(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハウジングの内部には、前記ハウジングの外部から前記第2受圧室に水を導くための第1流路と、前記第2受圧室から前記逃し室へと水を逃すための第2流路が形成されており、
前記第1切換部は、前記第1流路に設けられ、前記第2切換部は、前記第2流路に設けられた、請求項1に記載の水中アクチュエータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された水中切離装置では、フックの自重によってフックを回動させる構成であるため、一度フックが回動すると回動前の位置にフックを戻すことができない。このため、自重を利用した水中アクチュエータは、双方向への駆動を要する作業に利用することができない。
【0005】
そこで、本発明は、双方向への駆動を可能にする水中アクチュエータとそれを備える潜水機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る水中アクチュエータは、水中に浸されるハウジングと、前記ハウジングの内部に形成されたシリンダ室と、前記シリンダ室に摺動可能に収容され、前記シリンダ室を第1受圧室と第2受圧室に区画するピストンと、前記ピストンから前記第1受圧室側に延びて前記ハウジングを貫通するロッドと、前記ハウジングの内部に形成され、内部の圧力が前記ハウジングの外部の水圧より低く保たれた逃し室と、前記第2受圧室と前記ハウジングの外部との連通および遮断を切り換える第1切換部と、前記第2受圧室と前記逃し室との連通および遮断を切り換える第2切換部とを有する切換機構と、を備える。
【0007】
上記の構成によれば、水中アクチュエータが水中にあるときに、第1切換部により第2受圧室をハウジングの外部と連通させれば、第2受圧室に導かれる水圧によって、ピストンを第1受圧室側へと移動させてロッドをハウジングから伸長させることができる。一方、第2切換部により第2受圧室を逃し室と連通させれば、ロッドの先端に作用する水圧によって、ピストンを第2受圧室側へと移動させてロッドをハウジング内に後退させることができる。このように、第2受圧室とハウジングの外部との連通および遮断、並びに、第2受圧室と逃し室との連通および遮断を切り換えることにより、ロッドを双方向へと駆動させることができる。
【0008】
上記水中アクチュエータにおいて、前記ハウジングの内部には、前記ハウジングの外部から前記第2受圧室に水を導くための第1流路と、前記第2受圧室から前記逃し室へと水を逃すための第2流路が形成されており、前記第1切換部は、前記第1流路に設けられ、前記第2切換部は、前記第2流路に設けられてもよい。
【0009】
上記水中アクチュエータにおいて、前記第1流路および前記第2流路は、前記第2受圧室側で共通している共通流路を含んでもよい。この構成によれば、流路を共通化してハウジング内部の構成をより簡易にすることができる。
【0010】
上記水中アクチュエータにおいて、前記共通流路には、絞り機構が設けられていてもよい。この構成によれば、絞り機構により第2受圧室へ流入する又は第2受圧室から流出する水の流速を制限してロッドの作動速度を規定することができる。
【0011】
上記水中アクチュエータにおいて、前記ハウジングの内部には、前記共通流路を介して前記第2受圧室とつながる摺動室が形成されており、前記切換機構は、前記摺動室を摺動する単一のスプールであってもよい。この構成によれば、単一のスプールが摺動室を摺動することによって、第2受圧室とハウジングの外部との連通および遮断、並びに、第2受圧室と逃し室との連通および遮断の切換を実現できるため、切換機構を構成部品の少ない簡易な構成にすることができる。
【0012】
上記水中アクチュエータにおいて、前記スプールは、前記摺動室をその一端から他端に向かって順に、第1位置、第2位置、および第3位置へと移動し、前記スプールが第1位置にあるとき、前記第1切換部は、前記第2受圧室を前記ハウジングの外部から遮断し、前記第2切換部は、前記第2受圧室を前記逃し室から遮断し、前記スプールが第1位置から第2位置に移動すると、前記第1切換部は、前記第2受圧室を前記ハウジングの外部に連通させ、前記第2切換部は、前記第2受圧室を前記逃し室から遮断したままにし、前記スプールが第2位置から第3位置に移動すると、前記第1切換部は、前記第2受圧室を前記ハウジングの外部から遮断し、前記第2切換部は、前記第2受圧室を前記逃し室に連通させてもよい。この構成によれば、スプールを一方向に移動させる構成で、ロッドの双方向への駆動を実現することができる。
【0013】
上記水中アクチュエータにおいて、前記切換機構は、更に、前記逃し室と前記ハウジングの外部との連通および遮断を切り換える第3切換部を有してもよい。この構成によれば、第3切換部により逃し室をハウジングの外部に連通させた状態で、水中アクチュエータを上昇させると、ハウジングの外部の水圧の減少とともに、逃し室の内部圧を減少させることができる。これにより、洋上において、逃し室の圧力を低減させた状態で水中アクチュエータを回収することができる。
【0014】
上記水中アクチュエータにおいて、前記切換機構は、更に、前記逃し室と前記ハウジングの外部との連通および遮断を切り換える第3切換部を有し、前記スプールは、前記摺動室をその一端から他端に向かって順に、第1位置、第2位置、第3位置および第4位置へと移動し、前記スプールが第1位置にあるとき、前記第1切換部は、前記第2受圧室を前記ハウジングの外部から遮断し、前記第2切換部は、前記第2受圧室を前記逃し室から遮断し、前記第3切換部は、前記逃し室を前記ハウジングの外部から遮断し、前記スプールが第1位置から第2位置に移動すると、前記第1切換部は、前記第2受圧室を前記ハウジングの外部に連通させ、前記第2切換部は、前記第2受圧室を前記逃し室から遮断したままにし、前記第3切換部は、前記逃し室を前記ハウジングの外部から遮断したままにし、前記スプールが第2位置から第3位置に移動すると、前記第1切換部は、前記第2受圧室を前記ハウジングの外部から遮断し、前記第2切換部は、前記第2受圧室を前記逃し室に連通させ、前記第3切換部は、前記逃し室を前記ハウジングの外部から遮断したままにし、前記スプールが第3位置から第4位置に移動すると、前記第1切換部は、前記第2受圧室を前記ハウジングの外部から遮断したままにし、前記第2切換部は、前記第2受圧室を前記逃し室から遮断し、前記第3切換部は、前記逃し室を前記ハウジングの外部に連通させてもよい。この構成によれば、スプールを一方向に移動させる構成で、ロッドの双方向への駆動と、水中アクチュエータの安全な回収を実現することができる。
【0015】
上記水中アクチュエータにおいて、前記第1受圧室には、圧縮性流体が封入されており、前記シリンダ室は、前記ピストンがロッド伸長位置とロッド後退位置との間で移動する領域であって、前記第1受圧室の一部および前記第2受圧室を構成する移動領域と、前記ピストンが前記ロッド後退位置から前記ロッド伸長位置に移動したときに前記移動領域の圧縮性流体が流入する領域であって、前記第1受圧室の残りを構成する予備領域とを有し、前記ピストンが前記ロッド後退位置から前記ロッド伸長位置に移動したときに、前記予備領域の圧力は、前記ハウジングの外部の水圧より低くてもよい。この構成によれば、ピストンをロッド後退位置からロッド伸長位置まで確実に移動させることができる。
【0016】
上記水中アクチュエータにおいて、前記ピストンは、ロッド伸長位置とロッド後退位置との間で移動し、前記シリンダ室には、前記ロッド伸長位置にある前記ピストンに当接する緩衝材、および/または、前記ロッド後退位置にある前記ピストンに当接する緩衝材が設けられていてもよい。この構成によれば、ピストンが作動してロッド伸長位置および/またはロッド後退位置で停止するときの衝撃を緩衝材に吸収させることができる。
【0017】
本発明の一態様に係る潜水機は、前記切換機構が単一のスプールである上記水中アクチュエータと、前記スプールを摺動させる駆動装置と、を備える。この構成によれば、水中アクチュエータを簡易な構成にすることができる。
【0018】
また、本発明の別の態様に係る潜水機は、前記スプールが前記摺動室を第1位置、第2位置、および第3位置へと移動する構成の上記水中アクチュエータと、前記スプールを押圧するための駆動軸を有する電動アクチュエータと、を備え、前記スプールと前記駆動軸とが非連結である。この構成によれば、スプールと駆動軸とが非連結であるため、潜水機からの水中アクチュエータの取り外しが容易に行える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、双方向への駆動を可能にする水中アクチュエータとそれを備える潜水機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水中アクチュエータ1Aの概略構成を説明するための図であり、
図2〜
図4は、水中アクチュエータ1Aが備える後述の切換機構による切換動作を説明するための図である。
図1〜
図4では、水中アクチュエータ1Aは、潜水機2の下部に取り付けられた状態で示されている。以下の説明では、水中アクチュエータ1Aを駆動させる位置まで潜水機2が水中(例えば海水中)に潜水した状態にあるものとして説明する。また、以下の説明では、説明の便宜上、
図1の上向きを「上」と定義し、下向きを「下」と定義する。
【0022】
図1に示すように、水中アクチュエータ1Aは、潜水機2の下部に取り外し可能に装着されている。潜水機2は、例えば洋上の母船とケーブルで繋がれた遠隔操作型無人潜水機(ROV; Remotely Operated Vehicle)であり、例えば自律型無人潜水機(AUV; Autonomous Underwater Vehicle)である。但し、潜水機2は、有人機であってもよい。潜水機2には、例えば海底作業や海底調査のために、図示しない駆動装置や測定機器、監視機器等が搭載されている。
【0023】
本実施形態に係る水中アクチュエータ1Aは、水中に浸されるハウジング11と、ハウジング11の内部に形成されたシリンダ室12とを有する。また、ハウジング11には、シリンダ室12に上下方向に摺動可能に収容されたピストン13と、ピストン13に接続されたロッド14が備わっている。
【0024】
ハウジング11は、耐圧性を有している。ハウジング11は、上下方向に長い略直方体状である。ハウジング11には、その一側面に第1開口11aが設けられており、上面に第2開口11bが設けられている。これら第1開口11a及び第2開口11bを通って、ハウジング11の外部Wから内部へと水が流入したり、ハウジング11の内部から外部Wへと水またはハウジング11に内在していた気体が流出したりする。なお、本実施形態では、潜水機2の内部とハウジング11の外部Wとが連通しており、ハウジング11の外部Wの水は潜水機2の内部を介して第2開口11bを通過する。
【0025】
ハウジング11は、シリンダ室12が内部に形成された第1ケーシング15と、後述の逃し室31が内部に形成された第2ケーシング16とに分離可能に構成されている。
【0026】
シリンダ室12は、ピストン13により、第1受圧室17と第2受圧室18に上下に区画されている。ロッド14は、ピストン13から第1受圧室17側に直線状に延びて、ハウジング11の下部に形成された貫通孔11cを介してハウジング11を貫通している。ロッド14は、シリンダ室12内でピストン13の第1受圧室17側の面と接続された基端部14aを有する。また、ロッド14は、基端部14aとは反対側の端部であって、ハウジング11の外部Wに配置されたロッド先端部14bを有する。ロッド先端部14bには、例えば、マジックハンド機構、ジャッキ機構、またはサンプラ装置などが、リンク装置を介して接続されている(いずれも図示せず)。貫通孔11cの周りには、ロッド14を摺動自在に支持するとともに、第1受圧室17を密封するためのシール材(図示せず)が設けられている。第1受圧室17は、他のどの空間からも遮断された密閉空間を形成している。
【0027】
ロッド14は、ピストン13が第1受圧室17側へ移動するとハウジング11外方へと伸長し、ピストン13が第2受圧室18側へ移動するとハウジング11内方へと後退する。シリンダ室12は、ロッド14を後退させたロッド後退位置(
図1参照)からロッド14を伸長させたロッド伸長位置(
図2参照)までの範囲内でピストン13が移動することができるように形成されている。
【0028】
シリンダ室12の第1受圧室17には、ロッド伸長位置にあるピストン13に当接するように緩衝材27が設けられている。また、シリンダ室12の第2受圧室18には、ロッド後退位置にあるピストン13に当接する緩衝材28が設けられている。緩衝材27は、ピストン13がロッド後退位置から作動してロッド伸長位置で停止するときの衝撃を吸収し、緩衝材28は、ピストン13がロッド伸長位置から作動してロッド後退位置で停止するときの衝撃を吸収する。
【0029】
ロッド14が駆動される前である水中アクチュエータ1Aの初期状態では、ピストン13は、ロッド後退位置にあるように配置されている。また、水中アクチュエータ1Aが初期状態にあるとき、第1受圧室17および第2受圧室18には、圧縮性流体が封入されている。圧縮性流体は、例えば空気である。また、水中アクチュエータ1Aが初期状態にあるとき、第1受圧室17および第2受圧室18の内部圧は、例えば大気圧に保たれている。
【0030】
シリンダ室12は、ピストン13がロッド伸長位置とロッド後退位置との間で移動する移動領域20と、ピストン13がロッド後退位置からロッド伸長位置に移動したときに移動領域20の圧縮性流体が流入する予備領域21とを有する。移動領域20は、第1受圧室17の一部および第2受圧室18を構成し、予備領域21は、第1受圧室17の残りを構成する。予備領域21は、ピストン13がロッド後退位置からロッド伸長位置に移動したときに、予備領域21の圧力がハウジング11の外部Wの水圧より低い状態を維持するのに十分な体積を有している。このため、ピストン13は、ロッド後退位置からロッド伸長位置まで確実に移動することができる。また、予備領域21は、ピストン13がロッド後退位置からロッド伸長位置へと移動した際の断熱圧縮による第1受圧室17内の温度上昇を、許容範囲内(例えばハウジング11やピストン13、ロッド14等の使用温度範囲内)に抑える役割を果たす。この実施形態では、予備領域21は、上下方向に移動するピストン13の移動領域に対して水平に並んで配置されている。但し、予備領域21は、ピストン13の移動領域の下方に配置されていてもよい。
【0031】
ハウジング11の内部には、逃し室31が形成されている。逃し室31は、その内部の圧力がハウジング11の外部Wの水圧より低く保たれている。水中アクチュエータ1Aが初期状態にあるとき、逃し室31には、圧縮性流体(例えば空気)が封入されており、逃し室31の内部圧は、例えば大気圧に保たれている。逃し室31の容積は、ピストン13がロッド伸長位置からロッド後退位置に移動する間、第2受圧室18側からピストン13にかかる力より、第1受圧室17側から直接的におよびロッド14を介してピストン13にかかる力の方が大きい状態を維持するのに十分な容積である。
【0032】
ハウジング11の内部には、ハウジング11の外部Wから第2受圧室18に水を導くための第1流路F1と、第2受圧室18から逃し室31へと水を逃すための第2流路F2と、ハウジング11の外部Wと逃し室31とを連通するための第3流路F3とが形成されている。第1流路F1は、第1開口11aから第2受圧室18へと延びる流路である。第2流路F2は、第2受圧室18から逃し室31へと延びる流路である。第3流路F3は、第2開口11bから逃し室31へと延びる流路である。
【0033】
第1流路F1および第2流路F2は、第2受圧室18側で共通した部分であって、第2受圧室18の流出入口23から延びる共通流路22を有する。共通流路22における第2受圧室18側末端部の流出入口23には、第2受圧室18へ流入する又は第2受圧室18から流出する水の流速を制限するための絞り機構25が設けられている。但し、絞り機構25は、共通流路22のどの箇所に設けられていてもよい。また、第2流路F2および第3流路F3は、逃し室31側で共通した部分であって、逃し室31の流出入口32から延びる共通流路33を有する。
【0034】
ハウジング11の内部には、ハウジング11の外部W、第2受圧室18および逃し室31の3つの空間のそれぞれの間の連通および遮断を切り換える切換機構が設けられている。切換機構は、第2受圧室18とハウジング11の外部Wとの連通および遮断を切り換える第1切換部と、第2受圧室18と逃し室31との連通および遮断を切り換える第2切換部と、逃し室31とハウジング11の外部Wとの連通および遮断を切り換える第3切換部とを有する。以下、本実施形態における切換機構について詳しく説明する。
【0035】
ハウジング11の内部には、共通流路22を介して第2受圧室18とつながる摺動室41が形成されている。本実施形態における切換機構は、この摺動室41を摺動する単一のスプール42である。また、該スプール42の上方には、駆動装置としての電動アクチュエータ51が配置されている。
【0036】
摺動室41は、ハウジング11の上面の第2開口11bから下方に向かって延びた筒状の内周面を有する。摺動室41は、その下端部で上述の第1開口11aとつながるように形成されている。また、摺動室41は、第1開口11aとの接続箇所より上方で、第2受圧室18の流出入口23から延びる共通流路22とつながっている。また、摺動室41は、共通流路22との接続箇所より上方で、逃し室31の流出入口32から延びる共通流路33とつながっている。
【0037】
スプール42は、第2開口11bから摺動室41に挿通されており、電動アクチュエータ51により下方へ移動させられる。スプール42は、下から上に向かって順に、即ち移動方向先頭から移動方向後尾に向かって順に、第1ランド部43aと、第2ランド部43bと、第3ランド部43cと、それらを連結する軸部44とを有している。第1ランド部43a、第2ランド部43b及び第3ランド部43cは、それぞれ、摺動室41の内周面に接する外周面を有する。軸部44は、その上端部44aで電動アクチュエータ51の駆動軸52の下端部52aに当接している。
【0038】
電動アクチュエータ51は、潜水機2に備え付けられており、第2開口11bの上方に配置されている。電動アクチュエータ51は、駆動軸52を上下方向に移動させてその位置を制御する。駆動軸52に当接されたスプール42は、駆動軸52によって、摺動室41に沿って下方に押圧される。但し、駆動軸52とスプール42とは非連結でなくてもよく、例えば、駆動軸52とスプール42とは、駆動軸52の移動によって、スプール42が摺動室41に沿って上方にも移動するように連結していてもよい。
【0039】
本実施形態では、スプール42が、摺動室41の上端部から下端部に向かう方向に沿って順に、第1位置、第2位置、第3位置および第4位置へと移動する。スプール42は、電動アクチュエータ51により移動された位置に応じて、ハウジング11の外部W、第2受圧室18および逃し室31の3つの空間のそれぞれの間の連通および遮断を切り換える。
【0040】
スプール42が第1位置にあるとき、第1切換部は、第2受圧室18をハウジング11の外部Wから遮断し、第2切換部は、第2受圧室18を逃し室31から遮断し、第3切換部は、逃し室31をハウジング11の外部Wから遮断する。スプール42が第1位置から第2位置に移動すると、第1切換部は、第2受圧室18をハウジング11の外部Wに連通させ、第2切換部は、第2受圧室18を逃し室31から遮断したままにし、第3切換部は、逃し室31をハウジング11の外部Wから遮断したままにする。スプール42が第2位置から第3位置に移動すると、第1切換部は、第2受圧室18をハウジング11の外部Wから遮断し、第2切換部は、第2受圧室18を逃し室31に連通させ、第3切換部は、逃し室31をハウジング11の外部Wから遮断したままにする。スプール42が第3位置から第4位置に移動すると、第1切換部は、第2受圧室18をハウジング11の外部Wから遮断したままにし、第2切換部は、第2受圧室18を逃し室31から遮断し、第3切換部は、逃し室31をハウジング11の外部Wに連通させる。
【0041】
本実施形態において、スプール42の第1ランド部43a、第2ランド部43b及び第3ランド部43cが、その位置に応じて、上述の第1切換部、第2切換部、第3切換部として機能する。
【0042】
ロッド14が駆動される前である水中アクチュエータ1Aの初期状態では、スプール42は第1位置にある。
図1に示すように、スプール42が第1位置にあるとき、上記3つの空間のそれぞれの間のどの2つの間も連通していない完全に遮断された状態にある。より詳しくは、第1ランド部43aが、ハウジング11の外部Wと第2受圧室18との間を遮断している。また、第2ランド部43bが第2受圧室18と逃し室31との間を遮断している。また、第3ランド部43cが逃し室31とハウジング11の外部Wとの間を遮断している。
【0043】
図2に示すように、スプール42が第2位置にあるとき、上記3つの空間のそれぞれの間の連通状態は、第2受圧室18とハウジング11の外部Wとが連通し、それ以外は遮断した状態にある。より詳しくは、第1ランド部43aは、第2受圧室18およびハウジング11の外部Wの両方が、摺動室41における第1ランド部43aと第2ランド部43bとの間の空間に連通するように配置される。また、第2ランド部43bは、第2受圧室18と逃し室31との間を遮断している。また、第3ランド部43cは、逃し室31とハウジング11の外部Wとの間を遮断している。
【0044】
図3に示すように、スプール42が第3位置にあるとき、上記3つの空間のそれぞれの間の連通状態は、第2受圧室18と逃し室31とが連通し、それ以外は遮断した状態にある。より詳しくは、第2ランド部43bは、第2受圧室18および逃し室31の両方が、摺動室41における第2ランド部43bと第3ランド部43cとの間の空間に連通するように配置される。また、第2ランド部43bは、第2受圧室18とハウジング11の外部Wとの間を遮断している。また、第3ランド部43cは、逃し室31とハウジング11の外部Wとの間を遮断している。
【0045】
図4に示すように、スプール42が第4位置にあるとき、上記3つの空間のそれぞれの間の連通状態は、逃し室31とハウジング11の外部Wとが連通し、それ以外は遮断した状態にある。より詳しくは、第3ランド部43cは、逃し室31が摺動室41における第3ランド部43cと第2開口11bの間の空間に連通するように配置される。また、第2ランド部43bは、第2受圧室18とハウジング11の外部Wとの間を遮断している。また、第3ランド部43cが逃し室31と第2受圧室18との間を遮断している。
【0046】
次に、水中アクチュエータ1Aにおけるロッド14の双方向駆動について切換機構での切換動作順に沿って説明する。
【0047】
潜水機2が潜水する前は、潜水機2に取り付けられた水中アクチュエータ1Aは初期状態にあり、
図1に示すように、ロッド14をハウジング11内に後退させた状態、即ち、ピストン13がロッド後退位置にある状態で、スプール42が第1位置にあるように配置されている。潜水機2が潜水している間、水中アクチュエータ1Aのロッド先端部14bには、ハウジング11の外部Wの水圧が作用している。
【0048】
図2に示すように、ロッド14をロッド後退位置からロッド伸長位置へと駆動させるために、電動アクチュエータ51がスプール42を第1位置から第2位置へと下方に移動させる。スプール42が第2位置に配置されることにより、第2受圧室18をハウジング11の外部Wに連通させて、ハウジング11の外部Wの水が第1開口11aを通って第2受圧室18へと供給される。これにより、第1受圧室17側から直接的におよびロッド14を介してピストン13にかかる力より第2受圧室18側からピストン13にかかる力の方を大きくして、ロッド14を第1受圧室17側へと駆動させることができる。
【0049】
図3に示すように、ロッド14をロッド伸長位置からロッド後退位置へと駆動させるために、電動アクチュエータ51がスプール42を第2位置から第3位置へと更に下方に移動させる。スプール42が第3位置に配置されることにより、第2受圧室18をハウジング11の外部Wから遮断するとともに、第2受圧室18を逃し室31に連通させて、第2受圧室18内の水を逃し室31に逃す。これにより、第2受圧室18の内部圧を低減させて、第2受圧室18側からピストン13にかかる力より第1受圧室17側から直接的におよびロッド14を介してピストン13にかかる力の方を大きくして、ロッド14を第2受圧室18側へと駆動させることができる。
【0050】
作業を終えた潜水機2を水面に向かって上昇させる前に、
図4に示すように、電動アクチュエータ51がスプール42を第3位置から第4位置へと更に下方に移動させる。スプール42が第4位置に配置されることにより、第2受圧室18を逃し室31から遮断するとともに、逃し室31をハウジング11の外部Wに連通させて、逃し室31の内部圧をハウジング11の外部Wと同じ圧力にする。この状態で、潜水機2が水面に向かって上昇すると、水中アクチュエータ1Aが水面に近づくにつれて、逃し室31の内部圧も低減していく。こうして、洋上において、逃し室31の圧力を低減させた状態で水中アクチュエータ1Aを潜水機2から取り外して回収することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態では、水中アクチュエータ1Aが水中にあるときに、スプール42を第1位置から第2位置へと移動させて第2受圧室18をハウジング11の外部Wと連通させれば、ハウジング11の外部Wの水を第2受圧室18に導くことができる。これにより、第2受圧室18に導かれる水圧によって、ピストン13を第1受圧室17側へと移動させてロッド14をハウジング11から伸長させることができる。
【0052】
一方、スプール42を第2位置から第3位置へと移動させて第2受圧室18を逃し室31と連通させれば、第2受圧室18内の水を逃し室31に逃して、第2受圧室18の内部圧を低減させることができる。これにより、ロッド先端部14bに作用する水圧によって、ピストン13を第2受圧室18側へと移動させてロッド14をハウジング11内に後退させることができる。
【0053】
このように、第2受圧室18とハウジング11の外部Wとの連通および遮断、並びに、第2受圧室18と逃し室31との連通および遮断を切り換えることにより、ロッド14を双方向へと駆動させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、スプール42を第3位置から第4位置へと移動させて逃し室31をハウジング11の外部Wと連通させれば、逃し室31の内部圧をハウジング11の外部Wと同じ圧力にすることができる。これにより、洋上において、逃し室31の圧力を低減させた安全な状態で水中アクチュエータ1Aを潜水機2から取り外して回収することができる。
【0055】
また、本実施形態では、第1流路F1および第2流路F2が第2受圧室18側で共通している共通流路22を含んでいるため、ハウジング11の内部構成をより簡易にすることができる。
【0056】
また、本実施形態では、切換機構が、第1切換部、第2切換部および第3切換部のいずれの機能も有する単一のスプール42であるため、切換機構を構成部品の少ない簡易な構成にすることができる。
【0057】
また、本実施形態では、スプール42を一方向に移動させる構成で、ロッド14の双方向への駆動と、水中アクチュエータ1Aの安全な回収を実現することができる。このため、スプール42の軸44と電動アクチュエータ51の駆動軸52とを連結する必要がなく、潜水機2からの水中アクチュエータ1Aの取り外しも容易に行える。また、電動アクチュエータ51が潜水機2側に搭載されているため、水中アクチュエータ1Aをコンパクトにすることができるとともに、水中アクチュエータ1A側に電気的構成が不要となり、水中アクチュエータ1Aを簡易な構成にすることができる。
【0058】
潜水機2は、水中アクチュエータ1Aを備えるため、双方向への駆動を要する作業を水中で実施することができる。また、水中アクチュエータ1Aが潜水機2に取り外し可能に備えられているため、水中アクチュエータ1Aを使用済みのものから使用前のものに容易に交換できる。また、ハウジング11は、シリンダ室12が内部に形成された第1ケーシング15と、後述の逃し室31が内部に形成された第2ケーシング16とに分離可能に構成されているため、第2ケーシング16のみを交換することができる。
【0059】
また、本実施形態の水中アクチュエータ1Aが水圧を利用してロッド14を駆動させる構成であるため、駆動に要するエネルギーを低減することができる。このため、上記潜水機2が、例えば、内蔵された電池等をエネルギー源とする自律型無人潜水機である場合などに特に有用である。
【0060】
上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0061】
例えば、潜水機2に対するピストンの移動方向は上下方向でなくてもよく、例えば水中アクチュエータ1Aは、水平方向にロッド14を往復する構成であってもよい。また、ハウジング11内のシリンダ室12、逃し室31、切換機構の配置や向き、ハウジング11の形状、第1開口11aや第2開口11bの配置等も上記実施形態には限定されない。ハウジング11の内部に形成された流路も上記の構成に限定されず、例えば第1流路F1および第2流路F2は共通の流路を有していなくてもよい。また、水中アクチュエータ1Aにおいて、切換機構は、第3切換部を有さない構成であってもよい。また、上記実施形態において、第1受圧室17に封入された流体は圧縮性流体であったが、例えば、シリンダ室12の構成が、ピストン13がロッド後退位置からロッド伸長位置に移動した分だけ予備領域21の体積が拡大する構成である場合、第1受圧室17に封入された流体は、非圧縮性流体であってもよい。
【0062】
また、水中アクチュエータ1Aが初期状態にあるときの第1受圧室17、第2受圧室18および逃し室31の内部圧は、大気圧でなくてもよく、例えば、ロッド14の断面積やロッド14を駆動する際のハウジング11の外部Wの水圧等を考慮して、ロッド14を双方向駆動するのに最適な圧力に設定されてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、駆動装置としての電動アクチュエータ51は、潜水機2に搭載されていたが、駆動装置は水中アクチュエータ1Aに設けられていてもよい。また、シリンダ室12には緩衝材27,28はなくてもよいし、いずれか一方のみが設けられていてもよい。
【0064】
また、シリンダ室12は予備領域21を有さない構成であってもよく、この場合、初期状態にある水中アクチュエータ1Aのピストン13は、ロッド後退位置から、第1受圧室17側からピストン13にかかる力と第2受圧室18側からピストン13にかかる力とが釣り合った位置まで移動して、ロッド14を伸長させる。但し、シリンダ室12が予備領域21を有する構成である場合、ロッド14のストローク範囲を予め定めた範囲に設定することができる。
【0065】
上記実施形態では、切換機構が第1切換部、第2切換部および第3切換部のいずれの機能も有する単一のスプール42であったが、切換機構は、第1切換部、第2切換部および第3切換部がそれぞれ独立して操作される構成であってもよい。例えば、切換機構は、第1切換部に対応するスプールと、それとは別の第2切換部に対応するスプールとを有する構成であってもよい。
【0066】
また、切換機構はスプール以外の機構であってもよい。その一例として、
図5に、変形例に係る水中アクチュエータ1Bの概略回路図を示す。水中アクチュエータ1Bでは、第1流路F1のうち共通流路22を除いた部分61、および、第2流路F2のうち共通流路22を除いた部分62に、それぞれ、切換機構としての電磁遮断弁71,72が設けられている。第1流路F1の電磁遮断弁71は、第1切換部として機能し、第2流路F2の電磁遮断弁72は、第2切換部として機能する。これら電磁遮断弁71,72は、それぞれ、潜水機2に設けた図示しない制御装置と電気的に接続されている。これら電磁遮断弁71,72は、該制御装置からの指令電流により各流路F1,F2を連通したり遮断したりする。
【0067】
水中アクチュエータ1Bが初期状態にあるときは、電磁遮断弁71は、第2受圧室18をハウジング11の外部Wから遮断し、電磁遮断弁72は、第2受圧室18を逃し室31から遮断している。
【0068】
次に、ロッド14をロッド後退位置からロッド伸長位置へと駆動させるために、電磁遮断弁71は、第2受圧室18をハウジング11の外部Wに連通させ、電磁遮断弁72は、第2受圧室18を逃し室31から遮断したままにする。
【0069】
その後、ロッド14をロッド伸長位置からロッド後退位置へと駆動させるために、電磁遮断弁71は、第2受圧室18をハウジング11の外部Wから遮断し、電磁遮断弁72は、第2受圧室18を逃し室31に連通させる。
【0070】
このように、切換機構が電磁遮断弁である水中アクチュエータ1Bでも、上述のように切換動作を行うことにより、切換機構がスプールである水中アクチュエータ1Aと同様、双方向にロッド14を駆動させることができる。
【0071】
また、水中アクチュエータ1Bにおいて、逃し室31には、ハウジング11の外部Wとの連通および遮断を切り換える第3切換部として機能する開閉弁が設けられていてもよい。この場合、回収のために水中アクチュエータ1Bを水面へと上昇させる前に、水中アクチュエータ1Aでの切換機構と同様の切換動作により、洋上において、逃し室31の圧力を低減させた安全な状態で水中アクチュエータ1Bを回収することができる。
【0072】
また、逃し室31が十分な容積を有している場合、駆動装置に連結したロッド14を往復駆動させて、ピストン13がロッド伸長位置からロッド後退位置に移動した後も、更に、ロッド14を往復駆動させることができる。ここでの「十分な容積」とは、例えば、逃し室31及び第2流路F2とで構成される領域に、シリンダ室12の移動領域20の2倍の体積の水が内在していても、第2受圧室18側からピストン13にかかる力より第1受圧室17側からピストン13にかかる力の方が大きい状態を維持するのに十分な容積である。また、上記実施形態において、ハウジング11内に形成された逃し室31は1つであったが、複数の逃し室を有しており、一回のロッドの往復駆動ごとに、使用される逃し室が順次切り換わる構成であってもよい。この構成によれば、逃し室の数と同じ回数のロッド往復駆動を確実に実現することができる。