特許第6609218号(P6609218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6609218
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】添加剤組成物および燃料油に対する改良
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/18 20060101AFI20191111BHJP
   C10L 1/222 20060101ALI20191111BHJP
   C10L 1/24 20060101ALI20191111BHJP
   C10L 1/04 20060101ALI20191111BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20191111BHJP
   C10L 1/236 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   C10L1/18
   C10L1/222
   C10L1/24
   C10L1/04
   C08F220/26
   C10L1/236
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-97165(P2016-97165)
(22)【出願日】2016年5月13日
(65)【公開番号】特開2017-25292(P2017-25292A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2019年2月8日
(31)【優先権主張番号】15167750.7
(32)【優先日】2015年5月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500010875
【氏名又は名称】インフィニューム インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】ダネッシュ ゴバーダン
(72)【発明者】
【氏名】サリー アン ホプキンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジャイルズ ウィリアム シーカー
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−23321(JP,A)
【文献】 特表2001−524578(JP,A)
【文献】 特開昭51−69503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/00− 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー(A)および帯電防止性添加剤(B)を含む添加剤組成物であって、該ポリマー(A)が以下のモノマー成分を含み:
(i) 1種またはそれ以上の以下の式(I)の化合物:
【化1】
ここで、R1は水素またはCH3であり;およびR2は、6〜30個の炭素原子を持つ炭化水素基であって、直鎖または分岐鎖アルキル基、または脂肪族または芳香族環式基であり;
(ii) 1種またはそれ以上の以下の式(II)の化合物:
【化2】
ここで、R1は上記意味を有し、またR3は水素またはC1-C22アルキルであり;各R4は独立に水素またはC1-C22アルキルであり;R5は水素、置換または無置換の脂肪族または芳香族環式基、または1〜22個の炭素原子を持つ置換または無置換の直鎖または分岐鎖アルキル基であり;n=0または1〜22の整数;およびmは1〜30の整数であり;および
(iii) 1種またはそれ以上の以下の式(III)の化合物:
【化3】
ここで、R6、R7、R8、R9およびR10は、各々独立に水素、置換または無置換であり得る、1〜20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐鎖アルキル基、ヒドロキシル、NH2であり、または2またはそれ以上のR6、R7、R8、R9およびR10は、一緒に脂肪族または芳香族リング系を形成することができ、そのリング系は置換または無置換であり得;
該帯電防止性添加剤(B)は、(iv) オレフィンポリスルホンおよび(v) エピクロルヒドリンと、脂肪族一級モノアミンまたはN-脂肪族ヒドロカルビルアルキレンジアミンとのポリマー系ポリアミン反応生成物、または該ポリマー系ポリアミン反応生成物のスルホン酸塩を含み;および該添加剤組成物中の該ポリマー(A)対該帯電防止性添加剤(B)の質量:質量比が、1:1〜500:1である、前記添加剤組成物。
【請求項2】
R3および各R4が水素である、請求項1記載の添加剤組成物。
【請求項3】
n=1である、請求項1または請求項2記載の添加剤組成物。
【請求項4】
R2が、12〜18個の炭素原子を持つ直鎖アルキル基である、請求項1〜3の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項5】
式(I)および式(II)におけるR1がCH3である請求項1〜4の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項6】
R6、R7、R8、R9およびR10が、各々水素である、請求項1〜5の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項7】
その上に有機液体をも含む、請求項1〜6の何れかに記載の添加剤組成物。
【請求項8】
大量の燃料油および少量の請求項1〜7の何れかに記載の添加剤組成物を含む、燃料油組成物。
【請求項9】
前記添加剤組成物が、前記燃料油内に、該燃料油の質量を基準として、5〜1,000質量パーツパーミリオン(wppm)の範囲の量、好ましくは5〜500wppmの範囲の量、より好ましくは5〜200wppmの範囲の量で存在する、請求項8記載の燃料油組成物。
【請求項10】
燃料油の導電率を高める方法であって、該燃料油が、請求項1において定義された如き帯電防止性添加剤(B)を含み、該方法が、請求項1〜6において定義された如きポリマー(A)を該燃料油に添加することを含み、該燃料油中の該ポリマー(A)対該帯電防止性添加剤(B)の質量:質量比が1:1〜500:1である、前記方法。
【請求項11】
燃料油の導電率を高めるための、請求項1〜6において定義された如きポリマー(A)の使用であって、該燃料油が、請求項1において定義された如き帯電防止性添加剤(B)を含む、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された特性を持つ添加剤組成物および燃料油組成物、特にディーゼル燃料、ケロシンおよびジェット燃料等の中間留分燃料および同様に生物燃料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1990年代初期において、環境汚染に係る懸念が、燃料生産者に、より低い硫黄含有率を持つ燃料の製造を義務付ける立法を促した。ディーゼル燃料、暖房用オイルおよびケロシン等の燃料の硫黄含有率は、次々に益々低いレベルへと減じられ、また欧州においては、基準EN590により義務付けられた最高硫黄レベルは、今や0.001質量%である。ディーゼル燃料の硫黄および芳香族含有率を減じるために使用される精製法に係る一つの帰結は、該燃料の導電率における低下である。低硫黄燃料の絶縁性は、静電荷の蓄積および放電の恐れのために、精製業者、販売業者および得意先に対する潜在的な危険を意味する。静電荷は、該燃料の汲み出しおよびとりわけその濾過中に発生する可能性があり、この電荷蓄積のスパークとしての解放は、非常に高い引火性環境において重大な危険を生ぜしめる。このような危険性は、帯電防止性添加剤の使用との組合せで、燃料ラインおよびタンクの適切な接地を通して、燃料を加工しまた取扱う際に最小化される。これら帯電防止性添加剤は、静電荷の蓄積を防止することはないが、該接地された燃料ラインおよび容器に対する該静電荷の解放性を高め、それによりスパーキングの危険性を制御する。多数のこのような添加剤が普通に利用されており、また市場から入手できる。最も普通に使用されている帯電防止性添加剤の一つは、ポリスルホンと、例えばUS 3,917,466において開示されているようなポリマー系ポリアミン反応生成物との二成分混合物である。このような帯電防止性添加剤は有効ではあるが、比較的高価であり、またそのために費用効果の高い方法で上記導電率を改善するための、新たな方法に対する絶えることのない要求がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、燃料油の導電率を高めることのできる添加剤組成物を提供することにより、低硫黄含有率燃料の低い導電率に係る問題に取り組むものである。市販の帯電防止性添加剤は、添加剤組成物を形成するためにポリマー材料と組合され、それにより該添加剤組成物の個々の成分は、相乗的に相互作用する。この組合せの結果は、該市販の帯電防止性添加剤の有効性が、大幅に高められる如きものである。このことは、極めて少ない量の該市販の帯電防止性添加剤の使用を可能とし、一方で依然として該燃料油に対して要求される導電率を与える。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、第一の局面において、本発明は、ポリマー(A)および帯電防止性添加剤(B)を含む添加剤組成物を提供し、ここにおいて、ポリマー(A)は、以下のモノマー成分を含み:
(i) 1種またはそれ以上の以下の式(I)の化合物:
【化1】
【0005】
ここで、R1は水素またはCH3であり;およびR2は、6〜30個の炭素原子を持つ炭化水素基であり、および直鎖または分岐鎖アルキル基、または脂肪族または芳香族環式基であり;
(ii) 1種またはそれ以上の以下の式(II)の化合物:
【化2】
【0006】
ここで、R1は上記意味を有し、またR3は水素またはC1-C22アルキルであり;各R4は独立に水素またはC1-C22アルキルであり;R5は水素、置換または無置換の脂肪族または芳香族環式基、または1〜22個の炭素原子を持つ置換または無置換の直鎖または分岐鎖アルキル基であり;n=0または1〜22の整数;およびmは1〜30の整数であり;および
(iii) 1種またはそれ以上の以下の式(III)の化合物:
【化3】
【0007】
ここで、R6、R7、R8、R9およびR10は、各々独立に水素、置換または無置換であり得る、1〜20個の炭素原子を持つ直鎖または分岐鎖のアルキル基、ヒドロキシル、NH2であり、または2またはそれ以上のR6、R7、R8、R9およびR10は、一緒に脂肪族または芳香族リング系を形成することができ、そのリング系は置換または無置換であり得;
該帯電防止性添加剤(B)は、(iv) オレフィンポリスルホンおよび(v) エピクロルヒドリンと、脂肪族一級モノアミンまたはN-脂肪族ヒドロカルビルアルキレンジアミンとのポリマー系ポリアミン反応生成物、または該ポリマー系ポリアミン反応生成物のスルホン酸塩を含み;および該添加剤組成物中の該ポリマー(A)対該帯電防止性添加剤(B)の質量:質量比は1:1〜500:1である。
【0008】
上記ポリマー(A)
上記ポリマー(A)は、少なくとも3種の異なるモノマー:式(I)のモノマー、式(II)のモノマーおよび式(III)のモノマーから形成される。好ましい一態様において、該ポリマー(A)は、3種のモノマーのみから形成される。他の態様において、該ポリマー(A)は、少なくとも2種の式(I)のモノマー成分および/または少なくとも2種の式(II)のモノマー成分および/または少なくとも2種の式(III)のモノマー成分を含むことができる。必要ならば、式(I)、(II)および(III)のものとは異なる他のモノマー成分を組込むことができる。
好ましくは、R3および各R4は水素である。
好ましい一態様においては、n=1である。
一態様において、mは1を超え、例えば2〜20である。
もう一つの態様においては、m=1である。
もう一つの態様においては、m = n = 1である。
好ましくは、R5は水素である。
【0009】
好ましくは、R2は12〜18個の炭素原子を持つ直鎖アルキル基である。その例は、n-ドデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシルおよびn-オクタデシルを含む。好ましい一態様において、R2はn-ドデシルである。もう一つの好ましい態様において、R2はn-オクタデシルである。
好ましくは、式(I)および式(II)におけるR1はCH3である。この態様において、式(I)および式(II)両者は、メタクリレートモノマーである。
好ましい態様において、式(I)におけるR1はCH3であり、かつ式(I)におけるR2は12〜18個の炭素原子を持つ直鎖アルキル基である。従って、その例はn-ドデシル(またはラウリル)メタクリレート、n-テトラデシルメタクリレート、n-ヘキサデシルメタクリレートおよびn-オクタデシル(またはステアリル)メタクリレートを含む。
好ましい態様において、式(II)におけるR1はCH3であり、R3、R4およびR5は、全て水素であり、n=1であり、かつmは1を超え、例えば2〜20である。従って、このような化合物は、ポリエチレングリコールメタクリレートである。好ましい一例は、ポリエチレングリコールセグメントが約500という分子量を持つ、ポリエチレングリコールメタクリレートである。これは、mが7〜12の範囲、例えば9である式(II)の化合物に相当する。
もう一つの好ましい態様において、式(II)におけるR1はCH3であり、R3、R4およびR5は、全て水素であり、n=1であり、かつm=1である。従って、このような化合物は、ここにおいてHEMAと呼ぶことができる、ヒドロキシエチルメタクリレートである。
好ましくは、R6、R7、R8、R9およびR10は、式(III)がスチレンを表すように、各々水素である。
好ましくは、式(I)のモノマー成分は、モル%で表して、上記ポリマーの10〜90%を構成する。より好ましくは、式(I)のモノマー成分は、モル%で表して、該ポリマーの15〜80%、例えば20〜70%または30〜70%または30〜60%を構成する。2種以上の式(I)のモノマー成分を用いる場合、与えられた該範囲は、使用された式(I)のモノマーの全量を意味する。
【0010】
好ましくは、式(II)のモノマー成分は、モル%で表して、上記ポリマーの5〜80%を構成する。より好ましくは、式(II)のモノマー成分は、モル%で表して、該ポリマーの5〜70%、例えば10〜60%または15〜50%を構成する。2種以上の式(II)のモノマー成分を使用する場合、与えられた該範囲は、使用された式(II)のモノマーの全量を意味する。
好ましくは、式(III)のモノマー成分は、モル%で表して、上記ポリマーの1〜60%を構成する。より好ましくは、式(III)のモノマー成分は、モル%で表して、該ポリマーの1〜50%、例えば1〜45%または5〜45%を構成する。2種以上の式(III)のモノマー成分を使用する場合、与えられた該範囲は、使用された式(III)のモノマーの全量を意味する。
ポリマー(A)の特定の例は以下に列挙するものを含む:
ポリエチレングリコールメタクリレート、n-ドデシルメタクリレートおよびスチレンから形成されるポリマー、ここで該ポリエチレングリコールメタクリレートのポリエチレングリコールセグメントは、分子量約500を持つ。
ポリエチレングリコールメタクリレート、n-テトラデシルメタクリレートおよびスチレンから形成されるポリマー、ここで該ポリエチレングリコールメタクリレートのポリエチレングリコールセグメントは、分子量約500を持つ。
ポリエチレングリコールメタクリレート、n-ヘキサデシルメタクリレートおよびスチレンから形成されるポリマー、ここで該ポリエチレングリコールメタクリレートのポリエチレングリコールセグメントは、分子量約500を持つ。
ポリエチレングリコールメタクリレート、n-オクタデシルメタクリレートおよびスチレンから形成されるポリマー、ここで該ポリエチレングリコールメタクリレートのポリエチレングリコールセグメントは、分子量約500を持つ。
ヒドロキシエチルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレートおよびスチレンから形成されるポリマー。
ヒドロキシエチルメタクリレート、n-テトラデシルメタクリレートおよびスチレンから形成されるポリマー。
ヒドロキシエチルメタクリレート、n-ヘキサデシルメタクリレートおよびスチレンから形成されるポリマー。
ヒドロキシエチルメタクリレート、n-オクタデシルメタクリレートおよびスチレンから形成されるポリマー。
【0011】
好ましくは、上記ポリマー(A)は、統計的(statistical)コポリマー、より好ましくはランダムコポリマーである。当業者は、上記モノマーの反応性比が、得られるポリマー構造に影響を与えることに気付くであろう。該ポリマーを製造するのに使用される上記モノマー成分(i)、(ii)および(iii)は、1に近い反応性比を有し、このことは、任意の与られたモノマー成分が、異なる型のモノマー成分との反応と同様に、同一の型のもう一つのモノマー成分と反応する可能性が高いことを意味する。統計的コポリマーは、その重合が公知の統計学的な規則、例えばベルヌーイ(Bernoullian)統計またはマルコフ(Markovian)統計に従う場合に形成される。該ポリマー鎖内の任意の特定の点においてある特定の型のモノマー残基を見出す確率が、周辺のモノマーの型には無関係である統計的ポリマーは、ランダムコポリマーと呼ぶことができる。統計的およびランダムコポリマーは、より秩序だったポリマー型、例えば交互コポリマー、周期性コポリマーおよびブロックコポリマーとは区別することができる。
上記ポリマーを製造するための合成法は、当業者には公知であろう。該ポリマーは、開始剤、例えばパーオキサイドまたはアゾ化合物を用いたフリーラジカル重合により、または任意の他の適当な開始方法によって合成し得る。一つの有利な方法は、スターブフィード(Starve Feed)重合を利用しており、ここでそのモノマーおよび/または開始剤は、制御された反応期間に渡り、反応器内に供給される。これは、該形成される生成物の分子量に対する制御を可能とし、また該反応の発熱に対する制御をも可能とする。標準的なフリーラジカル技術が好ましいが、同様に適切な技術は、より特殊化された技術であり、該技術は、ポリマーの分子量および分散性に対するさらに多くの制御を施すことができる。これらのより特殊化された技術の中でも特に、接触的連鎖移動重合(CCTP)を挙げることができる。その他の技術は、可逆的ヨウ素移動重合(RITP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)、ニトロキシド媒介重合(NMP)、可逆的付加フラグメンテーション(RAFT)重合を含む。
【0012】
RAFT重合は、多くの場合デカンチオール等のチオールである連鎖移動剤を使用する。その成長するポリマーラジカル末端は、該連鎖移動剤の弱いS-H結合から水素ラジカルを取り去り、また使用する該薬剤の型および量を選択することにより、ポリマーの成長を終わらせることができ、またそれ故に分子量を制御することができる。
CCTPは、チオール連鎖移動剤を必要とせず、これは、硫黄-含有生成物を回避すべき特定の用途においては有利であり得るが、その代わりに少量のより効率的な連鎖移動触媒を使用する。好ましい連鎖移動触媒は、コバルト-含有錯体であるコバロキシム(Cobaloxime)またはCoBFである。この錯体の製造は、例えばA Bakac& J.H EspensonによるJ. Am. Soc., (1984), 106, 5197-5202において、およびA Bakac等によるInorg. Chem., (1986), 25, 4108-4114において記載されている。該触媒は、好都合なことにコバルト(II)アセテート四水和物、ジメチルグリオキシムおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテレートから製造される。使用に際して、該触媒は、該ポリマー鎖の末端におけるラジカルと相互作用し、またCo(III)-H錯体および末端オレフィン官能基を持つマクロモノマーを形成する。該Co(III)-H錯体は、モノマーへの水素移動により新たなポリマー鎖の成長を再開し、それにより該Co(II)触媒錯体を再生する。この触媒:モノマー比の選択は、ポリマーの分子量および分散性に対する制御を可能とする。この技術は、低分子量ポリマーを製造するのに特に適している。
一態様において、本発明において使用するポリマー(A)は、接触的連鎖移動重合を利用して製造される。好ましくは、コバロキシムまたはCoBF連鎖移動触媒が使用される。
【0013】
好ましくは、上記ポリマー(A)は、2,000〜50,000の範囲、より好ましくは2,000〜30,000の範囲、より一層好ましくは4,000〜25,000の範囲、例えば4,000〜15,000の範囲の、ポリスチレン標準物質を基準とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した如き数平均分子量(Mn)を持つ。
好ましくは、上記ポリマー(A)は、1〜10、より好ましくは1〜5、例えば1〜3の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比として定義され、Mw/Mnで表される分散度(D)を持つ。Mnと同様に、Mwはポリスチレン標準物質を基準とするGPCによって測定される。
【0014】
上記帯電防止性添加剤(B)
上記帯電防止性添加剤(B)は、(iv) オレフィンポリスルホンおよび(v) エピクロルヒドリンと、脂肪族一級モノアミンまたはN-脂肪族ヒドロカルビルアルキレンジアミンとのポリマー系ポリアミン反応生成物、または該ポリマー系ポリアミン反応生成物のスルホン酸塩を含む。
好ましくは、上記ポリスルホンの重量平均分子量は10,000〜1,500,000の範囲、より好ましくは50,000〜900,000の範囲、例えば100,000〜500,000の範囲内にある。
好ましくは、成分(iv)対成分(v)の質量比は、100:1〜1:100の範囲にある。
上記ポリスルホンの製造にとって有用な上記オレフィンは、好ましくは6〜20個の炭素原子、より好ましくは6〜18個の炭素原子を持つ。特に好ましいものは、1-デセンポリスルホンである。これらの材料の製造は、例えばUS 3,917,466において記載されているように、当分野において公知である。
【0015】
上記ポリマー系ポリアミン成分は、アミンおよびエピクロルヒドリンを、1:1〜1:1.5の範囲のモル比および50℃〜100℃の温度にて加熱することにより製造し得る。適当な脂肪族一級アミンは、8〜24個の炭素原子、好ましくは8〜12個の炭素原子を持つであろう。その脂肪族基は、好ましくはアルキル基である。N-脂肪族ヒドロカルビルアルキレンジアミンを使用する場合、好ましくはその脂肪族ヒドロカルビル基は、8〜24個の炭素原子を持つであろうし、また好ましくはアルキル基であろう。好ましくは、該アルキレン基は2〜6個の炭素原子を持つであろう。好ましい該N-脂肪族ヒドロカルビルアルキレンジアミンは、N-脂肪族ヒドロカルビル-1,3-プロピレンジアミンである。これら材料は、市場から入手でき、その好ましい一例は、N-獣脂-1,3-プロピレンジアミンとエピクロルヒドリンとのポリマー系反応生成物である。
好ましくは、上記ポリマー系ポリアミン反応生成物は、約2〜20の重合度を持つであろう。これらの材料は、US 3,917,466においても記載されている。
好ましくは、上記ポリマー系ポリアミン反応生成物は、スルホン酸塩の形状にある。油溶性スルホン酸、例えばアルカンスルホン酸またはアリールスルホン酸が有用である。好ましい一例は、ドデシルベンゼンスルホン酸である。
上記帯電防止性添加剤(B)は、最も好ましくはイノスペック社(Innospec Inc.)から入手できる市販の製品であるスタディス(StadisTM) 450であり、これが、本出願人が理解し、かつ成分(B)の上記定義によって説明しようとしているものである。スタディス450の希釈バージョンであると考えられるスタディス(StadisTM) 425も適している。
好ましくは、上記添加剤組成物における、上記ポリマー(A)対上記帯電防止性添加剤(B)の質量:質量比は、50:1〜300:1、好ましくは100:1〜250:1である。
【0016】
都合の良い場合には、本発明の添加剤組成物は、更に該添加剤組成物の成分を溶解し、可溶化し、またはさもなくば分散するように作用する有機液体を含むことができる。得られる該添加剤濃縮物は、使用しまたは保存するのに一層便利であり得、また燃料油に容易に計り入れることができる。適当な有機液体は、炭化水素溶媒、例えばナフサ、ケロシン、ディーゼルおよびヒーターオイル、芳香族炭化水素、例えば「ソルベッソ(SOLVESSO)」との商品名の下に市販されているもの、アルコール、エーテルおよび他の含酸素化合物(oxygenates)およびパラフィン系炭化水素、例えばヘキサン、ペンタンおよびイソパラフィンを含む。該有機液体は、燃料油と物理的に混合されて、該燃料油の溶液または分散液を形成し得るという意味において、該燃料油と混和性であるべきである。該液体は、問題としている該添加剤組成物および該燃料油両者との相溶性を考慮して選択されるであろうし、また当業者にとって通常の選択に係る問題である。該添加剤濃縮物は、適切には1〜95質量%、好ましくは10〜70質量%、例えば25〜60質量%の有機液体を含むことができ、その残りは、上記添加剤組成物および場合により該燃料油内で様々な目的を満たすのに必要とされる任意の追加の添加剤である。幾つかの随意の追加の添加剤は、以下において記載される。
上で論じた如く、本発明の添加剤組成物は、燃料油において有用であることが分かる。従って、第二の局面において、本発明は、燃料油組成物を提供し、該組成物は大量の燃料油および少量の上記第一の局面に従う添加剤組成物を含む。
上記燃料油は石油ベースの燃料油、とりわけ中間留分燃料油であり得る。このような留出燃料油は、一般に110℃〜500℃、例えば150℃〜400℃の範囲内で沸騰する。本発明は、あらゆる型の中間留分燃料油に適用でき、該燃料油は、ASTM D-86に従って測定して、50℃またはこれを超える、90%〜20%の沸騰温度差を持つ留出物を含む。
【0017】
上記燃料油は、常圧留出物または減圧留出物、分解ガス油、または直留および熱分解および/または接触分解留出物の任意の割合でのブレンドを含むことができる。最も一般的な石油留分燃料は、ケロシン、ジェット燃料、ディーゼル燃料、暖房用オイルおよび重質燃料油である。該暖房用オイルは、直留常圧留出物であり得、あるいはまた減圧ガス油または分解ガス油またはその両者を含むこともできる。該燃料は、大量または少量の、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)法から誘導される成分を含むこともできる。FT燃料としても知られる、フィッシャー-トロプシュ(Fischer-Tropsch)燃料は、ガス-ツー-リキッド(gas-to-liquid)燃料、石炭および/またはバイオマス変換燃料として記載されているものをも含む。このような燃料を製造するためには、先ずシンガス(CO + H2)を発生させ、次いでフィッシャー-トロプシュ法によりノルマルパラフィンおよびオレフィンに変換する。該ノルマルパラフィンを、次に接触分解/改質または異性化、水素化分解および水素化異性化等の方法により変性して、イソパラフィン、シクロパラフィンおよび芳香族化合物等の様々な炭化水素を与えることができる。得られる該FT燃料は、そのまま、または他の燃料成分および燃料型、例えば本明細書において述べられたものと組合せて使用することができる。
本発明は、またしばしば生物燃料またはバイオディーゼルと呼ばれる、動物または植物材料由来のオイルから製造される、脂肪酸アルキルエステルを含有する燃料油に適用することもできる。生物燃料は、一部の人々に、燃焼に際して環境に与える害が少ないものと信じられており、また再生可能な源から得られる。また、生物燃料の他の形態、例えば水添植物油(HVO)および藻類等のその他の源由来のオイルも、本発明に含められる。
【0018】
適当なオイルの動物または植物源は、菜種油、キャノーラオイル、コリアンダーオイル、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、ヒマシ油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、コーン油、アーモンドオイル、パームカーネルオイル、ココナッツオイル、からし油、ジャトロファ油、牛脂および魚油である。更なる例は、コーン、麻、ゴマ、シアナッツ、ラッカセイおよび亜麻仁から誘導される燃料油を含み、また当分野において公知の方法によりこれらから誘導することができる。グリセロールで部分的にエステル化された脂肪酸の混合物である菜種油は、多量に入手することができ、また菜種から圧搾により簡単な方法で得ることができる。リサイクル油、例えば使用済みキッチンオイルも適している。
脂肪酸のアルキルエステルとして、例えば市販の混合物として、以下のものを考慮することができる:50〜150、特に90〜125のヨウ素価を持つ、12〜22個の炭素原子を持つ脂肪酸、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリック(petroselic)酸、リシノレイン酸、エレオステアリン酸(elaeostearic)、リノール酸、リノレン酸、エイコサン酸、ガドレイン酸、ドコサン酸、またはエルカ酸の、エチル、プロピル、ブチルおよび特にメチルエステル。特に有利な特徴を持つ混合物は、主として、即ち少なくとも50質量%の、16〜22個の炭素原子および1、2または3個の二重結合を持つ脂肪酸のメチルエステルを含むものである。好ましい該脂肪酸のアルキルエステルは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびエルカ酸のメチルエステルである。
上述の群の市販の混合物は、例えば動物および植物油脂の開裂およびエステル化、これらの低級(約C1〜C6)脂肪族アルコールとのエステル交換により得られる。脂肪酸のアルキルエステルを製造するためには、20%未満の低レベルの飽和酸を含み、かつ130未満のヨウ素価を持つ油脂から出発することが有利である。以下のエステルまたはオイルのブレンド、例えば菜種油、ヒマワリ油、キャノーラ油、コリアンダー油、ヒマシ油、大豆油、ピーナッツオイル、綿実油、牛脂等が適している。18個の炭素原子を持ち、80質量%を超える不飽和脂肪酸を含む、特定の様々な菜種油をベースとする脂肪酸のアルキルエステルが、特に適している。
【0019】
上記生物燃料の全てを、本発明における燃料油として使用し得るが、好ましいものは、植物油の誘導体であって、その内の特に好ましい生物燃料は、菜種油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油、オリーブオイルまたはパーム油のアルキルエステル誘導体であり、菜種油メチルエステルが特に好ましい。このような脂肪酸のメチルエステルは、しばしば当分野においてはフェーム(FAME)と呼ばれている。
生物燃料は、通常石油-由来の燃料油との組合せで使用される。本発明は、また任意比率での生物燃料と石油-由来の燃料との混合物に適用し得る。このような燃料は、しばしば「Bx」燃料と称されており、ここでxは、該生物燃料-石油ブレンドにおける生物燃料の質量%を表す。その例は、xが2またはこれを超え、好ましくは5またはこれを超え、例えば10まで、25まで、50まで、または95までである燃料を含む。現在のドイツ法は、「B7」生物燃料に基いて作られている。好ましくは、このようなBxベースの燃料中の該生物燃料成分は、脂肪酸のアルキルエステル、最も好ましくは脂肪酸のメチルエステルを含む。
本発明は、また純粋な生物燃料に対しても適用し得る。従って、一態様において、該燃料油は、本質的に100質量%の植物または動物源を由来とする燃料、好ましくは本質的に100質量%の脂肪酸アルキルエステル、最も好ましくは脂肪酸のメチルエステルを含む。
ジェット燃料の例は、約65℃〜約330℃の範囲の温度にて沸騰し、例えばJP-4、JP-5、JP-7、JP-8、ジェット(Jet) Aおよびジェット(Jet) A-1等の名称の下に市販されている燃料を含む。JP-4およびJP-5は、米軍規格(US Military Specification) MIL-T-5624-Nにおいて指定されており、またJP-8は米軍規格(US Military Specification) MIL-T-83133-Dにおいて指定されている。ジェットA、ジェットA-1およびジェット(Jet) Bは、ASTM D1655において指定されている。
石油または植物または動物-由来の何れであれ、または合成であれ、上記燃料油は、低い硫黄含有率を有している。典型的に、該燃料の硫黄含有率は、500wppm(質量パーツパーミリオン)未満であろう。好ましくは、該燃料の硫黄含有率は、100wppm未満、例えば50wppm未満、20wppm未満または10wppm未満であろう。
【0020】
このような燃料油は、その未処理(即ち、添加剤を含まない)状態において、通常は低い導電率、普通は10pSm-1未満、例えば約2〜5pSm-1を持つであろう。
上記燃料油に添加される添加剤組成物の量は、該燃料油の固有の導電率および到達されるべき所望の目標とする導電率に依存するであろう。しかし、好ましくは、該添加剤組成物は、該燃料油中に、該燃料油の質量を基準として5〜1,000質量パーツパーミリオン(wppm)の範囲の量、好ましくは5〜500wppmの範囲、より好ましくは5〜200wppmの範囲の量で存在する。
好ましい態様において、上記燃料油は、10〜500wppmの範囲、より好ましくは20〜200wppmの範囲のポリマー(A)および0.1〜10wppmの範囲、より好ましくは0.1〜5wppmの範囲の帯電防止性添加剤(B)を含むであろう。疑問の余地をなくすために、これら(A)および(B)の量についてここに与られた数値範囲の何れかおよび全ての両極端は、明確に開示されているものと考えるべき範囲の、あらゆる可能な組合せを作成すべく独立に組合せることができる。
理解されるであろう如く、上記添加剤組成物は、上記添加剤濃縮物の形状で、上記燃料油に添加することができる。この場合において、使用される添加剤組成物の量または使用される(A)および(B)の量は、これらの活性成分(a.i.)の含有率に関するものである。例えば、50質量%のキャリア流体を含む濃縮物200wppmの燃料油に対する添加は、100wppmの添加剤組成物を含む燃料油を与えるであろう。
上述の如く、上記ポリマー(A)および上記帯電防止性添加剤(B)は、相乗的に相互作用して、高められた導電率を持つ燃料油を与え、該導電率は、同一の量の(B)を単独で使用して実現し得る値よりも高い。従って、第三の局面において、本発明は、燃料油の導電率を高める方法を提供するものであり、該方法において、該燃料油は、本明細書において定義された如き帯電防止性添加剤(B)を含み、該方法は、本明細書において定義された如きポリマー(A)を該燃料油に添加することを含み、ここで該燃料油中の該ポリマー(A)対該帯電防止性添加剤(B)の質量:質量比は、1:1〜500:1である。
【0021】
同様に、第四の局面において、本発明は、上記第一の局面に従う本明細書において定義された如きポリマー(A)の、燃料油の導電率を高めるための使用を提供するものであり、ここで該燃料油は本明細書において定義された如き帯電防止性添加剤(B)を含む。
上記全ての局面に関連して、また上記記載から明確であろうように、上記添加剤組成物は、所望により、添加剤濃縮物の形状で与えることができる。
燃料油の導電率の測定は、型通りの方法であり、またそうするための方法は当業者には公知である。市販のデバイス、例えばエムシーディジタルコンダクティビティメーター(EmceeTM Digital Conductivity Meter)(モデル(Model) 1152)が利用可能である。このデバイスは、1メートル当たり1ピコシーメンス(pS/m)という精度において、0〜2,000pS/mの範囲に渡る液体サンプルに係る導電率の測定を可能とする。
一般的に燃料油に添加される更なる添加剤は、本発明の添加剤組成物と共に使用することも可能である。このような更なる添加剤は、該燃料油に対して別々に導入することができるが、より一般的には、上述の如き添加剤濃縮物の状態に一緒に組合される。添加剤の種類は、当業者には公知であり、また以下の例は完全なリストを意図するものではない。
一つの群は、燃料油の低温特性の変更を可能とする添加剤である。適当な材料は周知であり、また流動性向上剤、例えばエチレン-不飽和エステルコポリマーおよびターポリマー、例えばエチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-ビニル-2-エチルヘキサノエートコポリマーおよびエチレン-ビニルネオデカノエートコポリマー、エチレン-酢酸ビニル-ビニル-2-エチルヘキサノエートターポリマー、エチレン-酢酸ビニル-ビニルネオノナノエートターポリマー、エチレン-酢酸ビニル-ビニルネオデカノエートターポリマー;櫛型ポリマー、例えばフマレート-酢酸ビニルコポリマー、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートポリマー、これらは、窒素を含みあるいは窒素-含有モノマーと共重合されたものを含む;炭化水素ポリマー、例えば水添ポリブタジエンコポリマー、エチレン/1-アルケンコポリマー、および同様なポリマーを含む。同様に適したものは、当分野においてワックス系沈降防止性添加剤(WASA)として知られている添加剤である。同様に適したものは、縮合物種、例えばEP 0 857 776 B1において記載されているようなアルキル-フェノールホルムアルデヒド縮合物、またはEP-A-1 482 024において記載されているようなヒドロキシ-ベンゾエートホルムアルデヒド縮合物である。
【0022】
添加剤の他の種類は、洗浄剤および分散剤、一般的にはヒドロカルビル-置換サクシンイミド種;セタン価向上剤;幾つかのディーゼルエンジンの排気系に取付けられる粒状物質トラップ装置の再生を改善するのに使用される金属-含有添加剤;潤滑性増強剤;他の導電性改善剤;染料およびその他のマーカー;および酸化防止剤である。本発明は、このような更なる添加剤の添加を意図しており、処理割合の観点から、その適用は当業者には公知である。好ましい一態様において、本発明の添加剤組成物は、エチレン-不飽和エステルコポリマーおよびワックス系沈降防止性添加剤の一方またはその両者と併合され、あるいはこれらとの組合せで使用される。特に好ましいエチレン-不飽和エステルコポリマーは、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-酢酸ビニル-ビニル-2-エチルヘキサノエートターポリマー、エチレン-酢酸ビニル-ビニルネオノナノエートターポリマーおよびエチレン-酢酸ビニル-ビニルネオデカノエートターポリマーである。特に好ましいワックス系沈降防止性添加剤は、無水フタール酸と2モル割合の二水素化タロウアミンとの反応により形成されるアミド-アミン塩である。
【実施例】
【0023】
今から、本発明を、非限定的実施例のみによって説明する。
典型的合成例
マグネティックスターラーを備えた、清浄な乾燥状態にあるシュレンク(Schlenk)チューブに、ラウリルメタクリレート(9.4g)、スチレン(1.6g)およびポリエチレングリコールセグメントが約500の分子量を持つポリエチレングリコールメタクリレート(7.0g)(PEGMA500)を、AIBN(0.1g)およびブタノン(40mL)と共に添加した。得られたこの混合物を、3回に及ぶ凍結-解凍脱ガス処理にかけ、次いで該チューブを窒素で満たした。次に、該チューブを、予熱されたアルミニウム製加熱ブロック内の、マグネティックスターラー/ホットプレート上に配置し、触媒錯体:CoBF(1mLの1.3x10-3モルdm-3溶液)をシリンジにより添加した。この反応混合物を80℃にて4時間に渡り、正の窒素圧下で攪拌状態において、意図したポリマーを得た。
以下のポリマーA7として、ポリエチレングリコールセグメントが約360の分子量を有する、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA360)を使用した。
同様な手順を使用し、上記ポリエチレングリコールメタクリレートをヒドロキシエチルメタクリレートに置換えて、HEMA-含有ポリマーを製造した。
【0024】
以下の表は、上記のようにして合成されたポリマー(A)の例を列挙する:
【0025】
上記表において、「PEGMA500」は、ポリエチレングリコールセグメントが約500の分子量を有する、ポリエチレングリコールメタクリレートモノマーであり、「PEGMA360」は、ポリエチレングリコールセグメントが約360の分子量を持つ、ポリエチレングリコールメタクリレートモノマーであり、および「HEMA」は、ヒドロキシエチルメタクリレートである。これらは、式(II)の化合物の例である。「C12MA」は、n-ドデシルメタクリレート(またはラウリルメタクリレート)であり、これは式(I)の化合物の一つであり、また「スチレン」は、式(III)の化合物の1種であるスチレンである。
上記ポリマーは、帯電防止性添加剤(B)、即ちB1との組合せにおける導電率についてテストされた:B1は、イノスペック社(Innospec Inc.)から得たスタディス(StadisTM) 450である。
導電率は、エムシーディジタルコンダクティビティメーター(EmceeTM Digital Conductivity Meter)(モデル(Model) 1152)を用いて測定された。測定は、以下の表に詳述される(A)および(B)の量を含むディーゼル燃料組成物内で行われた。該ディーゼル燃料は、質量基準で<10ppmの硫黄含有率を有し、また約5pSm-1という固有の導電率を有していた。
【0026】
【0027】
上記表により理解できるように、テストされた全てのポリマー(A)は、単独で使用された場合(実施例1〜10)に、導電率における改善を示すディーゼル燃料を与えることができた。予想されるであろうように、該帯電防止性添加剤B1も、単独で使用された場合に、導電率における改善を示すディーゼル燃料を与えた。しかし、該ポリマー(A)と該帯電防止性添加剤との併用効果は、全ての場合において、単独で使用された各材料の個々の寄与から予測されるであろう値よりも過度に大きいものであった。この相乗的挙動は、同一またはより良好な導電率を得るのに、より少量の該帯電防止性添加剤の使用を可能とする。例えば、3.0wppmのB1に起因するものと思われる導電率は、50wppmのA1と組合せた場合(実施例13および実施例15参照);あるいは50wppmのA2と組合せた場合(実施例13および実施例17参照);あるいは50wppmのA3と組合せた場合(実施例13および実施例19参照);あるいは50wppmのA4と組合せた場合(実施例13および実施例21参照);あるいは100wppmのA5と組合せた場合(実施例13および実施例24参照);あるいは50wppmのA6と組合せた場合(実施例13および実施例25参照)には、僅かに0.5wppmのB1を用いて達成することができる。それ故に、高価なB1の量は、6倍減じることができる。もう一つの例として、3.0wppmのB1に起因するものと思われる導電率は、ほんの5wppmのA1と組合せた場合(実施例13および実施例31参照)には、僅かに1.0wppmのB1を用いて達成し得る。その結果、必要とされるB1の量における3-倍の減少が、極めて少量のA1の使用を通して達成し得る。