特許第6608991号(P6608991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6608991
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】耐火性合成引張部材
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/16 20060101AFI20191111BHJP
   B66B 7/06 20060101ALI20191111BHJP
   B66B 23/24 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   D07B1/16
   B66B7/06 A
   B66B23/24 A
【請求項の数】22
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-80302(P2018-80302)
(22)【出願日】2018年4月19日
(65)【公開番号】特開2018-178354(P2018-178354A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年4月19日
(31)【優先権主張番号】62/487,673
(32)【優先日】2017年4月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Otis Elevator Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】チェン チァン ジャオ
【審査官】 堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0259677(US,A1)
【文献】 特開2014−129181(JP,A)
【文献】 特開2012−158760(JP,A)
【文献】 特表2012−500168(JP,A)
【文献】 特開2012−036009(JP,A)
【文献】 特開2013−107981(JP,A)
【文献】 特開2000−273281(JP,A)
【文献】 特表2011−529113(JP,A)
【文献】 特開2011−140632(JP,A)
【文献】 特表2016−515988(JP,A)
【文献】 特開2009−249389(JP,A)
【文献】 特表2005−508776(JP,A)
【文献】 特表2006−500303(JP,A)
【文献】 特開2015−089853(JP,A)
【文献】 特表2015−529273(JP,A)
【文献】 特開平03−052934(JP,A)
【文献】 特開平06−279601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B1/00−9/00
B29B11/16、15/08−15/14
B66B7/00−7/12、21/00−31/02
C08J5/04−5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの引張部材であって、樹脂、強化繊維、及び前記引張部材に耐火性を提供する少なくとも1つの添加物を有する、少なくとも1つの引張部材と、
前記少なくとも1つの引張部材を覆うジャケット材料と、
を備え
前記少なくとも1つの添加物が、耐火特性を提供する第1添加物と、煙抑制及びチャー形成特性のうちの少なくとも1つである別の特性を提供する第2添加物とを含む、荷重支持アセンブリ。
【請求項2】
前記荷重支持アセンブリが、エレベータかごの重量を支持するよう構成される、請求項1に記載の荷重支持アセンブリ。
【請求項3】
前記荷重支持アセンブリが、乗客コンベア用の手すりである、請求項1に記載の荷重支持アセンブリ。
【請求項4】
前記樹脂が、エポキシ、ポリウレタン、ビニルエステル、エチレンプロピレン、ジエンモノマー(EPDM)、及びメラミンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の荷重支持アセンブリ。
【請求項5】
前記強化繊維が、液晶高分子、炭素繊維、ガラス繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、超高分子量ポリプロピレン繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、アラミド繊維及びナイロンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の荷重支持アセンブリ。
【請求項6】
前記第1添加物が、リン含有化合物またはポリマー及び窒素含有化合物またはポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載の荷重支持アセンブリ。
【請求項7】
前記第2添加物が、金属交換クレー、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛複合体、亜鉛モリブデネイト、ケイ酸マグネシウム複合体のうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載の荷重支持アセンブリ。
【請求項8】
前記引張部材が、少なくとも1つのナノフィラーをさらに含む、請求項1に記載の荷重支持アセンブリ。
【請求項9】
前記少なくとも1つのナノフィラーが、以下の官能基、すなわち、グリシジル、シラン、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、イソシアン酸塩、エチレン、及びアミドのうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載の荷重支持アセンブリ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのナノフィラーが、水酸化マグネシウム及びアルミニウム三水和物のうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載の荷重支持アセンブリ。
【請求項11】
自己耐火性樹脂及び強化繊維を含む、少なくとも1つの引張部材と、
前記少なくとも1つの引張部材を覆うジャケット材料と、
を備えた乗客コンベア用の手すりである、荷重支持アセンブリ。
【請求項12】
前記自己耐火性樹脂が、耐火特性を提供する少なくとも1つの官能基を含む、請求項11に記載の荷重支持アセンブリ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの官能基が、窒素系及びリン系官能基のうちの1つである、請求項12に記載の荷重支持アセンブリ。
【請求項14】
前記荷重支持アセンブリが、乗客コンベア用の手すりである、請求項1に記載の荷重支持アセンブリ。
【請求項15】
前記樹脂が、エポキシ、ポリウレタン、ビニルエステル、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、及びメラミンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の荷重支持アセンブリ。
【請求項16】
強化繊維を金型に供給することと、
樹脂前駆体に少なくとも1つの添加物を供給することと、
前記樹脂前駆体を前記金型に供給することと、
耐火性を有する樹脂を含む少なくとも1つの合成引張部材を形成するために前記樹脂前駆体及び繊維を硬化させることと、
前記少なくとも1つの合成引張部材をジャケット材料で覆うことと、
を含み、
前記少なくとも1つの添加物が、耐火特性を提供する第1添加物と、煙抑制剤及びチャー形成特性のうちの少なくとも1つを提供する第2添加物とを含む、荷重支持アセンブリの作成方法。
【請求項17】
前記樹脂が、自己耐火性樹脂である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記自己耐火性樹脂が、耐火特性を提供する少なくとも1つの官能基を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの官能基が、硬化剤での硬化過程中に前記樹脂前駆体に導入される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記硬化剤が、脂肪族ポリエーテルトリアミン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(3−アミノフェニル)メチルホスフィンオキシド、及びビス(4−アミノフェニル)メチルホスホネートのうちの少なくとも1つを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1添加物が、リン含有化合物またはポリマー及び窒素含有化合物またはポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記第2添加物が、金属交換クレー、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛複合体、亜鉛モリブデネイト、及びケイ酸マグネシウム複合体のうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷重支持アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエレベータの荷重支持部材またはローピング装置、乗客コンベアといった機械のための駆動ベルト、及び乗客コンベア用の手すりといった細長い柔軟なアセンブリのための様々な用途がある。そういった細長い柔軟なアセンブリは、ジャケット材料に包含された1つ以上の引張部材を含んでもよい。そういったアセンブリは、既存の建築基準法を満たすよう耐火性を備えて設計されてもよい。そういったアセンブリはさらに、引張強度及び剛性要件といった機械的性能要件も満たさなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の実施例に従う荷重支持アセンブリは、少なくとも1つの引張部材を含む。引張部材は、樹脂、強化繊維、及び引張部材に耐火性を提供する少なくとも1つの添加物を有する。ジャケット材料が、少なくとも1つの引張部材を覆う。
【0004】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、荷重支持アセンブリは、エレベータかごの重量を支持するよう構成される。
【0005】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、荷重支持アセンブリは、乗客コンベア用の手すりである。
【0006】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、樹脂は、エポキシ、ポリウレタン、ビニルエステル、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、及びメラミンのうちの少なくとも1つを含む。
【0007】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、強化繊維は、液晶高分子、炭素繊維、ガラス繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、超高分子量ポリプロピレン繊維、繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、アラミド繊維及びナイロンのうちの少なくとも1つを含む。
【0008】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、少なくとも1つの添加物は、耐火特性を提供する第1添加物と、煙抑制及びチャー形成特性のうちの少なくとも1つである別の特性を提供する第2添加物とを含む。
【0009】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、第1添加物は、リン含有化合物またはポリマー及び窒素含有化合物またはポリマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0010】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、第2添加物は、金属交換クレー、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛複合体、亜鉛モリブデネイト、ケイ酸マグネシウム複合体のうちの少なくとも1つを含む。
【0011】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、引張部材はさらに少なくとも1つのナノフィラーを含む。
【0012】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、少なくとも1つのナノフィラーは、以下の官能基、すなわち、グリシジル、シラン、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、イソシアン酸塩、エチレン、及びアミドのうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、少なくとも1つのナノフィラーは、水酸化マグネシウム及びアルミニウム三水和物のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
本開示の実施例に従う荷重支持アセンブリは、少なくとも1つの引張部材を含む。引張部材は、自己耐火性樹脂及び強化繊維を含む。ジャケット材料が、少なくとも1つの引張部材を覆う。
【0015】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、荷重支持アセンブリは、エレベータかごの重量を支持するよう構成される。
【0016】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、荷重支持アセンブリは、乗客コンベア用の手すりである。
【0017】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、自己耐火性樹脂は、耐火特性を提供する少なくとも1つの官能基を含む。
【0018】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、少なくとも1つの官能基は、窒素系及びリン系官能基のうちの1つである。
【0019】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、荷重支持アセンブリは、乗客コンベア用の手すりである。
【0020】
先行の実施形態のいずれかにおけるさらなる実施形態では、樹脂は、エポキシ、ポリウレタン、ビニルエステル、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、及びメラミンのうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
本開示の実施例に従う荷重支持アセンブリを作成する方法は、強化繊維を金型に供給することと、樹脂前駆体を金型に供給することと、耐火性を有する樹脂を含む少なくとも1つの合成引張部材を形成するために樹脂前駆体及び繊維を硬化させることと、少なくとも1つの合成引張部材をジャケット材料で覆うこととを含む。
【0022】
先行の方法のさらなる実施形態では、樹脂は、自己耐火性樹脂である。
【0023】
先行の方法のいずれかにおけるさらなる実施形態では、自己耐火性樹脂は、耐火特性を提供する少なくとも1つの官能基を含む。
【0024】
先行の方法のいずれかにおけるさらなる実施形態では、少なくとも1つの官能基は、硬化剤での硬化過程中に樹脂前駆体に導入される。
【0025】
先行の方法のいずれかにおけるさらなる実施形態では、硬化剤は、脂肪族ポリエーテルトリアミン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(3−アミノフェニル)メチルホスフィンオキシド、及びビス(4−アミノフェニル)メチルホスホネートのうちの少なくとも1つを含む。
【0026】
先行の方法のいずれかにおけるさらなる実施形態は、樹脂前駆体に少なくとも1つの添加物を供給することを含む。
【0027】
先行の方法のいずれかにおけるさらなる実施形態では、少なくとも1つの添加物は、耐火特性を提供する第1添加物と、煙抑制剤及びチャー形成特性のうちの少なくとも1つを提供する第2添加物とを含む。
【0028】
先行の方法のいずれかにおけるさらなる実施形態では、第1添加物は、リン含有化合物またはポリマー及び窒素含有化合物またはポリマーのうちの少なくとも1つを含む。
【0029】
先行の方法のいずれかにおけるさらなる実施形態では、第2添加物は、金属交換クレー、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛複合体、亜鉛モリブデネイト、及びケイ酸マグネシウム複合体のうちの少なくとも1つを含む。
【0030】
本発明の様々な特徴及び利点は、以下の詳細な記述から当業者に明らかとなるであろう。詳細な記述に添付の図面は、以下のとおり簡単に記述できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に従って設計された荷重支持部材を含むエレベータシステムの選択された部分を概略的に説明する図である。
図2】1つの例示的エレベータ荷重支持部材アセンブリを概略的に示す端面図である。
図3】別の例示的エレベータ荷重支持アセンブリを概略的に説明する端面図である。
図4】本発明の実施形態に従って設計された駆動ベルト及び手すりを含む乗客コンベアを図式的に説明する図である。
図5】例示的駆動ベルト構成を概略的に示す図である。
図6】例示的手すり構成を概略的に示す図である。
図7】例示的合成引張部材の詳細図を概略的に示す。
図8】合成引張部材を作成するシステムを概略的に示す図である。
図9】別の例示的合成引張部材の詳細図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、例示的エレベータシステム20の選択された部分を概略的に示す。エレベータかご22及び釣合いおもり24が、荷重支持アセンブリ26によって吊り下げられる。1つの実施例では、荷重支持アセンブリ26は、複数のフラットベルトを備える。別の実施例では、荷重支持アセンブリ26は、複数のラウンドロープを備える。
【0033】
荷重支持アセンブリ26は、エレベータかご22及び釣合いおもり24の重量を支え、滑車28及び30の移動によるエレベータかご22の所望の位置への移動を容易にする。滑車の1つは、エレベータかご22の所望の移動及び配置を引き起こすよう既知の方法でエレベータ機械によって移動される牽引滑車となる。もう1つの滑車は、この実施例では遊動輪滑車である。
【0034】
図2は、例示的荷重支持アセンブリ26の一部として含まれる1つの例示的フラットベルト構成を概略的に示す端面図である。この実施例では、フラットベルトは、複数の細長いコード引張部材32及び引張部材32に接触するポリマージャケット34を含む。この実施例では、ジャケット34は引張部材32を包含する。1つの実施例におけるポリマージャケット34は、熱可塑性エラストマーを含む。1つの実施例では、ジャケット34は熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0035】
荷重支持アセンブリ26の一部として用いられる例示的ロープは、図3に概略的に示され、少なくとも1つの引張部材32及びポリマージャケット34とを含む。図3の実施例では、前述のものと同じ材料が用いられ得る。
【0036】
図4は、例示的乗客コンベア40を概略的に説明する。この実施例では、複数の踏段42が乗降場44と46との間で乗客を運ぶよう既知の方法で移動する。手すり48が、コンベア40上を移動する間に乗客が掴むために提供される。
【0037】
図6に示されるように、手すり48は、ポリマージャケット34によって少なくとも部分的に覆われた複数の引張部材32を含む。この実施例におけるポリマージャケットは、手すり48の把持面及び本体を画定する。
【0038】
図4の実施例はさらに、所望の方向に踏段42を推進するための駆動装置50を含む。モータ52が、駆動ベルト56の移動を引き起こすよう駆動滑車54を回転させる。図5に示されるように、例示的駆動ベルト56は、ジャケット34によって覆われた複数の細長いコード引張部材32を有する。ジャケット材料は、駆動滑車54上の対応面と相互作用する歯57を画定する。踏段チェーン58(図4)が、踏段42の所望の移動を引き起こすよう駆動ベルト56上の歯59によって係合される。この実施例では、歯57及び59は、駆動ベルト56の互いに反対向きの側にある。
【0039】
いくつかの実施形態では、引張部材32は合成材料、より詳細には繊維強化高分子樹脂を含む。合成引張部材32は、金属ベースの引張部材よりも軽量であり、いくつかの状況で有利になり得る。合成材料は、固有の耐火性質または特性を通常は有していない。
【0040】
図7は、第1例示的合成引張部材132の選択された特徴を概略的に説明する。合成引張部材132は樹脂134を含む。例示的樹脂134は、エポキシ、ポリウレタン、ビニルエステル、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、及びメラミンを含む。
【0041】
引張部材132は、合成引張部材132の機械的特性を向上させる繊維136を含む。繊維136は、この実施例では樹脂134に包含される。図7において繊維136は互いに平行に配置されて示されるが、ランダムな繊維配置を含むあらゆる繊維配置が用いられ得る。例示的繊維136は、液晶高分子、炭素繊維、ガラス繊維、超高分子量ポリエチレン及び/またはポリプロピレン繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、アラミド繊維及びナイロンを含む。
【0042】
樹脂134は1つ以上の添加物をさらに含む。特定の実施例では、合成引張部材132は、耐火特性を提供する第1添加物138と、煙抑制/チャー形成特性を提供する第2添加物140とを含む。例示的耐火性第1添加物138は、リン含有または窒素含有化合物またはポリマーを含む。例示的煙抑制及び/またはチャー形成第2添加物140は、金属交換クレー、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛複合体、亜鉛モリブデネイト、ケイ酸マグネシウム複合体を含む。
【0043】
説明された実施例では、合成引張部材132は任意選択のナノフィラー142を含む。任意選択のナノフィラー142は、合成引張部材132の機械的特性及びカスタマイズを改善することができる。例示的ナノフィラー142は、以下の官能基、すなわち、グリシジル、シラン、ヒドロキシル、カルボキシル、アミン、イソシアン酸塩、エチレン、及びアミドのうちの1つ以上を有する材料を含む。より詳細には、例示的ナノフィラーは、水酸化マグネシウム及びアルミニウム三水和物を含む。いくつかの実施例では、ナノフィラー142は化学的に処理される。
【0044】
図8は、例示的引張部材132を作成するためのシステム144を示す。システム144は、少なくとも1つの樹脂前駆体タンク146及び少なくとも1つの定量ポンプ148を含む。この実施例は、2つのタンク146と、少なくとも1つの樹脂前駆体タンク146それぞれのための専用の定量ポンプ148とを含む。添加物138、140及び任意選択のナノフィラー142が、少なくとも1つの樹脂前駆体タンク146に添加される。1つの実施例では、複数の樹脂前駆体タンク146が、異なる種類の樹脂前駆体(例えば、前述の例示的樹脂134に選択された前駆体)を含み、共に混合される。少なくとも1つの樹脂前駆体タンク146は、添加物を加えた樹脂前駆体を注入ボックス150に供給する。注入ボックス150はさらに繊維136を受ける。
【0045】
注入ボックス150は、樹脂134及び繊維136を金型152に供給する。1つの実施例では、金型152は注入ボックス150とは異なる温度にある。より詳細には、金型152は冷却される。金型152は、樹脂134及び繊維136を引張部材132の形状へと形成する。形成された引張部材132は、樹脂134を硬化させるよう選択された様々な温度にある1つ以上のゾーン154、156及び158を通じて移動する。
【0046】
図9は、第2例示的合成引張部材232の特徴を概略的に説明する。合成引張部材232は、自己耐火性樹脂234及び強化繊維136を含む。自己耐火性樹脂234は、耐火性硬化剤で化学的に硬化される樹脂前駆体を含む。硬化は、耐火性官能基を樹脂前駆体へと組み込ませ、自己耐火性樹脂234を形成する。1つの実施例では、硬化は耐火性官能基を自己耐火性樹脂234の架橋へと導く。
【0047】
例示的自己耐火性樹脂234は、剛性の熱硬化性炭素エポキシ複合材である。例示的エポキシ樹脂前駆体は、ジグリシジルメチルホスホネート、ジグリシジルフェニルホスホネート、亜リン酸トリグリシジル、及びリン酸トリグリシジルを含む。例示的硬化剤は、脂肪族ポリエーテルトリアミン(Huntsman社より入手可能なJEFFAMINE(登録商標)T−403等)、ビス(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(3−アミノフェニル)メチルホスフィンオキシド及びビス(4−アミノフェニル)メチルホスホネートを含む。
【0048】
自己耐火性樹脂234を含む引張部材232は、1つの実施例では、樹脂前駆体が耐火特性を既に有するため樹脂前駆体に添加物を添加しないという点以外では図8のシステム144と類似したシステムによって形成される。
【0049】
図8において繊維136は互いに平行に配置されて示されるが、ランダムな繊維配置を含むあらゆる繊維配置が用いられ得る。例示的繊維136は、液晶高分子、炭素繊維、ガラス繊維、超高分子量ポリエチレン及び/またはポリプロピレン繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維、アラミド繊維及びナイロンを含む。
【0050】
上記の説明は実質的に限定するものではなく例示に過ぎない。本発明の本質を必ずしも逸脱しない、開示された実施例への変形及び修正は、当業者に明らかとなるであろう。本発明に付与される法的保護の範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9