(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、前記空気極に面する空気室または前記燃料極に面する燃料室に面する構造部材と、を備える電気化学反応単位において、
前記構造部材は、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のマイカ製部材により形成されていることを特徴とする、電気化学反応単位。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マイカに含まれるバインダーだけでなく、マイカ自体にもSiが含まれる。このため、850(℃)未満の温度で加熱する上記技術ではバインダーに含まれるSiの飛散を抑制できたとしても、マイカ自体に含まれるSiの飛散を抑制できないおそれがある。
【0006】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という)の最小構成単位である電解セルに使用されるマイカ製部材にも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池セル単位と電解セル単位とをまとめて電気化学反応単位という。さらには、電気化学反応単位以外の製品に使用されるマイカ製部材にも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示されるマイカ製部材は、マイカ製部材であって、X線結晶構造解析(XRD)において、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2の強度ピークと、Mg
2SiO
4の強度ピークとを含む結晶構造を備える。本件の発明者は、マイカ製部材が、X線結晶構造解析(XRD)において、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2(軟質マイカ)の強度ピークと、Mg
2SiO
4(フォルステライト)の強度ピークとを含む結晶構造を備える場合、XRDにおいて、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2の強度ピークのみを有する純粋な軟質マイカに比べて、Siの飛散を抑制することができることを実験等によって見出した。そこで、本マイカ製部材によれば、XRDにおいて、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2の強度ピークと、Mg
2SiO
4の強度ピークとを含む結晶構造を備えるため、Siの飛散を抑制することができる。これは、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2の結晶構造よりも、Mg
2SiO
4の結晶構造の方が、安定的であり、結晶構造の分解が起こりづらいことに起因してSiの飛散が抑制されたものと考えられる。
【0010】
(2)上記マイカ製部材において、前記KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2(003)面の強度ピークに対する、前記Mg
2SiO
4(120)面の強度ピークの比率は、0.001以上である構成としてもよい。本マイカ製部材によれば、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2(003)面の強度ピークに対する、Mg
2SiO
4(120)面の強度ピークの比率が0.001以上であるため、Mg
2SiO
4の形でSiが存在することにより、より確実にSiの飛散を抑制することができる。
【0011】
(3)上記マイカ製部材において、前記KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2(003)面の強度ピークに対する、前記Mg
2SiO
4(120)面の強度ピークの比率は、0.15以下である構成としてもよい。本マイカ製部材によれば、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2(003)面の強度ピークに対する、Mg
2SiO
4(120)面の強度ピークの比率が0.15以下であるため、Siが、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2としても十分に存在していると言え、シール性などのマイカの本来の特性が低下することを抑制することができる。
【0012】
(4)上記マイカ製部材において、前記KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2(003)面の強度ピークに対する、前記Mg
2SiO
4(120)面の強度ピークの比率は、0.003以上である構成としてもよい。本マイカ製部材によれば、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2(003)面の強度ピークに対する、Mg
2SiO
4(120)面の強度ピークの比率が0.003以上であるため、Mg
2SiO
4の形でSiが存在することにより、より確実にSiの飛散を抑制することができる。
【0013】
(5)上記マイカ製部材において、前記KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2(003)面の強度ピークに対する、前記Mg
2SiO
4(120)面の強度ピークの比率は、0.029以下である構成としてもよい。本マイカ製部材によれば、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2(003)面の強度ピークに対する、Mg
2SiO
4(120)面の強度ピークの比率が0.029以下であるため、Siが、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2としても十分に存在していると言え、シール性などのマイカの本来の特性が低下することを抑制することができる。
【0014】
(6)上記電気化学反応単位において、電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、前記空気極に面する空気室または前記燃料極に面する燃料室に面する構造部材と、を備える電気化学反応単位において、前記構造部材は、上記(1)から(5)のマイカ製部材により形成されている構成としてもよい。本電気化学反応単位によれば、空気室や燃料室内にSiが飛散することによって電気化学反応単位の性能が低下することを抑制することができる。
【0015】
(7)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位を備える電気化学反応セルスタックにおいて、前記複数の電気化学反応単位の少なくとも1つは、上記(6)の電気化学反応単位であることを特徴とする構成としてもよい。
【0016】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、マイカ製部材、構造部材、電気化学反応単セル(燃料電池単セルまたは電解セル)、電気化学反応単位(燃料電池発電単位)、複数の電気化学反応単セルを備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、その製造方法等の形態で実現することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を「上方向」といい、Z軸負方向を「下方向」というものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図4以降についても同様である。なお、燃料電池スタックは、特許請求の範囲における電気化学反応セルスタックに相当する。
【0019】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0020】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、「連通孔108」という。
【0021】
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、
図2および
図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0022】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0023】
また、
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0024】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、
図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、
図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0025】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0026】
(発電単位102の構成)
図4は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図5は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0027】
図4および
図5に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入される連通孔108に対応する孔が形成されている。発電単位102は、特許請求の範囲における電気化学反応単位に相当する。
【0028】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(
図2および
図3参照)。
【0029】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0030】
電解質層112は、略矩形の平板形状部材であり、少なくともZrを含んでおり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、CaSZ(カルシア安定化ジルコニア)等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0031】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、セパレータ120が接合された単セル110を「セパレータ付き単セル」という。
【0032】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0033】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0034】
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。スペーサー149は、特許請求の範囲におけるマイカ製部材、構造部材に相当する。
【0035】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として形成されていてもよい。
【0036】
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2および
図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、
図3および
図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0037】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0038】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、
図2および
図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、
図3および
図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0039】
A−3.スペーサー149の詳細構成:
スペーサー149は、X線結晶構造解析(XRD)において、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2(以下、「軟質マイカ」という)の強度ピーク(回折強度の頂点)と、Mg
2SiO
4(以下、「フォルステライト」という)の強度ピークとを含む結晶構造を備える。換言すれば、スペーサー149の形成材料をXRDで分析して得られるX線回折パターンは、軟質マイカの強度ピークと、フォルステライトの強度ピークとを含む。また、スペーサー149の形成材料のX線回折パターンにおいて、マイカのミラー指数003の面における強度ピークに対する、フォルステライトのミラー指数120の面における強度ピークの比率である強度ピーク比は、0.001以上、かつ、0.029以下であることが好ましい。
【0040】
A−4.燃料電池スタック100の製造方法:
上述した構成の燃料電池スタック100の製造方法は、例えば、以下の通りである。単セル110は、公知の方法により作製することができる。例えば、燃料極基板層用グリーンシートと燃料極活性層用グリーンシートと電解質層用グリーンシートとを準備し、燃料極基板層用グリーンシートと燃料極活性層用グリーンシートと電解質層用グリーンシートとを貼り付けて約280℃で脱脂する。さらに、約1350℃にて焼成を行い、電解質層112と燃料極116との積層体を得る。また、空気極を形成するための材料を混合した混合液を、上記積層体における電解質層112の表面に噴霧塗布し、1100℃で焼成することによって空気極114が形成される。以上の工程により、上述した構成の単セル110が製造される。
【0041】
スペーサー149は、次のようにして作製することができる。例えば岡部マイカ工業所製の厚み0.2(mm)以上、0.6(mm)以下の軟質マイカ(製品番号D581AK)により形成されたマイカシートに対して、パンチング加工によって、平板状の原料部材を作製する。次に、この原料部材を加熱炉内に入れ、大気中にて、1000(℃)以上の温度で、4時間以上、加熱する。これにより、上述した結晶構造を備えるスペーサー149を作製することができる。
【0042】
その後、スペーサー149を、燃料極側集電体144の電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間に配置する。そして、一対のインターコネクタ150の間に、燃料極側集電体144および燃料極側フレーム140と、単セル110がロウ付けされたセパレータ120と、空気極側フレーム130とを配置する。これにより、発電単位102を作製することができる。そして、その他、残りの組み立て工程を行うことにより、上述した構成の燃料電池スタック100の製造が完了する。
【0043】
A−5.各サンプルの性能評価:
上述のマイカの原料部材の加熱処理(以下、「マイカ加熱処理」という)の条件が互いに異なる複数の作製方法のそれぞれによって作製された複数のサンプル1〜6(スペーサー)を用いて行った各性能評価について説明する。各サンプルについての性能評価では、複数のサンプル1〜6のそれぞれを用いて、上述した構成の燃料電池スタック100を組み立て、耐久劣化率(発電劣化率)を測定した。
図6は、各サンプルについての性能評価の結果を示す説明図である。
【0044】
(サンプルについて)
サンプル1〜5は、上述の作製方法により作製された上記構成のスペーサー149であり、サンプル6は、上述の作製方法とはマイカ加熱処理の条件が異なる作製方法により作製されたスペーサーである。それぞれの作製方法により作成されたサンプル1〜5について、XRD(粉末X線回折法)により、X線回折パターンを得た。具体的には、X線回折装置を用いて、板状のマイカの平面部分にX線を照射して分析することによって、各サンプル1〜5のX線回折パターンを得た。
図7から
図11は、各サンプル1〜5のX線回折パターンを示す説明図である。縦軸は回折強度(CPS)であり、横軸は回折角度2θ(deg)である。
【0045】
(サンプル1)
サンプル1の作製方法では、マイカ加熱処理における加熱温度が1000(℃)であり、加熱時間が30時間である。サンプル1のX線回折パターンは、
図7に示す通りである。このサンプル1のX線回折パターンと、既知物質の回折パターンのデータベース(本実施形態では、例えばPDFカード(Powder Diffraction File))とを対比した。その結果、サンプル1のX線回折パターンは、軟質マイカのミラー指数003の面における強度ピーク(回折角度D2参照)に加えて、例えばフォルステライトのミラー指数120,211,221の面のそれぞれにおける強度ピーク(回折角度D1,D3,D4)を含むことが確認された。したがって、このサンプル1は、軟質マイカの結晶とフォルステライトの結晶とを有すると判断できる。また、サンプル1の上記強度ピーク比は、0.0012である。
【0046】
(サンプル2)
サンプル2の作製方法では、マイカ加熱処理における加熱温度が1100(℃)であり、加熱時間が5時間である。サンプル2のX線回折パターンは、
図8に示す通りである。このサンプル2のX線回折パターンとPDFカードとを対比した結果、サンプル2のX線回折パターンは、サンプル1と同様、軟質マイカのミラー指数003の面における強度ピーク(回折角度D2参照)に加えて、例えばフォルステライトのミラー指数120,211,221の面のそれぞれにおける強度ピーク(回折角度D1,D3,D4)を含むことが確認された。したがって、このサンプル2は、軟質マイカの結晶とフォルステライトの結晶とを有すると判断できる。また、サンプル2の上記強度ピーク比は、0.0031である。
【0047】
(サンプル3)
サンプル3の作製方法では、マイカ加熱処理における加熱温度が1100(℃)であり、加熱時間が30時間である。サンプル3のX線回折パターンは、
図9に示す通りである。このサンプル3のX線回折パターンとPDFカードとを対比した結果、サンプル3のX線回折パターンは、サンプル1,2と同様、軟質マイカのミラー指数003の面における強度ピーク(回折角度D2参照)に加えて、例えばフォルステライトのミラー指数120,211,221の面のそれぞれにおける強度ピーク(回折角度D1,D3,D4)を含むことが確認された。したがって、このサンプル3は、軟質マイカの結晶とフォルステライトの結晶とを有すると判断できる。また、サンプル3の上記強度ピーク比は、0.0282である。
【0048】
(サンプル4)
サンプル4の作製方法では、マイカ加熱処理における加熱温度が1000(℃)であり、加熱時間が120時間である。サンプル4のX線回折パターンは、
図10に示す通りである。このサンプル4のX線回折パターンとPDFカードとを対比した結果、サンプル4のX線回折パターンは、サンプル1,2と同様、軟質マイカのミラー指数003の面における強度ピーク(回折角度D2参照)に加えて、例えばフォルステライトのミラー指数120,211,221の面のそれぞれにおける強度ピーク(回折角度D1,D3,D4)を含むことが確認された。したがって、このサンプル4は、軟質マイカの結晶とフォルステライトの結晶とを有すると判断できる。また、また、サンプル4の上記強度ピーク比は、0.1500である。
【0049】
(サンプル5)
サンプル5の作製方法では、マイカ加熱処理における加熱温度が850(℃)であり、加熱時間が5時間である。サンプル5のX線回折パターンは、
図11に示す通りである。このサンプル5のX線回折パターンとPDFカードとを対比した結果、サンプル5のX線回折パターンは、サンプル1〜3とは異なり、軟質マイカのミラー指数003の面における強度ピーク(回折角度D2参照)を含むことは確認できたが、フォルステライトの強度ピークを含むことはほとんど確認できなかった。したがって、このサンプル5は、軟質マイカの結晶を有するが、フォルステライトの結晶を有しないと判断できる。また、サンプル5の上記強度ピーク比は、0.0002である。
【0050】
(サンプル6)
サンプル6の作製方法では、マイカ加熱処理における加熱温度が1300(℃)であり、加熱時間が30時間である。この条件でマイカ加熱処理を行った結果、サンプル6が破損したため、定性分析や性能評価を行うことができなかった。
【0051】
(性能評価の方法について)
(電圧低下)
各サンプル1〜5を備えるそれぞれの燃料電池スタック100(つまり、4台の燃料電池スタック100)について、まず、850(℃)で、空気極114に酸化剤ガスOGとして空気を供給し、燃料極116に燃料ガスFGとして40%の水蒸気と水素とを供給しつつ、400時間、通電試験を行った。この通電試験によれば、燃料電池スタック100の温度が定格発電運転時より高いため、燃料電池スタック100内を、Si(シリコン)が飛散し易い環境下にすることができる。また、この通電試験開始時において、電流密度が0.55(A/cm
2)のときの燃料電池スタック100の出力電圧を測定し、その測定値を、初期電圧とした。その後、約700(℃)で、空気極114に酸化剤ガスOGとして空気を供給し、燃料極116に燃料ガスFGとして4%の水蒸気と水素とを供給しつつ、定格発電運転を開始し、電流密度が0.55(A/cm
2)であるときの燃料電池スタック100の出力電圧(試験後電圧)を測定し、初期電圧と試験後電圧との差である電圧低下(mV)を算出した。電圧低下が大きいほど、発電劣化率が大きいことを意味する。試験後電圧は、通電試験時より温度が低いときの燃料電池スタック100の出力電圧であることによって電圧差が顕著になるため、電圧低下をより明確に評価することができる。そして、各サンプルについて、電圧降下が判定電圧(例えば65(mV))未満である場合「○」とし、判定電圧以上である場合「×」とした。なお、初期電圧とは、燃料電池スタック100が発電可能な状態で出荷され、定格発電が行われてから1000時間以内の燃料電池スタック100について測定するものとする。
【0052】
(Siの飛散量)
上述の(電圧低下)の性能評価を行ったサンプル1〜5を備えるそれぞれの燃料電池スタック100について、燃料電池スタック100の単セル110の燃料極116における燃料ガスFGに晒された表面のSiの付着量を測定した。この付着量を測定することで、各サンプル1〜5におけるSi飛散量とすることができる。Siの飛散量の測定方法は次の通りである。単セル110の燃料極116における燃料ガスFGに晒された表面を含む測定サンプルを準備する。この測定用サンプルに対し、二次イオン質量分析法(SIMS)により、測定用サンプルの燃料ガスFGに晒された表面に付着したSiの付着量を分析する。具体的には、SIMSの装置に測定用サンプルをセットして、測定用サンプルにおける燃料ガスFGに晒された表面に対し、一次イオンを照射する。これにより、測定用サンプル表面から二次イオンが飛び出し、この二次イオンを質量分析することでSiの付着量を測定することができる。このSiの付着量をそのまま、サンプル1〜5のSi飛散量とする。
【0053】
(性能評価結果について)
まず、サンプル1〜5の評価結果について検討する。
図6に示すように、電圧降下の評価では、サンプル1〜4の判定結果は「〇」であるのに対し、サンプル5の判定結果は「×」であった。また、サンプル1〜4のSiの飛散量は600〜690(ppm)であるのに対し、サンプル5のSiの飛散量は900(ppm)であり、サンプル1〜4では、サンプル5に比べて、Siの飛散量が抑制されていることが確認できる。また、上述したように、サンプル1〜4は、軟質マイカの結晶とフォルステライトの結晶とを有するのに対し、サンプル5は、軟質マイカの結晶を有するが、フォルステライトの結晶を有しない。
【0054】
これらのことから、Siの飛散量の抑制の要因は、軟質マイカの結晶とフォルステライトの結晶とを有する結晶構造にあると推測される。すなわち、サンプル1〜4は、軟質マイカの結晶とフォルステライトの結晶とを有することによって、軟質マイカの結晶を有するが、フォルステライトの結晶を有しないサンプル5に比べて、Siが飛散し難い(Siとの結合が強い)安定した結晶構造になったといえる。飛散したSiは、例えば、燃料極116を構成する酸素イオン伝導性物質の表面に付着することによって、反応場となる三相界面が減少して燃料電池スタック100の発電性能が変化する(低下する)おそれがある。しかし、サンプル1〜4では、サンプル5に比べて、Siの飛散量が抑制されたことによって、燃料電池スタック100の電圧降下を抑制することができたと推測される。
【0055】
また、サンプル1〜4では、軟質マイカの結晶とフォルステライトの結晶とを有するため、サンプル1〜4の強度ピーク比は、サンプル5の強度ピーク比に比べて高い。特に、強度ピーク比は、0.001以上、かつ、0.15以下であることが好ましい。強度ピーク比が0.001以上であれば、より確実にSiの飛散を抑制することができる。ただし、強度ピーク比が高くなるほど、シール性などのマイカの本来の特性が低下するおそれがある。このため、強度ピーク比が0.15以下であれば、マイカの本来の特性が低下することを抑制することができる。さらに、強度ピーク比は、0.003以上であることが好ましく、さらに、0.025以上であることがより好ましい。また、強度ピーク比は、0.029以下であることがより好ましい。
【0056】
次に、サンプル1〜4の評価結果について検討する。サンプル1,3の評価結果によれば、マイカ加熱処理における加熱温度が高いほど、強度ピーク比が大きくなるとともに、電圧降下が小さくなっている。すなわち、マイカ加熱処理における加熱温度が高いほど、原料部材を、よりSiが飛散し難い安定した結晶構造にすることができる。ただし、サンプル6の評価結果によれば、マイカ加熱処理における加熱温度は、1300(℃)未満であることが好ましいといえる。また、サンプル2,3の評価結果によれば、マイカ加熱処理における加熱温度が同じであれば、加熱時間が長いほど、強度ピーク比が大きくなるとともに、電圧降下が小さくなっている。すなわち、マイカ加熱処理における加熱時間が長いほど、原料部材を、よりSiが飛散し難い安定した結晶構造にすることができる。
【0057】
A−6.本実施形態の効果:
上述したように、本件の発明者は、マイカ製部材が、XRDにおいて、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2(軟質マイカ)の強度ピークと、Mg
2SiO
4(フォルステライト)の強度ピークとを含む結晶構造を備える場合、XRDにおいて、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2の強度ピークのみを有する純粋な軟質マイカに比べて、Siの飛散を抑制することができることを実験等によって見出した。そこで、本実施形態によれば、スペーサー149は、XRDにおいて、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2の強度ピークと、Mg
2SiO
4の強度ピークとを含む結晶構造を備えるため、Siの飛散を抑制することができる。
【0058】
また、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2(003)面の強度ピークに対する、Mg
2SiO
4(120)面の強度ピークの比率が0.001以上であるため、より確実にSiの飛散を抑制することができる。また、上記比率が0.029以下であるため、シール性などのマイカの本来の特性が低下することを抑制することができる。
【0059】
さらに、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2(003)面の強度ピークに対する、Mg
2SiO
4(120)面の強度ピークの比率が0.003以上であれば、より確実にSiの飛散を抑制することができる。また、上記比率が0.15以下であれば、シール性などのマイカの本来の特性が低下することを、より効果的に抑制することができる。
【0060】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0061】
上記実施形態では、マイカ製部材や構造部材として、スペーサー149を例示したが、これに限定されず、マイカで形成される空気極側フレーム130について本発明を適用してもよい。また、燃料極側フレーム140がマイカで形成される構成であれば、当該燃料極側フレーム140について本発明を適用してもよい。また、SOFC以外で使用されるマイカ製部材について本発明を適用してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、スペーサー149のX線回折パターンにおける上記強度ピーク比は、0.001以上、かつ、0.029以下であることが好ましいとしたが、これに限定されず、例えば強度ピーク比が0.03以上であるとしてもよい。要するに、少なくとも、XRDにおいて、KMg
3(Si
3Al)O
10(OH)
2の強度ピークと、Mg
2SiO
4の強度ピークとを含む結晶構造を備えるマイカ製部材であればよい。
【0063】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
【0064】
また、上記実施形態では、ボルト22の両側にナット24が嵌められているとしているが、ボルト22が頭部を有し、ナット24はボルト22の頭部の反対側にのみ嵌められているとしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、エンドプレート104,106が出力端子として機能するとしているが、エンドプレート104,106の代わりに、エンドプレート104,106のそれぞれと接続された別部材(例えば、エンドプレート104,106のそれぞれと発電単位102との間に配置された導電板)が出力端子として機能するとしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。また、各マニホールドを各ボルト22が挿入される各連通孔108とは別に設けてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合には、1つのインターコネクタ150が隣接する2つの発電単位102に共有されるとしているが、このような場合でも、2つの発電単位102がそれぞれのインターコネクタ150を備えてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ150や、最も下に位置する発電単位102の下側のインターコネクタ150は省略されているが、これらのインターコネクタ150を省略せずに設けてもよい。
【0068】
また、上記実施形態において、燃料極側集電体144は、空気極側集電体134と同様の構成であってもよく、燃料極側集電体144と隣接するインターコネクタ150とが一体部材であってもよい。また、空気極側フレーム130ではなく燃料極側フレーム140が絶縁体であってもよい。また、空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140は、多層構成であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0070】
また、上記実施形態において、都市ガスを改質して水素リッチな燃料ガスFGを得るとしているが、LPガスや灯油、メタノール、ガソリン等の他の原料から燃料ガスFGを得るとしてもよいし、燃料ガスFGとして純水素を利用してもよい。
【0071】
また、上記実施形態(または変形例、以下同様)では、燃料電池スタック100に含まれるすべての単セル110について、上記実施例範囲を満たす構成であるとしているが、燃料電池スタック100に含まれる少なくとも1つの発電単位102について、そのような構成となっていれば、単セル110の発電特性の向上と強度の維持とを両立させることができる。
【0072】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(SOEC)の最小単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016−81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セル単位および電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様に、燃料極116を上記実施形態の構成とすれば、電解セルの電気化学反応特性の向上と強度の維持とを両立させることができる。