特許第6609096号(P6609096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6609096
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】電磁スイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/54 20060101AFI20191111BHJP
   H01H 1/06 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   H01H50/54 B
   H01H1/06 J
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-161016(P2014-161016)
(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公開番号】特開2016-39013(P2016-39013A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年3月9日
【審判番号】不服2018-10229(P2018-10229/J1)
【審判請求日】2018年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100124752
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】西田 亮
(72)【発明者】
【氏名】細矢 章文
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雅夫
【合議体】
【審判長】 大町 真義
【審判官】 田村 嘉章
【審判官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−62156(JP,A)
【文献】 実開昭52−100960(JP,U)
【文献】 特開平11−273517(JP,A)
【文献】 特開2003−31094(JP,A)
【文献】 特開2009−240528(JP,A)
【文献】 実開昭56−150048(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/54
H01H 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル(3)への通電により電磁石を形成するソレノイド(SL)と、
二本の接続端子(9、10)を介して電気回路の電源側と負荷側とにそれぞれ接続される一組の固定接点(11)と、
前記ソレノイド(SL)のオン/オフ動作に応じて前記一組の固定接点(11)間を導通/遮断する可動接点(12)とを備えるスタータ用の電磁スイッチ(1)であって、
前記一組の固定接点(11)は、前記ソレノイド(SL)の軸心方向と直交する径方向の一方側に配置される一方の固定接点(11a)と径方向の他方側に配置される他方の固定接点(11b)とを有し、
また、前記一方の固定接点(11a)は、前記二本の接続端子(9、10)の内、電源側に接続するためのバッテリケーブルが接続される接続端子(9)に設けられた台座(9a)に固定され、
前記他方の固定接点(11b)は、負荷側に接続するためのモータリード線が接続される接続端子(10)に設けられた台座(10a)に固定され、
前記固定接点(11)の平面上で前記径方向と交差する方向を長手方向と呼び、この長手方向と直交する方向を短手方向と呼ぶ時に、
前記固定接点(11)は、前記可動接点(12)と対向する接点面上に前記短手方向に延びる2本の突条部(21)を有し、この2本の突条部(21)が前記長手方向に所定の間隔を空けて設けられ、且つ、前記2本の突条部(21)の間に前記突条部(21)の頂部より低い平面部(22)が形成され
記可動接点(12)は、前記一方の固定接点(11a)に対向する一方の接点面(12a)と前記他方の固定接点(11b)に対向する他方の接点面(12b)とを有し、前記一方の接点面(12a)上には、前記一方の固定接点(11a)に設けられる前記2本の突条部(21)と交差する1本の凸条部(23)が設けられ、前記他方の接点面(12b)上には、前記他方の固定接点(11b)に設けられる前記2本の突条部(21)と交差する1本の凸条部(23)が設けられていることを特徴とする電磁スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載した電磁スイッチ(1)において、
前記平面部(22)から前記突条部(21)の前記頂部までの高さは、0.32mmであることを特徴とする電磁スイッチ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した電磁スイッチ(1)において、
前記固定接点(11)の前記長手方向で前記2本の突条部(21)が前記平面部(22)を挟んで向かい合う側を内側、その反対側を外側と定義した時に、
前記突条部(21)の前記頂部から外側へ傾斜する傾斜面(21a)が形成されていることを特徴とする電磁スイッチ。
【請求項4】
請求項3に記載した電磁スイッチ(1)において、
前記傾斜面(21a)が前記頂部から前記台座(9a、10a)まで延びて形成されることを特徴とする電磁スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドのオン/オフ動作に応じて電気接点を開閉する電磁スイッチに関し、特にスタータに搭載される電磁スイッチに用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
例えば、寒冷地等でスタータを使用する場合、電磁スイッチに設けられる固定接点の表面が凍結することがある。具体的には、バッテリケーブルを通じて電磁スイッチの電源端子が冷やされると、その電源端子に固定されている固定接点の表面温度が低下することで空気中の水蒸気が接点表面に結露して凍結に至る。この状態で電磁スイッチを作動させると、可動接点との当接面である固定接点の表面に氷の膜が形成されているため、接点間の導通不良を招く問題を生じる。
これに対し、特許文献1には、図8(a)に示すように、固定接点100の表面に多数の条溝110を形成する従来技術が開示されている。この従来技術によれば、接点当接時の接触面積が小さくなり、単位面積当たりの接触圧力が大きくなるので、固定接点100の表面に凍結した氷の膜を接点当接時の衝撃力により砕氷することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭54−88563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の従来技術(特許文献1)では、図8(b)に示すように、固定接点100の表面に形成される多数の条溝110の間、つまり、隣り合う条溝110同士の間に平坦面120が残されているため、接点間の面圧を十分に高くすることができない。このため、寒さが厳しい環境条件での使用あるいは湿度が排出され難い構造を有する電磁スイッチでは、砕氷力が不足するケースがある。この場合、接点表面の氷を粉砕して導通を確保するために数十回に渡ってオン/オフ動作を繰り返す必要が生じる。
【0005】
また、仮に氷を粉砕できたとしても、接点間の導通を確保するためには、粉砕した氷を接点上から排除する過程が必要となる。しかし、従来技術では、接点表面に多数の条溝110が形成されるため、条溝110の無い平坦な接点表面と比較して氷が付着する表面積が大きくなり、粉砕された氷が条溝110内に残存する可能性が高い。すなわち、粉砕された氷を接点上から排除することが困難となる。
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、固定接点の表面に凍結した氷を粉砕する力が大きく、且つ、粉砕した氷を接点上から排除することが容易な電磁スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、コイルへの通電により電磁石を形成するソレノイドと、二本の接続端子を介して電気回路の電源側と負荷側とにそれぞれ接続される一組の固定接点と、ソレノイドのオン/オフ動作に応じて一組の固定接点間を導通/遮断する可動接点とを備えるスタータ用の電磁スイッチであって、一組の固定接点は、ソレノイドの軸心方向と直交する径方向の一方側に配置される一方の固定接点と径方向の他方側に配置される他方の固定接点とを有し、また、一方の固定接点は、二本の接続端子の内、電源側に接続するためのバッテリケーブルが接続される接続端子に設けられた台座に固定され、他方の固定接点は、負荷側に接続するためのモータリード線が接続される接続端子に設けられた台座に固定され、固定接点の平面上で前記径方向と交差する方向を長手方向と呼び、この長手方向と直交する方向を短手方向と呼ぶ時に、固定接点は、可動接点と対向する接点面上に短手方向に延びる2本の突条部を有し、この2本の突条部が長手方向に所定の間隔を空けて設けられ、且つ、2本の突条部の間に突条部の頂部より低い平面部が形成されている
また、可動接点は、一方の固定接点に対向する一方の接点面と他方の固定接点に対向する他方の接点面とを有し、一方の接点面上には、一方の固定接点に設けられる2本の突条部と交差する1本の凸条部が設けられ、他方の接点面上には、他方の固定接点に設けられる2本の突条部と交差する1本の凸条部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、ソレノイドのオン動作により可動接点が一組の固定接点に当接する際に、可動接点に設けられた凸条部と固定接点に設けられた突条部とが互いの交差部で接触する。つまり、一方の固定接点および他方の固定接点は、それぞれ可動接点に対し2箇所ずつで接触する。この場合、特許文献1に開示された従来技術と比較すると、可動接点と固定接点との接触面積が減少して接触部の面圧が増大するため、接点表面に凍結した氷を粉砕する力が大きくなる。
また、固定接点に設けられる2本の突条部の間に平面部を形成しているので、接点表面に結露した水分を平面部に溜めることができ、その水分が凍結した場合でも、突条部の頂部まで凍結することを回避できる。言い換えると、平面部に凍結した氷の表面より突条部の頂部が露出していれば、接点当接時の導通を確保することができる。
さらに、2本の突条部の間に平面部を形成することで、接点表面に多数の条溝を形成する特許文献1の構成と比較して氷が付着する表面積を小さくできる。これにより、固定接点の表面に氷が付着する力を低減できるので、粉砕した氷を接点上から排除することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る一組の固定接点と可動接点を軸方向から見た平面図である。
図2】実施例1に係る接点当接時の断面図(図1のII−II断面図)である。
図3】(a)実施例1に係る固定接点の平面図、(b)同図(a)のIII−III断面図である。
図4】(a)実施例1に係る可動接点の平面図、(b)同図(a)のIVb−IVb断面図、(c)同図(a)のIVc−IVc断面図である。
図5】実施例1に係る電磁スイッチの断面図である。
図6】実施例2に係る固定接点の突条部を示す断面図である。
図7】実施例3に係る固定接点の突条部を示す断面図である。
図8】(a)従来技術に係る固定接点の平面図、(b)同図(a)のVIII−VIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
〔実施例1〕
実施例1では、本発明に係る電磁スイッチ1をエンジン始動用のスタータに搭載した一例を説明する。なお、スタータの構成および作動は周知であるため、詳細な説明は省略し、以下、本発明に係る電磁スイッチ1の構成について説明する。
電磁スイッチ1は、スタータモータ(図示せず)への通電電流をオン/オフするメイン接点(後述する)と、このメイン接点を開閉するソレノイドSLとを有する。
ソレノイドSLは、図5に示すように、磁気回路の一部を兼ねる金属製のフレーム2と、このフレーム2の内部に収容されるコイル3と、コイル3の内周に円筒スリーブ4を介して配置されるプランジャ5と、このプランジャ5と軸方向に対向して配置される固定鉄心6等より構成される。
【0011】
コイル3は、一端が図示しないコネクタ端子(50端子とも言う)に接続され、他端がフレーム2を通じてアース側に接続される。コネクタ端子は、例えば、スタータスイッチあるいはスタータリレーを介してバッテリに接続される。
プランジャ5は、円筒スリーブ4の内周を軸方向に摺動可能に挿入され、コイル3への通電により電磁石が形成されると、磁化された固定鉄心6に吸着される。
固定鉄心6は、円筒スリーブ4の軸方向一端側(図示右側)の内周に配置され、円環状を有するステーショナリコア7の内周に圧入嵌合してステーショナリコア7と一体に構成される。ステーショナリコア7は、フレーム2と固定鉄心6との間を磁気的に接続している。固定鉄心6とプランジャ5との間には、電磁石の吸引力が消滅した時に、プランジャ5を反固定鉄心方向(図示左方向)へ押し戻すリターンスプリング8が配設される。
【0012】
メイン接点は、2本の接続端子9、10を介してスタータモータの電源ラインに接続される一組の固定接点11と、この一組の固定接点11間を導通/遮断する可動接点12とで構成される。
2本の接続端子9、10は、外周に雄ネジ部が形成されたボルト形状を有し、樹脂製の接点カバー13にワッシャ14、15を介して固定され、接点カバー13より軸方向に突き出る一方の接続端子9にバッテリケーブルが接続され、他方の接続端子10にモータリード線が接続される。以下、一方の接続端子9をB端子ボルト9と呼び、他方の接続端子10をM端子ボルト10と呼ぶ。
接点カバー13は、軸方向の他端側がフレーム2の内側に挿入されて、フレーム2の開口端部にカシメ固定され、内部にメイン接点を配置する接点室16を形成している。
【0013】
一組の固定接点11は、ソレノイドSLの軸心方向と直交する径方向の一方側(図5の上側)に配置されてB端子ボルト9の台座9aに固定される一方の固定接点11aと、径方向の他方側に配置されてM端子ボルト10の台座10aに固定される他方の固定接点11bである。
可動接点12は、プランジャ5に固定されるプランジャロッド17の端部に絶縁材であるベークワッシャ18を介して支持され、且つ、プランジャロッド17の外周に配置される接点圧スプリング19によってプランジャロッド17の先端方向(図示右方向)へ付勢されている。プランジャロッド17の先端部には、可動接点12の抜け止め用ワッシャ20がカシメ固定されている。
上記メイン接点は、ソレノイドSLのオン動作により可動接点12が一組の固定接点11に当接して両固定接点11が導通することでオン状態となり、ソレノイドSLのオフ動作により可動接点12が一組の固定接点11から離れて両固定接点11間の導通が遮断されることでオフ状態となる。
【0014】
続いて、本発明に係る固定接点11および可動接点12の特徴を説明する。
固定接点11は、図1に示すように、可動接点12と対向する接点面の平面形状が矩形状に形成され、接点面上に2本の突条部21が設けられている。
ここで、ソレノイドSLの軸心方向と直交して一方の固定接点11aと他方の固定接点11bとが配置される径方向(図1の上下方向)を特定方向と呼ぶ時に、一方の固定接点11aおよび他方の固定接点11bは、それぞれ矩形状の長手方向が特定方向と直交する向きに配置され、短手方向が特定方向と平行な向きに配置される。
突条部21は、図3(a)に示すように、固定接点11の長手方向で中心より一端側(図示左側)と他端側(図示右側)とに1箇所ずつ設けられ、それぞれ突条部21の頂部が固定接点11の短手方向に延びている。突条部21の頂部は、例えば、固定接点11の長手方向に切断した断面形状が曲率を有する凸曲面によって形成される。
【0015】
また、固定接点11の長手方向で2本の突条部21が向かい合う側を内側、その反対側を外側と定義した時に、突条部21の頂部から外側へ傾斜する傾斜面21aが形成されている。具体的には、図3(b)に示すように、頂部の凸曲面を形成する曲率の終点から接線方向へ傾斜して、固定接点11が固定される端子ボルト9、10の台座9a、10aの表面まで延びる傾斜面21aが形成される。台座9a、10aの表面に対する傾斜面21aの角度は、例えば45度である。
なお、端子ボルト9、10の台座9a、10aには、固定接点11を位置決めするための浅い窪みが形成されている。固定接点11は、台座9a、10aに形成された窪みに反突条部側を嵌め込んで位置決めされ、ロウ付け等の手段によって台座9a、10aに固定される。さらに、固定接点11の接点面上には、長手方向に所定の間隔を有して設けられる2本の突条部21の間に突条部21の頂部より低い平面部22が形成されている。この平面部22から突条部21の頂部までの高さは、コンマ数ミリ程度(例えば、0.32mm)であるが、突条部21の摩耗による接点寿命との兼ね合いによって適宜に決めることができる。
【0016】
可動接点12は、図1に示すように、一方の固定接点11aに対向する一方の接点面12aと、他方の固定接点11bに対向する他方の接点面12bとを有している。この可動接点12には、図4(a)に示すように、一方の接点面12a上と他方の接点面12b上とにそれぞれ凸条部23が1本ずつ設けられている。この凸条部23は、例えば、同図(b)、(c)に示すように、打ち出しによって形成することができ、固定接点11に設けられる2本の突条部21と直線状に交差して設けられる。つまり、図1に示すように、一方の接点面12a上に設けられる1本の凸条部23が一方の固定接点11aに設けられる2本の突条部21と直線状に交差し、他方の接点面12b上に設けられる1本の凸条部23が他方の固定接点11bに設けられる2本の突条部21と直線状に交差している。固定接点11に設けられる2本の突条部21の頂部間の距離より凸条部23の長さの方が大きいことは当然である。なお、図1に示す可動接点12は、反接点面側から見た平面図であり、凸条部23を打ち出しによって形成した窪みが実線で示されている。
【0017】
〔実施例1の作用及び効果〕
1)スタータに搭載される電磁スイッチ1は、例えば、冬の寒さが厳しい寒冷地等で外気温が氷点下まで低下した時に、接点室16の内部で空気中の水蒸気が固定接点11(特にB端子ボルト9に固定される一方の固定接点11a)の表面に結露して凍結することがある。これに対し、実施例1では、固定接点11に突条部21を設けて、その固定接点11に対向する可動接点12に凸条部23を設けている。これにより、ソレノイドSLのオン動作により可動接点12が一組の固定接点11に当接する際に、固定接点11に設けられた突条部21と可動接点12に設けられた凸条部23とが互いの交差部で接触する。つまり、可動接点12と固定接点11とが面接触することはなく、図2に示すように、互いの交差部のみで接触するため、可動接点12と固定接点11との接触面積が減少する。その結果、突条部21と凸条部23との接触面圧が増大して、固定接点11の表面に凍結した氷を粉砕する力が大きくなるため、接点当接時の導通を確保することが可能である。
【0018】
2)固定接点11は、2本の突条部21の間に突条部21の頂部より低い平面部22を形成しているので、接点表面に結露した水分を平面部22に溜めることができる。これにより、平面部22に溜まった水分が凍結しても、突条部21の頂部まで凍結することを回避できる。言い換えると、平面部22で凍結した氷の表面より突条部21の頂部が露出していれば、接点当接時の導通を確保することができる。
3)2本の突条部21の間に平面部22を形成することで、特許文献1に開示された接点表面に多数の条溝を形成する構成と比較して、氷が付着する表面積を小さくできる。これにより、固定接点11の表面に氷が付着する力を低減できるので、粉砕した氷を接点上から排除することが容易になる。
【0019】
4)固定接点11に設けられる突条部21の頂部より外側に傾斜面21aを有しているので、固定接点11の表面に結露した水分が突条部21の頂部に留まることはなく、傾斜面21aを伝って突条部21の外側へ流れやすくなる。特に、実施例1では、傾斜面21aが突条部21の頂部から端子ボルト9、10の台座9a、10aまで延びているので、突条部21の表面に結露した水分が台座9a、10aの表面まで流れることができる。このため、固定接点11の表面に結露水が溜まる機会が少なくなり、結果的に接点表面の凍結を抑制できる。
【0020】
以下、本発明に係る他の実施例について説明する。
なお、実施例1と共通する部品および構成を示すものは、実施例1と同一の符号を付与して詳細な説明は省略する。
〔実施例2〕
実施例1では、固定接点11に設けられる突条部21の頂部を凸曲面で形成する一例を記載したが、その凸曲面の曲率を適宜に変更しても良い。例えば、図6(a)は、曲率が比較的小さい、つまり大きなRで頂部を形成した場合、同図(b)は、曲率が比較的大きい、つまり小さなRで頂部を形成した場合である。あるいは、曲率を持つ凸曲面ではなく、同図(c)に示すように、突条部21の頂部に微小な端面を有する形状でも良い。
【0021】
〔実施例3〕
この実施例3は、図7に示すように、固定接点11に設けられる突条部21の頂部より外側に傾斜面21aを有し、その傾斜面21aの終端を端子ボルト9、10の台座9a、10aより手前に設定している。つまり、傾斜面21aの終端が端子ボルト9、10の台座9a、10aまで延びていない場合の事例である。但し、傾斜面21aの終端は、出来る限り台座9a、10aの表面に近接している方が望ましい。
この実施例3の構成であっても、固定接点11の表面に結露した水分が突条部21の頂部に留まることはなく、傾斜面21aを伝って突条部21の外側へ流れやすくなるので、接点表面が凍結することを抑制できる。
【0022】
〔変形例〕
実施例1では、端子ボルト9、10に設けられる台座9a、10aの表面に対して突条部21の頂部より外側に形成される傾斜面21aの角度を例えば45度として記載したが、45度に限定するものではなく、45度より小さい角度、または大きい角度でも良い。つまり、スタータの取付け姿勢によって傾斜面21aの角度を適宜に変更することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 電磁スイッチ
3 コイル
9 B端子ボルト(接続端子)
9a B端子ボルトの台座
10 M端子ボルト(接続端子)
10a M端子ボルトの台座
11 一組の固定接点
11a 一方の固定接点
11b 他方の固定接点
12 可動接点
21 固定接点の突条部
21a 突条部の傾斜面
22 固定接点の平面部
23 可動接点の凸条部
SL ソレノイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8