(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非常に薄いガラス基板によって、装置設計が容易になるという有利な点はあるが、そのような薄い基板を、基板を損傷することなく処理するのは難しい可能性がある。したがって、アセンブリを形成するためにガラス基板を担体プレートに接合させ、そのガラス基板を処理し、次に、処理したガラス基板を、担体プレートから取り外すという方法が考えられてきた。それでも、ガラス基板を、担体プレートから取り外すには、依然として困難な点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に従って、担体プレートの重大な損傷なく、薄いガラス基板を、その担体プレートから、取り外す方法を記述する。その方法は、ガラス基板から、ガラスを融除して、ガラス基板中にチャネルを形成するために、ピコ秒の時間スケールのパルス持続時間および高繰り返しレートとを有するレーザ光で、ガラス基板のうちの不接合である部分を照射する工程を備える。チャネルが、ガラス基板の全厚みを貫通して延び、ガラス基板のうち担体プレートに不接合である部分に、そのチャネルが形成されれば、そのチャネルによって境界が形成された、不接合部分のうちの少なくとも一部分を、担体プレートから取り外すことができる。チャネルの幅は、その新たに取り外される部分が、ガラス基板のうち担体プレートに接合されたままの部分と接触することにより、その被取り外し部分が損傷される可能性を減らすように、選択することができる。レーザのパラメータ(例えば、パルスレート、パワーおよびパルス持続時間)は、レーザ光によって担体プレートが実質的に損傷されないように選択されるので、不接合である部分が除去された後に、必要に応じて、接合されている部分を除去することにより、担体プレートを再使用してもよい。
【0006】
このように、ガラスシートを、担体プレートから、分離する方法の一態様においては、ガラス基板と担体プレートとを備えたアセンブリを提供する工程であって、前記ガラス基板は、第1の表面と、第2の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面との間の厚さとを有し、該ガラス基板はさらに、エッジ部と中央部とを有し、前記エッジ部における該ガラス基板の該第2の表面は、前記担体プレートに接合され、前記中央部における該ガラス基板の該第2の表面は、該担体プレートに不接合である工程と、パルス状のレーザ光で、不接合である中央部上の照射経路に沿って、前記ガラス基板の前記第1の表面を照射する工程であって、前記照射が、該ガラス基板の前記厚さを貫通して延びて、前記エッジ部から該中央部を分離するチャネルを形成する、ガラス基板のアブレーションを、前記照射経路に沿って生成し、前記チャネルは、前記第1の表面において、前記第2の表面における第2の幅より広い第1の幅を有するものである工程と、ガラスシートを生成するために、前記アセンブリから、前記ガラス基板の前記中央部の少なくとも一部分を取り外す工程とを備え、前記中央部の前記少なくとも一部分を取り外す間、前記ガラス基板の前記エッジ部が、前記担体プレートに接合したままであることを特徴とする方法を開示する。照射中、レーザ光は、ラスターパターンで移動されてもよく、ラスターパターンは、ラスターエンベロープを定義するものである。ガラス基板の厚さは、0.7mm以下、0.5mm以下、0.3mm以下、0.1mm以下、または、0.05mm以下であってもよい。また、チャネルの第2の幅は、20μm以上、30μm以上、または50μm以上など、10μm以上であることが好ましい。チャネルの幅は、前記中央部の少なくとも一部分を、前記エッジ部との接触が起きないように取り外すための隙間を提供するのに、十分であるべきである。ほとんどの場合において、チャネルの第2の幅は、100μm以下、例えば、約40μmから約80μmの範囲でよい。
【0007】
レーザ光は、例えば、100ピコ秒以下のパルス持続時間を有していてもよく、レーザ光の長手方向の軸に対し垂直な、レーザ光の強度分布は、ガウス分布であることが好ましい。照射中に、レーザ光によって、担体プレートは分離されない。
【0008】
他の態様においては、ガラスシートを担体プレートから分離する方法であって、ガラス基板と担体プレートとを備えたアセンブリを提供する工程であって、前記ガラス基板は、第1の表面と、第2の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面との間の厚さとを有し、該ガラス基板はさらに、エッジ部と中央部とを有し、前記エッジ部における該ガラス基板の該第2の表面は、前記担体プレートに接合され、前記中央部における該ガラス基板の該第2の表面は、該担体プレートに不接合である工程と、パルス状のレーザ光で、前記ガラス基板の前記第1の表面を照射する工程であって、前記レーザ光が、ラスターエンベロープ内の複数の平行な走査経路に沿って移動するものである工程と、前記ラスターエンベロープが、照射経路に沿って、不接合である中央部上で移動するように、該ラスターエンベロープとガラス基板との間の相対的動作を生成する工程であって、前記照射が、該ガラス基板の前記厚さを貫通して延びて、前記エッジ部から該中央部の少なくとも一部分を分離するチャネルを形成する、ガラス基板のアブレーションを、前記照射経路に沿って生成し、前記チャネルは、前記第1の表面において、前記第2の表面における幅W
2より広い幅W
1を有するものである工程と、ガラスシートを生成するために、前記アセンブリから、前記ガラス基板の前記不接合である中央部の少なくとも一部分を取り外す工程とを備え、該照射中に、レーザ光により、担体プレートが分離されないことを特徴とする方法が開示される。複数の走査経路は、照射経路に平行であることが好ましい。また、レーザ光が、ガラス基板の第1の表面上に、スポットを形成し、スポットの半値全幅の直径は、隣接する走査経路間の垂直な距離以上であることが好ましい。本実施形態によれば、中央部の少なくとも一部分を取り外す間、ガラス基板のエッジ部は担体プレートに接合されたままであるが、アセンブリから、不接合である中央部の少なくとも一部分が取り外された後は、エッジ部が、担体プレートに不接合になってもよい。
【0009】
さらに他の態様においては、ガラスシートを担体プレートから分離する方法であって、ガラス基板と担体プレートとを備えたアセンブリを提供する工程であって、前記ガラス基板は、第1の表面と、第2の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面との間の厚さとを有し、該ガラス基板はさらに、エッジ部と中央部とを備え、前記エッジ部における該ガラス基板の該第2の表面は、前記担体プレートに接合され、前記中央部における該ガラス基板の該第2の表面は、該担体プレートに不接合である工程と、パルス状のレーザ光で、前記ガラス基板の前記第1の表面を照射する工程であって、前記レーザ光が、ラスターエンベロープ内の複数の平行な走査経路に沿って移動するものである工程と、前記ラスターエンベロープが、前記複数の平行な走査経路と平行な照射経路に沿って、不接合である中央部上で移動するように、該ラスターエンベロープとガラス基板との間の相対的動作を生成する工程であって、前記照射が、該第2の表面における幅W
2より広い該第1の表面における幅W
1を有し、該ガラス基板の前記厚さを貫通して延びるチャネルを形成する、該ガラス基板のアブレーションを、前記照射経路に沿って生成するものである工程と、前記アセンブリから、該ガラス基板の不接合である中央部の少なくとも一部分を、取り外す工程とを備え、該照射中に、レーザ光により、担体プレートが分離されないことを特徴とする方法が開示される。複数の走査経路は、照射経路に平行であることが好ましい。また、レーザ光が、ガラス基板の第1の表面上にスポットを形成し、スポットの半値全幅の直径は、隣接する走査経路間の垂直な距離以上であることが好ましい。開示された本実施形態によれば、中央部の少なくとも一部分を取り外す間、ガラス基板のエッジ部は、担体プレートに接合されたままである。
【0010】
開示された実施形態のさらなる特徴および利点は、以下の詳細な記載で明らかにされ、また、部分的には、その記載から、当業者にとって容易に明らかであるか、または、添付された図面だけでなく、以下の詳細な記載および特許請求の範囲を含む、記載されたような実施形態を実施することにより、理解されるだろう。
【0011】
上記の概略的な記載および以下の詳細な記載は、どちらも、請求された実施形態の性質および特徴を理解する為の、概観および枠組みを提供しようとするものであると、理解されるべきである。添付された図面は、実施形態のさらなる理解の為に含められ、この明細書に繰り込まれて、その部分を構成するものである。図面は、その関連記載と共に、開示された実施形態の原理および動作を説明するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、添付された図面に例が示された本実施形態を、詳細に記載する。全ての図面において、同じ、または、類似した部分に言及するには、可能な限り同じ参照番号を用いる。
【0014】
従来からのレーザによるガラス切断処理では、ガラスから個々のガラス片を分離するのに、レーザスクライビングと、力学的または熱的に発生させられた応力による亀裂の伝播を通した分離とに、依存している。ほぼ全ての現在のレーザ切断技術は、以下の一つ以上の欠点を示している。(1)それらは、長い(ナノ秒のスケールの)レーザパルスに伴う大きな熱影響部(heat−affected zone;HAZ)により、担体プレート上の薄いガラスから、自由な形状を切断する能力に、限界がある。(2)それらは、衝撃波および制御されない材料除去により、レーザ照射領域の近くの表面に亀裂を生じさせることが多い、熱応力を発生させる。並びに/若しくは、(3)それらは、担体プレートを損傷させやすい。
【0015】
熱的な亀裂伝播によるレーザ切断処理は、担体プレート上の薄いガラスに適用できる。しかし、このアプローチは、別の欠点を含みうるものである。薄いガラス基板を、担体プレートから取り出す時に、隣接する縁部間に十分な隙間がないと、新たに形成されたガラス片の縁部間の接触により、欠け、または、微小亀裂という形で、薄いガラスが損傷される可能性がある。そのような欠けや微小亀裂は、ガラスの縁部の強度を低下させ、分離された基板の無欠さを損なう可能性がある。さらに、望ましくない方向に亀裂が生じる可能性があり、それにより、ガラス基板を破壊する可能性がある。
【0016】
薄いガラスのレーザアブレーションによる切断は、低い出力とパルスエネルギーにより、相対的に遅い処理速度を示すが、アブレーション領域の近くにおいて、亀裂の形成を、ほとんどまたは全く生じさせないものとすることと、切断を自由形状にできることと、レーザ光の焦点距離の調節により切断深さを制御可能とし、それにより下にある担体プレートの表面への損傷を避けることとを、結果として実現することもできる。フラットパネルディスプレイのような電子機器用のガラス基板等の、ある種のガラス基板においては、縁部の亀裂および残留縁部応力を避けることが望ましい。なぜなら、ガラスの最初の欠陥は、縁部で起きやすいので、中央に応力が掛かった時でも、一般的に、ガラスの縁部で損傷が始まるからである。ガラスに対して測定可能な熱影響のない、コールドアブレーション切断を採用することで、超高速パルス状レーザの高ピークパワーを、これらの問題を避けるために用いることができる。超高速パルス状レーザを用いたレーザ切断は、ガラス内に、残留応力を実質的に発生させず、結果として、縁部の強度を高めることになる。
【0017】
その熱領域において、励起した電子がガラス格子にエネルギーを再分配した後に、溶融およびアブレーションが発生し、電子と格子とは、レーザパルスの持続時間中、平衡状態のままでいる。材料が共通の温度に達するための時間スケールは、電子‐フォノン結合定数により決まる。電子から格子への熱拡散(電子‐フォノン緩和時間)は、1から10ピコ秒程度の典型的な値を有する材料特性である。レーザのフルエンスによっては、結果としての材料の温度が、表面で溶融が始まり、それが、ほぼ同じ時間スケール内で内側に移動する時の温度である、溶融温度を超える可能性がある。ピコ秒およびフェムト秒のパルスを用いてエネルギー密度が約1J/cm
2等の、もっと高いフルエンスの時は、材料の沸点を超えて、その気相が、過熱された液体中で、均一に、核を形成することになる。液体の冷却速度と比べて気泡形成の速度が速いと、表面から材料が爆発的に放出され、結果として、相爆発、つまり、アブレーションが起きる。ナノ秒時間スケールのパルス持続時間を有するパルス状のレーザを用いて、材料が局所的に沸点近くまで加熱される熱アブレーションによって、材料が除去される。
【0018】
しかし、ピコ秒時間スケールの超高速パルスが用いられると、そのパルスは、レーザ光からのエネルギーが、熱として、ほとんど材料に結びつかないような十分に短い持続時間のものである。その短周期パルスエネルギーは、電子を励起状態にするのに使われ、それは次に、材料の小さな部分を融除して、後には、典型的にはマイクロメートルより非常に小さい、非常に限られた熱影響部(HAZ)、つまり、浅い熱浸透深さを残す。損傷閾値より低くても、サブピコ秒の持続時間のパルスについては、格子が担体と平衡状態になる前に、材料は非熱的に不規則になる。例えば、電子とイオンとの混合物からなる材料中の準自由電荷担体であるプラズマの形成につながる、多光子電離およびアバランシェ電離のような、多光子過程等の非線形吸収を通して、レーザパルスからのエネルギーが、局所的な領域に蓄積され得る。したがって、レーザ光のプロファイルにわたり、材料の除去位置が非常に繊細に制御される結果となるように、材料が除去される。材料およびレーザのパラメータに依存する閾値より上のプラズマ形成速度が、増加するので、このパラメータの範囲内で、非常に強い光学破壊が発生する。非線形吸収による機械加工の間に、高い精密さを実現するには、空間的に局在し、再現可能な少量のエネルギーが、ガラス材料に導入される必要がある。このコールドアブレーションは、好ましくない熱伝達をほぼ完全に避け、したがって、超高速レーザを、特に、数マイクロおよびナノメートル領域までの加工精度を要求される高精細処理にとって、非常に有望な手段にする。
【0019】
本実施形態で示されると共に
図1の分解断面図に図示されているように、アセンブリ10は、担体プレート14上に位置決めされたガラス基板12を備えていることがわかる。ガラス基板12は、第1の表面16と、第1の表面16に全体的に平行な第2の表面18とを備えている。さらに、ガラス基板12は、エッジ部20と中央部22とを備えている。
図1に示された実施形態では、ガラス基板12は、矩形の形状で、中央部22の周囲の境界を形成するエッジ部20を、備えている。第1の表面16と第2の表面18とは、ガラス基板12の反対側ではあるが、エッジ部20と中央部22との両方にわたって広がっている。エッジ部20は、例えば、ガラス基板12の外縁部24から内側に向かって、約1mmから約20mmの範囲、約1mmから約10mmの範囲、または、約1mmから約5mmの範囲の「r」の距離で、広がっていてもよい。さらに、ガラス基板12は、第1の表面16と第2の表面18との間に垂直に延びる厚さδ
1を有する。ガラス基板12の厚さδ
1は、例えば、0.7mm以下、0.5mm以下、0.3mm以下、0.1mm以下、または、0.05mm以下であってもよい。実施形態によっては、アセンブリは、層23で示されているように、シリコン層、酸化インジウムスズ(ITO)層、または、発光ダイオード等の1つ以上の電子機器等の、ガラス基板の第1の表面に付与された追加の層を、備えていてもよい。
【0020】
さらに、
図1を参照すると、担体プレート14は、第1の表面26と、全体的に第1の表面26に平行な第2の表面28とを備えている。担体プレート14は、例えば、ガラス、セラミック、ガラスセラミック、または他の材料であって、反り若しくはサイズの重大な変化を受けることなく、少なくとも700℃までの温度に曝されることができる、堅く、サイズが安定したガラス基板12のための支持体を形成できる他の材料で、形成されてもよい。若しくは、担体プレート14は、ガラス基板12と同じ材料、または、別の材料から形成されてもよく、ガラス基板と担体プレートは、同じまたは類似の熱膨張係数を有する。さらに、担体プレート14は、第1の表面26と第2の表面28との間に、それらに垂直に延びる厚さδ
2を有する。担体プレート14の厚さは、ガラス基板が担体プレートに接合されている間、層23の形成等の、ガラス基板の後の処理が、ガラス基板を損傷せずに問題なく行われるように、適した剛性をガラス基板に提供するように選択されればよい。このように、担体プレートの厚さは、後の処理の性質およびアセンブリの取扱いにより決定されるが、例示する実施形態においては、例えば、0.7mmから1mmまでの間等の、約0.5mmから2mmの範囲であってよい。
【0021】
図2の上面図に最もよく示されているように、ガラス基板12のエッジ部20において、ガラス基板12は、担体プレート14に接合されており、それにより、アセンブリ10を形成している。つまり、ガラス基板12のエッジ部20において、第2の表面18は、担体プレート14の第1の表面26に接合され、中央部22においては、第2の表面18は、担体プレートに不接合である。例えば、
図2に示された実施形態では、ガラス基板12は、矩形の形状で、エッジ部20が、中央部22の周囲に広がる全体的に矩形の周辺領域を定義している。このようにして、不接合である中央部22が、接合されたエッジ部20に境界を接している。接合は、例えば、有機接着剤(例えば、ポリアミド)を用いて、または、無機材料(例えば、ガラスフリット)によって実現してもよい。担体プレートを再利用することが望ましい場合は、ガラス基板を、担体プレートに取り外し自在に接合するために、有機接着剤を用いることができる。例えば、実施形態によっては、レーザ光で、接着剤を照射することによって、担体プレートから、基板のうち接合された部分を、離すことができる。
【0022】
図3を参照すると、パルス状のレーザ光34を提供するように構成されたレーザ光源32と、レーザ光ステアリング装置36と、アセンブリ10を支持すると共にレーザ光34とガラス基板12との間の相対的な動きを発生させる支持装置38とを備えた分離装置30と併せて、アセンブリ10が示されている。
【0023】
レーザ光源32は、毎秒100,000(100k)パルス以上、毎秒200k以上、または、毎秒300k以上のパルス繰り返し率のパルス状のレーザ光を提供するように構成されている。パルス持続時間は、約10ピコ秒から約15ピコ秒の範囲であってもよい。レーザ光の光学エネルギーは、パルスレートに従って、40マイクロジュール(μJ)以上、45μJ以上、または、50μJ以上であってよい。レーザ光は、光の伝播方向に対し垂直な面において、ガウス状の強度分布を有していてもよい。適切なレーザ光源は、例えば、コヒレント社(登録商標)製造のSuper Rapidピコ秒レーザであってもよい。但し、ここに記載のアブレーションは、ガラスの非線形吸収特性に依存するので、レーザの動作波長は、ガラス基板の組成によって異なっていてもよく、動作波長におけるガラス基板のガラス内における高い度合の吸収と相関関係がなくてもよい。実施形態によっては、レーザの波長は、例えば、532nm等の、約355nmから約1064nmの範囲であってもよい。場合によっては、例えば355nm等の、より短い波長のレーザは、例えば1064nm等の、より長い波長のレーザよりも、切断されたガラス基板の縁部の強度を高めることができることが示された。
【0024】
レーザ光ステアリング装置36は、レーザ光源32から受光したレーザ光34を、ガラス基板12の第1の表面16に向けるように構成された第1のステアリングミラー40と、そのレーザ光をガラス基板12上に合焦させるのに用いることができるレンズ42とを備えている。レンズ42は、例えば、フラットフィールドレンズ(例えば、F−シータレンズ)であってよい。あるいは、レーザ光ステアリング装置36は、さらに、第2のステアリングミラー44を備えて、第1のステアリングミラー40は、レーザ光34を第2のステアリングミラーに向けるように構成され、第2のステアリングミラー44は、第1のステアリングミラー40から受光したレーザ光34を、ガラス基板12の第1の表面16に向けるように構成されてもよい。第1と第2のステアリングミラー40、44は、それぞれ、ガルバノメーター46,48により駆動され、ガラス基板12の第1の表面16上に入射するレーザ光34のラスタースキャン(「ラスターリング」)を生成するために、別々に、若しくは、併せて使用されてもよい。
図4を参照すると、ラスタースキャンにおいて、レーザ光は、走査経路に沿って左から右に水平に掃引して、OFFになり、次に、急速で左に戻り、そこで、ONに戻り、直前の走査ラインから移動された次の走査経路を掃引する。このようにして、レーザ光34のラスターリングは、結果として、鋸歯状のパターンを生成でき、ラスター走査経路50aは、ガラス基板の活発なアブレーションが起きる「ON」の期間中、レーザ光の経路を描き、例えば、1mmから10mmの間の長さL分、延びていてもよい。別段の記載がない限り、ここで用いるレーザ/レーザ光に関する「ON」および「OFF」という用語は、パルス間隔とは区別されるものであり、アブレーションの文脈において、最もよく理解されるものであり、「ON」が、ガラス基板から材料を融除するパルスレーザ光を意味し、「OFF」が、アブレーションが起きない期間を意味する。レーザ光ステアリング装置36は、レーザ光を、隣接した平行な複数の走査経路50aを通って掃引するために、第1と第2のステアリングミラー40、44を、それぞれのガルバノメーターを通して制御する。一方、ラスター走査経路50bは、「ON」の状態ならばレーザ光が照射されるはずである、「OFF」の経路を描いており、レーザ光ステアリング装置は、レーザ光を、一つの「ON」のラスター走査経路50aの終了位置から、隣接する「ON」のラスター走査経路50aの開始位置へ戻すように構成されている。但し、実施形態によっては、ラスターパターンを構成する走査経路50a、50bの両方にわたって、活発なアブレーションが起きるように、レーザは、ラスター走査経路50b中にわたっても、「ON」の状態であってもよい。
図4からわかるように、複数の走査経路50aが、幅Wにわたって広がっている。幅Wは、約0.05mmから約0.2mmの範囲であってもよいが、アブレーション領域、つまり、切断の望ましい幅によっては、もっと広いか、または、もっと狭くてもよい。以下では、長さLと幅Wで示される矩形のボックスを、ラスターエンベロープ52と称することとする。
図4に示されるように、長さLは照射経路66の方向にあり、幅Wは長さLの方向と直交する方向にある。尚、望ましい量の材料の除去を行うために、必要に応じて、他のラスターエンベロープの長さおよび幅が選択されてもよいと、留意すべきである。さらに、鋸歯状のラスターパターンの前述された記載は、他のラスターリングパターンを用いてもよいものであるから、限定を課すものと考えられるべきではない。例えば、ラスターパターンは、方形波状であってもよい。適切な走査速度は、例えば、約40cm/秒から約80cm/秒の範囲で、例えば、60cm/秒であってもよい。
【0025】
支持装置38は、アセンブリ10を支持し、任意の1方向、または、直交する2方向、若しくは、3方向に、アセンブリ10を移動するように構成されている。支持装置38は、真空ライン58を通して真空ポンプ56と流体連通している、真空プラテン54を備え、例えば、x−y平行移動ステージ60を備えていてもよい。さらに、支持装置38は、たとえば異なった厚さのアセンブリ10(例えば、様々な厚さδ
1)を収容し、レーザ光のガラス基板上への合焦を容易にするように、z方向に平行移動するように構成されていてもよい。さらに、分離装置30は、第2の真空ポンプ64と流体連通している真空ノズル62を備え、レーザ光34によって、ガラス基板12から融除されたガラス材料は、そのノズルによって捕捉されて、ガラス基板12の領域から除去されてもよい。支持装置38は、約5mm/秒から約7mm/秒の範囲で、照射経路66に沿った、ラスターエンベロープ52とガラス基板12との間の相対的動作を提供するように構成されるのが好ましい。
【0026】
図3と
図4を参照すると、レーザ光照射経路66に沿ってガラス基板12の第1の表面16に衝突するように、レーザ光ステアリング装置36によって変えられるレーザ光34を、レーザ光源32が生成する。平行移動するアセンブリ10は、ラスターエンベロープ52が照射経路66に沿って移動するように、アセンブリ10とレーザ光34間の相対的な動作を生成する。ラスターエンベロープ52が、照射経路66に沿って移動される間に、材料が、ガラス基板12から融除され、
図5A及び5Bに示されるように、ガラス基板に、チャネル68が生成される。
【0027】
図5Aおよび5Bは、レーザ光34による照射後の、ガラス基板12の側面断面図を示しており、レーザ光34によるガラス基板12の照射が、アブレーションによって、ガラス基板12の深さδ
1を貫通して延びるチャネル68を生成する。深さδ
1は、例えば、0.5mm以下、0.3mm以下、0.1mm以下、または、0.05mm以下であってもよい。図の特徴が不明瞭にならないように、ガラス基板12が分離されて示されている。
図5Aおよび5Bから容易に明らかなように、ガラス基板12の第1の表面16におけるチャネル68の第1の幅W
1は、第2の表面18における幅W
2より広い。このようにして、チャネル68の側壁は、ガラス基板12の表面への法線69に対し、角度αになるように位置決めされる。これは、チャネル68を近くから見た図を示す
図5Bから、より明瞭に、わかるだろう。角度αは、例えば、約10度から約14度の範囲であってもよい。幅W
2は、8μmから12μmの間であることが好ましい。新たに形成された融除された縁部間の接触の可能性を減らすのに効果がある、望ましい幅W
2が分かれば、幅W
1を容易に算出することができる。例えば、幅W
2の値を10μmに選択し、面法線69(第1の表面16に対する法線)に対する角度αの名目値が12度である時には、結果として、幅W
1=2*δ
1Tan(α)+W
2=52.2μmが得られる。例えば、適切なラスターエンベロープ幅Wを選択することよって、並びに/若しくは、ガラス基板12上のレーザ光34のスポットサイズを変更することによって、チャネル68の全体の幅(つまり、幅W
1およびW
2)を変更することができる。
【0028】
ここでは、レーザ光34によって照射されるガラス基板12上のスポットの半値全幅(FWHM)の直径と定義される、レーザ光のスポットサイズは、好ましくは、チャネル68の幅より小さいとよいが、照射するレーザスポットの連続するパスが部分的に重なるように、レーザが「ON」状態の間、ラスターエンベロープ内のレーザ光の隣接した平行な走査経路50a間の距離より大きいとよい。
【0029】
ここで、
図2と3を参照すると、ガラス基板12は、ガラス基板のエッジ部20に沿ってのみ、担体プレート14に接合されており、中央部22は、担体プレート14に不接合のままである。真空ポンプ56は、アセンブリ10を真空プラテン54に連結するために、真空プラテン54内を真空引きするのに用いられる。第1のステアリングミラー40、および、存在する場合には、第2のステアリングミラー44は、レーザ光34を、ガラス基板12の第1の表面16上で、ラスターエンベロープ52を形成する所定のラスターパターン(例えば、ラスター走査経路50aおよび50b)に操るのに、用いることができる。レーザ光照射経路66は、外縁部24に対して、接合されたエッジ部20より内側であることが好ましく、ガラス基板12のうち不接合である部分内にチャネル68が完全に入るように、接合されたエッジ部20より十分に内側であることが好ましい。ステージ60は、ラスターエンベロープ52がレーザ光照射経路66を横切るように、レーザ光34のラスターエンベロープ52とガラス基板12との間で相対的な動作を生成するのに用いることができる。レーザ光34が、第1の表面16に衝突し、レーザ光照射経路66に沿って第1の表面16を照射すると、短持続時間のパルスが、レーザ光照射経路66に沿って、ガラス基板を融除し、チャネル68を生成し、第1の表面16におけるチャネル68の第1の幅W
1は、第2の表面18におけるチャネル68の第2の幅W
2より、広くなる。チャネル68は、例えば、レーザ光照射経路66が、経路の始点が経路の終点と交わる閉じた経路である限りは、閉じたチャネルであってもよい。このようにして、チャネル68を、中央部22の少なくとも一部分70をエッジ部20から完全に分離する、閉じたチャネルとすることができる。チャネル68が一旦形成されると、中央部22のうち、エッジ部20から分離された部分70は、その分離された部分をアセンブリから持ち上げることで、取り外すことができる。被分離部分70は、被分離部分70に係合して保持する1つ以上の吸引装置74(例えば、吸引カップ)を備えた、持ち上げ装置72によって、持ち上げられてもよい。チャネル68の角度のついた側壁は、取り外し処理中、被分離部分70と、まだ担体プレート14についたままであるガラス基板12の残りの部分との間での、接触リスクを軽減する。
【0030】
矩形の照射経路の場合について示したが、ここまでの記載から、照射経路は、円形、オーバル、楕円、または自由形状であってさえよい、その他の形状であってもよいことは明らかだろう。
【0031】
当業者にとっては、開示された本実施形態を、その趣旨から逸脱することなく、様々に修正および変更可能なことが明らかだろう。したがって、本開示は、これらの実施形態の修正および変更も、添付された請求項およびその均等物の範囲内である限りは含まれることを意図したものである。