(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6609314
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】医療診断用X線検出器
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20191111BHJP
G21K 4/00 20060101ALI20191111BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
A61B6/00 300S
G21K4/00 Z
G01T7/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-523350(P2017-523350)
(86)(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公表番号】特表2018-501828(P2018-501828A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】CN2014090487
(87)【国際公開番号】WO2016070385
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2017年10月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100115462
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】リ,フイ
(72)【発明者】
【氏名】コンクル,ニコラス・アール
(72)【発明者】
【氏名】チェン,タオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ガオリン
【審査官】
遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−108974(JP,A)
【文献】
特開2006−025829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 −6/14
G01T 1/00−1/16,1/167−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を検出するために使用される感光性要素(14)と、
該感光性要素(14)を支持するために使用される支持基板(11)と、
前記感光性要素(14)と前記支持基板(11)との間に設けられ、前記X線が前記支持基板(11)を透過するのを阻止するために使用されるX線阻止要素(12)と、
前記感光性要素(14)と前記支持基板(11)との間に設けられ、前記感光性要素(14)と密着する導電性ライナ(13)と、
前記感光性要素(14)と前記支持基板(11)との間に設けられた黒色エチレンフィルム(15)と、を含み、
前記導電性ライナ(13)は、前記黒色エチレンフィルム(15)の少なくとも3辺にストライプ状に設けられる、医療診断用検出器(10)。
【請求項2】
前記感光性要素(14)は、感光性ガラスパネルである、請求項1に記載の医療診断用検出器(10)。
【請求項3】
前記導電性ライナ(13)は、前記感光性要素(14)と前記X線阻止要素(12)との間に設けられる、請求項1に記載の医療診断用検出器(10)。
【請求項4】
前記導電性ライナ(13)は、前記感光性要素(14)及び前記X線阻止要素(12)と一体である、請求項3に記載の医療診断用検出器(10)。
【請求項5】
前記導電性ライナ(13)は可撓性ライナである、請求項1に記載の医療診断用検出器(10)。
【請求項6】
前記導電性ライナ(13)は、前記黒色エチレンフィルム(15)の4辺にストライプ状に設けられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療診断用検出器(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検出器に関し、特に医療診断用X線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
画像診断検査システムとして、X線診断システムは、医師が診断を容易に行うことを可能にするために、身体を検査し画像データを形成するために広く使用されている。X線診断システムにおける非常に重要なユニットとして、X線検出器は、システムによって診断された画像の品質に直接影響を及ぼす。
【0003】
通常、X線診断では、X線検出器は、その内部に設けられた感光性要素(たとえば、ガラスパネル)によって診断対象物を透過するX線を検出し、感光性要素により検出したX線信号上のデータをデータ収集モジュールによって収集し、その後に、収集したデータを制御基板に送信して、後で収集したデータについて順次撮像処理を行う。
【0004】
いくつかの既存のX線検出器では、支持基板(またはバックボードまたはコールドボードと呼ばれる)、支持基板上に設けられたX線ストッパ、アルミニウム基板、アルミニウム基板上に設けられた黒色エチレンフィルム、および感光性要素が設けられている。感光性要素は、アルミニウム基板上に設けられ、アルミニウム基板と密着することにより、アルミニウム基板によって感光性要素から静電気を除去する。
【0005】
しかし、既存の設計では、アルミニウム基板に密着させるためにパネルが必要なので、アルミニウム基板の加工精度に対する要求が非常に高く、加工難易度と製造コストが高くなる。さらに、このような構造は、外部振動または衝撃がガラスパネルの変形および破砕をもたらすという問題を十分に解決することができない。
【0006】
上記の問題を解決するためのいくつかの他の試みが既にある。たとえば、アルミニウム基板を設ける代わりに、ガラスパネルの背面に導電性材料を噴霧して、感光性要素から静電気を除去する。しかしながら、噴霧された材料は環境を汚染し、噴霧プロセスのための良好な制御が必要であり、これは検出器の製造の複雑さを増大させ、その結果、製造上の悪影響をもたらす。
【0007】
したがって、検出器が比較的高く安定した性能を有しつつ、製造の困難さおよびコストを低減することを十分に確実にすることができる、診断用の新しいX線画像検出器を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許第203647367号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明の一実施形態は、医療診断用検出器を提供する。診断用検出器は、感光性要素、X線阻止要素、支持基板、および導電性ライナを含む。感光性要素は、X線を検出するために使用される。X線阻止要素は、感光性要素を透過するX線を阻止するために使用される。支持基板は、X線阻止要素の下方に設けられ、感光性要素を支持するために使用される。導電性ライナは、感光性要素と支持基板との間に設けられ、感光性要素と密着する。
【0010】
本発明は、以下の添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態の説明を考慮して、より良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による検出器の一実施形態の分解概略図である。
【
図2】本発明による検出器の一実施形態の組立概略図である。
【
図3】本発明による検出器の導電性ライナの異なる実施形態の設置概略図である。
【
図4】本発明による検出器の導電性ライナの異なる実施形態の設置概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。実施形態の詳細な説明において、単純かつ簡潔にするために、明細書が実際の実施形態のすべての特徴を詳細に説明することは不可能であることを指摘しておく。いかなる実施形態の実際の実施のプロセスであっても、エンジニアリングプロジェクトまたは設計プロジェクトのプロセスと同様に、開発者の具体的な目標を達成するために、かつ、いくつかのシステム関連またはビジネス関連の制約を満たすために、通常、様々な決定が行われ、それはまた実施形態ごとに変更されることを理解されたい。さらに、このような開発プロセスで成される努力は複雑で時間がかかる場合があるが、本開示で開示された技術内容に基づく設計、製造、および生産などのいくつかの変形は、本発明で開示される内容に関する当業者にとっては単に慣習的な技術装置であり、本発明の開示内容が不十分であるとみなすべきではないこともまた理解できる。
【0013】
特に明記しない限り、特許請求の範囲および明細書で使用されるすべての技術用語または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有するべきである。本願の明細書および特許請求の範囲における「第1」、「第2」などの用語は、順番、数または重要性を意味するものではなく、異なる構成要素を区別するためにのみ使用される。単数を表す用語(「a」、「an」など)は、数量の限定を示すものではなく、少なくとも1つの存在を示すものである。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」などの用語は、「含む」の前の要素または対象物が、「含む」の後に示される要素または対象物ならびにそれらの等価物を包含するが、他の要素または対象物を排除するものではないことを意味している。「結合された」、「接続された」などの用語は、物理的または機械的に接続されることに限定されるものではなく、また直接的または間接的に接続されることに限定されるものでもない。
【0014】
図1は、本発明による医療診断用検出器10の一実施形態の分解概略図を示す。
図2は、本発明による検出器10の一実施形態の組立概略図を示す。この実施形態では、検出器10の構造は単なる例示であり、様々な用途において、検出器10は、検出器の検出機能を実現するための他の構造または要素(図示せず)も含むことができる。
【0015】
図1、
図2に示すように、検出器10は、支持基板11と、X線ストッパ12と、導電性ライナ13と、感光性要素14と、を備えている。支持基板11は、検出器10の下方に設けられ、検出器10の他の要素または構造を支持する。非限定的な例では、支持基板11は金属材料で作られ、バックボードと呼ばれたり、コールドボードとして使用されたりする。
【0016】
X線ストッパ12は、支持基板11の上面(図示せず)に設けられ、すなわち、支持基板11はX線ストッパ12の下方に設けられている。非限定的な例では、X線ストッパ12は、通常、鉛材料またはタングステン材料を含む。検出器10による検出が行われる間には、X線ストッパ12は、X線が感光性要素14を透過するのを阻止するために使用され、X線がバックボード11をさらに透過して外部環境に侵入し、悪影響を引き起こすことを回避することができる。
【0017】
X線ストッパ12には、導電性ライナ13が設けられている。感光性要素14は、診断対象物を透過するX線を検出するために使用することができて、導電性ライナ13上に設けられており、導電性ライナ13は、感光性要素14とX線ストッパ12またはバックボード11との間に位置している。本発明の一実施形態では、導電性ライナ13は可撓性ライナであり、感光性要素14はガラスパネルを含むことができる。このように、ガラスパネル14は、導電性ライナ13上により容易に設けられて、導電性ライナ13と密着することができ、導電性ライナ13は、静電気を接地または除去する役割を果たすことができる。一方、導電性ライナ13はある程度弾性を有するので、外部振動または衝撃を緩衝して、ガラスパネルの損傷を防止することができる。いくつかの例では、導電性ライナ13は、任意の適切なライナであってもよく、本発明の実施形態で使用されてもよい。
【0018】
本実施形態では、導電性ライナ13はX線ストッパ12上に設けられている。非限定的な例として、導電性ライナ13を、X線ストッパ12と支持基板11との間に位置するように、支持基板11上に設けてもよい。
【0019】
特定の用途では、
図1に示すように、導電性ライナ13は、ガラスパネル14と支持基板11との間に設けられた一体構造である。本発明の実施形態は、ガラスパネル14を透過するX線の一部を吸収するための黒色エチレンフィルム15を選択的に備えることができる。非限定的な例では、本発明の実施形態は、黒色エチレンフィルム15を備えなくてもよく、たとえば、ガラスパネルの安全性を確保するだけでなくコストも節約するように、導電性ライナ13を黒色にすることができる。
【0020】
他の例では、導電性ライナ13をストライプ状に配置してもよい。一例では、
図3に示すように、X線ストッパ12上に黒色エチレンフィルムを設け、導電性ライナ13をエチレンフィルムの3辺にストライプ状に設けて、この構造上にガラスパネルが設けられる。別の例では、
図4に示すように、異なる要求に従って、導電性ライナ13をエチレンフィルムの4辺にストライプ状に設けてもよい。
【0021】
本発明の実施形態では、検出器10は、ガラスパネル14と支持基板11との間に位置する柔軟性を有する導電性ライナ13を備える。アルミニウム基板を用いた従来の構造と比較して、本発明の構造ではアルミニウム基板を使用する必要がなく、加工難易度を低くし、コストを節約することができる。一方、導電性ライナ13を使用しているので、黒色エチレンフィルムを省略して、特定用途ではさらにコストを節約することができる。さらに、ガラスパネル14と支持基板11との間に設けられた導電性ライナ13は、ある程度の可撓性を有するので、外部からの振動または衝撃を緩衝して除去することができ、ガラスパネル14の損傷をより良く防ぐことができる。また、導電性ライナ13を用いているので、検出器10の構造が簡単になり、したがって製造が容易になる。
【0022】
本発明について特定の実施形態と関連して説明したが、当業者であれば、本発明に対して様々な変更および変形が可能であることを理解することができる。したがって、特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨および範囲内で、これらのすべての変更および変形を包含することが意図されていることを認識されたい。
【符号の説明】
【0023】
10 医療診断用検出器
11 支持基板/バックボード
12 X線ストッパ
13 導電性ライナ
14 感光性要素/ガラスパネル
15 黒色エチレンフィルム