特許第6609206号(P6609206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6609206
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】地表面温調構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 13/00 20060101AFI20191111BHJP
   E01C 11/26 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   E01C13/00 A
   E01C11/26 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-51402(P2016-51402)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-166192(P2017-166192A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】萩野 智和
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良輔
(72)【発明者】
【氏名】三賀森 雅和
(72)【発明者】
【氏名】氏江 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】金平 豊
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−047403(JP,A)
【文献】 特開平01−299903(JP,A)
【文献】 特開昭54−021031(JP,A)
【文献】 特開2001−226904(JP,A)
【文献】 特開平05−010533(JP,A)
【文献】 実開昭60−139805(JP,U)
【文献】 米国特許第05251689(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00〜 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上競技場の走路の地表面を温調媒体によって温調する地表面温調構造であって、
前記走路の地表面下の地中構造が、アスファルトコンクリートを含む下地層と、前記下地層上に積層された弾力性粒状物を含む充填層と、前記充填層上に積層された表層とを有し、
前記温調媒体を流す複数の温調管が、前記下地層上に配置されるとともに前記充填層中に埋設され、更に前記充填層の上側部分が、前記温調管の上側に被さっており、
前記下地層の上面には管固定部材が敷設され、前記管固定部材が、前記弾力性粒状物を通す大きさの複数の穴部が上面から底面に貫通するように形成された枠状のベース部と、前記ベース部の上面に並んで形成された複数の保持部とを含み、前記複数の温調管がそれぞれ対応する保持部に保持されていることを特徴とする地表面温調構造。
【請求項2】
前記弾力性粒状物がゴムチップであり、
前記充填層が、弾力性粒状物どうしを結合させるバインダを更に含み、前記充填層が前記穴部を通して前記下地層と直接的に接していることを特徴とする請求項1に記載の地表面温調構造。
【請求項3】
陸上競技場の走路の地表面を温調媒体によって温調する地表面温調構造を施工する方法であって、
アスファルトコンクリートを含む下地層上に温調管を配置し、
次に、弾力性粒状物を含む充填層を前記下地層上に敷設して、前記温調管を前記充填層中に埋設するとともに、前記充填層の上側部分を前記温調管の上側に被せ、
前記充填層の上に表層を敷設することを特徴とする地表面温調構造の施工方法。
【請求項4】
前記陸上競技場が既設競技場であり、
前記既設競技場の走路の既設表層及び前記既設表層の下側の既設充填層を撤去し、更に前記既設充填層の下側のアスファルトコンクリートを含む既設下地層の上側部分を撤去し、
前記既設下地層の前記撤去後の上面に前記温調管を配置することを特徴とする請求項3に記載の地表面温調構造の施工方法。
【請求項5】
前記陸上競技場が既設競技場であり、
前記既設競技場の走路の既設表層、前記既設表層の下側の既設充填層、及び前記既設充填層の下側の既設下地層を撤去し、
その後、前記撤去後の地面上にアスファルトコンクリートを含む新設下地層を、前記既設下地層よりも厚みが小さくなるように敷設し、
前記新設下地層上に前記温調管を配置することを特徴とする請求項3に記載の地表面温調構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸上競技場の走路(トラック)の地表面を温調する地表面温調構造及びその施工方法に関し、特に、走路の地表面下に温調媒体を流通させて温調する地表面温調構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外の陸上競技場は、夏季には地表温度が60℃以上になることがあり、クラウチングスタートで手をついた際の熱感や熱中症の危険等、アスリートへの影響が指摘されている。従来の一般的な対策としては、地表に反射塗料を被膜したり散水したりしているが、反射塗料だけでは冷却効果が小さく、散水すると滑り易くなり競技に影響が生じる。
【0003】
特許文献1では、道路等に温調管を埋設している。夏季には、冷却媒体を温調管に流通させることによって冷却し、冬季には、熱媒体を温調管に流通させることによって加温や融雪を行なっている。
特許文献2では、サッカーグラウンドやゴルフ場等の植栽地に複数の温調管を埋設することで温調している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−299903号公報
【特許文献2】特開2003−61489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
陸上競技場における夏季の高温化対策として、上掲特許文献1,2等のような温調管で陸上競技場の走路の地表面を冷却(温調)することが考えられる。その場合、温調管の配置深さが走路の地表面に近過ぎると、前記地表面の硬さが変わり、競技者に違和感を与えるおそれがある。一方、温調管の配置深さが大き過ぎると、十分な冷却(温調)効果が得られない。
本発明は、前記事情に鑑み、陸上競技場において、走路の地表面に対して十分な温調効果を確保しながら、競技者に違和感を与えるのを防止可能な地表面温調構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明構造は、陸上競技場の走路の地表面を温調媒体によって温調する地表面温調構造であって、
陸上競技場の走路の地表面を温調媒体によって温調する地表面温調構造であって、
前記走路の地表面下の地中構造が、アスファルトコンクリートを含む下地層と、前記下地層上に積層された弾力性粒状物を含む充填層と、前記充填層上に積層された表層とを有し、
前記温調媒体を流す温調管が、前記下地層上に配置されるとともに前記充填層中に埋設され、更に前記充填層の上側部分が、前記温調管の上側に被さっていることを特徴とする。
【0007】
これによって、走路の地表面を温調できる。走路の地表面の硬さが変わるのを抑制でき、競技者に違和感を与えるのを防止できる。また、温調管の配置深さが大きくなり過ぎないようにでき、十分な温調効果を確保できる。
前記弾力性粒状物は、好ましくはゴムチップである。前記バインダは、好ましくはウレタン樹脂である。
【0008】
本発明方法は、陸上競技場の走路の地表面を温調媒体によって温調する地表面温調構造を施工する方法であって、
アスファルトコンクリートを含む下地層上に温調管を配置し、
次に、弾力性粒状物を含む充填層を前記下地層上に敷設して、前記温調管を前記充填層中に埋設するとともに、前記充填層の上側部分を前記温調管の上側に被せ、
前記充填層の上に表層を敷設することを特徴とする。
これによって、走路の地表面を温調できる。走路の地表面の硬さが変わるのを確実に抑制でき、競技者に違和感を与えるのを確実に防止できる。
【0009】
前記陸上競技場が既設競技場である場合には、前記既設競技場の走路の既設表層及び前記既設表層の下側の既設充填層を撤去し、更に前記既設充填層の下側のアスファルトコンクリートを含む既設下地層の上側部分を撤去し、
前記既設下地層の前記撤去後の上面に前記複数の温調管を配置してもよい。
これによって、既設競技場を改修して、走路の地表面を温調可能にすることができる。前記温調管の配置工程後は、弾力性粒状物及びバインダを敷設すればよく、アスファルトコンクリートを敷設し直す必要がない。
【0010】
或いは、前記陸上競技場が既設競技場である場合、前記既設競技場の走路の既設表層、前記既設表層の下側の既設充填層、及び前記既設充填層の下側の既設下地層を撤去し、
その後、前記撤去後の地面上にアスファルトコンクリートを含む新設下地層を、前記既設下地層よりも厚みが小さくなるように敷設し、前記新設下地層上に前記温調管を配置してもよい。
この場合、既設下地層を全厚撤去すればよい。既設下地層を、残り厚さや水平度に気を付けながら削る必要がなく、施工を容易化できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、陸上競技場の走路の地表面に対して十分な温調効果を確保しながら、競技者に違和感を与えるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る地表面温調構造が構築された陸上競技場を模式的に示す平面図である。
図2図2は、図1の円部IIにおける温調管の具体的構造の一例を示す平面図である。
図3図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。
図4図4(a)は、温調管における直線部用の管固定部材の斜視図である。図4(b)は、温調管における折返し管部用の管固定部材の斜視図である。
図5図5(a)〜(f)は、既設の陸上競技場の走路の地表面下に温調管を埋設する施工工程を順追って示す断面図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態を示し、同図(a)〜(f)は、既設の陸上競技場の走路の地表面下に温調管を埋設する施工工程を順追って示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図1に示すように、既設の陸上競技場9が改修されることで、走路91(トラック)の地表面を温調する地表面温調構造が構築されている。走路91(トラック)は、一対の直走路94,94と、一対の曲走路95,95を有し、長円環状になっている。
【0014】
図3に示すように、走路91の地表面下の地中は、下側から砕石層91d、下地層91c、充填層91b、表層91aの順に積層された積層構造になっている。下地層91cは、例えばアスファルトコンクリートからなり、相対的に大粒径の下側アスコン層部91f上に相対的に小粒径の上側アスコン層部91eが積層されている。
【0015】
充填層91bは、弾力性粒状物91gを含む。弾力性粒状物91gは、好ましくはゴムチップにて構成されている。好ましくは、弾力性粒状物91gの粒径は、後記温調管20どうし間の隙間の間隔W20よりも小さい。
更に、充填層91bは、バインダ91hを含む。バインダ91hによって、弾力性粒状物91gどうしが結合されている。バインダ91hは、好ましくはウレタン樹脂にて構成されている。
充填層91bの厚みt91b図5(e))は、後記温調管20の直径及び後記ベース部41の厚みの合計よりも大きい。
表層91aは、例えばウレタン樹脂にて構成されている。
【0016】
図1に示すように、陸上競技場9のグラウンド90の地表面下には、ヘッダー管10と、温調管20が設けられている。これらヘッダー管10及び温調管20が、温調媒体Aの通路となり、走路91を温調する。
温調媒体Aとしては水が用いられている。なお、温調媒体Aは、水に限られず、ブライン等を用いてもよい。
【0017】
ヘッダー管10は、フィールド92,93の地表面下において、走路91と並行するように延びている。好ましくは、ヘッダー管10は、主にインフィールド92の排水管80の内部に配管されている。なお、一部のヘッダー管10は、アウトフィールド93の排水管86の内部に配管されている。
【0018】
ヘッダー管10のうち、供給側のヘッダー管10の上流端は、チラー2(温調源)の送出ポート2aに接続されている。排出側のヘッダー管10の下流端は、チラー2の還流ポート2bに接続されている。供給側のヘッダー管10の下流端及び排出側のヘッダー管10の上流端は、それぞれ閉塞されている。
【0019】
チラー2の設置場所は任意に設定でき、例えば陸上競技場9のスタンド(観客席)の隅部等であってもよい。
温調源は、チラー2に限られず、地中熱(冷熱又は温熱)を利用してもよく、陸上競技場9に付設された貯水槽を利用して熱交換するようにしてもよい。
【0020】
図1に示すように、走路91の地表面下には、複数の温調管20,20…が設けられている。温調管20は、例えばポリエチレン等の樹脂にて構成されている。各温調管20の流路断面積は、ヘッダー管10の流路断面積よりも十分に小さい。
【0021】
複数の温調管20,20…は、互いに走路91の延び方向に並べられている。各温調管20は、当該温調管20が配置された箇所における走路91の延び方向と交差している。走路91のうち、直走路94の各温調管20は、直走路94と直交している。曲走路95の温調管20,20…どうしは、曲走路95の内周り側から外周り側へ互いに放射状に配置されているが、これら曲走路95の温調管20,20…どうしが、互いに平行に配置されていてもよい。
なお、温調管20の延び方向は、走路91の延び方向と交差する方向に限られず、走路91の延び方向に沿っていてもよい。
【0022】
温調管20は、一部を除き、折り返しを有する往復路となっている。
走路重なり部96を通る温調管20は、折り返しが無い片道路になっている。走路重なり部96を通る複数の温調管20,20…は、互いに並行流を構成しているが、隣接するものどうしが対向流を構成していてもよい。
【0023】
各温調管20の上流端は供給側のヘッダー管10に接続されている。かつ、各温調管20の下流端は、排出側のヘッダー管10に接続されている。
チラー2において温調された温調媒体Aが、供給側のヘッダー管10から温調管20,20…に分配される。各温調管20内を温調媒体Aが流れることで、走路91の地表面が冷却(温調)される。温調管20,20…からの温調媒体Aは、排出側のヘッダー管10によって回収されて、チラー2へ戻される。
【0024】
なお、図1においては、作図の便宜上、温調管20どうしの配置間隔が疎らになっているが、温調管20どうしが狭い間隔で密に配置されていてもよい(図2参照)。また、図2に示すように、一定数の温調管20,20…によって1つの温調管ユニット29が構成されていてもよい。複数の温調管ユニット29が、狭い間隔で密に並べられていてもよい。直走路94及び曲走路95(走路重なり部96を除く)における各温調管ユニット29の温調管20,20…どうしは、互いに多重環状をなすように配置されていることが好ましい。更に、各温調管ユニット29の隣接する温調管20,20が互いに対向流を構成することが好ましい。
【0025】
図3に示すように、温調管20は、下地層91c上に配置されることで、充填層91bに埋設されている。
充填層91bの弾力性粒状物91g及びバインダ91hが、隣接する温調管20どうしの間に充填されるとともに、各温調管20の上側に被さっている。
充填層91bにおける温調管20よりも上側の部分の厚さ、すなわち温調管20の頂部から充填層91bの上面までの高さHは、好ましくはH=10mm〜20mm程度である。
【0026】
図2及び図3に示すように、温調管20は、管固定部材40によって保持されている。管固定部材40の材質としては、所要の強度及び耐熱性を有し、かつ温調管20を嵌め込んで保持し得る弾性を有するものであることが好ましい。かかる材質としては、例えばポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)等の樹脂が挙げられ、好ましくはABSが挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0027】
図4(a)は、温調管20の直線部を保持する管固定部材40を示したものである。管固定部材40は、ベース部41と、複数の保持部42とを含む。ベース部41は、正方形(四角形)の枠状になっている。ベース部41には、大きめの穴部41cが複数形成されている。穴部41cは、ベース部41を厚み方向に貫通している。ベース部41の対向する2つの縁部に沿って複数の保持部42が等間隔置きに並んで設けられている。各保持部42は、一対の保持爪42a,42aを有している。図3に示すように、保持部42に温調管20が嵌め込まれている。
【0028】
図4(b)は、温調管20の折り返し部を保持する管固定部材40を示したものである。なお、折り返し部用の管固定部材40を、直線部用の管固定部材40(図4(a))に対して特に区別するときは「管固定部材40C」と表記する。管固定部材40Cにおいては、ベース部41上に複数の保持部42が互いに同心円状に配置されている。
【0029】
図2及び図3に示すように、複数の管固定部材40,40…が、下地層91cの上面(充填層91bと下地層91cの境)に縦横に整列されて敷設されている。各管固定部材40のベース部41が、充填層91bと下地層91cとの間に挟まれている。詳細な図示は省略するが、穴部41cに充填層91bが入り込むことで、充填層91bと下地層91cとが直接的に接している。
【0030】
既設の陸上競技場9に地表面温調構造を構築する方法を、温調管20の埋設方法を中心に説明する。
図5(a)に示すように、地表面温調構造の構築前の既設走路91’における既設充填層91b’の厚みt91b’は、構築後(同図(f))の充填層91bの厚みt91bより小さい(t91b’<t91b)。また、地表面温調構造の構築前の既設アスコン層部91e’の厚みは、構築後(同図(f))のアスコン層部91eの厚みより大きい。
図5(b)に示すように、前記既設走路91’の既設表層91a’及び既設充填層91b’を撤去する。更に既設アスコン層部91e’の上側部分91eaをも、ざぐって撤去する。好ましくは、この撤去部分91eaの厚みt91eaは、組状態における管固定部材40の底面から温調管20の頂部までの高さH図5(c))と同程度にする(t91ea≒H)。高さHは温調管20の直径とほぼ等しいから、要するに、既設アスコン層部91e’の上側部分91eaを、好ましくは温調管20の直径分の深さ程度、ざぐって撤去する。
【0031】
図5(c)に示すように、前記上側部分91eaを撤去後のアスコン層部91eの上面に管固定部材40を載置する。この管固定部材40上に温調管20を配管して、保持部42に温調管20を嵌め込む。
【0032】
次に、図5(d)に示すように、弾力性粒状物91gを、隣接する温調管20どうし間の管固定部材40上及び温調管20上に敷き詰める。弾力性粒状物91gは、温調管20の頂部よりも高く敷き詰める。続いて、図5(e)に示すように、バインダ91hを弾力性粒状物91gどうしの間に流し込む。
要するに、弾力性粒状物91g及びバインダ91hを、隣接する温調管20どうし間に充填するとともに、温調管20の上側に被せる。これによって、新たな充填層91b中に温調管20が埋設される。好ましくは、新たな充填層91bの厚みt91bは、地表面温調構造の構築前の既設充填層91b’の厚みt91b’と、アスコン層部91e’の撤去部分91eaの厚みt91eaの合計と同程度になるようにする(t91b≒t91b’+t91ea)。これによって、走路91の地表面の高さを地表面温調構造の構築前と同程度にすることができる。
温調管20の配置後は、弾力性粒状物91g及びバインダ91hを敷設すればよく、アスコン層部91eとなるアスファルトコンクリートを敷設し直す必要がない。したがって、地表面温調構造の構築施工を簡易化できる。
その後、図5(f)に示すように、充填層91b上に表層91aを敷設する。
【0033】
このようにして構築された地表面温調構造によれば、温調管20を、地表面温調構造の構築前の既設アスコン層部91e’に対応する深さに配置できるから、走路91の地表面の硬さが変わるのを抑制できる。したがって、競技者に違和感を与えるのを防止できる。しかも、温調管20の配置深さが大きくなり過ぎないようにでき、十分な温調効果を確保できる。
【0034】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態を示したものである。第2実施形態は、既設の陸上競技場に地表面温調構造を構築する方法の変形態様に係る。
図6(a)〜同図(b)に示すように、地表面温調構造の構築前の既設走路91’における既設表層91a’、既設充填層91b’、及び既設下地層91c’を撤去する。つまり、既設表層91a’及び既設充填層91b’だけでなく既設下地層91c’をも全厚撤去する。上側既設アスコン層部91e’を全厚撤去し、更に下側既設アスコン層部91f’をも全厚撤去する。
これによって、砕石層91dを露出させる。
【0035】
そして、図6(c)に示すように、撤去後の地面上すなわち砕石層91dの上にアスファルトコンクリートを敷設することで、新設下地層91cを形成する。好ましくは、新設下地層91cにおける下側部分は、相対的に大粒径のアスコン層部91fとし、上側部分は、相対的に小粒径のアスコン層部91eとする。新設下地層91cの厚みt91c(上下のアスコン層部91e,91fの合計厚み)は、既設下地層91c’の厚みt91c’よりも小さくする(t91c<t91c’)。
【0036】
その後、新設下地層91c上に管固定部材40の載置及び温調管20の配管を行ない(図6(d))、続いて、弾力性粒状物91g及びバインダ91hからなる充填層91b中に温調管20を埋設し(図6(e))、充填層91b上に表層91aを敷設する(図6(f))。新設充填層91bの厚みt91b図6(e))は、既設充填層91b’の厚みt91b’図6(a))よりも大きくする(t91b>t91b’)。好ましくは、新設下地層91cと新設充填層91bの合計厚さ(t91b+t91c)が、既設下地層91c’と既設充填層91b’の合計厚さ(t91b’+t91c’)と同程度になるようにする(t91b+t91c≒t91b’+t91c’)。これによって、走路91の地表面の高さを地表面温調構造の構築前と同程度にすることができる。
【0037】
第2実施形態の施工方法によれば、既設下地層91c’の撤去時、残り厚さや水平度に気を付けながら削る必要がなく、施工を容易化できる。地表面温調構造の設置面積が大きいほど、既設下地層91c’の撤去時の負担軽減効果が大きくなる。したがって、陸上競技場全域に地表面温調構造を構築する場合、特に有効である。
【0038】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
例えば、本発明は、既設の陸上競技場9に限られず、陸上競技場を新設する場合にも当然に適用可能である。その場合、アスコン層部91eの敷設時にその厚みを通常よりも小さくする(図5(b)参照)。このアスコン層部91e上に管固定部材40及び温調管20を配置した後(図5(c)参照)、弾力性粒状物91g及びバインダ91hを、隣接する温調管20どうし間に充填するとともに、温調管20の上側に被せることで、充填層91bを通常よりも厚めに敷設する(図5(e)参照)。そして、充填層91bの上に表層91aを敷設する(図5(f)参照)。
温調媒体Aとして熱媒体を用いてもよい。地表面温調構造を冷却装置としてだけでなく、加温装置や融雪装置として利用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、例えば陸上競技場のトラック(走路)の地表面下を冷却する冷却システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
A 水(温調媒体)
20 温調管
29 温調管ユニット
9 陸上競技場
91 走路
91a 表層
91a’ 既設表層
91b 充填層
91b’ 既設充填層
91c 下地層
91ea 撤去部分
91f 下地層
91f’ 既設下地層
91g 弾力性粒状物
図1
図2
図3
図4
図5
図6