(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に本発明の幾つかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0043】
1.シート製造装置
本実施形態に係るシート製造装置1000は、混合部100と、結着部200とを備える。
図1は、本実施形態のシート製造装置1000の要部を示す模式図である。
図2は、本実施形態のシート製造装置1000の模式図である。
図3は、本実施形態のシート製造装置1000の構成の一例を示す図である。シート製造装置1000は、少なくとも、混合部100と、結着部200と、を備える。
【0044】
1.1.混合部
混合部100は、繊維(繊維材)と、樹脂と着色材とを一体に有する複合体と、を混ぜ合せる機能を有する。混合部100では、少なくとも繊維及び複合体が混ぜ合される。
【0045】
本明細書では、繊維というときには、繊維1本のことを指す場合と、複数の繊維の集合体(例えば綿のような状態)のことを指す場合とがあり、また、繊維材というときには、複数の繊維が含まれる材料のことを指し、繊維の集合という意味及びシートの原料となる材料(粉体又は綿状の物体)という意味を含むものとする。
【0046】
また、本明細書では、複合体というときには、樹脂を主成分として他のものと一体に形成された粒子をいう。他のものとは、着色材や凝集抑制剤などをいうが、主成分となる樹脂と異なる形状や大きさや材質や機能を有するものも含まれる。
【0047】
また、本明細書で着色材というときには、シートを着色することのできる物質そのものを指す場合、シートを着色することのできる物質からなる粒子の集合(粉体)を指す場合、とを含む。さらに着色材というときにはシートの原材料という意味を含むものとする。
【0048】
また、本明細書において「繊維と複合体とを混ぜ合せる」とは、一定容積の空間(系)内で、繊維と繊維との間に複合体を位置させることと定義する。
【0049】
混合部100は、繊維(繊維材)と複合体とを混ぜ合せることができれば、その構成、構造及び機構等は特に限定されない。また、混合部100における混ぜ合せの処理の態様は、回分処理(バッチ処理)であっても、逐次処理、連続処理のいずれであってもよい。また、混合部100は、手動で動作されても自動で動作されてもよい。さらに、混合部100は、少なくとも繊維材及び複合体を混ぜ合せるが、その他の成分を混ぜ合せてもよい。
【0050】
混合部100における混ぜ合せの処理としては、機械的な混合、流体力学的な混合を例示することができる。機械的な混合としては、繊維(繊維材)及び複合体を、例えば、ヘンシェルミキサーやブロワ―等に導入して回転する羽根により撹拌する方法や、袋に繊維(繊維材)及び複合体を封入して該袋を振とうする方法などが挙げられる。また、流体力学的な混ぜ合せの処理としては、例えば、大気等の気流中に繊維(繊維材)及び複合体を導入して気流中で相互に拡散させる方法が挙げられる。係る大気等の気流中に繊維(繊維材)及び複合体を導入する方法では、繊維材の繊維が気流によって流動(移送)されている管等に複合体を投入してもよいし、複合体の粒子が気流によって流動(移送)されている管等に繊維(繊維材)を投入してもよい。なお、係る方法の場合には、管等の中の気流は、乱流であるほうが混ぜ合せの効率がよくなることがあるためより好ましい。
【0051】
混合部100は、シート製造装置1000における原料(の一部)の流れ方向において、後述する結着部200の上流側に設けられる。混合部100と結着部200との間には、他の構成が含まれてもよい。そのような他の構成としては、例えば、混合された繊維(繊維材)及び複合体の混合物をウェブ状に成形する成形部などが挙げられる。なお、混合部100によって混ぜ合された混合物(以下これを「混合材」ということがある。)は、シート成形部等、他の構成によってさらに混ぜ合されてもよい。
【0052】
図1に示すように、混合部100として、繊維の移送のために上述のような管86を採用する場合、大気等の気流により繊維を流動させた状態で複合体を導入する方法がある。混合部100に管86を採用する場合における気流の発生手段としては、図示せぬブロワーなどが挙げられ、上記の機能が得られる限り、適宜に使用することができる。
【0053】
混合部100に管86を採用する場合における複合体の導入は、弁の開閉操作や作業者の手で行うこともできるが、
図1、2に示す複合体供給部150としてのスクリューフィーダーや図示せぬディスクフィーダーなどを用いて行うことができる。これらのフィーダーを用いることにより、気流の流れ方向における複合体の含有量(添加量)の変動を小さくすることができるためより好ましい。また、複合体を気流によって移送して、当該気流に繊維材を導入する場合でも同様である。
【0054】
本実施形態のシート製造装置1000では、混合部100は、乾式の態様のものを選択することが好ましい。ここで、混合における「乾式」とは、水中ではなく空気中で混合させる状態をいう。すなわち、混合部100は、乾燥状態で機能してもよいし、不純物として存在する液体又は意図的に添加される液体が存在する状態で機能してもよい。液体を意図的に添加する場合には、後の工程において、係る液体を加熱等により除去するためのエネルギーや時間が大きくなりすぎない程度に添加することが好ましい。
【0055】
1.2.結着部
本実施形態のシート製造装置1000は、結着部200を備える。結着部200は、少なくとも上述の混合部100よりも、原材料の流れにおける下流側に設置される。
【0056】
結着部200は、上述の混合部100において混ぜ合された繊維(繊維材)及び複合体、すなわち混合材を、所定の形状に成形する機能を有する。結着部200において成形された繊維及び複合体の成形体(シート)においては、繊維と複合体とが結着された状態となる。
【0057】
本明細書において、「繊維と複合体とを結着する」とは、繊維と複合体とが離れにくい状態や、繊維と繊維との間に複合体の樹脂が配置され、繊維と繊維とが複合体を介して離れ難くなっている状態をいう。また、結着とは、接着を含む概念であって2種以上の物体が接触して離れにくくなった状態を含む。また、繊維と繊維とが複合体を介して結着した際に、繊維と繊維とが平行に又は交差してもよいし、1本の繊維に複数の繊維が結着してもよい。
【0058】
結着部200では、混合部100において混ぜ合された繊維及び複合体に、熱を加えることにより、複数の繊維を複合体を介して結着する。複合体の構成成分の1つである樹脂が、熱可塑性樹脂である場合には、そのガラス転移温度(軟化点)又は融点(結晶性ポリマーの場合)付近以上の温度に加熱すると、樹脂が軟化したり溶けたりし、温度が低下して固化する。樹脂が軟化して繊維に絡み合うように接触し、樹脂が固化することで繊維と複合体とを互いに結着することができる。また、固化する際に他の繊維が結着することで、繊維と繊維を結着する。複合体の樹脂が、熱硬化性樹脂である場合には、軟化点以上の温度に加熱してもよいし、硬化温度(硬化反応を生じる温度)以上に加熱しても繊維と樹脂とを結着することができる。なお、樹脂の融点、軟化点、硬化温度等は、繊維の融点、分解温度、炭化温度よりも低いことが好ましく、そのような関係となるように両者の種類を組み合わせて選択することが好ましい。
【0059】
また結着部200においては、混合材に熱を与えることの他に、圧力を加えてもよく、その場合には、結着部200は、混合材を所定の形状に成形する機能を有することになる。加えられる圧力の大きさは、成形されるシートの種類により適宜調節されるが、50kPa以上30MPa以下とすることができる。加えられる圧力が小さければ、空隙率の大きいシートが得られ、大きければ空隙率の小さい(密度の高い)シートが得られることになる。
【0060】
結着部200の具体的な構成としては、
図1、2に示すようなヒーターローラー76や、テンションローラー77の他に、カレンダーローラー、熱プレス成形機、ホットプレート、温風ブロワー、赤外線加熱器、フラッシュ定着器などが挙げられる。
【0061】
1.3.その他の構成
本実施形態のシート製造装置1000は、上述の混合部100、結着部200の他に、前処理のための構成、中間処理のための構成、後処理のための構成等を適宜有してもよい。
図2は、シート製造装置1000の一例を模式的に示し、
図3は、シート製造装置1000の構成の一例を示している。
【0062】
前処理のための構成としては、混合部100に導かれる繊維(繊維材)又は複合体の処理を行う構成であり、原料としてのパルプシートや古紙などを空気中で裁断する粗砕部10(シュレッダー等)、原料を空気中で繊維状に解きほぐす解繊部20、解繊された解繊物から不純物(トナーや紙力増強剤)や解繊によって短くなった繊維(短繊維)を空気中で分級する分級部30、解繊物から長い繊維(長繊維)や十分に解繊されなかった未解繊片を空気中で選別する選別部40等が挙げられる。中間処理のための構成としては、混合部100によって混合された複合体及び繊維(混合材)を結着部200に導くまでの間に適宜な処理を行う構成であり、混合材を空気中で分散させながら降らせる分散部60、分散部60から降ってきた混合材を空気中で堆積してウェブの形状等に成形するシート成形部70等が挙げられる。また、結着部200は、シート成形部70の一部であってもよい。後処理のための構成としては、結着部200によって形成されたシートSに対して処理を行う構成であって、必要に応じてシートSを乾燥させる乾燥部80(
図3)、形成されたシートをロール状に巻取る巻取部90、形成されたシートを規格の大きさに裁断する裁断部92(
図3)、巻取られ又は裁断されたシートをフィルムや包装紙等によって包装する包装部94(
図3)などが挙げられる。
【0063】
本実施形態のシート製造装置1000は、上記例示した構成以外の構成を有することもでき、上記例示した構成を含めて目的に応じて複数の構成を適宜有することができる。各構成の順序は特に限定されず、目的に応じて適宜に設計することができる。
【0064】
以下、各構成について概要を説明する。
粗砕部10は、パルプシートや投入されたシート(例えばA4サイズの古紙)などの原料を、空気中で裁断して細片にする。細片の形状や大きさは、特に限定されないが、例えば、数cm角の細片である。図示の例では、粗砕部10は、粗砕刃11を有し、粗砕刃11によって、投入された原料を裁断することができる。粗砕部10には、原料を連続的に投入するための自動投入部(図示せず)が設けられていてもよい。
【0065】
粗砕部10によって裁断された細片は、ホッパー15で受けてから第1搬送部81を介して、解繊部20へ搬送される。第1搬送部81は、解繊部20の導入口21と連通している。第1搬送部81及び後述する第2〜第6搬送部82〜86の形状は、例えば管状である。なお、図示の例では、第6搬送部86は、混合部100の一部を構成しており、上述の管86と同様であるため符号を共通としている。
【0066】
解繊部20は、細片(被解繊物)を解繊処理する。解繊部20は、細片を解繊処理することにより、繊維状に解きほぐされた繊維を生成する。
【0067】
ここで、「解繊処理」とは、複数の繊維が結着されてなる細片を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20を通過したものを「解繊物」という。「解繊物」には、解きほぐされた繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離した樹脂(複数の繊維同士を結着させるための樹脂)やにじみ防止剤などの添加剤、インク、トナー等の色剤を含んでいる場合もある。この後の記載において、「解繊物」は解繊部20を通過したものの少なくとも一部であり、解繊部20を通過した後に添加されたものが混ざっていてもよい。
【0068】
解繊部20は、添加剤や色剤を繊維から分離させる。添加剤や色剤は、解繊物とともに、排出口22から排出される。解繊部20は、回転刃によって、導入口21から導入された細片を、解繊処理する。解繊部20は、空気中において乾式で解繊を行う。
【0069】
解繊部20の構成は限定されず、回転子が回転することによって、気流を発生させ、当該気流によって被解繊物を解繊するものを例示できる。解繊部20は、気流を発生させる機構を有していてもよい。この場合、解繊部20は、自ら発生する気流によって、導入口21から、細片を気流と共に吸引し、解繊処理して、排出口22へと搬送することができる。
【0070】
排出口22から排出された解繊物は、
図2に示すように、第2搬送部82を介して、分級部30に導入される。なお、気流発生機構を有していない解繊部20を用いる場合には、細片を導入口21に導く気流を発生する機構を、解繊部20の上流または下流側に別途設けてもよい。
【0071】
分級部30は、解繊物から、添加剤や色剤を分離して除去する。分級部30としては、気流式分級機を用いる。気流式分級機は、旋回気流を発生させ、遠心力と分級されるもののサイズや密度によって分離するものであり、気流の速度及び遠心力の調整によって、分級点を調整することができる。具体的には、分級部30としては、サイクロン、エルボージェット、エディクラシファイヤーなどを用いる。特にサイクロンは、構造が簡便であるため、分級部30として好適に用いることができる。以下では、分級部30として、サイクロンを用いた場合について説明する。
【0072】
分級部30は、少なくとも導入口31と、下部に設けられている下部排出口34と、上部に設けられている上部排出口35と、を有している。分級部30において、導入口31から導入された解繊物をのせた気流は、円周運動せられ、これにより、導入された解繊物には、遠心力がかかって、第1分級物(解きほぐされた繊維)と、第1分級物より小さく密度の低い第2分級物(添加剤や色剤)と、に分離される。第1分級物はシートの原料として用いられる。第2分級物は、シートを形成する際に邪魔となるため除去される。例えば、トナーがシートに含まれるとシートの白色度が低下する。また、繊維より小さいものがシートに含まれるとシートの強度が低下する。第1分級物は、下部排出口34から排出され、第3搬送部83を通って選別部40の導入口46に導入される。一方、第2分級物は、上部排出口35から第4搬送部84を通って分級部30の外部に排出される。このように、樹脂は、分級部30によって外部に排出されるため、後述する複合体供給部150によって樹脂が供給されても、解繊物に対して樹脂が過剰になることを防ぐことができる。
【0073】
なお、分級部30により第1分級物と第2分級物に分離すると記載したが、正確に分離できる訳ではない。第1分級物のうち比較的小さいものや密度の低いものは第2分級物とともに外部に排出される場合がある。第2分級物のうち比較的密度の高いものや第1分級物に絡まってしまったものは第1分級物とともに選別部40へ導入される場合もある。また、原料が古紙でなくパルプシートのような場合は第2分級物に相当するものが含まれていないため、シート製造装置1000として分級部30が無くてもよい。
【0074】
選別部40は、解繊処理された解繊物を、選別部40を通過する「通過物」と、通過しない「残留物」とに空気中で選別する。選別部40としては、円筒状の篩(ふるい)を用いる。選別部40は、
図2に示すように、導入口46と、排出口47と、を有している。選別部40は、回転式の篩であって、篩を通過可能な大きさのものは通過し、第1開口42を通過できない大きさのものは通過しない。選別部40は、篩によって、解繊処理された解繊物から一定の長さより短い繊維(通過物)を選別することができる。
【0075】
選別部40の篩を通過しなかった残留物は、
図1に示すように、排出口47から排出されて、戻り流路としての第5搬送部85を介してホッパー15に搬送され、再び解繊部20に戻される。
【0076】
選別部40の篩を通過した通過物は、ホッパー16で受けてから第6搬送部86(管86)を介して、分散部60の導入口66に搬送される。第6搬送部86には、繊維同士を(解繊物同士を)結着させる複合体(後述する)が供給されるための供給口151が設けられている。
【0077】
複合体供給部150は、供給口151から第6搬送部86(管86)に空気中で複合体を供給する。すなわち、複合体供給部150は、選別部40の通過物が選別部40から分散部60に向かう経路に(選別部40と分散部60との間に)、複合体を供給する。複合体供給部150としては、第6搬送部86(管86)に複合体を供給することができれば特に限定されないが、スクリューフィーダー、サークルフィーダーなどを用いる。複合体供給部150から供給される複合体については後述する。
【0078】
第6搬送部86(管86)を選別部40の通過物及び複合体が通過する結果、混合材が分散部60に至るまでの間で形成される。したがって本実施形態のシート製造装置1000では、混合部100は、複合体供給部150及び第6搬送部86(管86)を含んで構成されている。なお、混合材は分散部60においてさらに混ぜ合されてもよい。そのため分散部60を混合部100としてもよい。
【0079】
分散部60は、絡み合った通過物をほぐす。さらに、分散部60は、複合体供給部150から供給される複合体が繊維状である場合、絡み合った複合体をほぐす。また、分散部60は、後述する堆積部72に、通過物や複合体を均一に堆積する。
【0080】
分散部60としては、篩を用いる。分散部60は、モーター(図示せず)によって回転することができる回転式の篩である。
【0081】
分散部60は、導入口66を有している。分散部60と選別部40との構成上の違いは、排出口(選別部40の排出口47に相当する部分)を有していないことである。
【0082】
分散部60の篩の目開きの大きさの上限は5mmである。目開きの大きさを5mm以下とすることで、繊維同士が絡み合ったダマを通過させず、ほぐして通過させることができる。第6搬送部86内において混ぜ合される際に絡み合った繊維や複合体があったとしても、分散部60を通過する際にほぐされる。そのため、繊維、複合体は均一な厚み、密度で後述する堆積部72に堆積する。
【0083】
なお、「絡み合った繊維をほぐす」とは、絡み合った繊維を完全にほぐす場合(全ての繊維がほぐれた状態にする場合)と、絡み合った繊維が篩を通過できる程度に絡み合った繊維の一部をほぐす場合と、を含む。「絡み合った複合体をほぐす」という意味ついても同様である。
【0084】
なお、「均一に堆積」とは、堆積された堆積物が同じ厚み、同じ密度で堆積されている状態を言う。ただし、堆積物全てがシートとして製造される訳ではないため、シートになる部分が均一であればよい。
【0085】
分散部60を通過した解繊物及び複合体は、シート成形部70の堆積部72に堆積される。シート成形部70は、
図1、2に示すように、堆積部72と、張架ローラー74と、ヒーターローラー76と、テンションローラー77と、巻き取りローラー78と、を有している。シート成形部70は、分散部60を通過した解繊物及び複合体を用いて、シートを成形する。図示の例では、シート成形部70のヒーターローラー76及びテンションローラー77が、上述の結着部200を構成している。
【0086】
シート成形部70の堆積部72は、分散部60を通過した解繊物及び複合体を受けて堆積させる。堆積部72は、分散部60の下方に位置している。堆積部72は、解繊物及び複合体を受けるもので、例えば、メッシュベルトである。メッシュベルトには、張架ローラー74によって張架されるメッシュが形成されている。堆積部72は、張架ローラー74が自転することによって移動する。堆積部72が連続的に移動しながら、分散部60から解繊物及び複合体が連続的に降り積もることにより、堆積部72上に厚さの均一なウェブが形成される。
【0087】
シート成形部70の堆積部72上に堆積された解繊物及び複合体は、堆積部72の移動にともない、ヒーターローラー76を通過することによって加熱及び加圧される。加熱により、樹脂は、結着剤として機能して繊維同士を結着させ、加圧により薄くし、シートSが形成される。さらに図示しないカレンダーローラーを通過させて表面を平滑化してもよい。図示の例では、シートSは、巻き取りローラー78において巻き取られる。以上により、シートSを製造することができる。
【0088】
2.繊維
本実施形態のシート製造装置1000において、原料の一部として使用される繊維(繊維材)としては、特に限定されず、広範な繊維材料を用いることができる。繊維としては、天然繊維(動物繊維、植物繊維)、化学繊維(有機繊維、無機繊維、有機無機複合繊維)などが挙げられ、更に詳しくは、セルロース、絹、羊毛、綿、大麻、ケナフ、亜麻、ラミー、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、針葉樹、広葉樹等からなる繊維や、レーヨン、リヨセル、キュプラ、ビニロン、アクリル、ナイロン、アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリイミド、炭素、ガラス、金属からなる繊維が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよいし、精製などを行った再生繊維として用いてもよい。原料としては、これらの繊維の少なくとも1種を含んでいればよい。また、繊維は、乾燥されていてもよいし、水、有機溶剤等の液体が含有又は含浸されていてもよい。また、各種の表面処理がされていてもよい。また、繊維の材質は、純物質であってもよいし、不純物、添加物及びその他の成分など、複数の成分を含む材質であってもよい。
【0089】
本実施形態のシート製造装置1000で使用される繊維は、基本的な形状として、ひも(string)状、平ひも(ribbon)状のものであり、独立した1本の繊維でもよく、また複数本が互いに絡み合って全体としてひも状又は平ひも状となっているものでもよい。また、繊維材としては、綿状の形態を形成しているものであってもよく、さらに、複数本の繊維が互いに部分的に物理的、化学的に結合している形態のものであってもよい。また、繊維の構造としては、1種の材質からなるいわゆる単繊維であってもよいし、中心部から外周部に向って、材質が連続的又は段階的に変化するようなものであってもよい。繊維の中心部から外周部に向って、材質が段階的に変化するものとしては、いわゆる芯鞘構造の繊維が挙げられる。さらに繊維は、全体として直線状の形状であっても、曲線状の形状であってもよく、さらに、縮れた形状であってもよい。また、繊維の断面の形状についても特に限定されず、円形、楕円形、多角形、又はこれらを組み合わせた形状であってもよい。また、フィブリル化された繊維であってもよい。
【0090】
本実施形態で使用される繊維は、独立した1本の繊維としたときに、その平均的な直径(断面が円でない場合には長手方向に垂直な方向の長さのうち、最大のもの、又は、断面の面積と等しい面積を有する円を仮定したときの当該円の直径(円相当径))が、平均で、1μm以上1000μm以下、好ましくは、2μm以上500μm以下、より好ましくは3μm以上200μm以下である。
【0091】
本実施形態のシート製造装置1000で使用する繊維の長さは、特に限定されないが、独立した1本の繊維で、その繊維の長手方向に沿った長さは、1μm以上5mm以下、好ましくは、2μm以上3mm以下、より好ましくは3μm以上2mm以下である。繊維の長さが短い場合は、複合体と結着しにくいため、シートの強度が不足する場合があるが、上記範囲であれば十分な強度のシートを得ることができる。繊維の長手方向に沿った長さとは、独立した1本の繊維の両端を必要に応じて破断しないように引張り、その状態でほぼ直線状の状態に置いたときの両端間の距離(繊維の長さ)であってもよい。また、繊維の平均の長さは、長さ−長さ加重平均繊維長として、20μm以上3600μm以下、好ましくは200μm以上2700μm以下、より好ましくは300μm以上2300μm以下である。さらに、繊維の長さは、ばらつき(分布)を有してもよく、独立した1本の繊維の長さについて、100以上のn数で得られる分布において、正規分布を仮定した場合に、σが1μm以上1100μm以下、好ましくは1μm以上900μm以下、より好ましくは1μm以上600μm以下であってもよい。
【0092】
繊維の太さ、長さは、各種の光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡、ファイバーテスター等により測定することができる。また顕微鏡観察の場合には、必要に応じて観察試料の前処理を適宜施すことにより、断面観察、独立した1本の繊維の両端を必要に応じて破断しないように引張った状態での観察を行うことが可能である。
【0093】
なお、本明細書において、「綿状」とは、1本の長い繊維又は複数の繊維が、互いに絡み合い又は部分的に互いに接触することにより、三次元の嵩高い外形を有する状態のことを指す。すなわち、綿状とは、繊維の絡み合いや部分的な接触によって形成される立体的な形状であって、当該形状の中に気体を包含した状態を指す。さらに、綿状との文言は、複数の繊維間が結着されているかいないかに関わらず用いられる。
【0094】
3.樹脂と着色剤の複合体
本実施形態のシート製造装置1000において、原料の一部として使用される複合体は、樹脂及び着色材を一体に有する。
【0095】
複合体が樹脂及び着色材を一体に有する状態とは、複合体から樹脂又は着色材が、シート製造装置1000内において、及び/又は、製造されるシートSにおいて、バラバラになり難い(脱落し難い)状態のことをいう。すなわち、複合体が樹脂及び着色材を一体に有する状態とは、樹脂によって着色材が互いに接着されている状態、樹脂に着色材が構造的(機械的)に固定されている状態、樹脂と着色材とが静電気力、ファンデルワールス力等により凝集している状態、及び樹脂と着色材とが化学結合されている状態にあることを指す。また、複合体が樹脂及び着色材を一体に有する状態とは、着色材が樹脂に内包されている状態でも着色材が樹脂に付着している状態でもよく、その2つの状態が同時に存在する状態を含む。なお、これらのことは、後述する樹脂と凝集抑制剤を一体に有する場合も同様である。
【0096】
図4は、樹脂及び着色材を一体に有した複合体の断面について、幾つかの態様を模式的に示している。樹脂及び着色材を一体に有した複合体の具体的な態様の一例としては、
図4(a)〜(c)に示すような、樹脂1の内部に単数又は複数の着色材2を分散して内包した構造を有する複合体3や、
図4(d)に示すように樹脂1の表面に単数又は複数の着色材2が付着した複合体3が挙げられる。本実施形態のシート製造装置1000では、複合体として、このような複合体3の集合(粉体)を使用することができる。
【0097】
図4(a)は、複合体3を構成する樹脂1の中に、複数の着色材2(粒子として描写されている。)が分散された構造を有する複合体3の一例を示している。このような複合体3は、樹脂1をマトリックスとして、着色材2がドメインとして分散した、いわゆる海島構造となっている。この例では、着色材2が樹脂1に囲まれた状態であるため、樹脂部分(マトリックス)を通り抜けて着色材2が樹脂1の外へ離脱しにくい。そのため、シート製造装置1000内で各種の処理を受ける際やシートに成形された際に、着色材2が樹脂部分から脱落しにくい状態となっている。この場合の複合体3内における着色材2の分散状態は、着色材2が互いに接触していてもよいし着色材2間に樹脂1が存在してもよい。また、
図4(a)では着色材2が全体的に分散しているが、一方側に偏っていてもよい。例えば、同図において、右側や左側だけに着色材2があってもよい。一方側に偏っているものとして、
図4(b)のように樹脂1の中央部分に着色材2が配置されていてもよいし、
図4(c)のように樹脂1の表面に近い部分に着色材2が配置されてもよい。なお、樹脂1は、中央付近の母粒子4とその周囲の殻5を有していてもよい。ここで、母粒子4と殻5は、互いに同種の樹脂でもよいし、異なる種の樹脂であってもよい。
【0098】
図4(d)に示す例は、樹脂1からなる粒子の表面付近に着色材2が埋込まれるような態様の複合体3である。この例では、着色材2が複合体3表面に露出しているが、樹脂1との接着(化学的、物理的結合)又は樹脂1による機械的な固定によって、複合体3から脱落しにくい状態となっており、このような複合体3も、樹脂1及び着色材2を一体に有した複合体3として本実施形態のシート製造装置1000に好適に使用することができる。なおこの例では、着色材2が樹脂1の表面だけでなく内部に存在してもよい。
【0099】
樹脂及び着色材を一体に有した複合体の幾つかの態様を例示したが、シート製造装置1000内で各種の処理を受ける際やシートに成形された際に着色材が樹脂から脱落しにくい態様であれば、これらの態様に限定されず、着色材が樹脂の粒子の表面に静電気力や、ファンデルワールス力によって付着している状態であっても、着色材が樹脂粒子から脱落しにくければよい。また、上記例示した複数の態様を互いに組み合わせた態様であっても、着色材が複合体から脱落しにくい態様であればいずれも採用することができる。
【0100】
着色材は、本実施形態のシート製造装置1000によって製造されるシートSの色を所定のものとする機能を有する。着色材としては、染料又は顔料を用いることができ、複合体において樹脂と一体とした場合に、より良好な隠ぺい力や発色性が得られる観点からは顔料を用いることが好ましい。
【0101】
顔料としては、その色、種類ともに、特に限定されず、例えば、一般的なインクに使用される各種の色(白、青、赤、黄、シアン、マゼンダ、イエロー、黒、特色(パール、金属光沢)等)の顔料を使用することができる。顔料は無機顔料でもよいし、有機顔料でもよい。顔料としては、特開2012−87309号公報や特開2004−250559号公報に記載された周知の顔料を用いることができる。また、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等の白色顔料等を用いてもよい。これら顔料は、単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよい。なお、白色の顔料を使用する場合には、前記例示したもののうち、酸化チタンを主成分とする粒子(顔料粒子)を含む粉体からなる顔料を使用することが、酸化チタンの屈折率の高さから、少ない配合量で、製造されるシートSにおける白色度を高めることが容易な点でより好ましい。
【0102】
なお、本明細書では、着色材との文言は、着色のための材料という意味で用いている。また、本明細書では、顔料という場合、その単位粒子(顔料粒子)の複数が集合した粉体の意味も含む。また、単位粒子(顔料粒子)とは、通常の粉砕手段によって、それ以上小さくすることが困難な粒子のことをいう。例えば、材質が酸化チタンである白色顔料においては、その単位粒子(顔料粒子)は、酸化チタンの微結晶を一次粒子とし、当該一次粒子が複数集合したものであってもよい。この場合の一次粒子間の凝集は、化学的な結合若しくは双晶を形成して凝集している場合があり、機械的な粉砕が困難であることが多い。また、1個の顔料粒子の構造は、それ自体が一次粒子であってもよいし、一次粒子の結合体であってもよい。
【0103】
複合体に樹脂及び着色材を一体に有せしめる方法は、上述の
図4(a)〜(d)のいずれの構造を採用する場合でも特に限定されず、公知の方法を適宜用いることができる。一例として、上述の
図2(a)の態様の複合体を得る方法を記す。
図4(a)の態様の複合体を得る方法としては、所定の樹脂を軟化点以上の温度に加熱して顔料(着色材)と混練を行う溶融混練法や、樹脂を水や溶剤で溶解又は膨潤させて顔料と混合する方法が挙げられる。これらの方法で使用可能な装置としては、ニーダー、バンバリーミキサー、単軸押出機、多軸押出機、二本ロール、三本ロール、連続式ニーダー、連続式二本ロールなどが挙げられる。これらの方法を採用する場合には、より均一に樹脂内に顔料を分散させるために、顔料を疎水化処理しておいてもよい。また溶融混練前に、顔料の凝集塊が存在する場合には、ミキサーなどで当該凝集塊を解砕しておくこともより顔料を均一に樹脂内で分散させるのに効果的である。
【0104】
そして混練後、適宜の方法でペレタイズし、粉砕により複合体を得ることができる。粉砕は、公知の粉砕方法を用いて行うことができる。用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、ピンミル、カッターミル、パルペライザー、ターボミル、ディスクミル、スクリーンミル、ジェットミルなどが挙げられ、これらを適宜組み合わせて樹脂粒子を得ることができる。また、粉砕の工程は、まずおよその粒子径が1mm程度となるように粗く粉砕した後、目的の粒径となるように細かく粉砕するなど、段階的に行われてもよい。このような場合でも各段階において、適宜例示した装置を利用することができる。更に複合体の粉砕の効率を高めるため凍結粉砕法を用いることもできる。このようにして得られた複合体は様々な大きさのものが含まれている場合もあり、目的とする大きさの複合体とするため、公知の分級装置を用いて分級してもよい。以上のような方法を採用すれば、
図4(a)に示すような構造の複合体を得ることができる。
【0105】
複合体における着色材の含有量は、0質量%を越え50質量%以下が好ましい。複合体における着色材の含有量は、質量部(外添加:樹脂に対する着色材の添加量)で表現すると、0質量部を越え100質量部以下である。複合体における、着色材の含有量は、製造されるシートの十分な強度、着色を得るという観点、複合体からの着色材の脱落を抑制するという観点、複合体の形状の安定性(複合体が衝撃等により脆性的に破壊することを抑制する)といった観点から、1質量%以上50質量%以下が好ましく、さらに、2質量%以上30質量%以下、3質量%以上20質量%以下とすることがより好ましい。
【0106】
4.樹脂と凝集抑制剤の複合体
複合体又は複合体を含む粉体には、凝集抑制剤が配合されてもよい。凝集抑制剤は、複合体に配合された場合、配合されない場合に比較して、樹脂及び着色材を一体に有する複合体を、互いに凝集させにくくする機能を有する。凝集抑制剤としては、各種使用しうるが、本実施形態のシート製造装置1000では、水を使用しない又はほとんど使用しないため、複合体の表面に配置される(コーティング(被覆)等でもよい。)種のものを使用することが好ましい。なお、凝集抑制の効果だけを考えると、複合体は着色材を一体に有していなくてもよく、着色材を用いなくてもよい。つまり、本実施形態のシート製造装置1000において、原料の一部として使用される複合体は、樹脂及び凝集抑制剤を一体に有してもよい。
【0107】
このような凝集抑制剤としては、無機物からなる微粒子が挙げられ、これを
図4(d)のように複合体の表面に配置することで、非常に優れた凝集抑制効果を得ることができる。このため、
図4(d)において、符号2を凝集抑制剤としてもよい。
【0108】
なお、凝集とは、同種又は異種の物体が、静電気力やファンデルワールス力によって物理的に接して存在する状態を指す。また、複数の物体の集合体(例えば粉体)において、凝集していない状態という場合には、必ずしも当該集合体を構成する物体のすべてが離散して配置されることを指すものではない。すなわち、凝集していない状態には、集合体を構成する物体の一部が凝集している状態も含まれ、そのような凝集した物体の量が、集合体全体の10質量%以下、好ましくは5質量%以下程度となっていても、この状態を、複数の物体の集合体において「凝集していない状態」に含めるものとする。さらに、粉体を袋詰め等した場合には、粉体の粒子同士は接触して存在する状態となるが、柔和な撹拌、気流による分散、自由落下など、粒子を破壊しない程度の外力を加えることにより、粒子を離散した状態にすることができる場合は、凝集していない状態に含めるものとする。
【0109】
凝集抑制剤の材質の具体例としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウムを挙げることができる。なお、凝集抑制剤の材質の一部は、着色材の材質と同じであるが、凝集抑制剤の粒子径が着色材の粒子径より小さい点で相違する。そのため、凝集抑制剤は、製造されるシートの色調に対して大きく影響しないため、本明細書では上述の着色材とは区別可能である。ただし、シートの色調を調節する際には、凝集抑制剤の粒子径が小さくても、若干の光の散乱等の効果が生じる場合があるため、そのような効果を考慮することがより好ましい。
【0110】
凝集抑制剤の粒子の平均粒子径(数平均粒子径)は、特に限定されないが、好ましくは、0.001〜1μmであり、より好ましくは、0.008〜0.6μmである。凝集抑制剤の粒子は、いわゆるナノパーティクルの範疇に近く、粒子径が小さいことから、一次粒子となっていることが一般的であるが、一次粒子の複数が結合して高次の粒子となっていてもよい。凝集抑制剤の一次粒子の粒子径が上記範囲内であれば、複合体の表面に良好にコーティングを行うことができ、十分な凝集抑制効果を付与することができる。複合体の表面に凝集抑制剤を配置すると、異なる複合体と複合体の間には凝集抑制剤が存在することになり、凝集を抑制できる。複合体と凝集抑制剤を別体とすると、異なる複合体と複合体の間に凝集抑制剤が存在しているとは限らないため、複合体同士は凝集してしまう場合がある。
【0111】
凝集抑制剤を複合体に添加する場合の添加量は、複合体100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下とすれば、上記効果を得ることができ、該効果を高め、及び/又は製造されるシートから凝集抑制剤が脱落することを抑制する、などの観点から、複合体100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上4質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上3質量部以下とすることができる。
【0112】
凝集抑制剤を複合体の表面に配置(コーティング)する方法としては、特に限定されず、上述した溶融混練等によって複合体を形成する際に樹脂及び着色材とともに凝集抑制剤を配合してもよい。しかし、このようにすると、凝集抑制剤の多くが複合体の内部に配置されるため、凝集抑制剤の添加量に対する凝集抑制効果が小さくなる。凝集抑制剤はその凝集抑制メカニズムからして、複合体のできるだけ表面に配置されることがより好ましい。複合体の表面に凝集抑制剤を配置する態様としては、コーティング、被覆等が挙げられるが、必ずしも複合体の表面全体を覆っていなくてもよい。また、被覆率は、100%を越えてもよいが、およそ300%以上となると、複合体と繊維とを結着する作用が損なわれる場合があるため、状況に応じて適宜な被覆率を選択する。
【0113】
凝集抑制剤を複合体の表面へ配置する方法としては、種々の方法が考えられるが、両者を単に混ぜ合せ静電気力やファンデルワールス力によって表面に付着させるだけでも効果を奏することができるが、脱落する懸念は残る。そのため、複合体と凝集抑制剤を高速回転するミキサーに投入し均一混合する方法が好ましい。このような装置としては公知のものが使用でき、FMミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどを用いて行うことができる。このような方法により複合体の表面に凝集抑制剤の粒子を配置することができる。このような方法によって配置された凝集抑制剤の粒子は、少なくとも一部が複合体の表面に食込むような状態又はめり込んだ状態で配置される場合があり、複合体から凝集抑制剤が脱落しにくくすることができ、安定して凝集抑制効果を奏することができる。またこのような方法を用いると、水分をほとんど又は全く含まない系において、容易に上記配置を実現することができる。また、複合体に食い込まない粒子が存在しても、このような効果を十分に得ることができる。なお、凝集抑制剤の粒子が複合体の表面に食込むような状態又はめり込んだ状態は、各種の電子顕微鏡により確認することができる。
【0114】
複合体表面における凝集抑制剤が被覆する割合(面積比:本明細書ではこれを被覆率と称する場合がある。)は、20%以上100%以下とすれば、十分な凝集抑制効果を得ることができる。被覆率は、FMミキサー等の装置への仕込みによって調節することができる。さらに凝集抑制剤、複合体の比表面積が既知であれば、仕込み時の各成分の質量(重量)によって調節することもできる。また、被覆率は、各種の電子顕微鏡により測定することもできる。なお、凝集抑制剤が、複合体から脱落しにくい態様で配置された場合には、凝集抑制剤は、複合体に一体に有されているということができる。
【0115】
複合体に凝集抑制剤が配合されると、複合体の凝集を非常に生じにくくすることができるため、混合部100において複合体と繊維材とをさらに容易に混ぜ合せることができる。すなわち、複合体に凝集抑制剤が配合されると、複合体が速やかに空間に拡散し、非常に均一な混合材を形成することができる。
【0116】
凝集抑制剤によって、複合体と繊維とを空気流や、ミキサーによる撹拌により非常に良好に混ぜ合せることができる理由としては、凝集抑制剤を複合体の表面に配置した場合、複合体が静電気を帯びやすくなる傾向があることが挙げられ、その静電気により複合体の凝集が抑制されている。また、発明者の検討によると、その静電気により繊維に付着した複合体は、機械的な衝撃等が生じた場合においても、繊維から容易に脱離しなくなっている可能性が高いことが分ってきた。これらの傾向から、複合体に凝集抑制剤が配合された場合には、複合体が、一度繊維に付着すると、容易には脱離しなくなっていると考えられ、繊維と複合体との混合以外の特段の手段を用いずとも、速やかに混合されるものと考えている。また、混合材となった後は繊維への複合体の付着は安定しており、複合体の脱離現象はみられないことが分ってきている。
【0117】
5.複合体全般
複合体は、上述した樹脂、着色剤、凝集抑制剤の他に、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、有機溶剤、界面活性剤、防黴剤・防腐剤、酸化防止剤・紫外線吸収剤、酸素吸収剤等が挙げられる。
【0118】
着色剤、または凝集抑制剤との複合体の成分である樹脂の種類としては、天然樹脂、合成樹脂のいずれでもよく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。本実施形態のシート製造装置1000においては、複合体を構成する樹脂は、常温で固体である方が好ましく、結着部200における熱によって繊維を結着することに鑑みれば熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0119】
天然樹脂としては、ロジン、ダンマル、マスチック、コーパル、琥珀、シェラック、麒麟血、サンダラック、コロホニウムなどが挙げられ、これらを単独又は適宜混合したものが挙げられ、また、これらは適宜変性されていてもよい。
【0120】
合成樹脂のうち熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0121】
また、合成樹脂のうち熱可塑性樹脂としては、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、などが挙げられる。これらの樹脂は、単独又は適宜混合して用いてもよい。また、共重合体化や変性を行ってもよく、このような樹脂の系統としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂等が挙げられる。
【0122】
また、
図4の例では、複合体の外形形状は、いずれも模式的に球形に近いものを示したが、複合体の外形形状は特に限定されず、円盤状、不定形等の形状であってもよい。しかし、複合体の形状は、できるだけ球形に近いほうが混合部100において繊維と繊維との間に配置されやすいためより好ましい。
【0123】
粉砕された複合体の体積平均粒子径dは、形成されるシートS内の複合体の分散具合に影響する。シートSに配合される複合体の量を一定とした場合に、複合体の体積平均粒子径dが大きいと、複合体が配置された部分における繊維間の結着力が高まるが、複合体の個数が少なくなるため、シートS面内における複合体の分散(分布)が粗になり、繊維間の結着力が弱い部分ができるため、シートSとしては強度が低下する。他方、シートSに配合される複合体の量を一定とした場合に、複合体の体積平均粒子径dが小さいと、シートS面内において複合体が均一に分散(分布)されやすくなるため、シートSとしての強度も向上する。
【0124】
このような好適な体積平均粒子径dは、シートSにおける複合体の配合量に依存するが、配合量が5質量%以上70質量%以下である場合には、体積平均粒子径dは1μm以上100μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上35μm以下である。
【0125】
また、複合体の大きさ(体積平均粒子径d)は、繊維材を構成する繊維の太さ(平均径D)に応じて調整することもできる。複合体の大きさ(体積平均粒子径d)は、混合部100における繊維と複合体とをより均一に混合するという観点からは、複合体の体積平均粒子径dは繊維材を構成する繊維の太さ(平均径D)に比較して小さい方が好ましい。
【0126】
混合部100において、上述の繊維(繊維材)と複合体とが混ぜ合されるが、それらの混合比率は、製造されるシートSの強度、用途等により適宜調節されることができる。製造されるシートSがコピー用紙等の事務用途であれば、繊維に対する複合体の割合は、5質量%以上70質量%以下であり、混合部100において良好な混合を得る観点、及び混合物をシート状に成形した場合に、重力による影響を受けにくくする観点からは、5質量%以上50質量%以下が好ましい。
【0127】
6.作用効果
本実施形態のシート製造装置1000によれば、液体の少ない状態(乾式)であっても、混合部100において、繊維と複合体との混合を良好に行うことができる。そして、結着部200において樹脂及び着色材を一体に有する複合体が繊維と結着される。また、複合体が樹脂及び着色材を一体に有することで、繊維同士を結着する樹脂によって着色材が保持され易いことから、着色材が脱離しにくいシートを製造することができる。
【0128】
また、凝集抑制剤を樹脂と一体にして複合体とした場合には、複合体同士の凝集を顕著に低減できる。複合体同士が凝集をすると、複合体が一部に集まることで、複合体の少ない部分ができる。複合体の少ない部分では、繊維同士の結着力が弱くなり、シートSとしての強度が不足する。複合体同士の凝集を低減できると、複合体が均一に分散され、強度の良好なシートSを作成することができる。また、その複合体に着色材が一体になっている場合には、着色材も均一に分散することになり、シートSの色調の均一性が良好な(色ムラが抑制された)シートSを作成できる。これにより、湿式抄造を用いずとも、乾式法により繊維材と凝集抑制剤を一体に有する複合体とを均一に混ぜ合せることができる。また、樹脂の分散も良好になり、強度の優れたシートSを製造することが可能である。さらに樹脂及び着色材を一体にすることで、色調の良好なシートSを製造することが可能である。着色材及び/又は凝集抑制剤と樹脂とを一体に有した複合体は、繊維と混ぜることにより均一に混合されるので、混合するだけでも効果を有する。混合した状態では均一に混合しているかの確認がしにくいが、繊維と複合体を結着することでシートSとしての強度や色調の均一性などを確認しやすくなる。なお、樹脂と着色材、樹脂と凝集抑制剤を別体とした場合、搬送や使用の過程で、それらの一部(例えば10%)が一体化してしまう場合があるかもしれない。しかし、そのように後で一体化したものは脱離しやすいし、10%程度が一体化しても効果をなさない。本願においては、一体化した複合体として供給しているし、着色材や凝集抑制剤の70%以上が樹脂と一体になっているので効果を奏する。
【0129】
更に、繊維の太さと複合体の粒径を適切に調整することにより、色ムラがなく、繊維材からの複合体の脱離も抑制される。これにより、保存性と運搬性に優れたウェブ等のシートSを提供することができる。
【0130】
本実施形態のシート製造装置1000によれば、水をほとんど又は全く使用しない方法でシートSを製造することが可能であり、製造設備の給排水設備等が不要である。また、本実施形態のシート製造装置1000によれば、特に水使用部分が不要となるため小型化が容易である。そのため、設置場所の自由度を高めることができる。さらに、本実施形態のシート製造装置1000によれば、脱水乾燥の為の電力等のエネルギーが不要であり、低コスト化を達成しながら、抄造法では為し得なかった短期間でのシートSの製造も可能である。
【0131】
7.シート製造方法
本実施形態のシート製造方法は、繊維と、樹脂及び着色材、または、樹脂及び凝集抑制剤を一体に有する複合体と、を混ぜ合せる工程と、当該繊維と、当該複合体と、を結着させること、を含む。繊維、樹脂、着色材、複合体、及び結着は、上述のシート製造装置の項で述べたと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0132】
本実施形態のシート製造方法は、原料としてのパルプシートや古紙などを空気中で切断する工程、原料を空気中で繊維状に解きほぐす解繊工程、解繊された解繊物から不純物(トナーや紙力増強剤)や解繊によって短くなった繊維(短繊維)を空気中で分級する分級工程、解繊物から長い繊維(長繊維)や十分に解繊されなかった未解繊片を空気中で選別する選別工程、混合材を空気中で分散させながら降らせる分散工程、降ってきた混合材を空気中で堆積してウェブの形状等に成形する成形工程、必要に応じてシートを乾燥させる乾燥工程、形成されたシートをロール状に巻取る巻取工程、形成されたシートを裁断する裁断工程、及び製造されたシートを包装する包装工程からなる群より選択される少なくとも1つの工程を含んでもよい。これらの工程の詳細は上述のシート製造装置の項で述べたと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0133】
8.シート
本実施形態のシート製造装置1000、又はシート製造方法によって製造されるシートSは、少なくとも上述の繊維を原料とし、シート状にしたものを主に指す。しかしシート状ものに限定されず、ボード状、ウェブ状、又は凹凸を有する形状であってもよい。本明細書におけるシートとは、紙と不織布に分類できる。紙は、例えば、パルプや古紙を原料としシート状に成形した態様などを含み、筆記や印刷を目的とした記録紙や、壁紙、包装紙、色紙、画用紙、ケント紙などを含む。不織布は、紙より厚いものや低強度のものであり、一般的な不織布、繊維ボード、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、クリーナー、フィルター、液体吸収材、吸音体、緩衝材、マットなどを含む。
【0134】
9.収容容器
本実施形態の収容容器は、繊維と混ぜて用いられ、樹脂及び着色材、または、樹脂及び凝集抑制剤を一体に有する、上述の複合体を収容する。
【0135】
本実施形態の複合体は、フィーダーや弁の開閉により、混合部100に供給される。本実施形態の複合体は、外観として粉体の状態で供給される。そのため、例えば、複合体が製造された後、直接混合部100に管等を通じて供給されるように装置を構成することもできる。しかし、装置の設置場所によっては、複合体は商品として流通経路に乗ることが考えられ、複合体を製造した後に移送や保存が行われる場合がある。
【0136】
本実施形態の収容容器は、複合体を収容する収容室を有しており、該収容室内に複合体を収容することができる。すなわち、本実施形態の収容容器は、複合体のカートリッジということができ、複合体を容易に運搬、保管することができる。
【0137】
収容容器の形状は、特に限定されず、シート製造装置1000に適合するカートリッジの形状とすることができる。収容容器は、例えば、一般的な高分子材料によって形成することができる。また、収容容器は、箱状の堅牢な形態であっても、フィルム(袋)状のフレキシブルな形態であってもよい。収容容器を構成する材質は、収容される複合体の材質に比較して、ガラス転移温度や融点の低い材料で構成されることが好ましい。
【0138】
複合体を収容する収容室は、複合体を収容して保持することができれば、特に限定されない。収容室は、フィルム、成形体等により形成されることができる。収容室がフィルムで形成される場合には、収容容器は、収容室を形成するフィルムを収容するような成形体(筐体)を含んで形成されてもよい。また、収容室は、比較的堅牢な成形体によって形成されてもよい。
【0139】
収容室を形成するフィルムや成形体は、高分子、金属の蒸着膜等で構成され、多層構造であってもよい。収容容器がフィルムや成形体などの複数の部材で形成される場合には、溶着部分や接着部分が形成されてもよい。また、収容される複合体(粉体)が大気との接触により変質等の影響を受ける場合には、フィルムや成形体は、気体透過率の小さい材質で形成されることが好ましい。収容室を形成するフィルムや成形体の材質のうち、収容される複合体に接する部分の材質は、複合体に対して安定であることが好ましい。
【0140】
収容室の形状及び容積は、特に限定されない。収容室には、複合体が収容されるが、複合体とともに、これに対して不活性な固体や気体が収容されてもよい。収容室に収容される複合体の体積も特に限定されない。
【0141】
収容室は、収容室内部と収容容器の外部とを連通し、複合体を収容容器の外部に取出すことのできる流通口を有してもよい。また、収容室は、流通口以外の他の流通路が形成されてもよい。このような他の流通路としては、例えば、開放弁等により構成されてもよい。収容室に開放弁を設ける場合には、開放弁の配置される位置は特に限定されないが、移送、運搬、使用の際の通常の姿勢において重力の作用する方向に対して反対側に配置されると、収容室内に圧力等が生じた場合に当該圧力を大気に開放する際に複合体を排出しにくいため好ましい場合がある。
【0142】
10.変形及びその他の事項
本実施形態のシート製造装置、シート製造方法は、上述の通り、水を全く又はわずかにしか使用しないものであるが、必要に応じて、噴霧等により、調湿等を目的として適宜水分を添加してシートを製造することもできる。
【0143】
本明細書において、「均一」との文言は、均一な分散や混合という場合には、2種以上又は2相以上の成分を定義できる物体において、1つの成分の他の成分に対する相対的な存在位置が、系全体において一様、又は系の各部分において互いに同一若しくは実質的に等しいことを指す。また、着色の均一性や色調の均一性は、シートを平面視したときに色の濃淡がなく、一様な濃度であることを指す。しかし、本明細書において、凝集抑制剤と樹脂を一体にすることで、均一に分散したり、着色均一性がよくなるが、必ずしも一様とは限らない。凝集抑制剤と樹脂とを一体に製造する過程で一体にならない樹脂も出てくる。また、凝集はしないが、樹脂同士がやや離れた状態になることもある。そのため、一様と言っても、全ての樹脂の距離が同じではないし、濃度も完全に同じ濃度ではない。シートとして製造されたときに、引張強度が満足され、見た目での着色均一性が満足される範囲であれば、本明細書では均一であるとみなす。なお、本明細書においては、着色の均一性と色調の均一性と色ムラは同じような意味で使用される。
【0144】
本明細書において、「均一」「同じ」「等間隔」など、密度、距離、寸法などが等しいことを意味する言葉を用いている。これらは、等しいことが望ましいが、完全に等しくすることは難しいため、誤差やばらつきなどの累積で値が等しくならずにずれるのも含むものとする。
【0145】
なお、繊維と樹脂の粉体とを混合する場合には、従来のように、系内に水が存在する状態(湿式)であれば、水の作用によって樹脂(粉体)の凝集が抑制されるため、均一性の良好な混合物を得ることや良好な紙を得ることは、比較的容易であった。しかし、現在のところ再生紙を製造するにあたっては、古紙から再生紙まで一貫して乾式で製造する技術は必ずしも十分には確立されていない。
【0146】
また、発明者の検討によれば、その理由の一つとして、繊維と樹脂粒子とを混合する工程を乾式とすることの困難性にあることが分ってきている。すなわち、乾式で単に何らの工夫なく、繊維と樹脂の粉体とを混合すると、繊維と樹脂の粉体とが十分に混ざり合わず、その状態でシート状に成形(堆積)して紙を得た場合、その紙面内における樹脂の分散が不均一となって機械的強度の不十分な紙となることが分ってきている。また、乾式においては繊維と樹脂粒子とが混合された際に、ファンデルワールス力等の凝集力によって樹脂粒子の凝集が生じやすく、不均一な分散となりやすいことが分ってきている。
【0147】
11.実験例
以下に実験例を示し、本発明をさらに説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。
【0148】
11.1.実験例1
(1)樹脂及び着色材を一体に有する複合体の製造
(樹脂への着色材の一体化)
ポリエステル樹脂(東洋紡株式会社製、商品名「バイロン220」、ガラス転移点:54℃、軟化温度:96℃)1700部、青色銅フタロシアニン顔料(トーヨーカラー株式会社製、商品名LIONOL BLUE FG−7330)300部を高速ミキサー(日本コークス工業株式会社製、商品名「FM型ミキサーFM−10C」)により処理し、樹脂顔料混合物を得た。この樹脂顔料混合物を二軸混練押出機(東芝機械株式会社製、商品名「TEM−26SS」)のホッパーから供給して溶融混練を行いペレタイズして約3mm径のペレットを得た。この時ペレットからは、顔料が脱離する現象は皆無であったことから、樹脂及び着色材は一体となっていると判断した。
【0149】
(複合体のサイズの調整)
上記のようにして得られたペレットを室温付近まで冷却した後、ハンマーミル(株式会社ダルトン製、商品名「ラボミルLM−05」)にて、直径1mm以下の粒になるまで粉砕を行った。さらにこの粉砕された粒子をジェットミル(日本ニューマチック株式会社製、商品名「PJM−80SP」)により粉砕を行い、最大粒子径が40μm以下の複合体を得た。この複合体の粉砕物を気流分級機(日本ニューマチック株式会社製、商品名「MDS−3」)により分級し、複合体の体積平均粒子径dを10μmとなるようにした。
【0150】
(2)複合体への凝集抑制剤のコーティング
未コーティングの複合体100重量部と、凝集抑制剤として超微粒子二酸化チタン(富士チタン工業株式会社製、商品名「SST‐30EHJ」)1重量部とを、ブレンダー(Waring社製、商品名「ワーリングブレンダー7012型」)に投入し、回転数15600rpmで60秒間混合を行った。当該処理を行った複合体(樹脂及び着色材を一体に有する)をガラス容器にとり24時間放置したところ、放置後の複合体が凝集して塊状(ブロッキング)になることは認められず、流動性のある粉粒体の状態を維持していた。このことからコーティングがなされ(樹脂及び着色材を一体に有し)凝集しない状態が維持されていることを確認した。
【0151】
(3)繊維
粉末セルロース(日本製紙株式会社製、商品名「KCフロックW−50S」)を用いた。この繊維の平均径は19μmであった(以下、この繊維をXと表記する。)。
【0152】
(4)混合材の製造
上記の(2)で得られた樹脂及び着色材を一体に有する複合材5重量部と、上記の繊維Xの20重量部とをブレンダー(Waring社製、商品名「ワーリングブレンダー7012型」)に投入し回転数3100rpmで7秒間混合を行い複合体と繊維とを混ぜ合せ混合材を得た。
【0153】
(5)シートの製造
上記(4)で得られた混合材40重量部を目開き0.6mmの直径200mmの金篩(ふるい)に投入し直径180mm(板厚1mm)のフッ素樹脂コートアルミ円板(住友電工ファインポリマー株式会社製、商品名「スミフロンコートアルミ」)上に電気ふるい振とう機(株式会社レッチェ社製、商品名「AS200」)を用いて混合材を堆積させた。
このとき金篩に若干の混合材2重量部が残留した。堆積させた混合材は嵩高い綿状の形態であるため、更に同径のフッ素コートアルミ板を乗せて、加圧して圧縮した。その成形された混合材をアルミ円板で挟み込んだ状態で、加熱プレスにセットして60秒間保持した後、圧解放してプレス機から取出し常温になるまで放置した。その後、熱成形された混合材をアルミ板からはがしとることにより、シート(紙)を得た。
【0154】
11.2.実験例2
(1)樹脂及び着色材を一体に有する複合体の製造
(樹脂への着色材の一体化)
実験例1と同様にしてペレットを得た。
(複合体のサイズの調整)
最大粒子径40μmの複合体を得るところまでは実験例1と同様とした。複合体を気流分級機(日本ニューマチック株式会社製、商品名「MDS−3」)により分級を行い、複合体の体積平均粒子径dを20μmとした。
【0155】
(2)複合体への凝集抑制剤のコーティング
実験例1と同様とした。
(3)繊維
実験例1と同様とした。
(4)混合材の製造
実験例1と同様とした。
(5)シートの製造
実験例1と同様とした。
【0156】
11.3.実験例3
(1)樹脂及び着色材を一体に有する複合体の製造
(樹脂への着色材の一体化)
実験例1と同様とした。
(複合体のサイズの調整)
実験例1と同様とした(10μm)。
(2)複合体への凝集抑制剤のコーティング
実験例1と同様とした。
【0157】
(3)繊維
クラフト紙(王子マテリア株式会社製、商品名「OK未晒クラフト」)を幅10mm長さ30mmの紙片に切断し、これを乾式パルプ解繊機(熊谷理機工業株式会社製No.2535)により常温で処理することにより綿状の繊維を得た。この綿状の繊維を目開き5mmの金篩にかけ繊維中に混在する未解繊物を除去して用いた。この繊維の繊維径を測定したところ33μmであった(以下、この繊維をYと表記する)。
(4)混合材の製造
上記(2)で得られた複合体5重量部、上記の繊維Yの20重量部をブレンダー(Waring社製、商品名「ワーリングブレンダー7012型」)に投入し回転数3100rpmで7秒間混合を行い複合体と繊維とを混ぜ合せた混合材を得た。
【0158】
(5)シートの製造
上記(4)で得られた混合材40重量部を目開き約3mmの直径200mmの金篩に投入し直径180mm(板厚1mm)のフッ素樹脂コートアルミ円板(住友電工ファインポリマー株式会社製、商品名「スミフロンコートアルミ」)上に電気ふるい振とう機(株式会社レッチェ社製、商品名「AS200」)を用いて混合材を堆積させた。このとき金篩に若干の混合材2重量部が残留した。堆積させた混合材は嵩高い綿状の形態であるため、更に同径のフッ素コートアルミ板を乗せ、加圧して圧縮した。その混合材をアルミ円板で挟み込んだ状態で、加熱プレスにセットして60秒間保持した後、圧解放してプレス機から取出し常温になるまで放置した。その後、熱成形された混合材をアルミ板からはがしとることにより、シート(紙)を得た。
【0159】
11.4.実験例4
(1)樹脂及び着色材を一体に有する複合体の製造
(樹脂への着色材の一体化)
実験例1と同様とした。
(複合体のサイズの調整)
実験例2と同様とした。(20μm)。
(2)複合体への凝集抑制剤のコーティング
実験例1と同様とした。
(3)繊維
実験例3と同様とした。
(4)混合材の製造
実験例3と同様とした。
(5)シートの製造
実験例3と同様とした。
【0160】
11.5.実験例5
(1)樹脂及び着色材を一体に有する複合体の製造
(樹脂への着色材の一体化)
実験例1と同様とした。
(複合体のサイズの調整)
実験例1と同様にして得られたペレットを室温付近まで冷却した後、ハンマーミル(株式会社ダルトン製、商品名「ラボミルLM−05」)で、直径1mm以下の粒になるまで粉砕を行った。この粉砕された粒子をジェットミル(日本ニューマチック株式会社製、商品名「PJM−80SP」)によりさらに粉砕を行い、最大粒子径が60μm以下の複合体を得た。この複合体を気流分級機(日本ニューマチック株式会社製、商品名「MDS−3」)により分級を行い体積平均粒子径dが35μmの樹脂及び着色材が一体となっている複合体を得た。
【0161】
(2)複合体への凝集抑制剤のコーティング
実験例1と同様とした。
(3)繊維
実験例3と同様とした。
(4)混合材の製造
実験例3と同様とした。
(5)シートの製造
実験例3と同様とした。
【0162】
11.6.実験例6
(1)樹脂及び着色材を一体に有する複合体の製造
(樹脂への着色材の一体化)
実験例1と同様とした。
(複合体のサイズの調整)
実験例1と同様にして得られたペレットを室温付近まで冷却した後、ハンマーミル(株式会社ダルトン製、商品名「ラボミルLM−05」)にペレットを、直径1mm以下の粒になるまで粉砕を行った。この粉砕された粒子をジェットミル(日本ニューマチック株式会社製、商品名「PJM−80SP」)によりさらに粉砕を行い、最大粒子径が25μm以下の複合体を得た。この複合体を気流分級機(日本ニューマチック株式会社製、商品名「MDS−3」)により分級を行い体積平均粒子径dが5μmの、樹脂及び着色材は一体となっている複合体を得た。
【0163】
(2)複合体への凝集抑制剤のコーティング
上記(1)で得られた未コーティングの複合体100重量部と、凝集抑制剤として超微粒子二酸化チタン(富士チタン工業株式会社製、商品名「SST‐30EHJ」)2.5重量部を、ブレンダー(Waring社製、商品名「ワーリングブレンダー7012型」)に投入し、回転数15600rpmで30秒間混合した後120秒静止させ、更に同回転数で30秒間混合した。当該処理を行った複合体をガラス容器にとり24時間放置したところ、放置後の複合体(粉体)が凝集して塊状(ブロッキング)になることは認められず、流動性のある粉粒体の状態を維持していた。このことからコーティングがなされ(樹脂及び着色材を一体に有し)、凝集しない状態が維持されていることを確認した。
【0164】
(3)繊維
実験例1と同様とした。
(4)混合材の製造
実験例1と同様とした。
(5)シートの製造
実験例1と同様とした。
【0165】
11.7.参考例1
(1)樹脂及び着色材を一体に有する複合体の製造
(樹脂への着色材の一体化)
実施しなかった。
(樹脂粒子のサイズの調整)
本例では、複合体を用いず、着色材を一体に有さない樹脂粒子を用いた。ポリエステル樹脂(東洋紡株式会社製、商品名「バイロン220」)2000部(ペレット)を、ハンマーミル(株式会社ダルトン製、商品名「ラボミルLM−05」)により、直径1mm以下の大きさになるまで粗粉砕を行った。この樹脂粒子の粒状体をジェットミル(日本ニューマチック株式会社製、商品名「PJM−80SP」)によりさらに粉砕を行い、最大粒子径が40μm以下の粉粒体を得た。得られた粉粒体を開口100μmの金篩にかけ異物及び粗大粒を取り除いた。この粉粒体を気流分級機(日本ニューマチック株式会社製、商品名「MDS−3」)により分級を行い体積平均粒子径dが10μmの樹脂粒子を得た。
【0166】
(2)樹脂粒子への凝集抑制剤のコーティング
(樹脂粒子への凝集抑制剤のコーティング)
実施しなかった。
(3)繊維
実験例1と同様とした。
【0167】
(4)混合材の製造
青色銅フタロシアニン顔料(トーヨーカラー株式会社製、商品名LIONOL BLUE FG−7330)0.75重量部、上記(1)で得られた樹脂粒子4.75重量部、超微粒子二酸化チタン(富士チタン工業株式会社製、商品名「SST‐30EHJ」)0.05重量部、及び上記(3)の繊維Xの20重量部をブレンダー(Waring社製、商品名「ワーリングブレンダー7012型」)に投入し回転数3100rpmで7秒間混合を行い繊維、樹脂粒子、顔料(着色材)、凝集抑制剤からなる混合材(樹脂と着色材は別体となっている。)を得た。
(5)シートの製造
実験例1と同様とした。
【0168】
11.8.参考例2
(1)樹脂及び着色材を一体に有する複合体の製造
(樹脂への着色材の一体化)
実験例1と同様とした。
(複合体のサイズの調整)
実験例1と同様にして得られたペレットを室温付近まで冷却した後、ハンマーミル(株式会社ダルトン製、商品名「ラボミルLM−05」)に導入し、直径1mm以下の粒になるまで粉砕を行った。この粒状体(粉粒体)をジェットミル(日本ニューマチック株式会社製、商品名「PJM−80SP」)によりさらに粉砕を行い、最大粒子径が70μm以下の複合体を得た。得られた複合体を開口100μmの金篩にかけ異物及び粗大粒を取り除いた。この複合体を気流分級機(日本ニューマチック株式会社製、商品名「MDS−3」)により分級を行い体積平均粒子径dが50μmの樹脂及び着色材が一体となっている複合体を得た。
【0169】
(2)複合体への凝集抑制剤のコーティング
実験例1と同様とした。
(3)繊維
実験例1と同様とした。
(4)混合材の製造
実験例1と同様とした。
(5)シートの製造
実験例1と同様とした。
【0170】
11.9.参考例3
(1)樹脂及び着色材を一体に有する複合体の製造
(樹脂への着色材の一体化)
実験例1と同様とした。
(複合体のサイズの調整)
実験例1と同様にして得られたペレットを室温付近まで冷却した後、ハンマーミル(株式会社ダルトン製、商品名「ラボミルLM−05」)にペレットを導入し、直径1mm以下の粒になるまで粉砕を行った。この粉砕品を乾式粉砕機(株式会社スギノマシン製、商品名「ドライバーストDB−180W」)によりさらに粉砕し、最大粒子径が130μm以下の複合体(粉粒体)を得た。得られた複合体を開口400μmの金篩にかけ異物及び粗大粒を取り除いた。この複合体を気流分級機(日本ニューマチック株式会社製、商品名「MDS−3」)により分級を行い体積平均粒子径dが80μmの複合体(樹脂及び着色材が一体となっている)を得た。
【0171】
(2)複合体への凝集抑制剤のコーティング
実験例1と同様とした。
(3)繊維
実験例3と同様とした。
(4)混合材の製造
実験例1と同様とした。
(5)シートの製造
実験例3と同様とした。
【0172】
11.10.参考例4
(1)樹脂及び着色材を一体に有する複合体の製造
(樹脂への着色材の一体化)
実施しなかった。
(樹脂粒子のサイズの調整)
複合体を用いず、着色材を一体に有さない樹脂粒子を用いた以外は、参考例2と同様とし、体積平均粒子径dが50μmの粉粒体を得た。
【0173】
(2)樹脂粒子への凝集抑制剤のコーティング
(樹脂粒子への凝集抑制剤のコーティング)
実施しなかった。
(3)繊維
実験例1と同様とした。
【0174】
(4)混合材の製造
青色銅フタロシアニン顔料(トーヨーカラー株式会社製、商品名LIONOL BLUE FG−7330)0.75重量部、上記(1)で得られた樹脂粒子4.75重量部、上記繊維Xの20重量部をブレンダー(Waring社製、商品名「ワーリングブレンダー7012型」)に投入し回転数3100rpmで7秒間混合を行い繊維、樹脂粒子、顔料からなる混合材(樹脂粒子と着色材は別体となっている。)を得た。
(5)シートの製造
実験例1と同様とした。
【0175】
11.11.測定及び評価方法
(粒子径の測定方法)
複合体又は樹脂粒子の粒子径の測定は、水中に懸濁させ湿式フロー式粒子径・形状分析装置(シスメックス株式会社製、商品名「FPIA−2000」)により行った。その結果を表1に記した。なお、複合体又は樹脂粒子を懸濁させる際には、懸濁液100重量部に対して2重量部の界面活性剤(花王株式会社製、商品名「エマルゲン120」)を加え超音波処理を1分間行い懸濁液の凝集を解消した状態とした。
【0176】
(繊維材の繊維径の測定方法)
繊維材の繊維径の測定は、繊維を水に懸濁させファイバーテスター(Lorentzen & Wettre社製、「Fiber Tester」)により実施した。得られた繊維の平均径Dを表1に記載した。
【0177】
(混合材における複合体又は樹脂粒子の体積平均粒子径d及び繊維の平均径Dの関係)
混合材における複合体又は樹脂粒子の体積平均粒子径d及び繊維の平均径Dの関係について、d/Dの値、及び、d≦Dの関係を満たすか否かについて、満たす場合を「○」、満たさない場合を「×」、値の±10%の範囲で満たす場合を「△」として、表1に記載した。
【0178】
(シートの引張強度測定方法)
上記の方法により得られたシート(紙)からJIS K7162の1BAの試験片(全長75mm)に切り出した後、引張試験を実施した。同試験はJIS K7161に準拠し、室温23℃、相対湿度50%の環境で行った。各例の破断点の強度(MPa)値を表1に記載した。
【0179】
(シート(紙)の着色均一性の評価方法)
上記の方法により得られたシート(紙)から幅15mm長さ120mmの試験片を切り出し、端部より20mm、40mm、60mm、80mm、100mm位置の光学反射濃度を分光濃度計(X rite社製、商品名「X−Rite 528」)によりCyanモードで測定を行った。この時の光学反射濃度の最大値をA、最小値をBとしたとき、C=100×(A−B)/A(%)なる値Cが5%以下を「○」(色ムラなし)、5%を越え10%以下である場合を「△」、10%より大きい場合を「×」(色ムラあり)と判定した。
【0180】
(シート(紙)の着色材脱離評価方法)
上記の方法により得られたシート(紙)を981Paの圧力で挟持体に挟持しながら紙を動かした。挟持体に着色材が付着していた場合を「×」(脱離がありNG)、付着していない場合を「○」(脱離なく問題なし)として表1に記載した。これは、紙を指でこすったときに指に着色材が付着するか否かで評価を代用してもよい。
【0181】
(シート(紙)の良否判定)
各例で得られたシート(紙)につき官能試験を行った。20才以上50才以下の男女20名に、各例の紙の感触、風合、外観を確認させ、うち15名以上が紙として使用に耐えると判断した場合を「○」、そうでないものを「×」として表1に記載した。
【0182】
11.12.実験結果
各実験例及び各参考例について、表1に、試料の特徴、繊維材の種類、繊維材の繊維径、複合体又は樹脂粒子の構成、シート(紙)の引張強度、シート(紙)における着色材の脱離、シート(紙)の着色均一性及び良否判定結果をまとめた。
【0184】
樹脂及び着色材を一体に有していない複合体、すなわち樹脂及び着色材が別体の混合物を用いた参考例1、4において、着色材の脱離が見られた。これに対して、樹脂及び着色剤を一体に有する複合体を用いたその他の各例では、着色材の脱離は見られなかった。複合体が樹脂及び着色材を一体に有することで、ほとんどの着色材は樹脂を介して繊維に結着するため脱離がないことが分かる。一方、樹脂及び着色材を単に一緒に混合した場合には、着色材は、樹脂を介さずに繊維に付着するため、指でこする程度の圧力で脱離してしまうことが分った。
【0185】
さらに樹脂及び凝集抑制剤を一体に有する複合体を用いた実験例1〜6は、着色均一性が良好になった。これは、凝集抑制剤をコーティングにより樹脂と一体化した複合体を用いることで、複合体の凝集が抑制され、複合体が均一に分散しているためである。このことから、樹脂と凝集抑制剤を一体にすると、樹脂を均一に分散させる効果があると言える。
【0186】
また、樹脂と凝集抑制剤を一体に有する複合体を用いた実施例1〜6は、樹脂と凝集抑制剤を別体にした参考例2よりもシートの引張強度が良好である。これは、樹脂と凝集抑制剤を別体にした場合、樹脂と樹脂の間に凝集抑制剤が配置された場合には凝集抑制の効果があるが、樹脂と樹脂の間に凝集抑制剤が無い場合には樹脂と樹脂が凝集してしまい、樹脂が均一に分散しないためである。このため、繊維と繊維が樹脂によって結着されない箇所が存在し、シートとしての強度が低下してしまう。一方、樹脂と凝集抑制剤を一体にすると、樹脂が均一に分散されるため、シートとしての強度は低下せず、良好な値となる。
【0187】
また、参考例2〜4から、d/Dが1を大きく上回ると、引張強度が劣化することが判明した。これは、複合体の径が大きいと、同じ重量の複合体を繊維に混合したときに、複合体の数(粒子の個数)が少なくなり、繊維と繊維とを結着する複合体の個数が少なくなるためである。また、複合体の径が大きいことにより、繊維と繊維との間に入り込みにくいことも一因となっていると考えられる。実験例2、5はd/Dが1を若干上回っているが、引張強度は劣化していない。このためd/Dが1以下であれば引張強度は問題ないと言える。なお、d/Dが1以下のため、複合体の大きさは繊維の太さ以下となる。また、実験例1、3、4、6の結果から、d≦Dを満たせば繊維や樹脂の径を変えても問題ないことがわかった。なお、実験例6の結果から、d/Dは0.26以上が好ましく、実験例3の結果からより好ましくは0.30以上が好ましいことがわかる。
【0188】
表1から明らかなように、混合材を着色するために着色材(顔料)を添加する場合、この混合材からの着色材(顔料)の脱離を解消するためには、着色材(顔料)は複合体に一体化させ、かつ凝集抑制剤で複合体をコーティング(凝集抑制剤も複合体に一体化)したものとすることが非常に有効であることが判明した。なお、これは複合体と着色材が同じように分散するためであると考えられ、湿式においても有効であることがわかる。
【0189】
複合体に対して一体化していない(別体の)凝集抑制剤、繊維、及び複合体を一緒に混合する方法(外部添加)では、複合体の凝集を抑制する効果が小さく、複合体の凝集が顕著には解消されないため、繊維と複合体とを十分に均一に混合することが難しいことが分かる。
【0190】
これに対して、複合体に対して凝集抑制剤をコーティング(一体化)した後に、繊維と混合することにより、着色均一性の優れた混合材及びシートが得られることが判明した。すなわち、混合材及びシートの色ムラを低減し着色均一性の優れたものとするためには、着色の為の顔料(着色材)は複合体に一体化されていることが有効であることが分かった。また、複合体が鞘状ではなく粉体であることで、繊維間に分散しやすくなる効果も有する。
【0191】
また、表1から明らかなように、樹脂並びに着色剤及び/又は凝集抑制剤を一体に有する複合体を繊維と混ぜた混合材を用いて成形することにより、得られたシート(紙)は、成形後の着色均一性(色調の均一性)に優れ、かつ引張強度に優れる特性を有することが分かった。このようなシート(紙)を得るためには、複合体は顔料を一体に有し、かつこの複合体に凝集抑制剤が一体化されており、さらに「複合体の体積平均粒子径d≦繊維の平均径D」なる関係にある混合材を用いて成形することが極めて有効であることが分かった。
【0192】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0193】
なお、本発明は、引張強度が39MPa以上を要求されるシートに適している。一般的に、不織布よりも紙の方が引張強度は高い値を要求される。これは、例えばプリンターなどで用いられた際に、破れては困るためである。このため、本発明は、不織布よりも紙の方が適しているので、シートを紙に置き換えてもよい。しかし、不織布に用いられても問題はない。