特許第6609447号(P6609447)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6609447
(24)【登録日】2019年11月1日
(45)【発行日】2019年11月20日
(54)【発明の名称】調湿装置およびそれを備えた筐体
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/06 20060101AFI20191111BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20191111BHJP
【FI】
   H05K5/06 A
   B01D53/26 210
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-190542(P2015-190542)
(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-69292(P2017-69292A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】592007601
【氏名又は名称】株式会社コンテック
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 輝男
(72)【発明者】
【氏名】長谷 日出樹
【審査官】 梅本 章子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−355514(JP,A)
【文献】 特開2008−277957(JP,A)
【文献】 特開平06−031130(JP,A)
【文献】 特開2010−207663(JP,A)
【文献】 特表2008−509809(JP,A)
【文献】 特開2003−011742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00 − 5/06
H05K 7/20
B01D 53/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面が開口されたケースと、
前記ケースの内に形成されて複数の屈曲部を備える溝部と、
前記溝部と接して配置される調湿剤としての調湿シートと、
前記溝部の一端と接する前記ケースの壁に形成される吸排気口と
を有し、
前記調湿シートは、前記溝部の全長の少なくとも一部を覆うように、前記ケースの底面と前記調湿シートとで前記溝部を挟む位置に、前記溝部の上に被せて配設され、
前記ケースに流入した気体が前記溝部内を前記調湿シートと接して流通し、前記吸排気口から前記ケース外に流出することを特徴とする調湿装置。
【請求項2】
前記溝部の深さと前記調湿シートの厚みを合わせた長さが、前記ケースの内部の深さと一致することを特徴とする請求項1に記載の調湿装置。
【請求項3】
開口された前記ケースの前記一面に設けられた蓋と、
前記蓋に形成された流入口と
をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の調湿装置。
【請求項4】
複数の壁から成って密閉構造の筐体であって、
1つの前記壁に設けられる内圧調節器と、
請求項1または請求項2に記載の調湿装置と
を有し、前記調湿装置が前記内圧調節器が設けられる前記壁の内面に開口された前記一面が合わさるように密着固定され、前記内圧調節器の一端が前記ケース内部に内包されることを特徴とする筐体。
【請求項5】
複数の壁から成って密閉構造の筐体であって、
1つの前記壁に設けられる内圧調節器と、
請求項記載の調湿装置と
を有し、前記内圧調節器が前記流入口を貫通して設けられることを特徴とする筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
筐体等の内部の湿度を調整する調湿装置およびそれを備えた筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器においては、防水等のために気密構造の筐体を備えるものがある。これらの機器は様々な環境で使用される場合があり、環境温度が変化すると筐体の内外で気圧差が発生する。このような気圧差は筐体の気密構造を破壊する原因となるため、一般的に気密構造の筐体には内圧調節器が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−123472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、内圧調節器は通常液体の水の浸入を防ぐことはできるが、気体である空気や水蒸気は流通され、筐体の内部に内圧調節器から水蒸気が侵入する場合がある。そして、筐体内に水蒸気が進入した状態で機器の周囲環境が低温になると、筐体内面で水蒸気が結露し、機器の動作不具合を引き起こすという問題点があった。
【0005】
本発明は、内圧調節器からの水蒸気の侵入を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態における調湿装置は、一面が開口されたケースと、前記ケースの内に形成されて複数の屈曲部を備える溝部と、前記溝部と接して配置される調湿剤としての調湿シートと、前記溝部の一端と接する前記ケースの壁に形成される吸排気口とを有し、前記調湿シートは、前記溝部の全長の少なくとも一部を覆うように、前記ケースの底面と前記調湿シートとで前記溝部を挟む位置に、前記溝部の上に被せて配設され、前記ケースに流入した気体が前記溝部内を前記調湿シートと接して流通し、前記吸排気口から前記ケース外に流出することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一実施形態における筐体は、複数の壁から成って密閉構造の筐体であって、1つの前記壁に設けられる内圧調節器と、前記調湿装置とを有し、前記調湿装置が前記内圧調節器が設けられる前記壁の内面に開口された前記一面が合わさるように密着固定され、前記内圧調節器の一端が前記ケース内部に内包されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一実施形態における筐体は、複数の壁から成って密閉構造の筐体であって、1つの前記壁に設けられる内圧調節器と、前記調湿装置とを有し、前記内圧調節器が流入口を貫通して設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、内圧調節器から流入する空気の流通経路と流通経路に設けられる調湿剤をケース内に設けることにより、内圧調節器から流入する空気に水蒸気が含まれる場合であっても、調湿剤が水蒸気を吸収するため、内圧調節器からの水蒸気の侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】調湿装置の一実施形態の構成を例示する3面図
図2】筐体に設置される調湿装置の構成を例示する斜視図
図3】調湿装置の一実施形態の構成を例示する3面図
図4】調湿装置を搭載する筐体の一実施形態の構成を例示する斜視図
図5】調湿装置を搭載する筐体の一実施形態の構成を例示する斜視図
図6】内圧調節器の構成を例示する図
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、図1図3を用いて調湿装置の一実施形態について説明する。
図1は調湿装置の一実施形態の構成を例示する3面図であり、筐体の壁に設置された状態を示し、平面図においては筐体の壁を省略している。図2は筐体に設置される調湿装置の構成を例示する斜視図であり、筐体の一部および調湿シートを透視して調湿装置を開示している。図3は調湿装置の一実施形態の構成を例示する3面図であり、平面図においては筐体の壁を省略している。なお以下において、用語「調湿」は「吸湿」「除湿」とも表記することがある。
【0012】
調湿装置1は、一面が開口された箱状のケース2と、ケース2の底面4上に形成される溝部3と、溝部3上に設けられる調湿シート5とから構成される。ケース2は底面4の他に底面4と接する側面6とから構成される。底面4が四角形の場合、側面6は底面4の各辺と接する4つの面から構成される。ケース2の一端領域は、内圧調節器12の配置領域に対応し、内圧調節器12から流入した空気を留めてケース2の外部に漏らさない空気溜り7を備えても良い。内圧調節器12から流入した空気は、空気溜り7を介してまたは内圧調節器12から直接に溝部3の一端にのみ流入できる構成である。溝部3の他端は、内圧調節器12の配置領域と溝部3を挟んで向かい合う1つの側面6aまたは側面6aと接する側面6の側面6aの近傍に形成される。溝部3の他端は、側面6aまたは側面6と接する位置に形成され、この位置の側面6aまたは側面6には、溝部3を流通した空気がケース2の外部に排出される吸排気口8が形成される。なお、筐体の内圧が外気圧より高い場合は、吸排気口8から調湿装置1に空気が流入し内圧調節器12を介して空気が筐体外に排出される。溝部3は全長が長くなるように複数個所で屈曲する。図では、15箇所で直角に屈曲し、ジグザクな溝部3が形成されているが、屈曲箇所の数は任意であり、屈曲の角度も直角に限らず、円弧状に屈曲しても良い。また、溝部3はジグザグに形成されることにも限定されず、任意の形状に屈曲する形状でも良い。ただし、空気の流通性の向上と溝部3を長くすることを両立するためには、直角に屈曲し、ジグザクな形状にすることが好ましい。また、溝部3は、ケース2の底面4に密着固定される2枚の板9により形成しても良い。溝部3の側部の形状が側部に形成された2枚の板9を隙間を空けてケース2の底面4に密着固定することにより、幅wが2枚の板9の隙間に相当し、深さh1が板9の厚さに相当する溝部3が形成される。調湿シート5は、溝部3の全長の少なくとも一部を覆うように、底面4と調湿シート5とで溝部3を挟む位置に配設される。調湿シート5は水蒸気を吸収するシートであり、溝部3を流通する空気が水蒸気を含んでいる場合、一定の割合で水蒸気を吸収し、空気の湿度を低減させる。
【0013】
調湿装置1は、筐体11に設けられた内圧調節器12が上述の内圧調節器12の配置領域に配置されるように、筐体11の壁10が調湿装置1の開口面を塞ぐように筐体の壁10に密着固定される。これにより、筐体11の壁10とケース2により溝部3および調湿シート5が密封される。図に示すように、壁10とケース2とで溝部3および調湿シート5を密封する構成でも良いが、壁10に相当する蓋(図示せず)があらかじめケース2の開口面に設けられた構成としても良い。蓋には内圧調節器12を密封状態ではめ込むことができる穴を設ける。あるいは、調湿装置1は、蓋にあらかじめ内圧調節器12を設ける構成とすることもできる。また、溝部3の深さh1と吸湿シート5の厚さh2は、h1とh2との合計がケース2の深さHと一致するようにすることが好ましい。
【0014】
このように、調湿装置1は、内圧調節器12から流入する空気を取り込んで吸排気口8から排出するケース2内に、内圧調節器12から吸排気口8に空気が流通する通路となる溝部3と、溝部3を覆うように配設される吸湿シート5とを備える。内圧調節器12から流入する空気は溝部3を流通し、溝部3上には吸湿シート5が配設されているため、空気が水蒸気を含む場合、溝部3内を流通する際に水蒸気が吸湿シート5に吸収されることにより、吸排気口8から流出する空気の湿度は低減され、内圧調節器からの水蒸気の侵入を抑制することができる。さらに、溝部3が屈曲することにより、溝部3の全長が長くなり空気が除湿シート5と接する時間が長くなるため、効率的に空気の湿度が低減され、内圧調節器からの水蒸気の侵入を抑制することができる。
【0015】
なお、上述のように溝部3の構成は任意であり、図1に示す調湿装置1では溝部3の形状に沿った外形の2枚の板9を用いて溝部3を構成したが、例えば、図3に示すように複数の板13により溝部3を構成しても良い。図3に示す調湿装置14の溝部15は、厚みh3が溝部15の深さに相当する板13を複数並べて、屈曲する溝形状が形成される。例えば、板13はケース2の幅Wより長さLが短く、ケース2の幅Wと板13の長さLが平行になるように複数配置され、隣り合う板13のケース2との隙間が互いに板13の逆側の端部に形成されるように配置される。このように板13を配置することにより、複数の屈曲部を備える溝部15が形成される。
【0016】
また、調湿装置および溝部の寸法は任意であるが、例えば、調湿装置1の場合、図1に示すように、ケース2は、長さ107mm、幅34mm、厚み8.5mmとし、溝部3は、幅wが4.0mm以上5.0mm以下、溝部分の間隔を5.0mmとすることができる。調湿装置14の場合、図3に示すように、ケース2は、長さ107mm、幅39mm、厚み7.5mmとし、溝部15は、板13の厚み2.0mm、長さLが31.5mm、隣接する板13の間隔が6mmとすることができる。また、ケース2や板9,板13の材質は任意であり、金属や樹脂とすることができる。また、調湿装置1および調湿装置14では、ケース2の底面4に溝部3を形成し、その上に吸湿シート5を被せた構成を示したが、吸湿シート5を底面4上に配置し、その上に溝部3を形成しても良い。溝部3と吸湿シート5とが接し、空気が吸湿シート5と接して流通すれば良い。また、吸湿シート5はベルサニー(登録商標)等の水分を吸収し、排出するものが好ましい。シリカゲルのように水分を吸収するだけのものに比べ、水分を吸収し、排出する吸湿シートの場合、筐体11の内部の湿度を一定に保つことができるため好ましい。吸湿シート5は、ポリアクリルレート繊維を高混合率含む基板をポリオレフィン繊維シートで挟んだ構成にすることができる。また、シート状の吸湿シート5に限らず、水分を吸収し、排出する吸湿剤を、空気を流通可能な状態で溝部3内に設置してもよい。例えば、粒状の吸湿剤を溝部3内に敷きつめても良い。この場合、溝部3の深さh1はケース2の深さHと一致することが好ましい。また、ケース2内に厚みがケース2の深さHと一致する吸湿シート5を設け、吸湿シート5に溝部3を形成しても良い。
【0017】
また、調湿装置1および調湿装置14は、機器等の筐体11に搭載されることに限定されず、筐体11の他、内圧調節器12を備える容器等にも搭載することができる。この場合、容器内に内圧調節器から水蒸気が侵入することを抑制することができる。
【0018】
次に、図1図6を用いて調湿装置を備える筐体の構成を説明する。
図4図5は調湿装置を搭載する筐体の一実施形態の構成を例示する斜視図であり、表裏2面から見た斜視図である。図6は内圧調節器の構成を例示する図である。
【0019】
筐体11は、電子回路や各種装置等を収納するもので、防水のために密閉構造となっている。例えば、図に示すように、筐体11は、各種機器を操作するタッチパネル19等に用いられる。筐体11は、筐体内外の気圧を調整する内圧調節器12を備える。内圧調節器12は筐体11に装着された状態で、筐体11の壁10の外側で外気が入出力する入出力口16と、筐体11内で外気が入出力する入出力口17とを備え、入出力口16と入出力口17とはフィルタ18を介してつながる構成である。フィルタ18は空気や水蒸気等の気体は通すが、水等の液体は通さない構成である。内圧調節器12は、筐体11の壁10を貫通して設けられ、外気圧が筐体内気圧より高い場合は筐体内部に空気を流入し、外気圧が筐体内気圧より低い場合は筐体内部から空気を排出する。内圧調節器12は、機器の使用状態において垂直面となる壁10に設けられることが好ましい。これにより、内圧調節器12に水滴が付着することが抑制される。
【0020】
筐体11は筐体内部に調湿装置1を備える。調湿装置1は内圧調節器12に連結して設けられ、内圧調節器12から流入する空気は、調湿装置1を介して筐体11内に流入する構成である。調湿装置1が蓋を有する密閉の箱型のケースからなる場合は、筐体11内の内圧調節器12に連結する任意の位置に調湿装置1は配置されるが、蓋を有さずにケースの一面が開口している場合は、開口部分を筐体11の壁10により塞ぐように、壁10に調湿装置1は配置される。
【0021】
このように、筐体11は、調湿装置1を備えることにより、内圧調節器12から流入する空気は溝部3を流通し、溝部3上には吸湿シート5が配設されているため、空気が水蒸気を含む場合、溝部3内を流通する際に水蒸気が吸湿シート5に吸収されることにより、吸排気口8から流出する空気の湿度は低減され、内圧調節器からの水蒸気の侵入を抑制することができる。
【0022】
なお、図4に示すように、筐体11は一体形状の密閉構造でも良いが、図5に示すように、本体部分と端子部分を分割し、それぞれを密閉構造とし、互いを高気密状態で接続する構成であってもよい。
【0023】
また、筐体11に装着する調湿装置として、調湿装置1を例に説明したが、調湿装置14等、様々な構成の溝部を備える調湿装置を装着することもできる。また、内圧調節器12から調湿装置に取り込まれる気体として空気を例に説明したが、空気に限らず様々な気体を流入させることができる。例えば、窒素ガスやヘリウムガス環境下で筐体11や調湿装置1,14を用いることもできる。
【符号の説明】
【0024】
1 調湿装置
2 ケース
3 溝部
4 底面
5 調湿シート
6 側面
6a 側面
7 空気溜り
8 吸排気口
9 板
10 壁
11 筐体
12 内圧調節器
13 板
14 調湿装置
15 溝部
16 入出力口
17 入出力口
18 フィルタ
19 タッチパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6