(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有モノマーとのモノマー混合物を反応性乳化剤および粘着付与樹脂の存在下、乳化重合してなるアクリル系ポリマーのエマルションと、架橋剤とを含む水性粘着剤であって、
前記粘着付与樹脂は、23℃で液状であり、
前記モノマー混合物100重量部に対して、粘着付与樹脂を0.1〜3重量部、反応性乳化剤を0.5〜2.5重量部含む、水性粘着剤。
請求項1〜3いずれか1項に記載の水性粘着剤、および請求項4記載の製造方法で得られた水性粘着剤の一方から形成してなる粘着剤層、ならびに基材を備えた、粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を詳細に説明する前に用語を定義する。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルを含む。モノマーは、エチレン性不飽和二重結合含有単量体である。被着体は、粘着テープを貼付する相手方である。密着性は、粘着剤層の基材に対する密着性をいう。
【0013】
本発明の水性粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基含有モノマーとのモノマー混合物を反応性乳化剤および粘着付与樹脂の存在下、乳化重合してなるアクリル系ポリマーのエマルションを含む水性粘着剤であって、前記モノマー混合物100重量部に対して粘着付与樹脂を0.5〜5重量部含む。この水性粘着剤は、塗工することで粘着剤層を形成し、基材を備えた粘着シートとして使用することが好ましい。この粘着シートは、永久粘着用途および再剥離用途を中心とした用途に使用できるところ、再剥離用途が好ましい。
【0014】
本発明の水性粘着剤は、一般的に乳化重合で得られるポリマーの分子量を下げるために使用されている連鎖移動剤に代えて、粘着付与樹脂を使用することでポリマーの分子量を下げつつ、低分子のポリマーの生成を抑制した、適度な凝集力を有するアクリル系ポリマーのエマルションを得ることができた。このアクリル系ポリマーのエマルションを含む粘着シートは、高湿度雰囲気下での粘着力低下を抑制しつつ、良好な再剥離性が得られた。
【0015】
本発明においてアクリル系ポリマーのエマルションは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有モノマーを含むモノマー混合物を反応性乳化剤および粘着付与樹脂の存在下、乳化重合して得る。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えばエチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、iso−ノニル(メタ)アクリレート、およびシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独または2種類以上併用できる
【0017】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、モノマー混合物中に50〜99.5重量%含むことが好ましく、70〜99重量%がより好ましい。50〜99.5重量%含むことで粘着剤層を形成した際の粘着力、タックおよび再剥離性を得やすくなる。
【0018】
カルボキシル基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、およびマレイン酸ブチル等が挙げられる。カルボキシル基含有モノマーは、単独または2種類以上併用できる。なお、カルボキシル基含有モノマーは酸無水物基含有モノマーを包含する。
【0019】
カルボキシル基含有モノマーは、モノマー混合物中に0.5〜5重量%含むことが好ましく、0.8〜2重量%がより好ましい。0.5〜5重量%含むことで粘着力および再剥離性がより向上する。
【0020】
モノマー混合物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびカルボキシル基含有モノマー以外の「その他モノマー」を使用できる。例えばアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、およびメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレートなどの公知の多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。その他モノマーは、単独または2種類以上併用できる。
【0021】
粘着付与樹脂は、モノマー混合物の乳化重合に存在すると得られるアクリル系ポリマーの分子量を下げつつ、低分子のアクリル系ポリマーの生成を抑制できる。粘着付与樹脂は、例えばロジン系樹脂、テルペン系樹脂、芳香族系石油樹脂、および脂肪族系石油樹脂等からなる群より選択される1種以上を使用することが好ましい。
ロジン系樹脂は、例えば天然ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、不均化ロジン、および不均化ロジンエステル等が挙げられる。テルペン系樹脂は、例えばα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、および水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。芳香族系石油樹脂は、例えばスチレンオリゴマー、およびα−メチルスチレン・スチレン共重合体等が挙げられる。このなかでも、コスト及びアクリル樹脂との相溶性の観点から、ロジン樹脂が好ましい。
粘着付与樹脂は、単独または2種類以上併用できる。
【0022】
粘着付与樹脂は、基材への密着性の観点から、23℃で液状の樹脂が好ましい。23℃で液状の粘着付与樹脂は分子量が低いためモノマーに対する連鎖移動効果が高く、アクリル系ポリマーの分子量を効率的に低下でき、粘着剤層を形成した際の基材密着性が良好になる。23℃で液状の粘着付与樹脂は、例えば低分子量のロジン系樹脂、低分子量のテルペン系樹脂、芳香族系石油樹脂であるスチレンオリゴマー等が挙げられる。なお23℃で液状とは、25℃雰囲気で粘着付与樹脂を満たした250mlビーカーに直径5mm、長さ30cmのガラス棒を垂直に立てた場合、当該ガラス棒が傾いて10秒以内にビーカー壁面とに接する程度の粘度である。
【0023】
粘着付与樹脂は、モノマー混合物100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。0.1重量部以上用いることで、アクリル系ポリマーのエマルションのゲル分率を所定の範囲に調整でき、粘着剤層を形成した際の密着性がより向上する。また、5重量%以下用いることで、アクリル系ポリマーの分子量を高めに調整し易いため、粘着剤層を形成した際の凝集力がより向上する。
【0024】
乳化重合に使用する乳化剤は、反応性乳化剤を使用する。反応性乳化剤は、モノマーと共重合可能なエチレン性不飽和結合を有する乳化剤である。反応性乳化剤を使用すると高湿度雰囲気下での粘着力低下を抑制できる。反応性乳化剤には、イオン種によりアニオン系反応性乳化剤およびノニオン系反応性乳化剤がある。これらの乳化剤の中でアニオン系反応性乳化剤を用いると、エマルションの粒子径を微細できることに加え、水性粘着剤の貯蔵安定性が向上するため好ましい。
【0025】
アニオン系反応性乳化剤は、例えば、スルホコハク酸エステル系乳化剤、(メタ)アクリレート硫酸エステル系乳化剤、リン酸エステル系乳化剤、アリルスルホン酸塩系乳化剤等が挙げられる。
【0026】
ノニオン系反応性乳化剤は、例えば、アルキルエーテル系乳化剤、アルキルフェニルエーテル系乳化剤、アルキルフェニルエステル系乳化剤等が挙げられる。
反応性乳化剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0027】
反応性乳化剤は、モノマー混合物100重量部に対して0.5〜3重量部使用するのが好ましく、0.7〜2.5重量部がより好ましい。
【0028】
また、本発明の課題を解決できる範囲内であれば、非反応性乳化剤を併用できる。
非反応性アニオン性乳化剤は、例えばポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸塩、ステアリン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩;等が挙げられる。
【0029】
非反応性ノニオン性乳化剤は、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等のポリオキシ多環フェニルエーテル類;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0030】
乳化重合に使用する重合開始剤は、水溶性重合開始剤を使用することが好ましい。
水溶性重合開始剤は、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2’−アゾビス(2−メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕−プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕等が挙げられる。これらの中でも過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムが好ましい。
【0031】
また重合開始剤は、レドックス系重合開始剤(酸化剤と還元剤を併用する)として使用できる。酸化剤は、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、p−メタンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。また、還元剤は、例えば亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が挙げられる。これらの中でも重合反応性に優れるため、酸化剤:過硫酸カリウムまたは過硫酸ナトリウムと、還元剤:亜硫酸ナトリウムまたは酸性亜硫酸ナトリウムとを組み合わせて使用することが好ましい。
【0032】
重合開始剤は、モノマー混合物100重量部に対して、0.01〜0.5重量部を使用することが好ましく、0.02〜0.3重量部がより好ましい。0.01〜0.5重量部であることで重合反応性および水性粘着剤の機械安定性をより向上できる。
【0033】
本発明で乳化重合は、例えばモノマーを乳化して乳化物を形成してから合成することが好ましい(プレ乳化法)。乳化重合の方法は、前記乳化物の全量を予め反応容器中に仕込んでから反応する方法、または前記乳化物の一部を反応容器中に仕込んで、前記乳化物の残分を数回に分けて添加または連続滴下する方法等公知の方法を使用できる。
【0034】
また、アクリル系ポリマーのエマルションは、そのゲル分率を30〜70%に調整することが好ましい。ゲル分率を前記範囲にすることで密着性、粘着力および再剥離性を高いレベルで得ることができる
【0035】
なお、ゲル分率の算出は以下の方法で行なうことができる。アクリル系共重合体をポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)上に塗工し、乾燥後の厚さが約20g/m
2になるように乾燥被膜を形成する(塗工物という)。得られた塗工物を200メッシュのステンレス網で包み込み、次いでそれを酢酸エチルに投入し23℃で72時間浸漬した後、乾燥して酢酸エチルを除去する。そして浸漬前の乾燥被膜の重量に対する、浸漬後の乾燥被膜の重量の割合(重量%)を求めたものを酢酸エチルに対するゲル分率という。ゲル分率は下記数式に従い求める。
数式1 ゲル分率(%)=(浸漬前の乾燥被膜重量−PETフィルムの重量)/(浸漬後の乾燥被膜重量−PETフィルムの重量)×100
【0036】
本発明の水性粘着剤は、さらに架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤とアクリル系ポリマーのカルボキシル基が反応することで再剥離性が向上し、粘着力の調整が容易になる。
【0037】
架橋剤は、例えばチタンキレート化合物、アルミキレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、酸化亜鉛、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、ヒドラジド系化合物等が挙げられる。これらの中でもポットライフが長く、基材との密着性が向上する面からカルボジイミド系化合物、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物が好ましい。架橋剤は、単独または2種類以上併用できる。
【0038】
架橋剤は、アクリル系ポリマー100重量部に対して0.01〜10重量部配合することが好ましく、0.03〜8重量部がより好ましい。0.01〜10重量部の配合により、粘基材との密着性および凝集力がより向上する。
【0039】
本発明の水性粘着剤は、さらに脂肪酸エステル系可塑剤を含むことができる。脂肪酸エステル系可塑剤は、粘着力の経時増加を抑制することができるため、粘着シートを被着体に貼付して高温環境または高温高湿度環境に放置した後の再剥離性がより向上する。
【0040】
脂肪酸エステル系可塑剤は、例えばオレイン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、コハク酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、クエン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも再剥離性がより向上するクエン酸エステルが好ましく、アセチルクエン酸トリアルキルがより好ましく、アセチルクエン酸トリエチルが特に好ましい。
【0041】
脂肪酸エステル系可塑剤は、アクリル系ポリマー100重量部に対して0.5〜6重量部を配合することが好ましい。前記範囲内であることで再剥離性がより向上する。
【0042】
本発明の水性粘着剤は、乳化重合後に粘着付与樹脂を配合できる。粘着付与樹脂の配合により粘着力の調整が容易になる。
【0043】
本発明の水性粘着剤は、任意成分として中和剤、レベリング剤、防腐剤、消泡剤、増粘剤、顔料分散体、および樹脂微粒子などの公知の添加剤を配合することができる。
【0044】
本発明の粘着シートは、基材と、水性粘着剤から形成した粘着剤層とを備える。製造方法を例示すると(1)剥離性シートに水性粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、次いで基材上に粘着剤層を転写する方法。および(2)基材に水性粘着剤を塗工、乾燥することで粘着剤層を形成し、次いで剥離性シートを貼り合わせる方法が好ましい。
【0045】
塗工方法は、例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等公知の方法が挙げられる。塗工に際し、乾燥を行うことが通常である。乾燥は、特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線ヒーターおよび減圧法等公知の方法を適宜選択して使用できる。乾燥温度は通常60〜180℃程度である。
【0046】
粘着剤層の厚さは、一般的に5〜100μm程度であり、10〜50μmがより好ましい。
【0047】
前記基材は、例えば紙、セロハン、プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴムびき布、樹脂含浸布、ガラス板、金属板、木材、偏光板などの光学フィルム等の板材またはシートが挙げられる。前記基材は、単独または複数の積層体であっても良い。また、前記基材は、裏面(粘着剤層と接しない面)に剥離処理、または帯電防止処理をすることができる。また基材は、公知の易接着処理を行うことで粘着剤層との密着性を向上できる。
基材の厚さは、一般的に10〜100μm程度であり、30〜80μmがより好ましい。
【0048】
本発明の粘着シートの被着体は、素材として例えば、金属、ガラス、プラスチックフィルム、ゴム、木材、ダンボール、紙および塗料コート面など幅広い素材に使用できる。
【0049】
本発明の粘着シートの用途は、特に限定されないが、例えば各種ラベル用、マスキングテープ用途やプロテクトフィルム用途等の再剥離が必要な用途のみならず、再剥離を必要としない永久粘着用途にも好ましく使用できる。
【実施例】
【0050】
次に、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、以下の説明において、部は重量部、%は重量%を意味する。
【0051】
(実施例1)
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして2−エチルヘキシルアクリレート98.5部、カルボキシ含有モノマーとしてアクリル酸1.5部に、粘着付与樹脂として「エステルガムAT」(ロジン樹脂、23℃で液状、荒川化学社製) 1.0部を添加し溶解した。さらにアニオン系反応性乳化剤として「アクアロンKH−10」(ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩 第一工業製薬社製)1.0部、および脱イオン水25.1部を加えて攪拌し乳化物を得た。得られた乳化物を滴下ロートに入れた。
別途、撹拌機、冷却管、温度計および上記滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、脱イオン水を45.6部、上記乳化物のうちの1.0部を仕込み、フラスコ内部を窒素ガスで置換し、撹拌しながら内温を70℃まで加熱した。その後濃度10%過硫酸アンモニウムを添加して、反応を開始した。内温を70℃に保持したまま、上記乳化物を180分かけて滴下した後に、さらに撹拌しながら内温を70℃に保持したまま1時間反応を継続した。その後内温を65℃に冷却し、酸化剤の「パーブチルH−69」(日本油脂社製)の濃度10%水溶液1.0部、還元剤の「エルビットN」(扶桑化学工業社製)の濃度10%水溶液1.0部をそれぞれ10分おきに3回添加し、さらに1時間反応を継続した。その後、冷却し、30℃で25%アンモニア水を添加して中和することで不揮発分濃度50%のアクリル系ポリマーのエマルションを得た。尚、このアクリル系ポリマーのゲル分率は40%であった。
次に、アクリル系ポリマーのエマルション100部に対し、中和剤として25%アンモニア水を1部、消泡剤としてSNデフォーマー364(サンノプコ社製)を0.3部、防腐剤としてユニケムフレックスBN−202(ユニオンケミカル社製)を0.05部、レベリング剤として「ペレックスOT−P」(花王社製)0.2部、可塑剤としてアセチルクエン酸トリエチル1.5部を加え、架橋剤としてカルボジイミド系硬化剤のカルボジライトV−04(不揮発分40%)を1.0部加え、さらにアルカリ増粘剤で増粘し、水性粘着剤を得た。
得られた水性粘着剤を乾燥後の厚さが18μmになるようにコンマコーターを使用して剥離性シート上に塗工し、100℃の乾燥オーブンで75秒間乾燥した後、市販の上質紙を貼り合わせて粘着シートを得た。
後述する試験方法で性能を評価し、その結果を表1に示した。
【0052】
(実施例2〜14、比較例1〜5)
実施例1の配合を表1の原料および配合量に変更した以外は、実施例1と同様に行うことで水性粘着剤および粘着シートを作成した。
ただし、実施例7、9、11、および14は参考例である。
【0053】
表1および表2の略称は下記の通りである。
・EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
・BA:アクリル酸ブチル
・AA:アクリル酸
・MAA:メタクリル酸
・A−5:「ピコラスティックA−5」(スチレンオリゴマー、23℃で液状、イーストマンケミカル社製)
・D−125:「ペンセルD−125」(ロジン樹脂、23℃で固体、荒川化学社製)
・OTG:チオグリコール酸オクチル
・KH−10:「アクアロンKH−10」(アニオン系反応性乳化剤、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩 不揮発分100%、第一工業製薬社製)
・SR−10:「アデカリアソープSR−10」(アニオン系反応性乳化剤、α−スルホ−ω−(1−(アルコキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩 不揮発分100%、ADEKA社製)
・RA9612:「ニューコールRA9612」(アニオン系非反応性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩 不揮発分25% 日本乳化剤社製)
・EX−313:「デナコールEX−313」(エポキシ系硬化剤、不揮発分100%、ナガセケムテックス社製)
・PZ−33:「ケミタイトPZ−33」(アジリジン系硬化剤、揮発分100%、日本触媒社製)
【0054】
[試験方法]
(1)常温粘着力
得られた粘着シートを23℃50%RH環境下にて長さ100mm×幅25mmの大きさに準備し試料とした。次いで、JIS Z 0237に準拠して、試料から剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を表面を研磨したステンレス鋼板(以下、SUSという)に貼付け、2kgロールを1往復して、24時間直後の粘着力を測定した。なお粘着力の測定は引張試験機を用いて、剥離速度:300mm/分、剥離角180゜で行った。
【0055】
(2)高湿度粘着力
得られた粘着シートを23℃50%RH環境下にて長さ100mm×幅25mmの大きさに準備し試料とした。次いで、試料から剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層を表面を研磨したステンレス鋼板(以下、SUSという)に貼付け、2kgロールを1往復して、圧着後に試料を50℃95%RH雰囲気下で1時間放置した後、50℃95%RH雰囲気下で粘着力を測定した。なお粘着力の測定は引張試験機を用いて、剥離速度:300mm/分、剥離角180゜で行った。また、下記の式より粘着力の上昇率を算出した。
粘着力維持率(%)=[(湿潤粘着力)/(常温粘着力)−1]×100
粘着力維持率の判定は、下記の基準で評価した。
◎:粘着力維持率90%以上、100%以下、良好
○:粘着力維持率80%以上、90%未満、実用可。
△:粘着力維持率60%以上、80%未満、実用不可。
×:粘着力維持率60%未満、実用不可。
【0056】
(2)再剥離性
得られた粘着シートを23℃50%RH環境下にて長さ100mm×幅25mmの大きさに準備し試料とした。次いで、試料の剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層をSUSに貼付け、2kgロールで1往復して圧着した。圧着後の試料を60℃90%RH雰囲気下24時間放置し、さらに23℃50%RH雰囲気下で1時間放置した後、引張試験機を用いて、試料をSUSから300mm/分の速さで180゜方向に剥離して、SUS表面に粘着剤層に由来する汚染が付着しているか否かを目視により下記の基準で評価した。◎:SUS表面がきれいだった。良好
○:SUS表面にわずかに汚染が付着していたが、実用上問題ない。
△:SUS表面に汚染の付着がやや多かった、実用不可。
×:SUS表面に汚染の付着が多かった。実用不可。
【0057】
(3)密着性
得られた粘着シートから剥離性シートを剥がし露出した粘着剤層を往復するように指でこすり、粘着剤層が基材から脱落するかどうか評価した。
◎:15往復以上しても基材から脱落しない。良好。
○:11〜15往復で基材から脱落する。実用上問題ない。
△:5〜10往復で粘着剤が脱落する。実用不可。
×:4往復以内に粘着剤が脱落する。実用不可。
【0058】
(4)ゲル分率
得られたアクリル系ポリマーのエマルションをPETフィルムに乾燥後の厚さが約20g/m
2になるように塗工・乾燥し、200メッシュのステンレス網で包み込み試料とした。次いで試料を酢酸エチル中に投入し、23℃で72時間浸漬した後、乾燥して浸漬前のアクリル系ポリマー重量に対する、浸漬後のアクリル系ポリマー重量の割合(重量%)を求めた。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】