(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溝形成手段は、前記板状物の前記端面と対応する位置であって、前記回転砥石の前記外周面に、前記環状の溝部を形成するブレードと、前記ブレードを前記回転砥石の前記外周面に当接する当接位置と前記回転砥石の前記外周面から離反する離間位置とに切り替え可能な切り替え手段とを有する、
ことを特徴とする、請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の板状物の端面加工装置。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラスやセラミックス等の板状物の利用分野は益々広がり、例えば、フラットパネルディスプレイやスマートフォンなどの利用分野においては、肉薄の板ガラスの需要が急速に伸びている。
このような板ガラスは、例えば、オーバーフロー・ダウンドロー法によって長尺・帯状に成形される。この際、成形された板ガラスの幅方向の両側縁部には、幅方向の中央部に比べて肉厚なビードが形成される。
そして、長尺・帯状の板ガラスは、幅方向に切断(割断)された後、前記ビードを含む両側縁部が切断されて除去されることで所定寸法の矩形板状に切断される。
こうして、均一な厚みのガラス基板に形成された矩形板状の板ガラスは、その後、切断された各端面において、例えば特許文献1に示されるような、外周面に環状の溝部が予め形成された回転砥石によって、粗研磨加工や仕上げ研磨加工等の端面加工が施され、最終製品として形成される。
【0003】
ここで、従来の端面加工装置101について、
図7を用いて説明する。
図7(a)は従来の端面加工装置101の全体的な構成を示した平面図であり、
図7(b)は
図7(a)中の矢印Yの方向から見た拡大正面図である。
なお、以下の説明においては便宜上、
図7(a)における矢印Aの方向を端面加工装置101の前方と規定して記述する。また、
図7(b)においては、上下方向を端面加工装置101の上下方向と規定して記述する。
【0004】
図7(a)に示すように、端面加工装置101は、主に、水平且つ前後方向(矢印Aとの平行方向)に延出して配設される平面視矩形状の吸着定盤110や、吸着定盤110の左右方向(吸着定盤110の延出方向との平面視直交方向)の両側にて前後方向に一列に配設される複数の回転砥石120・120・・・などにより構成される。
【0005】
吸着定盤110の上面には、無数の小さな吸引孔(図示せず)が穿孔されている。
そして、これら複数の吸引孔を介して、矩形板状の板ガラスWは、吸着定盤110に吸着されて堅固に保持される。
この際、板ガラスWは、水平且つ前後方向に延出するとともに、左右両側の側縁部が吸着定盤110の外部へとはみ出した姿勢をもって、吸着定盤110の上面に保持される。
【0006】
一方、吸着定盤110の左右両側の各側方における複数の回転砥石120・120・・・は、前方側から順に、複数の粗研磨用の回転砥石120(以下、適宜「粗研磨用回転砥石120X」と記載する)・120・・・と、仕上げ研磨用の回転砥石120(以下、適宜「仕上げ研磨用回転砥石120Y」と記載する)とによって構成される。
また、これらの回転砥石120・120・・・は、それぞれ、軸心方向を板ガラスWの厚み方向、即ち、上下方向(吸着定盤110の延出方向との側面視直交方向)として着脱可能に配置され、軸心を中心にして回転駆動可能に設けられる。
【0007】
そして、吸着定盤110の左右両側に位置する、これら複数の回転砥石120・120・・・は、一体的、且つ吸着定盤110に対して相対的に、前方から後方に向かって(
図7(a)における矢印Bの方向)移動可能な構成となっている。
【0008】
このような構成からなる従来の端面加工装置101によって板ガラスWの端面加工を行う場合、軸心を中心にして回転駆動する複数の回転砥石120・120・・・を、板ガラスWの左右両側の端面に当接させながら、吸着定盤110(より具体的には、板ガラスW)と相対的に、前方から後方に向かって一体的に移動させる。
この際、
図7(b)に示すように、板ガラスWの左右両側の側縁部は、各回転砥石120の外周面に形成された環状の溝部120a内に嵌挿されるとともに、前記側縁部の端面が溝部120aの底面に当接される。
【0009】
このように、板ガラスWの端面加工を行う際は、従来から、板ガラスWの厚み寸法と略同程度の幅寸法からなる環状の溝部120aが外周面に形成された粗研磨用回転砥石120Xを、溝部120aを介して板ガラスWの端面に当接させながら粗研磨を行い、続いて、同様の形状からなる環状の溝部120aが外周面に形成された仕上げ研磨用回転砥石120Yを、溝部120aを介して板ガラスWの端面に当接させながら仕上げ研磨を行うのが一般的であった。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[端面加工装置1]
先ず、本発明を具現化する端面加工装置1の構成について、
図1および
図2を用いて説明する。
なお、以下の説明においては便宜上、
図2の上下方向を端面加工装置1の上下方向と規定して記述する。
また、
図1においては、矢印Aの方向を端面加工装置1の前方と規定して記述する。
【0032】
本実施形態における端面加工装置1は、
図1に示すように、板状物である板ガラスWの端面に対して、後述する回転手段21(
図2を参照)に着脱可能な回転砥石20の外周面によって、研磨等の加工を施すための装置である。
端面加工装置1は、主に、吸着定盤10、回転砥石20、および溝形成機構部30等により構成される。
【0033】
ここで、端面加工装置1において、吸着定盤10の左右両側の各側には、前述したように、粗研磨用および仕上げ研磨用の複数の回転砥石20・20・・・、およびこれらの回転砥石20・20・・・の近傍に各々配設される複数の溝形成機構部30・30・・・が、それぞれ設けられる。そして、これらの複数の回転砥石20・20・・・は互いに同一の構成からなり、また同様に、これらの複数の溝形成機構部30・30・・・も互いに同一の構成からなる。
従って、以下の説明においては、主に、吸着定盤10の一方側(例えば、本実施形態においては右側)に設けられる一対の回転砥石20および溝形成機構部30に着目して記述することとし、他の複数の回転砥石20・20・・・、および溝形成機構部30・30・・・についての記述は省略する。
なお、溝形成機構部30は、複数の回転砥石20・20・・・のうちの、一部の回転砥石20・20・・・に対応して設けることも可能である。例えば、
図7に示す粗研磨用回転砥石120Xを従来の回転砥石120とし、仕上げ研磨用回転砥石120Yを本発明の回転砥石20とし、溝形成機構部30を設けてもよい。
【0034】
吸着定盤10は、矩形板状の板ガラスWを水平状態に堅固に保持するためのものである。
吸着定盤10は、平面視矩形状に形成され、その上面には図示せぬ無数の吸引孔が穿孔されている。
【0035】
そして、このような構成からなる吸着定盤10の上面において、板ガラスWは、水平且つ前後方向に延出するとともに、左右両側の側縁部が吸着定盤10の外部へと各々はみ出した姿勢によって載置され、前記無数の吸引孔を介して吸着されることにより堅固に保持される。
【0036】
次に、回転砥石20について説明する。
回転砥石20は、板ガラスWの端面に対して面取り加工や研磨加工等の端面加工を施すためのものである。
回転砥石20は、基体となる円盤形状の台金20aや、台金20aの外周面に即して固定される砥粒層20bなどにより構成される。
【0037】
そして、未使用の回転砥石20においては、未だ外周面に環状の溝部20cが形成されておらず、後述するように、環状の溝部20cは、板ガラスWの端面加工を行う際に、溝形成機構部30によって回転砥石20の外周面に形成される。
【0038】
台金20aは、例えば、アルミニウム、鋼、超硬合金、モリブデン、モリブデン合金、サーメット、チタン、またはセラミック等の材質からなる、円盤形状の部材によって形成される。
なお、鋼の材質としては、例えば、炭素工具鋼、合金工具鋼、または高速度鋼等を用いることが可能である。
【0039】
一方、砥粒層20bは、図示せぬ接着層等を介して台金20aの外周面に固着される。
また、砥粒層20bは、結合材、および多数の砥粒からなる混合物を、焼成することによって作製される。
【0040】
ここで、結合材としては、熱硬化性樹脂を主成分とするレジンボンド等を用いることが可能であり、また、砥粒としては、ダイヤモンド粒子、酸化アルミニウム粒子、炭化珪素粒子、立方晶窒化硼素粒子、金属酸化物粒子、金属炭化物粒子、または金属窒化物粒子等を用いることが可能である。
また、これらの結合材と砥粒との割合については、結合材が30〜97体積%、砥粒が3〜70体積%となるようにするのが適当である。
【0041】
そして、砥粒層20bは、砥粒層20bの外表面より砥粒の一部が露出するようにして、台金20aの外周面に沿って環状に作製される。
なお、砥粒の粒径は、その研磨量や仕上げ表面粗さの要求レベルに応じて選択すればよく、例えば、#100〜3000、好ましくは#600〜1000の範囲で適宜決定すればよい。
【0042】
こうして形成された回転砥石20は、
図2に示すように、例えば駆動モータ等による回転手段21に対して、軸心方向を板ガラスWの厚み方向、即ち上下方向としつつ着脱可能に固設され、当該回転手段21によって軸心を中心にして回転駆動される。
【0043】
以上のような構成からなる回転砥石20・20・・・は、一台の端面加工装置1に対して複数(
図2においては、拡大正面図のため一個のみ記載)備えられ、吸着定盤10の左右方向の両側にて前後方向に沿って一列に配設される。
【0044】
そして、吸着定盤10の左右両側に位置する、これら複数の回転砥石20・20・・・は、一体的、且つ吸着定盤10に対して相対的に、前後方向に移動可能な構成となっている。
また、吸着定盤10の左右両側の各側において一列に配置される回転砥石20・20・・・は、吸着定盤10に対して近接離反方向(本実施形態においては、左右方向)に移動可能な構成となっている。
【0045】
次に、溝形成機構部30について説明する。
溝形成機構部30は、装着された回転砥石20の外周面において、板ガラスWの端面と対応する位置に、周方向に沿った環状の溝部20cを形成するための溝形成手段であって、各回転砥石20に対して各々配設される。
溝形成機構部30は、
図1に示すように、水平方向(板ガラスWの板面に沿った方向であり、例えば、本実施形態においては前後方向)に延出する回動アーム31を備え、回動アーム31の延出方向の中央部には、軸心方向を上下方向とする回動シャフト32が、軸受部材33を介して貫設されている。
また、回動アーム31の延出方向の一端部(例えば、本実施形態においては前端部)には、例えば超硬材からなるブレード34が着脱可能に固設される。
【0046】
そして、回動シャフト32を中心にして回動アーム31が回動することにより、ブレード34が回転砥石20の外周面に対して近接離反する構成となっている。
【0047】
ここで、回動アーム31の延出方向の他端部(例えば、本実施形態においては後端部)には、例えば引張バネ等からなる付勢手段35が設けられており、回動アーム31は、当該付勢手段35によって、常に、ブレード34が回転砥石20の外周面に近接する方向に付勢された状態となっている。
また、付勢手段35の近傍には、例えばエアシリンダー等からなるアクチュエーター36が設けられており、当該アクチュエーター36の伸縮ロッド36aによって回動アーム31の他端部を押圧することにより、ブレード34が回転砥石20の外周面より離反する方向に、回動アーム31が回動されるようになっている。
【0048】
このような構成からなる溝形成機構部30により、ブレード34の水平方向位置を、回転砥石20の外周面に当接する当接位置と、回転砥石20の外周面から離反する離間位置とに切り替え可能にしている。
つまり、回動アーム31、回動シャフト32、軸受部材33、付勢手段35、およびアクチュエーター36により、ブレード34を当接位置と離間位置とに切り替え可能な切り替え手段が構成されている。
【0049】
また、溝形成機構部30において、付勢手段35の付勢力によって回動アーム31を回動させて、回転駆動状態にある回転砥石20の外周面にブレード34を当接させることにより、当該外周面に環状の溝部20cを形成することができる。
さらに、溝形成機構部30は、回転砥石20と一体的に移動可能に構成されている。
【0050】
なお、
図2に示すように、本実施形態においては、ブレード34の上下位置が、吸着定盤10に載置された板ガラスWの端面の上下位置と一致するように予め調整されているため、溝形成機構部30によって形成される溝部20cの上下位置は、板ガラスWの端面の上下位置と常に一致する。
換言すると、溝形成機構部30は、ブレード34によって、板ガラスWの端面と対応する位置(例えば、本実施形態においては、上下方向に一致する位置であって、板ガラスの端面と対向する位置)であって、回転砥石20の外周面に、環状の溝部20bを形成するように構成されている。
これにより、本実施形態における端面加工装置1においては、例えば、回転砥石20の交換作業を行う度に、回転砥石20の上下位置を、板ガラスWの上下位置と一致させるための調整作業が必要になることもない。
【0051】
以上のように、本実施形態における端面加工装置1においては、溝部20cが未形成の状態の回転砥石20を回転手段21に装着した後に、溝形成機構部30によって、回転砥石20の外周面に、周方向に沿った環状の溝部20cを形成する構成となっている。
よって、前述したような、回転手段21に回転砥石20を装着した後の調整作業が不要となるため、回転砥石20の交換作業に時間がかかることもなく、生産効率の低下を招くこともない。
【0052】
[端面加工方法]
次に、本実施形態における端面加工装置1によって板ガラスWの端面加工を行う際の端面加工方法について、
図2乃至
図4を用いて説明する。
なお、以下の説明においては便宜上、
図3における矢印Aの方向を端面加工装置1の前方と規定して記述する。
【0053】
先ず始めに、
図3に示すように、自動運転を停止した端面加工装置1において、回転砥石20を回転駆動する回転手段21(
図2を参照)および溝形成機構部30は、ともに初期状態となっている。
具体的には、初期状態においては、回転手段21および溝形成機構部30は、所定の基準位置Sp1(例えば、
図3においては、吸着定盤10に対して後方、且つ右方に離反した位置)に位置している。
この場合、回転手段21は停止しており、溝形成機構部30は、アクチュエーター36の伸縮ロッド36aが伸長して、ブレード34が離間位置に位置した状態となっている。また、回転手段21には、回転砥石20は未だ装着されていない。
【0054】
このような状態からなる端面加工装置1において、
図4に示すように、吸着定盤10の上面に板ガラスWを所定の載置姿勢によって載置し、その後、溝形成機構部30のブレード34の上下位置を、当該板ガラスWの上下位置と一致するように調整する(ステップS101)。
【0055】
ブレード34の調整が終了すると、未使用の回転砥石20を当該回転手段21に取付ける(ステップS102)。
【0056】
そして、回転砥石20の取付けが終了すると、端面加工装置1の自動運転を起動する(ステップS103)。
【0057】
端面加工装置1が自動運転を開始すると、回転砥石20の第一の復帰運転が実行される(ステップS104)。
第一の復帰運転は、回転砥石20を板ガラスWの端面加工開始位置の近傍にまで移動させながら、当該回転砥石20の外周面に環状の溝部20aを形成するものである。
ステップS104における第一の復帰運転では、まず、回転手段21による回転砥石20の回転駆動が開始されるとともに、溝形成機構部30におけるアクチュエーター36の伸縮ロッド36aが縮退することによりブレード34が当接位置に移動され、回転砥石20の外周面にブレード34が当接する(ステップS105)。
【0058】
その後、回転駆動される回転砥石20の外周面にブレード34が当接した状態のまま、回転砥石20が移動を開始する(ステップS106)。
回転砥石20の移動方向としては、回転砥石20が、吸着定盤10に対して相対的に基準位置Sp1から前方へと移動し、板ガラスWの端面加工開始位置の近傍に位置する所定の第一停止位置Sp2(例えば、
図3においては、吸着定盤10に対して前方、且つ右方に離反した位置)にて停止する。
第一停止位置Sp2に回転砥石20が到達して停止すると、溝形成機構部30におけるアクチュエーター36の伸縮ロッド36aが伸長し、回転砥石20の外周面よりブレード34が離反する(ステップS107)。
【0059】
このようにして行われる、ステップS104の第一の復帰運転中には、ブレード34が回転砥石20の外周面に当接しているので、基準位置Sp1を出発した回転砥石20が第一停止位置Sp2に到達するまでの間において、回転砥石20の外周面に環状の溝部20cが、ブレード34によって形成される。本実施形態では、回転砥石20に最初に形成される溝部20cは、回転砥石20の上端部に形成される。
このように、ステップS104における第一の復帰運転中に、回転砥石20の外周面に環状の溝部20cを形成する溝形成工程が実施される。
【0060】
なお、本実施形態では、回転砥石20の外周面にブレード34を当接させた後に、回転砥石20の基準位置Sp1からの移動を開始し、回転砥石20が第一停止位置Sp2に到達して停止した後に、回転砥石20の外周面からブレード34を離反させているが、回転砥石20の基準位置Sp1からの移動を開始してから、回転砥石20の外周面にブレード34を当接させたり、回転砥石20が第一停止位置Sp2に到達する前に、回転砥石20の外周面からブレード34を離反させたりすることも可能である。
【0061】
回転砥石20に溝部20cが形成されると、端面加工装置1は、研磨運転を実行する(ステップS108)。
研磨運転が開始されると、回転砥石20は、溝形成機構部30とともに、吸着定盤10に近接する方向へ移動し、所定の加工開始位置Sp3(例えば、
図3においては、吸着定盤10に対して前方、且つ右側に近接した位置)に到達して停止する。
つまり、回転砥石20は、研磨運転の開始時に、板ガラスWの端面の一端側(即ち、後述するように、板ガラスWの端面加工を行う際の開始位置となる前端側)の近傍(加工開始位置Sp3)に予め移動される。
【0062】
その後、
図3に示すように、回転砥石20は、回転駆動を行いながら、吸着定盤10と相対的に加工開始位置Sp3から後方へと移動し、所定の第二停止位置Sp4(例えば、
図3においては、吸着定盤10に対して後方、且つ右側に近接した位置)に到達して停止する。
回転駆動される回転砥石20が加工開始位置Sp3から第二停止位置Sp4まで移動する間に、回転砥石20の溝部20cが、板ガラスWの各端面(例えば、
図3においては右側端面)の前端側から後端側にかけての全範囲に渡って当接することとなり、板ガラスWの端面加工が実施される。
【0063】
板ガラスWの端面加工が終了すると、回転砥石20は第二停止位置Sp4から、吸着定盤10に対する離間方向に移動し、再び基準位置Sp1に到達して停止する。
【0064】
回転砥石20が基準位置Sp1にて停止すると、端面加工装置1が備える判定手段によって、板ガラスWの上下位置と一致する環状の溝部20c(前回の板ガラスWの端面加工を実施した溝部20c)が、規定の使用寿命に到達しているかどうかの判断が実行される(ステップS109)。
また、この際、吸着定盤10においては、前記ステップS108によって端面加工の施された板ガラスWが搬出される一方、新たな未加工の板ガラスWが所定の載置姿勢によって吸着定盤10の上面に載置される。
【0065】
そして、前記溝部20cが未だ規定の使用寿命に到達していないと判断されると、回転砥石20の第二の復帰運転が実行される(ステップS110)。
第二の復帰運転は、回転砥石20の外周面に環状の溝部20aを形成することなく、単に、回転砥石20を板ガラスWの端面加工開始位置の近傍にまで移動させるものである。
ステップS110における第二の復帰運転では、回転砥石20の外周面からブレード34が離反した状態で、回転砥石20が、吸着定盤10に対して相対的に基準位置Sp1より前方へと移動し、第一停止位置Sp2にて停止する。
なお、第二の復帰運転では、ブレード34が回転砥石20の外周面から離反しているので、回転砥石20の外周面に対する溝部20cの形成は行われない。
【0066】
回転砥石20が第一停止位置Sp2にて停止すると、再度研磨運転が開始され(ステップS108)、回転砥石20が加工開始位置Sp3へ移動し、さらに加工開始位置Sp3から第二停止位置Sp4へ移動して新たに載置された未加工の板ガラスWの端面加工を行う。
以降、ステップS109にて溝部20cが規定の使用寿命に到達していないと判断されるまで、第二の復帰運転(ステップS110)および研磨運転(ステップS108)が繰り返し実行される。
【0067】
一方、ステップS109において、前記溝部20cが既に規定の使用寿命に到達していると判断されると、前記判定手段によって、さらに、回転砥石20自身が、規定の使用寿命に到達しているかどうかの判断が実行される(ステップS111)。
なお、ステップS109では、予め設定された所定の板ガラスWの加工枚数の加工終了をもって、前記溝部20cの規定の使用寿命に到達したと判断してもよい。
【0068】
そして、回転砥石20自身が未だ規定の使用寿命に到達していないと判断されると、回転砥石20は段替え(より具体的には、使用寿命に到達した溝部20cに替わって新たな溝部20cを形成可能とする動作)を実行する(ステップS112)。
具体的には、
図2に示すように、回転砥石20は、回転手段21とともに、回転軸心方向(本実施形態においては上下方向)に沿って所定のストローク分だけ所定の方向(本実施形態においては上方)に移動して停止する。
これにより、板ガラスWの端面には、回転砥石20の外周面における環状の溝部20cが形成されていない部分が対向することとなる。
このように、回転砥石20の段替えは、板ガラスWの端面が、使用寿命に到達した溝部20cと対向している状態から、回転砥石20の外周面における環状の溝部20cが形成されていない部分と対向する状態へ切り替える動作である。
【0069】
その後、回転砥石20の段替えを終了した端面加工装置1は、
図4に示すように、第一の復帰運転(ステップS104)以降の動作を再び繰り返し、回転砥石20の外周面に新たな溝部20cを形成した後、板ガラスWの端面加工を実施することとなる。
この場合、ステップS112の段替え後に形成される溝部20cは、前回形成された溝部20cよりも下方に形成される。
【0070】
また、ステップS111において、回転砥石20自身が既に規定の使用寿命に到達していると判断されると、端面加工装置1の自動運転が停止する(ステップS113)。
これにより、端面加工装置1による板ガラスWの端面加工は終了する。
なお、引き続き、端面加工装置1によって板ガラスWの端面加工を行う場合には、前記ステップS102以降の各ステップを順に実行することとなる。つまり、使用寿命に到達した回転砥石20を溝部20cが未形成の新たな回転砥石20に交換した後、端面加工装置1の自動運転を再開する。
【0071】
このように、本実施形態の端面加工装置1においては、回転砥石20による板ガラスWの端面の加工(具体的には、研磨)を実行する加工工程(ステップS108)と、後続する板ガラスW(即ち、次に端面加工が行われる板ガラスW)の端面加工(研磨加工)の準備を行う準備工程(例えば、第一および第二の復帰運転を実行するステップS104、S110など)と、を交互に実施することとしており、溝形成機構部30による回転砥石20の外周面への溝部20cの形成は、前記準備工程の実施中(例えば、本実施形態においては、ステップS104の実行時)に実行することとしている。
よって、本実施形態の端面加工装置1によれば、回転砥石20の外周面に環状の溝部20cを形成するための新たなステップを別途設ける必要もなく、タイムロスによる生産効率の低下を招くこともない。
【0072】
また、本実施形態における端面加工装置1は、ステップS104の第一の復帰運転時における一連のステップS105、S106、S107を通じて、回転砥石20の外周面に予め環状の溝部20cを形成した上で、板ガラスWの端面加工を行うこととしているため、加工された板ガラスWの品質向上を図ることができる。
【0073】
ところで、前述した従来の端面加工装置101(
図7を参照)によって、板ガラスWの端面加工を行う際の端面加工方法については、本実施形態の端面加工装置1による端面加工方法と略同一のステップから構成される一方、自動運転を起動する以前の各ステップについて大きく相違する。
以下、従来の端面加工装置101によって板ガラスWの端面加工を行う際の端面加工方法について、
図8および9を用いて説明する。
なお、以下の説明においては便宜上、
図9の上下方向を端面加工装置101の上下方向と規定して記述する。
【0074】
先ず始めに、
図8に示すように、端面加工装置101の装置外において、予め、複数の環状の溝部120a・120a・・・を回転砥石120の外周面に形成する(ステップS201)。
また、その一方において、吸着定盤(図示せず)の上面に、板ガラスWを所定の載置姿勢によって載置する。
【0075】
そして、複数の環状の溝部120a・120a・・・を形成し終えた回転砥石120を、端面加工装置101の回転手段121に取付けた後(ステップS202)、板ガラスWの端面と対向する環状の溝部120aの上下位置が、当該板ガラスWの上下位置と一致するように、回転砥石120の上下位置を調整する(ステップS203)。
【0076】
回転砥石120の取付けが終了した後、端面加工装置101の自動運転を起動すると(ステップS204)、回転砥石120は、溝形成機構部(図示せず)を伴い復帰運転を実行する(ステップS205)。
復帰運転では、回転砥石120は、基準位置Sp1より第一停止位置Sp2へ移動して停止する。
【0077】
その後、研磨運転が実行され(ステップS206)、回転砥石120が第一停止位置Sp2から移動を開始し、加工開始位置Sp3に到達して停止する。
加工開始位置Sp3にて停止すると、回転砥石120は、回転手段121による回転駆動を開始する。
具体的には、前述した本実施形態の端面加工装置1におけるステップS108と同様に、回転砥石120は、回転駆動を行いながら、加工開始位置Sp3より第二停止位置Sp4へと移動して停止する。
これにより、回転砥石120は、板ガラスWの各端面の前端から後端にかけての全範囲に渡って、回転駆動しながら環状の溝部120aを介して当接しつつ移動することとなり、板ガラスWの端面加工が実施される。
【0078】
第二停止位置Sp4に到達した回転砥石120は、再び基準位置Sp1に移動して停止する。
回転砥石120が、再び基準位置Sp1にて停止すると、判定手段によって、板ガラスWの上下位置と一致する環状の溝部120aが、規定の使用寿命に到達しているかどうかの判断が実行される(ステップS207)。
【0079】
そして、前記環状の溝部120aが未だ規定の使用寿命に到達していないと判断されると、回転砥石120は、前述したステップS205以降の動作を再び繰り返すこととなる。
【0080】
一方、前記環状の溝部120aが既に規定の使用寿命に到達していると判断されると、判定手段によって、さらに、回転砥石120自身が、規定の使用寿命に到達しているかどうかの判断が実行される(ステップS208)。
【0081】
そして、回転砥石120自身が未だ規定の使用寿命に到達していないと判断されると、回転砥石120は段替え(より具体的には、使用寿命に到達した溝部120aに替わって新たな溝部120aを使用可能とする動作)を実行する(ステップS209)。
具体的には、
図9に示すように、回転砥石120は、回転手段121とともに、所定のストローク分だけ垂直方向に上昇して停止する。
これにより、回転砥石120の外周面において、板ガラスWの端面の上下位置と一致する箇所には、未使用の環状の溝部120aが位置することとなる。
そして、段替えを終了した回転砥石120は、
図8に示すように、前述したステップS202以降の動作を再び繰り返すこととなる。
【0082】
一方、回転砥石120自身が既に規定の使用寿命に到達していると判断されると(即ち、未使用の環状の溝部120aが存在しないと判断されると)、端面加工装置101の自動運転が停止する(ステップS210)。
これにより、端面加工装置101による板ガラスWの端面加工は終了する。
なお、引き続き、端面加工装置101によって板ガラスWの端面加工を行う場合は、再び、ステップS201以降の各ステップを順に実行することとなる。
【0083】
以上のように、従来の端面加工装置101においては、回転砥石120自身が既に規定の使用寿命に到達している場合、前述したステップS202にて未使用の回転砥石120に取り換える交換作業を実行する度に、ステップS203にて回転砥石120の上下位置を調整しなければならない。
これに対して、本実施形態の端面加工装置1においては、
図4に示すように、ステップS101において、板ガラスWの上下位置と一致するように、ブレード34の上下位置を一度調整するだけであり、その後、回転砥石20の交換作業を何度行ったとしても、当該回転砥石20の上下位置を調整する必要はないため、タイムロスが生じ生産効率が低下することもない。
【0084】
[検証実験]
次に、本実施形態における端面加工装置1において、溝形成機構部30の有効性を判断するために本発明者らが行った検証実験について、
図1を用いて説明する。
【0085】
先ず始めに、本発明者らは、本発明の実施形態のサンプルとして、外径寸法が150[mm]の、円盤形状の回転砥石20を用意し、当該回転砥石20を、未使用状態(外周面に環状の溝部20c(
図2を参照)が未だ形成されていない状態)のまま端面加工装置1に装着した。
【0086】
また、本発明者らは、溝形成機構部30の回動アーム31において、回動シャフト32と付勢手段35との離間距離(
図1における寸法a)、および回動シャフト32とブレード34との離間距離(
図1における寸法b)が、ともに30[mm]となるように調整した。
【0087】
そして、本発明者らは、回転砥石20を回転駆動させながら、当該回転砥石20の外周面に、ブレード34を所定の時間当接させた。
この際の諸条件として、回転砥石20の回転数を3820[rpm]とし、回転砥石20の外周面へのブレード34の押圧力を3〜4[N]とし、且つ、ブレード34の当接時間を3[s]として、回転砥石20の外周面に、環状の溝部20cを形成することとした。
【0088】
以上の結果、本発明者らは、回転砥石20の外周面において、溝深さ0.2〜0.3[mm]からなる環状の溝部20cが、安定して形成されることを確認した。
また、本発明者らは、この回転砥石20を用いて、0.3〜0.5[mm]の厚み寸法からなる板ガラスWの端面加工を行った結果、溝部20cの形成後に微調整等が必要なかったことを確認するとともに、角部付近のバタツキの発生を抑制しつつ、各端面の前端から後端にかけての全範囲に渡って、板ガラスWの端面加工を行うことが可能であることを確認した。
【0089】
[端面加工装置201(別実施形態)]
次に、別実施形態における端面加工装置201の構成について、
図5を用いて説明する。
なお、以下の説明においては便宜上、
図5における矢印Aの方向を端面加工装置201の前方と規定して記述する。
【0090】
別実施形態における端面加工装置201は、溝部が未形成の状態の回転砥石220を回転手段(図示せず)に装着した後に、回転砥石220の外周面に、周方向に沿った環状の溝部(図示せず)を形成する点について、前述した端面加工装置1と共通する一方、溝形成機構部30(
図1を参照)のような前記環状の溝部を形成するための手段が備えられていない点について、端面加工装置1と相違する。
即ち、端面加工装置201においては、板ガラスWの端面を加工することによって、回転砥石220の外周面に環状の溝部を形成する構成となっている。
【0091】
具体的には、端面加工装置201において、回転砥石220は、未だ環状の溝部が形成されていない状態のまま板ガラスWの端面加工に用いられ、板ガラスWの端面を研磨することにより、回転砥石220の外周面に環状の溝部が形成される。
【0092】
そして、回転砥石220による板ガラスWの端面の研磨に伴い、環状の溝部の深さが増大して回転砥石220の研磨能力が低下すると、前記環状の溝部が使用寿命に達したとして、回転砥石220は、所定のストローク分だけ上昇する。
これにより、回転砥石220の外周面(より具体的には、回転砥石220の外周面における板ガラスWの端面と当接される部位)においては、再び環状の溝部が未形成の状態となる。
その後、板ガラスWの端面を研磨することによって、回転砥石220の外周面に、再び新たな環状の溝部が形成される。
【0093】
ところで、
図6に示すように、例えば、未だ環状の溝部が形成されていない回転砥石220によって、板ガラスWの端面加工を行った場合、板ガラスWの端面加工の開始直後において、板ガラスWの角部付近が、回転駆動する回転砥石220の外周面に当って弾き飛ばされ、バタツキを発生させるおそれがある。
その結果、板ガラスWの角部付近を均一に研磨することが困難となる一方、回転砥石220自身が板ガラスWの角部によって傷付けられるおそれもあり、板ガラスWの品質低下を引き起こすおそれがあった。
【0094】
このようなことから、本実施形態における端面加工装置201においては、
図5(b)に示すように、回転砥石220の交換作業や段替えの終了直後における最初の一枚目の板ガラスWとして、ダミーの板ガラスWを用いることとし、このダミーの板ガラスWの端面加工を行う際に限り、当該板ガラスWの前側(矢印Aの方向側)の角部より後方へ距離Z分だけ離反した位置より、後方に向かって端面加工を行うこととしている。これにより、回転砥石220の外周面に新たな環状の溝部(図示せず)が形成される。前述の距離Zは、1〜100mmが好ましく、30〜40mmが好ましい。
そして、
図5(a)に示すように、二枚目以降の板ガラスWについては、前側の角部を除くことなく端面全体に渡って端面加工を行う制御としている。
【0095】
このように、板ガラスWの端面の両端部(例えば、本実施形態においては、前端部)を除いた領域を端面加工することによって、回転砥石220の外周面に環状の溝部を形成するような制御運転が行われる端面加工装置201によれば、溝形成機構部30を省略する分、設備コストの低減化を図ることができるとともに、例えば、回転砥石220の交換作業や段替えの終了後の、二枚目以降の板ガラスWに対して、回転砥石220に新たに形成された環状の溝部によって板ガラスWの角部付近のバタツキの発生を抑制しつつ、板ガラスWの端面加工を行うことが可能となり、加工終了後の板ガラスWの品質向上を図ることができる。
加えて、端面加工装置1においても、予め溝形成機構部30で溝部20cを形成することから、板ガラスWの角部付近のバタツキの発生を抑制しつつ、板ガラスWの端面加工を行うことが可能となり、加工終了後の板ガラスWの品質向上を図ることができる。