複数の一次開口(11)及び/又は複数の二次開口(12)を備える、請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法
【請求項5】
前記一次開口(11)が、前記二次開口(12)の領域に配置され、及び/又は、
前記内側チューブ(1)及び前記外側チューブ(2)が同軸に配置される、請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法
【請求項6】
前記二次開口(12)が、前記平鋼製品(3)を含む帯(33)に向けられ、前記二次開口(12)が、25cm未満、好ましくは15cm未満、特に好ましくは10cm未満だけ前記帯(33)から離間される、請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法
【請求項7】
前記二次開口(12)が、本質的に前記帯(33)の幅にわたって延在し、前記帯(33)の前記幅が、前記帯(33)の進行方向に対して本質的に垂直に沿って延びる、請求項6に記載の方法
【請求項8】
当該ノズル装置(10)を通って流れる前記ガスが、アンモニア並びに可能ならば窒素及び/又は不活性ガスを含む、請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法
【請求項9】
当該ノズル装置(10)が、アンモニア、窒素、及び/又は不活性ガスを混合するための固定されたミキサ(18)を備え、配管システム(14)が、前方の前記内側チューブ(1)及び前記追加の内側チューブ(1')に向けて前記ガスを誘導する、請求項1から請求項8のいずれかに記載の方法
【請求項10】
前記配管システム(14)が、前記固定されたミキサの下流に同一に又は対称に配置された複数の管路を含む、請求項9に記載の方法
【請求項11】
前記二次開口(12)を通って出る前記ガスが、前記平鋼製品(3)の第1の面を窒化し、前記追加の二次開口(12')から流出する前記ガスが、前記平鋼製品(3)の第2の面を窒化する、請求項1から請求項10のいずれかに記載の方法
【請求項12】
当該ノズル装置(10)が、アンモニア、窒素、及び/又は不活性ガスを前記固定されたミキサ(18)に供給するための供給管システム(13)を備え、
前記供給管システム(13)が、
前記個々のガス、及び/又は、
アンモニア、窒素、及び/又は前記不活性ガスから構成されるガス混合物の体積流量を測定及び/又は制御するためのそれぞれの手段(16、17)を備える、請求項9に記載の方法
【請求項13】
当該ノズル装置(10)が、前記平鋼製品(3)の熱処理のための連続加熱炉に配置される、請求項1から請求項12のいずれかに記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平鋼製品を処理するためのノズル装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなノズル装置は、平鋼製品に可能な限り接近してガスまたはガス混合物を供給し、これにより、平鋼製品に供給されるガスまたはガス混合物が、具体的には、平鋼製品(特に、その表面)を処理する(例えば、窒化また炭化する)ようにするために用意される。平鋼製品は、一般的には、熱処理目的で連続加熱炉内を搬送される帯の形態をとる。処理(例えば、窒化または炭化)は、好適には、この工程において前記平鋼製品の膨張能力に悪影響を及ぼすことなく、最終的に連続加熱炉から出る平鋼製品の強度の向上を可能にする。
【0003】
表面処理によってもたらされる平鋼製品の品質の改善は、ここでは、ノズル装置を通るガスの供給量およびガスの組成に決定的に依存する。決定的な要因は、ここでは、ガスまたはガス混合物によって可能な限り均一に平鋼製品を「ブラスト」するノズル装置の能力および表面処理(例えば、窒化)に関与する、平鋼製品の表面に到達するガスまたはガス混合物の割合の大きさである。ノズル装置が、出口開口を有するチューブであって、その端部からガスまたはガス混合物が流出するチューブを備えるのが通常の状況である。チューブの一方の端部への供給は、最終的に、出口開口に沿って望ましくない流れプロファイルの勾配をもたらす。
【0004】
平鋼製品に接触するガスまたはガス混合物の流れプロファイルを均一化するための成功している手段が、異なる寸法の大きさの開口を有する開口の配置の形態で従来技術の独国特許出願公開第102011056823号明細書に開示されている。開口の個々の大きさは、ここでは、出口領域における流れ方向に沿った潜在的な圧力降下を抑制するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011056823号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、平鋼製品の表面処理用の既存のノズル装置のさらなる改善をもたらすことである。ここでは、平鋼製品に空間的に均一に接触するガスの流れまたはガス混合物の流れを実現し、これにより、最終的に生産される平鋼製品の品質を向上させることが特に望ましい。
【0007】
本発明の目的は、平鋼製品を処理するためのノズル装置であって、該ノズル装置が、外側チューブおよび内側チューブを備え、該内側チューブが、外側チューブ内に配置され、内側チューブが、ノズル装置を通って流れるガスを外側チューブに供給するための一次開口を備え、外側チューブが、ノズル装置から平鋼製品の方向に流出するガスのための二次開口を備え、一次開口および二次開口が、ガスの流れる方向に沿って互いにずらされるノズル装置によって達成される。
【0008】
従来技術に対して、二次開口に対する一次開口のずらした配置は、空間的に均一に二次開口から流出して、平鋼製品を可能な限り均一に、好ましくはその全幅にわたって「ブラスト」するガスの流れを実現する。選択されたジオメトリにより、ガスまたはガス混合物がノズル装置におけるその滞留時間にわたって一様に流れることがもたらされるという事実がここでは特に利用される。そうでなければ(内側チューブおよび外側チューブを有する設計でない場合)、望ましくない勾配のある流速プロファイルが、ガスがノズル装置の一方の端部に供給されることに起因して出口開口に沿って形成される。加えて、従来技術に係るノズル装置の流出挙動は、ガスまたはガス混合物の異なる温度によって影響され、これにより、異なる流速が、出口開口に沿って発生する。本発明に係るノズル装置は、対照的に、出口開口の機能を果たす二次開口に沿って均一な流れプロファイルを実現する。
【0009】
ガスの流れる方向(direction of circulation)は、ここでは、本質的に内側チューブまたは外側チューブの外周によって決定される。詳細には、外側チューブまたは内側チューブの外周は、長手方向に対して垂直に延びる断面平面によって決定され、長手方向は、本質的に内側チューブおよび外側チューブの全体的な前進(general progression)によって規定される。詳細には、ノズル装置を通って流れるガスまたはガス混合物の流れ方向(本質的に一次開口までの)は、長手方向と平行に延び、次に、例えば約90°だけ方向転換される。一次開口および二次開口は、好ましくは、出口面であって、これを通って、ガスまたはガス混合物が、内側チューブから外側チューブに供給され、外側チューブから流出するときに案内される出口面を有する。内側チューブの出口面は、好ましくは、外側チューブよりも小さい。内側チューブの出口面が円形構成であり、外側チューブの出口開口がスリット状構成であることも実現される。詳細には、外側チューブは、8mmよりも小さい、好ましくは6mmよりも小さい、特に好ましくは4mmよりも小さいスリット幅を有するスリットを有する。
【0010】
本発明の好適な構成および開発は、図面を参照して従属請求項および説明から知られ得る。
【0011】
さらなる実施形態において、一次開口および二次ノズル開口が、ガスの流れる方向に沿って本質的に90°〜180°だけ互いにずらされることが実現される。このジオメトリ構成は、二次開口を通って出るガスの流速の特に均一なプロファイルの実現を可能にする。
【0012】
さらなる実施形態において、一次開口および/または二次開口が、ガスの流れ方向を方向付けるためのガス誘導システムを備えることが実現される。ガス誘導システムは、好ましくは、二次開口の一部であり、嘴状の構成を有し、ガスの流れの方向に向かって寄り集まる、出口スリットを形成する延在部を備える。このことは、ガスの流れが、具体的には帯の領域に向けられ得るまたは集中され得ることを意味する。
【0013】
さらなる実施形態において、ノズル装置が、複数の一次開口および/または複数の二次開口を備えることが実現される。ノズル装置は、好ましくは、複数の一次開口であって、内側チューブの互いに反対側の面に配置され、いずれの場合も流通の方向で見た場合に二次開口に対して例えば90°だけずらされる複数の一次開口を備える。一次開口(二次開口と平行に延在する領域内の)が、互いに規則正しく、好ましくは等間隔に配置されるのが好ましい状況である。詳細には、一次開口は、二次開口に対して適切な位置に配置される。例えば、一次開口は、内側チューブの第1の中心点に関して対称に分布され、前記第1の中心点は、二次開口の第2の中心点と同じ、チューブの長手方向範囲に対して垂直に延びる平面に配置される。好ましくは、二次開口よりも多い一次開口が存在する。詳細には、常に内側チューブの長手方向範囲に沿って対をなして配置され、かつ互いに反対側に配置される偶数の一次開口、好ましくは、4つの一次開口が存在する(その場合、それらはそれぞれ、いずれの場合も流通の方向で見た場合に二次開口に対して例えば90°だけずらされる)。二次開口によって決定される領域内に様々な一次開口を集める設計は、好適には、二次開口に沿った流速プロファイルをさらに改善し得る。
【0014】
さらなる実施形態において、一次開口が二次開口の領域に配置されることおよび/または内側チューブおよび外側チューブが同軸に配置されることが実現される。このようにして、好適には、ガスまたはガス混合物の可能な限りすべての割合が、ノズル装置において同じ経路を含むことが保証され得る。このことは、最終的に、二次開口に沿った流速のプロファイルに良い効果を有する。
【0015】
さらなる実施形態において、二次開口が、平鋼製品を含む帯に向けられ、二次開口が、25cm未満、好ましくは15cm未満、特に好ましくは10cm未満だけ帯から離間されることが実現される。詳細には、帯は、進行方向に沿ってノズル装置を通り過ぎ、二次開口(好ましくは、そのガス誘導システムを有する)は、流出するガスまたはガス混合物が帯に対して本質的に垂直に延びる流れ方向を有するように配置される。距離の低減は、好適には、平鋼製品の表面に到達するガスの割合の増加を可能にし、これにより、所望の表面処理(例えば、窒化または炭化)を保証する。例えば窒化または炭化に関してこの割合が大きければ大きいほど、強度は高くなる。なお、このとき、生産される平鋼製品の膨張能力は大幅には損なわれない。詳細には、この結果、強度の損失のリスクなしに平鋼製品の厚さを低減することが可能である。したがって、最終的に、平鋼製品から生産される製品の生産に使用される材料の量を低減することが可能である。
【0016】
さらなる実施形態において、二次開口が、本質的に帯の幅にわたって延在し、帯の幅が、帯の進行方向に対して本質的に垂直に沿って延びることが実現される。空間的に均一な流れプロファイルは、生産される平鋼製品がその幅に沿って可能な限り一様に表面処理されることを保証することを可能にする。このことは、好適には、生産された平鋼製品の幅に沿って強度の変動がある状況を回避する。
【0017】
さらに好ましい実施形態において、ノズル装置を通って流れるガスが、アンモニアならびに可能ならば窒素および/または不活性ガスを含むことが実現される。窒素および/または不活性ガスの使用は、好適には、ガスのパルスを増大させ、これにより、帯によって伴われる境界層に浸透することができ、アンモニアと帯(すなわち、平鋼製品)との直接反応が可能となる。
【0018】
さらなる実施形態において、ノズル装置が、アンモニア、窒素および/または不活性ガスとを混合するための固定されたミキサを備え、配管システムが、前方の内側チューブに向けてガスを誘導することが実現される。このことは、直截的な複雑でない方法で二次開口の全幅にわたって一定の均一なガス混合物を実現することを可能にする。
【0019】
さらなる実施形態において、配管システムが、追加の内側チューブにガスを供給し、追加の内側チューブが、追加の外側チューブにガスを誘導するための追加の一次開口を備え、追加の外側チューブが、追加の内側チューブを少なくとも部分的に収容し、外側チューブが、ノズル装置から平鋼製品の方向に流出するガスのための追加の二次開口を備えることが実現される。ここでは、帯が、追加の二次開口が帯の経路の異なる位置に配置されるように例えば方向転換ローラを通って搬送されることが考えられる。
【0020】
さらなる実施形態において、二次開口を通って出るガスが、平鋼製品の第1の面を窒化し、追加の二次開口から流出するガスが、平鋼製品の第2の面を窒化することが実現される。このように、平鋼製品は、好適には両方の面において表面処理されてもよい。
【0021】
さらなる実施形態において、ノズル装置が、アンモニア、窒素、および/または不活性ガスを固定されたミキサに供給するための供給管システムを備え、供給管システムが、個々のガスならびに/またはアンモニア、窒素、および/もしくは不活性ガスから構成されるガス混合物の体積流量を測定および/または制御するためのそれぞれの手段を備えることが実現される。測定手段および制御手段の助けを借りて、好適には、ガスまたはガス混合物の量および/または組成を制御し、これを、成功する窒化に最適な要求に適合させることが可能である。
【0022】
さらなる実施形態において、ノズル装置が、鋼製品の熱処理のための連続加熱炉に配置されることが実現される。
【0023】
本発明は、鋼製品の熱処理のための連続加熱炉における鋼帯の表面処理のための方法であって、加熱炉が、本発明に係るノズル装置を有する方法にさらに関する。このようなノズル装置は、従来技術から知られるものよりも効果的な表面処理を受ける平鋼製品の実現を可能にする。
【0024】
本発明のさらなる実施形態において、第1のステップにおいて、ガスが、内側チューブに供給され、第2のステップにおいて、ガスが、一次開口を通って外側チューブに誘導され、第3のステップにおいて、ガスが、二次開口を通ってノズル装置の外側チューブから流出して、平鋼製品を窒化する処理ことが実現される。このようにして、好適には、例えば窒化または炭化の効果および結果的な強度の向上がより薄い平鋼製品の生産を可能にする方法を提供することが可能である。使用される材料の量の結果的な低減は、好ましくは、平鋼製品からの製品の大量生産において大幅な生産コストの節約をもたらす。
【0025】
本発明のさらなる詳細、特徴、および利点は、図面および図面を参照する、好ましい実施形態の以下の説明から得られ得る。図面は、ここでは、本発明の概念を限定しない、本発明の例示的な実施形態を示しているに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の例示的な実施形態に係るノズル装置を示している。
図2】本発明の第2の例示的な実施形態に係るノズル装置の斜視図を示している。
図3】本発明の第2の例示的な実施形態に係るノズル装置の2つの異なる平面図を示している。
図4】本発明の第2の例示的な実施形態に係るノズル装置の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
同じ部分には、様々な図において同じ参照符号が常に与えられ、したがって、概して、同じ部分のそれぞれもやはり、一度しか参照または言及されない。
【0028】
図1は、本発明の第1の例示的な実施形態に係る、平鋼製品3の処理または表面処理のためのノズル装置10を示している。このようなノズル装置10は、好ましくは、連続加熱炉であって、これを通って平鋼製品が帯33の形態で、すなわち、鋼帯の形態で運ばれる連続加熱炉の一部をなす構成部分である。連続加熱炉では、材料改善目的で、平鋼製品は、熱処理であって、ガスまたはガス混合物が(例えば窒化目的で)平鋼製品に供給される熱処理を受ける。例えば、少なくとも平鋼製品の再結晶温度が、連続加熱炉内に行き渡る。その例えば窒化または炭化は、平鋼製品の強度の向上を、その膨張能力に相当程度の影響を与えることなく可能にする。完成製品によって満たされるべき強度関連の要求が同じままの場合、より薄い平鋼製品3を実現することが可能である。このとき、使用される材料の量の結果的な低減は、大幅なコストの節約をもたらし得る。
【0029】
表面処理(例えば、窒化または炭化)によって品質を改善する際の決定的な要因は、ガスが平鋼製品33に供給される方法であって、ガス供給量が本質的にノズル装置10によって決定される方法である。ノズル装置10に関して、ここでは、表面処理(例えば、窒化)目的でノズル装置10を通って誘導されるガスが最初にノズル装置10の内側チューブ1に供給されることが実現される。ガスは、内側チューブ1の一次開口11を介して内側チューブ1から出て行き、少なくとも部分的に内側チューブ1を収容する外側チューブ2に供給される。次に、そこから、ガスは、二次開口12を介してノズル装置10から出て行く。一次開口11および二次開口12は、ここでは、流通の方向(本質的に内側チューブ1および外側チューブ2の(断面に沿って延びる)外周によって決定される)に沿って互いにずらされる。詳細には、一次開口11は、二次開口12に対して例えば90°だけずらされる。好ましくは、ここでは、一次開口11および二次開口12がノズル装置10の接続領域に配置されることが実現される。詳細には、二次開口12は、少なくとも部分的に一次開口11を収容する、外側チューブ2の部分に配置される。ここでは、二次開口12が帯33(すなわち、平鋼製品)に向けられることも実現される。一次開口11および二次開口12の互いの配置は、好適には、(内側チューブ1が存在しない場合に予想されるように)ガスが二次開口12(出口開口としての役割を果たす)から非対称に流れ出て、ガスが二次開口12に沿っておよび帯33の幅にわたって異なる温度を有し、結局のところ二次開口12からの出口速度が異なる状況を防止する。その代わりに、内側チューブ1の一次開口11および外側チューブ2の二次開口12を有するノズル装置10は、二次開口12および帯33の幅にわたって均一な(すなわち、一様かつ均等な)、ガスの出口挙動の実現を可能にする。このように、ノズル装置10から平鋼製品3へのガスの供給が改善される。二次開口12の幅が少なくとも帯33と同程度であることも実現される。二次開口12は、ここでは、その最も長い面が帯33の搬送方向に対して本質的に垂直に延びるように帯に向けられる。
【0030】
ここでは、二次開口12がガス誘導システム5を備えることも実現される。ガス誘導システム5は、ここでは、二次開口12から流出するガスまたはガス混合物を方向付け、これにより、ノズル装置10から流れ出るガスを特定の方法で平鋼製品に当てる役割を果たす。ガス誘導システム5は、好ましくは、互いに向かって延びて嘴状の開口を形成する、外側チューブ2の2つの領域を有する。互いに向かって延びる、外側チューブの2つの領域間のスリットが、ここでは二次開口12を形成する。内側チューブ1および外側チューブ2に加えて、本質的に同一の、追加の一次開口11’を有する追加の内側チューブ1’および同様に本質的に同一の、追加の二次開口12’を有する追加の外側チューブ2’もまた実現される。追加の二次開口12’および追加の一次開口11’から構成されるこの第2の配置の助けを借りて、好適には、例えば、二次開口12から流出するガスによって平鋼製品の第1の面を窒化し、同様に、追加の二次開口12’を通って出るガスによって平鋼製品の第2の面を窒化し、この結果として、好適には、平鋼製品の両方の面が、例えば窒化されることが可能である。このような両方の面の窒化の場合、平鋼製品は、好ましくは方向転換ローラ31を通って案内され、その場合、追加の二次開口12’および二次開口12は、平鋼製品の搬送方向に沿って空間的に分離される。
【0031】
ここでは、ガスが管システム14を介して静的ミキサ18から内側チューブ1および/または追加の内側チューブ1’に供給されることも実現される。平鋼製品を窒化するためのアンモニアが、好ましくは、静的ミキサ18において、窒素および/または不活性ガスから作られたガス混合物と混合される。窒素および不活性ガスの添加は、帯表面によって伴われる境界層に結果として浸透し得るより大きなガスのパルスを確保することによって窒化を改善する。このことは、平鋼製品とアンモニアとの間の即時反応の実現を可能にし、結局のところ、より効果的な窒化をもたらし、したがって、窒化された平鋼製品の品質をさらに改善する。
【0032】
ここでは、アンモニア、窒素、および/または不活性ガスが供給管システム13を介して静的ミキサ18に供給されることも実現される。不活性ガスは、好ましくは、水素/窒素の混合物を含む。特に制御されたガスの供給に関して、ここでは、貫流が、体積流量を測定するための手段17または流量計によって監視されることが実現される。詳細には、ノズル装置10は、静的ミキサに供給される各ガスの体積流量および量を制御するための手段も備える。例えば、このような手段は、供給管システム13に組み込まれる弁16である。このように、二次開口12または追加の二次開口12’における物質組成が、好適には直截的かつ直接的な方法でそれぞれの窒化工程にとって望ましい組成量または計測量に適合されることが可能である。ここでは、ノズル装置10が第1のリザーバ21(例えば、アンモニア用の)および第2のリザーバ22(例えば、窒素用の)からガスを得ることが実現される。図示の両方のノズル装置を通る同一の体積流量を確保するために、管路は、静的ミキサの下流において同一に/対称に置かれる。したがって、2つの枝路における圧力損失は同一であり、これにより、帯の両方の面に対して同一のパルスが達成される。代替例として、同一のパルスを達成するために調整装置(図示せず)を取り付けることも可能である。
【0033】
図2は、本発明の第2の例示的な実施形態に係るノズル装置10の斜視図を示している。図の左側の部分に見ることができるのが、本質的に外側チューブ2であり、一方、右側では、外側チューブ2は、図において外側チューブ2内に内側チューブ1を見ることが可能なように透視状態で示されている。好ましくは、内側チューブ1および外側チューブ2が同軸に配置されることが実現される。しかしながら、代替的な実施形態において、内側チューブ1が、外側チューブ2内で中心軸線Bからずらされることも考えられる。例えば、内側チューブ1は、外側チューブ2内の、二次開口12の反対側に位置する領域に配置されてもよい。一次開口11を有する内側チューブ1および二次開口12を有する外側チューブ2が、管システム14(この一方の端部にはガスまたはガス混合物が供給される)の端部に配置されることも実現される。ガスは、ここでは、例えば、内側チューブ1の互いに反対側の領域に対をなして配置された4つの一次開口(さらには、好ましくは対称に配置された一次開口(図示せず))を介して内側チューブ1から出て行く。一次開口11の対は、ここでは、いずれの場合も流通の方向で見た場合に二次開口12に対して例えば90°だけずらされる。一次開口11の出口面の合計(または全体としてのその出口面)が、二次開口12の出口面より小さいことも実現される。出口面は、ガスが内側チューブ1から外側チューブ2に通って供給される面またはガスがノズル装置10から通って出て行く面であると理解されるべきである。ガスまたはガス混合物の流れ方向が、ガス誘導システム5の助けを借りて特定の方法で平鋼製品に向けられることも実現される。この目的のために、ガス誘導システム5は、好ましくは、外側チューブ2の2つの延在部23を有し、前記延在部間の距離は、二次開口2から流出するガスの流れ方向Aと平行に延びる方向に沿って次第に小さくなる。ここでは、延在部23が直線状または曲線状であることが可能である。
【0034】
図3は、本発明の第2の例示的な実施形態に係るノズル装置10の2つの異なる平面図を示している。平面図において、図の上の方の部分は、一次開口11の出口面を示しており、図の下の方の部分は、二次開口12を示している。複数の一次開口11(または1つの一次開口11)は、好ましくは、二次開口の中央に置かれる(外側チューブおよび内側チューブによって決定される長手方向に関して見た場合に)。二次開口12の中心点のここでの(長手方向に対して垂直に延びる方向で見た場合の)投影は、2つの一次開口11間の中心に配置される、内側チューブ12の領域と本質的に一致する。長手方向に沿った2つの一次開口11間の距離が、長手方向に沿った二次開口12の範囲よりも小さいことも実現される。詳細には、ガス誘導システム5は、二次開口12の全範囲にわたって延びる。ガスまたはガス混合物の流れ方向が、一次開口11および二次開口12の配置の結果として本質的に例えば90°だけ方向転換されることも実現される。
【0035】
図4は、本発明の第2の例示的な実施形態に係るノズル装置10の断面を示している。ここでは、二次開口12が、2つの仮想平面24であって、それぞれ少なくとも1つの一次開口11を含む2つの仮想平面24間に配置されることが実現される。二次開口12は、好ましくは、これらの2つの仮想平面間の中央に配置される。二次開口12のスリット幅25が、互いに向かって延びる、ガス誘導システム5の延在部23によって決定されることも実現される。スリット幅25は、好ましくは、長手方向に対して垂直に延びる方向に沿った内側チューブ1の範囲よりも小さい。詳細には、スリット幅25は、8mmよりも小さく、好ましくは6mmよりも小さく、特に好ましくは4mmよりも小さい。ガス誘導システム5の延在部23が、好ましくは、少なくとも部分的に外側チューブ2と同じ材料から生産されることも実現される。例えば、内側チューブ1が、外側チューブ2によって画成される設置空間の45%未満、好ましくは40%未満、特に好ましくは35%未満を占めるその断面(長手方向に対して垂直に延びる方向に沿った)を有することが実現される。例えば、外側チューブ2の内径が300mm未満、好ましくは280mm未満、特に好ましくは260mm未満であることおよび内側チューブ1の内径が100mm未満、好ましくは90mm未満であることが実現される。
【符号の説明】
【0036】
1 内側チューブ
1’ 追加の内側チューブ
2 外側チューブ
2’ 追加の外側チューブ
3 平鋼製品
5 ガス誘導システム
10 ノズル装置
11 一次開口
11’ 追加の一次開口
12 二次開口
12’ 追加の二次開口
13 供給管システム
14 配管システム
16 弁
17 体積流量を測定するための手段
18 固定されたミキサ
21 第1のリザーバ
22 第2のリザーバ
23 延在部
24 仮想平面
25 スリット幅
31 方向転換ローラ
33 帯/平鋼製品
A 流れ方向
B 中心軸線
図1
図2
図3
図4