【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、次世代スマートデバイス開発プロジェクト 車載用障害物センシングデバイスの研究開発に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、本発明を車両に搭載可能なレーダー装置に適用した第1の実施形態について
図1から
図16を参照して説明する。レーダー装置(光飛行時間測定装置及び光学的測距装置に相当)は、車両に搭載されている状態で自装置から車両周囲の物体(ターゲット)までの距離測定(測距)を行う。レーダー装置が車両に搭載される態様はどのような態様でも良い。例えばレーダー装置が車両前方部に搭載される態様では車両前方が物体の検出エリアとなり、レーダー装置が車両後方部に搭載される態様では車両後方が物体の検出エリアとなる。車両周囲の物体は、例えば歩行者、先行車両、後続車両、壁等である。
【0010】
レーダー装置1は、
図1に示すように、制御部2と、距離測定部3と、遅延測定部4と、時間計測部5と、発光部6と、受光部7とを有する。距離測定部3、遅延測定部4、時間計測部5及び受光部7は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスにより同一基板上に作成可能である。
【0011】
発光部6は、
図2に示すように、光源8及び一次元スキャナ9を有すると共に、走査制御部(図示せず)を有する。光源8は、例えば半導体レーザーダイオードで構成されており、パルスレーザー光を照射光として発光する(照射する)。光源8から発光される照射光は、
図3に示すように、走査方向SD1に対して垂直方向が長手方向となる矩形状に成形されている(スキャン光SL)。又、光源8から発光される照射光は、例えばパルス幅が4nsであり、発光周期が4μsである。
【0012】
一次元スキャナ9は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)スキャナと、そのMEMSスキャナの駆動を制御するスキャナ制御回路とを有する。一次元スキャナ9は、駆動源(図示せず)から駆動指示信号を入力すると、回転軸10を振動中心としてミラー11を振動させ、光源8から発光された照射光の一次元走査を所定の走査角度の範囲R1で行う。尚、一次元スキャナ9における走査角度の範囲R1は、
図4に示すように、例えば−27°〜+27°である。又、走査周期は、例えば50msであり、40msの時間で−27°から+27°まで走査し、10msの時間で+27°から−27°まで戻る。
【0013】
光源8から発光された照射光は、コリメートレンズ12を通過して一次元スキャナ9に到達する(光L1)。一次元スキャナ9に到達した照射光は、ミラー11で反射し、ミラー11の走査角度に応じた方向に向かって照射され(光L2)、車両周囲の物体に到達すると、物体で反射する。そして、その物体で反射した照射光は、反射光(物体で反射した信号光)として受光レンズ13を通過して受光部7に到達する(光L3)。尚、上述したように照射光は矩形状に成形されているので、受光部7には、反射光の走査方向SD2に対して垂直方向が長手方向となる矩形状に成形された反射光が到達する(反射光RL)。又、矩形状に成形された反射光の長手方向の長さが、矩形状に形成されている受光面RPの短手方向の長さよりも長くなるように、光源8から発光される照射光の長手方向の長さが設定されている。
【0014】
走査制御部は、一次元スキャナ9の走査角度を検出し、その検出した走査角度に基づいて光源8からの照射光の発光を制御すると共に、一次元スキャナ9による照射光の走査を制御する。又、走査制御部は、レーダー装置1を搭載している車両の走行速度(車速)を示す車速信号(車速パルス)を車速センサから入力し、その入力した車速信号により特定した車速に応じて光源8及び一次元スキャナ9のそれぞれの動作を制御する。
【0015】
具体的には、走査制御部は、車速に応じて光源8からの発光強度を変更し、車速が相対的に遅いときには発光強度を相対的に低減させ、車速が相対的に速いときには発光強度を相対的に増大させる。又、走査制御部は、車速に応じて一次元スキャナ9の走査角度の範囲R1を変更し、車速が相対的に遅いときには走査角度の範囲R1を相対的に広く設定し、車速が相対的に速いときには走査角度の範囲R1を相対的に狭く設定する。車速が相対的に遅ければ、車両周囲に歩行者が存在する可能性が高く、周辺の歩行者の存在を考慮する必要がある。このとき、発光強度を相対的に低減させることで、強度が高い照射光の歩行者への照射を回避することができ、走査角度の範囲R1を相対的に広く設定することで、歩行者の存在を速やかに検出することができる。一方、車速が相対的に速ければ、先行車両の存在を考慮する必要がある。このとき、発光強度を相対的に増大させることで、遠方の先行車両を検出することができ、走査角度の範囲R1を相対的に狭く設定することで、先行車両が存在しない可能性が高い領域を走査範囲から除外し、遠方の先行車両を速やかに検出することができる。
【0016】
さて、この種のレーダー装置1では、上記した[発明が解決しようとする課題]で説明したように、受光部7を構成する各画素が光を受光したタイミングから時間計測部5が受光信号を入力したタイミングまでの時間差を受光側の遅延時間(画素から時間計測部5までの遅延時間)として測定することが望まれている。このような事情に鑑み、レーダー装置1は、以下のように構成されている。
【0017】
制御部2は、マイクロコンピュータを有し、予め格納している制御プログラムを実行することで、レーダー装置1の動作を制御する。制御部2は、レーダー装置1の動作モードとして測距動作モードと遅延測定動作モードとを選択的に切り替える。制御部2は、測距動作モードを選択することでレーダー装置1を測距動作モードにより動作させ、遅延測定動作モードを選択することでレーダー装置1を遅延測定動作モードにより動作させる。
【0018】
制御部2は、測距動作モードを選択しているときには、
図5に示すように、測距指示信号を距離測定部3に出力する。距離測定部3は、制御部2から測距指示信号を入力すると、測距開始信号を発光部6、受光部7及び時間計測部5に出力し、発光部6、受光部7及び時間計測部5による測距動作を制御する。
【0019】
発光部6は、距離測定部3から測距開始信号を入力すると、照射光を発光する(照射する)。受光部7は、距離測定部3から測距開始信号を入力すると、光の受光(入射)を待機し、照射光が物体で反射された反射光の受光や例えば太陽光等の外乱光(背景光)の受光を検出すると、その受光強度(受光レベル)に応じた受光信号を時間計測部5に出力する。時間計測部5は、距離測定部3から測距開始信号を入力すると、受光部7からの受光信号の入力を待機し、受光部7から受光信号を入力すると、測距開始信号を入力したタイミングから受光信号を入力したタイミングまでの時間差に基づいて光飛行時間(TOF時間)を計測し、その計測したTOF時間を距離測定部3に出力する。そして、距離測定部3は、時間計測部5からTOF時間を入力すると、その入力したTOF時間に基づいて距離情報を演算し、その演算した距離情報を制御部2に出力する。
【0020】
レーダー装置1は、測距動作モードにより動作しているときには、
図6に示すように、測距動作処理を行う。レーダー装置1は、測距動作モードによる動作を開始すると、測距動作のスタンバイ(測距動作を行うのに必要な事前処理)を開始する(S1)。レーダー装置1は、測距動作のスタンバイを正常に終了すると、発光部6からの照射光の発光を行う(S2)。レーダー装置1は、光の受光に応答して受光信号が受光部7から時間計測部5に入力されると、TOF時間を時間計測部5により計測し(S3)、その計測したTOF時間が時間計測部5から距離測定部3に入力されると、TOF時間毎の出力回数を距離測定部3により累積する(S4)。レーダー装置1は、予め規定されている規定時間(受光動作の時間)が経過したか否かを制御部2により判定し(S5)、規定時間が経過していないと判定すると(S5:NO)、上記したステップS3に戻り、ステップS3以降を繰り返して行う。
【0021】
レーダー装置1は、規定時間が経過したと判定すると(S5:YES)、予め規定されている規定回数の繰り返し(受光動作の繰り返し)を終了したか否かを制御部2により判定し(S6)、規定回数の繰り返しを終了していないと判定すると(S6:NO)、上記したステップS2に戻り、ステップS2以降を繰り返して行う。そして、レーダー装置1は、規定回数の繰り返しを終了したと判定すると(S6:YES)、TOF時間毎の出力回数の累積結果に基づいて距離情報を距離測定部3により演算し(S7)、測距動作モードによる動作を終了する。
【0022】
一方、
図7に示すように、制御部2は、遅延測定動作モードを選択しているときには、遅延測定指示信号を遅延測定部4に出力する。遅延測定部4は、制御部2から遅延測定指示信号を入力すると、遅延測定開始信号を受光部7及び時間計測部5に出力し、受光部7及び時間計測部5による遅延測定動作を制御する。又、遅延測定部4は、時間計測部5から遅延時間(画素から時間計測部5までの遅延時間)を入力すると、その入力した遅延時間に基づいて遅延補正情報を演算し、その演算した遅延補正情報を制御部2に出力する。
【0023】
レーダー装置1は、遅延測定動作モードにより動作しているときには、
図8に示すように、遅延測定動作処理を行う。レーダー装置1は、遅延測定動作モードによる動作を開始すると、遅延測定動作のスタンバイ(遅延測定動作を行うのに必要な事前処理)を開始する(S11)。レーダー装置1は、遅延測定動作のスタンバイを正常に終了し、遅延測定信号が受光部7から時間計測部5に入力されると、遅延時間を時間計測部5により計測し(S12)、その計測した遅延時間が時間計測部5から遅延測定部4に入力されると、遅延補正情報を遅延測定部4により演算し(S13)、遅延測定動作モードによる動作を終了する。
【0024】
制御部2は、このようにして測距動作モードを選択しているときに距離測定部3から入力した距離情報と、遅延測定動作モードを選択しているときに遅延測定部4から入力した遅延補正情報とに基づいて自装置から車両周囲の物体までの距離測定を行う。
【0025】
以下、レーダー装置1が測距動作モードによる動作と遅延測定動作モードによる動作とを切り替えて行う構成について説明する。受光部7は、
図9に示すように、水平方向及び鉛直方向にそれぞれ1つ以上の画素14が配列され、複数の画素14が二次元行列状(
図9の例示では6×4)に配列されて構成されている。
【0026】
複数の画素14は、その列毎に選択制御線15を介して遅延測定部4と接続されている。遅延測定部4は、動作セレクト信号を選択制御線15を介して各画素14に出力することで、各画素14の動作を測距動作と遅延測定動作との間で切り替え、遅延測定開始信号を選択制御線15を介して各画素14に出力することで遅延測定を行う。遅延測定部4は、遅延測定開始信号及び動作セレクト信号を各画素14に出力することに対応し、遅延測定開始信号及び動作セレクト信号を時間計測部5にも出力する。
【0027】
又、複数の画素14は、その行毎に信号出力線16を介して時間計測部5と接続されている。時間計測部5は、レーダー装置1が測距動作モードにより動作しているときには各画素14からの画素出力信号として受光信号を信号出力線16を介して入力し、レーダー装置1が遅延測定動作モードにより動作しているときには各画素14からの画素出力信号として遅延測定信号を信号出力線16を介して入力する。
【0028】
各画素14は、
図10に示すように、光の受光に応答する受光素子としてのSPAD(Single Photon Avalanche Diode)17と、遅延測定部4から遅延測定開始信号を入力する遅延測定回路18と、SPAD17から入力した信号と遅延測定回路18から入力した信号とを選択的に切り替えて出力する動作セレクタ19と、動作セレクタ19から入力した信号を画素出力信号として出力する読み出し回路20とを有する。
【0029】
SPAD17は、そのアノードとカソードとの間に降伏電圧(ブレークダウン電圧)V
BR以上の逆バイアス電圧が印加されてガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードであり、単一光子の受光を検出可能である。尚、
図10の例示では、1つの画素14が1つのSPAD17を有する構成であるが、1つの画素14が複数(例えば4個)のSPAD17を有する構成でも良い。その場合、複数のSPAD17に対して複数(SPAD17と同数)の遅延測定回路18が個別に設けられる構成でも良いし、複数のSPAD17に対して1個の遅延測定回路18が共通して設けられる構成でも良い。このように1つの画素14が複数のSPAD17を有する構成では、複数のSPAD17のうち幾つかのSPAD17に反射光が同時に受光されたことを、画素14に反射光が受光されたという検出方法を採用することができる。即ち、このような検出方法を採用することで、複数のSPAD17が同時に誤検出する可能性が極めて低くなり、画素14の誤検出を低減することができる。
【0030】
次に、画素14の電気的に構成について説明する。ここでは、
(1)動作セレクタ19が動作セレクト信号の入力に連動して出力を切り替える構成
(2)動作セレクタ19が遅延測定開始信号の入力に連動して出力を切り替える構成
について説明する。
【0031】
図11は、動作セレクタ19が動作セレクト信号の入力に連動して出力を切り替える構成を採用した画素14の電気回路図を示す。遅延測定回路18は、インバータ21を有する。SPAD17のカソードは電源電圧V
DD2に接続されており、SPAD17のアノードはクエンチ抵抗22を介して接地されている。クエンチ抵抗22は、SPAD17のアノードとカソードとの間に降伏電圧V
BR以上の逆バイアス電圧V
SPADが印加されている状態で光子が入射すると、アバランシェ電流が発生し、このアバランシェ電流は一度発生すると流れ続けるので、逆バイアス電圧V
SPADを降伏電圧V
BR以下まで低下させてアバランシェ電流を止めるように作用する。尚、抵抗の代わりにMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いても良い。SPAD17のアノードとクエンチ抵抗22との接続点はインバータ23を介して動作セレクタ19の第1の入力端子に接続されている。
【0032】
遅延測定回路18を構成するインバータ21の出力端子は動作セレクタ19の第2の入力端子に接続されている。読み出し回路20は、Pチャネル型MOSFET(P型トランジスタ)26とNチャネル型MOSFET(N型トランジスタ)27とを有する。P型トランジスタ26は、そのドレインが電源電圧V
DD1に接続され、そのソースがN型トランジスタ27のドレインに接続されている。N型トランジスタ27は、そのドレインがP型トランジスタ26のソースに接続され、そのソースが接地されている。上記した動作セレクタ19の出力端子は、P型トランジスタ26のゲートとN型トランジスタ27のゲートとの接続点に接続されている。又、P型トランジスタ26のソースとN型トランジスタ27のドレインとの接続点は画素14の出力端子とされている。
【0033】
上記した構成の画素14は、
図12に示すように動作する。動作セレクタ19は、動作セレクト信号(V
EN)がロウレベルの状態では第1の入力端子に入力される信号を出力可能な状態になり、SPAD17の応答に応じて信号(V
S1)を第1の入力端子に入力すると、その入力した信号(V
S1)を読み出し回路20に出力する。その結果、画素14は、画素出力信号(V
OUT)としてSPAD17の応答に応じた受光信号を読み出し回路20から出力する(
図12中t1参照)。一方、動作セレクタ19は、動作セレクト信号(V
EN)がハイレベルの状態では第2の入力端子に入力される信号を出力可能な状態になり、遅延測定開始信号(V
TEST)をパルス信号として第2の入力端子に入力すると、その入力した遅延測定開始信号(V
TEST)を読み出し回路20に出力する。その結果、画素14は、画素出力信号(V
OUT)としてSPAD17の応答に応じた受光信号に類似した信号を読み出し回路20から出力する(
図12中t2参照)。
【0034】
図13は、動作セレクタ19が遅延測定開始信号の入力に連動して出力を切り替える構成を採用した画素14の電気回路図を示す。遅延測定回路18は、第1の信号遅延時間(td1)が設定されている第1の遅延測定回路31と、第2の信号遅延時間(td2)が設定されている第2の遅延回路32と、インバータ33と、D型フリップフロップ回路34とを有する。第1の信号遅延時間(td1)は第2の信号遅延時間(td2)よりも長く設定されている。第2の遅延回路32の出力端子はインバータ33を介して動作セレクタ19の第2の入力端子に接続されている。D型フリップフロップ回路34は、その入力端子Dが電源電圧V
DD1に接続され、その出力端子Qが動作セレクタ19に接続されていると共に第1の遅延回路31を介して自身のリセット端子に接続されている。即ち、遅延測定回路18は、遅延測定開始信号(V
TEST)の入力に応じて動作セレクト信号(V
EN)を動作セレクタ19に入力させる。
【0035】
上記した構成の画素14は、
図14に示すように動作する。動作セレクタ19は、動作セレクト信号(V
EN)がロウレベルの状態では第1の入力端子に入力される信号を出力可能な状態になり、SPAD17の応答に応じて信号(V
S1)を第1の入力端子に入力すると、その入力した信号(V
S1)を読み出し回路20に出力する。その結果、画素14は、画素出力信号(V
OUT)としてSPAD17の応答に応じた受光信号(V
OUT)を読み出し回路20から出力する(
図14中t11参照)。一方、動作セレクタ19は、動作セレクト信号(V
EN)がロウレベルの状態で遅延測定開始信号(V
TEST)が遅延測定回路18に入力されると、動作セレクト信号(V
EN)がロウレベルからハイレベルに変化することで、第2の入力端子に入力される信号を出力可能な状態になり、遅延測定開始信号をパルス信号として第2の入力端子に入力すると、その入力した遅延測定信号(V
TEST)を読み出し回路20に出力する。その結果、画素14は、画素出力信号(V
OUT)としてSPAD17の応答に応じた受光信号に類似した信号を読み出し回路20から出力する(
図14中t12参照)。その後、動作セレクト信号(V
EN)がロウレベルからハイレベルに変化してから一定時間(第1の遅延回路31の信号遅延時間(td1))が経過すると、動作セレクト信号(V
EN)がハイレベルからロウレベルに変化し、遅延測定開始信号(V
TEST)が遅延測定回路18に入力される前の状態に戻る(
図14中t13参照)。尚、動作セレクタ19が遅延測定開始信号の入力に連動して出力を切り替える構成では、動作セレクタ19が動作セレクト信号の入力に連動して出力を切り替える構成と比較すると、動作セレクト信号を伝播させる配線が不要となる利点があり、その分、画素14内での受光面積(開口率)を多く確保することできる。
【0036】
次に、時間計測部5の構成について説明する。時間計測部5は、2信号の入力タイミングの時間差をデジタル信号として出力し、測距動作と遅延測定動作とを略共通の回路で行う。時間計測部5は、動作制御信号を入力することで、計測結果の出力先を距離測定部3と遅延測定部4との間で切り替える。時間計測部5は、
図15に示すように、PLL(Phase Locked Loop)41と、TDC(Time to Digital Converter)42と、計測制御回路43とを有する。PLL41は、時間基準クロックを生成し、その生成した時間基準クロックをTDC42に出力する。TDC42は、PLL41から入力した時間基準クロックを利用し、2信号の入力タイミングの時間差をデジタル信号として計測制御回路43に出力する。
【0037】
計測制御回路43は、レーダー装置1が測距動作モードにより動作しているときには、
図16(a)に示すように、測距開始信号を入力したタイミングから画素出力信号(受光信号)を入力したタイミングまでの時間差(
図16中t21〜t22)をTOF時間として計測し、その計測したTOF時間を距離測定部3に出力する。一方、計測制御回路43は、レーダー装置1が遅延測定動作モードにより動作しているときには、
図16(b)に示すように、遅延測定開始信号を入力したタイミングから画素出力信号(遅延測定信号)を入力したタイミングまでの時間差(
図16中t31〜t32)を画素14から時間計測部5までの遅延時間として計測し、その計測した遅延時間を遅延測定部4に出力する。
【0038】
以上に説明したように第1の実施形態によれば、次に示す作用効果を得ることができる。レーダー装置1において、遅延測定開始信号の入力に応じて遅延測定信号を出力する遅延測定回路18を設けたので、遅延測定回路18から出力される遅延測定信号を用いることで、画素14が光を受光したタイミングから時間計測部5が受光信号を入力したタイミングまでの時間差を受光側の遅延時間として測定することができる。例えば受光側の遅延時間に基づいて距離情報を補正することで、自装置から車両周囲の物体までの距離測定の精度を高めることができる。又、例えば故障の判定基準となる基準時間が予め設定されていれば、受光側の遅延時間が基準時間よりも長いと判定することで、故障の発生を特定することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、
図17から
図25を参照して説明する。尚、上記した第1の実施形態と同一部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。第1の実施形態により計測する画素14から時間計測部5までの遅延時間には、
図17に示すように、遅延測定部4から各画素14まで伝播する遅延測定信号の遅延時間が含まれる。この点に関し、第2の実施形態は、画素が遅延測定フィードバック(FB)信号を出力することで、遅延測定信号の遅延時間による影響を解消する点で第1の実施形態とは異なる。
【0040】
第2の実施形態は、
図18に示すように、第1の実施形態で説明した受光部7に代えて受光部51が設けられている。受光部51は、水平方向及び鉛直方向にそれぞれ1つ以上の画素52が配列され、複数の画素52が二次元行列状に配列されて構成されている。複数の画素52は、その列毎に選択制御線53を介して遅延測定部4と接続されている。遅延測定部4は、動作セレクト信号を選択制御線53を介して各画素52に出力することで、各画素52の動作を測距動作と遅延測定動作との間で切り替え、遅延測定開始信号を選択制御線53を介して各画素52に出力することで遅延測定を行う。又、複数の画素52は、その列毎にFB信号出力線54を介して遅延測定部4と接続されている。遅延測定部4は、遅延測定開始信号及び動作セレクト信号を各画素52に出力することに対応し、遅延測定開始信号及び動作セレクト信号を時間計測部5に出力し、各画素52から遅延測定FB信号を入力することに対応し、遅延測定FB信号を時間計測部5に出力する。
【0041】
又、複数の画素52は、その行毎に信号出力線55を介して時間計測部5と接続されている。時間計測部5は、レーダー装置1が測距動作モードにより動作しているときには各画素52からの画素出力信号として受光信号を信号出力線55を介して入力し、レーダー装置1が遅延測定動作モードにより動作しているときには各画素52からの画素出力信号として遅延測定信号を信号出力線55を介して入力する。
【0042】
画素52は、
図19に示すように、第1の実施形態で説明したSPAD17と、遅延測定回路18と、動作セレクタ19と、読み出し回路20とを有すると共に、遅延測定FB回路56を有する。遅延測定FB回路56を有する画素52では、遅延測定開始信号が遅延測定部4から出力されて各画素52に入力されるまでの遅延時間と、遅延測定FB信号が各画素52から出力されて遅延測定部4に入力されるまでの遅延時間との時間差が所定値以下となるように設計(レイアウト)されていることが望ましい。又、画素52では、遅延測定開始信号が遅延測定部4から出力されて時間計測部5に入力されるまでの遅延時間が、遅延測定開始信号が遅延測定部4から出力されて各画素52に入力されるまでの遅延時間及び遅延測定FB信号が各画素52から出力されて時間計測部5に入力されるまでの遅延時間のうちの少なくとも一方の遅延時間以下となるように設計されている(レイアウト)されていることが望ましい。
【0043】
次に、画素52の電気的に構成について説明する。ここでは、
(1)遅延測定開始信号と遅延測定FB信号とを別々の配線とする構成
(2)遅延測定開始信号と遅延測定FB信号とを同一の配線とする構成
について説明する。
【0044】
(1)遅延測定開始信号と遅延測定FB信号とを別々の配線とする構成
図20は、遅延測定開始信号と遅延測定FB信号とを別々の配線とする構成とした画素51の電気回路図を示す。遅延測定FB回路56は、インバータ61を有する。インバータ61の入力端子は遅延測定回路18のインバータ25の出力端子に接続されている。
【0045】
上記した構成の画素52は、
図21に示すように動作する。動作セレクタ19は、動作セレクト信号(V
EN)がロウレベルの状態では第1の入力端子から入力する信号を出力可能な状態になり、SPAD17の応答に応じて信号(V
S1)を第1の入力端子に入力すると、その入力した信号(V
S1)を読み出し回路20に出力する。その結果、画素52は、画素出力信号(V
OUT)としてSPAD17の応答に応じた受光信号を読み出し回路20から出力する(
図21中t41参照)。一方、動作セレクタ19は、動作セレクト信号(V
EN)がハイレベルの状態では第2の入力端子から入力する信号を出力可能な状態になり、遅延測定開始信号(V
TEST)をパルス信号として第2の入力端子に入力すると、その入力した遅延測定開始信号(V
TEST)を読み出し回路20に出力する。その結果、画素52は、画素出力信号(V
OUT)としてSPAD17の応答に応じた受光信号に類似した信号(V
OUT)を読み出し回路20から出力する(
図21中t42参照)。又、遅延測定開始信号(V
TEST)が遅延測定回路18から動作セレクタ19に入力されることに伴い、遅延測定FB回路56は、遅延測定FB信号(V
DLY)を出力する。即ち、遅延測定部4が遅延測定開始信号(V
TEST)を出力したタイミングから遅延測定FB信号(V
DLY)を入力したタイミングまでの時間差には往復分の配線の遅延が影響するので、遅延測定部4は、その時間差を測定することで、遅延測定信号の遅延時間を測定する。
【0046】
(2)遅延測定開始信号と遅延測定FB信号とを同一の配線とする構成
図22は、遅延測定開始信号と遅延測定FB信号とを同一の配線とする構成とした画素52の電気回路図を示す。遅延測定FB回路56は、遅延回路71と、インバータ72と、D型フリップフロップ回路73とを有する。D型フリップフロップ回路73は、その入力端子Dが電源電圧V
DD1に接続され、その出力端子Qがインバータ72に接続されていると共に遅延回路71を介して自身のリセット端子に接続されている。
【0047】
上記した構成の画素52は、
図23に示すように動作する。動作セレクタ19は、動作セレクト信号(V
EN)がロウレベルの状態では第1の入力端子から入力する信号を出力可能な状態になり、SPAD17の応答に応じて信号(V
S1)を第1の入力端子に入力すると、その入力した信号(V
S1)を読み出し回路20に出力する。その結果、画素52は、画素出力信号(V
OUT)としてSPAD17の応答に応じた受光信号を読み出し回路20から出力する(
図23中t51参照)。一方、動作セレクタ19は、動作セレクト信号(V
EN)がハイレベルの状態では第2の入力端子から入力する信号を出力可能な状態になり、遅延測定信号(V
TEST)をパルス信号として第2の入力端子に入力すると、その入力した遅延測定信号(V
TEST)を読み出し回路20に出力する。その結果、画素52は、画素出力信号(V
OUT)としてSPAD17の応答に応じた受光信号に類似した信号を読み出し回路20から出力する(
図23中t52参照)。その後、遅延測定FB回路56は、遅延測定信号(V
TEST)を遅延測定FB信号として出力する(
図23中t53参照)。即ち、画素52は、遅延測定信号と遅延測定FB信号とを同一の配線により出力する。
【0048】
次に、時間計測部5の構成について説明する。時間計測部5は、
図24に示すように、遅延測定FB信号を入力する点が第1の実施形態と異なる。計測制御回路43は、レーダー装置1が測距動作モードにより動作しているときには、
図25(a)に示すように、第1の実施形態で説明した
図15(a)と同様に、測距開始信号を入力したタイミングと画素出力信号(受光信号)を入力したタイミングとの時間差(
図25中t61〜t62)をTOF時間として計測し、その計測したTOF時間を距離測定部3に出力する。一方、計測制御回路43は、レーダー装置1が遅延測定動作モードにより動作しているときには、
図25(b)に示すように、遅延測定開始信号を入力したタイミングから遅延測定FB信号を入力したタイミングまでの半分の時間に相当したタイミングを特定し、遅延測定開始信号を入力したタイミングから当該特定したタイミングまでの時間差(
図25中t71〜t72)を遅延測定信号の遅延時間として計測し、その特定したタイミングから画素出力信号(遅延測定信号)を入力したタイミングまでの時間差(
図25中t72〜t73)を画素52から時間計測部5までの遅延時間として計測し、その計測した遅延時間を遅延測定部4に出力する。尚、遅延測定指示信号と遅延測定FB信号とを同一の配線とする構成では、遅延測定指示信号と遅延測定FB信号とを別々の配線とする構成と比較すると、配線を低減する利点があり、その分、画素52内での受光面積(開口率)を多く確保することできる。
【0049】
以上に説明したように第2の実施形態によれば、次に示す作用効果を得ることができる。遅延測定開始信号の遅延測定回路18への入力をフィードバックする遅延測定FB信号を出力する遅延測定FB回路56を設けたので、遅延測定信号の遅延時間を測定することができ、画素52から時間計測部5までの遅延時間から遅延測定信号の遅延時間を減算することで、受光側の遅延時間をより正確に測定することができる。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、
図26から
図29を参照して説明する。尚、上記した第1の実施形態と同一部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。第1の実施形態は、受光部7を構成する全ての画素14が遅延測定回路18を有する構成であるが、第3の実施形態は、受光部を構成する全ての画素のうち一部が遅延測定回路を有する又は受光部を構成する全ての画素とは異なるダミー画素が遅延測定回路を有する点で第1の実施形態とは異なる。
【0051】
図26に示す構成では、受光部81において、二次元行列状に配列されている複数の画素82、83のうち最上位の行に属する画素82は第1の実施形態で説明した画素14と同様に遅延測定回路18を有する画素であり、それ以外の画素83は遅延測定回路18を有しない画素である。水平方向の画素が多い場合、垂直方向の遅延時間は一定と仮定又は予め決定された遅延時間とし、水平方向の遅延時間のみを測定することで、メモリ量を削減したり遅延時間の測定に要する時間を削減したりすることができる。又、配線を低減する分、受光部81での受光面積(開口率)を多く確保することできる。尚、遅延測定回路18を有する画素82が最上位の行に配列される構成に限らず、遅延測定回路18を有する画素82が最下位の行に配列される構成でも良いし、最上位の行と最下位の行との間の途中の行に配列される構成でも良い。
【0052】
図27に示す構成では、受光部91において、二次元行列状に配列されている複数の画素92、93のうち最上位及び最下位の両方の行にそれぞれ属する画素92は遅延測定回路を有する画素であり、それ以外の画素93は遅延測定回路を有しない画素である。この場合も、メモリ量を削減したり遅延時間の測定に要する時間を削減したりすることができると共に、配線を低減する分、受光部91での受光面積(開口率)を多く確保することできる。又、最上位の行及び最下位の行にそれぞれ属する画素92では遅延時間を測定するので、垂直方向の遅延時間が測定可能となり、
図26に示した構成と比較すると、受光側の遅延時間をより正確に測定することができる。
【0053】
図28に示す構成では、受光部101の水平方向の上方近傍に、ダミー画素行が設けられている。ダミー画素行を構成する複数の画素102は遅延測定回路18を有する画素であり、受光部101に二次元行列状に配列されている複数の画素103は遅延測定回路を有しない画素である。受光部101の外部にダミー画素行が設けられることで、受光部101での受光面積(開口率)を維持したまま垂直方向の遅延時間が測定可能となる。尚、ダミー画素行が受光部101の水平方向の上方近傍に設けられる構成に限らず、ダミー画素行が受光部101の水平方向の下方近傍に設けられる構成でも良いし、ダミー画素行が受光部101の水平方向の上方近傍及び下方近傍の両方に設けられる構成でも良い。尚、第2の実施形態で説明した遅延測定FB回路56についても、遅延測定回路18と同様にして、受光部を構成する全ての画素のうち一部に設けられても良いし、受光部の上方近傍や下方近傍のダミー画素行に設けられても良い。
【0054】
又、
図29に示すように、行毎の列番号と遅延時間との対応を列番号の1次関数として保持し、その1次関数から遅延時間を計測しても良い。行毎の列番号と遅延時間との対応を列番号の1次関数として保持する構成では、受光部を構成する全ての画素分の遅延時間を保持する構成と比較すると、メモリ量を削減することができる。又、行番号と列番号と遅延時間との対応を行番号と列番号の2次関数として保持し、その2次関数から遅延時間を計測しても良い。
【0055】
(その他の実施形態)
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形又は拡張することができる。
本実施形態では、車両に搭載されているレーダー装置から車両周囲の物体までの距離測定を行う構成を例示したが、車両以外の用途に適用しても良い。
第1の実施形態では、遅延測定回路18及び動作セレクタ19が画素14の内部に配置される構成を例示したが、遅延測定回路18及び動作セレクタ19が画素14の外部に配置される構成でも良い。又、第2の実施形態では、遅延測定回路18、動作セレクタ19及び遅延測定FB回路56が画素52の内部に配置される構成を例示したが、遅延測定回路18及び遅延測定FB回路56が画素52の内部に配置される構成でも良い。このように構成すれば、画素内の配線を削減することができる。
【0056】
第3の実施形態では、二次元行列状に配列されている複数の画素のうち一部の行に属する画素が遅延測定回路18を有する画素とされる構成を例示したが、二次元行列状に配列されている複数の画素のうち一部の列に属する画素が遅延測定回路18を有する画素とされる構成でも良い。又、二次元行列状に配列されている複数の画素のうち四隅の少なくとも1カ所の画素が遅延測定回路18を有する画素とされる構成でも良い。