特許第6610012号(P6610012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6610012
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】単独運転検出方法及び単独運転検出装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20191118BHJP
【FI】
   H02J3/38 180
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-115423(P2015-115423)
(22)【出願日】2015年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-5820(P2017-5820A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 寛幸
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−215392(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0179724(US,A1)
【文献】 特開2015−023653(JP,A)
【文献】 特開平07−308025(JP,A)
【文献】 特開平09−322409(JP,A)
【文献】 特開昭56−101335(JP,A)
【文献】 特開2008−054366(JP,A)
【文献】 特開2010−142081(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0115301(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続されている分散型電源が単独運転しているか否かを検出する単独運転検出方法において、
前記電力系統の系統周期を随時検出する系統周期検出ステップと、
前記系統周期検出ステップにおいて、経時的に連続で検出された2つの系統周期を比較し、系統周期が経時的に増加している場合、前記電力系統の系統周期が増加するよう前記電力系統に無効電力を注入し、系統周期が経時的に減少している場合、前記電力系統の系統周期が減少するよう前記電力系統に無効電力を注入する系統周期変動ステップと、
前記系統周期検出ステップで検出される系統周期に基づく値を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出されるm(mは4以上の整数)個の値が、経時的に増加又は減少しているか否かの判定を行う増減判定ステップと、
前記算出ステップで算出されるm個の値から、線形回帰直線の傾きを算出し、算出した傾きが閾値以上であるか否かを判定する傾き判定ステップと、
前記増減判定ステップで、n(nは3以上m以下の整数)回以上増減していると判定され、かつ、前記傾き判定ステップで、算出した傾きが閾値以上であると判定された場合、前記分散型電源が単独運転していると決定する単独運転決定ステップと、
を備え
前記算出ステップは、
前記系統周期検出ステップで検出される系統周期から移動平均値を算出し、
前記増減判定ステップは、
前記算出ステップが連続して算出したm個の前記移動平均値が、経時的に増加又は減少しているか否かを判定する、
単独運転検出方法。
【請求項2】
電力系統に接続されている分散型電源が単独運転しているか否かを検出する単独運転検出方法において、
前記電力系統の系統周期を随時検出する系統周期検出ステップと、
前記系統周期検出ステップにおいて、経時的に連続で検出された2つの系統周期を比較し、系統周期が経時的に増加している場合、前記電力系統の系統周期が増加するよう前記電力系統に無効電力を注入し、系統周期が経時的に減少している場合、前記電力系統の系統周期が減少するよう前記電力系統に無効電力を注入する系統周期変動ステップと、
前記系統周期検出ステップで検出される系統周期に基づく値を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出されるm(mは4以上の整数)個の値が、経時的に増加又は減少しているか否かの判定を行う増減判定ステップと、
前記算出ステップで算出されるm個の値から、線形回帰直線の傾きを算出し、算出した傾きが閾値以上であるか否かを判定する傾き判定ステップと、
前記増減判定ステップで、n(nは3以上m以下の整数)回以上増減していると判定され、かつ、前記傾き判定ステップで、算出した傾きが閾値以上であると判定された場合、前記分散型電源が単独運転していると決定する単独運転決定ステップと、
を備え、
前記算出ステップは、
一のタイミングで、前記系統周期検出ステップで検出される系統周期と、前記一のタイミングの直前に前記系統周期検出ステップで検出される系統周期との平均値を算出し、
前記増減判定ステップは、
前記算出ステップが連続して算出したm個の前記平均値が、経時的に増加又は減少しているか否かを判定する、
単独運転検出方法。
【請求項3】
前記増減判定ステップは、
前記算出ステップで算出されるm個の値が、経時的に増加しているか否かを判定すると共に、前記m個の値を正負反転させた値が、経時的に増加しているか否かを判定し、
前記単独運転決定ステップは、
前記増減判定ステップで行う2つの判定のうち、少なくとも一方においてn回以上増加していると判定され、かつ、前記傾き判定ステップで、算出した傾きが閾値以上であると判定された場合、前記分散型電源が単独運転していると決定する、
請求項1または2に記載の単独運転検出方法。
【請求項4】
電力系統に接続されている分散型電源が単独運転しているか否かを検出する単独運転検出装置において、
前記電力系統の系統周期を随時検出する系統周期検出部と、
前記系統周期検出部において、経時的に連続で検出された2つの系統周期を比較し、系統周期が経時的に増加している場合、前記電力系統の系統周期が増加するよう前記電力系統に無効電力を注入し、系統周期が経時的に減少している場合、前記電力系統の系統周期が減少するよう前記電力系統に無効電力を注入する系統周期変動部と、
前記系統周期検出部が検出する系統周期に基づく値を算出する算出部と、
前記算出部が算出するm(mは4以上の整数)個の値が、経時的に増加又は減少しているか否かの判定を行う増減判定部と、
前記算出部が算出するm個の値から、線形回帰直線の傾きを算出し、算出した傾きが閾値以上であるか否かを判定する傾き判定部と、
前記増減判定部がn(nは3以上m以下の整数)回以上増減していると判定し、かつ、前記傾き判定部が、算出した傾きが閾値以上であると判定した場合、前記分散型電源が単独運転していると決定する単独運転決定部と、
を備え
前記算出部は、
前記系統周期検出部で検出される系統周期から移動平均値を算出し、
前記増減判定部は、
前記算出部が連続して算出したm個の前記移動平均値が、経時的に増加又は減少しているか否かを判定する、
単独運転検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型電源が電力系統から切り離されて単独運転を行っているか否かを検出する単独運転検出方法及び単独運転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電等の分散型電源は、発電した電力の余剰電力、又は夜間に電力系統から供給される電力を蓄電池に蓄電する。そして、分散型電源は、電力系統に事故(例えば停電)が生じた場合、蓄電した電力を負荷へ供給する単独運転を行う。しかし、分散型電源が単独運転になった場合、感電又は機器損傷のおそれがあるため、その防止のために、分散型電源を電力系統から切り離すこと(解列)が要求されている。
【0003】
特許文献1には、分散型電源が電力系統から解列されて単独運転しているか否かを検出する単独運転検出装置が開示されている。特許文献1に記載された単独運転検出装置は、停電時に、電力系統に無効電力を注入する。単独運転検出装置は、電力系統の電圧の周期(系統周期)を計測し、系統周期が増加するときは無効電力を増加させ、減少するときは無効電力を減少させる。そして、単独運転検出装置は、単独運転前後の系統周期の偏差を複数検出し、それぞれの偏差毎に設定された閾値を超えたか否かを演算し、その結果に基づき、分散型電源の単独運転を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3948487号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では複数の偏差毎に閾値を予め設定する必要があり、これらの閾値が適切に設定されない場合、単独運転していないにもかかわらず単独運転を検出し、また、単独運転しているにもかかわらず、単独運転を検出しないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、分散型電源の単独運転の検出精度を高くする検出単独運転検出方法及び単独運転検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電力系統に接続されている分散型電源が単独運転しているか否かを検出する単独運転検出方法において、前記電力系統の系統周期を随時検出する系統周期検出ステップと、前記系統周期検出ステップにおいて、経時的に連続で検出された2つの系統周期を比較し、系統周期が経時的に増加している場合、前記電力系統の系統周期が増加するよう前記電力系統に無効電力を注入し、系統周期が経時的に減少している場合、前記電力系統の系統周期が減少するよう前記電力系統に無効電力を注入する系統周期変動ステップと、前記系統周期検出ステップで検出される系統周期に基づく値を算出する算出ステップと、前記算出ステップで算出されるm(mは4以上の整数)個の値が、経時的に増加又は減少しているか否かの判定を行う増減判定ステップと、前記算出ステップで算出されるm個の値から、線形回帰直線の傾きを算出し、算出した傾きが閾値以上であるか否かを判定する傾き判定ステップと、前記増減判定ステップで、n(nは3以上以下の整数)回以上増減していると判定され、かつ、前記傾き判定ステップで、算出した傾きが閾値以上であると判定された場合、前記分散型電源が単独運転していると決定する単独運転決定ステップと、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成では、停電時に無効電力が注入された電力系統の系統周期が、経時的に増加又は減少し(判定手法1)、かつ、変動する系統周期の回帰直線の傾きが急峻(閾値以上)である(判定手法2)場合に、分散型電源が単独運転であると決定する。判定手法1の場合、停電でない場合であっても、系統周期が増加又は減少していれば、分散型電源が単独運転であると誤判定される。また、判定手法2の場合、停電でない場合であっても、系統周期が瞬時的に大きく変動すれば、分散型電源が単独運転であると誤判定される。そこで、2つの判定手法において何れも分散型電源が単独運転であると判定した場合に、最終的に分散型電源が単独運転であると決定することで、高い単独運転の検出精度を得ることができる。
【0009】
本発明に係る単独運転検出方法の前記算出ステップは、前記系統周期検出ステップで検出される系統周期から移動平均値を算出し、前記増減判定ステップは、前記算出ステップが連続して算出したm個の前記移動平均値が、経時的に増加又は減少しているか否かを判定してもよい。
【0010】
無効電力を注入した場合、単調増加又は単調減少するはずの系統周期が、ノイズ等の影響により増加中に減少し、又は、減少中に増加したかのように検出される場合がある。この構成では、平均値を算出して、その平均値の増加又は減少を見ることで、ノイズ等の影響を軽減できる。
【0011】
本発明に係る単独運転検出方法の前記算出ステップは、一のタイミングで、前記系統周期検出ステップで検出される系統周期と、前記一のタイミングの直前に前記系統周期検出ステップで検出される系統周期との平均値を算出し、前記増減判定ステップは、前記算出ステップが連続して算出したm個の前記平均値が、経時的に増加又は減少しているか否かを判定してもよい。
【0012】
この構成でも、平均値を算出して、その平均値の増加又は減少を見ることで、ノイズ等の影響を軽減できる。
【0013】
本発明に係る単独運転検出方法の前記増減判定ステップは、前記算出ステップで算出されるm個の値が、経時的に増加しているか否かを判定すると共に、前記m個の値を正負反転させた値が、経時的に増加しているか否かを判定し、前記単独運転決定ステップは、前記増減判定ステップで行う2つの判定のうち、少なくとも一方においてn回以上増加していると判定され、かつ、前記傾き判定ステップで、算出した傾きが閾値以上であると判定された場合、前記分散型電源が単独運転していると決定してもよい。
【0014】
無効電力注入による系統周期の変動の方向(増加か減少)は停電時の系統周期の変動によって決まる。すなわち、停電時の系統周期が増加方向であれば、系統周期がさらに増加するように無効電力が注入され、停電時の増加方向が減少方向であれば、系統周期がさらに減少するように無効電力が注入される。したがって、単独運転を検出する場合、系統周期が増加しているときは系統周期が増加する回数を計測する必要があり、負方向に変動しているときは、系統周期が減少する回数を計測する必要がある。そこで、この構成では、系統周期に基づく値とそれに−1を乗じたものを同時並列的に評価し、それらの結果の論理和を最終的な結果とすることで、系統周期に基づく値が増減しているか否かに関係なく、「増加」の回数のみを計測するだけで、単独運転を検出できる。
【0015】
本発明は、電力系統に接続されている分散型電源が単独運転しているか否かを検出する単独運転検出装置において、前記電力系統の系統周期を随時検出する系統周期検出部と、前記系統周期検出部において、経時的に連続で検出された2つの系統周期を比較し、系統周期が経時的に増加している場合、前記電力系統の系統周期が高くなるよう前記電力系統に無効電力を注入し、系統周期が経時的に減少している場合、前記電力系統の系統周期が低くなるよう前記電力系統に無効電力を注入する系統周期変動部と、前記系統周期検出部が検出する系統周期に基づく値を算出する算出部と、前記算出部が算出するm(mは4以上の整数)個の値が、経時的に増加又は減少しているか否かの判定を行う増減判定部と、前記算出部が算出するm個の値から、線形回帰直線の傾きを算出し、算出した傾きが閾値以上であるか否かを判定する傾き判定部と、前記増減判定部がn回以上増減していると判定し、かつ、前記傾き判定部が、算出した傾きが閾値以上であると判定した場合、前記分散型電源が単独運転していると決定する単独運転決定部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
この構成では、停電時に無効電力が注入された電力系統の系統周期が、経時的に増加又は減少し(判定手法1)、かつ、変動する系統周期の回帰直線の傾きが急峻(閾値以上)である(判定手法2)場合に、分散型電源が単独運転であると決定する。判定手法1の場合、停電でない場合であっても、系統周期が増加又は減少していれば、分散型電源が単独運転であると誤判定される。また、判定手法2の場合、停電でない場合であっても、系統周期が瞬時的に大きく変動すれば、分散型電源が単独運転であると誤判定される。そこで、2つの判定手法において何れも分散型電源が単独運転であると判定した場合に、最終的に分散型電源が単独運転であると決定することで、高い単独運転の検出精度を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、2つの判定手法において何れも分散型電源が単独運転の可能性ありと判定した場合に、最終的に分散型電源が単独運転であると最終決定することで、高い単独運転の検出精度を得ることができる。また、先行文献のように、複数の偏差毎に閾値を予め設定する必要等もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係るエネルギーマネジメントシステムを示す図
図2】無効電力注入後の系統周期偏差、及び系統周期偏差の平均値の時間変化を示す図
図3】系統周期偏差から単独運転を判定する判定手法1を説明するための図
図4】系統周期が単調増加するか単調減少するかにかかわらず、単独運転を判定する方法を説明するための図
図5】系統周期偏差から単独運転を判定する判定手法2を説明するための図
図6】判定手法2において、単独運転と誤認識することを防ぐ場合について説明するための図
図7】単独運転でない場合の電力系統の系統周波数の変動を示す図
図8】無効電力注入処理を示すフローチャート
図9】系統周期偏差の平均化処理を示すフローチャート
図10】単独運転判定処理を示すフローチャート
図11】判定手法1の処理を示すフローチャート
図12】判定手法1の処理を示すフローチャート
図13】判定手法2の処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施形態に係るエネルギーマネジメントシステム100を示す図である。
【0020】
エネルギーマネジメントシステム100は、電力系統101に接続されている。電力系統101は、電力会社の発電所から電力を伝送する配電系統である。エネルギーマネジメントシステム100は、家庭内、商業施設又は工場内等に設置されていて、図示しないが、電力系統101には、複数のエネルギーマネジメントシステム100が接続されている。
【0021】
エネルギーマネジメントシステム100は、分散型電源10、パワーコンディショナ20、負荷30及び二次電池B1を備えている。
【0022】
分散型電源10は、例えば、太陽光発電装置、ガス発電装置、又は風力発電装置等である。分散型電源10は、パワーコンディショナ20を介して、電力系統101、負荷30及び二次電池B1に接続されている。負荷30は、家庭内等に設置される電気機器である。
【0023】
パワーコンディショナ20は、分散型電源10が発電した電力を電力系統101及び負荷30へ出力する。パワーコンディショナ20から負荷30へ出力される電力は、負荷30で消費される。また、負荷30で消費される電力よりも分散型電源10が発電する電力が大きい場合、パワーコンディショナ20で発電された電力は、余剰電力としてパワーコンディショナ20から電力系統101へ逆潮流する。さらに、パワーコンディショナ20は、分散型電源10が発電した電力の余剰電力を二次電池B1へ出力し、蓄電する。また、パワーコンディショナ20は、電力系統101から深夜に買電した電力を二次電池B1へ出力し、蓄電する。
【0024】
パワーコンディショナ20は、インバータ21、リレー22、DC−DCコンバータ23及びコントローラ24を備える。
【0025】
インバータ21は、分散型電源10から入力される直流電力を交流電力に変換する。または、インバータ21は、電力系統101から入力される交流電力を直流電力に変換する。
【0026】
リレー22は、インバータ21と電力系統101との間に接続されていて、後述のコントローラ24によりオンオフされる。リレー22は、平時はオン状態であり、分散型電源10と電力系統101とを接続している。リレー22は、電力系統101に事故が生じた場合(例えば、停電時)、コントローラ24によりオフされる。停電時、電力系統101は、エネルギーマネジメントシステム100から逆潮流される電力のみが通じている状態(単独運転状態と言う)となる。このとき、リレー22がオフすることで、分散型電源10は電力系統101から解列される。これにより、例えば、電力系統101を復旧作業中の作業員の感電等の事故を防止できる。
【0027】
DC−DCコンバータ23は、分散型電源10からの直流電圧、又は電力系統101から入力され、インバータ21電変換される直流電圧を変圧(昇圧又は降圧)し、二次電池B1に充電する。また、DC−DCコンバータ23は、二次電池B1に充電された直流電圧を変圧し、電力系統101及び負荷30へ出力する。
【0028】
コントローラ24は、例えば、プロセッサ及びメモリ等で構成されている。コントローラ24は、周波数検出部241、無効電力注入部242、単独運転判定部243及びリレー制御部244を備えている。コントローラ24は、本発明に係る「単独運転検出装置」の一例である。
【0029】
周波数検出部241は、本発明に係る「系統周期検出部」の一例である。周波数検出部241は、パワーコンディショナ20の出力側(電力系統101側)の電圧の周波数(周期)を随時検出する。詳しくは、周波数検出部241は、交流電圧波形に同期した方形波の立下りと立ち上がりとの中間値と、次の立下りと立ち上がりとの中間値との時間差を、交流電圧の周期として計測する。この計測した交流電圧の周期は、電力系統101の周期(以下、「系統周期」と言う)である。周波数検出部241は、計測した系統周期から、電力系統101の周波数(以下、「系統周波数」と言う)を算出する。周波数検出部241は、系統周期毎に系統周波数を検出する。
【0030】
無効電力注入部242は、本発明に係る「系統周期変動部」の一例である。無効電力注入部242は、周波数検出部241が随時検出した系統周波数の偏差に基づいて、電力系統101へ注入すべき無効電力を算出し、インバータ21から出力される電圧が、算出された無効電力に応じたパルス幅となるよう、インバータ21をPWM制御する。無効電力を電力系統101に注入することで、電力系統101の系統周波数を変動させることができる。この無効電力は、電力系統101の系統周波数の変動を助長するよう電力系統101に注入される。単独運転状態で無効電力を注入することで、電力系統101の系統周波数の変動はさらに大きくなる。後述の単独運転判定部243は、電力系統101の系統周波数の変動に基づいて、単独運転の有無を判定する。
【0031】
以下に、電力系統101へ注入すべき無効電力の算出方法について説明する。
【0032】
無効電力注入部242は、周波数検出部241が検出した最新の系統周波数と、その直前に連続して検出された複数の系統周波数との平均値Aを算出する。また、無効電力注入部242は、周波数検出部241が検出した最新の系統周波数検出時から数ミリ秒(例えば、200ms)過去までに連続して検出された複数の系統周波数の平均値Bを算出する。無効電力注入部242は、算出した平均値Bから平均値Aを減算して、周波数偏差を算出する。
【0033】
周波数偏差と無効電力とは略比例関係にあり、無効電力注入部242は、周波数偏差と無効電力との関係に基づいて、算出した周波数偏差に対応する無効電力を算出する。なお、無効電力注入部242は、周波数偏差が±0.01Hz以内の場合には、無効電力を注入しない。
【0034】
単独運転判定部243は、本発明に係る「算出部」、「増減判定部」、「傾き判定部」及び「単独運転決定部」の一例である。単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転しているか否かを判定する。単独運転の判定方法は後に詳述する。
【0035】
リレー制御部244は、単独運転判定部243により、分散型電源10が単独運転していると判定された場合、リレー22をオフする。これにより、単独運転している分散型電源10は電力系統101から解列される。
【0036】
以下に、単独運転の判定方法について説明する。
【0037】
単独運転判定部243は、2つの判定手法1,2の両方が「単独運転状態の可能性あり」と判定しているときに、分散型電源10が単独運転していると最終判定する。なお、判定手法1,2双方が、「単独運転状態の可能性あり」と判定している場合とは、本実施形態においては、後述する、(a)「−1」を乗算していない値について、判定手法1,2共に「単独運転状態の可能性あり」と判定した場合、または、(b)「−1」を乗算している値について、判定手法1,2共に「単独運転状態の可能性あり」と判定している場合を意味する。
【0038】
(判定手法1)
分散型電源10が単独運転状態である場合、電力系統101には、エネルギーマネジメントシステム100から逆潮流される電力のみが通じた状態であるため、電力系統101の系統周波数は変動する。そして、無効電力が電力系統101に注入された場合、正帰還により、電力系統101の系統周期は単調増加又は単調減少する。そこで、判定手法1では、単独運転判定部243は、無効電力が電力系統101に注入された状態で、検出された系統周期が後述の判定手法に基づいて単調増加又は単調減少している場合に、分散型電源10が単独運転の可能性ありと判定する。
【0039】
なお、停電時に系統周期が単調増加するか、単調減少するかは、停電時の周波数変動によって決まる。例えば、停電時に系統周期が増加する方向に変動した場合、無効電力を注入することで系統周期はさらに増加する。一方、停電時に系統周期が減少する方向に変動した場合、無効電力を注入することで系統周期はさらに減少する。以下では、無効電力を注入することで系統周期が増加する場合について説明する。
【0040】
系統周期が単調増加しているか否かを判定するために、単独運転判定部243は、周波数検出部241が検出した系統周期から系統周期偏差を算出する。系統周期偏差は、直近に検出された系統周期から、その直前に検出された複数の系統周期のトリム平均を減算することで算出される。単独運転判定部243は、連続して検出された2つの系統周期偏差の平均値を順次算出する。図2は、無効電力注入後の系統周期偏差、及び系統周期偏差の平均値の時間変化を示す図である。図2(A)は、無効電力注入部242で算出された系統周期偏差の時間変化を示す図であり、図2(B)は、経時的に連続して算出された2つの系統周期偏差の平均値の時間変化を示す図である。
【0041】
あるタイミングで算出された系統周期偏差をA、その直後に算出された系統周期偏差をBで表すと、単独運転判定部243は、A’=(A+B)/2を算出する。次に、系統周期偏差Bが算出された直後に算出された系統周期偏差をCで表すと、単独運転判定部243は、B’=(B+C)/2を算出する。さらに、系統周期偏差Cが算出された直後に算出された系統周期偏差をDで表すと、単独運転判定部243は、C’=(C+D)/2を算出する。これを繰り返し、単独運転判定部243は、2つの系統周期偏差の平均化を順次行う。
【0042】
前述のように、無効電力の注入後、系統周期は単調増加する傾向にある。しかしながら、図2(A)に示されるように、ノイズ等の影響により系統周期偏差Cの算出直後に算出された系統周期偏差Dは、系統周期偏差Cよりも低くなる場合がある。そこで、単独運転判定部243は、系統周期偏差の平均値を算出することで、ノイズ等の影響を小さくすることができ、その結果、図2(B)に示すように、系統周期偏差は単調増加する。
【0043】
判定手法1では、図2(B)に示す系統周期偏差の平均値(以下、系統周期偏差平均と言う)の時間変化において、系統周期偏差平均の増減判定をm回行い、n回以上増加していると判定した場合、単独運転判定部243は、判定手法1としては分散型電源10が単独運転状態の可能性ありと判定する。mは4以上の整数であり、nは3以上、m以下の整数である。本実施形態では、m=6、n=4とする。
【0044】
図3は、系統周期偏差平均から単独運転を判定する判定手法1を説明するための図である。図3の上図は、図2で説明した、系統周期偏差平均の時間変化を示している。図3の下図は、単独運転判定部243が備えるバッファに記憶されるデータの遷移状態を示している。
【0045】
単独運転判定部243は、系統周期毎に、電力系統101へ無効電力が注入されているか否かを判定する。無効電力が注入されていない場合、単独運転判定部243は、バッファに「0」を記憶する。図3では、時刻T1で無効電力が電力系統101に注入される。
【0046】
単独運転判定部243は、無効電力が注入されている場合であって、系統周期偏差平均が増加している場合にはバッファに「1」を記憶し、系統周期偏差平均が減少している場合にはバッファに「0」を記憶する。なお、増加も減少もなく同数の場合にもバッファには「0」を記憶する。
【0047】
単独運転判定部243は、6周期分の6個のデータ(0又は1)をバッファに逐次記憶する。そして、データ「1」が4個以上ある場合、単独運転判定部243は、判定手法1としては分散型電源10が単独運転状態の可能性ありと判定する。
【0048】
図3のバッファの状態(I)に示すように、周期(1)、(2)、(3)では、無効電力が注入されていないため、単独運転判定部243は、バッファに「0」を記憶する。周期(4)では、系統周期偏差平均は減少しているため、単独運転判定部243は、バッファに「0」を記憶する。周期(5)、(6)では、系統周期偏差平均は増加しているため、単独運転判定部243は、バッファに「1」を記憶する。このバッファの状態(I)では、無効電力が注入されていない状態を含むため、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転状態でないと判定する。
【0049】
次に、周期(7)では、系統周期偏差平均は増加しているため、単独運転判定部243は、バッファに「1」を記憶する。このとき、図3のバッファの状態(II)に示すように、単独運転判定部243は、バッファに蓄積された6個のデータのうち、最古のデータを削除する。このバッファの状態(II)では、無効電力が注入されていない状態を含ため、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転状態でないと判定する。
【0050】
続いて、周期(8)では、系統周期偏差平均は増加しているため、単独運転判定部243は、バッファに「1」を記憶する。このとき、同様に、単独運転判定部243は、バッファに蓄積された6個のデータのうち、最古のデータを削除する。このバッファの状態(III)では、6個のデータのうち、データ「1」は4個である。しかしながら、バッファの状態(III)は、無効電力が注入されていない場合を含むため、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転状態でないと判定する。
【0051】
無効電力が注入されていない場合は、分散型電源10が単独運転状態でないと判定する。電力系統101は、定常状態(停電でない状態)であっても、ノイズ等の影響で微小な周波数変動が生じる。このため、定常状態では無効電力が注入されないため、無効電力の注入を判定条件に加えることで、定常状態での電力系統101の微小な周波数変動に対する誤検出を防ぐことができる。
【0052】
周期(9)では、周波数偏差は減少しているため、単独運転判定部243は、バッファに「0」を記憶する。このとき、同様に、単独運転判定部243は、バッファに蓄積された6個のデータのうち、最古のデータを削除し、新たにデータ「0」を記憶する。このバッファの状態(IV)では、無効電力が注入されていて、かつ、6個のデータのうち、データ「1」は4個であるため、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転状態の可能性ありと判定する。すなわち、時刻T1で停電が起こった可能性があると判定される。
【0053】
なお、図3では、バッファの状態(I),(II),(III)に示すように、無効電力が注入されていない場合、データ「0」を記憶しているが、周波数偏差の増減を見る処理は、無効電力が注入されたタイミングで開始するようにしてもよい。すなわち、周期(1)、(2)、(3)では、バッファにはデータが記憶されない。
【0054】
図3では、系統周期は単調増加する場合に言及して説明したが、本実施形態では、系統周期が単調増加するか単調減少するかにかかわらず、分散型電源10が単独運転状態の可能性ありか否かを判定することができる。
【0055】
図4は、系統周期が単調増加するか単調減少するかにかかわらず、単独運転の可能性を判定する方法を説明するための図である。図4の実線は、図2で説明した、2つの系統周期偏差平均の時間変化を示す。
【0056】
単独運転判定部243は、図2で説明した、算出した系統周期偏差平均に、「−1」を乗算する。図4の破線は、図2で説明した、「−1」を乗算した系統周期偏差平均の時間変化を示す。そして、単独運転判定部243は、図4の実線で示す系統周期偏差平均の時間変化に対して、図3で説明したように、系統周期偏差平均の増減に応じて、バッファにデータ「0」、「1」を記憶する。また、単独運転判定部243は、図4の破線で示す系統周期偏差平均の時間変化に対して、周波数偏差の増減に応じて、バッファにデータ「0」、「1」を記憶する。すなわち、本実施形態では、(a)「−1」を乗算していない値、(b)「−1」を乗算している値、双方について、上述の方法でバッファにデータ「0」、「1」を記憶する処理を行うことで、単調増加、単調減少の双方に対応する設計としている。
【0057】
単独運転判定部243は、図4の実線及び破線それぞれの系統周期偏差平均の時間変化に対して行った判定から、分散型電源10が単独運転状態の可能性ありと判定した場合は「1」、単独運転状態でないと判定した場合は「0」とする。そして、その2つの結果の論理和を演算する。その結果、単独運転判定部243は、論理和が「1」の場合、分散型電源10が単独運転状態の可能性ありと判定し、論理和が「0」の場合、分散型電源10が単独運転状態でないと判定する。
【0058】
図4の実線で示す系統周期偏差平均の時間変化の場合、バッファAには、6個のうち、4個以上、すなわち本実施形態においては5個のデータ「1」が記憶されているため、単独運転判定部243は、単独運転状態の可能性ありと判定し、判定結果を「1」とする。図4の破線で示す周波数偏差の時間変化の場合、バッファBには、6個のうちデータ「1」は記憶されていないため、単独運転判定部243は、単独運転状態でないと判定し、判定結果を「0」とする。単独運転判定部243は、2つの判定結果「1」と「0」との論理和「1」から、判定手法1においては、分散型電源10が単独運転状態の可能性ありと判定する。
【0059】
無効電力注入による系統周期の変動の方向(増加又は減少)は停電時の系統周波数の変動によって決まる。すなわち、パワーコンディショナ20は、停電時に系統周期が増加している場合、系統周期がさらに増加するように無効電力を注入する。また、停電時に系統周期が減少している場合、系統周期がさらに減少するように無効電力を注入する。したがって、判定手法1において単独運転を判定する場合、系統周期が増加しているときは系統周期偏差平均の増加回数を計測する必要があり、系統周期が減少しているときは、系統周期偏差平均の減少回数を計測する必要がある。そこで、図4で説明したように、系統周期偏差平均とそれに「−1」を乗じたものを同時並列的に評価し、それぞれの結果の論理和を最終的な結果とすることで、停電時に系統周期が増加しているか減少しているかにかかわらず、系統周期偏差平均の増加回数のみを計測するだけで、単独運転状態の可能性があるか否かを判定できる。
【0060】
(判定手法2)
図5は、系統周期偏差平均から単独運転を判定する判定手法2を説明するための図である。図6は、判定手法2において、単独運転と誤認識することを防ぐ場合について説明するための図である。図5は、系統周期偏差から単独運転の可能性があるか否かを判定する判定手法2を説明するための図であり、図3と同様、時刻T1で無効電力が電力系統101に注入される状態を示す。
【0061】
判定手法2では、単独運転判定部243は、算出されたm(m=6)個の系統周期偏差平均を基に、例えば最小二乗法により、回帰直線の傾きを算出する。そして、算出した傾きが閾値以上であり、かつ、電力系統101へ無効電力が注入されている場合、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転状態の可能性ありと判定する。なお、算出した傾きが閾値以上である場合とは、例えば、系統周期偏差平均が1周期に±2Hz/s以上変動する場合である。
【0062】
なお、本実施形態においては、仮に閾値を「1」として説明する。すなわち、本実施形態の判定手法2においては、原則として、閾値が「1」以上の傾きを示す場合に、「単独運転の可能性あり」と判定するものとする。
【0063】
但し、判定手法1同様、傾き算出に用いる6個の系統周期偏差平均に、無効電力が注入されていないときに算出された系統周期偏差平均が含まれる場合には、回帰直線の傾きは「0」とする(除外条件1)。すなわち、単独運転とはみなさない。
【0064】
また、傾き算出に用いる6個の系統周期偏差平均のうち、最新の系統周期偏差平均から最古の系統周期偏差平均を減じた値が負である場合にも、回帰直線の傾きは「0」とする(除外条件2)。(最新の系統周期偏差平均)−(最古の系統周期偏差平均)が負である場合とは、系統周期偏差平均が単調減少している場合である。
【0065】
また、最古の系統周期偏差平均が負である場合、傾きは「0」とする(除外条件3)。これは、図6に示すようなステップ状変化において、単独運転と誤認識することを防ぐためである。ステップ状変化とは、電力系統101の系統周波数が瞬時的に大きく変化し、その後正常に戻るような場合である。ステップ状変化は、たとえば、工場等の巨大な負荷の変動により瞬時的に系統周期が変動する場合等に発生する。この場合、系統は停電してはいないので、すぐに正常値に戻るが、ステップ状変化により傾き算出だけでは閾値を超えてしまうおそれがある。そこで、除外条件3を設けている。
【0066】
以下、図5を参照しながら、判定手法2の流れを説明する。
【0067】
領域(A)の場合、領域(A)に含まれる6個の系統周期偏差平均には、無効電力が注入されていないときに算出されているものが含まれる。この場合、単独運転判定部243は、傾きを0とし、分散型電源10が単独運転状態でないと判定する。
【0068】
領域(B)の場合、領域(A)と同様、6個の系統周期偏差平均には、無効電力が注入されていないときに算出されているものが含まれる。このため、単独運転判定部243は、傾きを0とし、分散型電源10が単独運転状態でないと判定する。
【0069】
領域(C)の場合、領域(A),(B)と同様、6個の系統周期偏差平均には、無効電力が注入されていないときに算出されているものが含まれる。このため、単独運転判定部243は、傾きを0とし、分散型電源10が単独運転状態でないと判定する。
【0070】
領域(D)の場合、6個の系統周期偏差平均を基に算出される傾きは、1.1とする。この場合、算出した傾きは閾値「1」以上である。しかし、系統周期変動が起こった最初のポイントが負方向であるため、除外条件3に該当し、単独運転判定部243は、傾きを0とし、分散型電源10が単独運転状態でないと判定する。
【0071】
領域(E)の場合、6個の系統周期偏差平均を基に算出される傾きは、1.1とする。領域(D)の場合と異なり、系統周期変動が起こった最初のポイントは正方向であり、除外条件1〜3のいずれにも該当しない。この場合、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転状態の可能性ありと判定する。
【0072】
すなわち、時刻T7で停電が起こっている可能性ありと判定される。そして上述の通り、判定手法1,2双方が、単独運転状態の可能性ありと判定した場合に、単独運転状態であると最終判定する。
【0073】
なお、判定手法1,2双方が、単独運転状態の可能性ありと判定している場合とは、本実施形態においては、(a)「−1」を乗算していない値について、判定手法1,2共に「単独運転状態の可能性あり」と判定している場合、または、(b)「−1」を乗算した値について、判定手法1,2共に「単独運転状態の可能性あり」と判定している場合を意味する。
【0074】
このように、判定手法2では、複数の系統周期偏差平均から算出した回帰直線の傾きを用いて、分散型電源10が単独運転状態の可能性があるか否かを判定している。上述のように、無効電力を注入することで系統周期偏差平均は単調増加又は単調減少するが、ノイズ等の影響により、系統周期偏差平均は多少増減しながら、単調増加又は単調減少する場合がある。そこで、回帰直線を用いることで、周波数偏差の増減の影響を小さくすることができる。
【0075】
なお、図5では、系統周期偏差平均は単調増加する場合に言及して説明したが、本実施形態では、判定手法1と同様、系統周期が単調増加するか単調減少するかにかかわらず、分散型電源10が単独運転状態の可能性があるか否かを判定することができる。詳しくは、単独運転判定部243は、判定手法1と同様、算出した系統周期偏差平均に、「−1」を乗算する。そして、「−1」を乗算した系統周期偏差平均を用いて、回帰直線の傾きを算出する。単独運転判定部243は、図5で説明した系統周期偏差平均の傾き、又は、「−1」を乗算した系統周期偏差平均の傾きのいずれかが、閾値以上であり、かつ、除外条件に該当しない場合、分散型電源10が単独運転の可能性ありと判定する。
【0076】
上述の通り、単独運転判定部243は、判定手法1,2を行った結果、判定手法1,2双方が分散型電源10が単独運転の可能性ありと判定した場合、分散型電源10が単独運転であると最終判定を行う。単独運転判定部243が2つの判定手法1,2から単独運転の有無を最終判定することで、誤判定を抑制できる。
【0077】
停電時でない場合であっても、電力系統101に接続される負荷の軽重によって、電力系統101の系統周波数は多少変動する。このため、系統周波数の変動が、例えば±2Hz/s以内であれば、停電と判定するべきでない。この点、判定手法1のみの方法では、周波数偏差の変動が緩やかな場合(±2Hz/s以内の変動)であっても、系統周期偏差平均が単調増加していれば、単独運転と誤判定しまうおそれがある。しかし、本発明においては、判定手法2において、系統周期偏差平均の傾きが閾値以上(例えば、±2Hz/s以上の変動)でないと単独運転とは判定しない設定としているため、上述の誤判定を防ぐことができる。
【0078】
また、その他の例として、例えば、図7に示すような場合(単独運転ではない場合)が想定される。図7は、単独運転でない場合の電力系統101の系統周波数の変動を示す図である。すなわち、電力系統101の系統周波数が一度小さく正方向に変動した後に、瞬時的に大きく正方向に変化し、その後、徐々に正常に戻っていく場合である。この点、判定手法2のみの方法で判定しようとすると、算出した回帰直線の傾きが閾値以上となってしまう場合があり、単独運転と誤判定されてしまうおそれがある。しかし、上述の通り、本実施形態では、判定手法1と判定手法2とを組み合わせて単独運転か否かを最終判定するようにしているため、上述の誤判定を防ぐことができる。
【0079】
このように、2つの判定手法を用いることで、誤検出、検出漏れを防ぎ、かつ、高速な単独運転を検出することができる。
【0080】
図8は、無効電力注入処理を示すフローチャートである。
【0081】
周波数検出部241は、系統周波数を検出する(S1)。無効電力注入部242は、上述したように、検出した系統周波数から周波数偏差を算出する(S2)。無効電力注入部242は、算出した周波数偏差に基づいて、電力系統101へ無効電力を注入するか否かを判定する(S3)。例えば、算出した周波数偏差が±0.01Hz以内の場合には、無効電力注入部242は無効電力を注入しないと判定する。無効電力を注入しない場合(S3:NO)、本処理は終了する。
【0082】
無効電力を注入する場合(S3:YES)、無効電力注入部242は、周波数偏差と無効電力との関係に基づいて、算出した周波数偏差に対応する無効電力を算出する(S4)。そして、インバータ21から出力される電圧が、算出した無効電力に応じたパルス幅となるよう、無効電力注入部242は、インバータ21をPWM制御し、無効電力を電力系統101へ注入する(S5)。
【0083】
図9は、周波数偏差の平均化処理を示すフローチャートである。
【0084】
単独運転判定部243は、周波数検出部241が検出した系統周期から系統周期偏差を算出する(S11)。単独運転判定部243は、系統周期偏差平均を算出する(S12)。すなわち、単独運転判定部243は、直近に算出された系統周期偏差と、その直前に算出された系統周期偏差との平均値を算出する。単独運転判定部243は、算出した系統周期偏差平均をメモリに記憶する(S13)。単独運転判定部243は、この図9に示す処理を繰り返し実行する。これにより、図2(B)に示す、経時的に連続して算出された2つの系統周期偏差平均の時間変化を得ることができる。
【0085】
図10は、単独運転判定処理を示すフローチャートである。
【0086】
単独運転判定部243は、図11及び図12に示す判定手法1を実行する(S21)。図11及び図12は、判定手法1の処理を示すフローチャートである。
【0087】
単独運転判定部243は、無効電力が電力系統101に注入されているか否かを判定する(S31)。無効電力が注入されている場合(S31:YES)、単独運転判定部243は、図7に示す処理で算出された系統周期偏差平均の増減を判定する(S32)。詳しくは、単独運転判定部243は、直近に算出された系統周期偏差平均が、その直前に算出された系統周期偏差平均から増加しているか否かを判定する。
【0088】
系統周期偏差平均が増加している場合(S33:YES)、単独運転判定部243は、バッファAに「1」を記憶する(S34)。系統周期偏差平均が増加していない場合(S33:NO)、単独運転判定部243は、バッファAに「0」を記憶する(S35)。
【0089】
単独運転判定部243は、S32で用いた系統周期偏差平均に「−1」を乗算し、その結果の増減を判定する(S36)。詳しくは、単独運転判定部243は、算出された最新の系統周期偏差平均に「−1」を乗算した値が、その直前に算出された系統周期偏差平均に「−1」を乗算した値から増加しているか否かを判定する。増加している場合(S37:YES)、単独運転判定部243は、バッファBに「1」を記憶する(S38)。増加していない場合(S37:NO)、単独運転判定部243は、バッファBに「0」を記憶する(S39)。
【0090】
単独運転判定部243は、S31〜S39の処理を6回繰り返したか否かを判定する(S40)。すなわち、バッファA,Bそれぞれには6つのデータ(0又は1)が記憶されているか否かを判定する。6回繰り返していない場合(S40:NO)、単独運転判定部243は、S31の処理を再度実行する。6回繰り返した場合(S40:YES)、図12に示す単独運転判定部243は、S42の処理を実行する。
【0091】
S31において、電力系統101に無効電力が注入されていない場合(S31:NO)、単独運転判定部243は、S32〜S39の処理を行うことなく、バッファA,Bそれぞれにデータ「0」を記憶する(S41)。
【0092】
単独運転判定部243は、増減判定において、系統周期偏差平均、及び、系統周期偏差平均に「−1」乗算した値の少なくとも一方が、4回以上増加しているか否かを判定する(S42)。すなわち、単独運転判定部243は、バッファA,Bの少なくとも一方に、4個以上、データ「1」が記憶されているか否かを判定する。4回以上増加していない場合(S42:NO)、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転していないと判定する(S45)。
【0093】
4回以上増加している場合(S42:YES)、単独運転判定部243は、増減判定において無効電力が注入されている場合があるか否かを判定する。すなわち、データ「1」が4個以上記憶されているバッファA,Bに、S41で無効電力が注入されていない場合に記憶されたデータ「0」が記憶されているか否かを判定する。無効電力が注入されていない場合(S43:YES)、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転していないと判定する(S45)。無効電力が注入されている場合(S43:YES)、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転の可能性ありと判定する(S44)。
【0094】
S21の判定手法1の処理が終了すると、単独運転判定部243は、図13に示す判定手法2の処理を実行する(S22)。図13は、判定手法2の処理を示すフローチャートである。
【0095】
単独運転判定部243は、判定手法1で用いられた6個の系統周期偏差平均から得られる回帰直線の傾きを算出する(S51)。単独運転判定部243は、算出した傾きが閾値を超えるか否かを判定する(S52)。傾きが閾値を超えない場合(S52:NO)、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転していないと判定する(S55)。
【0096】
傾きが閾値を超える場合(S52:YES)、単独運転判定部243は、傾き算出時に無効電力が注入されているか否かを判定する(S53)。詳しくは、単独運転判定部243は、傾き算出に用いられた周波数偏差の中に、無効電力が注入されていない場合に算出された系統周期偏差平均があるか否かを判定する。無効電力が注入されていない場合(S53:NO)、すなわち、無効電力が注入されていない場合に算出された系統周期偏差平均がある場合、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転していないと判定する(S55)。無効電力が注入されている場合(S53:YES)、すなわち、無効電力が注入されていない場合に算出された周波数偏差がない場合、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転の可能性ありと判定する(S54)。
【0097】
S22の判定手法2が終了すると、単独運転判定部243は、判定手法1,2のいずれにおいても分散型電源10が単独運転の可能性ありと判定したか否かを判定する(S23)。判定手法1,2のいずれにおいても分散型電源10が単独運転の可能性ありと判定した場合(S23:YES)、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転していると最終的に判定し、リレー22をオフする(S24)。これにより、単独運転している分散型電源10を、電力系統101から解列することができる。
【0098】
判定手法1,2の少なくともいずれか一方が、分散型電源10が単独運転の可能性ありと判定していない場合(S23:NO)、単独運転判定部243は、分散型電源10が単独運転していないと最終的に判定する。この場合、リレー22はオフされない。
【0099】
なお、本実施形態では、m=6、n=4として説明したが、これに限定されない。mは4以上の整数であればよい。また、nは3以上であって、m以下の整数であればよい。好ましくは、系統周期偏差平均の増減判定をm回行い、n回以上増加しているか否かを判定する判定手法1において、n/m>1/2がよい。例えば、mが6の場合、nは4,5,6であり、mが7の場合、nは4,5,6,7であり、mが8の場合、nは5,6,7,8であることが好ましい。
【0100】
また、単独運転判定部243は、連続して検出された2つの系統周期偏差の平均値を算出し、その平均値を用いて判定手法1,2を行っているが、系統周期偏差の移動平均値を算出し、その移動平均値を用いて判定手法1,2を行うようにしてもよい。
【0101】
なお、本実施形態では、「−1」を乗算する手法、及び上述の除外条件1〜3を設定しているが、それらは一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。例えば、求められる仕様又は精度に応じて、除外条件を取り除いてもよいし、異なる除外条件を設定してもよい。また、本実施形態の判定手法1においては、n回以上「増加」しているか否かで判定しているが、反対にn回以上「減少」しているか否かを判定指標として設計してもよい。
【符号の説明】
【0102】
10…分散型電源
20…パワーコンディショナ
21…インバータ
22…リレー
23…DC−DCコンバータ
24…コントローラ
30…負荷
100…エネルギーマネジメントシステム
101…電力系統
241…周波数検出部
242…無効電力注入部
243…単独運転判定部
244…リレー制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13