(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたブレーキ装置では、エンジンの始動時に一時的に主電源の電圧が低下すると、制御装置がリセットされてしまう虞がある。この場合、特許文献1のブレーキ装置を例えばエンジンの始動と停止を繰り返すアイドリングストップ機能を有する車両に搭載した場合には、エンジンの始動による電圧低下の度に制御装置および電動機への電力供給を主電源から補助電源に切換えてしまい、補助電源の使用頻度が多くなる。この結果、補助電源の電力残量が低下してしまう虞がある。
【0006】
本発明の目的は、エンジンの始動時における制御装置のリセットを抑制すると共に、補助電源の電力消費を抑制することができるブレーキ装置およびそのブレーキ装置を搭載した車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るブレーキ装置は、制動要求信号に応じて制動力を出力する電動機と、前記電動機を制御する制御装置と、を備え、前記電動機および前記制御装置
には、車両に搭載された内燃機関の始動装置に電力を供給する第1の蓄電装置と該第1の蓄電装置とは別の第2の蓄電装置とから電力が供給され、前記制御装置は、前記第1の蓄電装置と前記第2の蓄電装置との両方から電力の供給を受け、前記電動機は、前記第1の蓄電装置の電圧が第1の所定値以上のときに、前記第1の蓄電装置から電力の供給を受け
、前記第2の蓄電装置からは電力の供給を受けない第1の状態と、前記始動装置が駆動しておらず、前記第1の蓄電装置の電圧が前記第1の所定値未満のときに、
前記第1の蓄電装置から電力の供給を受けず、前記第2の蓄電装置から電力の供給を受ける第2の状態と、前記始動装置が駆動しており、前記第1の蓄電装置の電圧が前記第1の所定値未満のときに、前記第1の蓄電装置から電力の供給を受け
、前記第2の蓄電装置からは電力の供給を受けない第3の状態と、を有する。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係るブレーキ装置は、制動要求信号に応じて制動力を発生させる電動機と、前記電動機を制御する制御装置と、を備
え、前記電動機および前記制御装置
には、車両に搭載された内燃機関の始動装置に電力を供給する第1の蓄電装置と該第1の蓄電装置とは別の第2の蓄電装置とから電力が供給され
、前記第1の蓄電装置の電圧が第1の所定値未満になっているとき、前記電動機と前記制御装置とに
前記第1の蓄電装置から電力を供給せず、前記第2の蓄電装置から電力を供給する第4の状態と、前記始動装置が駆動されていることを条件として、前記電動機に
前記第1の蓄電装置から電力を供給し、前記第2の蓄電装置から電力を供給せず、前記制御装置に
前記第1の蓄電装置から電力を供給せず、前記第2の蓄電装置から電力を供給する第5の状態と、前記電動機と前記制御装置とに
前記第1の蓄電装置から電力を供給し、前記第2の蓄電装置から電力を供給しない第6の状態と、を有する。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る車両は、制動要求信号に応じて制動力を発生させる電動機と、前記電動機を制御する制御装置と、内燃機関を始動する始動装置と、前記始動装置に電力を供給する第1の蓄電装置と、該第1の蓄電装置とは別の第2の蓄電装置と、前記第1の蓄電装置と前記第2の蓄電装置とから、前記電動機と前記制御装置とへの電力供給を制御する電力供給制御部とを有する車両であって、前記電力供給制御部は
、前記第1の蓄電装置の電圧が第1の所定値未満になっているとき、前記電動機と前記制御装置とに
前記第1の蓄電装置から電力を供給せず、前記第2の蓄電装置から電力を供給する第4の状態と、前記始動装置が駆動されていることを条件として、前記電動機に
前記第1の蓄電装置から電力を供給し、前記第2の蓄電装置から電力を供給せず、前記制御装置に
前記第1の蓄電装置から電力を供給せず、前記第2の蓄電装置から電力を供給する第5の状態と、前記電動機と前記制御装置とに
前記第1の蓄電装置から電力を供給し、前記第2の蓄電装置から電力を供給しない第6の状態と、に切換える。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、主電源の電圧低下による制御装置のリセットを抑制すると共に、補助電源の電力消費を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態によるブレーキ装置を、四輪自動車に適用した場合を例に挙げ、添付図面の
図1ないし
図4を参照して説明する。
【0013】
図1において、ブレーキ装置1は、車両を停止させるために制動力を付与するものである。このブレーキ装置1は、車両のホイールシリンダ(図示せず)にブレーキ液を供給するためマスタシリンダ(M/C)2で発生させるブレーキ液圧を電気的に制御する電動倍力装置(電動式ブースタ)として構成されている。このため、ブレーキ装置1は、電動機3と、電動機3を制御する制御装置18とを備えている。
【0014】
電動機3は、制動要求信号に応じて制動力を出力するものである。この電動機3は、例えばDCブラシレスモータからなる電動倍力装置の電動モータとして構成され、後述の制御装置18により駆動制御される。電動機3は、ブレーキペダル(図示せず)の操作(踏込み)量に基づき、マスタシリンダ2内のピストン(図示せず)を作動させてマスタシリンダ2内にブレーキ液圧を発生させる。
【0015】
ストロークセンサ4は、運転者によるブレーキペダルの操作(踏込み)量を検出するものである。このストロークセンサ4は、制御装置18と信号線4Aを介して接続されている。ストロークセンサ4の検出信号は、本発明の制動要求信号として制御装置18に出力される。
【0016】
主電源5は、車両に搭載されたバッテリで、本発明の第1の蓄電装置を構成するものである。この主電源5は、エンジン(図示せず)により回転駆動されて発電するジェネレータ(図示せず)の電力を蓄電する。主電源5は、電源ライン6を介してエンジンの始動用電動機であるスタータモータ16に接続されている。主電源5は、スタータモータ16が駆動するときに電力を供給している。
【0017】
主電源5は、電源ライン6とは別個の電源ライン7を介して電動機3と接続されている。電源ライン7の途中には、第1スイッチ素子14が設けられている。主電源5は、第1スイッチ素子14がON状態(接続状態)となったときに、電動機3に電力を供給する。また、主電源5は、電源ライン6,7とは別個の電源ライン8を介して制御装置18と接続されている。電源ライン8の途中には、主電源5から制御装置18に向かう方向の電流を許容し、逆方向の電流を遮断するダイオード9が設けられている。主電源5は、制御装置18に電力を供給する。なお、主電源5は、車両に搭載された他の電気機器(制御装置)等にも電力を供給している。
【0018】
補助電源10は、車両に搭載されたバッテリまたはキャパシタで、本発明の第2の蓄電装置を構成するものである。この補助電源10は、例えば主電源5の容量よりも小さい容量を有し、ジェネレータおよび主電源5からの電力を蓄電する。また、主電源5および補助電源10が電力供給を停止した状態では、例えば補助電源10の電圧V2は、主電源5の電圧V1以下(V2≦V1)に設定されている。
【0019】
そして、補助電源10は、補助電源ライン11を介して電動機3と接続されている。補助電源ライン11の途中には、第2スイッチ素子15が設けられている。補助電源10は、第2スイッチ素子15のON状態(接続状態)となったときに、電動機3に電力を供給する。また、補助電源10は、補助電源ライン11とは別個の補助電源ライン12を介して制御装置18と接続されている。補助電源ライン12の途中には、補助電源10から制御装置18に向かう方向の電流を許容し、逆方向の電流を遮断するダイオード13が設けられている。補助電源10は、制御装置18に電力を供給する。なお、補助電源10は、ブレーキ装置1内に設けられていてもよい。
【0020】
従って、電動機3は、第1スイッチ素子14を介して主電源5と接続され、第2スイッチ素子15を介して補助電源10と接続されている。電動機3は、第1スイッチ素子14がON状態(接続状態)となったときに、主電源5からの電力供給が可能な状態となり、第1スイッチ素子14がOFF状態(非接続状態)となったときに、主電源5からの電力供給が不能な状態となる。また、電動機3は、第2スイッチ素子15がON状態(接続状態)となったときに、補助電源10からの電力供給が可能な状態となり、第2スイッチ素子15がOFF状態(非接続状態)となったときに、補助電源10からの電力供給が不能な状態となる。電動機3が主電源5から電力供給されるか、補助電源10から電力供給されるかについては、後で詳しく述べる。
【0021】
第1スイッチ素子14は、主電源5と電動機3とを接続する電源ライン7に設けられている。一方、第2スイッチ素子15は、補助電源10と電動機3とを接続する補助電源ライン11に設けられている。第1スイッチ素子14は、例えば電磁リレー等によって構成され、後述の制御装置18と信号線14Aにより接続されている。また、第2スイッチ素子15も同様に、例えば電磁リレー等によって構成され、後述の制御装置18と信号線15Aにより接続されている。
【0022】
第1スイッチ素子14と第2スイッチ素子15とは、後述の制御装置18からの制御信号に基づいて、接続状態(ON状態)と非接続状態(OFF状態)とに切換えられる。即ち、第1スイッチ素子14がON状態のときには、主電源5と電動機3とが接続状態となり、電動機3は主電源5から電力の供給を受けることができる。また、第2スイッチ素子15がON状態のときには、補助電源10と電動機3とが接続状態となり、電動機3は補助電源10から電力の供給を受けることができる。
【0023】
スタータモータ16は、エンジンを始動させるときに作動する電動モータである。即ち、スタータモータ16は、運転者が図示しないエンジン始動スイッチ(イグニッションスイッチ)またはエンジン再始動スイッチ(アイドルスイッチ)をON操作(始動開始操作)したときに作動する。スタータモータ16は、主電源5と電源ライン6を介して接続され、主電源5から電力供給されている。
【0024】
また、スタータモータ16は、信号線17を介して制御装置18に接続され、スタータモータ16が駆動中である始動検出信号を制御装置18に出力している。スタータモータ16は、本発明の内燃機関を始動する始動装置を構成している。
【0025】
制御装置18は、電動機3を制御するもので、ブレーキ装置1の一部を構成している。この制御装置18は、例えばマイクロコンピュータ等からなり、電動倍力装置の電動機3を駆動制御してマスタシリンダ2内にブレーキ液圧を発生させるマスタ圧制御ユニットとなっている。制御装置18の入力側には、ストロークセンサ4、主電源5、補助電源10、スタータモータ16等が電気的に接続されている。一方、制御装置18の出力側には、電動機3(のインバータ回路等)、第1スイッチ素子14、第2スイッチ素子15が電気的に接続されている。
【0026】
制御装置18は、運転者によるブレーキペダルの操作に基づくストロークセンサ4の検出値を受信する。そして、制御装置18は、ストロークセンサ4の検出信号(制動要求信号)に基づいて電動機3を作動させ、マスタシリンダ2内にブレーキ液圧を発生させる。また、制御装置18は、信号線17によりスタータモータ16と電気的に接続され、スタータモータ16からの始動検出信号を受信することにより、スタータモータ16が作動しているか否かを検知している。
【0027】
制御装置18は、主電源5と補助電源10との両方から電力の供給を受けている。主電源5と制御装置18とを接続する電源ライン8には、ダイオード9が設けられている。一方、補助電源10と制御装置18とを接続する補助電源ライン12には、ダイオード13が設けられている。このため、制御装置18には、主電源5と補助電源10とのうち、高い方の電圧が供給される。従って、スタータモータ16の駆動によって、一時的に主電源5の電圧が補助電源10の電圧よりも低下したときでも、制御装置18には、補助電源10の電圧が印加される。この結果、制御装置18がリセットされるのを抑制することができる。
【0028】
そして、制御装置18には、電力供給制御部19が設けられている。この電力供給制御部19は、第1スイッチ素子14および第2スイッチ素子15のON状態(接続状態)またはOFF状態(非接続状態)を制御することにより、電動機3への電力供給を主電源5から行うか補助電源10から行うかを制御する。電力供給制御部19のメモリ(図示せず)には、
図3、
図4に示す制御処理のプログラム、主電源5の電圧の閾値(Va,Vb)が記憶されている。電力供給制御部19は、
図3、
図4に示す制御処理のプログラムに従って、第1スイッチ素子14および第2スイッチ素子15のスイッチング操作を実行する。
【0029】
具体的には、電力供給制御部19は、図示しない電圧検出回路から検出された主電源5の電圧に応じた検出信号と、図示しない電圧検出回路から検出された補助電源10の電圧に応じた検出信号とを受信する。そして、電力供給制御部19は、主電源5の電圧に基づいて電動機3への電力供給を主電源5から行うか補助電源10から行うかを決定している。また、電力供給制御部19は、スタータモータ16が駆動中か、電動機3が発生できる制動力に不足はないか、ブレーキペダルが踏まれているかを検知して、電動機3への電力供給を主電源5から行うか補助電源10から行うかを決定している。なお、電力供給制御部19は、制御装置18に電気的に接続された他の制御装置に設けられていてもよい。
【0030】
本実施の形態によるブレーキ装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0031】
車両の運転者がブレーキペダルを踏込み操作すると、制御装置18は、ブレーキペダルの踏込み量を検出するストロークセンサ4の検出値に基づいて電動機3の作動を制御する。そして、電動機3の作動によりマスタシリンダ2内に発生したブレーキ液圧は、前,後輪側ブレーキに分配して供給され、左,右の前輪と左,右の後輪とにそれぞれ制動力が付与される。そして、車両の停車が所定時間(例えば、1〜3秒)継続すると、エンジンの駆動を停止させるアイドリングストップ制御がなされる。
【0032】
また、車両の発進操作(例えば、エンジンを再始動させるためのエンジン再始動スイッチの操作等)により、スタータモータ16を駆動してエンジンを再始動させることができる。そして、車両の運転者がブレーキペダルの踏込み操作を解除すると、前,後輪側ブレーキからマスタシリンダ2へとブレーキ液が漸次戻されるようになり、前,後輪側ブレーキによる制動力の付与が解除される。
【0033】
この場合、スタータモータ16は、主電源5から電力が供給されることにより駆動を行っている。これに加え、主電源5は、制御装置18にも電力を供給している。従って、スタータモータ16の駆動時に一時的に主電源5の電圧が低下すると、制御装置18がリセットされてしまう虞がある。
【0034】
この場合、上述した特許文献1では、主電源の電力残量が低下すると、制御装置への電力供給を主電源から補助電源に切換えている。また、主電源の電力残量がさらに低下した場合には、電動機にも補助電源から電力を供給している。
【0035】
しかし、アイドリングストップ制御を行うことにより、エンジンの駆動と停止とを繰り返す場合には、エンジン再始動時のスタータモータの駆動による主電源の電圧低下の度に、制御装置および電動機への電力供給を主電源から補助電源に切換えてしまう虞がある。その結果、補助電源の使用頻度が多くなり、補助電源の電力残量が低下してしまう虞がある。
【0036】
そこで、本実施の形態では、制御装置18には、主電源5と補助電源10との両方から電力供給がなされている。そして、主電源5の電圧が低下した場合には、スタータモータ16の駆動、電動機3が発生させる制動力の大きさ、ブレーキペダルの操作の可否に基づき、電動機3に供給する電力を主電源5から補助電源10に切換えている。
【0037】
電動機3への電力供給を主電源5で行うか補助電源10で行うかを
図3、
図4に示す制御処理に基づき説明する。なお、
図3、
図4に示す制御処理は、例えばエンジン始動スイッチがON操作された後、所定の周期毎に繰り返し実行される。また、
図3、
図4に示す流れ図のステップは、それぞれ「S」という表記を用い、例えばステップ1を「S1」として示すものである。
【0038】
図3の処理動作が開始されると、制御装置18の電力供給制御部19は、S1で電動機3への電力供給は主電源5とする。即ち、電力供給制御部19は、第1スイッチ素子14をON(接続状態)とし、第2スイッチ素子15をOFF(非接続状態)とする。この場合、
図1に示すように、電動機3は、主電源5から電力供給を受ける。一方、制御装置18は、主電源5および補助電源10から電力供給を受けることができる。この場合、主電源5の電圧V1は、補助電源10の電圧V2よりも高い(V2<V1)ので、制御装置18は、主電源5から電力の供給を受けることになる。即ち、補助電源10が、電動機3と制御装置18とに電力を供給しない本発明の第6の状態を構成している。
【0039】
次のS2では、主電源5の電圧V1が閾値Va未満か否かを判定する(V1<Va)。即ち、電力供給制御部19は、電圧検出回路からの検出信号を基に主電源5の電圧V1を検知して、この電圧V1と閾値Vaとを比較する。この場合、閾値Vaは、電動機3および制御装置18が非作動(停止)となってしまう電圧よりも若干高い値に設定されるもので、本発明の第1の所定値を構成している。
【0040】
そして、S2で「YES」、即ち主電源5の電圧V1が閾値Va未満であると判定された場合には、S3に進む。一方、S2で「NO」、即ち主電源5の電圧V1が閾値Va以上であると判定された場合には、リターンする。S2での「NO」の判定により電動機3が主電源5から電力の供給を受ける状態は、本発明の第1の状態を構成している。また、制御装置18も主電源5から電力の供給を受けており、この状態は、本発明の第6の状態も構成している。
【0041】
S3では、スタータモータ16は駆動中か否かを判定する。即ち、電力供給制御部19は、スタータモータ16からの検出信号により、スタータモータ16がエンジンを始動(または、再始動)させるために、駆動しているか否かを判定する。そして、S3で「YES」、即ちスタータモータ16が駆動中であると判定された場合には、S4に進む。一方、S3で「NO」、即ちスタータモータ16が駆動していないと判定された場合には、S6に進む。
【0042】
S4では、電動機3への電力供給は主電源5を維持する。即ち、S1でなされた第1スイッチ素子14のON(接続状態)、第2スイッチ素子15のOFF(非接続状態)を維持する。S4での電動機3が主電源5から電力の供給を受ける状態は、本発明の第3,第5の状態を構成している。
【0043】
このように、主電源5の電圧V1が閾値Vaよりも小さく(S2でYESのとき)、かつスタータモータ16が駆動中の場合(S3でYESのとき)には、第1スイッチ素子14はON状態を維持して主電源5から電動機3への電力の供給を許可し、第2スイッチ素子15はOFF状態を維持して補助電源10から電動機3への電力の供給を禁止する。これにより、補助電源10から電動機3への消費電力を抑制することができる。
【0044】
また、第1スイッチ素子14と第2スイッチ素子15とのON、OFFを切換えないので、電動機3を停止させることなくブレーキ制御を継続することができる。これにより、電動機3の停止によるブレーキペダルの押戻し(ペダルフィーリングの段付き)を抑制することができる。
【0045】
また、S4では、S2で主電源5の電圧V1が閾値Va未満となっているので、主電源5の電圧V1よりも補助電源10の電圧V2の方が高く(V2>V1)なっている。従って、S4では、制御装置18は、補助電源10から電力の供給を受け、電動機3は、主電源5から電力の供給を受けることになる。
【0046】
次のS5では、制動力は不足しているか否かを判定する。即ち、電力供給制御部19は、ストロークセンサ4が検出したブレーキペダルのストローク量から必要な制動力F1を算出する。また、電力供給制御部19は、主電源5の電圧V1により電動機3が発生できる制動力F2を算出する。そして、電力供給制御部19は、電動機3が発生できる制動力F2が必要な制動力F1を確保できるか否か(F2>F1)を判定する。S5で「YES」、即ち制動力が不足していると判定された場合には、S6に進む。一方、S5で「NO」、即ち制動力が不足していないと判定された場合には、S7に進む。
【0047】
S6では、電動機3への電力供給を補助電源10に切換える。即ち、電力供給制御部19は、第1スイッチ素子14をOFF状態(非接続状態)とし、第2スイッチ素子15をON状態(接続状態)とする。この場合、
図2に示すように、電動機3は、補助電源10から電力供給を受ける。一方、制御装置18は、主電源5と補助電源10との両方から電力供給を受けることができる。
【0048】
この場合、主電源5は、第1スイッチ素子14がOFF状態であるので、電動機3への電力供給が禁止されている。そして、制御装置18は、主電源5と補助電源10との電圧V1,V2のうち高い電圧を有する電源から電力の供給を受けることになる。S3での「NO」の判定により電動機3が補助電源10から電力の供給を受ける状態は、本発明の第2,第4の状態を構成している。
【0049】
S7では、電動機3への電力供給は主電源5を維持する。即ち、S1でなされた第1スイッチ素子14のON状態(接続状態)、第2スイッチ素子15のOFF状態(非接続状態)を維持して、リターンする。
【0050】
図4中のS8では、主電源5の電圧V1が閾値Vb以上か否かを判定する(V1≧Vb)。そして、電力供給制御部19は、電圧検出回路からの検出信号を基に主電源5の電圧V1を検知して、この電圧V1と閾値Vbとを比較する。この場合、閾値Vbは、S2での閾値Va以上に設定されている(Va≦Vb)。そして、S8で「YES」、即ち主電源5の電圧V1が閾値Vb以上であると判定された場合には、S9に進む。一方、S8で「NO」、即ち主電源5の電圧V1が閾値Vb未満であると判定された場合には、S11に進む。
【0051】
S9では、スタータモータ16の駆動は終了しているか否かを判定する。即ち、
図3中のS3で「YES」と判定された場合には、エンジンの始動が完了してスタータモータ16の駆動が終了したか否かを判定する。そして、S9で「YES」、即ちスタータモータ16の駆動は終了していると判定された場合には、S10に進む。一方、S9で「NO」、即ちスタータモータ16の駆動は終了していないと判定された場合には、S11に進む。
【0052】
S10では、ブレーキペダルは踏まれているか否かを判定する。即ち、運転者が制動力を付与するために、ブレーキペダルを踏み込んでいるか否かを判定する。この場合、ブレーキペダルが踏まれているか否かは、ストロークセンサ4から制動要求信号が出力されているか否かにより判定することができる。そして、S10で「YES」、即ちブレーキペダルは踏まれていると判定された場合には、S11に進む。一方、S10で「NO」、即ちブレーキペダルは踏まれていないと判定された場合には、S12に進む。
【0053】
S11では、電動機3への電力供給は補助電源10を維持する。即ち、
図3中のS6でなされた第1スイッチ素子14のOFF状態(非接続状態)、第2スイッチ素子15のON状態(接続状態)を維持して、S8に戻る。なお、制御装置18は、主電源5と補助電源10とのうち大きい電圧を有している電源から電力供給される。
【0054】
このように、主電源5の電圧V1が閾値Vb以上となった場合(S8で「YES」)でも、スタータモータ16が駆動中であるとき(S9で「NO」)には、電動機3への電力供給は補助電源10を維持する。これにより、スタータモータ16の駆動によるクランキングの電圧変動で、電動機3の電源が主電源5と補助電源10との間で何度も切換わるのを抑制することができる。
【0055】
また、主電源5の電圧V1が閾値Vb以上となった場合(S8で「YES」)でも、ブレーキペダルが踏まれているとき(S10で「YES」)には、電動機3への電力供給は補助電源10を維持する。これにより、電動機3への電力供給を切換えるときに生じる電動機3の制御停止を発生させることがないので、制御停止時に一時的にブレーキペダルが戻り、制御再開時にブレーキペダルが進むペダルフィーリングの段付きを抑制することができる。
【0056】
S12では、電動機3への電力供給を主電源5に切換える。即ち、電力供給制御部19は、第1スイッチ素子14をON(接続状態)とし、第2スイッチ素子15をOFF(非接続状態)として、リターンする。このように、主電源5の電圧V1が閾値Vb以上のとき(S8で「YES」)、かつスタータモータ16が駆動中でなく(S9で「NO」)、ブレーキペダルが踏まれていない場合、即ち電動機3が駆動中でない(S10で「NO」)ときに、電動機3への電力供給を主電源5に切換えている。これにより、スタータモータ16および電動機3の駆動中に一時的に電力供給が途絶えるのを抑制することができるので、スタータモータ16および電動機3の駆動を円滑に行うことができる。
【0057】
かくして、本実施の形態では、スタータモータ16の駆動によって主電源5の電圧が低下した場合に、補助電源10から制御装置18に電力を供給するため、制御装置18のリセットを抑制することができる。また、アイドリングストップ時のスタータモータ16の駆動の度に、電動機3への電力供給を主電源5から補助電源10に切換えてしまうのを抑制しているので、補助電源10の電力残量が低下するのを抑制することができる。
【0058】
なお、上述した実施の形態では、制御装置18は、スタータモータ16の駆動の判定(S3での判定)をスタータモータ16からの検出信号により行った場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば車速、ブレーキペダル、およびアクセルペダルから車両が停車していると判定された場合に、スタータモータ16が駆動されるものと判定してもよい。
【0059】
また、制御装置18は、エンジン回転数の情報からエンジンの駆動と停止の状態を検知して、スタータモータ16の駆動を判定してもよい。また、アイドリングストップの情報を検知してスタータモータ16の駆動を判定してもよい。また、GPS(Global Positioning System)等で車両が交差点に位置しているか駐車場に位置しているか等の位置情報を検出して、スタータモータ16が駆動するか否かの判定を行ってもよい。
【0060】
また、上述した実施の形態では、主電源5の電圧から電動機3が発生できる制動力の過不足を判定(S5での判定)した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば電動機3に流れている電流から制動力を確保できるか否かを判定してもよい。また、マスタシリンダ2内で発生している液圧から制動力を確保できるか否かを判定してもよい。また、電動機3により作動させたマスタシリンダ2内のピストンの位置から制動力を確保できるか否かを判定してもよい。また、車両の移動(ないし停車)を検出することにより、制動力を確保できるか否かを判定してもよい。また、車両が減速していないことを検出して制動力を確保できるか否かを判定してもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態では、ストロークセンサ4が検出したブレーキペダルのストローク量から必要な制動力F1を算出(S5での判定)した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば車両に搭載された他の外部ユニットからの制動要求から要求される制動力により必要な制動力F1を算出してもよい。また、車両が位置している道路の状態を検出して要求される制動力を算出してもよい。
【0062】
また、上述した実施の形態では、主電源5の電圧V1が閾値Vb以上となった場合(S8で「YES」)に、電動機3への電力供給を主電源5に切換えた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1スイッチ素子14がOFF(非接続状態)で、第2スイッチ素子がON(接続状態)の場合(
図2の状態)において、主電源5の電圧が閾値Vb以上となり、かつ補助電源10の電力の残量が所定値以下となった場合に、電動機3への電力供給を主電源5へ切換えてもよい。
【0063】
次に、上記の実施形態に含まれる発明について記載する。即ち、本発明によれば、前記第3の状態において、前記第1の蓄電装置から供給される電力により前記電動機が出力する制動力が、前記制動要求信号に基づく必要な制動力に対して不足するときに、前記電動機は前記第2の蓄電装置から電力の供給を受けることを特徴としている。これにより、電動機3への電力供給が不足するのを抑制することができ、ひいては必要な制動力を確保することができる。
【0064】
また、前記始動装置が停止するまでは、前記電動機は前記第2の蓄電装置から電力の供給を継続することを特徴としている。これにより、スタータモータ16のクランキングの電圧変動によって、電動機3へ電力を供給する電源を何度も切換えるのを抑制することができる。
【0065】
また、ブレーキペダルが踏まれているときは、前記電動機は前記第2の蓄電装置から電力の供給を継続することを特徴としている。これにより、電動機3への電源を切換えることによる電動機3の制御停止を抑制することができるので、ペダルフィーリングの段付きを抑制することができる。
【0066】
以上説明した実施態様に基づくブレーキ装置として、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
【0067】
第1の態様としては、制動要求信号に応じて制動力を出力する電動機と、前記電動機を制御する制御装置と、を備えたブレーキ装置であって、前記電動機および前記制御装置は、車両に搭載された内燃機関の始動装置に電力を供給する第1の蓄電装置と該第1の蓄電装置とは別の第2の蓄電装置とから電力が供給され、前記制御装置は、前記第1の蓄電装置と前記第2の蓄電装置との両方から電力の供給を受け、前記電動機は、前記第1の蓄電装置の電圧が第1の所定値以上のときに、前記第1の蓄電装置から電力の供給を受ける第1の状態と、前記始動装置が駆動しておらず、前記第1の蓄電装置の電圧が前記第1の所定値未満のときに、前記第2の蓄電装置から電力の供給を受ける第2の状態と、前記始動装置が駆動しており、前記第1の蓄電装置の電圧が前記第1の所定値未満のときに、前記第1の蓄電装置から電力の供給を受ける第3の状態と、を有する。
【0068】
第2の態様としては、第1の態様において、前記第3の状態において、前記第1の蓄電装置から供給される電力により前記電動機が出力する制動力が、前記制動要求信号に基づく必要な制動力に対して不足するときに、前記電動機は前記第2の蓄電装置から電力の供給を受ける。
【0069】
第3の態様としては、第2の態様において、前記始動装置が停止するまでは、前記電動機は前記第2の蓄電装置から電力の供給を継続する。
【0070】
第4の態様としては、第2乃至第3の態様において、ブレーキペダルが踏まれているときは、前記電動機は前記第2の蓄電装置から電力の供給を継続する。
【0071】
第5の態様としては、制動要求信号に応じて制動力を発生させる電動機と、前記電動機を制御する制御装置と、を備えたブレーキ装置であって、前記電動機および前記制御装置は、車両に搭載された内燃機関の始動装置に電力を供給する第1の蓄電装置と該第1の蓄電装置とは別の第2の蓄電装置とから電力が供給され、前記第2の蓄電装置からの電力供給は、前記第1の蓄電装置の電圧が第1の所定値未満になっているとき、前記電動機と前記制御装置とに電力を供給する第4の状態と、前記始動装置が駆動されていることを条件として、前記電動機に電力を供給せず、前記制御装置に電力を供給する第5の状態と、前記電動機と前記制御装置とに電力を供給しない第6の状態と、を有する。
【0072】
第6の態様としては、制動要求信号に応じて制動力を発生させる電動機と、前記電動機を制御する制御装置と、内燃機関を始動する始動装置と、前記始動装置に電力を供給する第1の蓄電装置と、該第1の蓄電装置とは別の第2の蓄電装置と、前記第1の蓄電装置と前記第2の蓄電装置とから、前記電動機と前記制御装置とへの電力供給を制御する電力供給制御部とを有する車両において、前記電力供給制御部は、前記第2の蓄電装置からの電力供給を、前記第1の蓄電装置の電圧が第1の所定値未満になっているとき、前記電動機と前記制御装置とに電力を供給する第4の状態と、前記始動装置が駆動されていることを条件として、前記電動機に電力を供給せず、前記制御装置に電力を供給する第5の状態と、前記電動機と前記制御装置とに電力を供給しない第6の状態と、に切換える。
【0073】
以上、本発明の幾つかの実施形態のみを説明したが、本発明の新規の教示や利点から実質的に外れることなく例示の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には容易に理解できるであろう。従って、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含むことを意図する。上記実施形態を任意に組み合わせても良い。
【0074】
本願は、2016年5月26日付出願の日本国特許出願第2016−105119号に基づく優先権を主張する。2016年5月26日付出願の日本国特許出願第2016−105119号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書を含む全開示内容は、参照により本願に全体として組み込まれる。