(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る配線基板をセラミックパッケージに適用した実施の形態例を
図1及び
図2を参照しながら説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0022】
セラミックパッケージ10は、本実施の形態に係る配線基板12と、枠体14と、蓋体16とが、この順番で積層されて構成されている。
【0023】
配線基板12は、絶縁基板18と、絶縁基板18の上面に形成された上面配線層20と、絶縁基板18の下面に形成された下面配線層22と、絶縁基板18の内部に形成された内部配線層24と、該内部配線層24と下面配線層22とを電気的に接続する第1ビアホール26aと、内部配線層24と上面配線層20とを電気的に接続する第2ビアホール26bとを有する。
【0024】
このセラミックパッケージ10は、絶縁基板18の上面と枠体14とで囲まれた収容空間28に、水晶振動子30が導体層32を介して上面配線層20に電気的に接続されている。さらに、水晶振動子30を保護するため、枠体14の上面に、蓋体16がガラス層34を介して気密に封止されている。
【0025】
上述したセラミックパッケージ10では、収容空間28内に、水晶振動子30を実装した例を示したが、その他、抵抗体、フィルタ、コンデンサ、半導体素子のうち、少なくとも1種以上を実装してもよい。
【0026】
そして、セラミックパッケージ10を構成する絶縁基板18、枠体14及び蓋体16は、同一のセラミック素地にて構成している。
【0027】
絶縁基板18等を構成するセラミック素地は、Al
2O
3を主結晶相とし、その他、BaAl
2Si
2O
8結晶相のみを含む。
【0028】
具体的には、AlをAl
2O
3換算で89.0〜92.0質量%、SiをSiO
2換算で2.0〜5.0質量%、MnをMnO換算で2.0〜5.0質量%、MgをMgO換算で0〜2.0質量%、BaをBaO算で0.05〜2.0質量%含むことが好ましい。
【0029】
絶縁基板18等は、Al
2O
3粉末を89.0〜92.0質量%、SiO
2粉末を2.0〜5.0質量%、MnCO
3粉末を3.2〜8.1質量%(MnO換算で2.0〜5.0質量%)、MgO粉末を0〜2.0質量%、BaCO
3粉末を0.06〜2.6質量%(BaO換算で0.05〜2.0質量%)含有する成形体を作製した後、成形体を1200〜1350℃(好ましくは1200〜1300℃)にて焼成することにより作製される。
【0030】
この場合、Al
2O
3については、原料(Al
2O
3粉)の平均粒度が0.3〜2.5μmであり、且つ、焼結体とした際のAl
2O
3の結晶粒径が0.3〜1.5μmであることが好ましい。Al
2O
3の結晶粒径は、さらに好ましくは0.5〜1.0μmである。
【0031】
なお、原料の平均粒度は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法(HORIBA製、LA−920)により測定して得られる体積基準粒度分布において、小粒径側からの通過分積算(積算通過分率)50%の粒子径をいう。
【0032】
焼結体とした際の結晶粒径は、以下のようにして求めた。すなわち、焼結体の表面を、走査型電子顕微鏡にて撮像したとき、撮像した画像全体で500〜1000個程度の結晶粒子が写るように走査型電子顕微鏡の倍率を調整した。そして、撮像した画像中、任意の100個以上の結晶粒子を、画像処理ソフトを用いて、各々真円に換算した粒径の平均により算出した。
【0033】
MgO粉末は、Al
2O
3の焼結助剤として添加され、SiO
2粉末は、Al
2O
3の焼結助剤として、また、Mn
2SiO
4ガラス相を生成させて焼結温度の低下を図るために添加される。BaCO
3粉末は、硬度が高くなるMnAl
2O
4の生成を抑制するために添加される。
【0034】
従来では、TiO
2粉末、Ce
2O
3粉末、Fe
3O
4粉末のいずれか1以上を含むようにしているが、誘電正接が大きくなるため、できるだけ含まないことが好ましい。含めるとしても、0.1質量%以下である。誘電正接は、1MHz〜10GHzにおいて、30×10
-4以下が好ましい。さらに好ましくは、15×10
-4以下、より好ましくは10×10
-4以下である。これにより、配線基板12を高周波用回路基板にも適用することができ、好ましい。
【0035】
なお、必要に応じて、着色剤としてMo酸化物やW酸化物を1.0質量%以下含めるようにしてもよい。
【0036】
これにより、温度1200〜1350℃(好ましくは1200〜1300℃)という低温にて焼結することができ、曲げ強度が600MPa以上の絶縁基板18を実現することができる。「曲げ強度」とは、4点曲げ強度をいい、JISR1601(ファインセラミックスの曲げ試験方法)に基づいて室温にて測定した値をいう。
【0037】
なお、Alの含有量をAl
2O
3換算で89.0〜92.0質量%とすることで、生成されるAl
2O
3の量が最適となり、焼成温度が上昇しても、Al
2O
3の結晶粒径の増大を抑えることができ、もって曲げ強度の向上を図り易くなる。
【0038】
Mgの含有量をMgO換算で0〜2.0質量%とすることで、焼結温度の高温化を抑制して、アルミナの粒成長を抑えることができ、強度低下を抑えることができる。
【0039】
Siの含有量をSiO
2換算で2.0〜5.0質量%とすることで、生成されるガラス相の量の低下を抑えることができ、1200〜1350℃(好ましくは1200〜1300℃)での緻密化を達成し易くなり、また、生成されるガラス
相の軟化温度の低下並びに気孔率の増大を抑えることができる。さらに、曲げ強度の低下を抑えることができる。
【0040】
Mnの含有量をMnCO
3換算で3.2〜8.1質量%とすることで、生成されるガラス相の量の低下を抑えることができ、1200〜1350℃(好ましくは1200〜1300℃)での緻密化を達成し易くなり、また、生成されるガラス
相の軟化温度の低下並びに気孔率の増大を抑えることができる。さらに、曲げ強度の低下を抑えることができる。
【0041】
Baの含有量をBaO換算で0.05〜2.0質量%とすることで、MnAl
2O
4の生成を抑制し易くなり、強度低下を抑えることができる。また、焼結温度の高温化を抑制して、アルミナの粒成長を抑えることができ、強度低下を抑えることができる。
【0042】
従って、Al、Si、Mn、Mg及びBaを上述した比率で含有させることで、生成されるガラス相の強度を高めることができ、その結果、曲げ強度が高くなり、本実施の形態に係る配線基板12を用いたセラミックパッケージ10の小型化を促進させることができる。しかも、低い焼成温度にて作製することができ、コストの低廉化に有利になる。さらに、生成されるBaAl
2Si
2O
8結晶相によって、硬度が極度に高くなることが抑制され、押圧ローラーによるチップ分割でのチッピング発生率を低下させることができ、生産性を向上させることができる。
【0043】
配線基板12は、上述した絶縁基板18にて構成しているため、曲げ強度が600MPa以上である。曲げ強度が600MPaよりも低くなると、二次実装の際に熱応力が加わって破壊するおそれがある。あるいは、ハンドリングの際や使用の際の衝撃等により破壊するおそれがある。曲げ強度が600MPa以上であれば、このような破壊のリスクを回避することができる。
【0044】
また、絶縁基板18等を構成するセラミック素地を表面研磨せずに、セラミックパッケージ10の絶縁基板18及び蓋体16として使用しても、蓋体16を気密封止する際の破壊を防止することができ、セラミックパッケージ10の製造コスト及び信頼性を改善することができる。
【0045】
そして、絶縁基板18等を構成するセラミック素地が、上述した組成を有することから、温度1200〜1350℃(好ましくは1200〜1300℃)という低温にて焼結させることができる。そのため、セラミック素地の前駆体(焼成前の成形体)と、各種配線層(上面配線層20、下面配線層22、内部配線層24)及びビアホール(第1ビアホール26a、第2ビアホール26b)とを同時焼成することで、配線基板12を作製することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0046】
さらに、この配線基板12では、各種配線層が銅とタングステンあるいは銅とモリブデンあるいは銅とタングステン及びモリブデンを含み、タングステンの粒径及びモリブデンの粒径(焼成後)が1.0μm未満である。さらに好ましくは、0.7μm以下である。
【0047】
焼成後の各種配線層に含まれ
るタングステン及び/又はモリブデンの粒径は、以下のようにして求めた。すなわち、各種配線層の表面を、走査型電子顕微鏡にて撮像したとき、撮像した画像全体で500〜1000個程度のタングステン粒子及び/又はモリブデン粒子が写るように走査型電子顕微鏡の倍率を調整した。そして、撮像した画像中、任意の100個以上のタングステン粒子及び/又はモリブデン粒子を、画像処理ソフトを用いて、各々真円に換算した粒径の平均により算出した。
【0048】
また、配線基板12では、上面配線層20及び下面配線層22の表面粗さRaは、2.5μm未満である。好ましくは1.7μm以上2.5μm未満であり、さらに好ましくは1.7μm以上2.0μm以下である。表面粗さは、上面配線層20及び下面配線層22の表面をレーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製:VK−9700)で倍率500倍にて測定した。
【0049】
上面配線層20及び下面配線層22は、絶縁基板18との接着強度が、2kg以上であった。この範囲であれば、配線基板12の製造過程、運搬中、セラミックパッケージ10として使用している過程等において、上面配線層20及び下面配線層22が剥離(一部剥離、全部剥離を含む)することがなく、歩留まりの向上、信頼性の向上に寄与する。
【0050】
ここで、接着強度とは、絶縁基板18と導体(上面配線層20及び下面配線層22等)との密着力を表す概念である。具体的には、平面形状が正方形で一辺の長さが2mmの導体パターンに直径0.6mmの錫被覆軟銅線をL字型に曲げたリード線を半田付けし、20mm/secの引張り速度で垂直に引っ張ったときの引張り強度をいう。この導体パターンには、半田の濡れ性を確保するためにNiめっきを施してもよい。
【0051】
次に、本実施の形態に係る配線基板12を有するセラミックパッケージ10の製造方法について
図2を参照しながら説明する。
【0052】
先ず、
図2のステップS1aにおいて、Al
2O
3粉末を89.0〜92.0質量%、SiO
2粉末を2.0〜5.0質量%、MnCO
3粉末を3.2〜8.1質量%、MgO粉末を0〜2.0質量%、BaCO
3粉末を0.06〜2.6質量%含有する混合粉末を準備し、ステップS1bにおいて、有機成分(バインダー)を準備し、ステップS1cにおいて、溶剤を準備する。
【0053】
Al
2O
3粉末の平均粒度は、上述したように、0.3〜2.5μmが好ましい。SiO
2粉末の平均粒度は、0.1〜2.5μmが好ましい。MnCO
3粉末の平均粒度は、0.5〜4.0μmが好ましい。MgO粉末の平均粒度は0.1〜1.0μmが好ましい。BaCO
3粉末の平均粒度は、0.5〜4.0μmが好ましい。
【0054】
ステップS1bにおいて準備される有機成分(バインダー)は、樹脂、界面活性剤、可塑剤等が挙げられる。樹脂としては、例えばポリビニルブチラールが挙げられ、界面活性剤としては、例えば3級アミンが挙げられ、可塑剤としては、例えばフタル酸エステル(例えばフタル酸ジイソノニル:DINP)が挙げられる。
【0055】
ステップS1cにおいて準備される溶剤は、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤等が挙げられる。アルコール系溶剤としては、例えばIPA(イソプロピルアルコール)が挙げられ、芳香族系溶剤としては、例えばトルエンが挙げられる。
【0056】
そして、次のステップS2において、上述の混合粉末に、有機成分及び溶剤を混合、分散させた後、ステップS3において、プレス法、ドクターブレード法、圧延法、射出法等の周知の成形方法によって、セラミック素地の前駆体であるセラミック成形体(セラミックテープとも記す)を作製する。例えば混合粉末に有機成分や溶剤を添加してスラリーを調製した後、ドクターブレード法によって所定の厚みのセラミックテープを形成する。あるいは、混合粉末に有機成分を加え、プレス成形、圧延成形等により所定の厚みのセラミックテープを作製する。
【0057】
ステップS4において、セラミックテープを所望の形状に切断、加工して、第1基板用の広い面積の第1テープと、第2基板用の広い面積の第2テープと、枠体用の第3テープと、蓋体用の第4テープを作製し、さらに、マイクロドリル加工、レーザー加工等により、第1ビアホール26a及び第2ビアホール26bを形成するための貫通孔を形成する。
【0058】
次に、ステップS5において、上述のように作製した第1テープ及び第2テープに対して、上面配線層20、下面配線層22、内部配線層24を形成するための導体ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等の方法により印刷塗布し、さらに、所望により、導体ペーストを貫通孔内に充填する。
【0059】
導体ペーストは、導体成分として、CuとWの混合物、あるいはCuとMoの混合物、あるいはCuとWとMoの混合物を用い、これにAl
2O
3粉末、又はSiO
2粉末、又はセラミック素地と同等の粉末を例えば1〜20質量%、特に8質量%以下の割合で添加したものが好ましい。これにより、導体層の導通抵抗を低く維持したままアルミナ焼結体と導体層の密着性を高め、めっき欠け等の不良の発生を防止することができる。
【0060】
その後、ステップS6において、導体ペーストを印刷塗布した第1テープ及び第2テープ並びに枠体用の第3テープを位置合わせし、積層圧着して、積層体を作製する。
【0061】
その後、ステップS7において、積層体の両面にチップ分割のための分割溝を例えばナイフカットにて形成する。
【0062】
次のステップS8において、積層体及び第4テープを、水素を5%以上含む、水素と窒素のフォーミングガス雰囲気、例えばH
2/N
2=30%/70%のフォーミングガス雰囲気(ウェッター温度25〜47℃)で、1200〜1350℃(好ましくは1200〜1300℃)の温度範囲で焼成する。これによって、積層体及び導体ペーストが同時焼成された積層原板(多数個取り基板)が作製される。この焼成によって、上述したように、結晶相が、Al
2O
3を主結晶相とし、その他、BaAl
2Si
2O
8結晶相のみを含むセラミック素地、すなわち、多数個取り基板を作製することができる。
【0063】
焼成雰囲気を、上述のようなフォーミングガス雰囲気で行うことで、導体ペースト中の金属の酸化を防止することができる。焼成温度は、上述した温度範囲が好ましい。焼成温度が1200℃よりも低いと、緻密化が不十分で曲げ強度が600MPaに達せず、また、1350℃よりも高くなると、積層体を構成する第1テープ、第2テープ及び第3テープの収縮率のばらつきが大きくなり、寸法精度が低下する。これは歩留りの低下につながり、コストの高価格化を招く。もちろん、焼成温度が高くなれば、それだけ設備にコストがかかるという問題もある。
【0064】
次に、ステップS9において、上述の多数個取り基板にめっき処理を行って、該多数個取り基板の表面に形成されている上面配線層20及び下面配線層22に、Ni、Co、Cr、Au、Pd及びCuのうち、少なくとも1種からなるめっき層を形成する。
【0065】
その後、ステップS10において、多数個取り基板を、押圧ローラー等で押し当てて複数に分割し(チップ分割)、収容空間28を有する複数の配線基板12を作製する。ステップS11において、複数の配線基板12の各収容空間28にそれぞれ水晶振動子30を上面配線層20に導体層32を介して実装する。
【0066】
そして、ステップS12において、各配線基板12の上面に、封止用のガラス層34が形成されたセラミック製の蓋体16により気密に封止することによって、内部に水晶振動子30が実装された複数のセラミックパッケージ10が完成する。
【0067】
このセラミックパッケージ10の製造方法においては、上述したように、結晶相が、Al
2O
3を主結晶相とし、その他、BaAl
2Si
2O
8結晶相のみを含み、曲げ強度が600MPa以上のセラミック素地を作製することができる。すなわち、セラミックパッケージ10等の小型化及び薄型化、並びに曲げ強度の向上を図ることができるセラミック素地を、低い焼成温度にて作製することができ、セラミック素地並びにセラミック素地を用いた製品のコストを低減することができる。
【0068】
上述のセラミックパッケージ10の絶縁基板18を構成するセラミック素地は、結晶相が、Al
2O
3を主結晶相とし、その他、BaAl
2Si
2O
8結晶相のみを含む構成としたが、以下に説明する第1変形例
、第
2変形例に係るセラミック素地を採用してもよい。
【0069】
(第1変形例)
第1変形例に係るセラミック素地は、結晶相が、結晶相が、Al
2O
3及びZrO
2を主結晶相とし、その他、Mn
3Al
2(SiO
4)
3又はMgAl
2O
4を含む。
【0070】
具体的には、AlをAl
2O
3換算で70.0〜90.0質量%、ZrをZrO
2換算で10.0〜30.0質量%、Al
2O
3とZrO
2の合計を100質量%とした場合、MnをMnO換算で2.0〜7.0質量%、SiをSiO
2換算で2.0〜7.0質量%、BaをBaO換算で0.5〜2.0質量%、MgをMgO換算で0〜2.0質量%含むことが好ましい。
【0071】
第1変形例に係るセラミック素地は、例えばAl
2O
3粉末を70.0〜90.0質量%、ZrO
2粉末を10.0〜30.0質量%、MnO粉末を2.0〜7.0質量%、SiO
2粉末を2.0〜7.0質量%、BaO粉末を0.5〜2.0質量%、MgO粉末を0〜2.0質量%含有する成形体を作製した後、成形体を1200〜1350℃にて焼成することにより作製される。このセラミック素地の曲げ強度は650MPa以上である。
【0072】
(第2変形例)
第2変形例に係るセラミック素地は、結晶相が、3Al
2O
3・2SiO
2を主結晶相とし、その他、Al
2O
3及びZrO
2を含む。
【0073】
磁器組成としては、AlをAl
2O
3換算で40.0〜70.0質量%、ZrをZrO
2換算で5.0〜40.0質量%、SiをSiO
2換算で10.0〜30.0質量%、MnをMnO換算で2.0〜8.0質量%含むことが好ましい。
【0074】
添加剤として、Ba、Ti、Y、Ca及びMgのうち、少なくとも1種の元素を含んでもよい。Al
2O
3、ZrO
2、SiO
2及びMnOの合計を100質量%としたとき、Baを含む場合は、BaO換算で1.5質量%以下含み、Tiを含む場合は、TiO
2換算で1.5質量%以下含み、Yを含む場合は、Y
2O
3換算で1.5質量%以下含み、Caを含む場合は、CaO換算で1.5質量%以下含み、Mgを含む場合は、MgO換算で1.5質量%以下含むことが好ましい。
【0075】
第2変形例に係るセラミック素地は、例えば3Al
2O
3・2SiO
2(ムライト)粉末を50.0〜93.0質量%、ZrO
2粉末を5.0〜40.0質量%、Al
2O
3粉末を0〜36.0質量%、SiO
2粉末を0〜16.0質量%、MnO粉末を2.0〜8.0質量%含有する成形体を作製した後、成形体を1200〜1400℃にて焼成することにより作製される。このセラミック素地の曲げ強度は450MPa以上である。
【0076】
上述した第1変形例及び第2変形例に係るセラミック素地を用いた配線基板においても、低温にて焼結することができ、配線層の絶縁基板に対する密着性の向上を図ることができる配線基板とすることができる。
【0077】
上述した例では、配線基板をセラミックパッケージに適用した例を示したが、高周波用回路基板等にも適用することができる。
【実施例】
【0078】
実施例1〜9、比較例1について、
図1に示す配線基板12と同様の配線基板を作製し、表面配線層及び内部配線層のシート抵抗、表面配線層及び内部配線層に含まれるW及びMoの粒径、表面配線層の表面粗さRa、並びに絶縁基板18の結晶粒径、結晶相、抗折強度(曲げ強度)及び表面配線層の接着強度を確認した。作製した配線基板は、
図1に示す上面配線層、下面配線層及び内部配線層を形成し、第1ビアホール及び第2ビアホールの形成は省略した。
【0079】
[絶縁基板]
絶縁基板18として、下記表1に示すように、6種類の絶縁基板(No.1〜6)を用いた。以下に、その内訳を説明する。
【0080】
【表1】
【0081】
(絶縁基板No.1)
原料粉末の主成分としてAl
2O
3粉末を用いた。Al
2O
3粉末の平均粒径は1.1μmである。また、焼成後の絶縁基板の組成は、Al
2O
3:92.5質量%、SiO
2:4.0質量%、MnO:2.9質量%、MgO:0.3質量%、BaO:0.2質量%である。
【0082】
(絶縁基板No.2)
Al
2O
3粉末の平均粒径が0.5μmであること以外は、絶縁基板No.1と同じである。
【0083】
(絶縁基板No.3)
焼成後の絶縁基板の組成が、Al
2O
3:89.6質量%、SiO
2:5.6質量%、MnO:4.1質量%、MgO:0.4質量%、BaO:0.3質量%であること以外は、絶縁基板No.2と同じである。
【0084】
(絶縁基板No.4)
原料粉末の主成分としてAl
2O
3粉末とZrO
2粉末を用いた。そのうち、Al
2O
3粉末の平均粒径は1.1μmである。また、焼成後の絶縁基板の組成は、Al
2O
3:68.8質量%、ZrO
2:18.7質量%、SiO
2:4.8質量%、MnO:5.3質量%、MgO:1.0質量%、BaO:1.3質量%である。
【0085】
(絶縁基板No.5)
原料粉末の主成分として3Al
2O
3・2SiO
2粉末とZrO
2粉末を用いた。また、焼成後の絶縁基板の組成は、Al
2O
3:50.5質量%、ZrO
2:24.1質量%、SiO
2:19.9質量%、MnO:4.4質量%、BaO:1.1質量%である。
【0086】
(絶縁基板No.6)
原料粉末の主成分としてAl
2O
3粉末を用いた。Al
2O
3粉末の平均粒径は1.8μmである。また、焼成後の絶縁基板の組成は、Al
2O
3:94.0質量%、SiO
2:3.0質量%、MgO:3.0質量%である。
【0087】
<実施例1>
絶縁基板No.1の原料粉末に、有機成分として、ポリビニルブチラール、3級アミン及びフタル酸エステル(フタル酸ジイソノニル:DINP)を混合し、溶剤として、IPA(イソプロピルアルコール)及びトルエンを混合、拡散してスラリーを調製し、その後、ドクターブレード法にて厚さ60〜270μmのセラミックテープを作製した。そして、セラミックテープを所望の形状に切断、加工して、第1テープ〜第4テープを作製した。
【0088】
第1テープ及び第2テープに対して、表面配線層(上面配線層、下面配線層)及び内部配線層を形成するための導体ペーストを印刷塗布した。導体ペーストは、導体成分として、CuとWとの混合物を用いた。焼成後の導体部の組成は、Cu:12vol%、W:88vol%である。
【0089】
その後、導体ペーストを印刷塗布した第1テープ及び第2テープを位置合わせし、積層圧着して、積層体を作製した。この積層体並びに第3テープ及び第4テープを、焼成温度(最高温度)が1350℃、H
2+N
2のフォーミングガス雰囲気にて焼成して実施例1に係る配線基板並びに第1セラミック基板及び第2セラミック基板を作製した。表面配線層及び内部配線層は同時焼成にて形成した。第1セラミック基板は、結晶粒径と結晶相を確認するために使用され、第2セラミック基板は、抗折強度を確認するために使用される。第1セラミック基板及び第2セラミック基板を作製することは、以下の実施例2〜9並びに比較例1についても同様である。上面配線層は、接着強度の測定用に平面形状が正方形で一辺の長さが2mmの大きさとした。
【0090】
<実施例2>
表面配線層(上面配線層、下面配線層)及び内部配線層を形成するための焼成後の導体部の組成を、Cu:18vol%、W:82vol%としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る配線基板を作製した。
【0091】
<実施例3>
絶縁基板No.2の原料粉末を用い、焼成後の導体部の組成を、Cu:23vol%、W:77vol%とし、焼成温度(最高温度)を1270℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る配線基板を作製した。
【0092】
<実施例4>
焼成後の導体部の組成を、Cu:35vol%、W:65vol%としたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例4に係る配線基板を作製した。
【0093】
<実施例5>
絶縁基板No.3の原料粉末を用い、焼成後の導体部の組成を、Cu:45vol%、W:55vol%とし、焼成温度(最高温度)を1200℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係る配線基板を作製した。
【0094】
<実施例6>
焼成後の導体部の組成を、Cu:53vol%、W:47vol%としたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例6に係る配線基板を作製した。
【0095】
<実施例7>
導体ペーストの導体成分として、CuとMoとの混合物を用い、焼成後の導体部の組成をCu:53vol%、Mo:47vol%としたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例7に係る配線基板を作製した。
【0096】
<実施例8>
絶縁基板No.4の原料粉末を用い、焼成後の導体部の組成を、Cu:15vol%、W:85vol%とし、焼成温度(最高温度)を1310℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8に係る配線基板を作製した。
【0097】
<実施例9>
絶縁基板No.5の原料粉末を用い、焼成後の導体部の組成を、Cu:25vol%、W:75vol%とし、焼成温度(最高温度)を1290℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9に係る配線基板を作製した。
【0098】
<比較例1>
絶縁基板No.6の原料粉末を用い、焼成後の導体部の組成を、Cu:5vol%、W:95vol%とし、焼成温度(最高温度)を1500℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る配線基板を作製した。
【0099】
[評価方法]
表面配線層及び内部配線層のシート抵抗、W及びMoの粒径及び表面配線層の表面粗さRaを以下のように確認した。
【0100】
(シート抵抗)
上面配線層、下面配線層及び内部配線層の各シート抵抗を4端子法にて測定し、その平均値をシート抵抗とした。
【0101】
(W及びMoの粒径)
上面配線層、下面配線層及び内部配線層の表面を、走査型電子顕微鏡にて撮像したとき、撮像した画像全体で500〜1000個程度のW粒子及びMo粒子が写るように走査型電子顕微鏡の倍率を調整した。そして、撮像した画像中、任意の100個以上のW粒子及びMo粒子を、画像処理ソフトを用いて、各々真円に換算した粒径の平均により算出した。
【0102】
(表面粗さRa)
上面配線層及び下面配線層の各表面をレーザ顕微鏡(株式会社キーエンス製:VK−9700)で倍率500倍にて測定し、その平均値を表面粗さRaとした。
【0103】
(接着強度)
平面形状が正方形で一辺の長さが2mmの上面配線層に直径0.6mmの錫被覆軟銅線をL字型に曲げたリード線を半田付けし、20mm/secの引張り速度で垂直に引っ張ったときの引張り強度を測定した。評価基準は、接着強度2kgを境に、それよりも高い範囲を3段階A、B及びCに分け、最も接着強度が高い範囲をAとし、接着強度が低くなるに従って順番に評価B、Cとした。また、接着強度が2kg未満を評価Dとした。
【0104】
絶縁基板の結晶粒径、結晶相及び抗折強度(曲げ強度)を以下のように確認した。
【0105】
(Al
2O
3の結晶粒径)
粉末化する前の各第1セラミック基板の表面を、上述したように、走査型電子顕微鏡にて撮像したとき、撮像した画像全体で500〜1000個程度の結晶粒子が写るように走査型電子顕微鏡の倍率を調整した。そして、撮像した画像中、任意の100個以上の結晶粒子を、画像処理ソフトを用いて、各々真円に換算した粒径の平均により算出した。
【0106】
(結晶相)
各第1セラミック基板を、X線回折により同定した。結晶相が含まれているかどうかの判定基準として、アルミナのメインピーク(104面)の強度に対し、3%以上のメインピーク強度を持つものとした。すなわち、アルミナのメインピークの強度に対し、3%以上のメインピーク強度の位置(ピーク位置)とミラー指数並びに格子定数等に基づいて、含まれる結晶相を確認した。
【0107】
(抗折強度)
各第2セラミック基板を、JISR1601の4点曲げ強度試験に基づいて室温にて測定した。
【0108】
[評価結果]
実施例1〜9及び比較例1の評価結果を下記表2に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
実施例1〜9は、いずれもAl
2O
3の結晶粒径が1.5μm未満であり、タングステン又はモリブデンの粒径が1.0μm未満であり、表面配線層の表面粗さRaが2.5μm未満であった。その結果、表面配線層及び内部配線層のシート抵抗を6.0mΩ/sq.以下に低減することができ、接着強度も2kg以上であった。
【0111】
その中でも、実施例5〜7は、Al
2O
3の結晶粒径が1.0μm未満で、且つ、表面配線層の表面粗さRaが2.0μm未満であることから、表面配線層及び内部配線層のシート抵抗を3.0mΩ/sq.以下に低減することができ、接着強度も評価Aであった。
【0112】
また、実施例1〜7の絶縁基板は、Al
2O
3結晶相の他、BaAl
2Si
2O
8結晶相を含み、実施例8の絶縁基板は、Al
2O
3結晶相の他、ZrO
2結晶相及びMgAl
2O
4結晶相を含み、実施例9の絶縁基板は、Al
2O
3結晶相の他、ZrO
2結晶相及び3Al
2O
3・2SiO
2結晶相を含むことから、抗折強度として600MPa以上が得られている。
【0113】
これに対して、比較例1は、接着強度の評価がDであった。これは、絶縁基板の結晶粒径が4.0μmと大きく、表面配線層の表面粗さRaも3.0μmと大きいことから、表面配線層の絶縁基板に対する密着性が低下したからだと考えられる。また、比較例1は、表面配線層及び内部配線層のシート抵抗が8.0mΩ/sq.と高かった。さらに、比較例1の絶縁基板は、結晶相として、Al
2O
3結晶相のみであったため、抗折強度が550MPaと低かった。
【0114】
なお、本発明に係る配線基板は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。