(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガスタービンに対して、駆動−センサモジュール(Actuator&Sensor Module)を介してガス燃料を制御し、保護モジュール(Protection Module)を介して安全インテグリティレベル(Safety Integrity Level、SIL)保護機能を制御するガスタービン制御システム(Gas Turbine Control System;GTCS)を検証するためにガスタービンをシミュレーションするガスタービンリアルタイムシミュレーションシステムであって、
前記駆動−センサモジュールおよび前記保護モジュールに1つ以上のハードワイヤ(hardwire)を介して連結され、前記ガスタービンのタイムクリティカル(Time Critical)な部分をリアルタイムにシミュレーションするハードワイヤループ(Hardwire In the Loop;HIL)シミュレータと、
前記GTCSにネットワーク(Network)を介して連結され、前記ガスタービンのタイムクリティカルでない部分をリアルタイムにシミュレーションするネットワーク(Network)シミュレータを備え、
前記HILシミュレータと前記ネットワークシミュレータは、ハードワイヤ(Hardwire)またはイーサネット(Ethernet)で連結され、実際のガスタービンと同一に駆動されるために、前記HILシミュレータと前記ネットワークシミュレータとの間で信号同期(Signal Synchronization)を行い、
前記ネットワークシミュレータは、100msごとに動作しながら、10msごとに前記HILシミュレータのフラグ(flag)状態を確認して、前記HILシミュレータがフラグオン(ON)状態であれば、前記HILシミュレータから信号を受信して信号同期(Signal Synchronization)を実行し、
前記HILシミュレータは、1msごとに動作しながら、100msとなる時点で前記ネットワークシミュレータのフラグ状態を確認して、前記ネットワークシミュレータのフラグ状態がオン(ON)状態であれば、前記ネットワークシミュレータと信号を送受信して信号同期(Signal Synchronization)を実行する、
ガスタービンリアルタイムシミュレーションシステム。
前記HILシミュレータは、タイムクリティカル機能(Time Critical Function)により、前記駆動−センサモジュールの間で燃料制御に関する駆動信号やセンサ信号を送受信し、前記保護モジュールの間でSIL保護に関するデータや信号を送受信する、請求項1に記載のガスタービンリアルタイムシミュレーションシステム。
前記HILシミュレータは、前記GTCSの前記駆動−センサモジュールおよび前記保護モジュールと1ms以内の時間ごとにデータや信号を送受信する、請求項1から3のいずれか一項に記載のガスタービンリアルタイムシミュレーションシステム。
前記ネットワークシミュレータは、前記GTCSとネットワークを介して100ms以内の時間ごとにデータや信号を送受信する、請求項1から4のいずれか一項に記載のガスタービンリアルタイムシミュレーションシステム。
前記HILシミュレータおよび前記ネットワークシミュレータが初期駆動して、一定時間経過後に正常に動作を行う時、前記HILシミュレータおよび前記ネットワークシミュレータの正常動作状態のデータや信号を格納しているデータベースをさらに含み、
前記HILシミュレータおよび前記ネットワークシミュレータは、初期駆動時に、前記データベースに格納されている前記正常動作状態のデータや信号を用いて正常動作状態に初期駆動する、請求項1から8のいずれか一項に記載のガスタービンリアルタイムシミュレーションシステム。
ハードワイヤループ(Hardwire In the Loop、HIL)シミュレータが1つ以上のハードワイヤ(hardwire)を介してガスタービン制御システム(Gas Turbine Control System、GTCS)に連結され、ネットワーク(Network)シミュレータがネットワーク(Network)を介して前記GTCSに連結されたシステムのガスタービンリアルタイムシミュレーション方法であって、
(a)前記GTCSが、ガスタービンに対して、駆動−センサモジュール(Actuator&Sensor Module)を介してガス燃料を制御し、保護モジュール(Protection Module)を介して安全インテグリティレベル(Safety Integrity Level、SIL)保護機能を制御するステップと、
(b)前記HILシミュレータと前記ネットワークシミュレータとの間で信号同期(Signal Synchronization)を行うステップと、
(c)前記HILシミュレータが、前記駆動−センサモジュールまたは前記保護モジュールを介してリアルタイムにデータや信号を受信してシミュレーションするステップと、
(d)前記ネットワークシミュレータが、前記ガス燃料の制御(Fuel Control)と前記SIL保護機能の制御を除いた補助制御(Auxiliary Control)と、非SIL保護(No SIL Protection)制御に関するシミュレーションをリアルタイムに行うステップとを含み、
前記(b)ステップは、
前記ネットワークシミュレータが、100msごとに動作しながら、10msごとに前記HILシミュレータのフラグ(flag)状態を確認して、前記HILシミュレータがフラグオン(ON)状態であれば、前記HILシミュレータから信号を受信して信号同期(Signal Synchronization)を実行し、
前記HILシミュレータは、1msごとに動作しながら、100msとなる時点で前記ネットワークシミュレータのフラグ状態を確認して、前記ネットワークシミュレータのフラグ状態がオン(ON)状態であれば、前記ネットワークシミュレータと信号を送受信して信号同期(Signal Synchronization)を実行する、
ガスタービンリアルタイムシミュレーション方法。
前記(b)ステップにおいて、前記HILシミュレータおよび前記ネットワークシミュレータは、初期駆動時に、前記HILシミュレータおよび前記ネットワークシミュレータの正常動作状態のデータや信号を格納しているデータベースから前記正常動作状態のデータや信号を読み込んで、正常動作状態に初期駆動する、請求項10に記載のガスタービンリアルタイムシミュレーション方法。
前記(c)ステップにおいて、前記HILシミュレータは、タイムクリティカル機能(Time Critical Function)により、前記駆動−センサモジュールと燃料制御に関する駆動信号やセンサ信号を送受信し、前記保護モジュールとSIL保護に関するデータや信号を送受信する、請求項10または11に記載のガスタービンリアルタイムシミュレーション方法。
前記(c)ステップにおいて、前記HILシミュレータは、前記GTCSと前記駆動−センサモジュールおよび前記保護モジュールを介して1ms以内の時間ごとにデータや信号を送受信する、請求項10から13のいずれか一項に記載のガスタービンリアルタイムシミュレーション方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の問題点を解決するための、本発明の目的は、ガス燃料を用いてタービンを駆動して電気を生産するガスタービン発電システムにおいて、発電所運転の試行錯誤を低減するために、ガスタービンをリアルタイムにシミュレーションして実際のガスタービン制御システム(GTCS)の入出力信号を検証できるようにする、ガスタービンリアルタイムシミュレーションシステムおよびその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための、本発明に係るガスタービンリアルタイムシミュレーションシステムは、ガスタービンに対して、駆動−センサモジュール(Actuator&Sensor Module)を介してガス燃料を制御し、保護モジュール(Protection Module)を介して安全インテグリティレベル(Safety Integrity Level、以下、SIL)保護機能を制御するガスタービン制御システム(Gas Turbine Control System;以下、GTCS)を検証するためにガスタービンをシミュレーションするガスタービンリアルタイムシミュレーションシステムであって、前記駆動−センサモジュールおよび前記保護モジュールに1つ以上のハードワイヤ(hardwire)を介して連結され、前記ガスタービンのタイムクリティカル(Time Critical)な部分をリアルタイムにシミュレーションするハードワイヤループ(Hardwire In the Loop;以下、HIL)シミュレータと、前記GTCSにネットワーク(Network)を介して連結され、前記ガスタービンのタイムクリティカルでない部分をリアルタイムにシミュレーションするネットワーク(Network)シミュレータとを備える。
【0009】
また、前記HILシミュレータは、タイムクリティカル機能(Time Critical Function)により、前記駆動−センサモジュールの間で燃料制御に関する駆動信号やセンサ信号を送受信し、前記保護モジュールの間でSIL保護に関するデータや信号を送受信する。
【0010】
また、前記HILシミュレータは、前記ネットワークシミュレータおよび前記GTCSから前記燃料制御とSIL保護に関するデータや信号をリアルタイムに受信して、前記ガスタービンの燃料制御と保護機能をシミュレーションする。
【0011】
また、前記HILシミュレータは、前記GTCSの前記駆動−センサモジュールおよび前記保護モジュールと1ms以内の時間ごとにデータや信号を送受信する。
【0012】
また、前記ネットワークシミュレータは、前記GTCSとネットワークを介して100ms以内の時間ごとにデータや信号を送受信する。
【0013】
また、前記HILシミュレータと前記ネットワークシミュレータは、ハードワイヤ(Hardwire)またはイーサネット(Ethernet(登録商標))で連結され、実際のガスタービンと同一に駆動されるために、前記HILシミュレータと前記ネットワークシミュレータとの間で時間同期(Time Synchronization)とモデル同期(Model Synchronization)を行う。
【0014】
また、前記HILシミュレータは、前記GTCSとガスタービンの運転制御および状態に関するバルブ制御命令および状態、ガスタービンの速度および出力、ガス圧力に関するデータや信号を送受信するための入出力ボード(Input/Output Board)と、前記入出力ボードから入力されたデータや信号に応じて、当該モデルに適した制御および運転信号を生成して出力したり、演算に用いるガスタービンメインモデル(Gas Turbine Main Model)と、前記入出力ボードを介して入力されたデータや信号を前記ガスタービンメインモデルに伝達したり、前記ガスタービンメインモデルの動作結果を前記入出力ボードに伝達するプロセッサボード(Processor Board)とを備える。
【0015】
また、前記入出力ボードは、前記GTCSから入力されたアナログ信号をデジタルデータに変換させて前記ガスタービンメインモデルに入力させたり、前記ガスタービンメインモデルの出力を前記駆動−センサモジュールの入力仕様に合わせて信号を変換する信号状態部(Signal Conditioning Unit)と、前記GTCSとネットワーク通信を行い、前記ネットワークシミュレータとデータや信号を送受信するための通信部(COM)とを備える。
【0016】
また、前記ネットワークシミュレータは、前記HILシミュレータと通信したり、前記GTCSと通信するための通信部と、前記GTCSから前記通信部を介して受信した補助制御(Auxiliary Control)と非SIL保護(No SIL Protection)制御に関するデータや信号に基づいてガスタービンをシミュレーションするガスタービン補助モデル(GT Auxiliary Model)と、前記HILシミュレータおよび前記ネットワークシミュレータのシミュレーション操作信号を使用者から受信して前記ガスタービンメインモデルおよび前記ガスタービン補助モデルに伝達し、前記ガスタービンメインモデルおよび前記ガスタービン補助モデルの動作結果に応じて、ガスタービンの運転状態を使用者が確認できるようにディスプレイするワークステーション部(Workstation Unit)とを備える。
【0017】
そして、前記HILシミュレータおよび前記ネットワークシミュレータが初期駆動して、一定時間経過後に正常に動作を行う時、前記HILシミュレータおよび前記ネットワークシミュレータの正常動作状態のデータや信号を格納しているデータベースをさらに含み、前記HILシミュレータおよび前記ネットワークシミュレータは、初期駆動時に、前記データベースに格納されている前記正常動作状態のデータや信号を用いて正常動作状態に初期駆動する。
【0018】
一方、上記の目的を達成するための、本発明に係るガスタービンリアルタイムシミュレーション方法は、ハードワイヤループ(Hardwire In the Loop、以下、HIL)シミュレータが1つ以上のハードワイヤ(hardwire)を介してガスタービン制御システム(Gas Turbine Control System、以下、GTCS)に連結され、ネットワーク(Network)シミュレータがネットワーク(Network)を介して前記GTCSに連結されたシステムのガスタービンリアルタイムシミュレーション方法であって、(a)前記GTCSが、ガスタービンに対して、駆動−センサモジュール(Actuator&Sensor Module)を介してガス燃料を制御し、保護モジュール(Protection Module)を介して安全インテグリティレベル(Safety Integrity Level、以下、SIL)保護機能を制御するステップと、(b)前記HILシミュレータと前記ネットワークシミュレータとの間で時間同期(Time Synchronization)とモデル同期(Model Synchronization)を行うステップと、(c)前記HILシミュレータが、前記駆動−センサモジュールまたは前記保護モジュールを介してリアルタイムにデータや信号を受信してシミュレーションするステップと、(d)前記ネットワークシミュレータが、前記ガス燃料の制御(Fuel Control)と前記SIL保護機能制御を除いた補助制御(Auxiliary Control)と、非SIL保護(No SIL Protection)制御に関するシミュレーションをリアルタイムに行うステップとを含む。
【0019】
また、前記(b)ステップにおいて、前記HILシミュレータおよび前記ネットワークシミュレータは、初期駆動時に、前記HILシミュレータおよび前記ネットワークシミュレータの正常動作状態のデータや信号を格納しているデータベースから前記正常動作状態のデータや信号を読み込んで、正常動作状態に初期駆動する。
【0020】
また、前記(c)ステップにおいて、前記HILシミュレータは、タイムクリティカル機能(Time Critical Function)により、前記駆動−センサモジュールと燃料制御に関する駆動信号やセンサ信号を送受信し、前記保護モジュールとSIL保護に関するデータや信号を送受信する。
【0021】
また、前記(c)ステップにおいて、前記HILシミュレータは、前記ネットワークシミュレータおよび前記GTCSから燃料制御とSIL保護に関するデータや信号をリアルタイムに受信して、前記ガスタービンの燃料制御と保護機能をシミュレーションする。
【0022】
また、前記(c)ステップにおいて、前記HILシミュレータは、前記GTCSと前記駆動−センサモジュールおよび前記保護モジュールを介して1ms以内の時間ごとにデータや信号を送受信する。
【0023】
また、前記(d)ステップにおいて、前記ネットワークシミュレータは、前記GTCSとネットワーク通信を介して100ms以内の時間ごとにデータや信号を送受信する。
【0024】
そして、前記(b)ステップは、前記ネットワークシミュレータが、100msごとに動作しながら、10msごとに前記HILシミュレータのフラグ(flag)状態を確認して、前記HILシミュレータがフラグオン(ON)状態であれば、前記HILシミュレータから信号を受信して時間同期(Time Synchronization)および信号同期(Signal Synchronization)を実行し、前記HILシミュレータは、1msごとに動作しながら、100msとなる時点で前記ネットワークシミュレータのフラグ状態を確認して、前記ネットワークシミュレータのフラグ状態がオン(ON)状態であれば、前記ネットワークシミュレータと信号を送受信して時間同期(Time Synchronization)および信号同期(Signal Synchronization)を実行する。
【0025】
本発明の他の態様、利点および特徴は、次のセクション:図面の簡単な説明、詳細な説明および特許請求の範囲を含む全体出願明細書に記載された内容に基づいてより明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ガスタービンを制御するガスタービン制御システム(GTCS)をシミュレーションする場合に、タイムクリティカル(Time Critical)タイプの入出力に対してハードワイヤインタフェース(Hardwire Interface)で直接連結して、実際のセンサおよびアクチュエータが連結されたのと類似の環境にシミュレーションすることにより、検証が必要な項目に対してガスタービン制御システム(GTCS)をリアルタイムに検証することができる。
【0027】
また、ガスタービン制御システム(GTCS)の検証のためにすべての信号を直接連結する必要がないため、タイムクリティカルタイプでない入出力信号に対してはネットワーク(Network)通信を用いて検証することにより、費用を節減することができる。
【0028】
さらに、タイムクリティカル(Time Critical)タイプの入出力信号に対して高速処理して検証し、タイムクリティカル(Time Critical)タイプでない入出力信号に対して低速処理して検証することができる。
【0029】
そして、実際のセンサおよびアクチュエータと類似の信号レベルのシミュレーションのためにハードウェア基盤のシミュレータを実現し、ガスタービン制御システム(GTCS)のロジッグ検証だけでなく、タイムクリティカル機能に対する検証およびシステムレベルを検証することができて、ガスタービン制御システム(GTCS)の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0032】
本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略しており、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付す。
【0033】
明細書全体において、ある部分が他の部分に『連結』されているとする時、これは、『直接的に連結』されている場合のみならず、その中間に他の素子を挟んで『電気的に連結』されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を『含む』とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0034】
ある部分が他の部分の『上に』あると言及する場合、これは、直に他の部分の上にあり得るか、その間に他の部分が伴うことがある。対照的に、ある部分が他の部分の『真上に』あると言及する場合、その間に他の部分は伴わない。
【0035】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使われるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを、他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使われる。したがって、以下に述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及されてもよい。
【0036】
ここで使われる専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使われる単数形態は、文章がこれと明らかに反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。明細書で使われる『含む』の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるわけではない。
【0037】
『下』、『上』などの相対的な空間を示す用語は、図面に示された一部分の他の部分に対する関係をより容易に説明するために使われる。このような用語は、図面で意図した意味とともに、使用中の装置の他の意味や動作を含むように意図される。例えば、図中の装置を覆すと、他の部分の『下』にあると説明されていたある部分は、他の部分の『上』にあると説明される。したがって、『下』という例示的な用語は、上と下の方向をすべて含む。装置は90゜回転または他の角度で回転してもよく、相対的な空間を示す用語もこれに基づいて解釈される。
【0038】
別途に定義しないが、ここで使われる技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を持つ。通常使われる辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を持つものと追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味で解釈されない。
【0039】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0040】
図1は、本発明に係るガスタービンリアルタイムシミュレーションシステムの動作を理解するのに役立つガスタービン制御システムおよびガスタービンの構成を示す図である。
【0041】
図1に示されるように、ガスタービンは、タイムクリティカル(Time Critical)か否かに基づき、燃料部と、保護部と、補助部とを含む構成を有する。
【0042】
燃料部は、大きく、燃焼ガスを生成するための燃焼器と、燃焼器から吐出される燃焼ガスによって駆動するタービンと、燃焼器に高圧の空気を供給する圧縮機とを備える。圧縮機は、回転する場合、外部空気を吸入、圧縮して、燃焼器に圧縮空気を供給し、燃焼器で圧縮空気に燃料を供給して燃焼させることにより、高温、高圧の燃焼ガスを生成した後、タービンに供給する。そして、燃焼器から吐出された高温、高圧の燃焼ガスは、タービンの回転翼を駆動させてタービンのロータを回転させる。タービンには、固定翼と回転翼のようなタービンディスクユニットがロータの軸方向に沿って交互多段に具備されている。
【0043】
保護部は、ガスタービンの動作が設定値に近接した時、ガスタービン制御システム(Gas Turbine Control System、以下、GTCS)の制御により、ガスタービンを保護するためにガスタービンの動作を中止する。
【0044】
そして、燃料部と保護部は、複数のセンサを具備し、これにより、燃料部と保護部の状態を点検して、その結果をGTCSに伝達することができる。
【0045】
補助部は、ガスタービンの燃料や保護動作のほか、補助動作を行う。
【0046】
GTCSは、ガスタービンの動作を制御する装置であって、燃料部に対してガス燃料の供給を制御し、保護部に対して安全インテグリティレベル(Safety Integrity Level、以下、SIL)保護機能を制御する。
【0047】
ここで、SIL保護機能は、ガスタービンの動作に対して、ガス圧力や圧縮機の空気圧などを一定値に設定しておき、ガス圧力や空気圧などが一定値に近接した時、動作を中止させることにより、ガスタービンが故障しないようにしたり、破損しないように保護するのである。
【0048】
したがって、GTCSで行う燃料制御とSIL保護機能は、時間による動作制御が重要であるので、タイムクリティカル機能(Time Critical Function)に相当する。
【0049】
上述のように、GTCSによって制御されるガスタービンをシミュレーションしてGTCSの制御動作を検証する場合に、従来はネットワーク(Network)通信を用いて入出力信号を検証していたため、検証が必要な項目に対してリアルタイムに検証できずにいた。
【0050】
本発明では、ガスタービンをシミュレーションするシミュレータについて、2つのシミュレータを混合するハイブリッドシミュレータ(Hybrid Simulator)で実現するのである。
【0051】
1つのシミュレータは、ガスタービン制御システム(GTCS)に1つ以上の複数のハードワイヤ(Hardwire)で連結して、センサおよびアクチュエータモジュールと保護モジュールに対してシステムレベル検証およびタイムクリティカル(Time Critical)タイプのロジッグ検証をリアルタイムに行えるようにし、他の1つのシミュレータは、GTCSにネットワーク(Network)を介して連結して、ネットワーク通信を用いてGTCSの補助制御(Auxiliary Control)と非SIL保護(No SIL Protection)機能を検証できるようにするのである。
【0052】
つまり、本発明は、ガスタービンに対するシミュレータ(Simulator)として、ハードワイヤループ(Hardwire In the Loop:HIL)シミュレータとネットワーク(Network)シミュレータとを混合したハイブリッドシミュレータ(Hybrid Simulator)を実現するのである。
【0053】
図2は、本発明の実施形態に係るガスタービンリアルタイムシミュレーションシステムの全般的な構成を示すブロック構成図である。
【0054】
図2を参照すれば、本発明に係るガスタービンリアルタイムシミュレーションシステム100は、ガスタービン制御システム(Gas Turbine Control System、以下、GTCS)110にハードワイヤを介して連結されるハードワイヤループ(Hardwire In the Loop、以下、HIL)シミュレータ120と、GTCS110にネットワーク(Network)を介して連結されるネットワーク(Network)シミュレータ130とを備える。
【0055】
GTCS110は、ガスタービンに対して、駆動−センサモジュール(Actuator&Sensor Module)112を介してガス燃料を制御し、保護モジュール(Protection Module)114を介して安全インテグリティレベル(SIL)保護機能を制御する。ここで、駆動−センサモジュール112は、ガスタービンを駆動するアクチュエータ(Actuator)の動作制御と、ガスタービンの動作や信号を感知するセンサ(Sersor)の動作制御を担当する。
【0056】
HILシミュレータ120は、GTCS110の駆動−センサモジュール112と保護モジュール114に1つ以上のハードワイヤ(hardwire)を介して連結され、GTCS110の駆動−センサモジュール112または保護モジュール114からリアルタイムにデータや信号を受信するとともに、ネットワークシミュレータ130からデータや信号を受信して、ガスタービンの燃料部や保護部をシミュレーションする動作を行う。
【0057】
ネットワークシミュレータ130は、GTCS110にネットワーク(Network)を介して連結され、燃料制御(Fuel Control)とSIL保護機能制御を除いた補助機能制御(Auxiliary Control)と、非SIL保護(No SIL Protection)機能を実行する補助部に対するシミュレーション動作をリアルタイムに行う。
【0058】
つまり、ガスタービンのシミュレーションのために、HILシミュレータ120は、タイムクリティカル機能(Time Critical Function)により、GTCS110の駆動−センサモジュール112とガス制御に関する駆動信号やセンサ信号を送受信し、GTCS110の保護モジュール114とSIL保護に関するデータや信号を送受信する。また、ネットワークシミュレータ130は、GTCS110とネットワーク通信を介して補助制御(Auxiliary Control)や非SIL保護(No SIL Protection)に関する信号やデータを送受信する。したがって、HILシミュレータ120は、GTCS110の駆動−センサモジュール112と保護モジュール114からデータや信号を受信し、ネットワークシミュレータ130からデータや信号を受信して、ガスタービンの燃料部と保護部の動作をシミュレーションするのである。
【0059】
そして、HILシミュレータ120は、GTCS110とハードワイヤを介して1ms以内の時間ごとにデータや信号を送受信することで高速運転する。
【0060】
また、ネットワークシミュレータ130は、GTCS110とネットワークを介して100ms以内の時間ごとにデータや信号を送受信することで低速運転する。
【0061】
さらに、HILシミュレータ120とネットワークシミュレータ130は、ハードワイヤ(Hardwire)またはイーサネット(Ethernet)で連結され、実際のガスタービンと同一に駆動されるために、HILシミュレータ120とネットワークシミュレータ130との間で時間同期(Time Synchronization)とモデル同期(Model Synchronization)を行う。ここで、時間同期およびモデル(信号)同期は、
図4および
図5でより詳細に説明する。
【0062】
したがって、本発明に係るガスタービンリアルタイムシミュレーションシステム100は、GTCS110にハードワイヤで連結され、高速運転されるHILシミュレータ120と、GTCS110にネットワークで連結され、低速運転されるネットワークシミュレータ130とを混合したハイブリッドシミュレータを実現するのである。
【0063】
図3は、本発明の実施形態に係るHILシミュレータとネットワークシミュレータの詳細構成を示すブロック構成図である。
【0064】
図3に示されるように、HILシミュレータ120は、GTCS110とガスタービンの運転制御および状態に関するバルブ制御命令および状態、ガスタービンの速度および出力、ガス圧力に関するデータや信号を送受信するための入出力ボード(Input/Output Board)122と、前記入出力ボードから入力されたデータや信号に応じて、当該モデルに適した制御および運転信号を生成して出力したり、演算に用いるガスタービンメインモデル(Gas Turbine Main Model)124と、前記入出力ボードを介して入力されたデータや信号を前記ガスタービンメインモデルに伝達したり、前記ガスタービンメインモデルの動作結果を前記入出力ボードに伝達するプロセッサボード(Processor Board)126とを備える。
【0065】
この時、入出力ボード122は、GTCS110から入力されたアナログ離散信号をデジタルデータに変換させてガスタービンメインモデル124に入力させたり、駆動−センサモジュール部112のセンサ(Sensor)やアクチュエータ(Actuator)の仕様に合わせて信号を変換する信号状態部(Signal Conditioning Unit:SC)と、GTCS110とネットワーク通信を行い、ネットワークシミュレータ130とデータや信号を送受信するための通信部(COM)とを備えることができる。
【0066】
また、ネットワークシミュレータ130は、
図3に示されるように、HILシミュレータ120と通信したり、GTCS110と通信するための通信部(COM1/COM2)132と、GTCS110から通信部132を介して受信した補助制御(Auxiliary Control)と非SIL保護(No SIL Protection)制御に関するデータや信号に基づいてガスタービンの制御をシミュレーションするガスタービン補助モデル(GT Auxiliary Model)134と、HILシミュレータ120およびネットワークシミュレータ130のシミュレーション操作信号を使用者から受信してガスタービンメインモデル124およびガスタービン補助モデル134に伝達し、ガスタービンメインモデル124およびガスタービン補助モデル134の動作結果に応じて、ガスタービンの運転状態を使用者が確認できるようにディスプレイするワークステーション部(Workstation Unit)136とを備える。
【0067】
ここで、ワークステーション部136は、
図3に示していないが、使用者が直接ガスタービンの制御に関する高圧タービンおよび低圧タービン、高圧停止および制御、低圧停止および制御バルブのような機構物のモデル情報を設定し、シミュレーションのためのタービンの昇速および出力増減を操作するための操作およびディスプレイ部を含むことができる。例えば、タービンの速度、タービンの出力、各機構物の運転状態が数値などのデータで表示され、タービンの運転状態を使用者が視覚的に直に確認できるようにするタッチスクリーン(Touch Screen)のようなGUI(Graphic User Interface)を用いることができる。
【0068】
したがって、使用者または運転者は、ワークステーション部136を介して複数のガスタービン発電システムのいずれか1つを選択することができ、当該ガスタービン発電システムから特定モデルを選択することができる。
【0069】
一方、本発明に係るガスタービンリアルタイムシミュレーションシステム100は、HILシミュレータ120およびネットワークシミュレータ130が初期駆動して、一定時間経過後に正常に動作を行う時、HILシミュレータ120およびネットワークシミュレータ130の正常動作状態のデータや信号を格納しているデータベース140をさらに含むことができる。
【0070】
この時、データベース140は、
図3に示されるように、ワークステーション部136を備えるネットワークシミュレータ130に含まれるように構成することができ、HILシミュレータ120およびネットワークシミュレータ130に含まれずに別途の装置として構成することもできる。
【0071】
したがって、HILシミュレータ120およびネットワークシミュレータ130は、初期駆動時に、データベース140に格納されている正常動作状態のデータや信号を用いて直ちに正常動作状態に初期駆動する。
【0072】
図4および
図5は、本発明の実施形態に係るHILシミュレータとネットワークシミュレータとの間の時間同期と信号同期を示す図である。
【0073】
図4に示されるように、HILシミュレータ120は、1msごとにGTCS110からデータや信号を受信してアップデート(Update)し、ネットワークシミュレータ130は、100msごとにGTCS110からデータや信号を受信してアップデートする。ここで、アップデートは、HILシミュレータ120およびネットワークシミュレータ130の動作だけでなく、送受信するデータや信号に対して更新を行うのである。
【0074】
本発明の実施形態では、ガスタービンの動作についてシミュレーションする時、GTCS110とシミュレータとの間で送受信する信号の個数は約1500個程度であるが、タイムクリティカル(Time Critical)および保護(Protection)の面で重要な250個の信号をHILシミュレータ120で高速処理し、残りの1250個の信号をネットワークシミュレータ130で低速処理するようにするのである。
【0075】
そこで、処理速度が異なるHILシミュレータ120とネットワークシミュレータ130との間で時間同期(Time Synchronization)と信号同期(Signal Synchronization)が必要になるのである。
【0076】
図5に示されるように、ネットワークシミュレータ130は、100msごとに動作しながら、10msごとにHILシミュレータ120のフラグ(flag)状態を確認するが、HILシミュレータ120がフラグオン(ON)状態であれば、HILシミュレータ120から信号を受信して信号同期(Signal Synchronization)を実行する。そして、ネットワークシミュレータ130は、信号同期を行った後、GTCS110からデータや信号を受信してシミュレーションを実行し、シミュレーションが終了すると、フラグをオン(ON)状態に切り替える。
【0077】
一方、HILシミュレータ120は、1msごとに動作しながら、100msとなる時点でネットワークシミュレータ130のフラグ状態を確認して、ネットワークシミュレータ130のフラグ状態がオン(ON)状態であれば、ネットワークシミュレータ130と信号を送受信して信号同期(Signal Synchronization)を実行する。
【0078】
この時、ネットワークシミュレータ130は、HILシミュレータ120と信号を送受信して信号同期(Signal Synchronization)を実行した後、HILシミュレータ120のフラグがオン(ON)状態であれば、GTCS110からデータや信号を受信してシミュレーションを実行する。
【0079】
図6は、本発明の実施形態に係るガスタービンリアルタイムシミュレーション方法を説明するための動作フローチャートを示す図である。
【0080】
本発明に係るガスタービンリアルタイムシミュレーションシステム100は、HILシミュレータ120が1つ以上のハードワイヤ(hardwire)を介してGTCS110に連結され、ネットワーク(Network)シミュレータ130がGTCS110にネットワーク(Network)を介して連結された状態で、以下のようなリアルタイムシミュレーション動作過程を行う。
【0081】
図6を参照すれば、GTCS110は、ガスタービンに対して、駆動−センサモジュール112を介してガス燃料を制御し、保護モジュール(Protection Module)を介して安全インテグリティレベル(SIL)保護機能を制御する(S510)。つまり、GTCS110は、ガスタービンをシミュレーションするHILシミュレータ120とネットワークシミュレータ130にガス燃料の制御に関する命令信号とSIL保護機能に関する命令信号を伝送するのである。
【0082】
ここで、駆動−センサモジュール112は、発電所現場にタービン制御のために設けられた複数のセンサ(Sensor)とアクチュエータ(Actuator)を制御する機能を果たす。この時、複数のセンサは、ガスの圧力を感知するセンサや、タービンの速度を感知するセンサ、タービンの出力を感知するセンサなどになってもよい。アクチュエータは、例えば、ガスの圧力を制御するための制御バルブを開閉するバルブアクチュエータや、圧縮機から高圧の空気を供給する供給アクチュエータなどになってもよい。発電所現場にはタービン制御のための機構物が用いられるが、その例として、高圧タービンおよび低圧タービン、高圧停止および制御、低圧停止および制御バルブなどがある。
【0083】
次に、本発明に係るガスタービンリアルタイムシミュレーションシステム100において、HILシミュレータ120とネットワークシミュレータ130は、GTCS110からガス燃料の制御に関する命令信号とSIL保護機能に関する命令信号を受信してガスタービンのシミュレーションを実行するために、HILシミュレータ120とネットワークシミュレータ130との間で時間同期(Time Synchronization)とモデル同期(Model Synchronization)を行う(S520)。
【0084】
つまり、本発明に係るガスタービンリアルタイムシミュレーションシステム100は、
図4および
図5により説明したように、HILシミュレータ120が1msごとに更新動作を行い、ネットワークシミュレータ130が100msごとに更新動作を行うことによって、2つのシミュレータの間で同期を合わせるために、ネットワークシミュレータ130が、100msごとに動作しながら、10msごとにHILシミュレータ120のフラグ(flag)状態を確認して、HILシミュレータ120がフラグオン(ON)状態であれば、HILシミュレータ120から信号を受信して信号同期(Signal Synchronization)を実行するのである。
【0085】
また、HILシミュレータ120は、1msごとに動作しながら、100msとなる時点でネットワークシミュレータ130のフラグ状態を確認して、ネットワークシミュレータ130のフラグ状態がオン(ON)状態であれば、ネットワークシミュレータ130と信号を送受信して信号同期(Signal Synchronization)を実行するのである。
【0086】
ここで、HILシミュレータ120およびネットワークシミュレータ130は、初期駆動時に、HILシミュレータおよびネットワークシミュレータの正常動作状態のデータや信号を格納しているデータベース140から正常動作状態のデータや信号を読み込んで、待機過程なく正常動作状態に初期駆動する。一般的に、発電関連シミュレータは、初期駆動時に、正常な動作状態になるまで30分〜1時間程度の時間がかかるため、このような待機過程を経ることなく初期駆動して直ちに正常動作状態に駆動されるためには、HILシミュレータ120およびネットワークシミュレータ130の正常な動作状態の時のデータと信号をデータベース140に格納しておき、初期駆動時に、正常状態のデータと信号を持ってきて、直ちに正常状態に動作させるのである。
【0087】
次に、HILシミュレータ120は、GTCS110から駆動−センサモジュール112または保護モジュール114を介してリアルタイムにデータや信号を受信し、ネットワークシミュレータ130から燃料制御および保護機能関連データや信号を受信して、ガスタービンの燃料部と保護部をシミュレーションする動作を行う(S530)。
【0088】
つまり、HILシミュレータ120は、GTCS110から駆動−センサモジュール112または保護モジュール114を介してリアルタイムにデータや信号を受信して、ガスタービンのタイムクリティカル(Time Critical)な機能をシミュレーションするのである。
【0089】
したがって、HILシミュレータ120は、タイムクリティカル機能(Time Critical Function)により、駆動−センサモジュール112とガス制御に関する駆動信号やセンサ信号を送受信し、保護モジュール114とはSIL保護に関するデータや信号を送受信する。
【0090】
この時、HILシミュレータ120は、GTCS110と駆動−センサモジュール112および保護モジュール114を介して1ms以内の時間ごとにデータや信号を送受信することで高速運転する。
【0091】
本発明に係るHILシミュレータ120は、ガスタービンメインモデル124を介してシミュレーションまたは検証モードを行う。ここで、ガスタービンメインモデル124は、発電所現場のGTCS110の制御に用いられる制御アルゴリズムを格納している。
【0092】
HILシミュレータ120は、ガスタービンメインモデル124の制御アルゴリズムによりシミュレーションして、当該機構物に適した制御および運転信号を生成して伝送したり、演算に用いる。
【0093】
例えば、バルブの要求値が入力されると、HILシミュレータ120は、入力されたバルブの要求値から当該ガスタービンメインモデル124に適したタービンの出力および速度値を算出して出力する。
【0094】
したがって、ガスタービンメインモデル124では、伝達されたタービンの出力および速度値に応じてシミュレーションしてその結果値をGTCS110に伝送し、また、ワークステーション部136に出力して運転者が確認できるようにする。この時、ガスタービンメインモデル124は、ワークステーション部136の操作およびディスプレイ部の選択に応じて、当該発電所に用いられる機構物の制御アルゴリズムを呼び出して用いることができる。ガスタービンメインモデル124とワークステーション部136は、インタフェースを介して遠距離にある操作およびディスプレイ部とデータを交換したり、多数の操作およびディスプレイ部とデータ交換が可能となるように構成することができる。
【0095】
一方、「検証モード」について説明すれば、HILシミュレータ120は、発電所現場にあるGTCS110とハードワイヤを介して直接連結された状態で、ガスタービンメインモデル124を介してGTCS110に対する制御アルゴリズムのようなソフトウェア異常の有無、ハードウェア異常の有無、タービン制御システム整備の適切性の有無などを検証することができ、現場のタービン制御のための機構物の応動状態などを監視することができる。このモードで、現場のタービン制御のための機構物は用いられず、現場の機構物をガスタービンメインモデル124が代わりにその役割と機能を果たすのである。
【0096】
検証モードが実行され、現場のGTCS110で使用者によるタービンの速度および出力操作が発生すると、GTCS110で高圧停止および制御、低圧停止および制御バルブの要求値が演算されてHILシミュレータ120に伝送され、HILシミュレータ120は、入出力ボード122を介して受信してガスタービンメインモデル124に伝達する。ガスタービンメインモデル124は、入力された高圧停止および制御、低圧停止および制御バルブの要求値からバルブの位置値を決定し、バルブの位置値からタービンの速度および出力を決定して生成し、生成されたタービンの速度および出力を入出力ボード122を介してGTCS110に伝送する。そこで、GTCS110は、タービンの速度および出力結果により演算を行い、使用者によるタービンの速度および出力の要求値を満足させるために、再び高圧停止および制御、低圧停止および制御バルブの要求値を入出力ボード122を介してHILシミュレータ120に入力させることによって、1つの閉ループ(Closed Loop)制御を形成する。このような制御過程中、実行を中止することにより、検証モードは終了する。
【0097】
一方、ネットワークシミュレータ130は、燃料制御(Fuel Control)とSIL保護機能制御を除いた補助制御(Auxiliary Control)と、非SIL保護(No SIL Protection)機能に関するシミュレーションをリアルタイムに行う(S540)。
【0098】
つまり、本発明に係るガスタービンリアルタイムシミュレーションシステム100において、ネットワークシミュレータ130は、GTCS110からデータと信号を受信して、ガスタービンのタイムクリティカルでない補助制御(Auxiliary Control)と非SIL保護(No SIL Protection)機能に関するシミュレーションをリアルタイムに行うのである。
【0099】
したがって、ネットワークシミュレータ130は、GTCS110とネットワーク通信を介して補助制御(Auxiliary Control)や非SIL保護(No SIL Protection)に関する信号やデータを送受信する。
【0100】
この時、ネットワークシミュレータ130は、GTCS110とネットワーク通信を介して100ms以内の時間ごとにデータや信号を送受信することで低速運転する。
【0101】
一方、本発明に係るHILシミュレータ120およびネットワークシミュレータ130は、「謀議運転モード」により、発電所現場のGTCS110と直接連結せず、ワークステーション部136とガスタービンメインモデル124およびガスタービン補助モデル134を介して運転者が現場と同一の状態でタービンの制御動作を仮想で再現するシミュレーションを実行することができる。つまり、このモードは、未熟練運転者のための現場実習および教育用に用い、現場のタービン制御のための機構物は用いられず、現場の機構物をガスタービン補助モデル134が代わりにその役割と機能を果たすのである。
【0102】
HILシミュレータ120およびネットワークシミュレータ130は、謀議運転モードが実行され、ワークステーション部136で使用者がタービンの速度または出力の要求値を操作すると、このタービンの速度または出力の要求値をガスタービンメインモデル124に伝達する。ガスタービンメインモデル124は、入力されたタービンの速度または出力の要求値によって、使用者の要求値に満足するための高圧停止および制御、低圧停止および制御バルブの要求値を生成し、生成された高圧停止および制御、低圧停止および制御バルブの要求値からバルブの位置を決定し、決定されたバルブの位置からタービンの速度および出力を決定して生成する。そして、ガスタービンメインモデル124は、使用者のタービンの速度および出力操作値を満足するための制御アルゴリズムによる演算を行い、高圧停止および制御、低圧停止および制御バルブの要求値を算出してプロセッサボード126に出力することによって、1つの閉ループ制御をなす。
【0103】
このような制御過程中、使用者によるタービンの速度または出力操作値を満足する場合には、使用者による次のタービンの速度または出力操作があるまで待機し、実行を中止する場合に、謀議運転モードは終了する。
【0104】
上述した「シミュレーション」や、「検証モード」、「謀議運転モード」は、いずれも1つの例示的なものに過ぎず、また、このような動作に限定されず、他の動作などについてもハイブリッドシミュレータを適用して実施することができる。
【0105】
上述のように、本発明によれば、ガス燃料を用いてタービンを駆動して電気を生産するガスタービン発電システムに対して、発電所運転の試行錯誤を低減するために、ガスタービンをリアルタイムにシミュレーションして実際のGTCSの入出力信号を検証できるようにする、ガスタービンリアルタイムシミュレーションシステムおよびその方法を実現することができる。
【0106】
本発明の属する技術分野における当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できるため、以上に述べた実施形態はあらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないものとして理解しなければならない。本発明の範囲は、詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその等価概念から導出されるあらゆる変更または変形した形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。