【実施例】
【0033】
実施例1
7−(アゼチジン−1−イル)−3−メチル−1−(1−メチル−5−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン
【化2】
(a)5−クロロ−1−メチル−4−ニトロ−1H−ピラゾール
THF中のビス(トリメチルシリル)アミドリチウム(1.0M、65mL、65mmol)を25℃で1−メチル−4−ニトロ−1H−ピラゾール(5.50g、43.3mmol)およびヘキサクロロエタン(10.54g、44.5mmol)の塩化メチレン(120mL)中溶液に滴下する。該反応混合物を25℃で60分間撹拌し、次に、水(1mL)でクエンチする。該混合物を蒸発乾固させる。残留物を水(50mL)、飽和NaHCO
3で2回(2×30mL)およびブライン(30mL)で連続的に洗浄し、次に、真空乾燥させて、生成物6.50g(収率93%)を得る。MS (ESI) m/z 162.0 [M+H]
+。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.15 (s, 1H), 3.92 (s, 3H)。
【0034】
(b)5−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−アミン・塩酸塩
5−クロロ−1−メチル−4−ニトロ−1H−ピラゾール(6.50g、40.2mmol)の12N HCl(15mL)およびエタノール(15mL)中懸濁液に塩化スズ(II)(35.5g、160.9mmol)を添加する。反応が完了するまで該反応混合物を90℃で撹拌する。該反応混合物を蒸発乾固させる。残留物を12N HCl(25mL)で処理し、次に、5℃で2時間冷却する。濾過後、濾過ケーキを6N HCl(2×25mL)で洗浄し、次に、真空乾燥させて、生成物6.08g(収率:90%)を得る。MS (ESI) 132.0 [M+H]
+。
1H NMR (500 MHz, CD
3OD) δ 7.66 (s, 1H), 3.89 (s, 3H)。
【0035】
(c)5−クロロ−4−ヒドラジニル−1−メチル−1H−ピラゾール・塩酸塩
0℃で、5−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−アミン・塩酸塩(6.08g、36.2mmol)のHCl(12N、35mL)中撹拌溶液に水性NaNO
2(5.50g、80.0mmol)を添加する。該反応混合物を0℃で45分間撹拌し、次に、塩化スズ(II)(22.8g、120mmol)を添加する。添加完了後、該反応混合物を0℃で30分間撹拌し、次に、室温で一夜撹拌する。得られた混合物を氷浴にて2時間冷却し、次に、濾過する。濾過ケーキをHCl(12N、20mL)で洗浄し、次に、真空乾燥させて、粗生成物7.77g(収率:98%)を得、さらなる精製を行わずに次反応で使用する。MS (ESI) m/z 147.0 [M+H]
+。
【0036】
(d)5−ブロモ−4−クロロ−6−(1−エトキシビニル)ピリミジン
5−ブロモ−4,6−ジクロロピリミジン(5.00g、21.9mmol)およびトリブチル(1−エトキシビニル)スタンナン(7.92g、21.9mmol)のDMF(20mL)中懸濁液をアルゴンで脱気し、次に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.27mg、1.10mmol)を添加する。該懸濁液を再度脱気し、次に、アルゴン下にて110℃で8時間加熱する。溶媒を減圧除去した後、残留物を、30分間にわたってヘキサン中0〜40%酢酸エチル勾配液で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、生成物2.72g(収率:47%)。MS (ESI) m/z 263.0 [M+H]
+。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.85 (s, 1H), 4.71 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 4.60 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 3.98 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 2.67 (s, 0H), 1.42 (t, J = 7.0 Hz, 3H)。
【0037】
(e)5−ブロモ−4−クロロ−6−(1−(2−(5−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ヒドラゾノ)エチル)ピリミジン
5−ブロモ−4−クロロ−6−(1−エトキシビニル)ピリミジン(1.60g、6.07mmol)および5−クロロ−4−ヒドラジニル−1−メチル−1H−ピラゾール・塩酸塩(3.11g、12.1mmol)の酢酸(32mL)中懸濁液を60℃で6時間撹拌する。溶媒を減圧除去した後、残留物を飽和NaHCO
3(40mL)で処理し、次に、酢酸エチル(3×100mL)で抽出する。合わせた有機相をブライン(70mL)で洗浄し、次に、蒸発乾固させる。残留物を真空乾燥させて、粗生成物1.0g(収率:45%)を得、さらなる精製を行わずに次工程で使用する。MS (ESI) m/z 362.9 [M+H]
+。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.79 (s, 1H), 7.66 (s, 1H), 7.05 (s, 1H), 3.83 (s, 3H), 2.32 (s, 3H)。
【0038】
(f)7−クロロ−1−(5−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3−メチル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン
密閉管中の5−ブロモ−4−クロロ−6−(1−(2−(5−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)ヒドラゾノ)エチル)ピリミジン(334mg、0.92mmol)、1,10−フェナントロリン(497mg、2.76mmol)およびK
2CO
3(127mg、0.92mmol)のトルエン(4mL)中混合物を100℃で1.5時間加熱する。室温に冷却した後、該反応混合物をトルエン(3mL)で希釈し、次に、濾過する。固体をトルエンで2回(2×3mL)洗浄する。合わせた濾液を飽和FeSO
4・7H
2Oで3回(3×4mL)洗浄し、次に、蒸発乾固させる。得られた残留物をさらに真空乾燥させて、粗生成物147mg(収率:57%)を得、さらなる精製を行わずに次工程で使用する。MS (ESI) m/z 283.0 [M+H]
+。
【0039】
(g)7−(アゼチジン−1−イル)−1−(5−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3−メチル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン
密閉管中の7−クロロ−1−(5−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3−メチル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン(147mg、0.52mmol)、アゼチジン・塩酸塩(64mg、0.68mmol)およびEt
3N(105mg、1.04mmol)のトルエン(1.5mL)中混合物を室温で、反応が完了するまで撹拌する。該混合物を2N NaOH(18mL)中に注ぎ、次に、CH
2Cl
2で3回(3×25mL)抽出する。合わせた有機相をブライン(20mL)で洗浄し、次に、蒸発乾固させる。得られた残留物をさらに真空乾燥させて粗生成物181gを得、さらなる精製を行わずに次工程で使用する。MS (ESI) 304.1 [M+H]
+。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.51 (s, 1H), 7.66 (s, 1H), 3.95 (s, 3H), 3.87 (t, J = 7.8 Hz, 4H), 2.61 (s, 3H), 2.33-2.25 (m, 2H)。
【0040】
(h)7−(アゼチジン−1−イル)−3−メチル−1−(1−メチル−5−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−ピラゾール−4−イル)−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン
7−(アゼチジン−1−イル)−1−(5−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3−メチル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン(58mg、0.19mmol)、4−(トリフルオロメチル)−フェニルボロン酸(51mg、0.27mmol)およびリン酸三カリウム(92mg、0.43mmol)のエタノール(0.70mL)および水(0.080mL)中懸濁液をアルゴン下にて70℃で10分間加熱し、次に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(19mg、0.017mmol)を添加する。該懸濁液を再度脱気し、次に、マイクロ波にて130℃で2時間加熱する。さらなるテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(9mg、0.0079mmol)を添加する。該混合物をマイクロ波にて140℃で7時間加熱する。溶媒を除去した後、残留物を、16分間にわたって0.1%ギ酸含有水中0〜33%アセトニトリル勾配液を用いて半分取HPLCで精製して、最終生成物12mgをオフホワイト色の固体として得る(HPLC純度:98%;収率:15%)。MS (ESI) m/z 414.2 [M+H]
+。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.43 (s, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.63 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.50 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 3.96 (s, 3H), 3.81 (t, J = 7.8 Hz, 4H), 2.59 (s, 3H), 2.32-2.21 (m, 2H)。
【0041】
実施例2
7−(アゼチジン−1−イル)−1−(5−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3−メチル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン
【化3】
最終工程で4−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸およびK
3PO
4の代わりにそれぞれ4−メトキシ−2−メチルフェニルボロン酸およびK
2CO
3を添加する、実施例1の合成に記載の手順に従う類似の方法で標記化合物を製造する。最終生成物をオフホワイト色の固体として得る(HPLC純度:99%;収率:32%)。MS (ESI) m/z 390.2 [M+H]
+。
1H NMR (500 MHz, CDCl
3) δ 8.37 (s, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.06 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.68 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.64 (dd, J = 8.5, 2.6 Hz, 1H), 4.04-3.82 (m, 4H), 3.74 (s, 3H), 3.71 (s, 3H), 2.55 (s, 3H), 2.35-2.26 (m, 2H), 2.08 (s, 3H)。
【0042】
実施例3
7−(アゼチジン−1−イル)−1−(5−(4−シクロプロピルフェニル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3−メチル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン
【化4】
最終工程で4−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸およびK
3PO
4の代わりにそれぞれシクロプロピルフェニル−ボロン酸およびNa
2CO
3を添加する、実施例1の合成に記載の手順に従う類似の方法で標記化合物を製造する。MS (ESI) m/z 386.2 [M+H]
+。
【0043】
実施例4
7−(アゼチジン−1−イル)−1−(5−(4−エチルフェニル)−1−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−3−メチル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン
【化5】
最終工程で4−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸およびK
3PO
4の代わりにそれぞれ4−エチルフェニル−ボロン酸およびCs
2CO
3を添加する、実施例1の合成に記載の手順に従う類似の方法で標記化合物を製造する。MS (ESI) m/z 374.2 [M+H]
+。
【0044】
実施例5
インビトロでのPDE2阻害の測定
r−hPDE2A(Accession No. NM_002599, Homo sapiens phosphodiesterase 2A, cGMP-stimulated, transcript variant 1): 該遺伝子の組換えcDNAコピーを有する哺乳動物発現クローニングベクターをOrigeneから購入する。HEK293細胞の一過性形質転換によりタンパク質を発現させる。形質転換から48時間後に細胞を収集し、TBSバッファー(50mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaCl)で1回洗浄し、次に、冷ホモジナイゼーションバッファー(50mM Tris−HCl、pH7.5、5mM MgCl
2、1Xプロテアーゼインヒビターカクテル)中にて超音波処理によって溶解する。該ホモジネートを4℃にて15,000gで30分間遠心分離して、可溶性細胞質画分を得る。標準としてウシ血清アルブミンを用い、BCA Protein Assay Kit(Pierce)を用いて、該細胞質ゾルのタンパク質濃度を測定する。
【0045】
アッセイ: 基質としてFL−cAMPを用いて、PDE2Aをアッセイする。まず、酵素滴定を行って、PDEの作業濃度を測定する。阻害剤の不在下で100ΔmPの活性をもたらす酵素の濃度は、PDEの適切な作業濃度であると思われる。
【0046】
滴定曲線に従って標準反応バッファー(10mM Tris−HCl pH7.2、10mM MgCl
2、0.1%BSA、0.05%NaN
3)でPDE酵素を希釈する。PDE2アッセイについては、該反応バッファーに1μM cGMPを加えて、酵素を十分に活性化する。希釈した酵素溶液99μlを平底96ウェルポリスチレンプレートの各ウェルに添加し、次に、100%DMSOに溶解した試験化合物約1μlを添加する。該混合物を酵素と混合し、室温で10分間、プレインキュベートする。
【0047】
基質(最終45nM)を添加することによりFL−cNMP転換反応を開始する。384ウェルマイクロタイタープレート中で酵素と阻害剤との混合物(16μl)および基質溶液(0.225μM、4μl)を合わせる。該反応を暗所にて室温で15分間インキュベートする。384ウェルプレートの各ウェルに結合試薬(消泡剤の1:1800希釈液を加えた結合バッファーによるIMAPビーズの1:400希釈液)60μlを添加することにより、該反応を停止させる。該プレートを室温で1時間インキュベートして、IMAP結合を完了させ、次に、Envisionマルチモードマイクロプレートリーダー(PerkinElmer, Shelton, CT)内に置いて、蛍光偏光(Δmp)を測定する。
【0048】
Δmpの低下として測定されるcAMP濃度の低下は、PDE活性の阻害を意味している。0.00037nM〜80,000nMの範囲の8〜16種類の濃度の化合物の存在下にて酵素活性を測定し、次に、薬物濃度対ΔmPをプロットすることによってIC
50値を測定する。試験ウェル値を同一プレートで行われたコントロール反応に対して正規化する(コントロールの%に変換した値)。4パラメーター・ワンサイト用量反応モデル(XLFit;IDBS, Cambridge, MA)に適合した非線形回帰ソフトウェアを使用して、IC
50値を推定する。曲線の底をコントロールの0%に定める。
【0049】
品質管理: 阻害剤のIC
50を測定するために、100〜200ミリ偏光単位の最適なシグナル範囲を提供する酵素濃度を選ぶ。各サンプルウェルの総蛍光強度を測定して、平均および標準偏差を算出する。いずれかのサンプルウェルの総蛍光強度が平均値±3SDの範囲内にない場合には、その特定のウェルのmp値を廃棄する。
【0050】
上記のIMAP手順またはそれと同様の手順を使用して、本発明者らは、私有のPDEに焦点を合わせた化合物ライブラリーをスクリーニングして、ナノモルPDE2阻害活性を有する新規化合物を同定した。例示された本発明の化合物(例えば、実施例1〜4の化合物)が試験され、例えば以下のとおり、ナノモル濃度で活性であることが示されている:実施例1:IC
50 23.1nM;実施例2:IC
50 92nM;実施例3:IC
50 9.5nM;実施例4:IC
50 18.5nM。これらの化合物は、PDE2に対して、より選択的である;実施例4の化合物が試験され、PDE1、PDE3、PDE4D、PDE5、PDE6、PDE7B、PDE8A、PDE9A、PDE10AおよびPDE11AよりもPDE2に対して20倍以上選択的であることが示されている。
【0051】
実施例6
マウスにおける薬物動態試験
マウスに試験されるべき化合物を単回経口投与し(10mg/kg、PO)、Zhao et al., J. Chromatogr. B. Analyt. Technol. Biomed. Life Sci. (2005) 819(1):73-80およびAppels, N.M., et al., Rapid Commun. Mass Spec. 2005. 19(15):p.2187-92に記載の方法と類似の方法を用い、HPLCおよびLC−MSを用いて血漿および脳の利用能を測定する(0.25〜4時間)。該実験は、
図1に示されるように実施例1の化合物が優れた脳アクセスを有することを示している。
【0052】
実施例7
物体認識課題(object recognition task)におけるウィスターラットの記憶成績に対するPDE2阻害剤による処置の効果
物体認識課題である認知の動物モデルにおいて実施例1の化合物の記憶増強効果を試験する。Ennaceur, A., Delacour, J., 1988. A new one-trial test for neurobiological studies of memory in rats. 1: Behavioral data. Behav. Brain Res. 31, 47-59を参照。ラットは、1時間後に試験した時に、前の試行でどの物体を探索したかを覚えている。しかしながら、24時間の試験間隔を用いた場合、ラットは、最初の試行でどの物体が提示されたかを覚えていられない。実施例1の化合物は、最初の試行の2時間前に投与された場合、この時間誘発性物体記憶欠損を弱めるかどうかを試験する。2〜3か月齢の雄性ウィスターラットに化合物を投与する。
【0053】
0、0.3、1、3および10mg/kgの用量で、学習の2時間前に実施例1の化合物を経口注入する(2ml/kg)。これらの試験用量のどれも探索行動に対して影響を及ぼさない。本研究は、実施例1の化合物が1.0mg/kgの用量で時間依存性忘却を完全に予防できることを示している。0.3および3.0mg/kgで中間記憶改善が見られる。
【0054】
実施例8
海馬細胞および脳におけるcGMPシグナル伝達に対する新規PDE2阻害剤の作用
本発明者らは、HT−22細胞(親HT−4細胞からサブクローニングされた不死化マウス海馬ニューロン前駆細胞)が海馬依存性情動変化に関係がある細胞および分子プロセスの理解に有用なモデルであることを提案する。本発明者らは、Aim 1が、細胞ベースのアッセイにおける機能的評価のための10〜20種類の新規PDE2阻害剤を生じると予想する。細胞ベースのHT−22細胞アッセイにおいてcGMP蓄積の有意な増加を誘発する化合物だけが行動評価に進む。細胞ベースのアッセイデータは、CNS適応症に使用する可能性のあるPDE2阻害剤の最小必要要件であり、行動試験のための用量選択の指針を提供する。