(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の励磁コイルを備えるステータと、該ステータの内側に配置され複数の突極を備えるロータと、を有してなるスイッチドリラクタンスモータの駆動制御を行うと共に、駆動中の前記スイッチドリラクタンスモータから回生電力を得る電力回生動作を実施可能なSRモータ制御システムであって、
該SRモータ制御システムは、
前記複数の励磁コイルに対する通電を切り替える複数個のパワー素子を有するパワー回路部と、
前記パワー回路部と電源との間の電源ライン上に配置され、該電源ラインの電気的接続を制御するスイッチング素子を備えたスイッチ部と、
前記スイッチ部と前記パワー回路部との間に、前記パワー回路部と並列に配置されたコンデンサと、
前記スイッチング素子のオンオフを制御する制御手段と、を有し、
前記電力回生動作は、前記励磁コイルに通電し磁束を発生させる供給モードと、前記磁束の変化により前記励磁コイルに回生電流を発生させる回生モードと、を有し、
前記制御手段は、前記スイッチング素子をオフにした状態で前記電力回生動作を実施することにより、前記励磁コイルに対し前記コンデンサの電荷を供給して前記供給モードを行う一方で、前記回生電流にて前記コンデンサを充電する還流昇圧を行い、該還流昇圧を、前記励磁コイルに対し前記電源から通電を行わない状態のまま複数回連続して実施し、前記コンデンサの電圧が所定の閾値を超えたとき、前記スイッチング素子をオンさせ前記コンデンサに蓄電された電荷を前記電源側に還送することを特徴とするSRモータ制御システム。
複数の励磁コイルを備えるステータと、該ステータの内側に配置され複数の突極を備えるロータと、を有してなるスイッチドリラクタンスモータの駆動制御を行うと共に、駆動中の前記スイッチドリラクタンスモータから回生電力を得る電力回生動作を実施可能なSRモータ制御システムであって、
該SRモータ制御システムは、
前記複数の励磁コイルに対する通電を切り替える複数個のパワー素子を有するパワー回路部と、
前記パワー回路部と電源との間の電源ライン上に配置され、該電源ラインの電気的接続を制御するスイッチング素子を備えたスイッチ部と、
前記スイッチ部と前記パワー回路部との間に、前記パワー回路部と並列に配置された第1コンデンサと、
前記スイッチング素子のオンオフを制御する制御手段と、を有し、
該制御手段は、前記スイッチドリラクタンスタンスモータの始動時に、前記第1コンデンサに過渡的に大電流が流れないように、PWM制御によって、前記スイッチング素子のオンオフを実施し、
前記スイッチ部は、前記電源ライン上に直列に接続された第1及び第2スイッチング素子と、該第1及び第2スイッチング素子とそれぞれ並列に配置された第1及び第2ダイオードとを備え、前記第1及び第2ダイオードは、導通方向が互いに逆方向となるように配置され、
前記第1及び第2スイッチング素子の間には、一端側が前記電源ラインの前記第1及び第2スイッチング素子の間に接続され、他端側がグランド側に接続された第2コンデンサが配置されてなることを特徴とするSRモータ制御システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9に示したような回生動作では、回生電流の大きさは、磁束が交差する早さ(ロータ突極55とコイル56とが交差する早さ)、すなわちモータの回転数と、コイル56に生じる磁束の強度、すなわちコイル56に流れる励磁電流の大きさに比例する。このため、大きな回生電流を得るためには、モータが高回転数の時にコイルに大きな励磁電流を与えてやれば良い。しかしながら、モータ回転数が高くなると、ティースと突極が対向する時間が短くなり、コイル56への通電時間も短くなるため、コイル56を励磁するための電流が十分に流せなくなる。つまり、
図9におけるA部の山が低くなる(面積が小さくなる)。すると、それに対応して、回生電流も少なくなってしまい(
図9におけるB部の山が低くなる)、モータ高回転域では発電効率が低下するという問題があった。
【0007】
また、回生動作時は、モータに対して電流を供給し(励磁)、その後、モータからの電流をバッテリに戻す(発電)制御を繰り返す。このため、
図10に示すように、電源ラインの電流の向きや大きさに変動が発生し、この電流変動により、抵抗成分に応じて電圧リップルが発生する。すなわち、電力供給区間では、配線抵抗により電圧降下が生じ、モータドライバ回路の端子電圧が落ち込む(
図10のX部)。また、回生区間では、バッテリ側に向かって大電流が流れ、インダクタンス成分によるバッテリへの充電遅れが生じ(
図10のY部)、これらが電圧リップルとして現れる。このような電圧リップルは、接続されている電子回路が動作不安定を起こす要因となったり、伝導/輻射ノイズの増大の原因となったりするため、その低減が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のSRモータ制御システムは、複数の励磁コイルを備えるステータと、該ステータの内側に配置され複数の突極を備えるロータと、を有してなるスイッチドリラクタンスモータの駆動制御を行うと共に、駆動中の前記スイッチドリラクタンスモータから回生電力を得る電力回生動作を実施可能なSRモータ制御システムであって、該SRモータ制御システムは、前記複数の励磁コイルに対する通電を切り替える複数個のパワー素子を有するパワー回路部と、前記パワー回路部と電源との間の電源ライン上に配置され、該電源ラインの電気的接続を制御するスイッチング素子を備えたスイッチ部と、前記スイッチ部と前記パワー回路部との間に、前記パワー回路部と並列に配置されたコンデンサと、前記スイッチング素子のオンオフを制御する制御手段と、を有し、前記電力回生動作は、前記励磁コイルに通電し磁束を発生させる供給モードと、前記磁束の変化により前記励磁コイルに回生電流を発生させる回生モードと、を有し、前記制御手段は、前記スイッチング素子をオフにした状態で前記電力回生動作を実施することにより、前記励磁コイルに対し前記コンデンサの電荷を供給して前記供給モードを行う一方で、前記回生電流にて前記コンデンサを充電する還流昇圧を行い、該還流昇圧を複数回実施した後、前記スイッチング素子をオンさせ前記コンデンサに蓄電された電荷を前記電源側に還送することを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、回生動作にて得られた電力をそのまま電源に返さずコンデンサに蓄え、コンデンサを昇圧し、供給モード時の電圧を昇圧しつつ回生動作を行う。これにより、高い電圧で回生動作を行うことができ、高価な特別の回路を用いることなく、効率の良い電力回生(発電)を行うことができる。
【0010】
前記制御手段は、前記スイッチドリラクタンスモータの回転数が所定の回転数を超える高回転領域にて、前記還流昇圧を伴う前記電力回生動作を実施しても良い。すなわち、高回転のため、ティースと突極が対向する時間が短く、コイルへの通電時間も短くなり、1回の回生動作では回生電力が小さくなるような場合に、還流昇圧を伴う電力回生動作を実施する。これにより、モータが高回転数のときにはコンデンサ昇圧動作を行い、それ以外の時にはコンデンサ昇圧動作を行わないので、効率良く発電を行うことができると共に、コンデンサへの負荷を低減できる。
【0011】
前記SRモータ制御システムにおいて、前記SRモータ制御システムに、前記コンデンサの電圧を検出する電圧検出部をさらに設け、前記制御手段は、前記還流昇圧を伴う前記電力回生動作において、前記電圧検出部における検出値が所定の閾値を超えたとき、前記スイッチング素子をオンさせても良い。このように、コンデンサ電圧を監視することにより、コンデンサに対する過電圧を防ぐことができる。
【0012】
前記制御手段は、前記還流昇圧を伴う前記電力回生動作において、前記励磁コイルに対し通電を行っていないタイミングで前記スイッチング素子をオンさせても良く、これにより、コンデンサの昇圧と電源充電を制御により切り離すことができ、安定した発電動作を行うことが可能となる。
【0013】
また、前記スイッチング素子と前記電源との間に、前記電力回生動作によって前記電源に還流される電荷を蓄電可能な平滑化コンデンサを配しても良い。この平滑化コンデンサにより、回生電圧の急激な変化が抑えられ、回生電圧のリップル低減が図られる。
【0014】
前記スイッチング素子をFETにて構成し、前記制御手段は、前記コンデンサに蓄電された電荷を前記電源側に還送する際、回生電流の電圧値が所定の閾値を超えないように、前記FETに対してPWM制御を行っても良い。このように、電源への充電電圧をPWM制御することにより、電源に対する過電圧充電を防ぐことができ、またハーネス等の機械的要素などに起因して発生するノイズの低減が図られる。
【0015】
さらに、本発明の他のSRモータ制御システムは、複数の励磁コイルを備えるステータと、該ステータの内側に配置され複数の突極を備えるロータと、を有してなるスイッチドリラクタンスモータの駆動制御を行うと共に、駆動中の前記スイッチドリラクタンスモータから回生電力を得る電力回生動作を実施可能なSRモータ制御システムであって、該SRモータ制御システムは、前記複数の励磁コイルに対する通電を切り替える複数個のパワー素子を有するパワー回路部と、前記パワー回路部と電源との間の電源ライン上に配置され、該電源ラインの電気的接続を制御するスイッチング素子を備えたスイッチ部と、前記スイッチ部と前記パワー回路部との間に、前記パワー回路部と並列に配置された第1コンデンサと、前記スイッチング素子のオンオフを制御する制御手段と、を有し、前記スイッチ部は、前記電源ライン上に直列に接続された第1及び第2スイッチング素子と、該第1及び第2スイッチング素子とそれぞれ並列に配置された第1及び第2ダイオードとを備え、前記第1及び第2ダイオードは、導通方向が互いに逆方向となるように配置され、前記第1及び第2スイッチング素子の間には、一端側が前記電源ラインの前記第1及び第2スイッチング素子の間に接続され、他端側がグランド側に接続された第2コンデンサが配置されてなることを特徴とする。
【0016】
一方、本発明のSRモータ制御方法は、複数の励磁コイルを備えるステータと、該ステータの内側に配置され複数の突極を備えるロータと、を有してなるスイッチドリラクタンスモータと、前記複数の励磁コイルに対する通電を切り替える複数個のパワー素子を有するパワー回路部と、前記パワー回路部と電源との間の電源ライン上に配置され、該電源ラインの電気的接続を制御するスイッチング素子を備えたスイッチ部と、前記スイッチ部と前記パワー回路部との間に、前記パワー回路部と並列に配置されたコンデンサと、前記スイッチング素子のオンオフを制御する制御手段と、を有し、駆動中の前記スイッチドリラクタンスモータから回生電力を得る電力回生動作を実施可能なSRモータ制御システムにおける前記スイッチドリラクタンスモータの制御方法であって、前記電力回生動作は、前記励磁コイルに通電し磁束を発生させる供給モードと、前記磁束の変化により前記励磁コイルに回生電流を発生させる回生モードと、を有し、前記スイッチング素子をオフにした状態で前記電力回生動作を実施することにより、前記励磁コイルに対し前記コンデンサの電荷を供給して前記供給モードを行う一方で、前記回生電流にて前記コンデンサを充電する還流昇圧を行い、該還流昇圧を複数回実施した後、前記スイッチング素子をオンさせ前記コンデンサに蓄電された電荷を前記電源側に還送することを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、回生動作にて得られた電力をそのまま電源に返さずコンデンサに蓄え、コンデンサを昇圧し、供給モード時の電圧を昇圧しつつ回生動作を行う。これにより、高い電圧で回生動作を行うことができ、高価な特別の回路を用いることなく、効率の良い電力回生(発電)を行うことができる。
【0018】
また、本発明の他のSRモータ制御方法は、複数の励磁コイルを備えるステータと、該ステータの内側に配置され複数の突極を備えるロータと、を有してなるスイッチドリラクタンスモータと、前記複数の励磁コイルに対する通電を切り替える複数個のパワー素子を有するパワー回路部と、前記パワー回路部と電源との間の電源ライン上に配置され、該電源ラインの電気的接続を制御するスイッチング素子を備えたスイッチ部と、前記スイッチ部と前記パワー回路部との間に、前記パワー回路部と並列に配置されたコンデンサと、前記スイッチング素子のオンオフを制御する制御手段と、を有し、駆動中の前記スイッチドリラクタンスモータから回生電力を得る電力回生動作を実施可能なSRモータ制御システムにおける前記スイッチドリラクタンスモータの制御方法であって、前記スイッチ部は、前記電源ライン上に直列に接続された第1及び第2スイッチング素子と、該第1及び第2スイッチング素子とそれぞれ並列に配置された第1及び第2ダイオードとを備え、前記第1及び第2ダイオードは、導通方向が互いに対向するように配置され、前記第1及び第2スイッチング素子の間には、一端側が前記電源ラインの前記第1及び第2スイッチング素子の間に接続され、他端側がグランド側に接続された第2コンデンサが配置され、前記電力回生動作は、前記励磁コイルに通電し磁束を発生させる供給モードと、前記磁束の変化により前記励磁コイルに回生電流を発生させる回生モードと、を有し、前記回生モードの際、回生電流の電圧値が所定の閾値を超えないように、前記第2スイッチング素子のON・OFFを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のSRモータ制御システムは、スイッチング素子をオフにした状態で電力回生動作を実施し、励磁コイルに対しコンデンサの電荷を供給して供給モードを行う一方で、回生電流にてコンデンサを充電する還流昇圧を行う。そして、この還流昇圧を複数回実施した後、スイッチング素子をオンさせ、コンデンサに蓄電された電荷を電源側に還送するので、高い電圧で回生動作を行うことができ、特別な回路を用いることなく、効率の良い電力回生を行うことが可能となる。
【0020】
本発明のSRモータ制御方法は、スイッチング素子をオフにした状態で電力回生動作を実施し、励磁コイルに対しコンデンサの電荷を供給して供給モードを行う一方で、回生電流にてコンデンサを充電する還流昇圧を行う。そして、この還流昇圧を複数回実施した後、スイッチング素子をオンさせ、コンデンサに蓄電された電荷を電源側に還送するので、高い電圧で回生動作を行うことができ、特別な回路を用いることなく、効率の良い電力回生を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1であるSRモータ制御システム10の回路構成を示す説明図である。本実施形態の目的は、SRモータを用いたスタータ・ジェネレータ・システムにおいて、DC−DCコンバータ昇圧回路のような、高価で複雑な回路を用いることなく、発電効率を向上させることにある。
【0023】
図1の回路にて駆動されるSRモータ1は、励磁コイル(巻線)2を有するステータ3と、ステータ3内に回転自在に配置されたロータ4とを備えている。SRモータ1は、例えば、車両エンジンのクランク軸に直結され、スタータ・ジェネレータとして使用される。ステータ3には、径方向内側に向かって突設された複数の突極5が設けられている。各突極5には、3相の励磁コイル2(2U,2V,2W)が巻装されている。ロータ4の外周には、径方向外側に向かって突設された複数の突極6が設けられている。ロータ4の回転位置は、レゾルバ等の図示しない回転位置検出センサによって検知されている。そして、ロータ回転位置に応じて、各励磁コイル2を選択的に通電することにより、ステータ3の突極5にロータ4の突極6が磁気吸引される。その結果、ロータ4に回転トルクが発生し、SRモータ1が回転駆動する。
【0024】
図1に示すように、SRモータ1の上段側(バッテリ7側:ハイサイド)と下段側(ローサイド)にはそれぞれ、複数個のパワー素子を備えたパワーモジュール(パワー回路部)11,12が配されている。各パワーモジュール11,12には、パワー素子として、半導体スイッチ素子であるFET13,14が6個ずつ設けられている(FET13a〜13f,FET14a〜14f)。FET13,14は、コントローラ15によって適宜オン/オフされる。
【0025】
パワーモジュール11,12の出力段側(モータ接続ライン側)には、モータ電流を検出するための抵抗16,17(16a〜16c,17a〜17c)が各相ごとに設けられている。各相の抵抗16,17は、SRモータ1の励磁コイル2(2U,2V,2W)にそれぞれ接続されている。抵抗16,17はそれぞれ、電圧検出回路18a,18bと接続されている。電圧検出回路18a,18bは、各抵抗16a〜16c,17a〜17cにおける電圧降下を検出し、その検出値はコントローラ15に送られる。コントローラ15は、電圧検出回路18a,18bの検出値に基づいて、SRモータ1の各相の励磁コイル2U,2V,2Wに流れる電流値を算出し、SRモータ1の動作を制御する。
【0026】
SRモータ制御システム10では、SRモータ1を駆動するに際し、例えば、U相を励磁する場合は、コントローラ15は、上段側パワーモジュール11のFET13aと、下段側パワーモジュール12のFET14dをオンさせ、SRモータ1のU相励磁コイル2Uに通電する。コントローラ15は、同様にV相(FET13b・FET14e:ON)、W相(FET13c・FET14f:ON)を順に励磁し、SRモータ1を回転駆動させる。
【0027】
一方、SRモータ1を発電機として使用する場合には、U相の回生動作では、上段側パワーモジュール11のFET13dと、下段側パワーモジュール12のFET14aをオンさせて回生モードを実施し、バッテリ7側(電源側)に電力を回生する。V相,W相における回生動作も同様に、V相ではFET13e・FET14bを、W相ではFET13f・FET14cをそれぞれオンさせ、バッテリ7側に電力を回生する。
【0028】
図1のSRモータ制御システム10は、前述のように6個のパワー素子が1パッケージ化されたパワーモジュール11,12を採用している。このため、ディスクリート部品にて回路を構成する場合に比して、回路構成が簡略化され、回路の小型化が図られる。また、電気的な接続ポイントを減らせるため、加工性の向上が図られ、製品の低コスト化が可能となる。例えば、従来のSRモータ駆動回路では、各FETの前後24箇所の接続が必要であるのに対し、
図1の回路では、各パワーモジュール11,12で5個ずつ(
図1における3相のモータ側端子21,22と上下の接続端子23,24)計10箇所の接続で済み、配線作業工数を大幅に削減できる。さらに、パワーモジュールを2つ使用してモータの上下段に配する構成となっており、同時にオンするFETが異なるパワーモジュールに配されている(例えば、U相通電時のFET13aとFET14d)。その結果、発熱素子を別モジュールに分散配置することが可能となり、パワーモジュールの発熱を抑制することが可能となる。
【0029】
図1のSRモータ制御システム10にはさらに、バッテリ7とパワーモジュール11,12との間の電源ライン30上に、電源ライン30の電気的接続を制御するスイッチ部31が配されている。スイッチ部31は、パワーモジュール11,12の前段(ハイサイド側)に配置され、半導体スイッチング素子として、FET32(第1スイッチング素子),FET33(第2スイッチング素子)が設けられている。FET32,33の間には、パワーモジュール11,12と並列に平滑コンデンサ34(第2コンデンサ)が配されている。
【0030】
平滑コンデンサ34の一端側は、電源ライン30のFET32,33の間に接続され、他端側はグランドに接続(接地)されている。FET32,33には、それらと並列にダイオード41,42が配されている。各ダイオード41,42は、導通方向が互いに逆方向となるように設けられている。すなわち、ダイオード41は、SRモータ1側からバッテリ7側が順方向となるように、また、ダイオード42は、バッテリ7側からSRモータ1側が順方向となるよう、両ダイオード41,42の向きが互いに向かい合わせ(反対方向)となる形で配置されている。
【0031】
スイッチ部31の前段にはさらに、電源ライン側の電流を検出するためのシャント抵抗35が設けられている。シャント抵抗35は、FET32,33と共に電源側モジュール36として1パッケージ化されており、電圧検出回路37と接続されている。電圧検出回路37は、シャント抵抗35における電圧降下を検出し、その検出値はコントローラ15に送られる。コントローラ15は、電圧検出回路37の検出値に基づいて、電源ライン側の電流値を算出、制御する。また、電圧検出回路37は、電源7の電圧も検出し、その検出値をコントローラ15に送る。コントローラ15は、電圧検出回路37の検出値に基づいて、電源電圧を制御する。
【0032】
スイッチ部31とパワーモジュール11,12との間にも、パワーモジュール11,12と並列に昇圧コンデンサ38(第1コンデンサ)が配されている。昇圧コンデンサ38の一端側は、電源ライン30のスイッチ部31とパワーモジュール11,12の間に接続され、他端側はグランドに接続(接地)されている。スイッチ部31と昇圧コンデンサ38との間には、昇圧コンデンサ38の充電状態(電源ライン30におけるP部の電圧)を検出する電圧検出回路(電圧検出部)39が接続されている。電圧検出回路39の検出値もまたコントローラ15に送られる。コントローラ15は、電圧検出回路39の検出値に基づいて、FET33のオンオフを制御する。なお、昇圧コンデンサ38は、名称は「昇圧」となっているが、平滑コンデンサ34と同様に、モータ駆動時や回生動作時のスイッチングによる電圧リップルを抑制するためのバッファとして機能させても良い。すなわち、昇圧コンデンサ38も、いわゆる平滑コンデンサとして使用可能である。
【0033】
ここで、本発明によるSRモータ制御システム10では、回生動作におけるFET33のオンオフ制御により、(1)供給モード時の励磁電圧を上昇させ回生電流量を増加させると共に、(2)回生モード時における電圧リップルの低減を図っている。以下、(1)昇圧回生と(2)回生電圧のリップル抑制に分けて、これらの制御形態を説明する。
【0034】
(1)昇圧回生
SRモータ1においても、ロータ4が外力によって回されている状態のとき電力回生が行われる。但し、SRモータ1では、従来のSRモータ51とは異なり、FET33をオフさせた状態で電力回生動作を実施する。すなわち、SRモータ1を電源ライン30と切り離した状態で回生動作(発電動作)を行う。
図2は、SRモータ制御システム10における電力回生動作を示す説明図である(1相分)。
図2に示すように、SRモータ1においても、ステータ3の突極5とロータ4の突極6が対向し整列したタイミングで、励磁コイル2に一時的に通電を行う(
図2のA部:供給モード)。通電は、回転位置検出センサによりロータ4の回転位置を検出し、突極5と突極6の間の距離が所定値以下となっている部位の励磁コイル2に対して実施され、両者間の距離が所定値を超えると停止される。この際、SRモータ1では、モータ駆動中に充電された昇圧コンデンサ38から電力が供給される。
【0035】
励磁コイル2への通電により、SRモータ1内ではロータ4を介して磁束が発生する。その状態でロータ4が回転すると、発生した磁束が減少し、磁束を保持すべく励磁コイル2に起電力が生じる。これにより、励磁コイル2に回生電流が流れ、電力回生が行われる(
図2のB部:回生モード)。その際、SRモータ制御システム10では、SRモータ1と電源ライン30が切り離されていることから、回生で発生した電力は、昇圧コンデンサ38に充電される。そして、次相(次のティース−突極の接近)での回生動作の際には、改めて昇圧コンデンサ38から励磁コイル2に電力が供給される。
【0036】
前述のように、SRモータを発電機として用いる場合、モータ回転数が高くなると、コイル通電時間が短くなるため、回生電流が少なくなり発電効率が低下する。従って、高回転領域では、余り大きな回生電力をバッテリ7側に戻すことができなくなる(
図2のB1)。そこで、本発明によるSRモータ制御システム10では、B1の回生電力はバッテリ7側には戻さずに、昇圧コンデンサ38に蓄電し、それを次回の回生動作に使用する。これにより、次回の回生動作は、前回よりも電圧が上昇した状態で実施され、その分、励磁コイル2への供給電流量が増え、励磁される磁束も増加する。励磁される磁束が増えると、それに伴って励磁コイル2に生じる回生電流も増大する(
図2のB2)。
【0037】
そして、このような還流昇圧動作を適宜繰り返し、昇圧コンデンサ38が所定の電圧V1(閾値)以上となったとき、励磁コイル2に対し通電を行っていないタイミングでFET33をオンさせる。昇圧コンデンサ38の充電状態は、電圧検出回路39を介してコントローラ15によって監視されており、所定値以上の電力回生が可能となったところで、SRモータ1と電源ライン30を接続し、バッテリ7側に電力を還送する。これにより、エネルギをある程度蓄積してからバッテリに電力を回生でき、1回1回電力回生を行う場合に比して、発電量を増加させることが可能となる。従って、高回転時のように、ティースと突極が対向する時間が短い場合でも、効率の良い電力回生を行うことが可能となる。
【0038】
(2)回生電圧のリップル抑制
本発明によるSRモータ制御システム10では、バッテリ7側に電力を回生する際、電圧検出回路37の検出値に基づいて、FET33をPWM制御することにより、回生電圧のリップルを抑制している。
図3は、電力回生時における回生電流・電圧の変化を示す説明図である。コントローラ15は、昇圧コンデンサ38の電荷をバッテリ7に回生する際、電圧検出回路37によって電源ライン30の電圧V2を監視し、それが一定電圧となるようにFET33をPWM制御する。すなわち、
図3に示すように、回生電流の電圧値が制御電圧(閾値)Vsを超えないようにFET33をPWM制御する。そして、電圧値がVsを超えた場合は、PWM制御のDutyを下げ電圧を降下させ、電圧の変動を抑制する。
【0039】
本制御システム10では、PWM制御によるFET33のスイッチング動作と、昇圧コンデンサ38の静電容量は、バッテリ7側に電力を回生する際に、回生電圧が制御電圧Vs以下となるように設定される。なお、リップル抑制に際しては、電源ライン電圧V2に代えて、電源ライン30の回生電流値を検出し、それが所定値以下となるようにFET33をPWM制御しても良い。
【0040】
また、バッテリ7とFET33の間には、整流用の平滑コンデンサ34が配されている。FET33がオンされ、昇圧コンデンサ38からバッテリ7に電荷が流れると、その一部が平滑コンデンサ34に流入し、これにより、回生電圧の急激な変化が抑えられる。すなわち、平滑コンデンサ34は、回生時におけるバッファの役割を果たしており、インダクタンス成分の影響などを緩和し、回生電圧のリップルを吸収する。
【0041】
SRモータ制御システム10にあっては、まず、FET33をオフさせ、昇圧コンデンサ38にエネルギを蓄積しつつ電力回生動作を実施する。その結果、単発で電力回生する場合に比して発電量を増大させることができ、特に、高回転域における発電効率の向上が可能となる。また、バッテリ7側に電力を回生するに際し、当該システムでは、平滑コンデンサ34を用いて回生電流を整流しつつ、回生電圧に合わせてFET33をPWM制御する。これにより、回生電圧のリップルを抑制し、電子回路の動作を安定させたり、伝導/輻射ノイズを低減させたりすることが可能となる。
【0042】
なお、当該システムでは、FET32,33をOFFさせることにより、SRモータ1とバッテリ7とを完全に分離できる。
図4に示すように、従来のSRモータ制御システムには、大電流系の通電ON/OFF装置として、過電流防止用のコンタクタ43が設けられている。これに対し、本発明によるSRモータ制御システム10では、FET32,33を電源ライン30上に配することにより、コンタクタ43を省くことができ、システム構成を簡素化することが可能となる。
【0043】
また、
図5に示すように、平滑コンデンサ34への突入電流防止のため、プリチャージ回路44を設けることも可能であるが、SRモータ制御システム10では、FET32を能動領域にて適宜作動させることにより、プリチャージ回路44を省くこともできる。この場合、例えば、FET32をPWM制御することにより、平滑コンデンサ34への流入電流を適宜抑制できる。その際、平滑コンデンサ34の電圧は、電圧検出回路39にて監視することが可能である。
【0044】
一方、昇圧コンデンサ38やFET33のPWM制御は、回生動作時以外にも、スタータ・ジェネレータであるSRモータ1をモータとして駆動する際にも使用可能である。例えば、SRモータ1を始動する際、未充電の昇圧コンデンサ38に過渡的に大電流が流れるのを防止するため、電源投入時にFET33をPWM制御し、昇圧コンデンサ38への流入電流を適宜抑制しても良い。この場合も、昇圧コンデンサ38の電圧は、電圧検出回路39にて監視する。そして、昇圧コンデンサ38の電圧が所定値に達した場合は、PWM制御を停止しFET33をオン状態とする。すなわち、FET33のPWM制御は、回生動作時におけるリップル抑制以外にも利用可能である。
【0045】
(実施の形態2)
実施の形態1では、電力回生動作時に、供給モードと回生モードを実施する構成について説明したが、回生モード時における目標電流値を維持するため、供給モードの後、回生モードと共に還流モードを実施しても良い。
図6は、還流モードを実施する場合の各モードにおける動作パターンを示す説明図(1相分)である。なお、実施の形態2も
図1と同様のシステムにて実施されるが、
図6では、パワーモジュール11,12内のオンオフされないFET13,14は、ダイオードにて置換された形で記載されている。
【0046】
実施の形態2においても、
図6(a)の停止モードにあるSRモータ1に対し、まず、
図6(b)の供給モード(1)(電源からの励磁)が実施される。すなわち、FET32,33をオンさせた状態で、FET13,14をオンさせることにより、励磁コイル2に一時的に通電を行う。次に、
図6(c)のように、FET32,33とFET13,14を共にオフさせ、回生モード(1)(コンデンサ回生)を行い、昇圧コンデンサ38の充電を行う。その際、ここでは、目標電流値を維持するため、回生モード(1)と、還流モード(1)又は(2)を繰り返し実施する。還流モード(1)(2)は、
図6(d)(e)のように、FET32,33をオフさせた状態で、FET13,14の何れか一方のみをオンさせることにより行われる。
【0047】
図7は、回生モード(1)と還流モード(1)(2)を繰り返す場合の巻線電流値の変化を示す説明図である。
図7に示すように、ここでは、回生電流値が基準供給電流値Irを超えると還流モードが実施される。回生モードと還流モードの切り替えは、制御周期ごとに行われ、還流モードにより回生電流が低下すると、次の制御周期では回生モードが実施される。その後、回生電流値が基準供給電流値Irを超えると、次の制御周期にて還流モードに切り替えられ、これが交互に繰り返される。この場合、還流モード(1)(2)は何れを実施しても良く、一方のみを実施させる形でも良い。但し、2パターンの還流モードを両方(例えば、交互に)実施することにより、一方のFETのみに負荷を与えることなく、FETの負荷(発熱等)を均等化することが可能となる。
【0048】
回生モード(1)と還流モード(1)又は(2)を繰り返し実施し、昇圧コンデンサ38を充電した後、次相での回生動作は、昇圧コンデンサ38から励磁コイル2に電力が供給される(
図6(f)供給モード(2):コンデンサからの励磁)。つまり、先の回生モード(1)にて生じる回生電力はバッテリ7側には戻さずに、昇圧コンデンサ38に蓄電し、それを次回の回生動作に使用する。これにより、前述同様、次回の回生動作は、前回よりも電圧が上昇した状態で実施され、その分、励磁コイル2への供給電流量が増え、励磁される磁束も増加する。励磁される磁束が増えると、それに伴って励磁コイル2に生じる回生電流も増大する。
【0049】
そして、還流昇圧動作を適宜繰り返し、昇圧コンデンサ38が所定の電圧V1(閾値)以上となったとき、励磁コイル2に対し通電を行っていないタイミングでFET32,33をオンさせる(
図6(g)回生モード(2):電源回生)。昇圧コンデンサ38の充電状態は、電圧検出回路39を介してコントローラ15によって監視されており、所定値以上の電力回生が可能となったところで、SRモータ1と電源ライン30を接続し、バッテリ7側に電力を還送する。この際、バッテリ7とFET33の間には、前述同様、整流用の平滑コンデンサ34が配されているため、FET32,33がオンされ、昇圧コンデンサ38からバッテリ7に電荷が流れると、その一部が平滑コンデンサ34に流入し、これにより、回生電圧の急激な変化が抑えられる。
【0050】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3として、既存の昇圧機能付き制御回路により、昇圧コンデンサ38を、通常電圧よりも高い昇圧電圧(例えば2倍の電圧)にて充電するようにした構成について説明する。
図8は、本発明の実施の形態3であるSRモータ制御システム45の回路構成を示す説明図である(1相分)。なお、本実施の形態中、実施の形態1と同様の部分、部材等については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0051】
SRモータ制御システム45では、コントローラ15内に設けられている昇圧機能付きの制御回路46を用いて昇圧コンデンサ38のプリチャージを行う。FET13,14を作動させるに際しては、電源電圧よりも高い電圧が必要であり、コントローラ15内には、FET作動用として昇圧機能付きの制御回路46が設けられている。当該システムでは、この既存の制御回路46を活用し、昇圧コンデンサ38の充電を行う。このように、制御回路46にて昇圧コンデンサ38を充電すると、安定した電圧にて昇圧コンデンサ38を充電できるため、回生電流のリップルを低減させることが可能となる。
【0052】
なお、SRモータ1を始動する際や、より大きな回転数を得たい場合も、昇圧電圧にて充電された昇圧コンデンサ38から電流を供給できる。これにより、一時的に大きな電流をSRモータ1に供給でき、必要に応じてモータトルクの向上を図ることが可能となる。すなわち、昇圧コンデンサ38は、前述の昇圧回生のみならず、モータ始動時等における昇圧駆動にも利用可能である。
【0053】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態では、パワー素子をモジュール化したパワーモジュール11,12を用いた例を示したが、パワーモジュール11,12ではなく、パワー素子を個々に配置した回路にも本発明は適用可能である。また、本発明による制御形態は、モータ高回転領域での発電効率向上のみならず、ティース数が多く、ティース−突極間の対向時間が短いモータにおける発電効率向上にも有効である。さらに、前述の実施形態では、3回目の還流昇圧後にFET33をオンさせてバッテリ7側に電力を回生しているが、還流昇圧の回数はこれには限定されず、還流昇圧を繰り返し、昇圧コンデンサ38の充電電圧が電圧V1を超えた時点でFET33をオンさせる。