(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記積層フィルムが、プラスチックフィルムに無機化合物を蒸着してなるガスバリアフィルムを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子レンジ用パウチ。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットや百貨店の再編、コンビニエンスストアの普及と変貌など小売業の業容の変化は激しく、それにともなって主要商品のひとつである加工食品も競争が激化しており、商品開発や商品差別化が行なわれ、包装材料にも大きな変化が起きている。同時に高齢化や環境意識の高まりなどを背景に、人々の消費行動にも大きな変化が起きている。
【0003】
一方、加工食品のひとつである惣菜用の容器としては、トレー容器、スタンディングパウチなどが知られている。スーパーマーケットやコンビニエンスストアで買い物をし、家庭には電子レンジがあることが当然の現代の食生活においては、電子レンジによる加熱、調理が可能なパウチは自然な要求であるといえるが、実際には電子レンジ可能なパウチの普及は遅れている。
【0004】
普及遅れの原因はたとえば、電子レンジではガスバリア層などとしてアルミニウムなどの金属箔が容器の材料に含まれている場合には、高周波による金属のスパークが発生して使うことができない問題があった。あるいはスタンディングパウチといった容器の形態では、通常の家庭用電子レンジ内側の調理スペースに比べ、背が高くて収まりにくいといった問題点があるとされる。
【0005】
そのほかにも惣菜用の容器として存在するラベル付きトレー、一般スタンディングパウチ、電子レンジ対応スタンディングパウチなどは、電子レンジ対応を念頭に考えてきた場合、多面的に満足度の高い容器、包装はほとんどないといってよい。表1はそれらの機能を比較した結果をまとめたものである。
【0006】
【表1】
【0007】
表1からも明らかなように、すべての項目において要求を充分に満たすことのできるものはない。たとえばラベル付きトレーでは保存可能期間、印刷表示面積、電子レンジ過熱取り扱い性などに難があり、一般用スタンディングパウチでは、保存可能期間、包装材料使用量、電子レンジ加熱取り扱い性、などの難があり、また電子レンジ対応スタンディングパウチでは包装材料使用量、電子レンジでの加熱持ちやすさ、取り出しやすさに難があることがわかる。
【0008】
さらに最近では新たな要求として消費者がパウチに充填された食品に自ら食材を加えて再封、加熱、調理できるものが求められているが対応は遅れている。
【0009】
そのほかにも、マチ付きのガセット袋がある。しかしながらガセット袋の場合には、そのまま電子レンジで調理、加熱しようとすると水蒸気が発生して、その内圧によってガセットの交点から水蒸気が抜けてしまい、電子レンジの庫内に内容物が飛散することがありその結果内部を汚染してしまう場合があるという欠点があった。加えてガセット袋の場合には内容量を増やすことができる半面、包装材料の使用量が多くなり、環境負荷、コストなどの点で課題も多かった。
【0010】
消費者の生活様式の変化からも新たな要求が出てきている。パウチ食品の販売チャネルのひとつであるコンビニエンスストアを例に取ると、高齢者、独身者、子供といった購買層に対する商品開発があらたに求められ試行錯誤が続いている。
【0011】
このようにこれまでは、電子レンジ加熱調理が可能であっても、特定の商品や単一の目的の機能を有するのみの容器であったために、使い勝手が悪く、用途も広がらないものであった。
【0012】
食品包装容器として、ガスバリア性を有しており熱殺菌処理で保存性を延長させることができるとともに、流通、小売段階でのディスプレイ効果、電子レンジ調理での取り扱いの利便性、食材の追加調理などへの対応など多機能性をもったものが求められており、多機能性によって多目的用途への対応が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、包装材料としての機能を損なうことなく、デイスプレイ効果に優れ、電子レンジによる加熱、調理が可能であって、通蒸機能を備え、包材効率が優れる多目的用途の電子レンジ用パウチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、少なくとも、外面側が基材フィルムと、内面側がシーラント層からなる積層フィルムを用いて構成され、胴部両側端部はシールされており、
上部に充填口が形成されており、
底部には、フィルムを内側に折り曲げ線でV字形に折り込んでなるガセット折りの折込部が形成されており、
底部はスタンディング可能にシールされている電子レンジによる加熱可能なスタンディングパウチ形式の包装袋であって、
前記胴部の側面フィルムの一方の面の所定の位置に、積層フィルムをシーラントを内側にV字形に折り返してなるヒレ状のガセット折りを袋本体の充填口と平行に設けてあり、ヒレ状のこのガセット折りに蒸気抜き機構が設けられており、
底部の前記折込部が、前記折り曲げ線により、前記蒸気抜き機構のある側の面と、もう一方の側の面とに区分されており、蒸気抜き機構のある側の面の底部ガセット折込み幅と、もう一方の側の面の底部ガセット折込み幅とでは、後者が長いことを特徴とする電子レンジ用パウチである。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は
、流れ方向に連続する積層フィルムをシール加工によって製袋して、ワンピースで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ用パウチである。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、前記積層フィルムが、プラスチックフィルムに無機化合物を蒸着してなるガスバリアフィルムを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子レンジ用パウチである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、包装材料としての機能を損なうことなく、デイスプレイ効果に優れ、電子レンジによる加熱、調理が可能であって、通蒸機能を備え、包材効率が優れる多目的用途の電子レンジ用パウチを提供することが可能である。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、構成する積層フィルムをより効率的に使用した電子レンジ用パウチを提供することが可能になる。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、ガスバリア性を有し内容物の賞味期間が長く、内容物の視認が可能な電子レンジ用パウチを提供することが可能になる。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば底部を下にして、所望の角度に自立させることが可能な電子レンジ用パウチを提供することが可能になる。
【0027】
請求項5に記載の発明によれば、内容物に比べて積層フィルムのより効率的な使用が可能な電子レンジ用パウチを提供することが可能になる。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、より自立性が確実な電子レンジ用パウチを提供することが可能になる。
【0029】
請求項7に記載の発明によれば、食品などを密封包装して、電子レンジによる加熱または加熱調理の際に、袋内が所定の内圧に達したときには袋内部の蒸気を該シール脆弱部と通気用の穴から袋外部に逃がすことができる電子レンジ用パウチを提供することが可能になる。
【0030】
請求項8に記載の発明によれば、消費者サイドで食材を追加あるいは新規に封入して調理可能な、多目的用途の電子レンジ用パウチを提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下発明を実施するための形態について
図1から
図4を参照しながら詳細に解説を加えてゆく。
【0033】
図1は本発明に係る電子レンジ用パウチの一実施形態の斜視模式図である。また
図2は本発明に係る電子レンジ用パウチの一実施形態の部分断面模式図である。電子レンジ用パウチ(10)は、少なくとも外面側が基材フィルムと、内面側がシーラント層からなるワンピースの積層フィルムを用いて構成される。
【0034】
パウチの胴部両側端部はサイドシール部(C)、サイドシール部(D)でシールされている。袋底部はフィルムを内側にV字状に折り込んでなるガセット折りの折込部が底部(B)を形成している。底部のガセットはV字形に折り込んで形成するために底部1(K)となる部分と底部2(L)になる部分に分かれる。
【0035】
底部のサイドシール部には、互いに向かい合わせになる底部1(K)と底部2(L)にそれぞれパンチ穴加工(G)が設けてあり、このパンチ穴部分はV字形に織り込んだ際にシーラントが向い合わせになり、パンチ穴部分が露出している状態になる。シールによってパンチ穴加工部分同士がそれぞれ接着することにより、内容物を充填口部(A)より充填、封入すれば底部(B)を下にしてパウチに自立性が与えられる。
【0036】
一般に電子レンジの加熱または調理のための開口部は横長の長方形である。本発明によるパウチを用いて電子レンジによる食品などの加熱または加熱調理する際には、絵柄表面(J)を下にして平らな状態で電子レンジに入れることができ、一般のスタンディングパウチのように高さによって電子レンジ庫内に入れることが困難な状況は回避できる。
【0037】
本発明によるパウチにはまた、ヒレ状ガセット(M)を設けてあり、ここには蒸気抜き機構(F)が設けてある。これによって電子レンジによる食品などの加熱または加熱調理の際に、袋内が所定の内圧に達したときには自動的に袋内部の蒸気を蒸気抜き機構(F)から袋外部に逃がすことができる。
【0038】
図3は本発明に係る電子レンジ用パウチの
図1に示した一実施形態の斜視模式図のうち蒸気抜き機構(F)部の拡大図である。ヒレ状ガセット(M)はV字形に折り返されて形成されているためにヒレ状ガセットエッジ(Q)はシーラントを内側にして折り返されている。このエッジ部分に通蒸部シール(P)がパウチ幅方向に設けてあり、中央部でV字形を形成している。
【0039】
このV字形で囲まれた領域には積層フィルムを貫通する切り込み(R)が設けてある。シール脆弱部を設けることによって電子レンジによる食品などの加熱または加熱調理の際に、袋内が所定の内圧に達したときにパウチが膨らみ、通蒸部シール(P)のV字形部分に応力が集中して、シールが剥離するために、パウチ内部の蒸気はシールの剥離部から切り込み(R)を経由して袋外部に排出される。
【0040】
このように本発明によれば、電子レンジによる加熱、調理が可能であって、通蒸機能を備え、包材効率が優れる多目的用途の電子レンジ用パウチを提供することができる。
【0041】
以下本発明による電子レンジ用パウチに関してその構成要素をさらに詳しく説明する。本発明の電子レンジ用パウチは、外面側が基材フィルムと、内面側がシーラント層からなる積層フィルムを用いて構成される。
【0042】
基材フィルムには、高分子材料を素材としたプラスチックフィルムを用いることができる。高分子フィルムは高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択される。
特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートを基材フィルムとする場合は、フィルム強度と価格においてより好ましい。
【0043】
また、内容物の食品の保存性を向上させることを目的として、基材フィルムにガスバリア層を設けることができる。ガスバリア層は無機化合物の蒸着層、コーティング層で構成することができ、基材フィルムにアンカーコートを設けた後、蒸着層、コート層を順次設ける。あるいはガスバリア層を有するガスバリアフィルムを基材フィルムと貼り合わせても良い。
【0044】
アンカーコート層には例えばウレタンアクリレートを用いることができる。コーティング厚さは50〜65nmの範囲が好ましい。アンカーコート層の形成には、樹脂を溶媒に溶解した塗料をグラビアコーティングなど印刷手法を応用したコーティング方法を用いるほか、一般に知られているコーティング方法を用いて塗膜を形成することができる。
【0045】
蒸着層を形成する方法としては,SiOやAlOなどの無機化合物を真空蒸着法を用いて、アンカーコート層を設けた基材フィルム上にコーティングし、真空蒸着法による無機化合物層を形成することができる。蒸着層の厚みは15nm〜30nmが良い。
【0046】
コート層を形成する方法としては、水溶性高分子と、(a)一種以上のアルコキシドまたはその加水分解物、または両者、あるいは(b)塩化錫の、少なくともいずれかひとつを含む水溶液あるいは水/アルコール混合水溶液を主剤とするコーティング剤をフィルム上に塗布し、加熱乾燥してコーティング法による無機化合物層を形成しコート層とすることができる。このときコーティング剤にはシランモノマーを添加しておくことによってアンカーコート層との密着の向上を図ることができる。
【0047】
無機化合物層は真空蒸着法による塗膜のみでもガスバリア性を有するが、コーティング法による無機化合物層であるコート層を、真空蒸着法による無機化合物層である蒸着層に重ねて形成し、バリア層とすることができる。コート層の厚みは220nm〜280nmが良い。バリア層の形成によって、ガスバリア性を大きく改善し、長期保存が可能な食品用パウチとして使用することができる。
【0048】
これら2層の複合により、真空蒸着法による無機化合物層とコーティング法による無機化合物層との界面に両層の反応層を生じるか、或いはコーティング法による無機化合物層が、真空蒸着法による無機化合物層に生じるピンホール、クラック、粒界などの欠陥あるいは微細孔を充填、補強することで緻密構造が形成されるため、高いガスバリア性、耐湿性、耐水性を実現するとともに、変形に耐えられる可撓性を有するため、包装材料としての適性も具備することができる。
【0049】
またバリア層としてたとえばアルミニウム箔などの金属箔を用いる場合には電子レンジ内で高周波によるスパークを起こすことが知られているが、真空蒸着法による無機化合物層とコーティング法による無機化合物層の場合にはスパークの恐れはない。また、金属探知機による検査も可能であり、透明であるために内容物をパウチの外側から目で見ることが可能である。
【0050】
シーラント層の材質としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
【0051】
シーラント層を形成するには、前記ポリオレフィン系樹脂からなるフィルムを用いて基材フィルムとラミネートすることもでき、また前記ポリオレフィン樹脂を押し出し機で押し出して形成することもできる。
【0052】
シーラント層は、積層フィルムの内側になる面に配置されているので、フィルムを折り返して、シーラント層同士を対向させることによって、熱、圧によるシールが可能であって、製袋することができる。パウチ胴部は両サイドの端部をシールすることによって形成される。また底部ははじめに折り返したフィルムを、さらに折り返し点でV字形に内側に折り込むことで、ガセットを有する底部とすることができる。
【0053】
V字形に折り込むことによって、底部は底部1(K)および底部2(L)の2つに分かれるが、これら二つと胴部が交点を形成する。この交点の近傍、底部の端部にパウチの自立を確実にすることを目的として、パンチ穴加工(G)を施し2つの底部が完全に離れないようにシールする。
【0054】
これは端部に形成された半円形のパンチ穴があるために、V字形折り込みで対向して重ねた積層体のシーラントが半円形に露出しているためにシールが可能になる。この加工によって、内容物が充填され密封されたパウチは底部(B)を下にして広がった状態で自立することが可能になる。
【0055】
充填されたパウチは、商品として出荷、販売されるがその際には底部(B)を下にした状態で自立の状態で陳列することができる。このとき底部1(K)を、底部2(L)より長くしておくことによって、絵柄表面(J)が斜め上を向く形で自立するため、絵柄表面がより視認しやすい状態となって、効果的なディスプレイ効果を実現することが可能になる。絵柄は絵柄裏面(N)にも設けることが可能である。
【0056】
絵柄は基材フィルム表面、あるいは裏面に既知の印刷手法を用いて設けることができる。印刷手法は特に限定するものではないがたとえばグラビア印刷法を用いることができる。
【0057】
印刷インキの選択も特に限定するものではないが、フィルムへの印刷適性、食品や環境への安全性などを考慮すれば、適宜選択することができる。また直接の印刷ではなく、印刷されたラベルを貼り付けるのでも良い。
【0058】
我々は鋭意検討の上、実験を重ねた結果、底部1(K)の長さである底部1長さ(4)
と、底部2(L)の長さである底部2長さ(3)との差は、底部1(4)が20mm以上長いことが適切であることを見出した。この差を設けることで、自立して展示されたパウチは好ましい傾きを持つことが可能になることに加えて、充填効率の向上に寄与する。
【0059】
さらにパウチ充填口部(A)に近い位置の、底部2(3)の側に、シーラントをV字形の内側にして、パウチ幅方向にヒレ状ガセット(M)を設ける。ヒレ状ガセット(M)には通蒸部シールを設けてあり、幅方向中央部には、V字形の通蒸部シール(P)とそれに囲まれた形の切り込み(R)からなる蒸気抜き機構(F)を設けてある。
【0060】
通蒸部シール(P)はヒレ状ガセットエッジ(Q)に沿って設けてあり、我々は鋭意検討の上、実験を重ねた結果、その通蒸部シール幅(8)は3mm〜5mmが適当であることを見出した。蒸気抜き機構(F)において通蒸部シール(P)はヒレ状ガセットエッジ(Q)を離れてV字形を形成している。
【0061】
電子レンジでパウチを加熱、調理したときに、発生した蒸気によってパウチ内部に圧力が発生し、パウチが丸く膨らむときにはV字形の谷の先端において応力集中が発生してシールが剥離する。これによって自動的に内部で発生した蒸気が、切り込み(R)を通って外に排出される。
【0062】
本発明による電子レンジ用パウチは、電子レンジにいれて加熱、調理するに際しては、絵柄表面(J)を下に、すなわち蒸気抜き機構(F)を上にして使用する。こうすることによって、加熱、調理時において自動的に通蒸機能が働く際には、電子レンジ庫内に内容物が飛散、内部を汚染することを回避することができ、パウチから蒸気のみを排出することができる。
【0063】
我々は鋭意検討の上実験を重ねた結果、蒸気抜き機構(F)のV字形の通蒸部幅(9)は15mm〜30mmが適当であることを見出した。また通蒸部V字高さ(7)は10mm〜15mmが適当であることを見出した。
【0064】
サイドシール(C)およびサイドシール(D)や底シール(E)、通蒸部シール(P)のシール条件については、レトルト適性と通蒸性に係る項目であるため、そのシール条件についても検討した。このときのパウチの材料構成および各部位の寸法は以下のとおりである。
【0065】
材料構成:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)+無機化合物蒸着層/ドライラミネーション/シーラント層(三井化学東セロ社製CMPS(登録商標)013C)
各部位の寸法:
各部位の符号は
図1参照。
(1)パウチ長さ:150mm
(2)パウチ幅:140mm
(3)底部2長さ:20mm
(4)底部1長さ:40mm
(5)ヒレ状ガセット長さ:15mm
(6)パウチ口部長さ:50mm
結果を表2に示す。
【0066】
製袋シール条件:(一秒間、1kg/cm
2)。
【0068】
表2の結果から、通蒸部シール(P)のシール条件は130℃〜140℃が適当であることがわかる。120℃ではシール強度が不足であってレトルト適性に劣り、レトルトによってシール剥がれが起こる可能性があるためであり、150℃では、シール強度が強くなりすぎて、パウチの内部圧力によって自動的に通蒸する蒸気抜き機構がうまく働かないためである。
【0069】
またサイドシール(C)およびサイドシール(D)については140℃〜160℃、のシール条件の範囲が適当であり、底シール(E)については140℃〜160℃のシール条件の範囲が適当であることがわかる。
【0070】
自動的に通蒸する蒸気抜き機構は、パウチが発生した蒸気の内圧によって膨らむことによって、蒸気抜き機構、とりわけ通蒸部シールのV字形の部分である脆弱部に応力が集中することが必要である。我々はそのために、重要なパラメータを検討した結果、パウチ長さ(1)とパウチ口部長さ(6)が重要であることを見出した。このときのパウチの材料構成および各部位の寸法は以下のとおりである。各部位の符号は
図1参照。
【0071】
材料構成:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)+無機化合物蒸着層/ドライラミネーション/シーラント層(三井化学東セロ社製CMPS(登録商標)013C)
各部位の寸法:各部位の符号は
図1参照。
(1)パウチ長さ:可変(140mm、150mm、160mm、170mm、180mm)
(2)パウチ幅:140mm
(3)底部2長さ:20mm
(4)底部1長さ:40mm
(5)ヒレ状ガセット長さ:15mm
(6)パウチ口部長さ:50mm
検討結果を表3に示す。
【0073】
試験方法:内容物として肉じゃが190gを充填、密封し、蒸気抜き機構が機能して自動的に通蒸するかどうか確認した。
【0074】
表3に示された通蒸性の評価結果から、パウチ口部長さ(6)を50mmとした場合パウチ長さ(1)との差が120mm以下であることが適当であることがわかる。
【0075】
図4は本発明に係る電子レンジ用パウチの他の実施形態の斜視模式図である。袋の上部に設けてあるヒレ状のガセット折り端部幅方向に、再封機能と耐熱殺菌性および加熱調理時には通蒸性を有するチャック部(H)を設けてあることによって、再封機能が備わり、家庭で消費者が食材を加えて加熱、調理することも可能になる。
【0076】
本発明による電子レンジ用パウチはまた、チャックを設けて再封機能を有する場合には、内容物を入れることなくパウチ単体で商品とすることも可能であり、電子レンジ調理専用パウチとして使用することもできる。
【実施例】
【0077】
以下実施例および
図5〜
図7を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
【0078】
<実施例>
本発明による電子レンジ用パウチを作成した。
材料構成:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)+無機化合物蒸着層/ポリアミドフィルム/シーラント層(三井化学東セロ社製CMPS(登録商標)013C)
各部位の寸法:
各部位の符号は
図5参照。
(1)パウチ長さ:160mm
(2)パウチ幅:140mm
(3)底部2長さ:20mm
(4)底部1長さ:40mm
(5)ヒレ状ガセット長さ:15mm
(6)パウチ口部長さ:50mm。
【0079】
<比較例1>
電子レンジ加熱可能な一般のガセット付きパウチを作成した。
材料構成:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)+無機化合物蒸着層/ポリアミドフィルム/シーラント層(三井化学東セロ社製CMPS(登録商標)013C)
各部位の寸法:各部位の符号は
図6参照。
(1)パウチ長さ:160mm
(2)パウチ幅:140mm
(4)底部長さ:40mm
(5)ヒレ状ガセット長さ:40mm
(6)パウチ口部長さ:40mm。
【0080】
<比較例2>
自立型の電子レンジ加熱可能なスタンディングパウチを作成した。
材料構成:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)+無機化合物蒸着層/ポリアミドフィルム/シーラント層(三井化学東セロ社製CMPS(登録商標)013C)
各部位の寸法:各部位の符号は
図7参照。
(1)パウチ長さ:160mm
(2)パウチ幅:140mm
(4)底部長さ:40mm。
【0081】
<評価項目および評価方法>
包材使用量:面積単位cm
2
水充填量:単位cc
包材効率度:水充填量/包材使用量(数字が大きいほうが効率に優れる)
落下強度:水を200g封入して、高さ1.2mから5回落下させる。
通蒸部分:肉じゃが190gを充填し、電子レンジ(500W)で2分加熱する。
評価結果は表4に示すとおりである。
【0082】
【表4】
【0083】
表4に示された結果によれば、本発明による実施例は比較例1および比較例2に較べて包材効率に優れている。包装効率は実施例が0.75となっているのに対し、比較例1は0.7、比較例2は0.6であって、本発明による電子レンジ用パウチは明らかに包装効率に優れているといえる。
【0084】
本発明による電子レンジ用パウチは電子レンジによる加熱、調理において、蒸気抜き機
構が機能して所定の通蒸部から自動的に通蒸することを確認することができた。
【0085】
落下強度の比較ではいずれも異常のない結果となり、本発明による電子レンジ用パウチは、包装材料として従来の強度を損なっていないことを検証することができた。
【0086】
このように本発明によれば電子レンジによる加熱、調理が可能であって、自動通蒸機能を備え、包材効率が優れ、かつ消費者サイドで食材を追加あるいは新規に封入して調理可能な、多目的用途の電子レンジ用パウチを提供することが可能であることを検証することができた。