(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係る定着装置60及び画像形成装置10を図面に基づき説明する。
【0013】
(画像形成装置10の構成)
まず、画像形成装置10の構成を説明する。
図1は、画像形成装置10の構成を示す概略図である。
【0014】
画像形成装置10は、
図1に示されるように、各構成部品が内部に収容される装置本体11を備えている。装置本体11の内部には、記録媒体としてのシート部材Pが収容される収容部12と、収容部12に収容されたシート部材Pを搬送する搬送部16と、搬送されるシート部材Pにトナー画像を形成する画像形成部14と、画像形成部14によってシート部材Pに形成されたトナー画像をシート部材Pに定着させる定着部18と、画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20と、が設けられている。また、装置本体11の上部には、定着部18によって画像が定着されたシート部材Pが排出される排出部22が設けられている。
【0015】
画像形成部14は、画像を保持する像保持体の一例としての感光体ドラム24を有している。感光体ドラム24は、一方向(例えば、
図1における反時計回り方向)へ回転するようになっている。感光体ドラム24の周囲には、感光体ドラム24の回転方向上流側から順に、感光体ドラム24を帯電させる帯電装置の一例としての帯電ロール26と、帯電ロール26によって帯電した感光体ドラム24を露光して感光体ドラム24に静電潜像を形成する露光装置30と、露光装置30によって感光体ドラム24に形成された静電潜像を現像して黒色のトナー画像を形成する現像装置32と、現像装置32によって感光体ドラム24に形成された黒色のトナー画像をシート部材Pに転写する転写部材の一例としての転写ロール34と、が配置されている。
【0016】
転写ロール34は、感光体ドラム24に対向しており、感光体ドラム24とでシート部材Pを挟んで回転することで、シート部材Pを上方へ搬送するようになっている。転写ロール34と感光体ドラム24との間が、感光体ドラム24に形成されたトナー画像がシート部材Pに転写される転写位置Tとされている。
【0017】
また、露光装置30の上方には、トナーが収容されているトナー収容容器としてのトナーカートリッジ38が配置されている。さらに、このトナーカートリッジ38に収容されたトナーを現像装置32に向けて搬送するための図示しない搬送管が、画像形成部14に備えられている。
【0018】
収容部12は、画像形成部14の下方に配置されている。そして、収容部12は、上下方向に並べられると共にシート部材Pが積載される積載部材12A、12B、12Cを備えている。
【0019】
搬送部16は、収容部12及び画像形成部14の側方に配置されている。そして、搬送部16は、それぞれの積載部材12A、12B、12Cに積載された最上位のシート部材Pを送り出す送出ロール46と、送出ロール46によって送り出されたシート部材Pをシート部材Pの搬送路48に沿って搬送する複数の搬送ロール50と、を備えている。
【0020】
定着部18は、画像形成部14の上方に配置されている。そして、定着部18は、定着装置60を備えている。この定着装置60は、図示しないモータから回転力が伝達されることで回転しながらシート部材Pに転写されたトナー画像を加熱する第1回転体の一例としての加熱ロール62と、加熱ロール62と接触して加熱ロール62と共に回転(周回)することで加熱ロール62との間でシート部材Pを挟みながら搬送する第2回転体の一例としての加圧ベルト64と、を備えている。なお、定着装置60については、詳細を後述する。
この定着部18の上方側(搬送方向下流側)には、トナー画像が定着されたシート部材Pを定着部18へ排出する排出ロール52が設けられている。
【0021】
また、片面にトナー画像が定着されたシート部材Pを反転させて、再び転写位置Tへ送り戻すための反転搬送路56が、転写ロール34に対する感光体ドラム24とは反対側(
図1における右側)に設けられている。シート部材Pの両面に画像を形成する際には、片面にトナー画像が定着されたシート部材Pが、排出ロール52によりスイッチバックされて反転搬送路56に導かれて転写位置Tへ送り戻されるようになっている。
【0022】
次に、画像形成装置10を用いてシート部材Pへ画像を形成する画像形成動作について説明する。
【0023】
画像形成装置10では、いずれかの積載部材12A、12B、12Cから送出ロール46によって送り出されたシート部材Pが、複数の搬送ロール50によって転写位置Tへ送り込まれる。
【0024】
一方、画像形成部14では、感光体ドラム24が帯電ロール26によって帯電された後、露光装置30によって露光されて、感光体ドラム24に静電潜像が形成される。当該静電潜像が現像装置32によって現像されて感光体ドラム24に黒色のトナー画像が形成される。この黒色のトナー画像は、転写ロール34により転写位置Tにてシート部材Pへ転写される。
【0025】
トナー画像が転写されたシート部材Pは、定着装置60へ搬送され、当該トナー画像が定着装置60により定着される。シート部材Pの片面へのみ画像を形成する場合は、トナー画像が定着された後、シート部材Pは排出ロール52により排出部22へ排出される。
【0026】
シート部材Pの両面へ画像を形成する場合には、片面に画像が形成された後、シート部材Pは、排出ロール52でスイッチバックされ、反転して反転搬送路56へ送り込まれる。さらに、シート部材Pは、反転搬送路56から再び転写位置Tへ送り込まれ、画像が記録されていない反対面に、前述と同様に画像が形成され、排出ロール52により定着部18へ排出される。以上のように、一連の画像形成動作が行われる。
【0027】
次に、定着装置60について説明する。
本実施形態の定着装置60は、前述した加熱ロール62と、加圧ベルト64とを備えている。
【0028】
図2に示されるように、加熱ロール62は、円筒状のロール部材であり、円筒状の基体62Aと、基体62Aの外周を被覆する弾性層62Bと、を備えている。また、加熱ロール62の内部空間には、加熱ロール62を加熱するハロゲンランプ等の加熱源66が設けられている。
【0029】
基体62Aは、薄肉の円筒体とされている。また、基体62Aは、熱伝導率が高い材料で形成されている。具体的には、基体62Aは、例えば、鉄、ニッケル、ニッケル鋼、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料によって形成されている。
【0030】
弾性層62Bは、基体62Aの軸方向中間部を被覆している。すなわち、基体62Aの軸方向両端部は弾性層62Bで被覆されず露出している。また、弾性層62Bは、耐熱性を有する弾性体で形成されている。具体的には、弾性層62Bは、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料によって形成されている。
【0031】
図2に示されるように、加熱ロール62は、弾性層62Bと加圧ベルト64とでシート部材Pを挟んでトナー画像を定着するようになっている。なお、弾性層62Bの外周面には、シート部材Pを剥離しやすくするための離型層(図示省略)が形成されている。
【0032】
また、加熱ロール62は、定着装置60の図示しない筐体に設けられた軸受部によって回転可能に支持され、筐体に取り付けられる図示しない駆動装置(例えば、モータ)から駆動力(回転力)が伝達されることで回転するようになっている。なお、筐体は、装置本体11に対して着脱可能とされている。
【0033】
図2に示されるように、加圧ベルト64は、加熱ロール62に従動して回転する無端状の帯体とされている。この加圧ベルト64は、具体的には、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のポリマーやSUS、ニッケル、銅等の金属により形成されている。なお、加圧ベルト64の外周面には、シート部材Pを剥離しやすくするための離型層(図示省略)が形成されている。
【0034】
加圧ベルト64の内側には、ベルト支持部材70が配置されている。このベルト支持部材70によって加圧ベルト64は内側から支持されている。ベルト支持部材70は、定着装置60の上記筐体に取り付けられている。
【0035】
ベルト支持部材70は、
図2に示されるように、加圧ベルト64の内面64Aに接して加圧ベルト64を加熱ロール62へ押圧する押圧部材72と、押圧部材72に対して加圧ベルト64の回転方向上流側及び回転方向下流側に設けられるベルトガイド部材74と、押圧部材72を保持する保持部材としてのホルダ76と、ホルダ76を支持する支持部材78と、を備えている。なお、本実施形態の押圧部材72は、本発明の押圧部材の一例である。
【0036】
押圧部材72は、弾性体を直方体状に形成したものであり(
図3参照)、加圧ベルト64の回転軸方向が長手方向となるようにホルダ76によって保持されている。この押圧部材72は、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料によって形成されている。
【0037】
図2に示されるように、押圧部材72には、加圧ベルト64の回転方向の中間部に加圧ベルト64の回転軸方向(押圧部材72の長手方向と同じ方向)に沿って薄肉部73が形成されている。この薄肉部73は、
図3に示されるように、押圧部材72の加圧ベルト64の内面64Aと接する側の第1面としての表面72Aに設けられた矩形状のスリット80(押圧部材72に形成される空隙)によって形成されている。すなわち、薄肉部73は、スリット80の底面80Aと押圧部材72の第2面としての裏面72Bの間に形成されている。このスリット80は、押圧部材72の成形に用いる成形型に設けたスリット成形部(例えば、リブ)で形成してもよいし、成形済みの押圧部材72の表面72Aをカットして形成してもよい。なお、成形型を用いて押圧部材72にスリット80を形成する場合には、スリット80を構成する側壁面に型抜きしやすいように勾配を持たせてもよい。なお、本実施形態のスリット80は、本発明のスリットの一例である。
【0038】
また、押圧部材72は、薄肉部73で曲げられて薄肉部73を挟んで両側の部分がそれぞれ加圧ベルト64を加熱ロール62へ押圧している。なお、押圧部材72の薄肉部73を挟んで両側の部分を以下では、加圧ベルト64の回転方向上流側(シート部材Pの搬送方向上流側)から順に押圧部82、押圧部83と称する。
【0039】
ホルダ76は、長尺部材であり、加圧ベルト64の回転軸方向が長手方向となるように支持部材78によって支持されている。このホルダ76の加熱ロール62側には、長手方向に沿って延びる溝状の凹部77が形成されている。この凹部77には、押圧部材72が裏面72B側から挿入されている。この凹部77の凹底面77Aは、加圧ベルト64の回転方向の中間部から両端に向かって浅くなるように傾斜している。このため、
図4に示されるように、薄肉部73で曲げられていない押圧部材72を凹部77に挿入し、
図5に示されるように、押圧部材72の裏面72Bと凹部77の凹底面77Aとを接触させて裏面72Bを凹底面77Aに沿わせると、押圧部材72が薄肉部73で曲がり、スリット80の入口(開口)側が狭くなる。
また、
図5に示されるように、押圧部材72を凹部77に挿入すると、押圧部材72の両側面72Cが凹部77の凹壁面77Bと接触し、押圧部材72が凹部77内に保持される。
【0040】
支持部材78は、
図2に示されるように、断面形状がL字となるように折り曲げられた長尺部材であり、加圧ベルト64の回転軸方向が長手方向となるように定着装置60の上記筐体に取り付けられている。この支持部材78は、屈曲部を挟んで一端部78A側でホルダ76を介して押圧部材72を加熱ロール62側に支持し、屈曲部を挟んで他端部78B側で含浸部材84を支持している。
【0041】
含浸部材84は、支持部材78の屈曲部を挟んで他端部78B側と加圧ベルト64との間に配置されて加圧ベルト64の内面64Aに接している。この含浸部材84には、潤滑油が含浸されており、加圧ベルト64の内面64Aとの接触部から内面64Aに潤滑油を供給している。この含浸部材84は、例えば、スポンジやフェルトで形成されている。
【0042】
ベルトガイド部材74は、外周面が円弧状とされた長尺部材であり、加圧ベルト64の回転軸方向が長手方向となるように定着装置60の上記筐体に取り付けられている。ベルトガイド部材74は、支持部材78を挟んで両側に設けられている。このベルトガイド部材74は、円弧状とされた外周面74Aで加圧ベルト64の内面64Aを摺動可能にガイドしている。なお、外周面74Aの一部を加圧ベルト64の回転方向に沿ったリブ状に形成してもよい。
【0043】
次に、定着装置60の作用について説明する。
【0044】
定着装置60の加熱ロール62は、図示しないモータから回転力が伝達されると、
図2に示されるように、矢印R方向に回転する。このとき、加熱ロール62の外周面に押し付けられる加圧ベルト64は、加熱ロール62に従動して矢印R方向と反対方向に回転(周回)する。トナー画像が転写されたシート部材Pが、回転する加熱ロール62と加圧ベルト64とに挟まれて加圧されながら搬送されることで、シート部材Pに転写されたトナー画像は、シート部材Pに定着される。
【0045】
ここで、本実施形態の定着装置60では、押圧部材72を薄肉部73で曲げ、薄肉部73両側の押圧部82、83がそれぞれ加圧ベルト64を加熱ロール62へ押圧するため、例えば、複数の押圧部材を用いる構成と比べて、少ない部品点数で定められたニップ幅が確保される。このようにニップ幅が確保されることで、シート部材Pに転写されたトナー画像が安定して定着される。
なお、スリット80を形成していない直方体状の押圧部材をホルダ76に保持させた場合、押圧部材の表面の屈曲部周辺に歪が生じてニップ幅が確保できない可能性があるが、押圧部材72には、スリット80が形成されているため、単一の押圧部材72でも広いニップ幅が確保される。
【0046】
また、押圧部材72の表面72Aにスリット80を形成するため、例えば、裏面72Bにスリット80を形成する構成と比べて、押圧部材72を薄肉部73で曲げたときの表面72Aに生じる歪がスリット80で効果的に吸収される。
【0047】
画像形成装置10は、定着装置60を備えるため、例えば、定着装置60を備えない構成と比べて、コスト上昇が抑制される。
【0048】
前述の実施形態では、押圧部材72の押圧部82と押圧部83によって加圧ベルト64を押圧する押圧力について特に規定していないが、シート部材Pの搬送方向下流側に位置する押圧部83の押圧力を押圧部82の押圧力よりも大きくする構成としてもよい。この場合には、シート部材Pに転写されたトナー像の定着性が向上される。
【0049】
また、前述の実施形態では、押圧部材72に矩形状のスリット80を設ける構成としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、
図6に示される第1変形例の押圧部材90のように、表面90Aに底面92Aが円弧状に湾曲するスリット92を形成する構成としてもよい。この場合には、押圧部材90を薄肉部94で曲げたときに底面92Aの局所的な部位(例えば、角部)に応力集中が生じるのが抑制される。なお、スリットの形状は、V字形状や半円状であってもよい。その場合、スリットの底面とはV字形状、半円状である。
【0050】
さらに、前述の実施形態では、押圧部材72の表面72Aにスリット80を形成する構成としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、
図7に示される第2変形例の押圧部材96のように、第1変形例のスリット92に加え、裏面90Bのスリット92と反対側の位置に底面98Aが円弧状に湾曲するスリット98を形成してもよい。この場合には、
図8に示されるように、薄肉部100で押圧部材96がより曲がりやすくかつ、表面96Aに生じる歪みがスリット92で吸収される。
なお、押圧部材96の裏面96Bにのみスリット98を設ける構成としてもよい。
【0051】
またさらに、前述の実施形態では、押圧部材72の表面72Aにスリット80を一本形成する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、スリット80を複数本形成してもよい。
【0052】
また、前述の実施形態では、加熱ロール62を、基体62Aと弾性層62Bとを備える構成としているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、加熱ロール62を基体62Aで構成し、この基体62Aと加圧ベルト64とでシート部材Pを挟んでトナー画像を定着させてもよい。この場合には、シート部材Pを剥離しやすくするための離型層(図示省略)を基体62Aの外周面に形成する。
【0053】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。