(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記摺接部の前記摺接面積は、前記回転方向上流側から前記回転方向下流側に向かって徐々に大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブラシ装置。
前記摺接部の前記コンミテータとの摺接面は、前記回転方向両端から前記中央に向かうに従って凹むように形成されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のブラシ装置。
前記ブラシホルダの内側面には、前記摺接部における前記回転方向最外側に対応する位置に、溝部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のブラシ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の特許文献1のように、単純にブラシの形状を菱形状とすると、レイアウトの都合上、ブラシのピグテールとの接続箇所が角部(稜線部)となってしまう。このため、ブラシとピグテールとの接続強度が確保しにくくなると共に、ブラシへのピグテールの接続作業も煩わしくなるという課題がある。
【0007】
また、アーマチュア(コンミテータ)が回転することによって任意のセグメントからブラシが離間するとき、最終的にブラシの角部(稜線部)が任意のセグメントから離間することになる。つまり、任意のセグメントからブラシが離間する際のセグメントに対するブラシの接触面積が小さい。このため、電流密度が増大して火花放電が大きくなってしまうという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ブラシとピグテールとの接続強度を確保できると共に、ブラシへのピグテールの接続作業を容易化でき、さらに、ブラシの火花放電も減少できるブラシ装置および電動モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係るブラシ装置は、コイルが接続されているコンミテータに摺接し、該コンミテータを介して前記コイルに給電を行うためのブラシと、前記ブラシを保持するブラシホルダと、を備え、前記ブラシは、外部電源に電気的に接続されるピグテールが接続される本体部と、前記コンミテータに摺接する摺接部と、が一体化されており、前記本体部は、直方体状に形成された平坦面に前記ピグテールが接続されており、前記摺接部は、前記コンミテータの回転方向上流側の該コンミテータとの摺接面積に対し、前記コンミテータの回転方向下流側の該コンミテータとの摺接面積が大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
このように構成することで、ブラシの平坦面にピグテールを接続することができるので、ブラシとピグテールとの接続強度を確保できると共に、ブラシへのピグテールの接続作業を容易化できる。
また、コンミテータの任意のセグメントにブラシが接触し始める際のセグメントに対するブラシの接触面積を小さくできる。一方、任意のセグメントからブラシが離間する際のセグメントに対するブラシの接触面積を大きくできる。このため、この任意のセグメントへのブラシの接触し始めにおけるブラシの抵抗値を大きくできる。さらに、任意のセグメントからブラシが離間する直前におけるブラシの抵抗値を小さくできる。この結果、セグメントに供給される電流値を、急激に上昇することなく緩やかな上昇とさせることができる。これに加え、任意のセグメントからブラシが離間する直前におけるブラシの電流密度を小さくできる。よって、ブラシの火花放電を減少させることができる。
【0011】
本発明に係るブラシ装置は、前記摺接部における前記回転方向下流側の前記コンミテータとの摺接面積が最大となるように設定されていることを特徴とする。
【0012】
このように構成することで、任意のセグメントからブラシが離間する直前におけるブラシの抵抗値を最大限小さくできる。このため、ブラシの火花放電を確実に減少させることができる。
【0013】
本発明に係るブラシ装置において、前記摺接部の前記摺接面積は、前記回転方向上流側から前記回転方向下流側に向かって徐々に大きくなるように設定されていることを特徴とする。
【0014】
このように構成することで、セグメントに供給される電流値の上昇率を安定させることができる。このため、モータ性能を安定させることができる。
【0015】
本発明に係るブラシ装置において、前記コンミテータは、一方向と他方向との両方向に回転させて使用するものであり、前記摺接部は、前記コンミテータの回転方向両端から中央に向かうに従って前記コンミテータとの摺接面積が大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【0016】
このように構成することで、両方向の回転で使用されるモータにおいて、ブラシとピグテールとの接続強度を確保できると共に、ブラシへのピグテールの接続作業を容易化でき、さらに、ブラシの火花放電も減少できる。
【0017】
本発明に係るブラシ装置において、前記摺接部の前記コンミテータとの摺接面は、前記回転方向両端と前記中央とに頂点を持つ三角形状であり、前記摺接部の底面は、前記本体部の前記ピグテールが接続される前記平坦面と同一平面上に配置されていることを特徴とする。
【0018】
このように構成することで、ブラシの製造を容易化でき、ブラシの製造コストを低減できる。
【0019】
本発明に係るブラシ装置において、前記摺接部の前記コンミテータとの摺接面は、前記回転方向両端から前記中央に向かうに従って凹むように形成されていることを特徴とすることを特徴とする。
【0020】
このように構成することで、コンミテータを回転させた際、この回転方向の下流側に向かってブラシを傾倒させやすくすることができる。よって、コンミテータにブラシの角部が引っ掛かる等してコンミテータの回転を阻害してしまうようなことがなく、コンミテータとブラシとの接触を滑らかにすることができる。
【0021】
本発明に係るブラシ装置において、前記ブラシホルダの内側面には、前記摺接部における前記回転方向最外側に対応する位置に、溝部が形成されていることを特徴とする。
【0022】
このように構成することで、溝部の深さによってブラシホルダに対するブラシの傾倒角度を調整することが可能になる。つまり、溝部の深さを深く設定すれば、ブラシホルダに対するブラシの傾倒角度を大きくすることができ、溝部の深さを浅く設定すれば、ブラシホルダに対するブラシの傾倒角度を小さくすることができる。このため、ブラシホルダに対するブラシの傾倒角度を、所望の角度に設定することが可能になる。
【0023】
本発明に係る電動モータは、上記に記載のブラシ装置と、前記コンミテータに接続されている前記コイルが巻回されているアーマチュアコアと、前記アーマチュアコアの周囲を取り囲むように形成されており、内周面に磁極が設けられているヨークと、を備えたことを特徴とする。
【0024】
このように構成することで、ブラシとピグテールとの接続強度を確保できると共に、ブラシへのピグテールの接続作業を容易化でき、さらに、ブラシの火花放電も減少できる電動モータを提供可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ブラシの平坦面にピグテールを接続することができるので、ブラシとピグテールとの接続強度を確保できると共に、ブラシへのピグテールの接続作業を容易化できる。
また、コンミテータの任意のセグメントにブラシが接触し始める際のセグメントに対するブラシの接触面積を小さくできる。一方、任意のセグメントからブラシが離間する際のセグメントに対するブラシの接触面積を大きくできる。このため、この任意のセグメントへのブラシの接触し始めにおけるブラシの抵抗値を大きくできる。さらに、任意のセグメントからブラシが離間する直前におけるブラシの抵抗値を小さくできる。この結果、セグメントに供給される電流値を、急激に上昇することなく緩やかな上昇とさせることができる。これに加え、任意のセグメントからブラシが離間する直前におけるブラシの電流密度を小さくできる。よって、ブラシの火花放電を減少させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
(減速機付モータ装置)
図1は、本発明に係る電動モータ40を備えた減速機付モータ装置1の部分断面図である。
同図に示すように、減速機付モータ装置1は、例えば車両のシートを昇降させたり、前後方向にスライド移動させたりするためや、車両のウインドウを開閉させるために用いられる。減速機付モータ装置1は、主に減速機付モータ装置1の一方側(
図1における左側)に配置された電動モータ40と、他方側(
図1における右側)に配置され電動モータ40に連結された減速機構30と、減速機構30を収納するギヤケース10と、を備えている。
【0029】
(電動モータ)
電動モータ40は、いわゆるブラシ付きモータであって、有底筒状のヨーク41と、ヨーク41内に回転自在に支持されているアーマチュア43と、ヨーク41内に収納されアーマチュア43に給電を行うためのブラシ装置90と、を備えている。
なお、以下の説明では、特に限定がない限り、アーマチュア43の回転軸方向を単に軸方向、アーマチュア43の軸方向に直交する径方向を単に径方向、アーマチュア43の回転方向を周方向と称して説明する。
【0030】
ヨーク41は、鉄等の金属からなる部材であり、例えば深絞りによるプレス加工等により成型される。ヨーク41は、その開口部41aが減速機構30側を向くように取り付けられている。ヨーク41の開口部41aの外周縁には、フランジ部41bが形成されている。このフランジ部41bが、ボルト85によってギヤケース10に締結固定されている。
【0031】
ヨーク41の内周面41cには、複数のマグネット42が周方向に磁極が順番となるように配置されて接着剤等により固定されている。ヨーク41の底部には、一方側に突出したボス部48が一体成形されている。ボス部48の内側には、モータシャフト44の一端を回転自在に支持するためのすべり軸受45aが嵌合されている。
さらに、ヨーク41のボス部48の底部には、スラストプレート46が設けられている。スラストプレート46は、スチールボール46aを介してモータシャフト44のスラスト荷重を受けている。スチールボール46aは、モータシャフト44とスラストプレート46との間の摺動抵抗を減少すると共にモータシャフト44の芯ズレを吸収し、モータシャフト44のスラスト荷重をスラストプレート46に確実に伝達するためのものである。
【0032】
(アーマチュア)
アーマチュア43は、回転軸としてのモータシャフト44と、モータシャフト44に外挿固定されるアーマチュアコア43aと、モータシャフト44に外挿固定されアーマチュアコア43aよりも減速機構30側に配置されたコンミテータ47と、を有している。
モータシャフト44は鉄等の金属からなる棒状部材である。モータシャフト44の減速機構30側端部は、ギヤケース10に設けられた不図示の軸受に回転自在に支持されている。
【0033】
アーマチュアコア43aは、例えば電磁鋼板等の磁性材を複数枚積層して形成された部材である。アーマチュアコア43aは、マグネット42に対向する位置に配置される。アーマチュアコア43aには、このアーマチュアコア43aに装着された絶縁性のインシュレータ49の上からコイル50が巻回されている。このコイル50の各端末部がコンミテータ47の後述する複数のセグメント52のそれぞれに電気的に接続されている。
【0034】
コンミテータ47は、樹脂により略円柱状に形成されたコンミテータ本体51(
図4参照)と、コンミテータ本体51の外周面に周方向に沿って並んで配置された複数のセグメント52と、により構成されている。
複数のセグメント52は、金属板により軸方向に長く形成されたものであって、所定の隙間をあけて周方向に等間隔に配置されており、互いに絶縁されている。各セグメント52のアーマチュアコア43a側端には、それぞれ外径側に折り返すようにライザ54が一体成形されている。このライザ54にコイル50の末端部が掛け回され、ヒュージング等により電気的に固定される。これにより、各セグメント52とコイル50とが接続される。このように、構成されたセグメント52に、ブラシ装置90を構成するブラシ91が摺接される。
【0035】
(第1実施形態)
(ブラシ装置)
図2は、ブラシ91およびブラシホルダ92の斜視図である。
図1、
図2に示すように、ブラシ装置90は、複数(本実施形態では2つ)のブラシ91の他に、このブラシ91が収納される複数(本実施形態では2つ)のブラシホルダ92と、ブラシホルダ92を支持するホルダステー93と、を有している。ホルダステー93は、樹脂によりヨーク41の開口部41aの内周形状に対応するように、略有底筒状に形成されている。そして、ホルダステー93は、開口部93aをヨーク41側に向けた状態で、周壁93bがヨーク41の開口部41aの内周面に嵌合された形で配置されている。この結果、ホルダステー93の周壁93bが、コンミテータ47の周囲を取り囲んだ状態になる。
【0036】
また、ホルダステー93の底壁93cには、径方向中央の大部分に開口部93dが形成されている。この開口部93dは、モータシャフト44の減速機構30側端部を挿通可能とすると共に、ホルダステー93とコンミテータ47との接触を回避可能とする。
さらに、ホルダステー93の底壁93cに、ブラシホルダ92が設けられている。ブラシホルダ92は、樹脂により略四角筒状に形成されており、開口方向がホルダステー93(コンミテータ47)の径方向に沿うように配置されている。
【0037】
図3は、複数のブラシ91の1つを径方向内側からみた平面図、
図4は、
図3のA矢視図である。複数のブラシ91は同一形状に形成されているので、以下、この1つのブラシ91について説明する。
図2〜
図4に示すように、ブラシ91は、ブラシホルダ92内にこのブラシホルダ92の開口方向に沿ってスライド移動自在に収納されている。ブラシ91は、導電性の金属により形成されたものであって、略四角柱状の本体部94と、本体部94の径方向内側(コンミテータ47側)に一体成形され先端面がセグメント52に摺接する摺接部95と、により構成されている。
【0038】
本体部94の摺接部95と反対側端は、円弧状に切除されて円弧面94aとされている。また、本体部94には、軸方向アーマチュアコア43a側の平坦面94bにピグテール96の一端が接続されている。この一端は、本体部94の平坦面94bのうち、円弧面94aの曲率半径のほぼ中心に位置している。ピグテール96の他端は、ブラシホルダ92に配設された不図示のターミナル部材に電気的に接続され、さらに、ギヤケース10に設けられた後述のコネクタ部70を介して外部電源に電気的に接続される。
【0039】
一方、摺接部95は、軸方向に沿う断面が略菱形状となるように形成されている。より具体的には、摺接部95は、先端面であるセグメント52との摺接面97の面積が、周方向両端から周方向中央C1に向かうに従って徐々に大きくなるように形成されている。そして、摺接部95の4つの稜線部95a,95b,95c,95dのうち、軸方向両端の稜線部95a,95bは、摺接部95の周方向略中央C1に位置している。また、周方向両端の稜線部95c,95dは、摺接部95の軸方向略中央に位置している。
【0040】
さらに、
図4に詳示するように、摺接部95の摺接面97は、周方向両端から周方向中央C1に向かって徐々に凹み深さが深くなるように、円弧状に凹み形成されている。また、摺接面97の円弧は、コンミテータ本体51とほぼ同心円上に位置している。
【0041】
このような構成のもと、
図2に詳示するように、ブラシ91は、トーションばね(ブラシスプリング)98によって円弧面94aが弾性的に押圧され、コンミテータ47側に向かって付勢されている。トーションばね98は、ホルダステー93の底壁93cにおけるブラシホルダ92の近傍に立設された支持ピン99に支持されている。
【0042】
ブラシホルダ92には、トーションばね98に対応する位置に、このトーションばね98によるブラシ91の付勢を許容する切欠き部92aが径方向に長くなるように形成されている。また、ブラシホルダ92には、ピグテール96を挿通可能な切り欠き部92bが径方向に長くなるように形成されている。この切欠き部92bによって、ブラシホルダ92内でのブラシ91のスライド移動が許容される。
【0043】
さらに、ブラシホルダ92の内側面92cには、ブラシ91の摺接部95における周方向両端の稜線部95c,95dに対応する位置に、ブラシホルダ92の開口方向に沿って溝部92dが形成されている。これら溝部92dは、ブラシホルダ92を樹脂成形する際のヒケによるブラシホルダ92の変形を抑制する役割を有している。また、溝部92dは、ブラシホルダ92に対するブラシ91の傾倒角度を調整(規制)する役割を有している。この傾倒角度の調整の役割についての詳細は、後述する。
【0044】
(減速機構)
図1に戻り、ギヤケース10内に収納されている減速機構30は、電動モータ40のモータシャフト44と一体的に構成され、このモータシャフト44と同軸上で回転する不図示のウォームと、このウォームと噛み合うウォームホイール33と、このウォームホイール33と噛み合う出力ホイール35と、により構成されている。
不図示のウォーム、ウォームホイール33および出力ホイール35は、樹脂や金属等からなる部材であり、インジェクション成型や焼結、機械加工等により形成される。
【0045】
ウォームホイール33は、大径ギヤ33aと、小径ギヤ33bと、を有している。大径ギヤ33aと小径ギヤ33bは同芯に配置されている。そして、大径ギヤ33aは不図示のウォームと噛合し、小径ギヤ33bは出力ホイール35の出力ギヤ35aと噛合している。また、ウォームホイール33は、ウォームホイール軸34により軸支されている。ウォームホイール軸34は、ギヤケース10に回転自在に支持されている。
【0046】
出力ホイール35は、出力ギヤ35aを有している。出力ギヤ35aは、出力ホイール35の外周に形成されており、ウォームホイール33の小径ギヤ33bと噛合されている。
出力ホイール35の略中央には、外部に回転トルクを出力する出力取出部35bが形成されている。出力取出部35bは、出力ホイール35の表裏を貫通する孔となって形成されており、不図示の出力軸が挿通される。出力取出部35bの内周面には、周方向に沿って係合部35cが形成されており、出力軸に形成される凹凸部と係合可能となっている。これにより、出力軸と出力取出部35bとの相対回転が規制されるので、出力軸から回転トルクを出力することができる。
【0047】
ギヤケース10は、例えば樹脂等からなる部材であり、インジェクション成型等により形成される。ギヤケース10は、電動モータ40側(
図1における左側)に形成されたモータ取付部11と、このモータ取付部11の電動モータ40とは反対側に形成された減速機構収納部13と、により構成されている。
【0048】
モータ取付部11は、電動モータ40側が開口されており、この開口と減速機構収納部13とは、モータシャフト44が挿通される貫通孔(不図示)を介して連通している。そして、開口側から貫通孔にモータシャフト44を挿通しつつ、ボルト85を用いてモータ取付部11にヨーク41を固定する。これにより、ギヤケース10に、電動モータ40が取り付けられる。また、モータ取付部11には、外部電源から延びる不図示の外部コネクタが嵌着可能なコネクタ部70が一体成形されている。また、コネクタ部70の内側には、ブラシ81から延びるピグテール96に電気的に接続されたターミナル部材の一端側が露出して、不図示のコネクタ端子を構成している。これにより、外部電源の電力がブラシ装置90を介して電動モータ40に供給される。
【0049】
減速機構収納部13は、収納壁部14で囲まれた領域に形成されている。減速機構収納部13は、ウォームを収容するウォーム収容部13aと、ウォームホイール33を収容するウォームホイール収容部13bと、出力ホイール35を収容する出力ホイール収容部13cと、を有している。
ウォーム収容部13aは、モータシャフト44が挿通される貫通孔の一部として構成され、減速機構収納部13の底面におけるウォームに対応した位置に臨むように形成される。ウォームホイール収容部13bおよび出力ホイール収容部13cは、収納壁部14をウォームホイール33および出力ホイール35の外形に沿わせることで形成される。
【0050】
ギヤケース10の外周部には、複数(本実施形態では5つ)のタッピングネジ18が締結される。タッピングネジ18は、ギヤケース10に取り付けられる不図示のカバーを固定するためのものである。
また、モータ取付部11と減速機構収納部13との間には、減速機付モータ装置1を車体等に固定するための取付孔19が形成されている。取付孔19に不図示のボルトを挿通し、このボルトを不図示の被固定部(例えば、車体)に締結することにより、減速機付モータ装置1を固定できる。取付孔19には、金属製のカラー19aが内嵌されており、ボルトを締結した際、ギヤケース10の取付孔19の座屈変形が防止される。
【0051】
(減速機付モータ装置の動作)
次に、減速機付モータ装置1の動作について説明する。
ギヤケース10に設けられたコネクタ部70に、不図示の外部電源から延びるコネクタを接続することにより、外部電源の電力が、ブラシ装置90(不図示のターミナル部材、ピグテール96およびブラシ91)を介して各セグメント52に供給される。さらに、セグメント52を介し、コイル50に電力が供給される。
【0052】
コイル50に電力が給電されると、アーマチュアコア43aに所定の磁界が発生する。この磁界とヨーク41のマグネット42との間に磁気的な吸引力や反発力が作用し、アーマチュア43が回転する。この回転によって、ブラシ91が摺接するセグメント52が順次変更されコイル50に流れる電流の向きが切り替えられる、いわゆる整流が行われる。これにより、アーマチュア43が継続的に回転する。本実施形態において、アーマチュア43は、一方向および他方向の両回転で使用される。
【0053】
ここで、
図5(a)、
図5(b)に基づいて、ブラシ91の挙動、およびブラシ91とセグメント52との摺接状態について、詳述する。
図5は、アーマチュア43(コンミテータ47)が回転した際のブラシ91の挙動を示し、(a)は、概略説明図、(b)は(a)のB矢視図である。
【0054】
ここで、ブラシ91は、ブラシホルダ92内にスライド移動自在に収納されているので、ブラシホルダ92の内側面92cとブラシ91との間には、僅かなクリアランスが設定されている。このため、
図5(a)に示すように、例えばコンミテータ47が一方向(
図5(a)における時計回り(矢印CW参照))に回転すると、このコンミテータ47とブラシ91との間に生じる摩擦によって、ブラシ91の摺接部95が一方向下流側に向かうように、ブラシ91が僅かに傾倒する。
【0055】
このため、初期摩耗後には、摺接部95の摺接面97において、実際にセグメント52に摺接する箇所は、
図5(b)に示すように、摺接部95の周方向一端の稜線部95cから摺接部95の軸方向両端の稜線部95a,95bに至る範囲E(
図5(b)における斜線部参照)となる。すなわち、摺接部95の摺接面97における摺接面積は、一方向上流側から下流側となる摺接部95の中央に向かって徐々に大きくなっている。
なお、初期摩耗後とは、電動モータ40の最初の駆動から所定時間経過後の摺接面97の摩耗状態をいう。初期摩耗後は、摺接面97の摩耗が極端に減り、ブラシ91の交換時期までは、上記の範囲Eの摺接状態を維持する。
【0056】
このことは、アーマチュア43(コンミテータ47)の回転方向が他方向(
図5(a)における反時計回り)になった場合も同様である。この場合、ブラシ91の摺接部95が他方向下流側に向かうように、ブラシ91が僅かに傾倒する。このため、摺接部95の摺接面97において、実際にセグメント52に摺接する箇所は、摺接部95の周方向他端の稜線部95dから摺接部95の軸方向両端の稜線部95a,95bに至る範囲となる。すなわち、摺接部95の摺接面97における摺接面積は、他方向上流側から下流側となる摺接部95の中央に向かって徐々に大きくなる。
【0057】
ここで、ブラシホルダ92に対するブラシ91の傾倒角度θ1(以下、単にブラシ91の傾倒角度θ1という)は、ブラシホルダ92に形成されている2つの溝部92dによって調整される。すなわち、例えば、ブラシホルダ92に溝部92dが形成されていない場合、
図5(a)に詳示するように、ブラシホルダ92の内側面92cの縁部92eに、摺接部95の稜線部95c,95dが当接することになる(
図5(a)における2点鎖線参照)。このような場合、ブラシ91の傾倒角度θ1が所望の角度を得られず、セグメント52に対する摺接部95の摺接状態が不十分になってしまう場合がある。
【0058】
しかしながら、ブラシホルダ92に溝部92dを形成することにより、ブラシ91の傾倒角度θ1を所望の角度に調整(規制)することができるので、セグメント52に対して摺接部95を十分摺接させることが可能になる。
なお、ブラシ91の傾倒角度θ1を所望の角度に調整するために、単純にブラシホルダ92の内側面92cとブラシ91との間のクリアランスを大きく設定してしまうと、ブラシホルダ92に対するブラシ91のガタが大きくなりすぎてしまう。このため、ブラシ91の姿勢が安定しなくなってしまう可能性がある。
【0059】
ところで、ブラシ91の摺接面97における摺接面積の大きさは、ブラシ91の電流密度の大きさに関係する。すなわち、摺接面積が小さければ、セグメント52とブラシ91との間の抵抗が大きくなる。このため、ブラシ91からセグメント52に電流が供給されにくくなり、ブラシ91の電流密度が大きくなる。これに対し、摺接面積が大きくなると、セグメント52とブラシ91との間の抵抗が小さくなる。このため、ブラシ91からセグメント52に電流が供給され易くなり、ブラシ91の電流密度が小さくなる。
【0060】
このように、上述の第1実施形態では、ブラシ91を、略四角柱状の本体部94と、セグメント52に摺接する摺接部95と、により構成している。そして、本体部94の平坦面94bにピグテール96の一端を接続しているので、ブラシ91とピグテール96との接続強度を確保できると共に、ブラシ91へのピグテール96の接続作業を容易化できる。
【0061】
一方、摺接部95は、軸方向に沿う断面が略菱形状となるように形成されている。このため、両方向で回転するアーマチュア43(コンミテータ47)の回転方向に関わらず、摺接部95の摺接面97における摺接面積を、回転方向上流側から下流側に向かって徐々に大きくなるように設定することができる。換言すれば、セグメント52にブラシ91が接触し始める際における摺接面97の摺接面積を小さくできる一方、セグメント52からブラシ91が離間する際における摺接面97の摺接面積を最大限大きくできる。この結果、セグメント52に供給される電流値を、急激に上昇することなく緩やかな上昇とさせることができる。これに加え、セグメント52からブラシ91が離間する際におけるブラシ91の電流密度を最大限小さくでき、ブラシ91の火花放電を確実に減少させることができる。
【0062】
また、摺接部95を菱形状とすることにより、回転方向上流側から下流側に向かう摺接面97の摺接面積が徐々に大きくなるので、摺接面積の増大率が安定する。すなわち、回転方向上流側から下流側に向かう途中において、摺接面97の摺接面積が急激に増大することがない。このため、セグメント52にブラシ91が摺接してからの電流値の上昇率を安定させることができる。よって、電動モータ40のモータ性能を安定させることができる。
【0063】
さらに、摺接面97は、周方向両端から周方向中央C1に向かって徐々に凹み深さが深くなるように、円弧状に凹み形成されている。
このように構成することで、摺接面97における回転方向両端と、セグメント52とが確実に接触すると、コンミテータ47が回転した際、この回転方向の下流側に向かってブラシ91が傾倒しやすくなる。このため、セグメント52と摺接部95との接触を滑らかにすることができる。
【0064】
また、ブラシ81の本体部94には、摺接部95と反対側端に円弧面94aが形成されている。このため、ブラシホルダ92に対してブラシ91が傾倒した場合であっても本体部94へのトーションばね98の押圧状態を安定させることができる。このため、ブラシ91を、常に一定の押圧力でコンミテータ47側に向かって付勢させることができる。
さらに、ブラシホルダ92には、ブラシ91の摺接部95における周方向両端の稜線部95c,95dに対応する位置に、ブラシホルダ92の開口方向に沿って溝部92dが形成されている。このため、ブラシ91の傾倒角度θ1を所望の角度に設定することができるので、セグメント52に対して摺接部95を十分摺接させることが可能になる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、
図6、
図7に基づいて、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する(以下の実施形態についても同様)。
図6は、第2実施形態におけるブラシホルダ292を径方向内側からみた平面図である。
図7は、アーマチュア43(コンミテータ47)が回転した際のブラシ91の挙動を示す概略構成図であって、前述の
図5(a)に対応している。
【0066】
図6、
図7に示すように、前述の第1実施形態と第2実施形態との相違点は、第1実施形態のブラシホルダ92と第2実施形態のブラシホルダ292との形状が異なる点にある。
より詳しくは、ブラシホルダ292の内側面292cには、ブラシ91の摺接部95における周方向両端の稜線部95c,95dに対応する位置を避けるように、ブラシホルダ92の開口方向に沿って溝部292dが4箇所形成されている。
【0067】
このように溝部292dを、ブラシ91の摺接部95における周方向両端の稜線部95c,95dに対応する位置を避けるように形成するのは、ブラシ91の傾倒角度θ1が所望の角度を得られている場合である。すなわち、溝部292dは、ブラシホルダ292を樹脂成形する際のヒケによるブラシホルダ292の変形を抑制する役割のみを有している。このように、第1実施形態のブラシホルダ92の溝部92dや第2実施形態のブラシホルダ292の溝部292dは、ブラシ91の所望の傾倒角度θ1に応じて溝深さを調整したり、溝部292d自体をブラシ91の稜線部95c,95dを避けた位置に形成したりする。これにより、ブラシ91の傾倒角度θ1を調整できる。
【0068】
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0069】
(その他実施形態)
次に、
図8〜
図13に基づいて、本発明のその他の実施形態について説明する。
図8〜
図13は、それぞれその他の実施形態におけるブラシ291〜791の斜視図である。
ここで、前述の第1実施形態におけるブラシ91と、その他の実施形態におけるブラシ291〜791との相違点は、第1実施形態におけるブラシ91の摺接部95の形状と、その他の実施形態におけるブラシ291〜791の摺接部295〜795の形状とが異なる点にある。
【0070】
その他の実施形態における摺接部295〜795のうち、摺接部295〜695(
図8〜
図12参照)は、各々摺接面297〜697の摺接面積が周方向両端から周方向中央C1(
図8〜
図12における一点鎖線参照)に向かって徐々に大きくなるように形成されている。そして、各摺接面297〜697は、周方向中央C1で摺接面積が最大となるように形成されている。なお、各摺接面297〜697は、前述の第1実施形態における摺接面97と同様に、円弧状に凹み形成されている。
【0071】
より具体的には、
図8に示すように、摺接部295の摺接面297は、周方向両端と周方向中央C1とに頂点を持つ三角形状に形成されている。そして、摺接部295の底面295aは、本体部94の平坦面94bと同一平面上に配置されている。
ここで、一般的に、ブラシは上下型によって磁性粉を所定形状に圧縮しながら形成するが、上下型の合わせ面(パーティングライン)を成形品となるブラシのアンダーカットとなる位置には設定できないため、合わせ面部位は必然的に限定された位置になってしまう。前述の第1実施形態のブラシ91を圧縮成形しようとすると、形状的に稜線部95c,95dをこの合わせ面に設定することになるが、形状的にこの稜線部95c,95dに所定量の磁性粉を位置させながら圧力を加えていくことが難しい(磁性粉が逃げてしまう)ため、成形後のブラシ91におけるこの稜線部位の強度が得難いという課題がある。しかしながら、本第2実施形態のブラシ291の場合、稜線部295b,295cが底面295aと同一面上にあるため、合わせ面をこの底面部295a上に設定することが可能となる。したがって、磁性粉を圧縮する際に、下型側に所定量の磁性粉を配置し、上型によって上側から圧力を加える際に、この稜線部295b,295cに磁性粉を位置させながら上から圧力を加えていくことが容易となる。よって、成形後のブラシ291におけるこの稜線部位の強度が得易くなるといった効果がある。 従って、このように構成することで、ブラシ291の製造も容易化でき、ブラシ291の製造コストを低減できる。
【0072】
図9に示すように、摺接部395の摺接面397は、平行四辺形状に形成されている。この平行四辺形状の4つの頂点のうち、互いに対角線上に位置する2つの頂点が、摺接部395の周方向中央C1に位置している。このため、摺接面397の摺接面積は周方向両端から周方向中央C1に向かって徐々に大きくなる。
【0073】
図10に示すように、摺接部495の摺接面497は、軸方向に長い長円形状に形成されている。
図11に示すように、摺接部595の摺接面597は、軸方向に長い六角形状に形成されている。この摺接部595の一つの平坦面595aも、本体部94の平坦面94bと同一平面上に配置されている。
図12に示すように、摺接部695の摺接面697は、略菱形状に形成されている。この摺接部695における菱形状は、各辺695aが内側に向かって僅かに湾曲した形になっている。
【0074】
このように、その他の実施形態における摺接部295〜795のうち、摺接部295〜695(
図8〜
図12参照)は、アーマチュア43(コンミテータ47)を両方向回転で使用する電動モータ40において、前述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0075】
これに対し、
図13に示すブラシ791は、アーマチュア43(コンミテータ47)を一方向回転で使用する電動モータ40に好適である。すなわち、ブラシ791の摺接部795における摺接面797は、回転方向(
図13における矢印Y1参照)上流側から回転方向下流側に向かって徐々に大きくなるように略直角三角形状に形成されている。
したがって、一方向回転で使用する電動モータ40において、ブラシ791は、セグメント52に供給される電流値を、急激に上昇することなく緩やかな上昇とさせることができる。これに加え、セグメント52からブラシ791が離間する際におけるブラシ791の電流密度を小さくでき、ブラシ791の火花放電を減少させることができる。
【0076】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、電動モータ40は、車両のシートを昇降させたり、前後方向にスライド移動させたりするためや、車両のウインドウを開閉させるために用いられる減速機付モータ装置1に適用されるブラシ付きモータである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、電動モータ40は、さまざまな用途に使用することが可能である。
【0077】
また、上述の実施形態では、各ブラシ91〜791の摺接部95〜795において、摺接面97〜797が円弧状に凹み形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、摺接面97〜797は、周方向両端から周方向中央に向かって徐々に凹み深さが深くなるように、凹み形成されていればよい。例えば、摺接面97〜797がV溝状に形成されていてもよい。
【0078】
さらに、上述の実施形態では、各ブラシ91〜791は、コンミテータ47の回転方向上流側におけるコンミテータ47との摺接面積に対し、コンミテータ47の回転方向下流側におけるコンミテータ47との摺接面積が徐々に大きくなるように形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、各ブラシ91〜791のコンミテータ47における摺接面積が徐々に大きくならなくてもよい。つまり、各ブラシ91〜791は、コンミテータ47の回転方向上流側におけるコンミテータ47との摺接面積に対し、コンミテータ47の回転方向下流側におけるコンミテータ47との摺接面積が大きくなっていればよい。そして、望ましくは、コンミテータ47の回転方向下流側におけるコンミテータ47との摺接面積が最大となるように設定されているとよい。