【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。本実施例の撮像装置1は、2つの表示部、すなわち背面ディスプレイ11と電子ビューファインダ12を備えており、背面ディスプレイ11は、タッチパネル21と液晶パネル22を一体化した構成としている。以下、装置内の各部の構成について説明する。
【0016】
レンズ部2は、フォーカスレンズを含む複数枚のレンズから構成され、レンズ制御部14によってフォーカスレンズの位置を制御してフォーカシング動作を行う。
【0017】
撮像素子3は、CMOSやCCD等の方式の撮像素子である。撮像素子3は、フォトダイオード等の光電変換素子が撮像面に2次元状に配列されており、レンズ部2を介して入力し撮像面に結像された被写体の光学像を光電変換して撮像信号に変換する。撮像素子3には、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換回路が内蔵されており、デジタル化された撮像信号を出力する。また、撮像素子3に位相差AF(オートフォーカス)用の画素を配置し、AFの高速化を図ることもできる。なお、AD変換回路を内蔵していない撮像素子を用いる場合には、AD変換回路を撮像素子3の外部に設ければよい。駆動回路15は、動作モードに応じて撮像素子3を駆動する。
【0018】
信号処理回路4は、撮像素子3からの出力信号に対し、フィルタリング、感度設定に応じた増幅、ホワイトバランス補正等の各種の信号処理を行う。また信号処理回路4は、動作モードに応じて表示用の映像信号、あるいは記録用の映像信号(動画、静止画)を生成する。また信号処理回路4は、OSD回路17に対し、表示用のOSD(オンスクリーンディスプレイ)信号の生成を指示する。このOSD信号には、後述するフォーカス枠の表示信号が含まれる。
【0019】
バス5には、信号処理回路4のほか、DRAMやフラッシュメモリ等のメモリ6、符号化復号化回路7、記録再生回路8等が接続されており、バス5に接続された各部の高速な連携処理と制御が可能である。符号化復号化回路7は、信号処理された映像信号に対し記録用の符号化処理を行うとともに、再生された画像データの復号化処理を行う。記録再生回路8は、撮影した画像データを記録媒体16に記録するとともに、記録媒体16に記録された画像を再生する。制御部9は、レンズ制御部14、駆動回路15、信号処理回路4、メモリ6、符号化復号化回路7、記録再生回路8、背面ディスプレイ11、電子ビューファインダ12の各部、及び撮像装置1全体の制御を行う。
【0020】
操作入力部10は、ユーザの操作入力を受け付けるもので、撮像装置1に対する設定のうち、ユーザによる使用頻度の高い操作が割り当てられる。具体的には、後述するように、モード設定ダイヤル、シャッターボタン、モード設定ボタン等が相当する。
【0021】
背面ディスプレイ11は、タッチパネル21と液晶パネル22とが一体化された構成で、その詳細は後述する。電子ビューファインダ12は、撮影する映像を覗き込んで目視するディスプレイである。ユーザは、背面ディスプレイ11または電子ビューファインダ12のいずれかを用いて、撮影時のモニタリングや、再生画像の確認等を行う。通常、表示部はいずれか一方を選択的に使用すればよく、検出部13の検出結果に基づいて自動的に切り換えるようにしている。
【0022】
検出部13は、例えば、赤外線発光素子と受光素子で構成し、赤外線発光素子が出力した赤外線の反射光を受光素子で検出することで、検出部13の前に物体(例えばユーザの顔)が存在することを検出する。あるいは、検出部13を超音波発信器と受信器で構成し、超音波発信器が発信した超音波を受信器で検出する方式でもよい。
【0023】
ユーザが電子ビューファインダ12を使用する場合には、検出部13によりユーザの顔や頭部等の接近を検出し、電子ビューファインダ12のみに画像を表示し、背面ディスプレイ11には画像を表示しないように制御する。逆に検出部13で物体を検出できない場合には、背面ディスプレイ11にのみ画像を表示するよう制御する。このように画像の表示部を切り換えることによって、装置の消費電力を低減させる。
【0024】
なお、背面ディスプレイ11と電子ビューファインダ12の表示は、検出部13の検出結果に応じて自動的に切換えるものとしたが、例えば自動切換え機能のオン/オフ設定を設け、自動切換えをオフしているときにはユーザが背面ディスプレイ11と電子ビューファインダ12の表示を手動で切換えられるように構成してもよい。
【0025】
図2は、背面ディスプレイ11の断面構造の一例を示す図である。背面ディスプレイ11は、タッチパネル21と液晶パネル22とを一体化し、その外側にガラス等の保護カバー20とバックライト23を配置している。この場合タッチパネル21は、保護カバー20を介して静電容量を検出するので、タッチパネル21を保護カバー20に密着させるように配置することで検出精度を高めるようにする。バックライト23は液晶パネル22の背面から照明光を照射して画像を表示させる。その際、一定時間ユーザの使用がない場合には、消費電力低減のためバックライト23を消灯するように制御してもよい。なお、表示部の方式は液晶に限定するものではなく、有機EL等の任意の方式を用いてもよい。また、有機EL等の発光素子を用いる場合、バックライトは不要である。
【0026】
タッチパネル21は例えば静電容量方式とし、透明電極が水平、垂直方向に2次元状に配列されている。ユーザの指やタッチペンが背面ディスプレイ11の表示画面に接触あるいは接近すると、指やタッチペンと透明電極間の静電容量が変化し、接触した画面上の水平、垂直方向の位置を検出する。このタッチパネル21によりユーザは撮像装置に対し各種の入力、操作が可能となる。特に本実施例では、タッチパネル操作により画面上の任意の位置にフォーカスを合わせる機能を備えている。なお、タッチパネル21には、静電容量方式の他に感圧方式等を用いてもよい。
【0027】
図3は実施例1に係る撮像装置を示す外観図であり、(a)は撮像装置を背面から見た図、(b)は撮像装置を右側面から見た図である。撮像装置1において、背面側にはタッチパネルを一体化した背面ディスプレイ11が、上面側には電子ビューファインダ12が配置されている。さらに電子ビューファインダ12の表示側には、物体の接近を検出する検出部13が設けられている。検出部13は例えば赤外光等により、ユーザが電子ビューファインダ12を使用している(覗き込んでいる)ことを検出する。
【0028】
撮像装置1の操作入力部10としては、モード設定ダイヤル31、シャッターボタン32、操作ボタン33が設けられている。モード設定ダイヤル31は、撮像装置1の動作モード(撮影モード/再生モード等)を選択するものである。シャッターボタン32は本体右側上部に設けてあり、これを押下して撮影の操作を行う。操作ボタン33は中央のボタンと上下左右四方向のボタンを有しており、メニュー画面の表示や選択を行うためのものである。
【0029】
電子ビューファインダ12を使用する場合、ユーザは電子ビューファインダ12を覗きながら、例えば、右手人差し指でシャッターボタン32を操作するとともに、右手親指で背面ディスプレイ11に内蔵されたタッチパネル21を操作することができる。
【0030】
撮像装置の動作モードには、<撮影モード>と<再生モード>があり、これらの動作について説明する。これらの動作モードの切り替えは、モード設定ダイヤル31を用いて切り替える構成としてもよいし、例えば専用の再生モードボタンを設けて動作モードを切り替える構成としてもよい。
【0031】
<撮影モード>
制御部9は操作入力部10により撮影モードに設定されたことを検出すると、撮像素子3、信号処理回路4、符号化復号化回路7、記録再生回路8、背面ディスプレイ11、電子ビューファインダ12等に対し、撮影モードに応じた制御を行う。撮影モードでは静止画撮影と動画撮影が可能である。
【0032】
撮像素子3から所定の周期で撮像信号を読み出し、信号処理回路4にて所定の信号処理を行ない、表示用のフォーマットに変換して背面ディスプレイ11または電子ビューファインダ12にリアルタイムで動画像を表示する。その際、表示部の切り換えは、検出部13の検出結果に従って行う。ユーザは、背面ディスプレイ11または電子ビューファインダ12に表示された動画像をモニタする。
【0033】
静止画を撮影するときは、ユーザはシャッターボタン32を押下する。制御部9は操作入力部10の出力からシャッターボタン32が押下されたことを検知し、ユーザが設定した撮影条件に従って絞り値やシャッター速度など、撮像素子3の駆動回路15を制御する。撮像素子3によって撮像された静止画の撮像信号は、メモリ6を経由して信号処理回路4によって所定の静止画信号処理が施された後、符号化復号化回路7によって静止画用の符号化を行う。符号化方式は例えばJPEG方式を採用するが、JPEG以外の方式として高画質のRAW形式で記録してもよい。符号化された静止画データは、メモリ6を経由し記録再生回路8により記録媒体16に記録される。
【0034】
動画を撮影するときは、図示しない動画撮影ボタンを押下して撮影を開始し、再度押下して撮影を停止する。動画像は、例えばH264やH265等のMPEG、その他の任意の動画用フォーマットで符号化すればよい。動画撮影の場合も、符号化復号化回路7によって所定のフォーマットで符号化され、符号化された動画データは、メモリ6を経由し記録再生回路8により記録媒体16に記録される。
【0035】
<再生モード>
制御部9は操作入力部10により再生モードに設定されたことを検出すると、記録再生回路8により記録媒体16に記録された静止画や動画を読み出す。そして、符号化復号化回路7によって復号化した後、背面ディスプレイ11または電子ビューファインダ12に表示するように制御する。表示部の切り換えは、撮影モード時と同様に、検出部13の検出結果に従って行う。再生動作では、まず複数の画像の各々のサムネイル画像をマルチ画面表示し、さらにタッチパネル操作等によって選択された画像を再生し、選択された表示部に表示する。
【0036】
次に、本実施例の特徴であるタッチパネル操作によるフォーカス領域の設定動作について説明する。この動作は、撮影モードにおいて、静止画撮影を行なう際に適用されるものである。フォーカス領域の設定は、背面ディスプレイ11を見ながら行う場合と、電子ビューファインダ12を見ながら行う場合があり、それぞれについて説明する。いずれも、背面ディスプレイ11に内蔵されたタッチパネル21を指でタッチ操作することで行う。
【0037】
図4は、背面ディスプレイ11の表示画面上でフォーカス領域を設定する方法を説明する図であり、(a)〜(d)はその設定手順を示している。
【0038】
(a)はタッチパネル操作前の背面ディスプレイ11の表示画面40であり、撮影した動画像をリアルタイムで表示している。ここでは例として被写体41が表示されている。(b)に示すように、ユーザが画面上の被写体41に指42でタッチすると、背面ディスプレイ11に内蔵されたタッチパネル21はタッチした画面位置を検出する。制御部9は、タッチパネル21で検出した位置をフォーカス領域として設定するとともに、OSD回路17を制御して、フォーカス領域を示すフォーカス枠43を画像に重畳して表示させる。これによりユーザは、設定されたフォーカス領域を容易に確認できる。なお、(a)においてはフォーカス枠43を表示していないが、フォーカス領域の位置がデフォルト設定されている場合は、デフォルト設定されたフォーカス枠を最初から表示させてもよい。
【0039】
一旦フォーカス領域が設定されると、(c)に示すように、表示画面40にはフォーカス枠43が継続的に表示される。また、ユーザがフォーカス領域を変更したいときは、画面上の新たなフォーカス位置を指42でタッチすればよい。例えば(d)に示すように、他の被写体41’にタッチ操作すると、制御部9は、タッチされた位置を新たなフォーカス領域として設定変更するとともに、表示中のフォーカス枠43を消去して新たなフォーカス枠43’を表示させる。
【0040】
このように、背面ディスプレイ11を見ながらフォーカス領域を設定する場合は、フォーカスを合わせたい被写体の位置をユーザがタッチ操作することで、タッチされた被写体の位置に対してフォーカス動作を行うことができる。
【0041】
次に、電子ビューファインダ12を用いて画像をモニタしながらフォーカス領域を設定する動作について説明する。
【0042】
図5は、電子ビューファインダ12の表示画像に対し背面ディスプレイ11のタッチパネル21でフォーカス領域を設定する方法を説明する図である。(a)は電子ビューファインダ12の表示画面50を、(b)は背面ディスプレイ11に内蔵されたタッチパネル21のタッチ面を示す。なお、前記
図3に示したように、(a)の電子ビューファインダ12の画面サイズは(b)の背面ディスプレイ11の画面サイズよりも大幅に小さいものであるが、ここでは任意のサイズで示している。
【0043】
ユーザが電子ビューファインダ12を覗くと、検出部13はユーザの顔が電子ビューファインダ12に接近したことを検出し、制御部9は映像信号を電子ビューファインダ12に出力させるとともに、背面ディスプレイ11への映像出力を停止させる。また、背面ディスプレイ11のバックライト23も消灯して、消費電力を低減する。このとき、背面ディスプレイ11に内蔵されたタッチパネル21の検出動作は有効とし、これを用いて電子ビューファインダ12に表示される画像に対してフォーカス領域を設定する。但し本実施例では、タッチパネル21においてタッチ操作を検出する領域(以下、有効検出領域と呼ぶ)を縮小して設定する。すなわち、画像を背面ディスプレイ11に表示する場合と、電子ビューファインダ12に表示する場合とで、タッチパネル21の有効検出領域を変更するようにした。
【0044】
(a)に示すように、電子ビューファインダ12の表示画面50には被写体51が表示されている。また(b)に示すように、背面ディスプレイ11のタッチパネル21では、ユーザのタッチ操作を検出する有効検出領域60をタッチ面の右上部に縮小して設定している。すなわち、
図4で示したように背面ディスプレイ11にて画像表示するときは、タッチパネル21のほぼ全面が有効検出領域であったが、電子ビューファインダ12にて画像表示するときは、縮小された有効検出領域60のみで検出可能とする。そして、縮小された有効検出領域60を(a)の表示画面50全体に対応させることにより、表示画面50内の任意の位置に対しフォーカス領域に設定することができる。
【0045】
例えばユーザは右手親指52を操作し、タッチパネル21の有効検出領域60内のフォーカス位置54をタッチする。制御部9は、これに対応する電子ビューファインダ12の表示画面50内の位置(この例では被写体51の表示位置)に対し、フォーカス領域を設定するとともに、フォーカス領域を示すフォーカス枠53を表示させる。この場合、ユーザが有効検出領域60の外側の位置にタッチしても、フォーカス領域の設定動作には反映されない。
【0046】
電子ビューファインダ12を覗きながらフォーカス領域の設定操作を行う場合、一般にユーザは左手でカメラのボディーを支え、右手でボディーのグリップ部を握りつつ、右手親指52でフォーカス位置を操作し、人差し指でシャッターボタンの操作を行うことが多い。本実施例のように、タッチパネル21の有効検出領域60を右上部に縮小して設定することで、背面ディスプレイ11が大画面化しても右手親指52によるタッチパネル21への操作が容易になる。すなわちユーザは、右手をボディーから離すことなく有効検出領域60内の所望の位置にタッチ操作を行うことができる。その結果、フォーカス位置決めとシャッターボタンとの連携操作を迅速に行うことができ、使い勝手が大幅に向上する。
【0047】
このように本実施例では、背面ディスプレイ11に画像表示する場合と、電子ビューファインダ12に画像表示する場合とで、タッチパネル21の有効検出領域を異ならせている。これについて両者を比較して説明する。
【0048】
図6は、画像表示画面とタッチパネルの検出領域との位置関係を示す図である。ここに(a)は電子ビューファインダ12の表示画面50を示し、画面サイズは矩形領域A’B’C’D’となる。一方(b)は背面ディスプレイ11の表示画面40を示し、画面サイズは矩形領域ABCDとなる。背面ディスプレイ11にはタッチパネル21が内蔵されており、タッチ面のサイズもほぼ矩形領域ABCDに等しい。なお、表示画面40と表示画面50のサイズ比は任意であるが、ここでは簡単のために縦横比は等しいものとする(AB:BC=A’B’:B’C’)。
【0049】
まず、背面ディスプレイ11にて画像表示する場合は、タッチパネル21の有効検出領域は背面ディスプレイ11の全面となり、矩形領域ABCDにほぼ一致する。すなわち、タッチパネル21のタッチ位置(座標(F,E))はそのまま表示画面40の表示位置となり、タッチ位置にフォーカス枠43が表示される。
【0050】
一方、電子ビューファインダ12にて画像表示する場合は、タッチパネル21の有効検出領域は、
図5で示したように縮小された有効検出領域60(矩形領域abcd)となる。その結果、有効検出領域60内のタッチ位置54の座標(f,e)と、これに対応させたい表示画面50のフォーカス位置、すなわちフォーカス枠53を表示させたい座標(F’,E’)とは一般に一致しなくなる。
【0051】
そこで座標変換が必要となるが、その変換を容易に行うため、有効検出領域60の形状を、ab:bc=AB:BC=A’B’:B’C’の関係をほぼ満たすように、すなわち有効検出領域60の縦横比を表示画面40の縦横比(すなわち表示画面50の縦横比)とほぼ同一になるよう縮小して設定するのが望ましい。これにより、タッチパネル21の有効検出領域60におけるタッチ位置54の座標(f,e)と、表示画面50のフォーカス枠53の座標(F’,E’)とを、1つの変換係数kで容易に変換することができる(f/F’=e/E’=k)。また、縦横比を同一にすることで、ユーザは縦方向と横方向の位置決め操作をより自然な感覚で行うことができる。
【0052】
有効検出領域60の縮小率は、例えばab:AB=1:2とし、背面ディスプレイ11の右上隅4分の1の領域にタッチパネル21の有効検出領域60を設定すればよい。このときの変換係数kは0.5となる。
【0053】
なお、有効検出領域60のサイズは、背面ディスプレイ11の大きさやユーザの使用状態に応じて、以下のようにユーザが変更して設定することもできる。
【0054】
図7は、ユーザによる有効検出領域60の変更方法の一例を示す図である。背面ディスプレイ11の表示画面40には、現在設定されているタッチパネル21の有効検出領域60が示されている。ユーザは、有効検出領域60の例えば左下隅の部分Pを左下方向(矢印で示す)にドラッグし(画面上に指52をタッチした状態で移動させる)、所望の位置まで移動させた後に指52を画面から離すことで、新たな有効検出領域61を設定することができる。これによりタッチパネル21は、ユーザの設定した新たな有効検出領域61に基づいてタッチ位置を検出する。制御部9は、新たな有効検出領域61の領域サイズを基に変換係数kを変更し、タッチ検出位置から電子ビューファインダ12の表示画面の位置への座標変換処理を行う。
【0055】
上記の例では、有効検出領域60の縦横比を電子ビューファインダ12の表示画面50の縦横比と等しくしたが、異ならせても良い。例えば、フォーカス位置決め操作が主に画面横方向のみである時は、有効検出領域60を横長状に設定することで、ユーザの操作性はむしろ良くなる場合がある。この場合には、有効検出領域60の縮小率は縦方向と横方向とで異なり、それらに応じて縦方向と横方向の変換係数を定めればよい。
【0056】
また上記の例では、電子ビューファインダ12使用時のタッチパネル21の有効検出領域60を画面の右上隅に設定したが、これに限定するものではない。例えば、左利きのユーザの場合には、左下隅や左上隅に設定することで、左の指を使ってのタッチパネル操作を容易に行うことができる。このように有効検出領域60の配置を変更する場合にも、有効検出領域60を移動させる操作を追加することで対応可能である。
【0057】
次に、上記により設定した画面上のフォーカス領域に対し、実際にフォーカスを合わせる動作について説明する。撮像装置におけるオートフォーカス方式には、ビデオAF(オートフォーカス)と位相差AFを用いることができる。
【0058】
ビデオAFは、フォーカス領域の映像信号にピントが合うようにフォーカスレンズを制御しながらフォーカスを合わせる方式である。このため、設定したフォーカス領域の映像信号の高周波成分を抽出し、その高周波成分が最大になるようフォーカスレンズの位置を制御する。設定されたフォーカス領域に関する情報は、制御部9により信号処理回路4に伝達され、信号処理回路4は設定されたフォーカス領域内の高周波成分を検出する。こうして検出された高周波成分が最大となるようにレンズ制御部14を制御することで、設定されたフォーカス領域にフォーカスを合わせることができる。
【0059】
一方位相差AFは、位相差AF用の画素を設けた撮像素子を用いるか、または専用の位相差AF用のセンサを設けて行う。専用の位相差AFを設ける場合は、レンズと撮像素子との経路上にハーフミラー等を設けてレンズからの入射光を2方向に分離し、一方に撮像素子、もう一方に位相差AF用のセンサを設ければよい。位相差AFは、2つの異なる経路を通過した像の位相差を検出してフォーカスを合わせる方式であり、その位相差からフォーカスを合わせることができるので高速にフォーカスを合わせることができる。専用の位相差AFセンサや、位相差AF用画素を有する撮像素子を用いる場合、ユーザが設定した領域にある位相差AFセンサの画素にピントが合うよう、フォーカスレンズを制御すればよい。
【0060】
両者の方式を比較すると、ビデオAFはレンズを駆動しながらフォーカス位置を探索するため位相差AFに比べて低速である。但し、撮像素子を用いてフォーカス制御ができるため、専用の位相差AFセンサやそのための光学系が不要であるほか、撮像素子の任意の位置にAF検波領域を設定できるので、任意の位置にフォーカスを合わせやすいメリットがある。
【0061】
フォーカス動作のタイミングはシャッターボタン32の操作に連動させる。シャッターボタンは一般に半押し状態と全押し状態があり、半押し状態にしたときにフォーカス動作を行う。すなわち制御部9は、タッチパネル21を用いてユーザがタッチした位置をフォーカス領域として設定し、シャッターボタンの半押しを検出することでこの領域にフォーカスが合うように制御する。
【0062】
以上のようにして、ユーザがタッチパネル上で指定した位置に素早くフォーカスを合わせることができる。そしてフォーカスを合わせ後に素早くシャッターボタンを押すことにより(全押し状態)、所望の被写体にピントが合った画像を撮影し、また記録することができる。なお、フォーカス動作を迅速に行うため、ユーザが画面にタッチ操作したときにフォーカス領域を設定するとともに、シャッターボタンの半押し動作なしで直ちにフォーカス制御を実行するようにしてもよい。
【0063】
図8は、フォーカス動作に関連するメニュー画面の表示例を示す図である。例えば、操作ボタン33の中央部を押すことで、メニュー画面80を背面ディスプレイ11に表示し、ユーザはタッチ操作によりメニューを選択設定する。ここには、表示されるメニュー画面のうち、フォーカス動作に関連するものを示している。
【0064】
タッチパネルAF81は、タッチパネル操作によるオートフォーカス(AF)機能を使用するための設定メニューである。右側ON/OFFの表示部分をタッチすることで、トグル式にONとOFFとが切り換わる。ONに設定するとタッチパネル操作によるAF領域の設定操作が可能となり、OFFに設定するとAF領域の設定操作が無効となる。したがって、上記したタッチパネル操作によるフォーカス領域設定を行う場合は、この設定をONにする。
【0065】
EVF/LCD自動切換え82は、画像表示を電子ビューファインダ(EVF)12と背面ディスプレイ11(液晶ディスプレイ(LCD)22)とで切り換える動作を、検出部13の検出結果により自動的に行うための設定メニューである。自動的に切り換える場合はこの設定をONにする。これにより、電子ビューファインダ12と背面ディスプレイ11との切換えを自動的に排他制御でき、低消費電力化のために有効となる。この設定をOFFとした場合は、電子ビューファインダ12と背面ディスプレイ11とを手動で切り換える。手動切り替えの方法は任意であるが、例えば操作ボタン33の下ボタン操作により、電子ビューファインダ12と背面ディスプレイ11とをトグルで選択できるようにする。なお、電子ビューファインダ12と背面ディスプレイ11の両方をONするモード、両方をOFFするモードを追加してもよい。
【0066】
タッチパネル有効領域設定83は、
図7で示したように、EVF使用時におけるタッチパネルの有効検出領域をユーザが設定するためのメニューである。これをタッチ選択すると、
図7に示す画面が表示され、ユーザは有効検出領域を変更する操作を行うことができる。なお、EVF使用時の有効検出領域の初期設定(デフォルト設定)は、背面ディスプレイの右上隅に所定サイズに縮小された領域とする。あるいは、有効検出領域の初期設定を背面ディスプレイの全面領域としておき、パネル有効領域設定83のメニュー選択によりユーザが変更するようにしてもよい。
【0067】
フォーカス領域サイズ設定84は、フォーカス領域(フォーカス枠)の大きさを変更するためのメニューである。これにより、被写体の大きさ等に応じて、フォーカスを合わせたい領域の大きさを変更して設定する。
【0068】
縦横変更時AF領域リセット85と縦横変更時AF領域初期設定86は、撮影時の姿勢(横撮り状態/縦撮り状態)の変更に伴うフォーカス領域の設定に関するメニューである。縦横変更時AF領域リセット85は、撮影時に撮像装置を横に構える横撮りから、縦に構える縦撮りに変更したとき、あるいはその逆に縦撮りから横撮りに変更したとき、フォーカス領域をリセットするか否かを設定するメニューである。また、縦横変更時AF領域初期設定86は、リセットする際の初期値に関する設定である。これらの機能については、次の実施例2で説明する。
【0069】
上記の説明では、ユーザがタッチ操作した位置にフォーカス領域を設定するものとしたが、さらにフリック操作により設定位置を変更できるようにしてもよい。フリック操作は、タッチした後にタッチした状態で指を所定の方向へ素早く払う操作である。この場合、フリック操作の方向にフォーカス設定領域を移動させるとともに、移動後のフォーカス領域を示すフォーカス枠を画面上に表示させればよい。
【0070】
また上記の説明では、ユーザがタッチ操作により設定したフォーカス領域の画面内位置はそのまま保持されるものとしたが、さらに被写体の動きに追尾できるようにしてもよい。すなわち、所望の被写体にフォーカス領域を設定するとその被写体の画像を認識しておくことで、その被写体が画面内で移動した場合でもフォーカス領域が移動して追尾させるようにする。これにより、動きのある被写体に対しても確実にフォーカス合わせを行うことができる。
【0071】
本実施例によれば、電子ビューファインダ12で画像をモニタする場合、タッチパネル21の有効検出領域を縮小して設定することで、タッチパネル21を内蔵する背面ディスプレイ11が大画面化してもフォーカス領域設定のためユーザの操作が容易になる。その結果ユーザは、フォーカス位置決めとシャッターボタンとの連携操作を迅速に行うことができ、使い勝手が大幅に向上する。
【実施例4】
【0084】
図11は、実施例4に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。本実施例の撮像装置1は、実施例1(
図1)と同様に2つの表示部、すなわち背面ディスプレイ11と電子ビューファインダ12を備えており、背面ディスプレイ11は、タッチパネル21と液晶パネル22を一体化した構成としている。実施例1と異なるのは、電子ビューファインダ12に対応する専用のタッチパネル19を設けたことである。以下、背面ディスプレイ11に内蔵するタッチパネル21を「第1タッチパネル」、電子ビューファインダ12に対応する専用のタッチパネル19を「第2タッチパネル」と呼ぶ。実施例1(
図1)と異なる点について説明する。
【0085】
背面ディスプレイ11は、第1タッチパネル21と液晶パネル22とが一体化された構成であり、第1タッチパネル21は液晶パネル22に表示される映像に対するタッチ操作入力を行うものである。また電子ビューファインダ12は、撮影する映像を覗き込んで目視するディスプレイであり、第2タッチパネル19は、電子ビューファインダ12使用時の操作入力に用いる専用のタッチパネルである。ユーザは、背面ディスプレイ11または電子ビューファインダ12のいずれかを用いて、撮影時のモニタリングや、再生画像の確認等を行う。通常、表示部はいずれか一方を選択的に使用すればよく、検出部13の検出結果に基づいて自動的に切り換えるようにしている。
【0086】
背面ディスプレイ11および第1タッチパネル21の構造は、実施例1(
図2)で説明した通りである。また第2タッチパネル19も第1タッチパネル21と同様の構造であり、ユーザの指やタッチペンが接触あるいは接近した位置を検出する。ただし、背面ディスプレイ11の場合と異なり液晶パネルは存在しない。すなわち、
図2に示した背面ディスプレイ11の構成から、液晶パネル22とバックライト23を除き、タッチパネルとその保護カバーによって構成される。
【0087】
図12は、実施例4に係る撮像装置を示す外観図であり、(a)は撮像装置を背面から見た図、(b)は撮像装置を右側面から見た図である。実施例1(
図3)の構成に追加した第2タッチパネル19は、電子ビューファインダ12使用時のタッチ操作入力に用いる。第2タッチパネル19は背面ディスプレイ11の右側に配置され、背面ディスプレイ11のサイズよりも小さい。
【0088】
電子ビューファインダ12を使用する場合、ユーザは電子ビューファインダ12を覗きながら、例えば、右手人差し指でシャッターボタン32を操作するとともに、右手親指で背面ディスプレイ11の右側に設けられた第2タッチパネル19を容易に操作することができる。
【0089】
次に、本実施例の特徴であるタッチパネル操作によるフォーカス領域の設定動作について説明する。フォーカス領域の設定は、背面ディスプレイ11を見ながら行う場合と、電子ビューファインダ12を見ながら行う場合がある。背面ディスプレイ11を見ながらフォーカス領域の設定を行う場合は、実施例1(
図4)と同様であり、背面ディスプレイ11に設けられた第1タッチパネル21を指でタッチ操作することで行う。一方、電子ビューファインダ12を見ながらフォーカス領域の設定を行う場合は、電子ビューファインダ使用時専用の第2タッチパネル19を指でタッチ操作することで行う。
【0090】
図13は、電子ビューファインダ12の表示画像に対し第2タッチパネル19でフォーカス領域を設定する方法を説明する図である。電子ビューファインダ12の表示画面50と、第2タッチパネル19のタッチ面との関係を示す。
図12に示したように、電子ビューファインダ12の画面サイズは、一般に背面ディスプレイ11の画面サイズよりも小さく、また、電子ビューファインダ12と第2タッチパネル19は左右方向にずれて配置される。
【0091】
ユーザが電子ビューファインダ12を覗くと、検出部13はユーザの顔が電子ビューファインダ12に接近したことを検出し、制御部9は映像信号を電子ビューファインダ12に出力させるとともに、背面ディスプレイ11への映像出力を停止させ、第1タッチパネルの検出動作も停止する。また、背面ディスプレイ11のバックライト23も消灯して、消費電力を低減する。一方、第2タッチパネル19の動作を有効とし、これを用いて電子ビューファインダ12に表示される画像に対してフォーカス領域を設定する。
【0092】
電子ビューファインダ12の表示画面50には被写体51が表示されている。これに対し電子ビューファインダ12を覗きながらフォーカス領域の設定操作を行う場合、一般にユーザは左手でカメラのボディーを支え、右手でボディーのグリップ部を握りつつ、右手親指52でフォーカス位置を操作し、人差し指でシャッターボタンの操作を行うことが多い。本実施例のように、第2タッチパネル19を撮像装置の右側に配置することで、装置が大型化しても右手親指52による第2タッチパネル19への操作は容易である。すなわちユーザは、右手をボディーから離すことなく第2タッチパネル19内の所望の位置にタッチ操作を行うことができる。
【0093】
例えばユーザは右手親指52を操作し、第2タッチパネル19内のフォーカス位置54をタッチする。制御部9は、これに対応する電子ビューファインダ12の表示画面50内の位置(この例では被写体51の表示位置)に対し、フォーカス領域を設定するとともに、フォーカス領域を示すフォーカス枠53を表示させる。その結果、フォーカス位置決めとシャッターボタンとの連携操作を迅速に行うことができ、使い勝手が大幅に向上する。
【0094】
このように本実施例では、背面ディスプレイ11に画像表示する場合と、電子ビューファインダ12に画像表示する場合とで、背面ディスプレイ11と一体化した第1タッチパネル21と、電子ビューファインダ12専用の第2タッチパネル19を排他的に切り換えて使用するようにした。これにより、背面ディスプレイ11が大型化した場合でも、ユーザの操作性を損なうことがなく、使い勝手を向上させることができる。なお、本体背面右側には、撮像装置1を手で保持しやすいようにグリップ部を設けてもよく、そのときにはグリップ部に第2タッチパネルを配置してもよい。
【0095】
図14は、フォーカス動作に関連するメニュー画面の表示例を示す図である。実施例1(
図8)に追加した項目について説明する。メニュー画面80において、メインタッチパネル87は、背面ディスプレイ11と一体化した第1タッチパネル21の動作をON/OFFするための設定メニューである。また、サブタッチパネル88は、電子ビューファインダ12専用の第2タッチパネル19の動作をON/OFFするための設定メニューである。なお、メインタッチパネル87とサブタッチパネル88のON/OFF切り替えは、EVF/LCD自動切換え82に連動させてもよい。
【0096】
本実施例によれば、電子ビューファインダ12で画像をモニタする場合、専用の第2タッチパネル19を用いてフォーカス領域を設定でき、フォーカス領域設定のためユーザの操作が容易になる。その結果ユーザは、フォーカス位置決めとシャッターボタンとの連携操作を迅速に行うことができ、使い勝手が大幅に向上する。