(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の透過型スクリーンおよび第2の透過型スクリーンと、それぞれの前記透過型スクリーンに中間像を形成する画像形成部と、投影部材に前記中間像を投影する投影部とを有し、前記投影部材の前方の虚像を、前記投影部材の後方から目視可能とされた車載用表示装置において、
共通の前記画像形成部で、前記第1の透過型スクリーンと前記第2の透過型スクリーンの双方に前記中間像が形成され、
前記第2の透過型スクリーンから前記投影部材までの光路よりも、前記第1の透過型スクリーンから前記投影部材までの光路が長く、
前記画像形成部から前記第1の透過型スクリーンに至る光路と、前記画像形成部から前記第2の透過型スクリーンに至る光路とがほぼ同じ長さであって、
前記画像形成部から前記第2の透過型スクリーンを経て前記投影部材に至る光路よりも、前記画像形成部から前記第1の透過型スクリーンを経て前記投影部材に至る光路が長く設定されており、
前記第1の透過型スクリーンに形成される中間像に基づく虚像が、前記第2の透過型スクリーンに形成される中間像に基づく虚像よりも前記投影部材から離れて位置することを特徴とする車載用表示装置。
前記画像形成部から前記第1の透過型スクリーンに至る光路上に配置された第1の反射ミラーと、前記画像形成部から前記第2の透過型スクリーンに至る光路上に配置された第2の反射ミラーとを有し、
前記第1の反射ミラーと前記第2の反射ミラーが、前記画像形成部で形成される画像形成範囲内における互いに異なる領域において、前記画像形成部に対向している請求項1記載の車載用表示装置。
前記画像形成部には、表示光を走査させる走査機構が設けられており、前記表示光が前記第1の反射ミラーを走査しているときに、前記第1の透過型スクリーンに中間像が形成され、前記表示光が前記第2の反射ミラーを走査しているときに、前記第2の透過型スクリーンに中間像が形成される請求項2記載の車載用表示装置。
前記画像形成部から前記第1の透過型スクリーンに至る光路上に位置する反射ミラーと、前記画像形成部から前記第2の透過型スクリーンに至る光路上に位置する反射ミラーの少なくとも一部が、凹面ミラーで形成されている請求項2または3記載の車載用表示装置。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ヘッドアップディスプレイとして使用される情報表示装置に関する発明が記載されている。
【0003】
この情報表示装置は、映像投射器の前方に2個の透過型のスクリーンが配置されており、映像投影器によってそれぞれのスクリーンに情報が結像される。それぞれのスクリーンからウインドシールドガラスである被画像形成部材までの距離がそれぞれ相違している。被画像形成部材によって各スクリーンに結像された像は被画像形成部材で反射されて視認者に向けられる。その結果、視認者には被画像形成部材よりも前方に形成される虚像が目視される。
【0004】
それぞれのスクリーンと被画像形成部材との距離が相違しているため、被画像形成部材から離れた位置にあるスクリーンに結像された像で、被画像形成部材の前方の離れた位置に虚像が形成され、被画像形成部材に接近した位置にあるスクリーンに結像された像で、被画像形成部材の前方の近い位置に虚像が形成される。
【0005】
このようにして、運転者である視認者は、ウインドシールドガラスである被画像形成部材の前方において、距離の異なる位置に形成されたそれぞれの虚像を観察することができるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の情報表示装置は、2個のスクリーンと被画像形成部材との距離を異ならせることで、被画像形成部材の前方の異なる位置に虚像を形成している。
【0008】
ここで、MEMSミラーなどを使用して表示光を走査する構造の映像投射器は、理論的には、映像投射器とスクリーンとの距離を変化させてもスクリーンに像を結像させることが可能である。しかし、実際には、映像投射器とスクリーンとの距離が変化すると、焦点ずれが発生し、像にボケが生じやすくなる。特に、MEMSミラーの走査の際の開き角度が大きくなる像の周辺部分でボケが顕著になる。特許文献1に記載の情報表示装置では、それぞれのスクリーンと被画像形成部材までの距離が相違しているため、被画像形成部材の前方に形成される複数の虚像のいずれかに焦点ボケが発生しやすい。
【0009】
特許文献1に記載の情報表示装置は、映像投影器とスクリーンとの距離の差を補正するために可変焦点レンズや投影レンズが使用されている。しかし、このようなレンズを設けると装置のコストが高くなる。また透過型のレンズは色収差を有しているため、複数の色相の表示光を使用すると、色収差により色ずれが発生するおそれがある。この色ずれも像の外周部分で顕著に表れやすくなる。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、透過型スクリーンとウインドシールドガラスなどの投影部材との距離を異ならせて、投影部材の前方における距離が相違する位置に虚像を形成するものにおいて、焦点ずれにより像のボケや色収差による色ずれが発生しずらい構造を採用した車載用表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1の透過型スクリーンおよび第2の透過型スクリーンと、それぞれの前記透過型スクリーンに中間像を形成する画像形成部と、投影部材に前記中間像を投影する投影部とを有し、前記投影部材の前方
の虚像を、前記投影部材の後方から目視可能とされた車載用表示装置において、
共通の前記画像形成部で、前記第1の透過型スクリーンと前記第2の透過型スクリーンの双方に前記中間像が形成され、
前記第2の透過型スクリーンから前記投影部材までの光路よりも、前記第1の透過型スクリーンから前記投影部材までの光路が長く、
前記画像形成部から前記第1の透過型スクリーンに至る光路と、前記画像形成部から前記第2の透過型スクリーンに至る光路とがほぼ同じ長さであって、
前記画像形成部から前記第2の透過型スクリーンを経て前記ハーフミラーに至る光路よりも、前記画像形成部から前記第1の透過型スクリーンを経て前記ハーフミラーに至る光路が長く設定されており、
前記第1の透過型スクリーンに形成される中間像に基づく虚像が、前記第2の透過型スクリーンに形成される中間像に基づく虚像よりも前記投影部材から離
れて位置
することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の車載用表示装置は、前記画像形成部から前記第1の透過型スクリーンに至る光路上に配置された第1の反射ミラーと、前記画像形成部から前記第2の透過型スクリーンに至る光路上に配置された第2の反射ミラーとを有し、
前記第1の反射ミラーと前記第2の反射ミラーが、前記画像形成部で形成される画像形成範囲内における互いに異なる領域において、前記画像形成部に対向しているものとして構成できる。
【0014】
本発明の車載用表示装置は、前記画像形成部には、表示光を走査させる走査機構が設けられており、前記表示光が前記第1の反射ミラーを走査しているときに、前記第1の透過型スクリーンに中間像が形成され、前記表示光が前記第2の反射ミラーを走査しているときに、前記第2の透過型スクリーンに中間像が形成されるものとして構成できる。
【0015】
本発明の車載用表示装置は、前記画像形成部から前記第1の透過型スクリーンに至る光路上に位置する反射ミラーと、前記画像形成部から前記第2の透過型スクリーンに至る光路上に位置する反射ミラーの少なくとも一部が、凹面ミラーで形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車載用表示装置は、第2の透過型スクリーンからウインドシールドなどの投影部材までの光路よりも、第1の透過型スクリーンから投影部材までの光路を長くすることで、第1の透過型スクリーンで形成される虚像を、第2の透過型スクリーンで形成される虚像よりも投影部材から前方へ離れた位置に結像できるようにしている。
【0017】
ただし、画像形成部から前記第2の透過型スクリーンを経て投影部材に至る光路よりも、画像形成部から前記第1の透過型スクリーンを経て前記投影部材に至る光路を長く設定することで、画像形成部から第1の透過型スクリーンに至る光路と、画像形成部から第2の透過型スクリーンに至る光路との差を小さくでき、好ましくは両光路をほぼ同じ長さにできるようにしている。
【0018】
その結果、第1の透過型スクリーンで形成される虚像と、第2の透過型スクリーンで形成される虚像の焦点ずれを解消でき、像のボケが発生するのを防止できるようにしている。
【0019】
また、画像形成部から第1の透過型スクリーンに至る光路上に配置された第1の反射ミラーと、画像形成部から第2の透過型スクリーンに至る光路上に配置された第2の反射ミラーとを、画像形成部で形成される画像形成範囲内における互いに異なる領域で、画像形成部に対向させることで、1つの画像形成部によって複数の虚像を形成できるようになる。特に、表示光を第1の反射ミラーと第2の反射ミラーとに走査させることで、1つの画像形成部で異なる虚像を形成できるようになる。
【0020】
また、反射ミラーとして凹面ミラーを使用することで、色収差の発生も防止できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に、本発明の実施の形態の車載用表示装置10が、車両の一例である自動車1に搭載された状態で示されている。
【0023】
自動車1は、ボンネット部2と天井部3との間にウインドシールドガラス4が装着されており、ウインドシールドガラス4で、車室空間5と、車両の前方の外部空間6とが仕切られている。ウインドシールドガラス4は湾曲しており、車室空間5にウインドシールドガラス4の凹面が向けられ、前方の外部空間6にウインドシールドガラス4の凸面が向けられている。ウインドシールドガラス4が凹曲面を有する投影部材あるいはハーフミラーとして機能する。
【0024】
ただし、本発明では、ウインドシールドガラス4が投影部材として機能するのではなく、ウインドシールドガラス4よりも車室内側に、コンバイナと称される湾曲した投影部材が別途に配置されていてもよい。
【0025】
車室空間5には運転席7が設けられ、その前方にステアリングホイール8が設けられている。車室空間5の前方にダッシュボード9が設けられており、このダッシュボード9の内部に、本発明の実施の形態の車載用表示装置10が埋め込まれて設けられている。車載用表示装置10は、いわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置である。
【0026】
図2には、車載用表示装置10とウインドシールドガラス4の一部が示されている。
図3と
図4には、車載用表示装置10の構成部材がさらに詳しく示されている。
図3は車載用表示装置10の構成部材を示す斜視図であり、
図4は、
図3に示す構成部材をIV矢視方向から見た側面図である。
【0027】
図3と
図4に示すように、車載用表示装置10に画像形成部11が設けられている。画像形成部11はMEMSミラーと光源を有している。MEMSミラーは、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)構成であり、可動ミラーと、この可動ミラーをX方向とY方向へ向けて回動させる走査機構とを有している。また、表示光としてR(赤)の可視光レーザを発する光源と、G(緑)とB(青)のそれぞれの可視光レーザを発する光源が設けられている。各色のレーザを発する光源はスイッチング素子で切換えられて動作する。
【0028】
また、画像形成部11として、周知のDLP(Digital Light Processing)プロジェクタが使用されてもよい。
【0029】
画像形成部11よりもZ1側(車室空間5側)に第1の反射ミラー12と第2の反射ミラー13が配置されている。第1の反射ミラー12と第2の反射ミラー13は平面ミラーである。第1の反射ミラー12は第2の反射ミラー13よりも、画像形成部11から離れた位置にある。
【0030】
図4に示すように、第1の反射ミラー12は第2の反射ミラー13よりも、Y方向の上側に位置している。
図6は、
図4のVI−VI矢視図であり、第1の反射ミラー12と第2の反射ミラー13を、画像形成部11側から見ている。
図6に示すように、画像形成部11側からZ1方向を見たときに、第1の反射ミラー12が上側に位置し、第2の反射ミラー13が下側に位置しており、両反射ミラー12,13は上下方向においてわずかな寸法δだけ重複している。
【0031】
図6には、画像形成部11で形成される画像形成範囲Aが鎖線で囲まれて示されている。画像形成部11では、可視光レーザなどの表示光(表示ビーム)Lを画像形成範囲A内でZ1方向へ照射し、表示光LをX方向へ一列に走査し、走査列HをY方向へ少しずつ移動させる投影動作が行われる。
図6に示すように、第1の反射ミラー12の反射面と第2の反射ミラー13の反射面は、画像形成範囲A内において上下に別れた異なる領域で画像形成部11に対向している。
【0032】
そのため、画像形成範囲A内の上方領域において、表示光Lを可動ミラーで走査させた走査光S1は、第2の反射ミラー13で反射されることなく、第1の反射ミラー12に至って上向きに反射される。画像形成範囲A内の下方領域において、表示光Lを走査させた走査光S2は、第2の反射ミラー13で上向きに反射され、第1の反射ミラー12まで届くことがない。
【0033】
図2と
図3および
図4では、上方領域の走査光S1が実線で示されており、下方領域の走査光S2が破線で示されている。
【0034】
図3と
図4に示すように、第1の反射ミラー12で反射された走査光S1は、その上に位置する第3の反射ミラー14で反射されて、前方(Z2方向)へ向けられ、第2の反射ミラー13で反射された走査光S2は、その上に位置する第4の反射ミラー15で反射されて前方(Z2方向)へ送られる。
【0035】
図5(A)(B)に基づいて、第3の反射ミラー14についてさらに説明する。
図5(A)は、第3の反射ミラーとして平面ミラー14aを配置したときの問題点を示している。画像形成部11は、可動ミラーで表示光Lを反射させ、走査機構で可動ミラーをX方向とY方向へ回動させ、走査光S1により画像を生成するものであるため、走査光S1が走査範囲の中心から離れるにしたがって、平面ミラー14aへの走査光S1の入射開き角αが大きくなり、平面ミラー14aで反射される走査光S1の反射角β、すなわち後述する第1の透過型スクリーン16への走査光S1の入射角も大きくなる。その結果、表示画像はその表示領域の縁部に向かうにしたがって画像のボケや輝度ムラなどが発生しやすくなる。
【0036】
従来は、画像形成部11からウインドシールドガラス4(投影部材)までの光路のいずれかにフィールドレンズを配置し、前記入射開き角βを調整することで、画像のボケや輝度ムラの発生を抑制している。
【0037】
しかし、フィールドレンズを使用することは比較的高価な光学部品を増やすことになって製造コストが高くなる。さらには、フィールドレンズは、光の波長の相違により屈折率が変化することに起因する色収差を有しているため、表示画像の色ずれなどの問題が生じやすくなる。
【0038】
そこで、実施の形態の車載用表示装置10では、
図5(B)に示すように、第3の反射ミラー14を凹面ミラーとすることで、走査範囲の中心から離れた位置での走査光S1の反射方向の開き角度を低下させている。すなわち、第3の反射ミラー14は、その光矯正機能をフィールドレンズと同じに設定することで、反射ミラー14でフィールドレンズと同じ光矯正を行なえるようにしている。また、凹面ミラーはレンズのような色収差を持たないので、表示画像の色ずれも防止することができる。
【0039】
これは、第4の反射ミラー15においても同じであり、第4の反射ミラー15も凹面ミラーであることが好ましい。すなわち、2つの反射ミラー14と15のうちの少なくとも一方が凹面ミラーであることが好ましい。
【0040】
図3と
図4に示すように、第3の反射ミラー14の反射方向の前方に第1の透過型スクリーン16が配置され、第4の反射ミラー15の反射方向の前方に第2の透過型スクリーン17が配置されている。画像形成部11において表示光Lを走査することで形成される走査光のうち、画像形成範囲Aの上側の領域を走査する実線で示す走査光S1は、第1の反射ミラー12と第3の反射ミラー14で反射されて、第1の透過型スクリーン16に第1の中間像を結像する。画像形成範囲Aの下側の領域を走査する破線で示す走査光S2は、第2の反射ミラー13と第4の反射ミラー15で反射され、第2の透過型スクリーン17に第2の中間像を結像する。
【0041】
第1の中間像と第2の中間像は、画像形成部11に設けられて走査機構によって可動ミラーを動作させ、R,G,Bなどの各色相の光源をスイッチングすることで形成される。第1の中間像と第2の中間像によって、数字、文字、記号、など各種の映像が表現される。
【0042】
図2と
図3に示すように、第1の透過型スクリーン16と第2の透過型スクリーン17のZ2方向の前方に投影ミラー(投影部)18が設けられている。投影ミラー18は凹面ミラーである。第1の透過型スクリーン16を透過した第1の中間像を含む第1の透過光Saが、投影ミラー18で反射されて集光され、反射後の第1の投影光Sv1がウインドシールドガラス4の車室空間5側の内面に照射される。同様に、第2の透過型スクリーン17を透過した第2の中間像を含む第2の透過光Sbが、投影ミラー18で反射されて集光され、反射後の第2の投影光Sv2がウインドシールドガラス4の車室空間5側の内面に照射される。
【0043】
図2と
図3に示すように、第1の透過型スクリーン16から投影ミラー18までの光路は、第2の投影型スクリーン17から投影ミラー18までの光路よりも長くなっており、その結果、第1の透過型スクリーン16からウインドシールドガラス(投影部材)4までの光路は、第2の透過型スクリーン17からウインドシールドガラス4までの光路よりも長くなっている。
【0044】
さらに、画像形成部11から第1の反射ミラー12と第3の反射ミラー14および第1の透過型スクリーン16を経て投影ミラー18に至る光路が、画像形成部11から第2の反射ミラー13と第4の反射ミラー15および第2の透過型スクリーン17を経て投影ミラー18に至る光路よりも長くなっている。すなわち、画像形成部11から第1の透過型スクリーン16を経てウインドシールドガラス4に至る光路が、画像形成部11から第2の透過型スクリーン17を経てウインドシールドガラス4に至る光路よりも長くなっている。
【0045】
その結果、画像形成部11から第1の反射ミラー12と第3の反射ミラー14を経て第1の透過型スクリーン16に至るまでの光路と、画像形成部11から第2の反射ミラー13と第4の反射ミラー15を経て第2の透過型スクリーン17に至る光路の差を小さくでき、この2つの光路をほぼ同じ長さに設定することが可能になる。
【0046】
特に、実施の形態の車載用表示装置10では、
図3と
図4および
図6に示すように、第1の反射ミラー12と第2の反射ミラー13を、画像形成部11で形成される画像形成範囲A内における互いに異なる領域において画像形成部11に対向配置させ、また、第1の反射ミラー12で反射された走査光S1と第2の反射ミラー13で反射された走査光S2とが干渉しないように、第3の反射ミラー14と第4の反射ミラー15とをそれぞれ第1の反射ミラー12と第2の反射ミラー13とに対向配置させている。その上で、画像形成部11から第1の反射ミラー12と第3の反射ミラー14を経て第1の透過型スクリーン16に至るまでの光路と、画像形成部11から第2の反射ミラー13と第4の反射ミラー15を経て第2の透過型スクリーン17に至る光路が同じ長さになるように第1乃至第4の反射ミラー12,13,14,15の配置位置を決定している。
【0047】
車載用表示装置10による表示動作は以下の通りである。
図6に示すように、画像形成部11では表示光LがX方向に走査され、その走査列HがY方向へ順に移動し、その間で光源をスイッチングすることで、画像形成範囲A内で画像を形成することが可能になる。
【0048】
図4と
図6に示すように、画像形成範囲Aの上側の領域を走査する走査光S1は、第1の反射ミラー12を走査し、さらに第3の反射ミラー14で反射されて第1の透過型スクリーン16に第1の中間像が生成される。画像形成範囲Aの下側の領域を走査する走査光S2は、第2の反射ミラー13を走査し、さらに第4の反射ミラー15で反射されて第2の透過型スクリーン17に第2の中間像が生成される。
【0049】
第1の透過型スクリーン16を透過した透過光Saは、投影ミラー18で反射され集光されその投影光Sv1がウインドシールドガラス4の内面に向けられる。同様に、第2の透過型スクリーン17を透過した透過光Sbは、投影ミラー18で反射され集光されその投影光Sv2がウインドシールドガラス4の内面に向けられる。
【0050】
ウインドシールドガラス4は湾曲した投影部材として機能し、投影ミラー18で集光された投影光Sv1,Sv2は、ウインドシールドガラス4の内面で反射されて、投影光Sv1,Sv2の反射成分が運転席7に着席している視認者(運転者)20の眼20aに向けられる。その結果、眼20aでウインドシールドガラス4の前方の外部空間6に形成(結像)される虚像21,22を目視することが可能になる。
【0051】
第1の透過型スクリーン16からウインドシールドガラス4までの光路は、第2の透過型スクリーン17からウインドシールドガラス4までの光路よりも長いため、第1の投影型スクリーン16に形成される第1の中間像は、ウインドシールドガラス4の前方に離れた位置の遠方虚像21として結像する。第2の透過型スクリーン17に形成される第2の中間像は、ウインドシールドガラス4の前方において、遠方虚像21よりも手前側の近方虚像22として結像される。
【0052】
視認者(運転者)20は、ウインドシールドガラス4の前方において距離を異ならせて結像する遠方虚像21と近方虚像22を目視することで、異なる位置の異なる情報を認識することが可能になる。例えば遠方虚像21として、重要度の高い走行情報や車両情報が表示され、近方虚像22として比較的重要度の低い走行情報や車両情報が表示される。
【0053】
この車載用表示装置10では、画像形成部11の走査光によって画像形成範囲Aに画像が形成されるが、
図4と
図6に示すように、走査光による画像形成範囲Aに対して、第1の反射ミラー12と第2の反射ミラー13が異なる領域を占めて、第1の反射ミラー12と第2の反射ミラー13が画像形成部11に対向している。そのため、画像形成部11により、画像形成範囲A内で表示光を走査させると、一部の走査光S1で第1の中間像を形成して遠方虚像21を結像させることができ、他の走査光S2で第2の中間像を形成して近方虚像22を結像させることができる。
【0054】
このように、1つ画像形成部11において表示光LでX方向とY方向の2方向の一連の走査を行い、光源をスイッチングすることで、遠方虚像21と近方虚像22の双方を形成することができる。
【0055】
特に、第1の反射ミラー12と第2の反射ミラー13を画像形成部11側から見たときに、両反射ミラー12,13は上下方向に離れておらずわずかな寸法δだけ重複しているため、画像形成範囲A内で表示光を走査させるときに無駄な走査領域が生じない。よって、遠方虚像21と近方虚像22を時間的な間隔を空けずに結像させることができる。なお、上記重複寸法δは設計上ゼロであっても良い。
【0056】
また、
図4に示すように、第1の透過型スクリーン16からウインドシールドガラス4までの光路を、第2の透過型スクリーン17からウインドシールドガラス4までの光路よりも長くし、さらに画像形成部11から第1の透過型スクリーン16を経てウインドシールドガラス4に至る光路を、画像形成部11から第2の透過型スクリーン17を経てウインドシールドガラス4に至る光路よりも長くすることで、画像形成部11から第1の透過型スクリーン16に至る光路と、画像形成部11から第2の透過型スクリーン17に至るまでの距離の差を無くし、2つの光路を同じ長さに設定している。
【0057】
その結果、可変焦点レンズなどの高価な光学部品を用いることなく、画像形成部11によって第1の透過型スクリーン16に形成される第1の中間像と、画像形成部11によって第2の透過型スクリーン17に形成される第2の中間像の結像焦点の距離をほぼ同じにでき、第1の中間像と第2の中間像を、焦点ボケがなく鮮明に形成することが可能になる。
【0058】
なお、前記実施の形態では、第1の透過型スクリーン16と第2の透過型スクリーン17が設けられて、遠方虚像21と近方虚像22の2つの虚像が形成されるが、本発明はさらに第3の透過型スクリーンが設けられて、ウインドシールドガラス4の前方の異なる箇所に3種類の虚像が形成されてもよい。この場合には、
図6に示す画像形成範囲A内に3個の反射ミラーが位置し、3個の反射ミラーが画像形成部11に対向するように構成する。