(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
<太陽電池モジュールの基本構成>
先ず、太陽電池モジュール用の裏面保護シートが使用される太陽電池モジュールの構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態である太陽電池モジュ−ル1について、その層構成の一例を例示する断面の模式図である。
図1に示すように、太陽電池モジュール1は、受光面側から、透明前面基板2、前面封止材層3、太陽電池素子4、背面封止材層5、裏面保護シート6が順に積層された構成となっている。本発明の実施形態である裏面保護シート6は、このように太陽電池モジュール1において最外層に配置されるものであるため、高い耐候性やバリア性を備えることが必須となっている。
【0019】
透明前面基板2は、一般にガラス製の基板であり、太陽電池モジュール1の耐候性、耐衝撃性、耐久性を維持しつつ、且つ、太陽光線を高い透過率で透過させるものであればよい。前面封止材層3、背面封止材層5からなる封止材層は、太陽電池モジュール1内において、太陽電池素子4の位置を固定し、また外部からの衝撃を緩和するために配置される樹脂基材等からなる層である。封止材層を形成する樹脂基材としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、アイオノマー、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。中でも、一定の耐久性等を備え、加工性に優れ、比較的安価で入手可能なEVAが広く用いられてきたが、近年においては、EVAの欠点である水蒸気バリア性の低下という問題を解決するため、低密度ポリエチレンに架橋処理を施した樹脂等、ポリオレフィン系の樹脂も多く用いられるようになっている。
【0020】
<裏面保護シート>
本実施形態の太陽電池モジュール用の裏面保護シートの一例である裏面保護シート6について、
図2を用いて説明する。
【0021】
図2に示す通り、裏面保護シート6は、一方の最外層を形成する第一樹脂シート61、アルミ箔62、及び第一樹脂シート61と反対側の最外層を形成する第二樹脂シート63が順次積層されてなり、第一樹脂シート61とアルミ箔62は、接着剤層(第一接着剤層64a)を介して密着しており、アルミ箔62と第二樹脂シート63は、接着剤層(第二接着剤層64b)を介して密着している。アルミ箔が積層されることで、高い水蒸気バリア性等のガスバリア性を有する裏面保護シートとすることができる。なお、本明細書では、樹脂をシート状に加工したものの名称として樹脂シートという用語を使用するが、この用語は、樹脂フィルムも含む概念として使用される。
【0022】
ここで第一樹脂シート61は、
図1に示す太陽電池モジュール1としての一体化時に、背面封止材層5と直接接触する態様で積層される層となることが想定されている樹脂シートである。一方、第二樹脂シート63は、太陽電池モジュール1の最外層側に配置される層となることが想定されている樹脂シートである。よって、太陽電池モジュールとしての一体化時には、裏面保護シート6は第二樹脂シート63が最外層に配置されることとなるように積層されることが好ましい。但し、裏面保護シート6における第一樹脂シート61と第二樹脂シート63との区別は、単に一方の面と他方の面とを規定する相対的な概念であるので、以下に詳細を説明する本発明の構成要件を充足する限り、両最外層に配置される2つの樹脂シートが、それぞれ異なる物性を有する樹脂シートであることは本発明において必須ではない。
【0023】
裏面保護シート6における第一接着剤層64a及び第二接着剤層64bは、下記のDMA評価方法により測定した110℃以上150℃以下の範囲での損失弾性率の最小値が100Pa超であることを特徴とする。そのような接着剤層を形成する接着剤について以下説明する。
【0024】
DMA評価方法:測定周波数:1Hz、昇温速度3℃/分で−20℃から昇温して110℃以上150℃以下の損失弾性率を測定する。
【0025】
[接着剤]
第一接着剤層64a及び第二接着剤層64bを形成するための接着剤は、DMA評価方法により測定した110℃以上150℃以下の範囲での損失弾性率の最小値が100Pa超である。ここで、DMA試験とは、動的粘弾性測定装置により動的粘弾性を測定する試験であり、接着剤層に対して微小な変形を周期的に与えることで層の粘度及び弾性率を測定する評価方法である。本発明では、接着剤層の損失弾性率をDMA試験により測定する。具体的には、測定周波数1Hz、昇温速度3℃/分で−20℃から昇温して各温度における損失弾性率を測定する。そして、110℃以上150℃以下の範囲の損失弾性率の最小値が100Pa超である場合には、接着剤層は溶融せずにその形状を維持することができる。110℃以上150℃以下の範囲の損失弾性率の最小値が100Pa以下である場合には、接着剤層は110℃以上150℃以下の範囲で溶融することとなり、本発明の課題であるシワ発生を抑制することができない。110℃以上150℃以下の範囲での損失弾性率の最小値が100Pa超となる接着剤層を積層することにより、熱ラミネートにおける接着剤層の体積の変動率を軽減することができる。そのため、裏面保護シートのシワの発生を抑制することができる。
【0026】
このような接着剤層を形成することのできる接着剤としては、例えば主剤樹脂、硬化剤及び溶剤を含み、必要に応じてその他の各種の添加剤を含む接着剤を挙げることができる。その他の添加剤としては、密着性助剤等を例として挙げることができる。接着剤は、主剤樹脂と硬化剤を使用直前に混合する2液タイプのものであることが好ましい。主剤樹脂は、接着剤層を形成する際に、硬化剤と反応して架橋され高分子量化する。以下に本発明の接着剤層を形成することのできる接着剤の一例を説明する。本発明の接着剤層を形成することのできる接着剤は以下の接着剤に限定されるものではない。
【0027】
[主剤樹脂]
上記接着剤の主剤成分は、例えば、ポリウレタンジオール(A)と脂肪族ポリカーボネートジオール(B)との混合物を含むものを用いることができる。主剤を構成するポリウレタンジオール(A)及び脂肪族ポリカーボネートジオール(B)は、ともに水酸基を有するポリオールであり、イソシアネート基を有する硬化剤と反応して、接着剤層を構成するものである。主剤を特定のポリウレタンジオール(A)と脂肪族ポリカーボネートジオール(B)を所定量配合した混合物とすることによって、接着剤層の接着性及び耐候性を向上させることができる。
【0028】
主剤成分のポリウレタンジオール(A)は、ウレタン構造をその繰り返し単位とし、その両末端に水酸基を有するポリウレタンである。ポリウレタンジオール(A)の数平均分子量は、7000以上13000以下であることが好ましい。7000以上であると、硬化剤との反応性が良いため好ましく、13000以下であると溶剤への溶解が向上するためで好ましい。
【0029】
ポリウレタンジオール(A)の水酸基価は、10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下の範囲であることが好ましい。ポリウレタンジオール(A)の水酸基価が10mgKOH/g以上であると、添加された硬化剤成分の多くが主剤成分に含まれる水酸基と反応することとなり好ましく、50mgKOH/g以下であると硬化剤との反応がより進行するため好ましい。
【0030】
ポリウレタンジオール(A)は、接着剤の主剤成分として、その接着性及び耐候性を向上させるため、脂肪族ポリカーボネートジオール(C)と、1,6へキサンジオール(D)とイソホロンジイソシアネート(E)を反応させて得ることができる。以下、ポリウレタンジオール(A)の構成成分である脂肪族ポリカーボネートジオール(C)、1,6へキサンジオール(D)及びイソホロンジイソシアネート(E)について説明する。
【0031】
脂肪族ポリカーボネートジオール(C)は、下記のイソホロンジイソシアネート(E)と反応することができるポリウレタンジオール(A)の構成成分である。脂肪族ポリカーボネートジオール(C)は、カーボネート構造を繰り返し単位とし、その両末端に水酸基を有するものである。その両末端の水酸基は、イソシアネート基と硬化反応することができる。
【0032】
脂肪族ポリカーボネートジオール(C)は、アルキレンカーボネートとジオールを原料に用いて製造する方法、ジアルキルカーボネートやジアリールカーボネートとジオールを用いて製造する方法等を用いて製造することができる。脂肪族ポリカーボネートジオール(C)は、主剤成分に必要とされる性能に応じて、上記製造方法を適宜選択することにより製造することができる。
【0033】
脂肪族ポリカーボネートジオール(C)の製造に使用できるアルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート等が挙げられる。また、ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等が、ジアリールカーボネートとしては、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0034】
ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール等の側鎖を持たないジオール、2−メチル−1,8オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール等の側鎖を持ったジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール等の環状ジオールを挙げることができる。なお、1種類のジオールを使用しても良いし、2種類以上のジオールを原料とした共重合ポリカーボネートジオールでもよい。
【0035】
脂肪族ポリカーボネートジオール(C)の数平均分子量は、1000〜2000であることが好ましい。1000以上であると、ジイソシネートとの硬化反応が起こり易いため好ましく、2000以下であると接着剤成分である溶剤への溶解性が向上するため好ましい。ポリカーボネートジオール(C)の製造においては、モノマーの反応性が高く、高分子量化し易いため、所定の数平均分子量を有するポリカーボネートジオールを得るためには、反応速度等の制御が必要となる。
【0036】
脂肪族ポリカーボネートジオール(C)は、市販のものを使用することもできる。耐久性、耐候性、耐熱性、耐加水分解性に優れた接着剤を得るため、例えば、数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」)、数平均分子量2000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5662」を好適に使用することができる。
【0037】
1,6へキサンジオール(D)は、脂肪族ジオールであり、下記イソホロンジイソシアネート(E)と反応してポリウレタンジオール(A)を形成することができる。1,6へキサンジオール(D)は、常温で液状を示すもので、接着剤成分である溶剤に溶解し得るものである。
【0038】
イソホロンジイソシアネート(E)は、ポリウレタンジオール(A)の構成成分であり、脂環族系ポリイソシアネートである。イソホロンジイソシアネート(E)は、上記脂肪族ポリカーボネートジオール(C)、1,6へキサンジオール(D)の水酸基と反応し、主剤成分であるポリウレタンジオール(A)を形成する。
【0039】
以上説明した脂肪族ポリカーボネートジオール(C)と、1,6へキサンジオール(D)とイソホロンジイソシアネート(E)を溶剤に溶解させ、混合し加熱還流することにより反応させて、主剤成分であるポリウレタンジオール(A)の溶液を得ることができる。上記反応においては、脂肪族ポリカーボネートジオール(C)と1,6へキサンジオール(D)のそれぞれが有する両末端の水酸基がイソホロンジイソシアネート(E)のイソシアネート基と反応し、ウレタン結合を形成して硬化する。
【0040】
主剤成分であるポリウレタンジオール(A)を製造する反応系における1,6へキサンジオール(D)の配合量は、脂肪族ポリカーボネートジオール(C)100質量部に対し、5質量部以上15質量部以下、好ましくは2質量部以上8質量部以下であることが好ましい。1,6へキサンジオール(D)の配合量が5質量部以上であると、耐久性のある接着剤成分を得ることができるため好ましく、15質量部以下であると溶剤への溶解性が向上するため好ましい。
【0041】
なお、脂肪族ポリカーボネートジオール(C)と、1,6へキサンジオール(D)とイソホロンジイソシアネート(E)を反応させる場合に使用することができる溶剤としては、これらの化合物を溶解させることができ、溶剤と反応しないものであれば、特に制限されるものではないが、相溶性とラミネート時の加工性の観点から酢酸エチル等のカルボン酸エステル系の溶剤を挙げることができる。
【0042】
主剤成分である脂肪族ポリカーボネートジオール(B)は、イソシアネート基を有する硬化剤成分と反応する。脂肪族ポリカーボネートジオール(B)は、ポリウレタンジオール(A)を製造する際に使用した上記の脂肪族ポリカーボネートジオール(C)と同一のものを使用することができる。
【0043】
主剤成分は、上記説明したポリウレタンジオール(A)と脂肪族ポリカーボネートジオール(B)との混合物である。混合物中におけるポリウレタンジオール(A)と脂肪族ポリカーボネートジオール(B)の質量比率は、ポリウレタンジオール(A)100質量部に対して、脂肪族ポリカーボネートジオール(B)10から20質量部であることが好ましい。脂肪族ポリカーボネートジオール(B)の量が10質量部以上であると、適度な密着力を得ることができるため好ましく、20質量部以下であると、硬化剤との反応が起こりやすくなるため好ましい。
【0044】
なお、主剤には、主剤成分であるポリウレタンジオール(A)、脂肪族ポリカーボネートジオール(B)の他に、必要に応じて、粘着付与剤、安定化剤、充填剤、可塑剤、軟化点向上剤、触媒等を添加剤として混合することができる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。安定化剤としては、酸化防止剤、紫外線防止剤等が挙げられる。充填剤としては、無機フィラー等が挙げられる。
【0045】
[硬化剤]
上記接着剤の硬化剤は、例えばポリイソシアネート化合物を主成分とするものを用いることができる。ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物であり、このイソシアネート基が上記主剤のポリウレタンジオール化合物中の水酸基と反応することにより、ポリウレタンジオール化合物を架橋する。このようなポリイソシアネート化合物としては、上記主剤のポリウレタンジオール化合物を架橋することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」)、ヘキサメチレンジイソシアネート系2官能ポリウレタンジイソシアネート(G)、イソシアヌレート変性のイソホロンジイソシアネート(F)(以下、「ヌレート変性IPDI」)等を例示することができる。これらのポリイソシアネート化合物の中でも、HDIとヌレート変性IPDIとを組み合わせた混合物が水酸基に対する反応性を向上させる観点より好ましい。なお、硬化剤をHDIとヌレート変性IPDIとの混合物とする場合、HDIとヌレート変性IPDIは、70:30〜50:50(質量比)の範囲で使用することが好ましい。
【0046】
[溶剤]
上記接着剤成分である主剤及び硬化剤には、良好な塗布性及びハンドリング適正を得るために、溶剤成分を添加することが好ましい。このような溶剤成分としては、上記酢酸エチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等のカルボン酸エステルを挙げることができるがこれに限定されない。なお、既に述べたように上記接着剤は、主剤と硬化剤の2液剤として構成されるが、主剤で使用される溶剤成分と硬化剤で使用される溶剤成分はそれぞれ独立に選択され、同一でも異なっていてもよい。
【0047】
[シランカップリング剤等の添加剤]
ラミネート接着剤成分には、主剤、硬化剤及び溶剤の他、必要に応じてシランカップリング剤、粘着付与剤、安定化剤、充填剤、可塑剤、軟化点向上剤、触媒等を添加剤として混合することができる。シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシラン、メチルトリエトキシシラン等のシランモノマー、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン、3−メタクリロキシプロピルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメトキシシラン等のメタクリルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシランを挙げることができる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。安定化剤としては、酸化防止剤、紫外線防止剤等が挙げられる。充填剤としては、無機フィラー等が挙げられる。
【0048】
なお、上記シランカップリング剤の添加量は、接着剤の主剤と硬化剤との合計100質量部に対し、1から3質量%のシランカップリング剤であることが好ましい、シランカップリング剤の添加量が1質量%以上であると密着力が良好となるため好ましく、3質量%以下であると耐久性に優れるため好ましい。
【0049】
[主剤と硬化剤の配合]
接着剤成分は、主剤と硬化剤を主成分とするものであるが、主剤と硬化剤の配合比率は、(ポリイソシアネート化合物由来のイソシアネート基)/(ポリウレタンジオール化合物由来の水酸基)の比が1.0以上3.5以下の範囲であることが好ましく、更に、1.2以上3.0以下の範囲にあることが好ましい。主剤成分のポリウレタンジオール化合物と硬化剤成分のポリイソシアネート化合物との配合比率が上記範囲にあることにより、各基材を強固に接合することができる接着剤を得ることができるため好ましい。
【0050】
(接着剤層の形成)
本実施態様において、主剤と硬化剤からなる2液タイプの接着剤は接合する基材の表面に塗布され、続いて塗布された接着剤から溶剤成分が蒸発することによって、基材の表面に接着剤層を形成させることができる。この接着剤膜は、被接合基材の表面と接合された状態で硬化し、接着剤層となる。基材の表面に接着剤を塗布する方法は、特に制限されるものではないが、グラビアコーター法、ロールコータ法、はけ塗り法等を挙げることができる。なお、そのコーティング量としては、2.0g/m
2以上10.0g/m
2以下(乾燥状態)が望ましい。
【0051】
接着剤層の厚さは、2.0μm以上10.0μm以下であることが好ましく3.0μm以上7.0μm以下であることが更に好ましい。接着剤層の厚さを2.0μm以上10.0μm以下とすることで、層間の密着性、耐久性及び印刷適性を向上させることができる。
【0052】
接着剤層の内部において、接着剤の主剤成分であるポリウレタンジオールに含まれる水酸基成分と、硬化剤成分であるポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基とが反応して、ウレタン結合を形成する硬化反応が進行する。この反応によって、主剤成分は硬化剤成分によって架橋され、高分子量化する。主剤成分であるポリウレタンジオールが十分に架橋されると、接着剤膜は硬化し、接着剤層となる。
【0053】
接着剤には主剤樹脂としてポリウレタンジオール(A)とポリカーボネートジオール(B)が含まれる。そのため、該接着剤により形成される接着剤層にはポリカーボネート樹脂と、ポリウレタン樹脂が含まれる。接着剤層にポリカーボネート樹脂と、ポリウレタン樹脂が含まれることで、接着剤層の接着性及び接着剤層が積層された裏面保護シートの耐候性を向上させることができる。
【0054】
本実施形態に用いられる接着剤層は、DMA評価方法により測定した110℃以上150℃以下の範囲での損失弾性率の最小値が100Pa超であることを特徴とする。熱ラミネートは通常110℃から150℃程度の温度により行われるため、110℃以上150℃以下の範囲での損失弾性率の最小値が100Pa以下である場合には、ラミネート時に接着剤層の体積の変動率が増大する。そのため、110℃以上150℃以下の範囲での損失弾性率の最小値が100Pa超の接着剤層とすることで、接着剤層の体積の変動率を軽減することができる。よって、110℃以上150℃以下の範囲での損失弾性率の最小値が100Pa以下である接着剤層を積層した裏面保護シートであれは、シワの発生を抑制することができる。
【0055】
110℃以上150℃以下の範囲での損失弾性率の最小値が100Pa以下となる接着剤層としては、例えばウレタン樹脂として、ポリカーボネートジオール(B)とポリエステルジオールを加熱還流させることで製造されたポリウレタン樹脂が含まれた接着剤層や、芳香族エーテルに由来する分子鎖が組み込まれた樹脂が含まれた接着剤層(例えば、三井化学製タケラック(主剤成分)とタケネート(硬化剤成分)からなる接着剤により形成された接着剤層)を挙げることができる。ポリエステルジオールや芳香族エーテルに由来する分子鎖が接着層の樹脂の一部に組み込まれることで、接着層の樹脂が溶融しやすくなると思われる。そのため、本実施形態に用いられる接着剤層に含まれる樹脂は、ポリエステルジオール又は芳香族エーテルに由来する分子鎖が含まれていないことが好ましい。
【0056】
<アルミ箔>
本実施形態の裏面保護シートには、アルミ箔が積層されている構成を含む。アルミ箔が積層されることで高い水蒸気バリア性等のガスバリア性を有する裏面保護シートとすることができる。
【0057】
アルミ箔62の膜厚は60μm以下とし、15μm以上55μm以下とすることが好ましい。アルミ箔の膜厚を15μm以上とすることで、ピンホール等の発生を防いでガスバリア性の高い裏面保護シートとすることができる。また、同時に熱ラミネート時のシワの発生も抑制することができる。アルミ箔の膜厚を60μm以下とすることで低コストで加工適正が高く、重量を抑えた裏面保護シートとすることができる。
【0058】
第一樹脂シート61及び第二樹脂シート63とアルミ箔62との接着力を確保するために、アルミ箔62には活性化表面処理を行うことが好ましい。この処理は、例えば、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等の周知の方法によって行うことができる。
【0059】
<第一樹脂シート>
第一樹脂シート61は、裏面保護シート6が太陽電池モジュール1に使用された際に、太陽電池モジュール1において背面封止材シート5と接する面となる。そのため、第一樹脂シート61は、電気絶縁性に加え、背面封止材シート5との間の接着性に優れたものを使用することが好ましい。
【0060】
このような樹脂シートとしては、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂シートを用いることができる。その中でもポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることが好ましい。ポリエチレンテレフタレート樹脂は融点が260度程度と高い。そのため、樹脂シートのシワの発生を抑制することができる。また、上記接着性を重視する観点からは、例えば、その他の層により紫外線を遮断できる層構成とすることより、背面封止材シート5との特に高い接着性を有する変性ポリフェニレンエーテルを主成分とする樹脂シートを好適に使用することもできる。
【0061】
第一樹脂シート層の膜厚は、45μm以上85μm以下とし50μm以上70μm以下とすることが好ましい。第一樹脂シート層の膜厚を45μm以上とすることにより、熱ラミネート時における裏面保護シートのシワの発生を抑制することができる。また、裏面保護シートの絶縁性を担保できるようになる。第一樹脂シート層の膜厚を85μm以下とすることにより、太陽電池モジュールの放熱性が向上し、熱の発生に起因する太陽電池セルの変換効率の低下を防止することができる。
【0062】
<第二樹脂シート>
第二樹脂シート63は、裏面保護シート6が太陽電池モジュール1に使用された際に、太陽電池モジュール1の裏面側の表面に位置する面となる。そのため、第二樹脂シート63は、耐候性、耐熱性、耐光性等に優れたものを使用することが好ましい。
【0063】
このような樹脂シートとしては、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニル・エステル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(四フッ化エチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等のフッ素系樹脂、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン等をモノマーとする環状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・スチレン共重合体、プロピレン・スチレン共重合体、ポリ1,4−シクロペンタジエン、ポリ1,5−ヘキサジエン等のポリオレフィン系樹脂、アルキレンカーボネートとジオールを原料とするポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリレート等のポリ(メタ)アクリル系樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)等のポリエステル系樹脂等の樹脂シートが好ましく例示される。また、これらの樹脂に白色顔料を含むものを用いてもよい。ここで、本実施形態では第二樹脂シート63は、太陽電池モジュール1における最外層に配置されるため、高い耐候性、バリア性、耐加水分解性が求められる。そのような観点から以上のうちでも、耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることが特に好ましい。耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートとしては、例えば、東洋紡社製シャインビーム(耐加水分解性ポリエステルフィルム)等が挙げられる。
【0064】
第二樹脂シート層の膜厚は、25μm以上85μm以下とし35μm以上55μm以下とすることが好ましい。第二樹脂シート層の膜厚を25μm以上とすることにより、熱ラミネート時における裏面保護シートのシワの発生を抑制することができる。また、裏面保護シートの耐候性を担保できるようになる。第二樹脂シート層の膜厚を85μm以下とすることにより、太陽電池モジュールの放熱性が向上し、熱の発生に起因する太陽電池セルの変換効率の低下を防止することができる。
【0065】
<裏面保護シートの製造方法>
裏面保護シートは、例えば裏面保護シート6の外層となる樹脂シートと中間層となるアルミ箔62をドライラミネート加工によって積層し密着させることにより製造することができる。ここで使用されるドライラミネート加工の方法は、従来公知の方法を使用することができる。
【0066】
[その他]
なお、本実施形態の裏面保護シートは、例えば、放熱性をより向上させる目的で放熱シートを接着してもよい。このような放熱シート付の裏面保護シートも本発明の範囲である。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例等に限定されるものではない。
【0068】
本実施形態に係る太陽電池用の裏面保護シートのシワの発生のしやすさ、放熱性、耐候性、絶縁性を評価するために、以下に示す方法で接着剤を製造し、該接着剤を用いた裏面保護シートサンプルを作成した。
【0069】
<接着剤1>
[主剤の製造]
1.ポリウレタンジオールの製造
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたフラスコに数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」(以下、「PDC1000」と略す。))100質量部、1、6−ヘキサンジオール(5質量部)、イソホロンジイソシアネート(27.5質量部)、酢酸エチル(132.5質量部)を加え、赤外線吸収スペクトルにて、2270cm
−1のイソシアネートの吸収が消失するまで加熱還流させ、ポリウレタンジオールA−1の50%溶液を得た。得られた樹脂の水酸基価は、14mgKOH/gであり、数平均分子量は約8000であった。
【0070】
2.脂肪族ポリカーボネートジオールの製造
主剤成分である脂肪族ポリカーボネートジオールとして、脂肪族ポリカーボネートジオールを準備した。なお、脂肪族ポリカーボネートジオールは、数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」)である。
【0071】
3.主剤の調製
上記で製造した主剤成分であるポリウレタンジオールと脂肪族ポリカーボネートジオールを使用して、主剤を調製した。主剤の調製は、ポリウレタンジオールを100質量部に対して、脂肪族ポリカーボネートジオールを15質量部配合することにより行った。
【0072】
[硬化剤の製造]
接着剤を構成する硬化剤として、硬化剤を製造した。なお、硬化剤の材料としては、イソホロンジイソシアネートのヌレート体と、ヘキサメチレンジイソシアネート系2官能ポリウレタンジイソシアネート(旭化成ケミカルズ社製「デュラネートD101」)を用いた。その配合割合(質量)は、イソホロンジイソシアネートのヌレート体:ヘキサメチレンジイソシアネート系2官能ポリウレタンジイソシアネートを40:60とした。なお、上記配合割合(質量)は、溶剤を含まない固形質量比であるが、製造に際しては固形分50%に調製をした。
【0073】
[主剤と硬化剤の配合]
上記で製造した主剤と硬化剤を使用し、接着剤を製造した。また、主剤と硬化剤の配合は、主剤、硬化剤を溶剤に溶解させて、それぞれ50質量%(酢酸エチル溶液)とし行った。主剤と硬化剤は質量比18:3.7で調整した。
【0074】
<接着剤2>
[主剤]
1.ポリエステルジオールの製造
窒素雰囲気下、攪拌機、窒素導入管を備えたフラスコに、エチレングリコール(32.3質量部)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(270.8質量部)、1,6−ヘキサンジオール(122.9質量部)、アジピン酸(228.1質量部)、イソフタル酸(664質量部)を加え、180℃から220℃にて窒素にてバブリングさせ、酸価2mgKOH/gまで反応させ、酢酸エチル(860質量部)を加え、ポリエステルジオールHの50%溶液を得た。得られた樹脂の水酸基価は、32mgKOH/gであり、数平均分子量は約3500であった。
【0075】
2.ポリウレタンジオールの製造
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたフラスコに数平均分子量1000の脂肪族ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、商品名「デュラノールT5651」以下、「PDC1000」と略す。)を100質量部、上記ポリエステルジオールH(50質量部)、1,6−ヘキサンジオール(2質量部)、イソホロンジイソシアネート(23.8質量部)、酢酸エチル(175.8質量部)を加え、赤外線吸収スペクトルにて、2270cm
−1のイソシアネートの吸収が消失するまで加熱還流させ、ポリウレタンジオールの50%溶液を得た。得られた樹脂の水酸基価は、14mgKOH/gであり、数平均分子量は約8000であった。
【0076】
3.主剤の調製
上記のポリウレタンジオール100質量部と脂肪族ポリカーボネートジオール(PDC1000)の15質量部を混合して主剤を調整した。
【0077】
[硬化剤の製造]
上記接着剤1の硬化剤と同様に製造した。
【0078】
[主剤と硬化剤の配合]
上記で製造した主剤と硬化剤を使用し、接着剤を製造した。また、主剤と硬化剤の配合は、主剤、硬化剤を溶剤に溶解させて、それぞれ50質量%(酢酸エチル溶液)とし行った。主剤と硬化剤は質量比18:3.4で調整した。
【0079】
<接着剤3>
接着剤3として、三井化学製の2液タイプ接着剤(主剤:タケラック(A−969V)硬化剤:タケネート(A−5)芳香族エーテル系接着剤)を使用し、接着剤を製造した。また、主剤と硬化剤の配合は、主剤、硬化剤を溶剤に溶解させて、それぞれ50質量%(酢酸エチル溶液)とし行った。主剤と硬化剤は質量比3:1で調整した。
【0080】
[サンプルの作成]
第一樹脂シート層を構成する樹脂フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製ルミラーS10)、アルミ箔層を構成するアルミ箔として「ニッパク#」(日本製箔株式会社製)、第二樹脂シート層を構成する樹脂フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製ルミラーS10)を用いた。第一接着剤層及び第二接着剤層を形成する接着剤としては、接着剤1〜接着剤3のいずれかを用いて、それぞれ、塗布量2.0〜10.0g/m
2(乾燥状態)でコーティングして接着剤層を形成し、上記各フィルム部材を従来公知のドライラミネート法により第一樹脂シート層/第一接着剤層/アルミ箔層/第二接着剤層/第二樹脂シート層となるように積層し、実施例及び比較例の裏面保護シートのサンプルを得た。
【0081】
(シワ発生試験)
実施例
、比較例、及び参考例の裏面保護シートのサンプルを用いて疑似モジュールを作成した。疑似モジュールは、透明前面基板としてガラスを、封止材層としてエチレン−酢酸ビニルアルコール共重合体樹脂(EVA)450μmを、裏面保護シートとして実施例
、比較例、及び参考例に係るサンプルを、透明前面基板/前面封止材層/背面封止材層/裏面保護シートの順番で積層させ、真空ラミネートにより作成し、シワ発生の有無を確認した。
尚、裏面保護シートは、段落[0022]にも記載されている通りの態様、即ち、第一樹脂シートが、背面封止材層と直接接触する態様で積層した。(真空ラミネート条件:温度150℃、真空時間5分間、プレス時間9分間)結果については、「シワ」として、下記表1、表2及び表5に示す。
【0082】
[評価基準]
◎:シワが発生しなかった。
○:シート表面に凹凸は見られたが、シワは発生しなかった。
×:シワが発生した。
【0083】
(放熱性試験)
実施例
、比較例、及び参考例の裏面保護シートのサンプルを用いて擬似モジュールを作成した。擬似モジュールについて、透明前面基板としてガラスを、封止材層としてエチレン−酢酸ビニルアルコール共重合体樹脂(EVA)450μmを、裏面保護シートとして実施例
、比較例、及び参考例に係るサンプルを、透明前面基板/前面封止材層/セル/背面封止材層/裏面保護シートの順番で積層させ、真空ラミネートにより作成した。この時、セルと背面封止材層間に熱電対を入れて、セル温度を測れる擬似モジュールを作成した。(真空ラミネート条件:温度150℃、真空時間5分間、プレス時間9分間)、この擬似モジュールを南向き角度45°に24時間設置し、セル温度を測定した。実施例1の最高温度は43.6℃であった。
その他の実施例
、比較例、及び参考例の最高温度を下記評価基準により評価した。評価結果を「放熱性」として下記表1に示す。
【0084】
[評価基準]
実施例1の最高温度(43.6℃)と比較した値である。
◎:−0.2℃以上
○:−0.2℃以上+0.2℃以下
△:+0.2℃以上+0.5℃以下
×:+0.5℃以上
【0085】
(耐候性試験)
実施例
、比較例、及び参考例の裏面保護シートについて、下記に詳細を説明する通りのMW(メタルウェザー)試験を行い、耐候性試験後の耐久密着性を評価した。
【0086】
実施例
、比較例、及び参考例の裏面保護シートについて、下記条件により、MW(メタルウェザー)試験を行い、同試験後の各裏面保護シートについて、ASTM D3359、JIS 5400に準じた接着性試験を行い、下記の評価基準で耐久接着性を評価し、結果については、「耐候性」として、下記表1に示す。
【0087】
メタルハライドランプ方式試験機 JTM G 01 2000 日本試験機工業会規格 JTM STANDARD Metalhalide Lamp type apparatus
装置名称:ダイプラ・メタルウェザー(ダイプラ・ウィンテス株式会社製)
型式:KU−R5CI−A
光源ランプ:MW−60W
フィルター:KF−1(照射範囲295nmから780nm)
照度:60±5 mW/cm2(ウシオ電機(株)製照度計使用)
試験条件:Lite(照射)63℃50%RH 20時間、Dew(結露)30℃98%RH 4時間、Rest(休止):30℃、98%RH、0.01時間、Dew前後に10sシャワー を1サイクルとして250時間試験実施。
尚、シャワーには25℃、導電率2μS/cm以下の純水を用いた。
【0088】
[評価基準]
◎:塗膜剥離率10%
○:塗膜剥離率10%以上30%未満
△:塗膜剥離率30%以上50%未満
×:塗膜剥離率50%未満
【0089】
(絶縁性試験)
実施例
、比較例、及び参考例の裏面保護シートについて、絶縁性を評価した。絶縁性についての試験は、IEC61730により、各評価用試料の部分放電電圧を測定することにより行った。測定機器としては、部分放電電圧測定器(菊水社製KPD−2050)を用いた。又、測定は油中で行い、部分放電電圧を測定し、そこからシステム電圧を試算した。結果については、「絶縁性」として、下記表1に示す。
【0090】
[評価基準]
◎:抵抗値1000Ω以上
○:抵抗値610Ω以上1000Ω未満
△:抵抗値600Ω以上610Ω未満
×:抵抗値600Ω未満
【0091】
【表1】
(実施例
、比較例、及び参考例のサンプルはいずれもアルミ箔層厚み:20μm、第一接着剤層厚み:3μm、第二接着剤層厚み:3μmである。また、接着剤はいずれのサンプルも接着剤1を用いた。)
【0092】
表1より、第一樹脂シート層の膜厚は45μm以上85μm以下であり、第二樹脂シート層の膜厚は35μm以上70μm以下とした裏面保護シートは、「シワ」、「放熱性」、「耐候性」、「絶縁性」に優れた裏面保護シートであることが分かる。
【0093】
【表2】
(実施例1、5、6及び比較例6のサンプルはいずれも第一樹脂シート厚み:50μm、第二樹脂シート厚み:50μm、第一接着剤層厚み:3μm、第二接着剤層厚み:3μmである。また、接着剤はいずれのサンプルも接着剤1を用いた。)
【0094】
表2より、アルミ箔層の膜厚は20μm以上60μm以下とした裏面保護シートは、「シワ」、により優れた裏面保護シートであることが分かる。
【0095】
【表3】
(実施例1、実施例7〜12のサンプルはいずれも第一樹脂シート厚み:50μm、第二樹脂シート厚み:50μm、アルミ箔層厚み:20μmである。また、接着剤はいずれのサンプルも接着剤1を用いた。)
【0096】
(印刷適性試験)
接着剤1について、印刷適性の評価を行った。評価は、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製T60)50μmに接着剤を、接着剤層の膜厚が表4のようになるように塗布し、塗布後、指触による痕跡をつけ、「痕跡が残らなくなる」、又は「タック性が無くなる」までの「乾燥時間」を測定し、測定した時間を以下の評価基準で評価する方法により行った。評価結果については、「印刷適性」として、下記表4に示した。
【0097】
[評価基準]
○:乾燥時間20秒以上
△:乾燥時間20秒以上30秒未満
×:乾燥時間30秒未満
【0098】
【表4】
【0099】
表3及び表4より、接着剤層膜厚が2.0μm以上10.0μm以下とすれば、しわが発生せず、印刷適性を有する裏面保護シートとすることができる。また、3.0μm以上7.0μm以下とすることにより、印刷適性に優れた裏面保護シートとすることができることが分かる。
【0100】
(損失弾性率評価)
実施例1、比較例7及び比較例8の裏面保護シートの接着剤層の動的粘弾性を測定した。具体的には、測定周波数:1Hz、昇温速度3℃/分で−20℃から昇温して損失弾性率を測定した。以下の評価基準の下、接着剤層の損失弾性率評価を行った。
[評価基準]
○:110℃以上150℃以下の時の損失弾性率の最小値が100Pa超であった。
×:110℃以上150℃以下の時の損失弾性率の最小値が100Pa以下であった。
【0101】
実施例1の接着剤層は110℃以上150℃以下の範囲においても損失弾性率の最小値が100Pa超であり、接着剤層の溶融は見られなかった。比較例7及び比較例8の接着剤層は110℃以上150℃以下の範囲においても損失弾性率の最小値が100Pa以下となり接着剤層の溶融が確認された。以上から、実施例1の裏面保護シートは、DMA評価方法により測定した110℃以上150℃以下の範囲での損失弾性率の最小値が100Pa超であることが確認された。
【0102】
【表5】
(実施例1、比較例7及び比較例8のサンプルはいずれも第一樹脂シート厚み:50μm、第二樹脂シート厚み:50μm、アルミ箔層厚み:20μm、第一接着剤層厚み:3.0μm、第二接着剤層厚み:3.0μmである。)
【0103】
(TMA試験)
実施例1及び比較例7の裏面保護シートの線膨張係数を熱機械分析(TMA)でTD方向、MD方向の双方を測定した。測定結果を
図3に示す。
図3には、TMA試験結果として、TMA試験前の裏面保護シートサンプルの膨張率を0%として(
図3中、試験開始と表記)、室温から200℃までの昇温時及び200℃から室温までの降温時の温度とサンプルの膨張率の関係が示されている。また、
図3中表記の「試験終了」には、裏面保護シートサンプルを200℃に昇温し、その後室温にまで降温したときのサンプルの膨張率が示されている。
測定温度:室温→200℃→室温
昇温速度:10℃/min.降温速度:10℃/min.
初期荷重:6g
サンプルサイズ:5mm×20mm
【0104】
図3より、実施例1は、比較例7と比べると特に200℃から室温にまで降温したとき(
図3中試験終了と表記)の体積の収縮率が小さい。このことからも、110℃以上150℃以下の範囲での損失弾性率の最小値が100Pa超である接着剤層を有する実施例1の裏面保護シートは、熱ラミネート時のシワの発生を抑制することができる優れた裏面保護シートであることが分かる。