特許第6609114号(P6609114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イトーキの特許一覧

<>
  • 特許6609114-机 図000002
  • 特許6609114-机 図000003
  • 特許6609114-机 図000004
  • 特許6609114-机 図000005
  • 特許6609114-机 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6609114
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】机
(51)【国際特許分類】
   A47B 13/04 20060101AFI20191111BHJP
   F16B 12/12 20060101ALI20191111BHJP
   F16B 12/14 20060101ALI20191111BHJP
   F16B 12/48 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   A47B13/04
   F16B12/12 B
   F16B12/14
   F16B12/48 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-104926(P2015-104926)
(22)【出願日】2015年5月22日
(65)【公開番号】特開2016-214692(P2016-214692A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】藤本 有希
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊也
【審査官】 中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−208419(JP,A)
【文献】 実開昭53−096404(JP,U)
【文献】 実開昭52−164003(JP,U)
【文献】 実公昭61−014729(JP,Y2)
【文献】 米国特許第05613793(US,A)
【文献】 特開2000−070044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 1/00−41/06
F16B 12/00−12/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、上端が前記天板に連結されていて鉛直方向に長い2本の脚杆と、前記2本の脚杆の下部の相対向した内側面に当接した略水平姿勢の下ビーム材とを備えており、
前記下ビーム材のうち前記両脚杆に近い両端部の下面に、下向きに突出した張り出し部が形成されていて、前記張り出し部の下面は、前記脚杆に向けて低くなる傾斜面になっており、
前記下ビーム材の端部と脚杆とは、前記下ビーム材の下水平面の延長線よりも上に配置された水平姿勢のダボと、前記ダボの下方において前記張り出し部の傾斜面から前記脚杆に向けてねじ込まれたビスとによって固定されている構成であって、
前記ビスは、先端に向けて高くなるように傾斜した姿勢であり、前記ビスの先端は、前記下ビーム材の下水平面の延長線よりも下に位置して、前記ビスの全体が前記延長線よりも下方に位置している、
机。
【請求項2】
前記張り出し部の傾斜面に、前記ビスの頭が隠れる座繰り穴とこれに連通したビス挿通穴とを空けている、
請求項1に記載した机。
【請求項3】
前後左右4本の木製の脚杆を有しており、前後一対の脚杆がそれぞれ木製の前記ビーム材で連結されている、
請求項1又は2に記載した机。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、鉛直状の脚杆を水平状のビーム材で連結して成る机(テーブル)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
机は天板を左右の脚で支持した構造になっているが、脚は様々な形態・構造がある。木製の机の場合は、幅広の1枚の板で構成して、下端に前後長手の接地部材を設けたものや、特許文献1に開示されているように、前後左右4本の脚杆を備えたものなどがある。特許文献1では、前後の脚杆の下端部が前後長手のビーム材で連結されており、ビーム材と脚杆とは、その下面に重なった接地体に上向き姿勢のビスで固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−301973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、木製家具では、組み立ての容易性や美観の点から、部材同士の連結(接合)にダボ(木製ピン)が使用されていることが多い。すなわち、2つの部材の当接面に、相対向して開口したダボ穴を空けて、これらのダボ穴にダボを強制的に嵌め込むものであり、連結強度を高めるためにダボに接着剤を塗布することも行われている。
【0005】
そして、特許文献1の脚は接地体を備えているが、主としてデザイン上の要請により、接地体を設けずに、脚杆を床に接地させて、前後の脚杆を下端よりも上(床面よりも上)の位置にいてビーム材で連結することがある。この場合、脚杆とビーム材とが木製の場合は、上記のとおりダボを使用して連結しているが、前後の脚杆を間隔を広げるような外力がかかると、ダボが抜けるおそれがあった。
【0006】
この点に対する対策の一つとして、脚杆とビーム材とをビスで連結することが考えられるが、脚杆に貫通させたビスをビーム材にねじ込んだ場合は、ビスの頭が脚杆の外側に露出して美観が悪化するという問題がある。さりとて、ビスの頭を座繰り穴に隠して、座繰り穴を木製プラグで塞ぐと、構造が複雑化してコストが嵩むのみならず、プラグの端面が露出するため、多少の違和感が残ることは否めない。
【0007】
また、ビス止め方法としては、ビスをビーム材に傾斜姿勢で挿通して脚杆にねじ込む斜め打ちも考えられるが、この斜め打ちの方法では、ビスがダボに当たるおそれがあり、高い締結強度を確保し難い問題がある。
【0008】
他の対策として、L形の金具を使用して、これを脚杆の内面とビーム材の下面とにビスで固定するという方法が考えられる。しかし、この方法は部材管理やねじ作業に手間がかかるのみならず、金具の垂直片がビーム材の下方に露出するため、美観を害しやすいという問題がある。特に、金具は金属の質感があって木製の脚杆やビーム材に対して違和感があるため、美観の問題から金具は使用を敬遠される傾向が高い。
【0009】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は多くの構成を含んでおり、その例を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は、
「天板と、上端が前記天板に連結されていて鉛直方向に長い2本の脚杆と、前記2本の脚杆の下部の相対向した内側面に当接した略水平姿勢の下ビーム材とを備えており、
前記下ビーム材のうち前記両脚杆に近い両端部の下面に、下向きに突出した張り出し部が形成されていて、前記張り出し部の下面は、前記脚杆に向けて低くなる傾斜面になっており、
前記下ビーム材の端部と脚杆とは、前記下ビーム材の下水平面の延長線よりも上に配置された水平姿勢のダボと、前記ダボの下方において前記張り出し部の傾斜面から前記脚杆に向けてねじ込まれたビスとによって固定されている」
という基本構成の下、更に、
前記ビスは、先端に向けて高くなるように傾斜した姿勢であり、前記ビスの先端は、前記下ビーム材の下水平面の延長線よりも下に位置して、前記ビスの全体が前記延長線よりも下方に位置している」
という構成が付加されている。
【0011】
【0012】
求項の発明では、請求項1において、
前記張り出し部の傾斜面に、前記ビスの頭が隠れる座繰り穴これに連通したビス挿通穴とを空けている
という構成になっている。
【0013】
請求項の発明は、請求項1又は2において、
前後左右4本の木製の脚杆を有しており、前後一対の脚杆がそれぞれ木製の前記ビーム材で連結されている
という構成になっている。
なお、請求項の発明は、左右の前脚杆同士をビーム材で連結することや、左右の後ろ脚杆同士をビーム材で連結することを排除するものではない。すなわち、少なくとも前後の脚杆同士がビーム材で連結されていたらよい。
【0014】
【0015】
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、ビーム材の端部に設けた設け張り出し部がビスで脚杆に締結されるため、高い連結強度を確保できる。そして、張り出し部はビーム材の一部を構成しているため、違和感はなくて美観の悪化は全く又は殆ど生じない。また、張り出し部を設けたことによってビスのねじ込み位置をダボから大きく離すことが容易に実現できるため、ダボとビスとの干渉を回避して高い締結強度を確保できる。また、構造が簡単であるためコスト面においても優れている。
【0017】
また、張り出し部の下面は傾斜面になっていて、ビーム材の下面と張り出し部の下面とが滑らかに連続するため、張り出し部は全く違和感がない。このため、美観の面で特に有益である。
【0018】
更に、請求項のように張り出し部に座繰り穴を設けると、ビスの頭が露出して人目に触れることを確実に防止できるため、美観の維持は一層確実になる。かつ、座繰り穴とビス挿通穴とが傾斜しているため、それら座繰り穴とビス挿通穴の加工は容易である(ドリルを掴持したチャックがビーム材に当たらない。)。
【0019】
机では前後の脚杆をビーム材で連結していることが多いため、請求項の構成を採用すると、多くの机に適用できて汎用性が高い。すなわち、請求項の構成では、特に本願発明の真価が発揮される。また、請求項の構成では、ビーム材の下面は人目に触れないため、美観の点で好ましい。
【0020】
本願発明では、ダボは下ビーム材の下面の延長線よりも上に位置しており、ビスはその全体が延長線よりも下方に位置しているため、ダボとビスとの間に必要な間隔を取ることができて、高い締結強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る机の正面図である(引出しの前板は省略している。)。
図2】(A)は机の斜視図、(B)は(A)のB−B視断面図である。
図3】机の右端部の縦断正面図である。
図4】(A)は机の一部破断側面図、(B)は(A)の要部拡大図である。
図5】(A)は机と収納装置とを連結した状態での斜視図、(B)は(A)のB−B視断面図、(C)は連結金具の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1).第1施形態の概要
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、児童用の木製学習机に適用している。
【0023】
図1,2のとおり、この机は、左右横長の天板1と左右の脚2とを有しており、天板1の下面部に、左右一対の引出し3を前後動自在に配置している。左右の脚2は木板製であり、それぞれ、前後の細長い脚杆4と、その上部を連結した上ビーム材5と、前後脚杆4の下部を連結した下ビーム材6とで構成されている。脚杆4と上下ビーム材5,6とは、それぞれ厚さ方向が左右方向を向くように配置されている。脚杆4のうち上ビーム材5よりも下方の部分は、下に向けて前後幅が少しずつ小さくなっているが、全体をストレートに形成することも可能である。
【0024】
左右脚2の後部は、後ろ幕板7で連結されている。引出し3の下方の空間には、キャスタ付きワゴン8やキャスタ無しの袖キャビネットを配置できる。図3に示すように、天板1の左右側部には、脚2の上部が外側から重なるサイド枠板9をビス(図示せず)で固定しており、このサイド枠板9に、鬼目ナット10を介して脚2の上部が前後複数本(2本)のビス11で固定されている。
【0025】
また、左右のサイド枠板9は、その下面に重ねてビス12で固定された補強桟板13によって連結されている。引出し3は、サイド枠板9とセンター枠板14(図1参照)とに、サスペンションレール15を介して前後動自在に支持されている。センター枠板14は補強桟板13に立設している。
【0026】
図4に示すように、上ビーム材5は前後の脚杆4で挟まれており、これら脚杆4と上ビーム材5とは、それらに跨がって貫通した上下複数本(4本)の上部ダボ18で連結されている。他方、下ビーム材6も前後脚杆4で挟まれており、脚杆4と下ビーム材6とは、両者に貫通した下部ダボ19によって連結されていると共に、下部に位置した上下2本のビス20によっても連結されている。
【0027】
下ビーム材6の前後両端部には、脚杆4の内面4aと重なった状態で下向きに突出した張り出し部21を形成しており、ビス20は、張り出し部21を貫通して脚杆4にねじ込まれている。この場合、張り出し部21は側面視略三角形の形態であり、下面21aは下ビーム材6の下水平面6aと滑らかに連続している。或いは、下ビーム材6の下水平面6aと張り出し部21の下面21aとが側面視で屈曲した形態になっている。このため、張り出し部21が目立つことはなくて、違和感はない。
【0028】
また、張り出し部21には、ビス20の軸が貫通すビス挿通穴22と、ビス20の頭が嵌まる座繰り穴23とが連通した状態に形成されているが、これらのビス挿通穴22と座繰り穴23との軸線(軸心線)24は、脚杆4から離れるに従って下ビーム材6との間隔が広がるように、下ビーム材6に対してある程度の角度θだけ傾斜している。このため、ビス挿通穴22と座繰り穴23との加工(ドリル加工、エンドミル加工)を、チャックが下ビーム材6に当たらない状態で容易に行える。
【0029】
上下の下部ダボ19の間隔は、できるだけ広げている。このため、下ビーム材6を軸心回りに捩じるような外力に対して高い抵抗を発揮する。つまり、上下の下部ダボ19による位置決め機能が高い。また、下に位置した下部ダボ19は、下ビーム材6の下水平面6aの延長線25よりも上に位置しており、ビス20はその全体が延長線5よりも下方に位置している。このため、ダボ18とビス20との間に必要な間隔を取ることができて、高い締結強度を確保できる。
【0030】
なお、ビス20は延長線25の上方まで進入させてもよい。また、脚杆4には、ビス20がねじ込まれる下穴を予め空けておくのが好ましい。更に、脚杆4に鬼目ナットを埋設しておいて、これにビス20をねじ込むことも可能であり、この場合は、ビス20はメートルねじが使用される。上ビーム材5に張り出し部21を設けて、脚杆4にビス止めしてもよい。
【0031】
本実施形態の机は、図5に示すように、収納装置27と連結することができる。収納装置27は、左右の外側板28と背板29,及び底板30を備えており、内部は左右2枚の仕切板31によって3つの収納エリア32,33,34に分けられている。中央の収納エリア33は、常時固定されたセンター上棚板35を有する棚部になっており、左右の収納エリア33,35は、棚部と衣服収納部とに選択的に変更できる。
【0032】
付け替え式の棚部は、サイド上棚板36とその下方に位置した可動棚板とを有しており、衣服収納部は、ハンガーを吊り懸けできるハンギングバー37を備えている。サイド上棚板36は、外側板28と仕切板31とに金具(図示せず)を介して固定されている。また、センター上棚板35とサイド上棚板36とは机の天板1と同じ高さになっており、机から片方の脚2を取り外して、机と収納装置27の上棚板35,36とがそれぞれL形の連結金具38で連結される。取り外した脚2は、後ろ幕板7の後面に固定できる。
【0033】
連結金具38の垂直片は机のサイド枠板9に横向きビス39で固定され、連結金具38の水平片は、机の天板1及び収納装置27の上棚板35,36に上向きビス40で固定される。連結した状態で、天板1と上棚板35,36とが同一面を成しているので、天板1と上棚板35,36とは同じ厚さに設定されている。机に対する連結金具38の取付けは、脚2をサイド枠板9に固定するための鬼目ナット10を利用している。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【産業上の利用可能性】
【0039】
本願発明は、机に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 天板
2 脚
4 脚杆
5 上ビーム材
下ビーム材
6a 下面
19 下部ダボ
20 ビス
21 張り出し部
21a 下面
22 ビス挿通穴
23 座繰り穴
24 穴の軸心線
図1
図2
図3
図4
図5