特許第6608935号(P6608935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シンテックの特許一覧

<>
  • 特許6608935-医療用線状部材の製造方法 図000002
  • 特許6608935-医療用線状部材の製造方法 図000003
  • 特許6608935-医療用線状部材の製造方法 図000004
  • 特許6608935-医療用線状部材の製造方法 図000005
  • 特許6608935-医療用線状部材の製造方法 図000006
  • 特許6608935-医療用線状部材の製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608935
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】医療用線状部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/82 20060101AFI20191111BHJP
【FI】
   A61B17/82
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-532339(P2017-532339)
(86)(22)【出願日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】JP2015072388
(87)【国際公開番号】WO2017022124
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2018年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】503047869
【氏名又は名称】株式会社シンテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤津 和三
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ジャック シー
【審査官】 中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−232009(JP,A)
【文献】 特開2011−136143(JP,A)
【文献】 特開2014−161650(JP,A)
【文献】 特開平10−033683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状記憶合金からなる複数本のワイヤを配列した基本体を、丸棒からなる巻芯に対し、配列方向に間隔を存して螺旋巻きにして横断面形状が真円形状の第1の螺旋体を形成する工程と、
該第1の螺旋体を加熱して第1の形状記憶処理を施す工程と、
該第1の螺旋体を第1の所定の長さに裁断する工程と、
裁断された該第1の螺旋体から該巻芯を除去する工程と、
該巻芯が除去された該第1の螺旋体を真円形状の直径方向に圧縮して、横断面形状が扁平形状の第2の螺旋体を形成する工程と、
該第2の螺旋体を加熱して第2の形状記憶処理を施す工程とを備えることを特徴とする医療用線状部材の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の医療用線状部材の製造方法において、前記第2の形状記憶処理が施こされた前記第2の螺旋体を第2の所定の長さに裁断する工程を備えることを特徴とする医療用線状部材の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の医療用線状部材の製造方法において、前記圧縮はプレス部材をばね部材の付勢力により前記第1の螺旋体に押圧することにより行うことを特徴とする医療用線状部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用線状部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胸骨を切開する手術では、手術後に胸骨を閉鎖するために、横断面形状が扁平形状となっている医療用線状部材が用いられる。前記横断面形状が扁平形状となっている医療用線状部材としては、例えば、複数本のフィラメントを編組して扁平な紐状としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−232027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記扁平な紐状とした医療用線状部材は、複数のフィラメントを編組して形成されているので、製造時に該フィラメント同士が擦れ合って磨耗しやすいという不都合がある。
【0005】
本発明は、かかる不都合を解消して、製造時に磨耗することなく、扁平形状の断面形状を備える医療用線状部材を製造することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の医療用線状部材の製造方法は、形状記憶合金からなる複数本のワイヤを配列した基本体を、丸棒からなる巻芯に対し、配列方向に間隔を存して螺旋巻きにして横断面形状が真円形状の第1の螺旋体を形成する工程と、該第1の螺旋体を加熱して第1の形状記憶処理を施す工程と、該第1の螺旋体を第1の所定の長さに裁断する工程と、裁断された該第1の螺旋体から該巻芯を除去する工程と、該巻芯が除去された該第1の螺旋体を真円形状の直径方向に圧縮して、横断面形状が扁平形状の第2の螺旋体を形成する工程と、該第2の螺旋体を加熱して第2の形状記憶処理を施す工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の製造方法では、まず、形状記憶合金からなる複数本のワイヤを配列したものを基本体とし、該基本体を巻芯に対し、配列方向に間隔を存して螺旋巻きにして第1の螺旋体を形成する。このとき、前記巻芯は丸棒からなるので、前記第1の螺旋体はその横断面形状が該巻芯の外形に沿った真円形状となる。
【0008】
次に、前記第1の螺旋体を加熱して第1の形状記憶処理を施す。前記第1の形状記憶処理により、該第1の螺旋体に前記配列方向に間隔を存する螺旋巻き形状が記憶される。
【0009】
次に、前記第1の螺旋体を第1の所定の長さに裁断する。前記第1の所定の長さは、例えば、後工程の圧縮に適した長さとする。
【0010】
次に、裁断された前記第1の螺旋体から前記巻芯を除去する。前記巻芯を除去することにより、前記第1の螺旋体は、後工程において真円形状の直径方向に圧縮することが可能になる。
【0011】
そこで、次に、前記巻芯が除去された前記第1の螺旋体を真円形状の直径方向に圧縮する。この結果、前記第1の螺旋体から、横断面形状が扁平形状の第2の螺旋体が形成される。
【0012】
次に、前記第2の螺旋体を加熱して第2の形状記憶処理を施す。前記第2の形状記憶処理により、前記第2の螺旋体に横断面形状が扁平形状である形状が記憶され、横断面形状が扁平形状である医療用線状部材を得ることができる。
【0013】
前記第2の形状記憶処理のための加熱は、前記第1の螺旋体を圧縮する際に同時に行うこともできるが、該第1の螺旋体を圧縮して前記第2の螺旋体を形成した後に行うことにより、得られる医療用線状部材に対するストレスを軽減することができる。
【0014】
本発明の製造方法によれば、複数本のワイヤを配列した基本体を巻芯に対し螺旋巻きにすることにより形成された横断面形状が真円形状の第1の螺旋体を圧縮して第2の螺旋体を形成するので、編組により磨耗することなく、横断面形状が扁平形状である医療用線状部材を製造することができる。
【0015】
また、本発明の製造方法では、前述のようにして得られた医療用線状部材をさらに、第2の所定の長さに裁断することが好ましい。前記第2の所定の長さは、例えば、前記医療用線状部材が実際の治療に用いられる長さであり、このようにすることにより、本発明の製造方法により得られた前記医療用線状部材を容易に治療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の医療用線状部材の製造工程を示すフローチャート。
図2】第1の螺旋体を形成する方法を示す平面図。
図3】Aは第1の螺旋体の構成を示す平面図、BはAのIII−III線断面図。
図4】第1の螺旋体を圧縮する圧縮治具の構成を示す斜視図。
図5図4の圧縮治具により第1の螺旋体を圧縮した状態を示す斜視図。
図6】Aは第2の螺旋体の構成を示す平面図、BはAのVI−VI線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の製造方法では、まず、STEP1で第1の螺旋体1を形成する。第1の螺旋体1の形成は、形状記憶合金からなる複数本のワイヤ2を互いに並列に配列された基本体3を、丸棒からなる巻芯4に対し螺旋巻きにすることにより行う。
【0021】
このとき、基本体3は配列方向に間隔Sを存して螺旋巻きにする。また、ワイヤ2を構成する前記形状記憶合金としては、ニッケル−チタン合金、ニッケル−チタン−コバルト合金等を挙げることができる。
【0022】
次に、図1のSTEP2で、第1の螺旋体1に対して第1の形状記憶処理を行う。第1の形状記憶処理は、例えば、基本体3が巻芯4に螺旋巻きされた状態の第1の螺旋体1を図示しない加熱炉に収容し、150〜900℃の温度に3〜120分間保持することにより行う。ワイヤ2は形状記憶合金からなるので、前述のようにすることにより、第1の螺旋体1に、前記配列方向に間隔Sを存する螺旋巻き形状が記憶される。
【0023】
第1の形状記憶処理が終了したら、前記加熱炉から第1の螺旋体1を取り出し、冷却後、図1のSTEP3で3〜100cmの長さ、例えば30cmの長さに裁断し、次いでSTEP4で巻芯4を除去する。
【0024】
この結果、図3Aに示すように、複数本のワイヤ2を互いに並列に配列された基本体3が、配列方向に間隔Sを存して螺旋巻きされており、内側に空間部5を有する第1の螺旋体1が得られる。このとき、第1の螺旋体1は図3Bに示すように、横断面形状が真円形状になっている。
【0025】
次に、図1のSTEP5で、第1の螺旋体1を真円形状の直径方向に圧縮する。第1の螺旋体1の圧縮は、図4に示す圧縮治具11を用いて行う。
【0026】
圧縮治具11は、基台12と天板13との間に設けられたスライドバー14と、スライドバー14に沿って摺動して昇降自在に設けられた板状のプレス部材15とを備えている。基台12、天板13、プレス部材15は、いずれも平面視したときに1辺が30cmの正方形であり、正方形の四隅にスライドバー14が設けられている。また、プレス部材15は、スライドバー14の外周側に配設されたばね部材16により、基台12方向に付勢されている。
【0027】
圧縮治具11を用いて第1の螺旋体1の圧縮を行うときには、まず、プレス部材15をばね部材16の付勢力に抗して天板13側に移動させた状態で、基台12上の四隅にスペーサ17を配置する。スペーサ17は、目標とする圧縮の程度により、その厚さが選択される。
【0028】
次に、基台12上に第1の螺旋体1を載置する。第1の螺旋体1は、スペーサ17を避けて、その複数本が互いに平行になるように、かつ、圧縮されたときに互いに干渉しないように間隔を存して、基台12上に載置することができる。基台12上に載置される第1の螺旋体1の数は、その直径にもよるが通常は数本から十数本の範囲である。
【0029】
次に、図5に示すように、天板13側に移動されていたプレス部材15をばね部材16の付勢力により、基台12上に載置された第1の螺旋体1に押圧する。この結果、第1の螺旋体1がプレス部材15により真円形状の直径方向に圧縮され、図6に示す第2の螺旋体6が形成される。図5に示すように、プレス部材15の基台12側への移動はスペーサ17の上面で止められるので、第2の螺旋体6の厚さはスペーサ17の厚さにより決定されることになる。
【0030】
第2の螺旋体6は、図6Aに示すように、複数本のワイヤ2を互いに並列に配列された基本体3が、配列方向に間隔Sを存して螺旋巻きされており、内側に空間部5を有する点では第1の螺旋体1と同一である。しかし、第2の螺旋体6は図6Bに示すように、横断面形状が扁平形状になっている。
【0031】
次に、図1のSTEP6で、第2の螺旋体6に対して第2の形状記憶処理を行う。第2の形状記憶処理は、例えば、横断面形状が扁平形状にされた状態の第2の螺旋体6を図示しない加熱炉に収容し、150〜900℃の温度に3〜120分間保持することにより行う。ワイヤ2は形状記憶合金からなるので、前述のようにすることにより、第2の螺旋体3に、横断面形状が扁平形状となっている形状が記憶される。
【0032】
次に、図2のSTEP7で、第2の形状記憶処理が施された第2の螺旋体6を、30〜50mmの長さに裁断することにより、本実施形態の医療用線状部材を得ることができる。
【0033】
尚、本実施形態では、螺旋体1,6を1層のみの基本体3からなるものとして説明しているが、螺旋体1,6はその軸線に対して複数の基本体3が積層された構成を備えていてもよい。また、この場合、隣接して積層された基本体3,3は、螺旋の方向が互いに逆方向となっていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…第1の螺旋体、 2…ワイヤ、 3…基本体、 4…巻芯、 5…空間部、 6…第2の螺旋体、 11…圧縮治具、 16…ばね部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6