【文献】
GLUTARIC ACID AND GLUTARIMIDE,ORGANIC SYNTHESES,1957年,VOL:37,PAGE(S):47,URL,http://dx.doi.org/10.15227/orgsyn.037.0047
【文献】
XIAOLI MENG,CYCLIZATION OF THE ACYL GLUCURONIDE METABOLITE OF A NEUTRAL ENDOPEPTIDASE INHIBITOR TO AN ELECTROPHILIC GLUTARIMIDE: SYNTHESIS, REACTIVITY, AND MECHANISTIC ANALYSIS,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,2007年 7月11日,VOL:50, NR:24,PAGE(S):6165 - 6176,URL,http://dx.doi.org/10.1021/jm0706766
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
波長コンバータナノ粒子に結合したシロキサンポリマーキャッピング配位子を有する前記波長コンバータナノ粒子を含むルミネセント材料であって、ここで、前記シロキサンポリマーキャッピング配位子は、末端カルボン酸基を含む少なくとも1つのキャッピング基を含むシロキサンポリマーを含み、ここで、前記キャッピング基は、合計で少なくとも6つの炭素原子を含み、ここで、前記キャッピング基中の炭素原子の合計数は、炭素原子20個以下であり、ここで、前記キャッピング基は、−(CH2)3−NH−CO−(CH2)x−COOHを含み、式中、4≦x≦6である、ルミネセント材料。
波長コンバータナノ粒子に結合したシロキサンポリマーキャッピング配位子を有する、中に埋め込まれた前記波長コンバータナノ粒子を有するシロキサンポリマーマトリクスを含む波長コンバータであって、ここで、前記シロキサンポリマーキャッピング配位子は、末端カルボン酸基を含む少なくとも1つのキャッピング基を含むシロキサンポリマーを含み、ここで、前記キャッピング基は、合計で少なくとも6つの炭素原子を含み、ここで、前記キャッピング基中の炭素原子の合計数は、炭素原子20個以下であり、ここで、前記キャッピング基は、−(CH2)3−NH−CO−(CH2)x−COOHを含み、式中、4≦x≦6であり、ここで、前記シロキサンポリマーマトリクスは、(i)マトリクスであるシロキサンポリマーおよび(ii)マトリクスであるシロキサンポリマーおよびキャッピング配位子シロキサンポリマーの1つまたは2つ以上の間の架橋を有する、マトリクスであるシロキサンポリマーを含む、波長コンバータ。
前記キャッピング配位子が、x1個のSi骨格要素を有するシロキサンキャッピング配位子を含み、前記マトリクスであるシロキサンポリマーが、y1個のSi骨格要素を有し、式中、x1は少なくとも20であり、y1は少なくとも2であり、x1/y1≧0.8である、請求項5または6に記載の波長コンバータ。
前記キャッピング配位子が、x1個のSi骨格要素を有するシロキサンキャッピング配位子を含み、前記シロキサンポリマーマトリクスが、第1タイプのシロキサンポリマーおよび第2タイプのシロキサンポリマーを含み、前記第2タイプのシロキサンポリマーの少なくとも一部は架橋され、前記第1タイプのシロキサンポリマーが、s1個のSi骨格要素を有する短鎖シロキサンポリマーを含み、前記第2タイプのシロキサンポリマーは、y1個のSi骨格要素を有するシロキサンポリマーを含み、式中、x1/s1≧0.8であり、s1<y1であり、x1<y1である、請求項5または6に記載の波長コンバータ。
末端カルボン酸基を含む少なくとも1つのキャッピング基R8を含むシロキサンポリマーキャッピング配位子であって、前記キャッピング基は、合計で少なくとも6つの炭素原子および20個以下の炭素原子を含み、前記シロキサンポリマーキャッピング配位子は、以下の式:
(R1R2R3)Si−(O−Si(R4R5))n−R6
式中:
R1、R2、R3、R6は、独立して、H、OH、メチル、フェニルおよびR8からなる群から選択され、
R4、R5は、独立して、メチル、フェニルおよびR8からなる群から選択され、n≧1であり、
R8は、−(CH2)3−NH−CO−(CH2)x−COOHを含み、式中、4≦x≦6であり、
前記シロキサンポリマーキャッピング配位子中のキャッピング基R8の合計数は、≧1および≦2nの範囲から選択され、シロキサンポリマーキャッピング配位子当たりのキャッピング基は合計10以下である;
を有する、シロキサンポリマーキャッピング配位子。
【発明の概要】
【0007】
発明の要約
例えば量子ドット(QD)などのナノ粒子は、照明用途における高い関心の対象であることを示してきた。それらは、例えば青色光の他の色への変換における無機蛍光体などとして作用し、比較的狭い発光帯という利点および高品質の純白色光を得ることができるためにQDのサイズにより色変調可能であるという利点を有し得た。LED用途にQDを使用するために、それらは、好適なマトリクス中に組み込まれる必要がある。濃度消光効果およびかかる純QD粉末の乏しい加工性の両方により、(マトリクスなしの)QD粉末は一般的には望ましくない。これまで、多くのタイプのポリマー中でのナノ粒子の埋め込みが、ナノ粒子の凝結(aggregation)をもたらすと考えられている。現在、アクリルマトリクスがQDのためのマトリクスとして主に使用されているが、それらは高い青色光束に対して自体の乏しい安定性により知られている。我々は、高い青色光束に対するシリコーンの立証された安定性(すなわち、それらのLEDとの立証された適合性)により、シリコーンがQDのための最も好ましいマトリクスであると考えている。
シリコーンは現在、多くのLED製造プロセスのための標準的なマトリクス/樹脂として使用されている。しかしながら、QDは一般的に、(一般的にはQDの外側表面から伸びる配位子の形態の)疎水性有機コーティングを有し、これにより、それらはシリコーンと不適合性を有し:一般的には、QDがシリコーンと混合される場合には、QDの凝集(agglomeration)により生じる懸濁した混合物が得られる。
【0008】
残念なことに、商業的に入手される量子ドットの多くは、シリコーン中であまり良好に分散せず、凝集する。この凝集により、消光および迅速な劣化がもたらされる。量子ドットネイティブ(native)配位子は通常、(例えばオレイン酸などの)脂肪族炭化水素化合物から誘導される。本願において、これらのネイティブ配位をシリコーンと適合性を有する配位子により交換することが提案される。それにより、量子ドットをシリコーン材料中で均一に分散させることができる。本願で提案される配位子により、驚くべきことに、例えば配位子を有する量子ドットを(無機)マトリクス、特にシリコーンマトリクス中に分散させるなどの場合には、高いQEルミネセント材料を提供することができる。シリコーン(マトリクス)は、有機特性および/または無機特性を有してもよく、本願では簡便性のために、一般的には無機物(無機マトリクス)として示される。よって、従来技術の解決においては、ネイティブQDのQE効率と比較すると、マトリクス中のQDの量子効率は一般的には驚くほど低い一方で、量子ドットが高い量子効率を有する導波路または光導波路を提供することができる。
【0009】
よって、本発明の側面は、特に量子ドット系ルミネセント材料を提供することであり、これは、好ましくはさらに少なくとも部分的に上記の欠点の1つまたは2つ以上を回避する。また本発明の側面は、かかるルミネセント材料を含む代替の波長コンバータを提供することであり、これは、好ましくはさらに少なくとも部分的に上記の欠点の1つまたは2つ以上を回避する。なおまた本発明の側面は、かかるルミネセント材料中で使用し得る代替のキャッピング配位子、およびかかる量子ドットを作製するための方法、およびかかるルミネセント材料を提供することであり、これは、好ましくはさらに少なくとも部分的に上記の欠点の1つまたは2つ以上を回避する。
【0010】
第1の側面において、本発明は、波長コンバータナノ粒子に結合したシロキサンポリマーキャッピング配位子(本願においては「シロキサンポリマーグラフト配位子」とも示される)を有する波長コンバータナノ粒子を含むルミネセント材料を提供し、ここで、
添付の特許請求の範囲においてさらに定義されるとおり、シロキサンポリマーキャッピング配位子は、末端カルボン酸基(−C(O)OH)または−COOH)を含む、少なくとも1つのキャッピング基を含むシロキサンポリマーを含み、ここで、キャッピング基は特に、合計で例えば少なくとも4つ、少なくとも5つなどの、特には少なくとも6つなどの、少なくとも3つの炭素原子を含む。よって、キャッピング基中の炭素原子の合計数は、3以上である。よって、キャッピング基を、−R
aCOOHとして定義することができ、ここで、R
aは、炭化水素を含み、任意に1つまたは2つ以上のヘテロ原子を含む。特に、R
aには、1つまたは2つ以上の−(CH
2)−基が含まれ、なおより特には少なくとも5つの炭素原子が含まれ、なおより特には少なくとも5つの−(CH
2)−基が含まれ、それにより、合計で(酸性基の炭素原子を含む)少なくとも7つの炭素原子を有するキャッピング基を提供する。特に、キャッピング基−R
aCOOHには、ヘテロ原子として1つの窒素原子が含まれる。さらに、特にR
aは直線状である。R
aは、シロキサンのSi原子に結合し、特には非末端Si原子に結合している。特に、キャッピング基中の炭素原子の合計数は、例えば12個以下の炭素原子などの20個以下の炭素原子であり、キャッピング基は特に直線状キャッピング基である。
【0011】
かかる量子ドットは、水系および非水系の両方において高いQEを有し得ると考えられる。さらに、かかる量子ドットは、水系中で実質的に凝集のない良好な分散を提供し得ると考えられる。さらに、これらのタイプのQDは、特にシリコーンマトリクス中に良好に埋め込まれて、有機配位子を有する当初の(original)QDをシリコーンマトリクス中に埋め込もうとする場合より、安定で高い量子効率、よりずっと高い安定性および/またはよりずっと高いQEを有する波長コンバータをもたらし得ると考えられる。
【0012】
ルミネセント材料は、態様において、量子ドットに配位したキャッピング剤を有する量子ドットを含む液体を含む。このルミネセント材料は、実質的に(完全に)QDが溶解された溶液であってもよい。しかしながら、ルミネセント材料はまた、分散体またはコロイドまたはゲルであってもよい。かかるルミネセント材料の用途には照明用途が含まれてもよく、ここで、ルミネセント材料は、容器またはキュベット様本体(cuvette like body)または別のエンベロープに封入されている。しかしながら、水性液体中に溶解されたときのルミネセント材料をまた、例えばバイオマーカーなどの医療用途を含む生物学的用途に使用してもよい。他の選択肢には、光起電用途またはフォトダイオード用途が含まれる。
【0013】
なお別の態様において、ルミネセント材料は、キャッピング剤自体を有するQDを実質的に含む。例えば、QDを、液体の蒸発などを含む、当該技術分野において既知の手法で液体から分離して、それにより粉末またはケーキとしてQD剤(キャッピング剤を含む)を提供してもよい。続いて、このようにして得られた材料をさらに例えば粒状材料などに加工してもよい(以下も参照)。例えば、ルミネセント材料をまた、基体上のコーティングとして提供してもよい。キャッピング剤自体を有するQDを実質的に含むルミネセント材料をまた、例えば無機または有機マトリクスなどのマトリクス(以下も参照)中に封入して、例えば波長コンバータ要素などを提供してもよい。
【0014】
本願において波長コンバータナノ粒子として示される、量子ドットまたはルミネセントナノ粒子は、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTeおよびHgZnSTeからなる群から選択される、第II〜VI族化合物半導体量子ドットを含んでもよい。別の態様において、ルミネセントナノ粒子は、例えば、GaN、GaP、GaAs、AlN、AlP、AlAs、InN、InP、InAs、GaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GaInNP、GaInNAs、GaInPAs、InAlNP、InAlNAs、およびInAlPAsからなる群から選択される、第III〜V族化合物半導体量子ドットであってもよい。なおさらなる態様において、ルミネセントナノ粒子は、例えば、CuInS
2、CuInSe
2、CuGaS
2、CuGaSe
2、AgInS
2、AgInSe
2、AgGaS
2、およびAgGaSe
2からなる群から選択される、I−III−VI2黄銅鉱タイプ半導体量子ドットであってもよい。なおさらなる態様において、ルミネセントナノ粒子は、例えば、LiAsSe
2、NaAsSe
2およびKAsSe
2などからなる群から選択される、I−V−VI2半導体量子ドットであってもよい。なおさらなる態様において、ルミネセントナノ粒子は、例えば、SbTeなどの第IV−VI族化合物半導体ナノ結晶であってもよい。特定の態様において、ルミネセントナノ粒子は、InP、CuInS
2、CuInSe
2、CdTe、CdSe、CdSeTe、AgInS
2およびAgInSe
2からなる群から選択される。なおさらなる態様において、ルミネセントナノ粒子は、例えば、ZnSe:Mn、ZnS:Mnなどの内部ドーパントなどを有する上記の材料から選択される第II−VI、III−V、I−III−VおよびIV−VI族化合物半導体ナノ結晶の1種であってもよい。ドーパント元素は、Mn、Ag、Zn、Eu、S、P、Cu、Ce、Tb、Au、Pb、Tb、Sb、SnおよびTlから選択され得る。本願において、ルミネセントナノ粒子系ルミネセント材料はまた、例えばCdSeおよびZnSe:Mnなどの異なるタイプのQDを含んでもよい。
【0015】
II−VI量子ドットを使用することが特に有利であると考えられる。よって、態様において、半導体系ルミネセント量子ドットは、II−VI量子ドットを含み、特に、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTeおよびHgZnSTeからなる群から選択され、なおより特には、CdS、CdSe、CdSe/CdSおよびCdSe/CdS/ZnSからなる群から選択される。しかしながら、態様において、Cdを含まないQDが適用される。特定の態様において、波長コンバータナノ粒子は、III−V QDを含み、より具体的には、例えばコア−シェル InP−ZnS QDなどのInP系量子ドットを含む。用語「InP量子ドット」または「InP系量子ドット」および同様の用語は、「露出した」InP QDを指すが、例えばコア−シェル InP−ZnS QD、InP−ZnS QDドットインロッド(dot−in−rod)などのInPコア上にシェルを有するコア−シェル InP QDも指すことに留意しなければならない。
【0016】
(コーティングなしの)ルミネセントナノ粒子は、約1〜50nm、特には1〜20nm、例えば1〜15nmなどの、1〜5nmなどの範囲の寸法を有してもよく;特にナノ粒子の少なくとも90%は、それぞれ示した範囲の寸法を有してもよい(すなわち、例えばナノ粒子の少なくとも90%は、2〜50nmの範囲の寸法を有するか、または特にはナノ粒子の少なくとも90%は、5〜15nmの範囲の寸法を有する)。用語「寸法」は、特に、ナノ粒子の形状に応じて、長さ、幅、および直径の1つまたは2つ以上に関する。態様において、波長コンバータナノ粒子は、約1〜約1000ナノメートル(nm)の範囲の、好ましくは約1〜約100nmの範囲の平均粒子サイズを有する。態様において、ナノ粒子は、約1〜50nmの、特には1〜約20nmの範囲の、一般的には例えば少なくとも2nmなどの少なくとも1.5nmの平均粒子サイズを有する。態様において、ナノ粒子は、約1〜約20nmの範囲の平均粒子サイズを有する。
【0017】
典型的なドットは、例えばセレン化カドミウム、硫化カドミウム、ヒ化インジウム、リン化インジウムなどの二元合金で作製されていてもよい。しかしながら、ドットはまた、例えばセレン化硫化カドミウム(cadmium selenide sulfide)などの三元合金から作製されていてもよい。これらの量子ドットは、量子ドット体積内に100〜100,000原子を含み得、直径は10〜50原子である。これは約2〜10ナノメートルに相当する。例えば、約3nmの直径を有するCdSe、InP、またはCuInSe
2などの(球状)粒子を提供してもよい。(コーティングなしの)ルミネセントナノ粒子は、1つの寸法が10nm未満のサイズを有する、球状、立方体、ロッド、ワイヤ、ディスク、マルチポッドなどの形態を有してもよい。例えば、長さ20nmおよび直径4nmを有するCdSeのナノロッドなどを提供してもよい。よって、態様において、半導体系ルミネセント量子ドットは、コア−シェル量子ドットを含む。なお別の態様において、半導体系ルミネセント量子ドットは、ドットインロッドナノ粒子を含む。異なるタイプの粒子の組み合わせをまた適用してもよい。例えば、コア−シェル粒子およびドットインロッドを適用してもよく、および/または例えばCdSおよびCdSeなどの2つまたは3つ以上の上記のナノ粒子の組み合わせを適用してもよい。よって、用語「異なるタイプ」は、異なる幾何学形状に、および異なるタイプの半導体ルミネセント材料を指してもよい。よって、(上記の)量子ドットまたはルミネセントナノ粒子の2つまたは3つ以上の組み合わせをまた適用してもよい。
【0018】
態様において、ナノ粒子は、第1半導体材料を含むコアおよび第2半導体材料を含むシェルを含む、半導体ナノ結晶を含み得、ここで、シェルはコアの表面の少なくとも一部分上に配置されている。コアおよびシェルを含む半導体ナノ結晶はまた、「コア/シェル」半導体ナノ結晶とも称される。
【0019】
例えば、半導体ナノ結晶には、式MXを有するコアが含まれ得、式中、Mは、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、またはそれらの混合物であり得、Xは、酸素、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、またはそれらの混合物であり得る。半導体ナノ結晶のコアとしての使用に好適な材料の例には、これに限定されないが、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgS、MgSe、GaAs、GaN、GaP、GaSe、GaSb、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InN、InP、InSb、AlAs、AIN、AlP、AlSb、TIN、TIP、TlAs、TlSb、PbO、PbS、PbSe、PbTe、Ge、Si、前記のいずれかを含む合金、および/または前記のいずれかを含む混合物が含まれ、三元および四元混合物または合金が含まれる。
【0020】
シェルは、コアと同一または異なる組成である組成を有する半導体材料であり得る。シェルは、コアの半導体ナノ結晶の表面上で半導体材料のオーバーコートを含み、第IV族元素、第II−VI族化合物、第II−V族化合物、第III−VI族化合物、第III−V族化合物、第IV−VI族化合物、第I−III−VI族化合物、第II−IV−VI族化合物、第II−IV−V族化合物、前記のいずれかを含む合金、および/または前記のいずれかを含む混合物が含まれ、三元および四元混合物または合金が含まれ得る。例には、これに限定されないが、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgS、MgSe、GaAs、GaN、GaP、GaSe、GaSb、HgO、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InN、InP、InSb、AlAs、AIN、AlP、AlSb、TIN、TIP、TlAs、TlSb、PbO、PbS、PbSe、PbTe、Ge、Si、前記のいずれかを含む合金、および/または前記のいずれかを含む混合物が含まれる。例えば、ZnS、ZnSeまたはCdSオーバーコーティングを、CdSeまたはCdTe半導体ナノ結晶上で成長させることができる。オーバーコーティングプロセスは、例えば特許文献4などに記載されている。オーバーコーティングの間の反応混合物の温度を調節し、コアの吸収スペクトルをモニタすることにより、高い発光量子効率および狭いサイズ分布を有するオーバーコーティングされた材料を得ることができる。オーバーコーティングは、1つまたは2つ以上の層を含んでもよい。オーバーコーティングは、コアの組成と同一または異なる、少なくとも1種の半導体材料を含む。好ましくは、オーバーコーティングは、約1〜10単分子層の厚さを有する。オーバーコーティングはまた、10単分子層より大きな厚さを有し得る。態様において、1つより多いオーバーコーティングを、コア上に含めることができる。
【0021】
態様において、包囲する「シェル」材料は、コア材料のバンドギャップより大きなバンドギャップを有し得る。特定の他の態様において、包囲するシェル材料は、コア材料のバンドギャップより小さなバンドギャップを有し得る。態様において、シェルは、「コア」基体のものに近い原子間隔(atomic spacing)を有するようにシェルを選択し得る。特定の態様において、シェルおよびコア材料は、同一の結晶構造を有し得る。半導体ナノ結晶(コア)シェル材料の例には、限定されずに:赤色(例えば(CdSe)ZnS(コア)シェルなど)、緑色(例えば(CdZnSe)CdZnS(コア)シェルなど)、および青色(例えば(CdS)CdZnS(コア)シェルなど)が含まれる(さらにまた、半導体系の特定の波長コンバータナノ粒子の例については上記を参照)。
【0022】
よって、上記の外側表面は、露出した量子ドット(すなわち、さらなるシェルまたはコーティングを含まないQD)の表面であってもよく、または例えば(コア−シェルまたはドットインロッドなどの)コア−シェル量子ドットなどのコーティングされた量子ドットの表面、すなわち、シェルの(外側)表面であってもよい。よって、グラフト配位子は、例えばドットインロッドQDの外側表面などの量子ドットの外側表面に特にグラフトする。
【0023】
したがって、特定の態様において、波長コンバータナノ粒子は、コア−シェルナノ粒子からなる群から選択され、コアおよびシェルは、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、GaN、GaP、GaAs、AlN、AlP、AlAs、InN、InP、InAs、GaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GaInNP、GaInNAs、GaInPAs、InAlNP、InAlNAs、およびInAlPAsの1種または2種以上を含む。一般的に、コアおよびシェルは、同一のクラスの材料を含むが、本質的には、例えばCdSeコアを包囲するZnSシェルなどの異なる材料からなる。
【0024】
用語 波長コンバータは、第1波長から第2波長の光へ光を変換するように構成された系に関する。特に、UVおよび/または青色光(励起波長)を、励起波長より高い波長(higher wavelength)の(可視)光に(少なくとも部分的に)変換してもよい。これを以下でさらに説明する。
【0025】
より正確には重合されたまたは重合可能なシロキサンまたはポリシロキサンと称されるシリコーンは、化学式[(R
1,R
2)SiO]
n(末端基は考慮しない)を有する、混合された無機−有機ポリマーであり、式中、Rは、例えば水素、炭化水素またはフルオロカーボン、特にはメチル、エチル、またはフェニルなどの基である。特に、1つまたは2つ以上のSi骨格要素の1つまたは2つ以上のR基は、1つまたは2つ以上の炭化水素およびフルオロカーボンを含む。これらの側基の1つまたは2つ以上はまた、例えばビニル基またはヒドリド基などの架橋官能性を有してもよい。これらの重合したシロキサンまたはポリシロキサン材料は、4配位であるシリコン原子に結合した有機側基を有する無機シリコン−酸素骨格(・・・−Si−O−Si−O−Si−O−・・・)からなる。R側基は原則として異なっていてもよいので、式[(R
2)SiO]
nの代わりに、式[(R
1,R
2)SiO]
n(末端基は考慮しない)をまた適用してもよい。本願においてx1およびy1は、シロキサングラフト配位子および(ホスト材料を形成する)(硬化性)シロキサンポリマーについてのシロキサン骨格中でのSi要素の数についてそれぞれ適用されることに留意しなければならない。同様に、本願においてs1は、短鎖シロキサン(Sポリマー)のシロキサン骨格中のSi要素の数に適用される。特に、ポリマーの骨格は、分子の連続鎖を一緒に創出する、一連の共有結合した原子である。例えば、[(R
2)SiO]
nは、n個のSi骨格要素およびn個のO骨格要素を有する。
【0026】
本願において、Rのみ、より正確にはR
1、R
2が言及されるという事実は、異なるSi骨格要素が同一の側基を含んでもよいが、2種より多い異なるタイプの側基がまたシリコーンに含まれてもよいことを除外しない。よって、Rは、例えば、これに限定されないが、メチル、フェニルなどからなる群から選択されてもよい。またハロゲン、主に塩素は、サイド化合物(side compound)Rとして可能である。さらに、[R
2SiO]、または[−Si(R)
2−O−]は、シリコーン単位またはシリコーン特徴基(characterizing group)(すなわち、シリコーンを特徴付ける基)を指す。
【0027】
シロキサンは、形態R
2SiOの単位から構成されるあらゆる化合物であり、式中、Rは、例えば、これに限定されないが、水素原子、炭化水素基、または末端基に結合した1つまたは2つ以上のR
2SiOの単位である。シロキサンは、シリコン原子に結合した側鎖Rを有する、交互のシリコンおよび酸素原子の−Si−O−Si−O−からなる分岐状または非分岐状の骨格を有し得る。有機側鎖(R≠H)を有する重合したシロキサンが、シリコーンとしてまたはポリシロキサンとして広く知られている。本願において、これらはまた「シロキサン」または「シロキサンポリマー」として示される。代表的な例は、[SiO(CH
3)
2]
n(ポリジメチルシロキサン)および[SiO(C
6H
5)
2]
n(ポリジフェニルシロキサン)である。これらの化合物を、有機および無機の両方の化合物のハイブリッドとしてみることができる。有機側鎖は疎水特性を付与する一方で、−Si−O−Si−O−骨格は純粋に無機性である。上記のとおり、骨格中のSi要素はまた、本願において、Si骨格要素として示される。よって、あらゆるシロキサン特徴部位R
2SiOは、(2つの側基を有する)1つのシリコン骨格要素を提供する。例えばPDMSなどは、CH
3[Si(CH
3)
2O]
nSi(CH
3)
3であり、n+1個のSi要素を有し、よって、実際にn+1個のSi骨格要素を有することに留意しなければならない。かかるシロキサンをグラフト配位子として使用する場合にはx1=n+1であり、かかるシロキサンを硬化のためのシロキサンポリマーとして使用する場合にはy1=n+1である(Would such siloxane be used as grafting ligand,x1=n+1;would such siloxane be used as siloxane polymer for curing,y1=n+1)。さらに、PDMA(式を参照)は、n−1個の非末端Si骨格要素を有する。例えば多分散系シロキサンの場合などの、シロキサンの混合物が適用される場合には、s1、x1、およびy1はそれぞれ、特に平均値、特に重量平均値であってもよい。用語「骨格」の代わりにまた、用語「シロキサン鎖」を使用してもよい。
【0028】
−Si−O−鎖長、側基、および架橋を変化させることにより、広範な特性および組成を有するシリコーンを合成することができる。それらは、液体からゲルへ、ゴムへ、硬質プラスチックへ粘度を変化させることができる。最も一般的なシロキサンは、直線状ポリジメチルシロキサン(PDMS;上記を参照)、シリコーンオイルである。シリコーン材料の2番目に大きなグループは、シリコーン樹脂系のものであり、それらは、分岐状およびケージ様(cage−like)オリゴシロキサンにより形成される。本願において、特に直線状シロキサンを、硬化性シロキサンポリマーおよび/またはシロキサングラフト配位子および/または短鎖シロキサンポリマーとして使用する。しかしながら、非直線状シロキサンポリマーも、硬化性シロキサンポリマーおよび/またはシロキサングラフト配位子として使用してもよい。さらに、シロキサンが硬化するので、一般的には波長コンバータは固体波長コンバータ(固体ポリマー波長コンバータ)であろう。それにもかかわらず、態様において、波長コンバータはフレキシブルであり得る。
【0029】
上記のとおり、シロキサングラフト配位子は、x1個のSi骨格要素を有するシロキサングラフト配位子を含み;特にグラフト配位子は、(x1個のSi骨格要素を有する)シロキサングラフト配位子である。用語「グラフト配位子」は、例えば量子ドットなどの波長コンバータナノ粒子(これらの粒子をさらに以下で説明する)の表面に配位するか、または波長コンバータナノ粒子の表面に結合する配位子を指す。グラフト配位子は、例えば当該技術分野において知られており、例えば特許文献5、6および7などに記載されている。グラフト配位子は、しばしばまたキャッピング配位子として示される。
【0030】
グラフト配位子はシロキサン分子を含み、それらは一般的には広く知られた側基を有するが、グラフト官能性を有する少なくとも1つの基、特には少なくとも1つの側基をまた有する。グラフト官能性を有する(側)基は、アミンおよびカルボキシレートからなる群から選択されてもよい。例えば、アミンはそれぞれ、−NH
2またはCOOHであり得るが、また−R−NH
2またはR−COOHであってもよく、式中、Rは、好ましくは20個未満の炭素原子を含む炭化水素である。しかしながら、グラフト官能性を有する(側)基はまた、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスフェート、チオール(および態様において2つまたは3つ以上のそれらの組み合わせ)などを含んでもよい。よって、グラフト配位子は、シロキサン分子であり、それらは一般的には広く知られた(側)基を有するが、アミン、カルボキシレート、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスフェート、チオール、なおより特にはアミン、カルボキシレート、ホスフィン、ホスフィンオキシド、およびホスフフェートからなる群から選択されるグラフト官能性を有する少なくとも1つの(側)基をまた有する。態様において、配位子は、グラフト官能性を有する複数の(側)基を含んでもよく、それらは異なるタイプのかかる(側)基を含んでもよい(またはそれらは全て同一であってもよい)。Si骨格要素はまた、グラフト官能性を有する2つ(または3つ以上)の(側)基を含んでもよい。句「グラフト官能性を有する側基」は、本願において記載するとおり、ルミネセントナノ粒子にグラフトする能力を有する(末端基ではなく)側基を指す。したがって、グラフト官能性を有する(側)基は、シロキサンにそのグラフト能(これによりグラフト配位子官能性)を提供する。任意にグラフト官能性を有する1つまたは2つ以上の基のうちの1つまたは2つ以上はまた終端基(または末端基)であってもよいが、かかるグラフト官能性を有する1つまたは2つ以上の基は、好ましくは側基である(以下も参照)。よって、特に側基は、非末端Si骨格要素の(側)基である(以下も参照)。したがって、言い換えると、グラフト配位子は、特に、少なくともグラフト官能性を有する非末端官能基を含む。
【0031】
アミンを、ルミネセントナノ粒子の外側表面へアミンとしてグラフトしてもよく;カルボキシレートを、ルミネセントナノ粒子へカルボキシレートとしてグラフトしてもよい。特に官能基は、終端基としてではなく側基として配置されなければならないと考えられる。よって特に、グラフト配位子は、アミン、カルボキシレート、ホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスフェート、およびチオールからなる群からなる群から選択される基を含まない終端基を有するシロキサン分子を含み;すなわち、(実質的に)グラフト官能性を有する終端基を有しない。シロキサングラフト配位子は、特に、本願において示される半導体量子ドットのためのグラフト官能性を有する(側)基を有し、特に本願において示されるのは、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、GaN、GaP、GaAs、AlN、AlP、AlAs、InN、InP、InAs、GaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GaInNP、GaInNAs、GaInPAs、InAlNP、InAlNAs、およびInAlPAsナノ粒子、なおより特にはスルフィド、テルリドおよびセレニドである。
【0032】
グラフト官能性を有する(側)基を、グラフト配位子のシロキサン骨格にわたるあらゆる所に配置してもよい。x1個のシリコン骨格単位を有する直線状シロキサンを想定すると、特にグラフト官能性を有する1つ(または2つ以上)の(側)基が骨格長の20〜80%で見つかる。50個のSi骨格要素を含む骨格の例を想定すると、特にグラフト官能性を有する(側)基が、10番目のSiまたは40番目のSiまたはその間で見つかる(1番目および50番目は終端基である)。
【0033】
上記のとおり、例えばアミンおよびカルボキシレート、または例えばホスフィン、ホスフィンオキシド、ホスフェート、チオールなどのその他からなる群から選択されるものなどのグラフト官能性を有する1つより多い(側)基が任意に存在し得るが、少なくとも1つのかかる(側)基が存在する。グラフト官能性を有するかかる(側)基の数は、シロキサングラフト配位子の鎖長に依存し得るが、特にその数は10を超えず、特には4を超えず、例えば1〜2などである。よって特に、各シロキサングラフト配位子の10個までを超えない(末端Si骨格要素ではない)Si骨格要素は、グラフト官能性を有する(側)基を含む。各シロキサングラフト配位子の10個までを超えない(末端Si骨格要素ではない)Si骨格要素は、アミン含有側基、カルボキシレート含有(側)基、ホスフィン含有(側)基、ホスフィンオキシド含有(側)基、ホスフェート含有(側)基、およびチオール含有(側)基からなる群から選択される、(グラフト官能性を有する)(側)基を含む。グラフト官能性を有する1つより多い側基が存在する場合には、特にグラフト官能性を有する(側)基のパーセンテージは、(全てのR
1およびR骨格側基の中で、5%を超えずにかかる官能基を含む)5モル%以下であり、なおより特にはグラフト官能性を有する(側)基のパーセンテージは、2.5モル%以下である。よって、例えば22個のSi骨格要素(これにより、2個の末端Si骨格要素を含む)などを想定する場合には、40個の(側)基が利用可能であり;それらの5%がグラフト官能性を有する場合には、これは2個までの(側)基がグラフト官能性を有することを示唆するであろうし;例えばメチル、フェニルなどのその他のものはグラフト官能性を有しないであろう。
【0034】
用語「グラフト配位子」または「シロキサングラフト配位子」はまた、複数の異なるタイプのシロキサングラフト配位子を指すことに留意しなければならない。態様において、これらのシロキサングラフト配位子は実質的に同一である。しかしながら、別の態様において、シロキサングラフト配位子は、例えばカルボキシレートおよびホスフェートなどの複数の異なるシロキサングラフト配位子を含んでもよい。例えば、それらは鎖長(x1(以下を参照))が異なっていてもよく、および/またはそれらは側基が異なっていてもよく、および/またはそれらはグラフト官能性を有する側基が異なっていてもよく、および/またはグラフト官能性を有する側基の数が異なっていてもよく、および/またはグラフト官能性を有する側基の位置が異なっていてもよい(および/または終端基のタイプが異なる)。例えば、シロキサングラフト配位子は、複数のシロキサンポリマーを含んでもよく、それぞれは1つのみの(アミン)側基を有するが、ここで、(アミン)側基の位置はシロキサンポリマーにわたってランダムに分布している。用語「キャッピング配位子」または「キャッピング要素」はまた、複数の異なるキャッピング配位子を指す。よって、用語「キャッピング配位子」を使用して、(外側層に結合した)少なくとも1つのタイプのキャッピング配位子が存在することを示す。上記の分野から知られるとおり、無機キャッピング剤は、離散種、直線状または分岐状鎖、または2次元シートであり得る。イオン性無機キャッピング剤は一般にカチオンおよびアニオンの対である塩を指し、具体的に無機キャッピング剤と称される塩の一部は、有機キャッピング剤と置き換わるイオンであり、ナノ粒子をキャッピングする。しばしば、無機イオンは、有機官能性を有するイオンと対をなし;有機キャッピング剤と置き換わらない対となったイオンは、本願において対イオンと称される。対イオンは、無機キャッピングされたナノ材料と同様に、無機キャッピング剤の溶解性および反応性に影響を及ぼすことができるが、種々の広範な対イオンにより、それらの容易な置き換えおよび所望の特性のバランスを可能にする。用語「配位子」の代わりに、本願においては、用語「キャッピング剤」または「キャッピング配位子」または「配位する配位子」を用いる。上記のとおり、有機キャッピング剤を有機溶媒中でQDを安定化させるのに適用してもよい。無機キャッピング配位子はまた、本願において、「配位するイオン」または「グラフト」または「グラフト配位子」と定義されてもよい。
【0035】
本願において参照により組み込まれる、例えば特許文献2および3などに記載されるとおり、シロキサンキャッピング配位子を、交換プロセスにおいてナノ粒子に提供してもよい。かかる交換プロセスにおいて、商業的に入手可能なナノ粒子上の有機配位子は、シロキサン配位子により置き換えられる。よって、なおさらなる側面において、本発明はまた、本願において定義するとおり、ルミネセント材料の製造のための方法を提供し、前記方法は、以下:
(i)末端カルボン酸基を含む少なくとも1つのキャッピング基を含む、シロキサンポリマーを含むシロキサンポリマーキャッピング配位子を提供するステップであって、ここで、キャッピング基は、合計で少なくとも6つの炭素原子を含むステップ;
(ii)波長コンバータナノ粒子に結合する、有機キャッピング配位子を有する波長コンバータナノ粒子を提供するステップ;
(iii)
添付の特許請求の範囲においてさらに定義されるとおり、交換プロセスにおいて、有機キャッピング配位子をシロキサンポリマーキャッピング配位子に交換して、ルミネセント材料を提供するステップ、
を含む。
【0036】
シロキサンキャッピング配位子は特に、キャッピング基により、それらのキャッピングまたはグラフト官能性を有する。このキャッピング基には、酸性基またはカルボキシレート基が含まれる。プロトンの脱離により、(それぞれの配位子上の)カルボキシレート基の合計数の一部が負に帯電し得るので、特に水性媒体中で、カルボキシレート基の一部は、ナノ粒子に、特にかかるナノ粒子の表面でナノ粒子のカチオンに配位し得る。よって、キャッピング配位子はナノ粒子に結合する。
【0037】
特に、シロキサンポリマーは直線状ポリマーである。また、キャッピング基は特に直線状基である。キャッピング基には、例えばNなどの1つまたは2つ以上のヘテロ原子が含まれてもよい。キャッピング基は、特に末端カルボキシレート基を含むが、例えば1つまたは2つ以上のO、N、F、Br、Iなどの他の非水素基をまた、さらに任意に含んでもよい。上記のとおり、キャッピング基は、少なくとも6つの炭素原子を含み、すなわち、特に単一の直線状鎖中に6つの炭素原子を含み、任意に1つまたは2つ以上のヘテロ原子を途中に有する。例えば3つまたは4つの炭素原子などの少なくとも2つの炭素原子の、特に直線状鎖中の特にキャッピング基中の少なくとも6つの炭素原子の長さにより、シロキサンポリマーマトリクス中でのかかる(配位子キャッピングされた)粒子の埋め込みがかなり促進され、実質的に例えば−NH
2官能基などを有するシロキサンポリマー系のキャッピング剤により、さらに促進されると考えられる。さらにまた、炭素の数が6未満である場合には、シリコーンマトリクス中のナノ粒子の良好な分布はあまり容易ではないと考えられる。さらに、特には12個以下の炭素原子が(キャッピング基の直線状鎖中で)利用可能である。
【0038】
シロキサン上のアミン官能基を、例えばカルボン酸などの2,5−ジオキソピロリジン−1−イルで官能化された基での反応により伸長する場合には、特に、シリコーン中でのコロイド状の安定な分散体が得られるという、すなわち、凝結なしでシリコーンと混和可能であるという意味での良好な結果が得られる。アミン官能基は、一般的にはSi原子において直接シロキサン鎖に配置されず、例えば鎖中の1つまたは2つ以上の炭素原子および任意にさらなるヘテロ原子などにより離れて配置されている。特に、アミン基は、−(CH
2)
a−NHを含み、a≧0であり、例えば1〜5、1〜3などの範囲などである。特定の態様において、キャッピング基は、−(CH
2)
a−NH−CO−(CH
2)
x−COOHを含み、式中、a≧1であり(特に少なくとも3などの、少なくとも2であり)、
4≦x≦6であり、a+x≧4である
。4、5、または6などのx≧4である。さらに、上記のとおり、キャッピング基は、特にキャッピング側基である。よって、特にアミン官能基はまた側基であり、末端Si上に位置しない。特に数個のみの、特に1つのみであるが、1つより多いかかるアミン基が利用可能であり得ることに留意しなければならない。さらに、また上記のとおり、波長コンバータナノ粒子は、特に量子ドットを含んでもよい。異なるキャッピング配位子の組み合わせ、または実質的に同一のキャッピング配位子であるが、異なるキャッピング基をまた適用してもよい。aにより定義される第1スペーサーの長さおよびxにより定義される第2スペーサーの長さを、互いに独立して選択してもよい。aについての値は、特に例えば3または4以上などの、少なくとも2である。xについての値は、
4≦x≦6である。しかしながら、任意にヘテロ原子を有しないカルボン酸をまた適用してもよい。Siおよびカルボキシル基(C(O)OH)間の(CH
2)基の数は特に少なくとも1であり、なおより特には少なくとも2であり、例えば少なくとも3、4または5以上であってもよい。カルボン酸を含むキャッピング基は、ナノ粒子に配位し得る。一般的には、カルボン酸は次いで脱プロトン状態となり、それにより、C(O)O
−基が、例えばナノ粒子表面で1つまたは2つ以上のカチオンなどに結合することができる。
【0039】
安定性(劣化速度)の観点からも良好な結果が得られた、なおさらなる特定の態様において、キャッピング基は
、−(CH
2)
3−NH−CO−(CH
2)
x−COOHを含み、式中、4≦x≦6である。これらの系により、安定性および分散性の観点から、x<4よりなお良好な結果が得られた。さらに、シロキサンポリマー(すなわち、配位子シロキサンポリマー)が少なくとも10kg/モル、なおより特には15kg/モル、さらになおより特には22kg/モルのMwを有する場合に、最良の結果が得られた。
【0040】
なおさらなる側面において、本発明はまた、本願において定義されるとおり、式:
(R
1R
2R
3)Si−(O−Si(R
4R
5))n−R
6
式中:
R
1、R
2、R
3、R
6は、独立して、H、OH、メチル、フェニルおよびR
7からなる群から選択され、
R
4、R
5は、独立して、メチル、フェニルおよびR
7からなる群から選択され、n≧1であり、
R
7は、−(CH
2)
a−NH
2を含み、式中、特にa≧1であり(例えば特に、少なくとも2であり、なおより特には少なくとも3であるなど);
シロキサンポリマー中の基R
7の合計数は、特に≧1および≦2nの範囲から選択され、シロキサンポリマー当たりのアミン基は合計10以下である;
を有するシロキサンポリマーを、式:
【化1】
式中、x≧1である、
を有する分子6b−dと反応させることを含む、シロキサンポリマーキャッピング配位子の製造のための方法を提供する。
【0041】
かかる方法は、本発明の一部でもある、シロキサンポリマーキャッピング配位子自体を提供してもよい。よって、本発明はまた、上記で定義された方法で得られ得る、かかるキャッピング配位子を提供する。本発明はまた、さらなる側面において、末端カルボン酸基を含む、少なくとも1つのキャッピング基R
8を含むシロキサンポリマーキャッピング配位子を提供し、ここで、キャッピング基は、合計で少なくとも6つの炭素原子を含み、シロキサンポリマーキャッピング配位子は、以下の式:
(R
1R
2R
3)Si−(O−Si(R
4R
5))n−R
6
式中:
R
1、R
2、R
3、R
6は、独立して、H、OH、メチル、フェニルおよびR
8からなる群から選択され、
R
4、R
5は、独立して、メチル、フェニルおよびR
8からなる群から選択され、n≧1であり、
R
8は、
−(CH2)3−NH−CO−(CH2)x−COOHを含み、式中、4≦x≦6であり、
シロキサンポリマーキャッピング配位子中のキャッピング基R
8の合計数は、≧1および≦2nの範囲から選択され、シロキサンポリマーキャッピング配位子当たり合計10個以下のキャッピング基である、
を有する。
【0042】
特に、R
1、R
2、R
3は、独立して、H、OH、メチル、およびフェニルからなる群から選択される。R
6=R
8である場合には、配位子は、末端キャッピング基を含む。基R
4、R
5は、独立して、メチル、フェニルおよびR
8からなる群から選択される。R
6に最も近いSi原子が、例えばH、またはOHまたはメチルまたはフェニルなどであるR
8およびR
6である、R
4および/またはR
5を含む(a R
4 and/or R
5 being R
8,and R
6 being e.g. H,or OH or methyl or phenyl,etc)場合には、かかる態様においてはまた、キャッピング配位子は、末端キャッピング基を含むことに留意しなければならない。上記のとおり、非末端キャッピング基は、驚くべきことに、分散性および凝集防止の観点から、良好な結果を提供すると考えられる。
【0043】
よって、本願において、特にキャッピング基は、シロキサン鎖への側基であり、すなわち、非末端Si原子に化学結合している。よって、キャッピング基は、態様において、(シロキサンポリマーへの)キャッピング側基としても示されてよい。よって、特にキャッピング基を有するシロキサンポリマーは、キャッピング配位子(官能性)を提供する。
【0044】
上記のとおり、特に配位子のシロキサンポリマーは、少なくとも22kg/モルのMwを有するので、一般的にはnは、(実質的に)1より大きく、例えば少なくとも20、少なくとも60などであり、60〜600などの範囲であろう。かかる態様において、n個のR
4基およびn個のR
5基が存在する。特に、例えば1〜4などのその限定された数のみがR
8を含むであろう。実質的に、全ての(他の)R
4およびR
5基は、独立して、メチルおよびフェニルから選択されるであろう。理解の目的のために、n=3を例にした以下の例を提供する。
(R
1R
2R
3)Si−O−Si(R
4R
8)−O−Si(R
4R
5)−O−Si(R
4R
5)−R
6
【0045】
かかる分子において、全てのR
4およびR
5は、独立して、メチルおよびフェニルから選択されてもよく、R
6のみが、H、OH、メチルおよびフェニルから選択されてもよく、1つのSi骨格原子(すなわち、非末端Si原子)のみが、末端カルボキシレートを有するR
8基を含む(すなわち、全てのR
4およびR
4のうちの1つは、R
8であるように選択される)。
【0046】
よって、各R
1は、他のR
2、R
3、R
4、R
5およびR
6とは独立して選択されてもよく;同様に、各R
2は、他のR
1、R
3、R
4、R
5およびR
6などとは独立して選択されてもよい。さらに、各R
4およびR
5は、独立して、n個のSi骨格要素のそれぞれについて選択されてもよい。一般的には、R
4およびR
4のほとんどは(most of R
4 and R
4)、独立して、メチルおよびフェニルの中からn個のSi骨格要素のそれぞれについて選択され、Si骨格要素のいくつか、特には1つのみが、R
8を担持する。しかしながら、1つより多いR
8基が存在する場合には、R
8基のそれぞれは、独立して、R
8の本願において示された態様から選択されてもよい。
【0047】
R
7基は、R
8基に変換され得る。よって、本願において示される、シロキサン配位子中のR
8基の数および位置についての態様はまた、それぞれR
7基の数および位置に関し、またその逆でもある。
【0048】
ナノ粒子は、波長コンバータナノ粒子であり、それらは、UVおよび/または青色光による励起の際に、スペクトルの可視部の少なくとも一部においてルミネセンスを提供するように特に構成される。よって、これらの粒子はまた、本願において、波長コンバータナノ粒子として示され、そのQD(量子ドット)は特定の態様である。かかる波長コンバータナノ粒子は、(例えば硬化したシロキサンポリマーのマトリクス中に埋め込まれたなどの場合には)高い量子収量および安定性を有するルミネセンスを示し得る。さらに、波長コンバータは、比較的温度および/または光化学的に安定であり、および/または透明であり得る。さらに、このプロセスにより、ナノ粒子は、実質的な凝集の欠点なく比較的一様な方法でポリマー中に分散され得る。
【0049】
よって、波長コンバータナノ粒子を使用して、例えばシロキサンポリマー含有体などの物体中に含めてもよい。よって、さらなる側面において、本発明は、波長コンバータナノ粒子に結合したシロキサンポリマーキャッピング配位子を有する、中に埋め込まれた波長コンバータナノ粒子を有するシロキサンポリマーマトリクスを含む波長コンバータを提供し、ここで、
添付の特許請求の範囲においてさらに定義されるとおり、シロキサンポリマーキャッピング配位子は、末端カルボン酸基を含む少なくとも1つのキャッピング基を含むシロキサンポリマーを含み、キャッピング基は、合計で少なくとも6つの炭素原子を含み、シロキサンポリマーマトリクスは、(i)マトリクスであるシロキサンポリマーおよび(ii)マトリクスであるシロキサンポリマーおよびキャッピング配位子シロキサンポリマーの1つまたは2つ以上の間の架橋を有する、マトリクスであるシロキサンポリマーを含む。
【0050】
ルミネセント材料は、特にシリコーンマトリクス中に埋め込まれてもよいが、本発明はかかる波長コンバータに限定されない。
ルミネセント材料に関して上記と同様の態様をまた、埋め込まれたQDに適用する。よって、態様において、キャッピング基は、−(CH
2)
3−NH−CO−(CH
2)
x−COOHを含み、式中、4≦x≦6であり、キャッピング基はキャッピング側基を含み、シロキサンポリマーは、少なくとも22kg/モルのMwを有する。
マトリクス中で、特にシリコーンマトリクス中で、キャッピング配位子を有するナノ粒子を実装する数多くの方法が存在する。
【0051】
第1の態様において、本発明はまた、中に埋め込まれた光コンバータナノ粒子(本願においてはまた、「ナノ粒子」とも示される)を有するシロキサンポリマーマトリクスを含む光コンバータの製造のためのプロセスを提供し、前記プロセスは、以下:
(a)(i)グラフト配位子でグラフトされた外側表面を有する光コンバータナノ粒子、および(ii)硬化性シロキサンポリマーを混合するステップ、および
(b)硬化性シロキサンポリマーを硬化させて、それにより、光コンバータを製造するステップを含み;
− 上記で定義されたとおり、ここで、グラフト配位子は、x1個のSi骨格要素を有するシロキサンを含み、ここで、各シロキサングラフト配位子の少なくとも1つのSi骨格要素は、グラフト官能性を有する側基を含み;
− ここで、硬化性シロキサンポリマーは、y1個のSi骨格要素を有し;
− 式中、特にx1は少なくとも20であり、例えば特に40などであり、なおより特には少なくとも50であり、y1は特に少なくとも2であり、例えば少なくとも7などであり、少なくとも10であり、特にx1/y1≧0.8であり、例えばx1/y1≧0.95などであり、例えば>1などであり、少なくとも≧1.2である。
【0052】
かかるプロセスは、本願において参照により組み込まれる特許文献3に記載されている。よって、波長コンバータの態様において、キャッピング配位子は、x1個のSi骨格要素を有するシロキサンキャッピング配位子を含み、マトリクスであるシロキサンポリマーは、y1個のSi骨格要素を有し、x1は、少なくとも20であり、y1は、少なくとも2であり、x1/y1≧0.8である(さらに具体的な態様については上記および/または特許文献3も参照)。
【0053】
まず短鎖(硬化性)シロキサンポリマー中にグラフトされたナノ粒子を分散させて、次いで長鎖(long change)硬化性シロキサンポリマーと組み合わせることにより、ナノ粒子の良好な照明特性および良好な分布を有する波長コンバータを得られ得ると考えられる。よって、第2の態様において、本発明は、中に埋め込まれた波長コンバータナノ粒子(本願においてはまた、「ナノ粒子」とも示される)を有するシロキサンポリマーマトリクスを含む波長コンバータの製造のためのプロセスを提供し、前記プロセスは:(a)(i1)短鎖シロキサンポリマー(「Sポリマー」)、および(i2)シロキサングラフト配位子でグラフトされた外側表面を有する波長コンバータナノ粒子(「Xポリマー」)を含む第1液、および(ii)硬化性シロキサンポリマー(「Yポリマー」)を混合するステップ、(b)硬化性シロキサンポリマーを硬化させて、それにより、波長コンバータを製造するステップを含み;ここで、短鎖シロキサンポリマーは、s1個のSi骨格要素を有し、ここで、シロキサングラフト配位子は、x1個のSi骨格要素を有するシロキサングラフト配位子を含み、ここで、各シロキサングラフト配位子の少なくとも1つのSi骨格要素は、グラフト官能性を有する基を含み;ここで、硬化性シロキサンポリマーは、y1個のSi骨格要素を有し;式中、x1/s1≧0.8であり、例えばx1/s1≧0.95などであり、例えば>1などであり、少なくとも≧1.2であり、例えば少なくとも>2などであり、s1<y1であり、例えばs1/y1<0.25などであり、特定の態様において、x1<y1である。
【0054】
かかるプロセスは、本願において参照により組み込まれる特許文献2に記載されている。よって、本発明はまた、本願において定義されるとおりの波長コンバータの態様を提供し、ここで、キャッピング配位子は、x1個のSi骨格要素を有するシロキサンキャッピング配位子を含み、シロキサンポリマーマトリクスは、第1タイプのシロキサンポリマーおよび第2タイプのシロキサンポリマーを含み、第2タイプのシロキサンポリマーの少なくとも一部は架橋され、第1タイプのシロキサンポリマーは、s1個のSi骨格要素を有する短鎖シロキサンポリマーを含み、第2タイプのシロキサンポリマーは、y1個のSi骨格要素を有するシロキサンポリマーを含み、式中、x1/s1≧0.8であり、s1<y1であり、x1<y1である(さらに具体的な態様については上記および/または特許文献2も参照)。
【0055】
本願において記載されるプロセスにより得られ得る、かかる波長コンバータは、(硬化したシロキサンポリマーのマトリクス中に埋め込まれた場合には)高い量子収量および安定性を有するルミネセンスを示し得る。さらに、波長コンバータは、比較的温度および/または光化学的に安定であり、および/または透明であり得る。さらに、このプロセスにより、ナノ粒子は、実質的な凝集の欠点なしで比較的一様な方法でポリマー中に分散され得る。上記のとおり、特に波長コンバータナノ粒子は、量子ドットを含む。
【0056】
特に、硬化した(硬化性)シロキサンポリマーのマトリクスは、380〜750nmの範囲から選択される波長を有する光に対して透過性である。例えば、硬化した(硬化性)シロキサンポリマーのマトリクスは、青色、および/または緑色、および/または赤色光に対して透過性であり得る。特に、硬化した(硬化性)シロキサンポリマーのマトリクスは、少なくとも420〜680nmの範囲全体について透過性である。特に、硬化した(硬化性)シロキサンポリマーのマトリクスは、照明ユニットの光源により生成され(以下も参照)、可視波長範囲から選択される波長を有する光に対して、50〜100%の範囲の、特に70〜100%の範囲の光透過性を有する。このように、硬化した(硬化性)シロキサンポリマーのマトリクスは、照明ユニットからの可視光に対して透過性である。透過性または光透過性を、材料に対する第1強度を有する特定の波長の光を提供し、材料を透過した後で測定されたその波長の光の強度を材料に対するその特定の波長で提供された光の第1強度に関連付けることにより決定することができる(化学および物理のCRCハンドブックのE−208およびE−406、第69版、1088〜1989も参照)。光コンバータは、透明でも半透明であってもよいが、特には透明であり得る。特に、光コンバータは実質的に透明であり、および/または実質的に光を散乱させない。光コンバータが透明である場合には、光源の光は、光コンバータにより完全に吸収されないことがある。特に青色光を使用する場合には、青色光を使用して光コンバータナノ粒子を励起してもよく、青色光を使用して(白色光中で)青色構成成分を提供してもよいので、これは関心の対象であり得る。よって、特に、光コンバータナノ粒子に対して実質的に透過性のマトリクス(またはホスト)を提供する硬化性シロキサンポリマーを適用する。
【0057】
これらの波長コンバータを照明デバイスに十分に使用し得るので、本発明は、なおさらなる側面において、光源光(すなわち、光源からの光)を生成するように構成された光源を含む照明デバイスを提供し、これは、(i)本願において定義されるとおりのルミネセント材料、(ii)本願において定義されるとおりの方法で得られ得るルミネセント材料、および(iii)光源光の少なくとも一部を可視コンバータ光に変換するように構成された、本願において定義されるとおりの波長コンバータ、の1つまたは2つ以上である。なおさらなる側面において、本発明はまた、1つまたは2つ以上のバックライトユニットを含む液晶ディスプレイデバイスを提供し、ここで、1つまたは2つ以上のバックライトユニットは、本願において定義されるとおりの1つまたは2つ以上の照明デバイスを含む。
【0058】
用語「上流」および「下流」は、光生成手段(本願においては特に第1光源)からの光の伝播に対する、アイテムまたは特徴の配置に関し、ここで、光生成手段からの光のビーム中での第1位置に対して、光生成手段へより近い光のビーム中の第2位置は「上流」であり、光生成手段からさらに離れた光のビーム中の第3位置は「下流」である。
【0059】
照明デバイスは、例えばオフィス照明システム、世帯用途システム、店舗照明システム、家庭照明システム、アクセント照明システム、スポット照明システム、劇場照明システム、ファイバオプティクス用途システム、プロジェクションシステム、自己点灯ディスプレイシステム、ピクセル化(pixelated)ディスプレイシステム、セグメント化ディスプレイシステム、警告表示システム、医療用照明用途システム、指示標識システム、装飾照明システム、ポータブルシステム、自動車用途、温室照明システム、園芸用照明、またはLCDバックライトなどの一部であってもよく、または上記において適用してもよい。
【0060】
上記のとおり、照明ユニットを、LCDディスプレイデバイス中のバックライトユニットとして使用してもよい。よって、本発明はまた、本願において定義されるとおりの、バックライトユニットとして構成された照明ユニットを含むLCDディスプレイデバイスを提供する。本発明はまた、さらなる側面において、バックライトユニットを含む液晶ディスプレイデバイスを提供し、ここで、バックライトユニットは、本願において定義されるとおりの1つまたは2つ以上の照明デバイスを含む。
【0061】
好ましくは、光源は、動作の間、少なくとも200〜490nmの範囲から選択される波長の光を(光源光を)放射する光源であり、特には、動作の間、少なくとも400〜490nmの範囲、なおより特には、440〜490nmの範囲から選択される波長の光を放射する光源である。この光を波長コンバータナノ粒子により部分的に使用してもよい(さらに以下も参照)。よって、特定の態様において、光源は、青色光を生成するように構成される。
【0062】
特定の態様において、光源は、(例えばLEDまたはレーザダイオードなどの)固体状態LED光源を含む。
用語「光源」はまた、例えば2〜20個の(固体状態)LED光源などの複数の光源を指してもよい。よって、用語LEDはまた、複数のLEDを指してもよい。
【0063】
本願における用語白色光は、当業者に既知である。特に約2700Kおよび6500Kの範囲の一般照明に対し、および特に約7000Kおよび20000Kの範囲のバックライトの目的に対し、特にBBL(黒体軌跡)からの約15SDCM(カラーマッチング標準偏差)内で、特にBBLからの約10SDCM内で、なおより特にはBBLからの約5SDCM内で、特に、約2000〜20000Kの、特には2700〜20000Kの相関色温度(CCT)を有する光を指す。
【0064】
態様において、光源はまた、例えば直接蛍光体変換されたLED(direct phosphor converted LED)(例えば10000Kを得るための蛍光体の薄層を有する青色光発光ダイオード)などの、約5000〜20000Kの相関色温度(CCT)を有する光源光を提供してもよい。よって、特定の態様において、光源は、5000〜20000Kの範囲の、より特には6000〜20000Kの範囲の、例えば8000〜20000Kなどの相関色温度を有する光源光を提供するように構成される。相対的に高い色温度の利点は、光源光中に相対的に高い青色構成成分が存在し得ることであり得る。
【0065】
用語「バイオレット光」または「バイオレット発光」は特に、約380〜440nmの範囲の波長を有する光を指す。用語「青色光」または「青色発光」は特に、(いくらかのバイオレットおよびシアン色を含む)約440〜490nmの範囲の波長を有する光を指す。用語「緑色光」または「緑色発光」は特に、約490〜560nmの範囲の波長を有する光を指す。用語「黄色光」または「黄色発光」は特に、約540〜570nmの範囲の波長を有する光を指す。用語「オレンジ色光」または「オレンジ色発光」は特に、約570〜600の範囲の波長を有する光を指す。用語「赤色光」または「赤色発光」は特に、約600〜750nmの範囲の波長を有する光を指す。用語「ピンク色光」または「ピンク色発光」は、青色および赤色構成成分を有する光を指す。用語「可視」、「可視光」または「可視発光」は、約380〜750nmの範囲の波長を有する光を指す。
【0066】
本願において、例えば「実質的に全ての光」における、または「実質的に・・・からなる」における用語「実質的に」は、当業者により理解されるであろう。用語「実質的に」はまた、「全体的に」、「完全に」、「全て」などを有する態様を含んでもよい。よって、態様において、形容的な「実質的に」をまた除いてもよい。適用可能である場合には、用語「実質的に」はまた、100%を含み、例えば95%以上などを、特には99%以上を、なおより特には99.5%以上などの、90%以上を指してもよい。用語「含む(comprise)」にはまた、用語「含む(comprise)」が「からなる(consist of)」を意味する態様が含まれる。用語「および/または」は特には、「および/または」の前後で言及されたアイテムの1つまたは2つ以上を指す。例えば、句「アイテム1および/またはアイテム2」および同様の句は、アイテム1およびアイテム2の1つまたは2つ以上を指してもよい。用語「含む(comprising)」はまた、態様において、「からなる(consisting of)」を指してもよいが、別の態様においてはまた、「少なくとも定義された種および任意に1つまたは2つ以上の他の種を含む」ことを指してもよい。
【0067】
さらに、説明中および特許請求の範囲中の用語 第1、第2、第3などは、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも一連のまたは時間的順序を説明のために使用されるものではない。このように使用される用語が、適切な状況下で交換可能であること、および本願において説明される本発明の態様は、本願において説明されるかまたは例示されるもの以外の順序での動作が可能であることが理解されなければならない。
【0068】
本願におけるデバイスは、とりわけ動作中に説明される。当業者には明らかであろうとおり、本発明は、動作の方法または動作中のデバイスに限定されない。
【0069】
上記の態様は、本発明を限定するというよりむしろ例示するものであること、および当業者は、多くの代替的態様を添付の特許請求の範囲から逸脱することなく設計することができることに留意しなければならない。特許請求の範囲において、括弧内に配置されたあらゆる参照符号は、特許請求の範囲を限定するものと解釈されてはならない。動詞「含む」およびその語形変化の使用は、特許請求の範囲に記載されたもの以外の要素またはステップの存在を除外するものではない。要素の前の冠詞「a」または「an」は、複数のかかる要素の存在を除外するものではない。本発明を、いくつかの別個の要素を含むハードウエアにより、および好適にプログラムされたコンピュータにより実装してもよい。いくつかの手段を列挙するデバイスクレームにおいて、これらの手段のいくつかを、ハードウエアの1つのおよび同一のアイテムにより具体化してもよい。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないということを示さない。
【0070】
本発明を、説明中に記載したおよび/または添付の図面に示された特徴付ける特徴(characterizing feature)の1つまたは2つ以上を含むデバイスに適用する。本発明はさらに、説明中に記載したおよび/または添付の図面に示された特徴付ける特徴の1つまたは2つ以上を含む方法またはプロセスに関する。
【0071】
追加の利点を提供するために、この特許において検討された種々の側面を組み合わせることができる。さらに、特徴のいくつかは、1つまたは2つ以上の分割出願のための根拠を形成することができる。
【0072】
図面の簡単な説明
本発明の態様を、添付の概略図を参照して例のみの意味で説明し、図中の対応する参照記号は対応する部分を示し、図面は必ずしもスケール通りではなく、ここで:
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】
図1a〜1cは、本発明のデバイスのいくつかの側面を図に描いたものであり;
【
図2】
図2a〜2dは、本発明のさらにいくつかの側面を図に描いたものであり;
【
図3】
図3aは、いくつかの反応スキームおよび分子を図に描いたものであり;
【
図3b】
図3bは、いくつかの反応スキームおよび分子を図に描いたものであり;
【
図3c】
図3cは、いくつかの反応スキームおよび分子を図に描いたものであり;
【
図3d】
図3dは、いくつかの反応スキームおよび分子を図に描いたものであり;
【
図4】
図4は、2つの温度における時間(時間(hours))の関数として、化合物3への化合物2aの変換の変換効率(C)(単位 %)を示す。
【0074】
態様の詳細な説明
図1aは、光源光11を生成するように構成された光源10および光源光11の少なくとも一部を可視コンバータ光121に変換するように構成された波長コンバータ100を含む照明デバイス1を図に描く。ここで、図としては、1つの光源10のみが描かれている。しかしながら、1つより多い光源10が存在してもよい。波長コンバータは、少なくとも部分的に光源10に向けられた上流側101(波長コンバータの外部表面の一部)を有し、(この透過的配置において)光源10から離れて面した下流側102(波長コンバータの外部表面の一部)を有する。波長コンバータ100は、ポリマーホスト材料110中に埋め込まれた波長コンバータナノ粒子120を有するポリマーホスト材料110を含む。これらは、ドット、ロッド、それらの組み合わせなどであり得る(上記も参照)。波長コンバータナノ粒子120は、光源光11による励起の際に可視コンバータ光(および任意にまた、例えばIR放射などの非可視放射)を生成する。コンバータ光121の少なくとも一部は、下流側102から照明デバイス光5としてエスケープする。その少なくとも一部が可視である、この照明デバイス光5は、コンバータ光121の一部を少なくとも含み、また任意にいくらかの残留する光源光11を含み得る。特に、光源光は青色光である。光コンバータナノ粒子または波長コンバータナノ粒子120を、光源の光の変換の際に白色光を提供するように選択してもよい。代替的にまたは追加で、波長コンバータナノ粒子120を、光源の光の変換の際に光を提供するように選択し、この光は光源の光と一緒に白色光を提供する。代替的にまたは追加で、光コンバータナノ粒子または波長コンバータナノ粒子120を、別のルミネセント材料と一緒に、光源の光の変換の際に白色光を提供するように選択してもよい。代替的にまたは追加で、波長コンバータナノ粒子120を、別のルミネセント材料と一緒に、光源の光の変換の際に光を提供するように選択し、この光は光源の光と一緒に白色光を提供する。他のルミネセント材料はまた、複数のルミネセント材料と称されてもよい。上記のものは例である。
図1aは、動作中の照明デバイスを図に描いたものである。
【0075】
図1bは、波長コンバータ100が封止された別の態様を図に描いたものである。封止体400は、波長コンバータを封入し;この封止体は、実質的に周囲から波長コンバータへの酸素(および/またはH
2O)トランスポーターを遮断し得る。これは、波長コンバータナノ粒子120(およびポリマーホスト)の安定性を追加し得る。波長コンバータ100および封止体400の組み合わせはまた、本願において、波長コンバータユニット1100としても示される。
【0076】
図1cは、ここでは液晶ディスプレイデバイス2中での照明ユニット1の用途の1つを図に描いたものであり、これは、1つまたは2つ以上の照明ユニット1(ここでは1つの照明ユニットが図に描かれている)を含むバックライトユニット200およびLCDパネル300を含み、これは、バックライトユニット200の照明ユニット100の照明デバイス光5によりバックライトを受けることができる。
【0077】
例えばルミネセント材料30がLEDダイ(die)上に塗布されるかまたはLEDダイ上の(シリコーン)コーン(cone)中に埋め込まれているなどの場合には、距離dはまたゼロであってもよいが、コンバータ100は、例えば発光ダイオードなどであってもよい光源10から非ゼロの距離dで特に配置されてもよい。コンバータは、任意に光源光21の光の少なくとも一部がコンバータを通って貫通することを可能にし得る。このように、コンバータの下流では、コンバータ光121および光源光11の組み合わせが見出される。波長コンバータの光の下流は、照明デバイス光5として示される。距離dは、特には、0.1〜100mm、特には0.5〜100mm、例えば1〜20mmなどの、特には1〜50mm、光源にすぐ近い用途については約1〜3、およびより離れた用途については5〜50mmの範囲であってもよい。しかしながら、本発明は、d>0である用途に限定されないことに留意しなければならない。本発明および本願において説明される特定の態様をまた、d=0である他の態様に適用してもよい。かかる例においては、波長コンバータは、特にLEDダイと物理的に接触するように構成されてもよい。
【0078】
配位子がグラフトされた半導体系波長コンバータナノ粒子120に加え、波長コンバータ100は任意にまた、例えば、照明ユニット光5の色を変調するために、演色(color rendering)を増加させるために、色温度を変調するためなどに、他のタイプのルミネセント材料を含んでもよい。
【0079】
図2aは、ここでは量子ドット(QD)である、波長コンバータナノ粒子120の例の非限定的な数を図に描いたものである。例の意味で、(i)はさらなる層を有しないドットの形状を有するQD粒子を示す。例えば、これはCdSeなどであってもよい。シロキサングラフト配位子は、明確性の目的のために示さない(以下を参照)。QDの例(ii)は、(CdSe)ZnS(コア)シェルを例の意味で、コアシェル系を図に描いたものである。QDの例(iii)は、例えば(CdSe)ZnSドットインロッド(これはまたコア−シェルQDのタイプである)などのドットインロッドQD系を図に描いたものである。波長コンバータナノ粒子は、参照符号127で示される外側表面を有する。
【0080】
図2bは、グラフト配位子を有するQDを図に描いたものである。見てわかるとおり、この例においては、グラフト官能性を有する側基(基は参照符号131で示される)は終端基ではなく;グラフト配位子は、波長コンバータナノ粒子の外側表面127に結合している。よって、シロキサングラフト配位子は、(少なくとも)2つの尾部を有してもよい。シロキサングラフト配位子が、1つより多いグラフト官能性を有する側基を有する場合には、他の(より複雑な)構造が見出され得る。挿入図においては拡大図が示され、シリコーン骨格要素の両側の2つの尾部は、波長コンバータナノ粒子の外側表面127に結合する、グラフト官能性を有する側基を担持する。グラフト配位子を参照符号130で示す。
図2bにおいては、例の意味で、配位または結合基としてのアミン基が描かれる。しかしながら、本発明においては、結合基はカルボキシレート基(または脱プロトン化されたカルボキシレート基)である。その1つまたは2つ以上の原子は、粒子の表面に配位してもよい。脱プロトン化されたカルボン酸は、負に帯電した系(非局在化した電子)であり、これは粒子の表面でカチオンに配位してもよい。
図2bは特に、非末端グラフト基を有する単一の配位子が2つの「尾部」を有してもよいことを示すために使用される。
【0081】
例えば加熱および容器の混合物中の触媒の存在などによる硬化後、硬化した系、すなわち、
図2cに図で描かれるとおりの光コンバータが得られる。ここでシリコーンを形成する硬化したシロキサンポリマーは、例えばQDなどの光コンバータナノ粒子120のためのポリマーホスト材料110と考えられる(上記も参照)。代替的に、例えば加熱および容器の混合物中の触媒の存在などによる硬化後、硬化した系、すなわち、
図2dに図で描かれるとおりの波長コンバータが得られる。ここでシリコーンを形成する硬化したシロキサンポリマーは、例えばQDなどの波長コンバータナノ粒子120のためのポリマーホスト材料110と考えられる(上記も参照)。マトリクスのシロキサンポリマーを参照符号330で示し、短鎖シロキサンポリマーを参照符号230で示す。
【0082】
上記のとおり、シリコーンとの適合性を有する配位子でこれらのネイティブ配位子を交換することにより、量子ドットをシリコーン材料中で均一に分散させることができる。例においては、市販のシリコーン混合物中で量子ドットを実際に分散させることができた、シリコーン誘導配位子(構造2a、
図3a)が導入された。
【0083】
少量の酸性側基を含むシリコーンは商業的に入手可能ではなく、調製することは極めて困難であるので、商業的に入手可能な化合物1(ABCR、AB109373)を使用して、コハク酸無水物により化合物2aに変換した。化合物2aは、硬化後に固体ポリマーを形成する架橋可能なシリコーン中に、量子ドットを分散させることができる配位子であることを示した。残念なことに、化合物2aは比較的不安定であることが判明した。室温での保管の際、水を形成しながら化合物3へゆっくりと変換された。化合物2aを量子ドット上での配位子交換のために100℃で使用した場合には、迅速に化合物3へ変換される。化合物3は、量子ドットを分散させるための安定化特性を有しなかった。これは、ポリマー層の形成後であっても、量子ドットは、色変換層の寿命に影響を与える、潜在的に不安定な環境下にあることを意味する。さらに、化合物2aにより安定化された量子ドットおよびシリコーンプレポリマーの混合物は、量子ドットがしばらくの間なお分離されていた(これを、フロキュレーション(flocculation)という)という意味では、比較的不安定であることが判明した。このフロキュレーションプロセスは、特に(枯渇効果による)比較的高い粘度により、よって、高分子量シリコーン材料により生じた。
【0084】
化合物2aが化合物2b〜2dにより置き換えられた場合には(
図3bを参照)、
図3aにおける化合物2aについて観察された分解を示さない安定な材料が得られることが見出された。シロキサンポリマー上の側鎖は、本願においてキャッピング基として示される。この基、特にそのカルボキシレート末端基の存在により、キャッピング配位子はナノ粒子または量子ドットに配位(結合)し得る。
図3cは、例えば当業者によりどのように化合物2dが作製されるかを示す。残念なことに、5dからの遊離酸2dの形成は、トリフルオロ酢酸による反応の間にシロキサン鎖の分解に見舞われ、その結果、比較的低分子量を有する材料をもたらす(nの値の減少)。しかしながら、このようにして得られた材料は、溶媒中で極めて良好に量子ドットを分散させることができ、固体マトリクスを作製するのに使用される高分子量(〜50kg/mol)シリコーン系プレポリマー中では、フロキュレーションが迅速に生じる。
【0085】
図3cにおいて、化合物2dは、非末端Si原子にキャッピング基を有する。さらに、キャッピング基は、Siおよびヘテロ原子Nの間に3つの炭素原子を含み、ヘテロ原子およびカルボン酸の−OH基の間に8つのさらなる炭素原子を含み、すなわち、合計で11個の炭素原子を含む。シロキサンについての式の観点から:
(R
1R
2R
3)Si−(O−Si(R
4R
5))n−R
6
であり、ここで、単一のR
4またはR
5には、キャッピング配位子R
8が含まれる。キャッピング配位子についての式R
8の観点から:
−(CH
2)
a−NH−CO−(CH
2)
x−COOH
であり、aについての値は2dのキャッピング基について3であり、xについての値は6である。系2a(
図3Aを参照)については、これらの値は、それぞれa=3およびx=2である(すなわち、合計で7個の炭素原子)。特に、aは少なくとも3であり、xは少なくとも4であり、キャッピング基中の炭素原子の合計数を少なくとも9にする。
【0086】
驚くべきことに、
図3dに概説するとおり、我々は非保護酸6d(または6bまたは6c)を単に使用することにより、化合物2d(およびまた化合物2bおよび2c)を作製することができた。この場合に、シロキサン結合は、化学反応の間攻撃を受けずに残留した。
図3dに示される反応における出発アミン由来のシリコーン1を、類似のポリマーにより置き換えたが、より高い粘度により、よって、より大きな分子量(およそ28000vs.およそ5000g/モル)により、当初アミンから作製されたものと同程度の良好さで機能する配位子が得られた。しかしながら、マトリクスを形成するプレポリマーの分子量に応じて、より長い配位子を使用することにより、より短いものと比較してフロキュレーションの遅れまたは不在をもたらす。これは材料の加工における利点である。
【0087】
図3a〜3dは、(末端基としてではなく)側基としてのキャッピング基を有するシロキサンキャッピング配位子を図に描いたものであり、これが最良の結果を提供するものと考えられる。
【0088】
例
合成.
例として、アミンABCR AB109373(短鎖)から出発する化合物2dの合成を提供する。
A:A.H.F.Lee et al.,Tetrahedron 59(2003)833−839により6−((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)−6−オキソヘキサン酸(6b)を、アジピン酸から作製した。
B:コポリ(ジメチルシラノン−6−((3−(メチル(オキソ)シリル)プロピル)アミノ)−6−オキソヘキサン酸)(2b)。
【0089】
20mlの酢酸エチル中の450mgの6−((2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)オキシ)−6−オキソヘキサン酸(6b;1.85mmol)の溶液を、60mlの酢酸エチル中の9.25gのコポリ(ジメチルシラノン−4−(3−(メチル(オキソ)シリル)プロピル)アミン)(1、1.85mmolのアミノ基を含むもの)および0.84gのジイソプロピルエチルアミン(6.48mmol)の溶液を滴下して加えた。72時間撹拌した後、溶液を30mlの2N 塩酸溶液で5回、30mlのブラインで3回洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。15mlのn−ヘプタン中に溶解した後、ろ紙上でろ過した。6.6g(70%)のコポリ(ジメチルシラノン−6−((3−(メチル(オキソ)シリル)プロピル)アミノ)−6−オキソヘキサン酸)(2b)が、透明油として得られた。
【0090】
高分子量材料1から作製された配位子を同様のやり方で作製して、極めて粘度の高いゲルとして得た。
低分子量を有するおよび高分子量を有する化合物2cおよび2dを、上記の2bについてのものと同様にして作製した。化合物6cおよび6dを、ピメリン酸およびスベリン酸からそれぞれ出発する、化合物6bについて記載されたものと同じように調製した。
【0091】
熱安定性
既に検討したとおり(
図3aを参照)、2aのニート(neat)サンプルは、加熱の際に化合物3への変換を示した。
図4は、100℃および26℃での時間の関数としての変換を示す。
【0092】
変換を、NMRを採用して測定した。100℃で測定された半減期は約24時間である。室温(26℃)であっても、3への変換は観察された。化合物2b、2cおよび2dのニートサンプルを100℃で72時間加熱した。NMR測定は、この処理後に劣化を示唆するスペクトル変化を示さなかった。
これは、2aと比較して、化合物2b〜2dの安定性の強い増加をはっきりと示す。
【0093】
量子ドット混合物の安定性
少量の商業的に入手可能なヘプタン中のQDを、低分子アミノ官能化シロキサンからまたは高分子量シロキサンから作製された1mlの純配位子2b、2cおよび2dに加えた。ほぼ全ての場合において、懸濁した混合物が得られた。混合物を100℃で約16時間撹拌した。得られた配位子−QD混合物は透明であり、これは配位子交換の証拠を提供する。冷却後、混合物を、種々の粘度およびこれによる分子量を有するシリコーンに直接添加した。混合の程度を、得られた混合物の視覚検査により決定した。結果を表1に示す。少なくとも100cStまでの粘度のシリコーンとの混合により、良好な分散が得られることが示される。これは、量子ドットのネイティブ配位子を使用する場合には不可能である。
【0094】
【表1】
【0095】
色変換層
色コンバータとして作用する量子ドットを有する層を調製するために、種々の配位子を有するドットをトルエン中に溶解し、ここで、シリコーンの反応混合物と混合し、すなわち:AB109389(Mw 2000〜3000)を含む0.2mlのヒドロキシシロキサン、0.8mlのビニル基含有AB109356(Mw 約5000)および硬化のための少量の白金触媒、すなわち:AB146697である。層を150℃で1時間硬化させ、シリコーンゴムの非散乱フィルムが得られた。
【0096】
高Mwバージョンの配位子2bでコーティングされたQドットを、市販のシリコーン前駆体材料(KJR9226)と混合した。この材料中で、短バージョンの配位子でコーティングされたqドットにより、qドットの(枯渇)フロキュレーションを示す懸濁した混合物が得られる。より高いMw配位子バージョンは透明なままであり、150℃で2時間硬化した後に、透明なフィルムが得られた。