特許第6609925号(P6609925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6609925
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】ホブ
(51)【国際特許分類】
   B23F 21/16 20060101AFI20191118BHJP
【FI】
   B23F21/16
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-5176(P2015-5176)
(22)【出願日】2015年1月14日
(65)【公開番号】特開2016-129919(P2016-129919A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年9月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】森川 正宣
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 弘生
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−009422(JP,U)
【文献】 特開平09−174332(JP,A)
【文献】 米国特許第06499917(US,B1)
【文献】 特開2009−148886(JP,A)
【文献】 米国特許第05088861(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 21/16
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転させられるホブ本体の外周部に、上記軸線が延びる方向に向けて鋸歯状をなして延びる歯切刃が設けられたホブであって、上記ホブ本体の外周部には1列だけの上記歯切刃が設けられていて、
上記ホブ本体の外周部には、上記軸線に平行に延びる取付座が複数形成されており、上記1列だけの歯切刃は、このうち1つの取付座に着脱可能に取り付けられる1枚のブレードに形成されているとともに、
上記1列だけの歯切刃とは上記軸線を挟んで反対側に、歯切りを行わないバランス刃が設けられていることを特徴とするホブ。
【請求項2】
上記ホブ本体の外周部には、上記取付座の周方向に隣接して凹所が形成されており、上記ブレードは、上記凹所に装着される上記軸線方向に並んだ複数のクサビ部材によって押圧されて取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のホブ。
【請求項3】
上記クサビ部材は上記軸線方向に延びる板状または柱状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のホブ。
【請求項4】
上記クサビ部材によって押圧される上記ブレードの被押圧面は、上記ホブ本体の外周側に向かうに従い上記ブレードの厚さ方向に凹む凹面状に形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のホブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホブ本体の外周部に鋸歯状をなす歯切刃が設けられて歯車の歯切り加工を行うホブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなホブとして、特許文献1には、筒状のホブ本体の外周面に、軸方向に沿う溝が周方向に等間隔で複数形成され、これらの溝に挿入したサポータに複数の山形形状のブレードを嵌着固定した組立式ホブが提案されている。ここで、上記サポータは調整ネジと押さえ駒とで軸方向に位置決めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−091321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようにホブ本体の外周に複数の溝が周方向に間隔をあけて形成されて、これらの溝にサポータおよびブレードが取り付けられたホブでは、これらのブレードがなす山形形状の位相が軸線回りに一定のリードとなるように、各溝の調整ネジと押さえ駒の位置を順次ずらすことにより、サポータとブレードも周方向に順次軸方向に位置をずらして螺旋状となるように配設されている。
【0005】
しかしながら、このような複数の溝に取り付けられたブレードの間で、互いの山形形状が正確に一定のリードの螺旋状をなすように位置決めするのは困難であり、調整ネジや押さえ駒によるサポータおよびブレードの位置決めに多くの時間と労力とを要することになる。また、万一これらのブレードの1つにでも山形形状の位相にずれが生じていると、歯切り加工された歯車の精度も損なわれてしまう。これは、特許文献1に記載された組立式ホブに限らず、ソリッドやロウ付けのホブでも同様である。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、歯切刃の位相合わせなどに多くの時間や労力を要することなく、高い歯切り加工精度を確保することが可能なホブを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転させられるホブ本体の外周部に、上記軸線が延びる方向に向けて鋸歯状をなして延びる歯切刃が設けられたホブであって、上記ホブ本体の外周部には1列だけの上記歯切刃が設けられていて、上記ホブ本体の外周部には、上記軸線に平行に延びる取付座が複数形成されており、上記1列だけの歯切刃は、このうち1つの取付座に着脱可能に取り付けられる1枚のブレードに形成されているとともに、上記1列だけの歯切刃とは上記軸線を挟んで反対側に、歯切りを行わないバランス刃が設けられていることを特徴とする。
【0008】
すなわち、このようなホブでは、ホブ本体の外周部に1列だけの鋸歯状をなす歯切刃しか設けられていないので、この1列の歯切刃がなす鋸歯のピッチさえ正確に形成されていれば、他の歯切刃との位相を合わせたりすることなく、この1列の歯切刃によってワークに歯形を形成することができる。このため、位相合わせのために時間や労力を必要とすることがなく、しかも位相のずれに伴う加工精度の低下を招くこともない。
【0009】
ここで、このような構成は、上述したソリッドやロウ付けのホブに適用することも可能であるが、本発明では、ホブ本体の外周部に、上記軸線に平行に延びる取付座が複数形成されて、上記1列の歯切刃は、このうち1つの取付座に着脱可能に取り付けられる1枚のブレードに形成された、組立式のホブに適用しており、ブレードの位置決めを大幅に簡略化することができるので、特に効果的である。
【0010】
また、この場合には、上記ホブ本体の外周部に、上記取付座の周方向に隣接して凹所を形成して、上記ブレードを、上記凹所に装着される上記軸線方向に並んだ複数のクサビ部材によって押圧して取り付けることにより、クサビ部材とブレードとの接触面積を大きく確保することができるとともに、ブレードが延びる上記軸線方向の複数の箇所で該ブレードを押圧することができ、これらによって安定してブレードをホブ本体に取り付けることができる。従って、歯切り加工時にブレードにがたつき生じるのを防いで高い加工精度を得ることができる。
【0011】
さらに、上記クサビ部材も、上記軸線方向に延びる板状または柱状に形成することにより、ブレードとの接触面積をより大きく確保して一層の取付安定性の向上を図ることができる。また、上記クサビ部材によって押圧される上記ブレードの被押圧面を、上記ホブ本体の外周側に向かうに従い上記ブレードの厚さ方向に凹む凹面状に形成することにより、ホブ本体外周側へのブレードの抜け止めを図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、ホブ本体の軸線が延びる方向に延びる歯切刃が1列だけであるので、複数列の歯切刃間における位相合わせに要する時間や労力を省くことができるとともに、位相のずれに伴う歯切り加工精度の低下も防いで、高精度の歯車を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態を説明する上での参考例を示す軸線方向一端側(図3における左側)から見た一部破断正面図である。
図2図1に示す参考例を軸線方向他端側(図3における右側)から見た背面図である。
図3図1に示す参考例の側断面図である。
図4図3における矢線X方向視の部分平面図である。
図5図1に示す参考例の取付座周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1ないし図5は、本発明の一実施形態を説明する上での参考例を示すものである。本参考例において、ホブ本体1は鋼材等により形成され、軸線O方向の両端部1Aが互いに等しい外径で、その間の胴部1Bよりも小径とされた該軸線Oを中心とする多段の外形円筒状をなしており、その内周部にホブ盤の回転軸が取り付けられて上記軸線O回りに回転方向Tに回転させられつつ歯切り加工を行う。
【0015】
ホブ本体1の両端部1Aよりも大径となる胴部1Bの外周面には、この外周面から内周側に凹んで軸線Oに平行に延びる凹溝状の取付座2が該軸線O方向の全長に亙って1条だけ形成されて、胴部1Bの両端面1Cに開口している。この取付座2は、ホブ本体1の外周側を向く底面2Aと、この底面2Aに対して垂直に上記回転方向Tを向く壁面2Bとを備えており、底面2Aと壁面2Bが交差する隅角部には「コ」字状に凹んだ逃げ部2Cが形成されている。
【0016】
また、上記胴部1Bの外周部には、取付座2の周方向に隣接して該取付座2と連通する凹所3が形成されている。本参考例では、凹所3は、取付座2の回転方向T側に隣接して形成されていて、取付座2の底面2Aよりも僅かにホブ本体1の内周側に位置する底面3Aと、この底面3Aの回転方向T側に位置して外周側に延びる回転方向T後方側を向いた壁面3Bとを有しており、取付座2と同様に軸線Oに平行に延びて胴部1Bの両端面1Cに開口するように軸線O方向の全長に亙って1条だけ形成されている。さらに、凹所3の底面3Aには、軸線Oに垂直な平面上において壁面3Bに平行に延びる中心線を有するネジ孔3Cが、軸線O方向に等間隔をあけて複数(本参考例では3つ)ずつ形成されている。
【0017】
さらにまた、胴部1Bの外周面には、凹所3の上記壁面3Bの外周縁から回転方向Tに向けて、回転方向T側に向かうに従いホブ本体1の外周側に向かう傾斜面1Dが形成されている。この傾斜面1Dは、凹所3の回転方向T側に隣接する取付座2の壁面2Bに達する手前で胴部1Bの外周面に切れ上がり、チップポケットの底面を形成している。なお、ホブ本体1の内周部には、ホブ盤の回転軸に設けられたキーと嵌合するキー溝1Eが、軸線Oを挟んで上記取付座2の反対側に形成されている。
【0018】
上記取付座2にはブレード4が着脱可能に取り付けられる。従って、本参考例のホブは組立式ホブであり、1つのホブ本体1に取り付けられるブレード4も1枚だけである。このブレード4は超硬合金等の硬質材料により平板状に形成されており、この平板の厚さ方向をホブ本体1の周方向に向けて、ホブ本体1の内周側に向けられる着座面4Aを取付座2の底面2Aに密着させて当接させるとともに、回転方向T後方側に向けられる背面4Bを壁面2Bに密着させて当接させ、取付座2に着座させられる。本参考例では、上記取付座2に、ホブ本体1の胴部1Bの軸線O方向の長さと略等しい長さを有するブレード4が取り付けられる。
【0019】
こうして取付座2に着座させられたブレード4のホブ本体1径方向の幅は、ホブ本体1の胴部1B外周面から底面2Aまでの取付座2の深さよりも大きくされている。従って、ブレード4は胴部1Bの外周面から突出することになり、この突出した部分には、図3に示すようにホブ本体1の半径方向に凹凸する鋸歯状をなして軸線Oが延びる方向に延び、ワークに歯形を形成する歯切刃4Cが形成されている。従って、1つのホブ本体1に設けられる歯切刃4Cも1列だけである。なお、本参考例では、ブレード4における歯切刃4Cがなす個々の鋸歯の大きさやピッチは一定とされている。
【0020】
また、歯切刃4Cの回転方向T後方側に連なってブレード4のホブ本体1外周側に向けられる面は逃げ面4Dとされる。この逃げ面4Dには、歯切刃4Cから回転方向T後方側に向かうに従いホブ本体1の内周側に向かうように逃げ角が与えられるとともに、回転方向Tの後方側に向かうに従い軸線O方向の一端から他端(図3および図4における左端から右端)に向けて捩れるようにリードが与えられている。
【0021】
一方、歯切刃4Cに連なりブレード4のホブ本体1外周側において回転方向Tに向けられる面はすくい面4Eとされ、このすくい面4Eはブレード4が取付座2に着座させられた状態において軸線Oを含む平面上に位置するように形成されている。また、ブレード4の上記着座面4Aは、上記背面4Bに垂直に形成されている。
【0022】
さらに、ブレード4のすくい面4Eと同じく回転方向Tに向けられる面のうちホブ本体1の内周側に位置して上記凹所3に臨む部分には、被押圧面4Fが形成されている。この被押圧面4Fは、ホブ本体1の外周側(すくい面4E側)に向かうに従い該すくい面4Eに対してブレード4の厚さ方向に緩やかに凹んで上記背面4B側に向かう凹面状の傾斜平面に形成されており、すくい面4Eとは背面4B側に僅かに凹む小さな段差を介して連なっている。このような被押圧面4Fが着座面4Aから一定の幅でブレード4の全長に亙って形成されており、上述のようにブレード4を取付座2に着座させた状態で、この被押圧面4Fはホブ本体1の外周側に向かうに従い凹所3の上記壁面3Bに対して離間するように傾斜している。
【0023】
取付座2に着座させられたこのようなブレード4は、クランプネジ5によって凹所3に装着されるクサビ部材6により、上記被押圧面4Fが押圧されて取り付けられる。クランプネジ5は、その両端部に互いに逆向きに捩れた雄ネジ部5A、5Bが形成されたものであって、そのうち一方の端部に形成された雄ネジ部5Aが凹所3のネジ孔3Cにねじ込まれる。
【0024】
クサビ部材6は、回転方向Tに向けられて凹所3の壁面3Bに摺接する平面状の側面6Aと、回転方向T後方側に向けられて上記被押圧面4Fを押圧する、やはり平面状の押圧面6Bとを備えて、上記軸線O方向に延びる板状または柱状に形成されている。押圧面6Bはホブ本体1の外周側に向かうに従い側面6Aに対して離間するように傾斜していて、クサビ部材6は断面台形状をなしており、この押圧面6Bが側面6Aに対してなす傾斜角は、取付座2に着座させられたブレード4の被押圧面4Fが凹所3の壁面3Bに対してなす傾斜角と略等しくされている。
【0025】
また、クサビ部材6には、上記側面6Aと押圧面6Bとの間に、上記クランプネジ5の他方の端部に形成された雄ネジ部5Bがねじ込まれるネジ孔6Cが形成されている。このネジ孔6Cは、側面6Aを凹所3の壁面3Bに密着させたときに、軸線O方向視に見て凹所3のネジ孔3Cと同軸となるように形成されている。
【0026】
さらに、本参考例では、1つの凹所3に形成されたネジ孔3Cと同数の複数(3つ)のクサビ部材6が、該ネジ孔3Cにそれぞれねじ込まれる1つずつのクランプネジ5によって軸線O方向に並ぶように凹所3に装着されている。すなわち、取付座2に着座させられた1枚のブレード4が、これら複数のクサビ部材6によって取り付けられる。
【0027】
この凹所3に装着される複数のクサビ部材6は互いに同形同大のものであり、個々のクサビ部材6の軸線O方向の長さは、凹所3の軸線O方向の長さを装着されるクサビ部材6の数で除した長さよりも僅かに短くされていて、ネジ孔6Cは各クサビ部材6の軸線O方向中央部に、1つのクサビ部材6に1つずつ形成されている。これにより、凹所3に装着される軸線O方向に隣接したクサビ部材6同士の間には僅かな隙間があけられる。
【0028】
このようなクサビ部材6をクランプネジ5によって凹所3に装着することにより、取付座2に着座させられたブレード4は、被押圧面4Fが押圧されて着座面4Aと背面4Bが取付座2の底面2Aと壁面2Bにそれぞれ押し付けられ、取付座2に固定される。なお、本参考例では図2および図3に示すように、ホブ本体1の他方の端部1Aから胴部1Bと略等しい外径を有する円環板状のプレート7が嵌挿されて、この胴部1Bの他方の端面1Cにネジ止めされ、ブレード4はその軸線O方向他端側を向く端面をこのプレート7に当接させて軸線O方向に位置決めされる。
【0029】
このように構成されたホブでは、ホブ本体1の外周部に、ワークに歯形を形成するための鋸歯状をなす歯切刃4Cが1列だけしか設けられていないので、他の列の歯切刃との位相合わせを行う必要がなく、例えば上述のようにブレード4の端面をプレート7に当接させる程度の簡単な位置決めで、ホブ盤の制御により歯切り加工を行うことができる。このため、複数列の歯切刃間での位相合わせに要する時間や労力を削減することができて効率的であるとともに、万一の位相のずれによる加工精度の低下も防ぐことができ、高精度の歯切り加工を行うことができる。
【0030】
また、本参考例では、ホブ本体1に1つだけ形成された取付座2に、上述のような1列の歯切刃4Cが形成された1枚だけのブレード4が着脱可能に取り付けられた、組立式のホブに上記構成を適用している。このため、歯切刃4Cに摩耗や損傷が生じたようなときにはブレード4を交換すればよく、その際の新たなブレード4の位置決めも上述のような簡単な操作で済む。そして、このような組立式のホブであっても、ブレード4の位置決めが容易であるので、特許文献1に記載されたホブの調整ネジのような調整機構を必要とすることもなく、構造の簡略化を図ることができる。
【0031】
なお、本参考例では、円筒状のホブ本体1の内周部にホブ盤の回転軸が取り付けられるようにされているが、例えば上記中心軸線Oに沿って延びる柄(シャンク)がホブ本体に形成されて、この柄が工作機械の主軸に取り付けられて回転させられることにより歯切り加工を行う柄付きのホブに本発明を適用することも可能である。
【0032】
一方、本参考例では、上述のような組立式のホブにおいて、取付座2に着座させられた1枚のブレード4が、ホブ本体1の中心軸線O方向に並んだ複数(本参考例では3つ)のクサビ部材6によって押圧されて取り付けられているので、1枚のブレード4の被押圧面4Fとこれらのクサビ部材6の押圧面6Bとの接触面積を大きく確保することができるとともに、中心軸線O方向に延びる板状のブレード4を、同じく中心軸線O方向の複数の箇所で押圧して取り付けることができる。このため、ブレード4を安定してホブ本体1に取り付けることが可能となって、歯切り加工時にブレード4にがたつきが生じたりするのを防ぐことができ、高い加工精度を得ることができる。
【0033】
また、本参考例では、こうして1枚のブレード4を押圧する複数のクサビ部材6のそれぞれが中心軸線O方向に延びる板状あるいは柱状に形成されており、ブレード4は略その全長に亙って複数のクサビ部材6によって押圧される。このため、ブレード4とクサビ部材6との接触面積を一層大きく確保することができ、さらにブレード4を安定的にホブ本体1に取り付けて加工精度の向上を図ることができる。
【0034】
さらに、ブレード4の被押圧面4Fは、ホブ本体1の外周側に向かうに従い周方向に向けられたブレード4の厚さ方向に凹む凹面状に形成されており、この被押圧面4Fをクサビ部材6の押圧面6Bが密着して押圧することにより、ブレード4をホブ本体1の外周側に抜け止めして取り付けることができる。このため、歯切り加工の際にホブ本体1を高速で回転させた場合でもブレード4にがたつきが生じるのを防ぐことができ、一層安定してブレード4を保持して高能率の歯切り加工を行うことが可能となる。
【0035】
なお、本参考例では、ワークに歯形を形成(創成)する歯切刃4Cは1列だけであるが、例えば歯切刃4Cによって形成された歯形の歯丈方向の突端を面取りする面取り刃が歯切刃4Cとは異なる位置に設けられていてもよい。また、本参考例では、個々のブレード4において歯切刃4Cがなす鋸歯のピッチを一定としているが、例えば所定位置の歯を欠いた欠け歯状の切刃を有するブレードを用いてもよい。
【0036】
そして、このような参考例を踏まえて、本発明の実施形態では、特許文献1に記載されたような複数の取付座2(溝)を備えたホブ本体1の1つの取付座2だけにブレード4を取り付けて本実施形態のホブを構成している。さらに、この実施形態では、ホブの回転バランスを取るために、歯切刃4Cとは軸線Oを挟んで反対側に歯切りを行わないバランス刃が設けられている。なお、1列の歯切刃4Cは、ホブ本体1の軸線Oが延びる方向に延びていればよく、例えば軸線O回りに捩れていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 ホブ本体
2 取付座
3 凹所
4 ブレード
4C 歯切刃
4F 被押圧面
5 クランプネジ
6 クサビ部材
6B 押圧面
O ホブ本体1の軸線
T 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5