(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
医用デバイスの画像データを取得するステップであって、前記医用デバイスは、前記医用デバイス上の基準フレームとして配置された複数の基準マーカーを備え、前記基準フレームは、
(a)基準マーカーの少なくとも2つのクラスタであって、各クラスタが、異なる個数、サイズ、形状、構成、または材料特性の基準マーカーを備える、基準マーカーの少なくとも2つのクラスタ、
(b)リング形状に配置された少なくとも3つの基準マーカーであって、配置が非対称である少なくとも3つの基準マーカー、または
(c)(a)および(b)の組合せ
を備える、ステップと、
前記画像データ内で基準マーカーオブジェクトを検出するステップであって、
前記基準マーカーオブジェクトを強調するために前記画像データに特徴強調を適用し、
前記基準マーカーオブジェクトを抽出するために特徴抽出を適用し、
基準マーカーの前記少なくとも2つのクラスタを備える前記医用デバイスの画像データに関して、前記基準マーカーオブジェクトのクラスタを規定するためにクラスタリングアルゴリズムを適用し、
前記抽出された各基準マーカーオブジェクトまたは基準マーカーオブジェクトの各クラスタに関して代表点を規定する
ことにより検出するステップと、
前記基準フレームのモデルに前記基準マーカーオブジェクトを位置合わせするステップであって、
(a)基準マーカーの前記少なくとも2つのクラスタを備える前記医用デバイスの画像データに関して、前記基準フレームの前記モデルと各クラスタの前記代表点のポイントツーポイントマッチングを行うこと、または
(b)前記リング形状に配置された前記少なくとも3つの基準マーカーの画像データに関して、前記基準マーカーオブジェクトの前記代表点が前記基準フレームの前記モデルにマッチングするまで前記リング形状を回転させること
を含む、ステップと
を含む、自動レジストレーションの方法。
前記基準フレームの前記モデルと前記クラスタ代表点のポイントツーポイントマッチングを行った後に、各基準マーカーオブジェクトのポイントツーポイントマッチングを行うステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
前記基準マーカーの少なくとも2つのクラスタは、クラスタごとに1〜6個の基準マーカーを備え、各クラスタは、異なる個数の基準マーカーを有する、請求項1に記載の方法。
クラスタごとに2〜6個の基準マーカーを備える基準マーカーの2〜10個のクラスタを有し、各クラスタ内の基準マーカーの空間配置が明瞭である、請求項1に記載の方法。
クラスタごとに1〜6個の基準マーカーを備える基準マーカーの少なくとも3つのクラスタを備え、各クラスタは、異なるサイズを有する少なくとも1つの基準マーカーを備える、請求項1に記載の方法。
前記基準フレームは、基準マーカーの少なくとも2つのクラスタを備え、各クラスタは、異なる個数、サイズ、形状、構成、または材料特性の基準マーカーを備える、請求項1に記載の方法。
前記医用デバイスは、身体表面上に配置されるように構成されたベースと、前記医用デバイスを介した前記身体表面への視覚的および物理的なアクセスを与えるための開口であって、リング形状に配置された前記基準マーカーが前記開口を囲む、開口とをさらに備える、請求項17に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面全体を通じて、同一の参照数字および参照文字は、別様のことが特に述べられない限りは、図示する実施形態の同様の特徴、要素、構成要素、または部分を示すために用いられる。さらに、以下において、対象となる開示は、図面を参照として詳細に説明されるが、これは、説明のための例示の実施形態との関連で説明される。添付の特許請求の範囲により定義されるような対象となる開示の真の範囲および主旨から逸脱することなく、説明される例示の実施形態に対して変形および修正を行い得ることが意図される。
【0018】
これらの実施形態は、画像ベース自動デバイスレジストレーションを利用して患者の移動によるデバイスの変位を適応補償することが可能なソフトウェアシステムを含む、基準マーカー、システム、および方法を提供するという目的に基づくものである。本システムは、患者取付け式であり例えば患者内への進入のために針を送るまたは位置決めすることが可能な医用デバイスと、断層撮影デバイスと、ナビゲーションソフトウェアとを備える。ナビゲーションソフトウェアは、この撮影デバイスから画像を受信し、臨床医が例えば画像上で針挿入経路を決定するのを助けることが可能であり、この経路を針ガイドデバイスに送信する。
【0019】
I.撮像デバイスおよび医用デバイス
本明細書において説明されるような基準マーカー、システム、および方法は、任意の断層撮影との組合せにおいて使用される任意の医用デバイスと共に利用され得る。断層撮影は、例えばMRI、CT、または超音波などであることが可能である。医用デバイスは、例えば針配置デバイスなどの患者取付け式デバイスであってもよい。
【0020】
本発明と組み合わせて使用され得る医用デバイスの一例が、米国特許出願公開第2014/0275979号に記載されており、この出願公開は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。この参考文献は、ダブルリング機構を有するMRIと同等の身体取付け式針ガイドデバイスを提供する。
【0021】
本明細書で説明されるような基準マーカー、システム、および方法を利用し得る他の医用デバイスとしては、診断または手術の支援において針を配置するまたはツールを配置することを目的とした他の自立式医用デバイスまたは患者取付け式医用デバイスが含まれる。例えば、格子穴から構成される針ガイドテンプレートが、画像誘導前立腺バイオプシおよび近接照射療法で病巣内に針を送るためにしばしば使用される。
【0022】
また、本明細書で説明されるような基準マーカー、システム、および方法は、医療産業以外でも利用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、映画用にリアルなコンピュータグラフィックモデルを生成する際などにモーションキャプチャデバイスで使用される三次元トラックセンサなどがある。
【0023】
本明細書で説明されるようなシステムおよび方法の一実施形態が、
図1で説明される。初めに、102で医用デバイスが入手される。また、医用デバイスの入手には、例えば手術部位を覆って患者上に配置または固定することなどを含み得る。次に、104でデバイスおよび患者の医用画像データが取得される。この画像日付は、例えばMRIデータまたはCTデータなどである。次いで、医用画像データから基準マーカーオブジェクトが検出される106。これを行うためには、初めに、108で微分ベース演算などの特徴強調が、108においてデータに適用される。次に、110で特徴抽出が適用される。基準物がクラスタとして構成されると、112でクラスタリングアルゴリズムが提供される。このステップ(破線により示されるような)は、基準物がリング形状に配置される実施形態では利用されない。次いで、114で代表点が規定される。次のステップは、120で基準マーカーオブジェクトの位置合わせを含む。基準物がリング形状に配置される実施形態の場合には、116でこのリングが回転または反転される。これは、全回転または部分回転または180°反転であってもよい。次いで、118でポイントツーポイントマッチングが適用される。122で、ポイントツーポイントマッチング中のデータから、画像上のターゲットが規定される。124で、ターゲット座標は、このレジストレーションに基づきデバイスに対して計算される。次いで、デバイスはターゲットに針を導くように調節される。
【0024】
II.ロボット制御ソフトウェア
いくつかの実施形態では、ナビゲーションソフトウェア200、論理制御層206、および物理制御インターフェース208を備える3層のコンポーネントを有するソフトウェアシステムが用意される(
図2)。これらのコンポーネントは、独立したソフトウェアプロセスとして実装され、例えばイーサネットおよびユニバーサルシリアルバス(USB)などを介して相互に通信する。しかし、他の実施形態では、さらに2つのこれらのコンポーネントが単一のソフトウェアプロセスに組み込まれる。
【0025】
これらの3つのコンポーネントの詳細は以下の通りである。
【0026】
ナビゲーションソフトウェア
ナビゲーションソフトウェア200は、システム内の最上層コンポーネントであり、
図2に例示される。ナビゲーションソフトウェア200は、例えば医師および/またはオペレータ用の主要ユーザインターフェースなどとして機能する。本明細書で説明されるように、このナビゲーションソフトウェア200は、オープンソースの医用画像演算処理ソフトウェアである3Dスライサ(Gering 2001、Andriy 2012)用のプラグインモジュールとして実装され、このまたは他のソフトウェアを介してコンソール212およびMRIハードウェア214を共に備えるMRIシステム204から画像を受信する。ナビゲーションソフトウェア200は、医師による以下のタスクの実施を支援する。
【0027】
針配置プランニング。医師は、プランニング画像上でターゲットおよび皮膚進入点を指定することにより針配置軌道を規定することが可能である。このソフトウェアは、任意の面に沿ったプランニング画像の断面を表示し、医師がマウスでクリックすることによりそれらの点を指定するのを可能にする。軌道が規定されると、この軌道に沿った面で3D画像がリスライスされ、それにより医師は、この経路の周囲において有意な構造物または障害物を見つけることが可能となる(
図3a〜
図3d)。この規定された軌道は、ロボット制御サーバに転送される。しかし、アクチュエータを移動させるための最終決定は、好ましくはガントリのそばに立っている医師によりなされ、アクチュエータは、医師がフットスイッチを押した場合にのみ作動され得る。
【0028】
デバイス−画像間レジストレーション。このソフトウェアは、画像座標系にデバイスを位置合わせするために較正画像内においてデバイスに埋設されたマーカーを自動検出することが可能である。基準マーカーを検出および位置合わせする本発明の一実施形態のアルゴリズムの詳細は、以下の章において説明される。デバイスが位置合わせされると、ソフトウェアは、画像上にデバイスのモデルおよびそのアクセス可能範囲を重畳し、それによりオペレータは、全てのターゲットが範囲内にあることを確認することが可能となる(
図3a〜
図3d)。線形変換行列は、例えばOpenIGTLink protocol(Tokuda 2009)などを利用してネットワークを介してロボット制御サーバに転送される。
【0029】
プローブ配置のモニタリングおよび確認。このソフトウェアは、手技中にいつでも3Dモデルが画像に重畳された状態でデバイスの現位置および現配向を視覚化するために使用され得る(
図3b)。さらに、このソフトウェアは、プランニングされた軌道およびターゲットと共に患者に挿入されたプローブを示す確認画像を表示することも可能である(
図3c)。それらの特徴により、医師は、デバイスをモニタリングしプローブ配置を確認することが可能となる。
【0030】
論理制御層
論理制御層(LCL)206は、システムの中間層に位置し、ナビゲーションソフトウェア200および低レベル物理制御層(PCL)208に接続する。この層202は、デバイスのハードウェアおよび運動学的構造をカプセル化し、デバイス非依存アプリケーションプログラムインターフェース(API)を上位層に提供することが可能である。したがって、LCL206は、以下のサブコンポーネントから構成される。
【0031】
上位層へのTCP/IPネットワークインターフェース。このインターフェースを介して、LCLは、ターゲット位置を含む上方層からハードウェアへの命令を受信し、針ガイドの現位置を含む上位層へのハードウェアの現状態とデバイスの状態とを供給する。また、LCLは、上位層に運動学演算(以下の運動学エンジンを参照)の結果として必要とされる針挿入深さを供給する。このインターフェースの独自の特徴は、LCLが、上位層に基準フレームの構成を供給する点であり、基準ベースのデバイス−画像間レジストレーションは、上位層がハードウェアから独立した状態に維持されつつ実施される。この実施形態のネットワークインターフェースは、OpenIGTLink protocol(Tokuda 2009)に適合性を有し、したがってOpenIGTLinkに適合可能な事実上全てのソフトウェアと通信し得る。
【0032】
運動学エンジン。次いで、上位層から受信したハードウェア非依存命令は、針ガイドデバイスの運動学に基づき個々のアクチュエータのターゲット位置へと平行移動され、PCLに送信され得る。他方で、PCIから受信したこの実施形態における個々のアクチュエータの現位置は、針ガイドの位置および配向に平行移動され、上位層に送信される。
【0033】
下位層へのシリアルインターフェース。LCLは、ユニバーサルシリアルバス(USB)を介して下位層サブコンポーネントと通信する。この例示のインターフェースを介して、個々のアクチュエータのターゲット位置および他のデバイス固有命令が、PCL208に送信される一方で、デバイスの現状態および個々のアクチュエータのエンコーダ読取値が、LCDに送信される。このインターフェースを介して交換される情報は、運動学構造に依存するが、物理ハードウェア(例えばモータドライバおよびエンコーダ)には依存しない。
【0034】
物理制御層
物理制御層(PCL)208の役割は、物理入出力(I/O)からは独立しているが運動学構造には依存するインターフェースを提供することである。いくつかの実施形態では、PCIは、デバイス制御サーバとの通信のためのUSBインターフェースと、エンコーダおよびフットスイッチから入力を読み取りモータドライバに個々のモータの目標速度を与えるためのデジタル入出力インターフェースとを備えたLinuxベース組み込み型コンピュータ上で動作する。コントローラが個々のアクチュエータのターゲット位置を受信すると、コントローラは、個々のモータの閉ループPID制御を実施して指定位置に2つのリングを位置決めする。任意には、このプロセス中にわたり、PCLは、リングの現位置および他のデバイス状態の送信をし続けることが可能である。
【0035】
III.基準フレーム
基準フレームは、複数の基準マーカーを含む。マーカーは、全てが球状マーカーであるなど、いずれも同一の形状およびサイズであってもよく、または基準フレームは、様々なサイズおよび/または形状を有する基準マーカーを含んでもよい。基準フレーム内における基準マーカーの配置は、リング形状であるか、または2つ以上のクラスタ状であるかのいずれかである。リング形状に配置される場合には、基準マーカーは、非対称的に構成される。クラスタ状に構成される場合には、クラスタはそれぞれ、異なる個数、サイズ、形状、構成、または材料特性の基準マーカーを有する。クラスタが、方向性を有する場合には、クラスタの方向性によりクラスタが6自由度(6DOF)内で固定され得るように、少なくとも1つのクラスタが存在しなければならない。クラスタが6DOF未満のみで固定され得る方向性を有するクラスタの場合には、少なくとも2つのクラスタが存在しなければならない。クラスタが方向性を有さない場合には、少なくとも3つのクラスタが存在しなければならない。いくつかの実施形態では、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10個のクラスタが存在する。医用デバイスが4つの隅部を有するいくつかの実施形態では、デバイスの隅部にほぼ位置決めされた4つのクラスタが存在する。
【0036】
いくつかの実施形態では、クラスタ内の全ての基準マーカーが、同一平面内に位置する。これらのクラスタは、異なるクラスタ内の基準マーカーと同一個数を有する必要はない。クラスタごとに1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、またはそれ以上の基準マーカーが存在してもよい。クラスタごとの基準マーカーの最大個数およびさらにはクラスタの最大個数は、医用デバイスのサイズに対する基準マーカーおよびクラスタの相対サイズによって限定される(例えばマッチ箱サイズのオブジェクトは多数のビー玉サイズのクラスタを現実的には有さない、なぜならばこれによりオブジェクトが過度に不恰好になるからである)。クラスタの個数は、医用デバイスにとって必要とされる所望のレジストレーション精度に基づき選択されることが可能であり、クラスタ個数がより多い程より高い精度が得られる。いくつかの実施形態では、特に種々の形状の基準マーカーが使用される実施形態では、複数の球状基準マーカーが使用される。
【0037】
いくつかの実施形態では、医用デバイスまたは医用デバイスの一部が、構成可能クラスタを可能にするように製造される。例えば、医用デバイスが、デバイスのリングの周囲または各エッジにて均等またはランダムに離間された複数のディボットまたは穴を有してもよい。次いで、デバイスのレジストレーションが必要とされる場合に、基準マーカーが、これらのディボットまたは穴のいずれかの中に配置される(穴の場合には、基準マーカーは穴に嵌入するピン形状突出部を有し得る。医用デバイスに対して基準マーカーを取外し可能に固定する他のフォーマットもまた予期される)。基準マーカーの個数および生成されるクラスタの個数は、特定の用途に必要とされる所要のレジストレーション品質に基づき規定され得る。
図4aは、リング形状を有する基準フレームと非対称構成の基準マーカーとの例示の実装形態であり、医用デバイスのリング形状部分により構成可能クラスタもまた可能となる。このフレームは、円形テンプレートに装着された10個の同一の円筒形状液体容器から構成され、テンプレートは、110mmの直径を有する円に沿って6度ごとの位置に60個の穴を有して、異なるマーカー構成を可能にする。各液体容器は、3Dプリントにより製造され、10mmの直径を有する球状空洞を有し、ガドリニウム−ジエチレントリアミン五酢酸(Gd−DTPA)溶液で充填される。この溶液がT
1−強調MR画像上で明るい球状オブジェクトとして現れることにより、充填された容器はマーカーとして機能する。
図4bは、円に対して平行な面に沿ったフレームと、本明細書において説明されるマーカー検出アルゴリズムにより検出されたマーカーの中心点とのMR画像である。
図4cは、針ガイドデバイス、球状マーカー、および検出された中心点のモデルの3D表現である。
【0038】
球状基準マーカー
本明細書で説明される本発明の一実施形態は、球状基準マーカーの使用を含む。本実施形態のためのアルゴリズムは、特定の直径d
Mを有する各基準マーカーの球形状と、基準マーカーの円形構成(例えばリング形状)とに依存する。これは、
図5aおよび
図5bに例示される。球形状画像日付は、画像処理により容易に検出され得る。また、球状マーカーは、容易に製造され得る。例示の球状基準マーカーは、Gd−DTPA溶液で充填された3Dプリントされた球状液体容器である。
【0039】
球状マーカーは、所定の直径D
Fを有する2D円内に配列されるが、この構成が非対称になるように不規則に離間され、すなわち基準フレームは、中心の周囲で回転および/または円を反転させた後には同様に見えることはない。基準座標枠の原点が円の中心に規定され、そのz軸が円に対して垂直であることを前提とすると、第iのマーカーの座標は、以下のように定義され得る。
【数1】
ここで、N
Mは、球状マーカーの個数である。
【0040】
非対称要件を達成するための簡単な方法は、以下の条件を満たすことである。
δ
i≠δ
j (0≦i<j≦N
M)
ここで、δ
iは、円の中心の周囲におけるマークiとi+1との間の角度である。
δ
i=θ
i+1−θ
i (1<i<N
M−1)
δ
N=2π−θ
N
【0041】
いくつかの実施形態のための基準マーカーは、球状であるが、この用語は、完全な球形を示すことを意図されない。そうではなく、球形状における誤差量は、以下において本明細書で説明されるように球形状を有しオブジェクトの強調を適用するものとして基準マーカーを定義するアルゴリズムの機能を損なうのに十分な大きさであるべきではない。
【0042】
検出されたマーカーのクラスタリングおよびクラスタの識別
我々の基準ベースレジストレーション方式は、各基準マーカーがトモグラフィ画像内で視認可能であり、本明細書で説明されるように容易に強調および検出され得る球形状を有することを要件とする。これらの球状マーカーは、少なくとも3つのクラスタを形成するように構成される。クラスタリングを単純化するために、同一クラスタ内の任意の所与の2つのマーカー間の距離がL
C以下となり、一方で異なるクラスタ内のマーカー間の距離がL
Cmm超となるように、クラスタが定義される。第iのクラスタ内の第jのマーカーの位置をp
ijとした場合には、
【0043】
||p
ij−p
kl||≦Lc,ここでi=k
【0044】
||p
ij−p
kl||>Lc,ここでi≠k (1)
【0045】
各クラスタ内の基準マーカーの個数は、他と重複せず、そのためクラスタは、クラスタ内で識別されるマーカーを計数することにより容易に識別され得る。
【0046】
検出された基準マーカーをクラスタリングするために数式(1)で定義される基準マーカーの構成に関する予備知識。クラスタの個数をN
Cとし、同一クラスタ内の点間の最大距離をL
Cとした場合に、検出される点p
1,p
2,・・・,p
nは、以下のステップでC
1、・・・、C
NCへとクラスタリングされる。
1.C
1にp
1を割り当て、現点の指数をi=2とする。
2.p
iと各クラスタの第1の点との間の距離を計算する(第1の点が既に割り当てられている場合)。p
iとクラスタC
jの第1の点との間の距離がLc未満である場合には、C
jにp
iを割り当てる。いずれのクラスタもp
iからL
C内に位置する第1の点を有さない場合には、いずれの点もまだ割り当てられていないクラスタの中の1つにp
iを割り当てる。
3.iを1だけ増加させる。i≦nの場合には、ステップ2を繰り返す。
これらのステップの終了までに、全ての点がクラスタC
1、・・・、C
NCへと割り当てられているものとする。
【0047】
各クラスタが他と重複しない基準マーカーの個数を有するように基準マーカーが構成されていることにより、各クラスタは、クラスタに割り当てられた点の個数に基づき識別され得る。
【0048】
代替的には、クラスタ分析で使用される他の周知のクラスタリングアルゴリズムが使用されてもよい。例えば、階層的クラスタリングまたはk平均クラスタリングが利用され得る。階層的クラスタリングでは、アルゴリズムは、1つの点を有するクラスタから開始され、クラスタの個数が所定の個数になるまでクラスタ間の距離同士の間の距離に基づきそれらのクラスタを漸進的に結合する。k平均クラスタリングは、「クラスタ内距離二乗和」が最小になるように検出された点を所与の個数のクラスタに分割する。クラスタ内二乗和は各クラスタ内の各点と最も近い点平均との間の距離の二乗和として定義される。
【0049】
基準マーカーのクラスタリング
いくつかの実施形態では、医用デバイスで使用される基準フレームは、クラスタリングされた基準マーカーを備える。1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれ以上のクラスタが存在してもよい。各クラスタは、各クラスタが異なる個数の基準マーカー、異なるサイズの基準マーカー、異なる形状の基準マーカー、異なる構成でクラスタ内に配置された基準マーカー、または異なる材料特性を有する基準マーカーを有するため、各他のクラスタと識別可能である。
【0050】
クラスタは、種々の個数の基準マーカーを含み得る。
図6aに例示するように、基準フレームは、各クラスタが異なる個数(2つ、3つ、および4つ)の基準マーカーを有する3つの異なるクラスタを有する。クラスタが、単一の基準マーカーを含んでもよく、または2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはそれ以上の基準マーカーを含んでもよい。この個数は、基準物が配置される医用デバイスと比較した場合の基準物の相対サイズのみによって制限される。
【0051】
クラスタは、種々のサイズの基準物を含み得る。
図6bに例示するように、基準フレームは、2つのクラスタが小さな基準マーカーを有し、2つのクラスタがより大きな基準マーカーを有する4つの異なるクラスタを有する。複数サイズの基準マーカーが使用される場合に、基準マーカーは、画像データ内で明確に識別されるのに十分に異なるサイズを有さなければならない。
【0052】
クラスタは、種々の形状の基準物を含み得る。
図6cに例示するように、基準フレームは、基準物の形状が球体、楕円体(偏球体、長球体、もしくは三軸楕円体)、円筒体、または管(例えばリング、螺旋等を形成する)である4つの異なるクラスタを有する。いくつかの実施形態では、長いまたは短いものを含む異なる形状の円筒体が、別個の形状として使用され得る。
【0053】
クラスタは、異なる構成で配置され得る。
図6dに例示するように、基準フレームごとに3つの球状基準マーカーを有する3つのクラスタが示される。この図では、1つのクラスタの基準物は、正三角形を形成する一方で、他のクラスタの基準物は、鋭角三角形および鈍角三角形を形成する。個々の構成が、幾何学形状を形成する必要はなく、代替的にランダムであることが可能である。しかし、クラスタは、個々のクラスタが相互に識別され得るように構成された基準マーカーを有さなければならない。
【0054】
クラスタは、基準マーカーオブジェクトがMRI画像または強調MRI画像内で識別可能になるように異なる材料特性を有する基準物を含み得る。例えば、別個のMRI造影剤または別個のMRI造影剤濃度が、基準物を生成するために使用されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、クラスタは、これらの相違の中の2つ以上を含んでもよい。例えば、いくつかのクラスタが、異なるサイズの基準マーカーを有し、他のクラスタが、異なる形状の基準マーカーを有することが可能である。
【0056】
IV.基準マーカーの検出
特徴強調
以下のステップにおける特徴抽出によるマーカー検出成功率を改善するために、球状マーカーの形状を用いて画像オブジェクトを強調することができる。特徴強調を実施する方法は多数存在する。画像オブジェクトの強調のための1つの共通するアプローチは、微分ベース演算であり、隣接し合うボクセルの一次空間導関数または二次空間導関数が、画像の特定の特徴を強調または除去するために計算される。
【0057】
いくつかの実施形態では、特徴強調は、いわゆるキャニーエッジ検出と呼ばれる微分ベース演算であり(Canny,J、「A Computational Approach To Edge Detection」IEEE Trans.Pattern Analysis and Machine Intelligence、8(6):679〜698頁、1986年)、ガウス一次導関数が、画像上のオブジェクトのエッジを抽出するために各ボクセルにて計算される。キャニーエッジ検出後に、画像上のあらゆる形状が、輪郭処理され、したがって特定形状の検出のために以下のステップで検討され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、特徴強調は、Frangiにより提案されたフィルタである微分ベース演算である(Frangi AFら、「Med. Image Comput.Comput.Interv」(MICCAI’98)、Lect.Notes Comput.Sci.Springer Verlag;1998年、130−137頁)。これは、SatoらおよびLorenzらにより提案された「ヴェッセルネスフィルタ(vesselness filter)」の一般化形態であり、ヘシアン行列の固有値に基づきグレースケール画像中の各領域に管状構造物、板状構造物、または小球状構造物が存在する可能性を判定する(Y.Satoら「Proc. CVRMed−MRCAS’97,LNCS」213〜222頁、1997年;C.Lorenzら「Proc.CVRMed−MRCAS’97,LNCS」233〜242頁、1997年)。「ヴェッセルネス」関数は、以下のように定義された。
【数2】
ここで、sは、所与の位置xにおける元画像のヘシアン行列のスケールであり、λ
1、λ
2、およびλ
3は、ヘシアン行列の第1の固有値、第2の固有値、および第3の固有値であり(|λ
1|≦|λ
2|≦|λ
3|)、Sは、フロベニウス行列ノルム
【数3】
であり、
【数4】
【数5】
である。
【0059】
α、β、およびcは、測定の感度R
A、R
B、およびSを制御するしきい値である。ヴェッセルネス関数V
0(s)に応答する構造物の形状およびコントラストは、固有値間の関係に依存する。例えば、V
0(s)は、|λ
1|≒0、|λ
1|<<|λ
2|、λ
2≒λ
3、λ
2>0、およびλ
3>0である場合に明るい管状構造物を強調する。関数V
0(s)に応答する構造物のサイズは、スケールパラメータsに依存する。
【0060】
これらの実施形態の一実現例は、Insight Segmentation and Registration Toolkit(ITK)におけるC++クラスとしてAntiga(Antiga 2008)により実現されたFrangiアプローチを利用する。この実現例では、R
AおよびR
Bは、N次元画像内のM次元構造物として上述の構造物を処理するようにさらに一般化された(すなわち小球はM=0、管はM=1、および板はM=2)。
【数6】
【数7】
【0061】
球状マーカーがフレーム内で使用される場合には、ヴェッセルネス関数は、明るい球状構造物を強調するためにM=0を用いて基準フレームの画像に適用される。管状マーカーがフレーム内で使用される場合には、ヴェッセルネス関数は、それらのマーカーを強調するためにM=1を用いて適用される。
【0062】
いくつかの実施形態では、基準マーカーオブジェクトは、特徴強調演算を適用するステップを伴わずに検出される。特徴強調演算を適用するステップおよび他のオブジェクト強調ステップは、特徴抽出のロバストネスを上昇させるために利用される。しかし、いくつかの実施形態では、ロバストネスのかかる上昇は不要である。かかる実施形態では、特徴抽出アルゴリズムが、このステップを行うことなく他のオブジェクトからマーカーを識別することが可能であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、画像データ内の基準マーカーオブジェクトを検出するステップは、基準マーカーオブジェクトを抽出するために特徴抽出を適用することと、各基準マーカーオブジェクトまたは基準マーカーオブジェクトの各クラスタについて代表点を規定することとを含むことが予期される。
【0063】
特徴抽出
次に、いくつかの形状の基準マーカーを有する画像オブジェクトが、形状ベース特徴抽出を利用して検出される。
【0064】
特徴抽出の一例は、しきい値処理であり、所与の強度範囲内のボクセルのみがオブジェクトとして抽出される。このアプローチは、マーカーオブジェクト内のボクセルの強度範囲が既知であるか、または任意の他のオブジェクトよりも高いボクセル強度をマーカーが示すと想定することが可能である場合には有用である。
【0065】
特徴抽出の別の例は、テンプレートマッチングである。このアプローチでは、テンプレート画像と呼ばれるターゲット形状の小画像が使用される。テンプレート画像と所与の画像との間の画像類似度が、各点にて評価された。高い類似度を有する点は、検出特徴中心として識別される。
【0066】
特徴抽出の別の例は、ハフ変換である。特徴抽出の一例が、ハフ変換である。したがって、いくつかの実施形態では、ヴェッセルネス関数により強調されるオブジェクト構造物は、次いでハフ変換アルゴリズムにより検出される(Duda RO、Hart PE「Comm.ACM」1972年、15:11〜15頁)。ハフ変換アルゴリズムは、直線、円、および楕円などのパラメータセットにより表される特定形状を用いて画像オブジェクトを抽出するために広く利用される。このアルゴリズムは、3D画像内の球状オブジェクトの検出に適用され得る。
【0067】
球状オブジェクトの場合に、球体の表面は、以下のようにパラメータ化され得る。
(x−a)
2+(y−b)
2+(z−c)
2=r
2 (7)
【0068】
ここで、a、b、c、およびrは、3D画像中の球体のサイズおよび位置を規定するパラメータである。ハフ変換アルゴリズムの第1のステップは、いわゆる「アキュムレータ空間」を利用した投票手続きである。球状オブジェクトの検出におけるアキュムレータ空間の次元は、4であり、アキュムレータ空間上の各点は、元画像中の球状オブジェクトに対応する。投票手続きでは、アルゴリズムは、元画像中の候補オブジェクト(すなわち、高濃度エリア)内の各点を検討し、所与の点を含む表面を有する球体の全てのパラメータセット(a,b,c,r)を計算する。次いで、各パラメータセットは、「投票」のためにアキュムレータ空間中に点としてマッピングされる。したがって、アキュムレータ空間上の(a,b,c,r)におけるこれらの点の濃度は、全ての点が検討された後に、(a,b,c,r)を所与とする球体表面が元画像上に高濃度エリアを含む可能性を表し、アキュムレータ画像上の高濃度点に対応する球体は、検出すべきオブジェクトである可能性が高い。我々の基準マーカー検出では、rをr=d
M/2に制約した。ハフ変換後に、各球状オブジェクトごとの質量中心位置が計算される。
【0069】
ハフ変換は、オブジェクトがパラメータにより表され得る分析形状を有する他の実施形態で使用することが可能である。楕円形、円筒形、または他の形状を含む分析形状の例が使用されることにより、オブジェクトの表面は、球体に対して記述されるものと同様にパラメータ化され得る。当然ながら、いくつかのかかるオブジェクトについては、使用されるパラメータの個数は、3D画像中のオブジェクトのサイズおよび位置を特に記述するために増加されなければならない。
【0070】
代表点の規定
各オブジェクトまたはクラスタごとに、代表点が決定される。この代表点は、質量中心であり得る。代表点を規定する他の方法は、例えば各基準マーカーオブジェクトの最上点を選択する、焦点を計算する、頂点(例えば円錐の)を計算する、または同様の方法などである。かかる方法は、当技術において一般的に知られている。
【0071】
V.基準マーカーの位置合わせ
基準マーカーレジストレーションプロセスのこの実施形態で論じられる最後のステップは、検出されたマーカーにマーカーのモデルをマッチングすることである。このステップは、4つのサブステップ、すなわち、1)検出されたマーカーに二次元平面をフィッティングし、2)検出されたマーカーが位置合わせされる円を推定し、3)推定された円にモデル円をマッチングし、4)モデルおよび検出されたマーカーをマッチングする回転を見つけることから構成される(
図7)。第1のサブステップは、主成分分析(PCA)により達成される。PCAは、最大分散が第1の軸に沿って現れ、2番目に大きな分散が第2の軸に沿って現れ、最小分散が第3の軸に沿って現れる新たな座標系に点を変換する。したがって、点に対してフィッティングされる面は、新たな座標系により規定される。検出されたマーカーの座標は、X=(x
1,x
2,・・・,x
N)とする。主成分分解は、3×3行列Wを利用して求められ得る。
【数8】
ここで、Tは、新たな空間に変換されたマーカーの座標を表すN×3行列であり、
【数9】
である。Wの第kの列は、
【数10】
の第kの固有ベクトルに対応し、これは新たな座標空間内における第kの軸に対する法線ベクトルを表す。第3の軸が、最小分散を有するため、全てのマーカーは、第1の軸および第2の軸により規定される面内に位置する。
【0072】
マーカーの中心は、円上の3つの異なる点により規定される2つの弦の垂直二等分線の交差により推定され得る。我々の実現例では、全ての
NC
3点組合せから計算される二等分線は、マーカーの中心を推定するために平均化される。3つのマーカーが検出されたマーカーP
1、P
2、およびP
3から選択されるとすると、M
12およびM
23により表されるP
1P
2およびP
2P
3の二等分点は、
m
12=(p
1+p
2)/2
m
23=(p
2+p
3)/2
により求めることが可能となり、ここでp
1、p
2、およびp
3は、P
1、P
2、およびP
3の二次元位置ベクトルである。P
1P
2およびP
2P
3の垂直二等分線に関する法線ベクトルは、
n
12=R
90°v
12
n
23=R
90°v
23
であり、ここで、
v
12=p
2−p
1であり、v
23=p
3−p
2であり、R
90°は、x原点を中心とした90度の反時計回り回転である。
【数11】
H
12により表される垂直二等分線P
1P
2上へのM
1の投影は、
h
12=m
12+{(m
23−m
12)・n
12}・n
12
により計算される。
【0073】
2つの垂直二等分線の交差Cは、スケーラパラメータaを使用して繰り返され得る。
c=m
23+a・n
23
【0074】
M
2Hに対するCの投影は、Hでなければならないため、
【数12】
【0075】
この関係を利用して、スケーラパラメータaは、
【数13】
として計算され得る。
【0077】
検出されたマーカーにモデル内の円をフィッティングする変換は、
T
c+(p)=R
C+・p+c
であり、ここで、R
+=(w
1T、w
2T、w
3T)である。また、円は、反転(またはx軸またはy軸を中心とした180度の回転)の後にモデルにフィッティングされ得る。この場合に、変換は、
T
c-(p)=R
C-・p+c=R
C+・R
x,180°・p+c
であり、ここで、R
x,180°は、x軸を中心とした180度の反時計回り回転である。
【数15】
【0078】
最終ステップは、変換T
c+またはT
c-後に検出されたマーカーに対して全てのモデルマーカーをフィッティングする円の軸を中心とした回転を見つけることである。z軸を中心とする回転角度をθとすると、最終変換は、
Tθ(p)=R
C・R
z(θ)・p+c
として記述することが可能であり、ここで、
R
C=R
C+またはR
C=R
C-=R
C+・R
x,180°
である。
【0079】
我々は、適合度を変換されたモデルマーカーと検出されたマーカーとの間の最も近い点の平均二乗距離として定義した。
【数16】
【0080】
この適合度を利用して、我々の問題は、
【数17】
として記述することが可能となる。
【0081】
θは、連続パラメータである場合に、我々は、変換されたモデルマーカーの中の1つが検出されたマーカーの中の1つに常にマッチングすると想定することによって探索空間を限定することが可能となる。第1の検出されたマーカーに対して第1のモデルマーカーをマッチングするためには、
q
l=Tθ
1,l(p
1)=R
C・R
Z(θ
1,l)・p
1+c
R
Z(θ
1,l)・p
1=R
C-1(q
l−c)
【0082】
したがって、θ
1,lは、p
1と
q
l'=R
C-1(q
l−c)との間の回転角度である。θ
1,lを利用することにより、適合度Eを最小限に抑えるθは、
【数18】
として記述し直すことが可能となる。
【0083】
最後に、レジストレーション変換は、Tθ(p)に解θを代入することにより計算され得る。
【0084】
現実世界における用途では、マーカーの検出および後の処理ステップにおいてエラーが存在する。マーカー検出エラーの影響を最小限に抑えるために、レジストレーション行列は、Tθ(p)により規定されるモデルと検出されたマーカーとの間におけるマーカー同士の対応に基づくポイントツーポイントレジストレーションによってさらに最適化される。
【0085】
検出された基準マーカーに対する基準マーカーモデルのレジストレーションは、レジストレーションの初期推定のためのクラスタ間マッチングと、推定されたレジストレーションの洗練のためのポイントツーポイントマッチングとからなる。クラスタ間マッチングの場合には、各クラスタの基準マーカーの平均位置が、基準マーカーモデルおよび検出された基準マーカーの両方について計算される。モデルおよび検出された基準マーカーの平均位置は、ポイントツーポイントレジストレーションアルゴリズムを使用してマッチングされる。ポイントツーポイントレジストレーションは、レジストレーション行列の初期推定をもたらす。モデル内のクラスタおよび検出された基準マーカーがマッチングされると、個々のマーカーは、反復最近接点(ICP)アルゴリズムを利用してマッチングされる。ICPが、モデルマーカーと検出された基準マーカーとの間の距離を最小限に抑えつつそれらの中の点をマッチングすることにより、マーカーは、個別に識別される必要がなくなる。
【0086】
VI.用途
本明細書で説明されるような基準マーカー、システム、および方法の適用は、二重リング針ガイドデバイスを使用することで適用可能となる。米国特許出願公開第2014/0275979号に記載されるように、2自由度RCM運動は、二重リング機構により実現され、この機構は、固定角度で連結された2つのリング形状回転ステージからなる。これらのリング形状ステージは、超音波アクチュエータなどのモータにより手動的に回転または駆動され得る。2つのステージを個別に回転させることにより、遠隔中心の周囲において2方向に針ガイドを回転させることが可能となる。また、これらのステージは、PID制御のための内蔵エンコーダを有する。下方回転ステージおよび上方回転ステージの目標角度θ
1およびθ
2は、以下により計算され得る。
【数19】
【数20】
ここで、rは、上方回転ステージの半径であり、p
tは、目標位置であり、p
nは、上方回転ステージおよび針ガイド軸の交差点であり、p
vは、上方回転ステージおよび下方リングの軸の交差点である。x
nおよびy
nは、p
nのx要素およびy要素である。針ガイドの入口からの針挿入深さは、
d=|p
n−p
t| (3)
【0087】
臨床ワークフロー
上述の二重リングデバイスを使用した一例の臨床ワークフローを説明する。この実施形態では、二重リングデバイスの能動的2自由度機構が、所与の皮膚進入点の周囲において受動的針ガイドを傾斜させることにより、患者の3D術中画像上で識別される病巣への経路に針を位置合わせする。MRIガイダンスの下でターゲットの病巣にアブレーションプローブを導入するための臨床ワークフローが提示される。患者は、手技の最中にわたって手術台上に留まることが可能であり、画像が取得される場合にのみスキャナのガントリ内に移動され、他のステップはガントリ外部で実施され得る点に留意されたい。
1.第1の三次元(3D)画像(プランニング画像)が取得され、ナビゲーションソフトウェアに転送される。
2.進入点およびターゲット点が、ナビゲーションソフトウェア上で規定される。
3.針ガイドデバイスが、その遠隔運動中心(RCM)点が既定の進入点に対して与えられるように患者の身体上に取り付けられる。
4.第2の3D画像(較正画像)が取得され、ナビゲーションソフトウェアに転送される。
5.ナビゲーションソフトウェアが、デバイスに装着された基準マーカーを自動的に検出および位置特定する。
6.ナビゲーションソフトウェアは、コントローラが画像システムからデバイス座標系にターゲット座標を送信し得るように、デバイスコントローラにデバイスと画像座標系との間の空間関係を送信する。
7.ナビゲーションソフトウェアが、デバイスコントローラにターゲット点および進入点の座標を送信する。
8.デバイスコントローラが、アクチュエータを駆動して指定された軌道へと針ガイドを位置合わせさせる。
9.医師が、ガイドを使用してターゲットに向かってプローブを挿入する。このターゲットに向ける行為は、手動または自動のいずれかによる。
10.3D画像(確認画像)が、プローブ配置を確認するために取得される。
11.ステップ9および10が、複数のプローブが適切に配置されるまで繰り返され得る。
【0088】
プローブが、プランニングされた位置に配置されると、冷凍アブレーションが実施される。ターゲットの腫瘍に関する凍結組織の度合いは、凍結融解サイクル全体を通じて取得されるMR画像によりモニタリングされる。
【0089】
本明細書に提示されるシステムおよび方法は、米国特許出願公開第2014/0275979号に記載されている二重リング機構を有するMRI比較可能な身体取付け式針ガイドデバイスとの組合せにおいて説明される。この出願公開は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。しかし、本明細書で説明されるようなシステムおよび方法は、任意の断層撮影との組合せにおいて使用される任意の医用デバイスと共に使用され得る。
【0090】
デバイス−画像間レジストレーション
シミュレーション実験および撮像実験を利用することにより我々のレジストレーションアルゴリズムを試験した。目的は、種々のデバイス位置および配向、空間分解能、信号対雑音比(SNR)、および基準マーカーの構成を含む、様々な撮像条件下において提案するレジストレーション方法の精度、速度、およびロバストネスを評価することである。
【0091】
シミュレーション
αおよびγの平行移動パラメータ(−π,π)とβの平行移動パラメータ(−π/2,π/2)とに対して、3つの平行移動パラメータ(x,y,z)と(−150mm,150mm)の範囲を有するオイラー角(α,β,γ)とを生成することによって、ランダム剛体変換を生成した。この変換の行列表現は、
T=Rp+t
であり、ここでt=(x,y,z)であり、
【数21】
である。
【0092】
次いで、ランダム剛体変換を、基準マーカーのモデルとして設定した点に適用した。次いで、変換基準マーカーの合成3Dラスタ画像が、変換点セットから所与の空間分解能を有する3D画像中でレンダリングされる。このレンダリングステップにおいて、マーカーの境界におけるボクセルの信号強度を計算するために部分容積効果を考慮した。部分容積効果は、ボクセルサイズよりも小さな精度を実現するためにレジストレーションアルゴリズムにとって非常に重要である。最後に、シミュレーションされた基準画像が、合成3D画像に可変標準偏差を有するガウス雑音等の雑音を加えることにより生成される。シミュレーションされた基準マーカーが生成されると、画像にデバイス−画像間レジストレーションを適用することにより基準フレームの変換を推定した。推定された変換を、合成画像を生成するために使用される元の変換と比較した。
【0093】
撮像実験
また、人体模型のMR画像を使用してレジストレーションアルゴリズムを評価した。ガントリ内の既知の位置および配向にてデバイスおよび基準マーカーを配置することが可能なステージを生成した。各位置および配向にて三次元MR画像を取得し、デバイスの位置および配向を推定するために提案するアルゴリズムを使用してデバイス−画像間レジストレーションを実施し、次いでそれらの推定値をステージにより与えられる位置および配向と比較した。ボディマトリクスコイルおよびマルチスライスT2強調Half−Fourier Acquisition Single−shot Turboスピンエコー(HASTE)シーケンスを用いた3T MRIスキャナ(MAGNETOM Verio、Siemens Healthcare、Erlangen、Germany)において画像を取得した。
【0094】
患者の移動によるターゲット設定エラーを評価するためのシミュレーション
臨床手技中に想定され得るデバイスの変位を試験した。この移動は、腎臓のMR誘導冷凍アブレーション中に取得される3D画像を使用することによる皮膚表面および内部器官の移動に起因し得る。これらの画像を、プローブ配置プロセスの最中に定期的に取得し、したがってこれらの画像によりそれらの構造物の変位が示される。皮膚上の進入点にて配置されている場合にデバイスの想定され得る位置および配向がどのようなものであったかを推定するために使用されるようなデバイス配置シミュレータである。
【0095】
撮像プロトコル
デバイス−画像間レジストレーションの実証のために撮像調査と同一のスキャナを使用して全ての画像を取得した。本明細書で説明されるような一実施形態において、同一のボディマトリクスコイルおよびマルチスライス二次元MRIを使用してプローブ配置プロセスの最中にマルチスライスT2強調MR画像を取得した。
【0096】
想定されるデバイス変位およびターゲット変位の推定
身体取付け式デバイスの具体的な1つの難点は、ロボットの位置および配向が、患者上に物理的に取り付けられるまで不明である点である。「臨床ワークフロー」の章で説明したように、デバイスは、プランニング画像を点検している間は患者の上に存在しない。この制約により、デバイスの誤配置が引き起こされる場合があり、ターゲットは、配置後にアクセス可能範囲外に位置することが判明する。デバイスが患者上にどのように配置されたかを医師が予想することが可能となるように、我々は、デバイスを患者上に物理的に取り付ける前にデバイスの想定され得る位置および配向を推定するために単純な方法を実施した。
【0097】
我々の方法は、医師によりプランニングされる皮膚進入点と、手技の開始時に取得されるプランニング画像から生成される患者の3D表面モデルとに基づく。3D表面モデルを生成するために、画像内の患者の身体は、しきい値で画像を2値化処理することによりセグメント化される。次いで、セグメント化された身体の表面が、マーチングキューブアルゴリズムを使用して多角形モデルとして抽出される。表面モデルおよび皮膚進入点の座標を使用して、身体取付け式デバイスに接触する患者の身体エリアを推定する。この推定において、我々は、デバイスがベースのリング形状内方エッジにて皮膚に最も接触し、リング内のエリアはほぼ平坦面であると仮定する。これらの仮定の下で、デバイスの配向は、リング内の皮膚状のエリアにおける多角形の法線ベクトルにより近似化され得る。デバイスの位置は、配向を維持しつつ皮膚進入点にデバイスのRCMをマッチングすることにより計算される。
【0098】
各3D画像が、想定されるデバイス変位およびターゲット変位を推定するために分析される。患者の身体を、オープンソース医用画像計算ソフトウェアである3Dスライサを使用することにより手動的にセグメント化した。初めに、画像は、しきい値で2値化し、次いで描画ツールで編集した。セグメント化された画像は、ラベル画像として保存し、マーチングキューブアルゴリズムを使用して3D表面モデルに変換した。また、皮膚上のプローブ挿入点を、元の3D画像上で識別し、表面モデル上にマッピングした。プローブ挿入点および患者身体の3D表面モデルに基づき、前章で説明した方法を用いてデバイスの想定される位置および配向が推定される。
【0099】
ターゲットの変位を、初期画像と異なる時点に取得された他の画像との間の腎臓領域の画像レジストレーションを利用して分析した。腎臓と共に移動されるターゲットの移動および腎臓の移動が剛体レジストレーションとして近似化されることを前提とした。これは、腎臓に焦点を当てるために、手動により大マーカーに考慮され、それによりマスクを生成しそのマスクを使用して2つの画像の類似度を評価する領域を制限した。剛体レジストレーションは、相互情報量の最大化に基づいた。同一手順における全ての画像が分析された後に、針配置プロセスの過程にわたるデバイスの元の位置からの変位量を計算した。ターゲットおよび腎臓の推定される変位量に基づき、針ガイドデバイスに対するターゲットの相対位置を想定される位置エラーとして計算した。
【0100】
また、本発明の実施形態は、上述の実施形態の中の1つまたは複数の機能を実施するために記憶媒体(より完全には「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」とも呼び得る)に記録されたコンピュータ実行可能命令(例えば1つまたは複数のプログラム)を読み出し実行する、および/または上述の実施形態の1つまたは複数の機能を実施するために1つまたは複数の回路(例えば特定用途向け集積回路(ASIC))を備えるシステムまたは装置のコンピュータによって、ならびに例えば上述の実施形態の中の1つまたは複数の機能を実施するために記憶媒体からコンピュータ実行可能命令を読み出し実行する、および/または上述の実施形態の1つまたは複数の機能を実施するために1つまたは複数の回路を制御することなどによりシステムまたは装置のコンピュータにより実施される方法によって実現され得る。コンピュータは、1つまたは複数のプロセッサ(例えば中央演算処理装置(CPU)、マイクロプロセッシングユニット(MPU))を備えてもよく、コンピュータ実行可能命令を読み出し実行するために別個のコンピュータまたは別個のプロセッサのネットワークを備えてもよい。コンピュータは、例えばMRIハードウェアおよびコンソールを含むMRIシステムなどと組み合わされてもよく、または撮像システムとは別個であってもよい。コンピュータ実行可能命令は、例えばネットワークまたは記憶媒体などからコンピュータに供給され得る。記憶媒体は、例えばハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、分散コンピュータシステムのストレージ、光ディスク(コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、もしくはブルーレイディスク(BD)(商標)など)、フラッシュメモリデバイス、およびメモリカード等の中の1つまたは複数などを備えてもよい。
【0101】
定義
本説明の参照において、具体的詳細が、開示される例の完全な理解を促すために示される。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、および回路は、本開示を不要に冗長化しないために詳細には説明されていない。
【0102】
本明細書において、要素または部分が別の要素または部分「の上に」ある、「に対接して」いる、「に連結され」る、または「に結合され」るものとして言及される場合には、これは、他の要素または部分に対して直接的に上にある、対接している、連結される、または結合されることが可能であり、または介在要素もしくは介在部分が存在し得る点を理解されたい。対照的に、ある要素が別の要素または部分「の上に直接的に」ある、「に直接的に連結され」る、または「に直接的に結合され」るものとして言及される場合には、介在要素または介在部分は存在しない。「および/または」と言う用語は、使用される場合、挙げられた関連項目の中の1つまたは複数のあらゆる組合せを、そのような記載がある場合には含む。
【0103】
本明細書では、「の下」、「の下方」、「下」、「下方」、「の上」、「上方」、「近位」、および「遠位」等の空間相対用語は、様々な図面に示されるようなある要素または特徴の別の要素または特徴に対する関係を説明するために説明の容易化を目的として使用され得る。しかし、空間相対用語は、図面に示す配向に加えて使用または動作におけるデバイスの種々の配向を包含するように意図される点を理解されたい。例えば、図面内のデバイスが反転された場合には、他の要素または特徴の「下」または「下方」として説明される要素は、他方の要素または特徴の「上方」に配向されることとなる。したがって、「下」などの相対空間用語は、上配向および下配向の両方を包含し得る。デバイスは、別様に配向されてもよく(90度または他の配向に回転される)、本明細書で使用される空間相対記述語は、それ相応に解釈されるべきである。同様に、相対空間用語「近位」および「遠位」もまた、該当する場合には互換的であり得る。
【0104】
本明細書において、「約」という用語は、例えば10%以内、5%以内、またはそれ未満などを意味する。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味し得る。
【0105】
第1の、第2の、第3の等の用語は、本明細書では様々な要素、構成要素、領域、部分、および/またはセクションを説明するために使用され得る。これらの要素、構成要素、領域、部分、および/またはセクションは、これらの用語により限定されるべきではない点を理解されたい。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、部分、またはセクションを別の領域、部分、またはセクションから識別するためにのみ使用されている。したがって、以下で論じられる第1の要素、構成要素、領域、部分、またはセクションは、本明細書における教示から逸脱することなく第2の要素、構成要素、領域、部分、またはセクションと呼ぶことが可能である。
【0106】
本明細書において、基準マーカーのクラスタを識別する文脈で使用されるような「識別可能な」は、物理フレーム上のマーカーのクラスタと画像上で検出されるクラスタとの間の1対1の対応を少なくとも確立する確実性を伴った状態で、様々なクラスタの構成(個数、サイズ、形状、構成、または材料特性)が他のクラスタのいずれとも異なり得ることを意味する。クラスタが識別されると、画像座標系内でフレームを位置特定することが可能となる。
【0107】
本明細書で使用される術語は、特定の実施形態の説明のみを目的とし、限定的なものとなるようには意図されない。本明細書において、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈が別様のことを明示しない限りは複数形をも含むように意図される。さらに、本明細書で使用される場合に、「含む」および/または「含んでいる」という用語は、述べられた特徴、完全体、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を明示するが、明示されない1つまたは複数の他の特徴、完全体、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しない点を理解されたい。
【0108】
図面に示す例の実施形態の説明において、特定術語が明瞭化のために使用される。しかし、この特許明細書の開示は、かように選択された特定術語に限定されるようには意図されず、各具体的な要素は、同様に動作する全ての技術的均等物を含む点を理解されたい。
【0109】
例示の実施形態を参照として本開示を説明したが、本開示は、開示される例示の実施形態に限定されない点を理解されたい。以下の特許請求の範囲は、全てのかかる修正および均等構造物および均等機能を包含するように最大限の範囲の解釈を与えられるべきである。