(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような出力極性の切替機能を実現する比較例の手法として、回路装置の入力段に、信号の切替選択を行う選択回路を設ける手法が考えられる。例えばセンサーデバイスとアンプ回路の間に選択回路を設け、センサーデバイスからの差動入力信号である第1、第2の入力信号を切り替えて、アンプ回路に入力する。
【0006】
しかしながら、この比較例の手法では、センサーデバイスからアンプ回路への経路に、選択回路のインピーダンスが介在することで、差動入力信号間に電位差が生じ、アンプ回路の入力にオフセット成分等が乗ってしまう。従って、アンプ回路の差動増幅により、このオフセット成分まで増幅されてしまい、出力信号の出力特性に悪影響を与えるおそれがある。
【0007】
本発明の幾つかの態様によれば、選択回路のインピーダンス等による悪影響を抑制しながら出力信号の出力極性の切替機能を実現できる回路装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、差動入力信号を構成する第1の入力信号と第2の入力信号が入力され、差動出力信号を構成する第1の出力信号と第2の出力信号を出力する第1のアンプ回路と、前記第1のアンプ回路の後段側に設けられる、差動入力の第2のアンプ回路と、第1のモードでは、前記第1のアンプ回路からの前記第1の出力信号を、前記第2のアンプ回路の前記差動入力の第1の入力ノードに出力し、前記第1のアンプ回路からの前記第2の出力信号を、前記第2のアンプ回路の前記差動入力の第2の入力ノードに出力し、第2のモードでは、前記第2の出力信号を前記第2のアンプ回路の前記第1の入力ノードに出力し、前記第1の出力信号を前記第2のアンプ回路の前記第2の入力ノードに出力する選択回路と、を含む回路装置に関係する。
【0009】
本発明の一態様によれば、第1のアンプ回路は、差動入力信号を構成する第1、第2の入力信号が入力され、差動出力信号を構成する第1、第2の出力信号を出力する。そして選択回路は、第1のモードでは、第1のアンプ回路からの第1の出力信号、第2の出力信号を、各々、第2のアンプ回路の第1の入力ノード、第2の入力ノードに出力する。一方、第2のモードでは、第1のアンプ回路からの第2の出力信号、第1の出力信号を、各々、第2のアンプ回路の第1の入力ノード、第2の入力ノードに出力する。そして、第2のアンプ回路は、第1のアンプ回路から選択回路を介して入力された第1、第2の出力信号の信号増幅を行い、出力信号を出力する。このように選択回路が第1、第2のモードに応じて信号の選択切替を行うことで、第2のアンプ回路の出力信号の出力極性の切替機能を実現できる。そして、この場合に、選択回路は、第1のアンプ回路の前段側ではなく、第1のアンプ回路と第2のアンプ回路の間に設けられて、信号の選択切替を行う。従って、選択回路のインピーダンス等による悪影響を抑制しながら出力信号の出力極性の切替機能を実現できる回路装置の提供が可能になる。
【0010】
また本発明の一態様では、前記第2のアンプ回路は、差動入力、シングルエンド出力のアンプ回路であり、基準電圧を基準として、前記第1の入力信号と前記第2の入力信号を差動増幅した出力信号が、前記第2のアンプ回路のシングルエンドの出力ノードから出力されてもよい。
【0011】
このようにすれば、第2のアンプ回路のシングルエンドの出力ノードから、基準電圧を基準として、第1、第2の入力信号を差動増幅した出力信号が出力されるようになる。従って、第1のモードでは、基準電圧を基準として例えば正極性の出力信号を出力し、第2のモードでは、基準電圧を基準として例えば負極性の出力信号を出力するというような出力極性の切替機能を実現できる。
【0012】
また本発明の一態様では、前記第1の入力信号の電圧をV1とし、前記第2の入力信号の電圧をV2とし、前記基準電圧をVCOMとし、前記第1のアンプ回路と前記第2のアンプ回路による差動増幅のゲインをGとした場合に、前記第1のモードでは、前記第2のアンプ回路の前記出力ノードに、VCOM+G×(V1−V2)の電圧の前記出力信号が出力され、前記第2のモードでは、前記第2のアンプ回路の前記出力ノードに、VCOM−G×(V1−V2)の電圧の前記出力信号が出力されてもよい。
【0013】
このようにすれば、第1のモードでは、基準電圧を基準として正極性の出力信号であるVCOM+G×(V1−V2)の電圧の信号を出力し、第2のモードでは、基準電圧を基準として負極性の出力信号であるVCOM−G×(V1−V2)の電圧の信号を出力できるようになり、出力極性の切替機能を実現できる。
【0014】
また本発明の一態様では、前記基準電圧を調整し、調整後の前記基準電圧を出力する基準電圧調整回路を含んでもよい。
【0015】
このようにすれば、出力信号の正負の極性の基準となる基準電圧についても、基準電圧調整回路により調整可能になるため、様々な用途に適用可能な出力信号の出力が可能になる。
【0016】
また本発明の一態様では、前記第1の入力信号と前記第2の入力信号はセンサーデバイスからの入力信号であり、前記基準電圧調整回路は、温度センサーからの検出電圧に基づいて、前記センサーデバイスのオフセット電圧の温度依存性を補償する前記基準電圧を出力してもよい。
【0017】
このようにすれば、出力信号の基準となる基準電圧を有効利用して、センサーデバイスのオフセット電圧の温度依存性を補償できるようになり、当該オフセット電圧の温度依存性の影響を抑制した出力信号の出力が可能になる。
【0018】
また本発明の一態様では、前記センサーデバイスの基準温度での前記オフセット電圧をVOFとし、前記第1のアンプ回路と前記第2のアンプ回路による差動増幅のゲインをGとした場合に、前記基準電圧調整回路は、前記基準温度において、前記第1のモードでは、調整後の前記基準電圧を、VCOM−G×VOFに補正して出力し、前記第2のモードでは、調整後の前記基準電圧を、VCOM+G×VOFに補正して出力してもよい。
【0019】
このようにすれば、第1のモードでは、基準電圧が、VCOM−G×VOFに補正されて出力されるため、第1のモードで出力される出力信号でのオフセット電圧の温度依存性の影響を抑制できるようになる。また第2のモードでは、基準電圧が、VCOM+G×VOFに補正されて出力されるため、第2のモードで出力される出力信号でのオフセット電圧の温度依存性の影響を抑制できるようになる。
【0020】
また本発明の一態様では、前記センサーデバイスは圧力センサー又は加速度センサーであり、前記オフセット電圧は、圧力が基準圧力である場合の前記センサーデバイスの出力電圧又は加速度が基準加速度である場合の前記センサーデバイスの出力電圧であってもよい。
【0021】
このようにすれば、センサーデバイスとして圧力センサーや加速度センサーを用いた場合に、これらの圧力センサーや加速度センサーのオフセット電圧が出力信号の特性に及ぼす影響を抑制できるようになる。
【0022】
また本発明の一態様では、前記選択回路は、前記第1のアンプ回路の前記第1の出力信号が出力される第1の出力ノード及び前記第2の出力信号が出力される第2の出力ノードと、前記第2のアンプ回路の前記第1の入力ノードとの間に設けられる第1のスイッチ回路と、前記第1のアンプ回路の前記第1の出力ノード及び前記第2の出力ノードと、前記第2のアンプ回路の前記第2の入力ノードとの間に設けられる第2のスイッチ回路と、を含み、前記第1のモードでは、前記第1のスイッチ回路が前記第1の出力ノードと前記第1の入力ノードを電気的に接続し、前記第2のスイッチ回路が前記第2の出力ノードと前記第2の入力ノードを電気的に接続し、前記第2のモードでは、前記第1のスイッチ回路が前記第2の出力ノードと前記第1の入力ノードを電気的に接続し、前記第2のスイッチ回路が前記第1の出力ノードと前記第2の入力ノードを電気的に接続してもよい。
【0023】
このようにすれば、第1のモードでは、第1のスイッチ回路が第1の出力ノードと第1の入力ノードを電気的に接続し、第2のスイッチ回路が第2の出力ノードと第2の入力ノードを電気的に接続することで、第1のアンプ回路からの第1の出力信号、第2の出力信号を、各々、第2のアンプ回路の第1の入力ノード、第2の入力ノードに出力できるようになる。また第2のモードでは、第1のスイッチ回路が第2の出力ノードと第1の入力ノードを電気的に接続し、第2のスイッチ回路が第1の出力ノードと第2の入力ノードを電気的に接続することで、第1のアンプ回路からの第2の出力信号、第1の出力信号を、各々、第2のアンプ回路の第1の入力ノード、第2の入力ノードに出力できるようになる。
【0024】
また本発明の一態様では、前記第1のモードと前記第2のモードの設定情報を受け付けるインターフェース部を含んでもよい。
【0025】
このようにすれば、インターフェース部を介して第1、第2のモードの設定情報を受け付けることで、出力信号の出力極性を、第1、第2のモードに対応した出力極性に設定できるようになる。
【0026】
また本発明の一態様では、前記第1のモードと前記第2のモードの設定情報を記憶する不揮発性メモリーを含んでもよい。
【0027】
このようにすれば、不揮発性メモリーに記憶された第1、第2のモードの設定情報を用いて、出力信号の出力極性を設定して、第2のアンプ回路から出力できるようになる。
【0028】
また本発明の他の態様は、上記のいずれかに記載の回路装置を含む電子機器に関係する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0031】
1.回路装置
図1は、本実施形態の回路装置の構成例及びその動作を説明する図である。本実施形態の回路装置は、第1アンプ回路10と第2のアンプ回路20と選択回路30を含む。アンプ回路10は回路装置の入力段側に設けられ、アンプ回路20は回路装置の出力段側に設けられる。そして選択回路30はアンプ回路10とアンプ回路20の間に設けられる。
【0032】
アンプ回路10は、差動入力信号を構成する第1、第2の入力信号IS1、IS2が入力される。そして差動出力信号を構成する第1、第2の出力信号QA1、QA2を出力する。このようにアンプ回路10は、差動の入力信号IS1、IS2を差動増幅して、差動の出力信号QA1、QA2を出力する回路であり、差動入力、差動出力のアンプ回路である。
【0033】
ここで、差動信号(IS1及びIS2、QA1及びQA2)は、例えば所与の電圧レベルを基準に平衡な関係にある信号である。例えば入力信号IS1、IS2の一方の信号が正極性側(例えば基準電圧に対して正極性側)の信号レベルである場合に、他方の信号は負極性側(例えば基準電圧に対して負極性側)の信号レベルになる。また出力信号QA1、QA2の一方の信号が正極性側の信号レベルである場合に、他方の信号は負極性側の信号レベルになる。
【0034】
アンプ回路20は、アンプ回路10の後段側に設けられる差動入力のアンプ回路である。例えばアンプ回路20は選択回路30からの信号SQ1、SQ2が入力されて信号増幅を行い、増幅後の信号VQを出力する。
【0035】
選択回路30は例えばアンプ回路10とアンプ回路20の間に設けられる。そして
図11に示すように選択回路30は、第1のモードでは、アンプ回路10からの差動出力信号を構成する出力信号QA1を、アンプ回路20の差動入力の第1の入力ノードNI1に出力する。またアンプ回路10からの差動出力信号を構成する出力信号QA2を、アンプ回路20の差動入力の第2の入力ノードNI2に出力する。即ち選択回路30は、第1のモードでは、信号SQ1として信号QA1を出力し、信号SQ2として信号QA2を出力する。
【0036】
一方、選択回路30は、第2のモードでは、出力信号QA2をアンプ回路20の入力ノードNI1に出力し、出力信号QA1をアンプ回路20の入力ノードNI2に出力する。即ち選択回路30は、第1のモードでは、信号SQ1として信号QA2を出力し、信号SQ2として信号QA1を出力する。
【0037】
ここで
図1のアンプ回路20は、例えば差動入力、シングルエンド出力のアンプ回路である。即ち、選択回路30からの差動の選択出力信号SQ1、SQ2が入力されて、シングルエンドの信号VQを出力する。具体的には、基準電圧VCOM(出力オフセット電圧)を基準として、入力信号IS1とIS2を差動増幅した出力信号VQが、アンプ回路20のシングルエンドの出力ノードNQから出力される。例えば、アンプ回路10、20により入力信号IS1、IS2を差動増幅した電圧(G×(V1−V2))を、基準電圧VCOMに加算又は減算した電圧の信号VQが、アンプ回路20の出力ノードNQから出力される。
【0038】
例えば
図2に示すように入力信号IS1の電圧をV1とし、入力信号IS2の電圧をV2とする。V1−V2が入力信号IS1、IS2の差動成分となる。また基準電圧をVCOM(アナログ基準電圧、AGND、出力オフセット電圧)とし、アンプ回路10、20による差動増幅のゲイン(増幅率)をGとする。このゲインGは、例えばアンプ回路10のゲイン(G1)とアンプ回路20のゲイン(G2)を乗算(G=G1×G2)したものである。
【0039】
この場合に
図3に示すように、第1のモードでは、アンプ回路20の出力ノードNQに、VCOM+G×(V1−V2)の電圧の信号VQが出力される。即ち、基準電圧VCOMに対して、入力信号IS1、IS2の差動成分(V1−V2)をゲインGで増幅した電圧を加算した電圧の信号VQが出力される。
【0040】
一方、第2のモードでは、アンプ回路20の出力ノードNQに、VCOM−G×(V1−V2)の電圧の出力信号VQが出力される。即ち、基準電圧VCOMに対して、入力信号IS1、IS2の差動成分(V1−V2)をゲインGで増幅した電圧を減算した電圧の信号VQが出力される。
【0041】
以上の本実施形態の回路装置によれば、アンプ回路10とアンプ回路20の間に設けられた選択回路30により、出力信号VQの出力極性の切替(正極性、負極性の切替)が可能になる。例えば、入力された信号を増幅後、基準電圧VCOMに対して正極性、負極性のいずれの極性側に出力させるかの切替が可能になる。
【0042】
例えば第1のモード(正極性出力モード)に設定された場合には、アンプ回路10からの信号QA1、QA2を受けた選択回路30が、
図1に示すようにSQ1=QA1、SQ2=QA2の信号をアンプ回路20に出力することで、
図3に示すように例えば基準電圧VCOMに対して正極性となる信号SQの出力が可能になる。つまり、第1のモード(正極性出力モード)では、入力信号IS1、IS2の差動成分(V1−V2)が増加するにつれて、その電圧レベルが増加する正極性の信号SQが出力される。
【0043】
一方、第2のモード(負極性出力モード)に設定された場合には、アンプ回路10からの信号QA1、QA2を受けた選択回路30が、
図1に示すようにSQ1=QA2、SQ2=QA1の信号をアンプ回路20に出力することで、
図3に示すように例えば基準電圧VCOMに対して負極性となる信号SQの出力が可能になる。これにより、回路装置が組み込まれる電子機器の用途に応じた、信号SQの出力極性(正極性・負極性)の切替が可能になる。つまり、第2のモード(負極性出力モード)では、入力信号IS1、IS2の差動成分(V1−V2)が増加するにつれて、その電圧レベルが減少する負極性の信号SQが出力される。
【0044】
例えば入力信号IS1、IS2が圧力センサーの検出信号である場合を例にとり説明する。この場合に、圧力が増加するにつれて電圧が上昇するような信号VQを必要とする第1の用途と、圧力が増加するにつれて電圧が減少するような信号VQを必要とする第2の用途がある。具体的には第1の用途では、基準圧力(圧力=0)から圧力が増加するにつれて、基準電圧VCOMに対して電圧が増加するような信号VQ(正極性の信号)を必要とする。一方、第2の用途では、基準圧力から圧力が増加するにつれて、基準電圧VCOMに対して電圧が減少するような信号VQ(負極性の信号)を必要とする。
【0045】
このとき、本実施形態では、第1の用途の電子機器に回路装置が組み込まれる場合には、回路装置のモード(動作モード、信号出力モード)を第1のモードに設定する。こうすることで回路装置は、圧力が増加するにつれて、例えば基準電圧VCOMから電圧が上昇するような信号VQを出力できるようになり、第1の用途の要望に応えることが可能になる。
【0046】
一方、第2の用途の電子機器に回路装置が組み込まれる場合には、回路装置のモードを第2のモードに設定する。こうすることで回路装置は、圧力が増加するにつれて、例えば基準電圧VCOMから電圧が減少するような信号VQを出力できるようになり、第2の用途の要望に応えることが可能になる。
【0047】
そして本実施形態では、このような出力極性の切替を行うための選択回路30が、アンプ回路10とアンプ回路20の間に設けられている。このようにすれば、選択回路30を構成するスイッチ素子のインピーダンス等が信号VQの出力特性の与える悪影響を抑制することが可能になる。
【0048】
例えば
図4に本実施形態の比較例の回路装置の構成例を示す。この比較例の回路装置では、回路装置の入力段に選択回路530が設けられている。即ち、初段のアンプ回路510の前段側に選択回路530が設けられている。選択回路530は、例えば第1のモードではSQ1=IS1、SQ2=IS2の信号をアンプ回路510に出力し、第2のモードではSQ1=IS2、SQ2=IS1の信号をアンプ回路510に出力する。そして後段のアンプ回路520はアンプ回路510からの信号QA1、QA2を増幅する。この比較例の回路装置においても、選択回路530により信号VQの出力極性の切替が可能である。
【0049】
しかしながら、この比較例では、回路装置の入力段に選択回路530が設けられている。このため、選択回路530のスイッチ素子等のインピーダンスが原因で、アンプ回路510に入力される差動の信号SQ1、SQ2の間に電位差が生じ、アンプ回路510の入力にオフセット成分が乗ってしまう。従って、アンプ回路510、520の差動増幅により、このオフセット成分まで増幅されてしまうため、回路装置から出力される信号VQの出力特性に悪影響を与えてしまう。
【0050】
この点、本実施形態では、選択回路30は、アンプ回路10の後段側に設けられており、アンプ回路10からの信号QA1、QA2に基づき出力極性の切替を行っている。即ち、選択回路30は、第1のモードでは、アンプ回路10からの信号QA1、QA2をアンプ回路20の入力ノードNI1、NI2に出力することで、信号VQの正極性出力を実現する。第2のモードでは、信号QA2、QA1を入力ノードNI1、NI2に出力することで、信号VQの負極性出力を実現する。
【0051】
このようにすれば、選択回路30のスイッチ素子等のインピーダンスが存在する場合にも、そのインピーダンスが信号VQの出力特性に与える悪影響を最小限に抑えることができる。即ち、選択回路30に入力される信号QA1、QA2は、アンプ回路10による増幅後の信号であり、アンプ回路10の出力インピーダンスは低い。従って、アンプ回路10とアンプ回路20の間に介在する選択回路30のインピーダンス成分が原因となって、信号SQ1、SQ2の間に電位差が生じても、その電位差が信号VQの出力特性(オフセット特性等)に与える悪影響は、
図4の比較例に比べて遥かに小さくなる。従って、選択回路30のインピーダンス等による悪影響を抑制しながら、信号VQの出力極性の切替機能を実現できる回路装置の提供が可能になる。
【0052】
なお、以上では、第1、第2のモードにおいて
図3に示すような信号波形で信号VQを出力する場合について説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば正極性出力の場合と負極性出力との場合で、異なる電圧を基準として信号VQを出力したり、
図3とは異なる関係式で表される電圧の信号VQを出力するなどの種々の変形実施が可能である。
【0053】
2.回路装置の詳細な構成例
図5に本実施形態の回路装置の詳細な構成例を示す。なお本実施形態の回路装置は
図5の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0054】
アンプ回路10は、いわゆる計測アンプ(instrumentation amplifier)の回路構成であり、演算増幅器OPA1、OPA2、抵抗RA1、RA2、RA3を有する。
【0055】
演算増幅器OPA1、OPA2の非反転入力端子(広義には第1の入力端子)には、各々、入力信号IS1、IS2が入力される。即ち、演算増幅器OPA1の非反転入力端子はIS1の入力ノードNA1に接続され、演算増幅器OPA2の非反転入力端子はIS2の入力ノードNA2に接続される。
【0056】
抵抗RA1は、演算増幅器OPA1の出力ノードNQ1と、演算増幅器OPA1の反転入力端子(広義には第2の入力端子)のノードNA3との間に設けられる。抵抗RA2は、演算増幅器OPA2の出力ノードNQ2と、演算増幅器OPA2の反転入力端子のノードNA4との間に設けられる。これらのRA1、RA2は抵抗値が可変の抵抗である。抵抗RA3は、ノードNA3とNA4の間に設けられる。
【0057】
アンプ回路20は、演算増幅器OPB、抵抗RB1、RB2、RB3、RB4を有する。このアンプ回路20は差動増幅回路であり、RB1〜RB4は抵抗値が可変の抵抗である。
【0058】
抵抗RB1は、アンプ回路20の入力ノードNI1と、演算増幅器OPBの非反転入力端子のノードNB1との間に設けられる。抵抗RB2は、ノードNB1と基準電圧VCOMのノードNVとの間に設けられる。抵抗RB3は、アンプ回路20の入力ノードNI2と、演算増幅器OPBの反転入力端子のノードNB2との間に設けられる。抵抗RB4は、ノードNB2と信号VQのノードNQとの間に設けられる。
【0059】
選択回路30は、第1、第2のスイッチ回路31、32を含む。スイッチ回路31は、アンプ回路10の第1、第2の出力ノードNQ1、NQ2と、アンプ回路20の第1の入力ノードNI1との間に設けられる。スイッチ回路32は、アンプ回路10の第1、第2の出力ノードNQ1、NQ2と、アンプ回路20の第2の入力ノードNI2との間に設けられる。
【0060】
具体的にはスイッチ回路31は、スイッチ素子SW1、SW2を有する。スイッチ素子SW1は出力ノードNQ1と入力ノードNI1との間に設けられる。スイッチ素子SW2は出力ノードNQ2と入力ノードNI1との間に設けられる。スイッチ回路32は、スイッチ素子SW3、SW4を有する。スイッチ素子SW3は出力ノードNQ2と入力ノードNI2との間に設けられる。スイッチ素子SW4は出力ノードNQ1と入力ノードNI2との間に設けられる。これらのスイッチ素子SW1〜SW4は例えばMOSトランジスターにより実現される。具体的には、P型、N型のMOSトランジスターにより構成されるトランスファーゲートにより実現される。
【0061】
そして第1のモードでは、スイッチ回路31が出力ノードNQ1と入力ノードNI1を電気的に接続し、スイッチ回路32が出力ノードNQ2と入力ノードNI2を電気的に接続(導通)する。即ち、スイッチ素子SW1、SW3がオンになり、スイッチ素子SW2、SW4がオフになる。これにより選択回路30が、信号SQ1としてアンプ回路10からの信号QA1を出力し、信号SQ2として信号QA2を出力するようになり、
図1の第1のモードが実現される。
【0062】
第2のモードでは、スイッチ回路31が出力ノードNQ2と入力ノードNI1を電気的に接続し、スイッチ回路32が出力ノードNQ1と入力ノードNI2を電気的に接続する。即ち、スイッチ素子SW2、SW4がオンになり、スイッチ素子SW1、SW3がオフになる。これにより選択回路30が、信号SQ1としてアンプ回路10からの信号QA2を出力し、信号SQ2として信号QA1を出力するようになり、
図1の第2のモードが実現される。
【0063】
センサーデバイス50は、いわゆるホイートストンブリッジ回路の構成となっており、抵抗R1、R2、R3、R4を有する。ノードN3にはセンサー用の電源電圧VSENが供給される。抵抗R2、R3は、センサー用の電源電圧VSENのノードN3と、低電位側電源電圧(GND)のノードN4との間に直列に設けられる。抵抗R1、R4は、ノードN3とノードN4との間に直列に設けられる。抵抗R2と抵抗R3の接続ノードN1からの信号が、入力信号IS1としてアンプ回路10に入力される。抵抗R1と抵抗R4の接続ノードN2からの信号が、入力信号IS2としてアンプ回路10に入力される。
【0064】
次に、アンプ回路10、20のゲインについて説明する。例えば
図5において、信号IS1、IS2の電圧をV1、V2(
図2参照)とし、信号QA1、QA2の電圧をVA1、VA2とし、抵抗RA1、RA2、RA3の抵抗値を同じ符号であるRA1、RA2、RA3と表したとする。すると、計測アンプ(計装アンプ)であるアンプ回路10では、演算増幅器OPA1、OPA2の仮想接地により、ノードNA1の電圧とノードNA3の電圧は等しくなり、ノードNA2の電圧とノードNA4の電圧は等しくなる。このため、下式(1)が成り立つ。
【0065】
(VA1−V1)/RA1=(V1−V2)/RA3
=(V2−VA2)/RA2 (1)
上式(1)より下式(2)、(3)が成り立つ。
【0066】
VA1−V1=(RA1/RA3)×(V1−V2) (2)
V2−VA2=(RA2/RA3)×(V1−V2) (3)
上式(2)、(3)より下式(4)が成り立つ。
【0067】
VA1−VA2={1+(RA1+RA2)/RA3}×(V1−V2)
=G1×(V1−V2) (4)
ここで、G1はアンプ回路10のゲインであり、G1=1+(RA1+RA2)/RA3と表される。
【0068】
また、アンプ回路20の入力ノードNI1、NI2への入力電圧を、VB1、VB2と表し、信号VQの電圧を同じ符号であるVQと表し、抵抗RB1、RB2、RB3、RB4の抵抗値を同じ符号であるRB1、RB2、RB3、RB4と表したとする。すると、アンプ回路20では、演算増幅器OPBの仮想接地により、ノードNB1の電圧とノードNB2の電圧は等しくなる。このため、下式(5)が成り立つ。
【0069】
VB1+(VCOM−VB1)×{RB1/(RB1+RB2)}
=VB2+(VQ−VB2)×{RB3/(RB3+RB4)} (5)
上式(5)においてRB1=RB3、RB2=RB4とすると、下式(6)が成り立つ。
【0070】
VQ=VCOM+(RB2/RB1)×(VB1−VB2)
=VCOM+G2×(VB1−VB2) (6)
ここで、G2はアンプ回路20のゲインであり、G2=(RB2/RB1)と表される。
【0071】
そして、第1のモードに設定された場合には、
図1で説明したように信号SQ1の電圧VB1は、信号QA1の電圧VA1と等しくなり、信号SQ2の電圧VB2は、信号QA2の電圧VA2と等しくなる。このため、VB1−VB2=VA1−VA2が成り立つ。従って、上式(4)、(6)より、下式(7)が成り立つ。
【0072】
VQ=VCOM+G2×(VB1−VB2)
=VCOM+G2×(VA1−VA2)
=VCOM+G2×G1×(V1−V2)
=VCOM+G×(V1−V2) (7)
ここで、アンプ回路10、20の全体のゲインをG=G1×G2としている。この全体のゲインはG=G1×G2={1+(RA1+RA2)/RA3}×(RB2/RB1)と表される。
【0073】
一方、第2のモードに設定された場合には、信号SQ1の電圧VB1は、信号QA2の電圧VA2と等しくなり、信号SQ2の電圧VB2は、信号QA1の電圧VA1と等しくなる。このため、VB1−VB2=−(VA1−VA2)が成り立つ。従って、上式(4)、(6)より、下式(8)が成り立つ。
【0074】
VQ=VCOM+G2×(VB1−VB2)
=VCOM−G2×(VA1−VA2)
=VCOM−G2×G1×(V1−V2)
=VCOM−G×(V1−V2) (8)
以上のように、
図3で説明したように、第1のモードでは、VQ=VCOM+G×(V1−V2)で表される正極性の信号が出力され、第2のモードでは、VQ=VCOM−G×(V1−V2)で表される負極性の信号が出力されることになり、信号VQの出力極性の切替機能が実現される。
【0075】
そして
図5では、アンプ回路10として計測アンプの回路を用いているため、センサーデバイス50が検出した小振幅の微弱信号をノイズを抑えながら最適に増幅できるという利点がある。また計測アンプには入力インピーダンスを高インピーダンスにできるという利点がある。
【0076】
なお本実施形態の回路装置は
図5の構成に限定されない。例えば正極性出力の場合と負極性出力との場合で、異なる電圧を基準として信号VQを出力したり、上式(7)、(8)とは異なる関係式で表される電圧の信号VQを出力するようにしてもよい。またアンプ回路20の構成も
図5の構成に限定されない。例えば
図5のノードNQを−VCOMの基準電圧に設定し、ノードNQから−VCOMの基準電圧を出力し、ノードNVから信号VQを出力するようにしてもよい。例えば−VCOMを基準とした正極性出力と負極性出力を行うようにする。
【0077】
またアンプ回路10の構成も
図5の構成に限定されない。例えば
図6に変形例の構成を示す。
図6では、
図5とはアンプ回路10の構成が異なっている。
【0078】
図6では、アンプ回路10は、演算増幅器OPA3、OPA4と抵抗RA4、RA5、RA6、RA7を有する。抵抗RA4、RA5の接続ノードNA5は、演算増幅器OPA3の反転入力端子に接続される。抵抗RA5の他端は演算増幅器OPA3の出力端子に接続される。抵抗RA6、RA7の接続ノードNA6は、演算増幅器OPA3の非反転入力端子に接続される。抵抗RA6、RA7は、信号IS2の入力ノードNA7と低電位側電源電圧(GND)のノードとの間に直列に設けられる。
【0079】
これらの演算増幅器OPA3と抵抗RA4、RA5、RA6、RA7により、入力信号IS1、IS2の差動成分を増幅する差動増幅回路(シングルエンド出力)が構成される。例えば、RA4、RA5、RA6、RA7の抵抗値は、RA4=RA6、RA5=RA7に設定されており、この差動増幅回路のゲインはRA5/RA4と表される。
【0080】
一方、演算増幅器OPA4は、その反転入力端子と出力端子が接続されるボルテージフォロワーの接続となっており、入力信号IS2と同一の電圧レベルの信号を、低インピーダンスの信号QA2として出力する。これらの演算増幅器OPA3、OPA4と抵抗RA4、RA5、RA6、RA7により、差動入力、差動出力の増幅回路を構成できる。
【0081】
なお
図6において、例えば入力信号IS1として、例えば温度センサー等のセンサーデバイスからの検出信号を入力し、入力信号IS2として基準電圧信号を入力してもよい。
【0082】
センサーデバイス50としては例えば圧力センサーなどを用いることができる。
図7は圧力センサーの説明図である。
図7の圧力センサーは、ピエゾ抵抗型の半導体圧力センサーである。この圧力センサーでは、シリコン基板をエッチング等することで薄くしたダイアフラム600上に、拡散やイオン打ち込みの半導体プロセスで、ピエゾの抵抗R1、R2、R3、R4を形成する。そして
図7に示すように圧力が加わることで、ダイアフラム600が撓み、抵抗R1、R2、R3、R4に対して、ダイアフラム600の撓み量に応じた応力が加わる。この応力によるR1、R2、R3、R4の抵抗値の変化を検出することで、圧力を検出する。例えば圧力センサーの出力電圧であるVS(=V1−V2)は、下式(9)のように表すことができる。
【0083】
VS={(R1×R3−R2×R4)/(R1+R2+R3+R4)}×i (9)
ここでiは、抵抗R1〜R4により構成されるホイートストンブリッジ回路に流れる電流を表している。回路装置は、センサーデバイス50を例えば定電流駆動又は定電圧駆動するための電源電圧VSENをセンサーデバイス50に供給する。この電源電圧VSENは、例えばセンサーデバイス50の温度補償用の温度補正が行われた電圧である。
【0084】
上式(9)において、例えば圧力=0(広義には基準圧力)である場合には、R1、R2、R3、R4は同じ抵抗値Rになる。このように圧力=0(基準電圧)である場合の出力電圧VSがセンサーデバイス50のオフセット電圧である。
【0085】
そして、圧力によりダイアフラム600が撓んで、R1、R3の抵抗値がR2、R4の抵抗値よりも大きくなった場合(例えばR1=R3=R+ΔR。R2=R4=R)には、VS=V1−V2は正の電圧となる。一方、R1、R3の抵抗値がR2、R4の抵抗値よりも小さくなった場合(例えばR1=R3=R−ΔR。R2=R4=R)には、VS=V1−V2は負の電圧となる。この圧力センサーでは、例えば完全真空(絶対真空)を基準とした圧力である絶対圧や、大気の圧力を基準とした圧力であるゲージ圧(正側は正圧、負側は真空圧)や、任意の圧力を基準とした差圧などを検出できる。信号VQの出力極性の切替機能を持たせることで、このような種々の方式の圧力に対応することが可能になる。
【0086】
なお、圧力センサーは水圧などを検出するものであってもよい。またセンサーデバイス50(物理量トランスデューサー)は圧力センサーには限定されない。例えばセンサーデバイス50として、加速度センサーやジャイロセンサー(角速度センサー)などの種々のセンサーを用いることができる。
【0087】
加速度センサーとしては、例えばピエゾ抵抗方式や静電容量検出方式や熱検知方式などのセンサーを用いることができる。ピエゾ抵抗方式では、例えばセンサー素子可動部と固定部を接続するバネ部分に配置したピエゾ抵抗を用いて、加速度によってバネ部分に発生した歪みを検出する。このピエゾ抵抗方式の場合には、例えば
図5に示すようなホイートストンブリッジ回路を用いて、検出加速度に対応する入力信号IS1、IS2を、回路装置に入力できる。静電容量検出方式では、センサー素子可動部と固定部の間の容量変化を検出する。熱検知方式では、ヒーターによって筺体内に熱気流を発生させ、加速度による対流の変化を熱抵抗等で検出する。
【0088】
ジャイロセンサー(角速度センサー)としては、圧電型の振動片から構成される振動ジャイロなどを採用できる。具体的には、水晶などの圧電材料の薄板から形成される圧電型振動片の振動ジャイロを用いることができる。この場合の振動片は、例えば基部、連結腕、駆動腕、検出腕などにより構成できる。或いは、ジャイロセンサーとして、シリコン基板などから形成された静電容量検出方式の振動ジャイロを用いてもよい。なお、センサーデバイス50としてジャイロセンサーを用いる場合には、例えばセンサーデバイス50(振動片)からの第1、第2の電荷信号(差動信号)を、Q/V変換回路などを用いて電圧に変換し、変換後の差動電圧信号の差動増幅を行えばよい。
【0089】
以上のように、
図5等に示す本実施形態の回路装置では、アンプ回路10とアンプ回路20の間に選択回路30を設け、この選択回路30により、信号VQの出力極性の切替機能を実現している。
【0090】
例えば、本実施形態の比較例として、
図5の選択回路30をアンプ回路10の前段側に設ける手法が考えられる(
図4参照)。しかしながら、この比較例の手法では、選択回路30を構成するスイッチ素子SW1〜SW4が有するインピーダンスが、信号VQの出力特性に悪影響を与えてしまう。
【0091】
例えば
図5のセンサーデバイス50では、例えば圧力の変化に応じてR1〜R4の抵抗値が変化した場合に、その抵抗値の変化を、上式(9)のように電圧VS=V1−V2の変化として検出することで、圧力を検出している。
【0092】
ところが、選択回路30が、センサーデバイス50とアンプ回路10の間に設けられると、選択回路30のスイッチ素子SW1〜SW4のオン抵抗が原因で、上式(9)の電圧VSに誤差が生じる。例えば圧力=0(基準圧力)の場合のオフセット電圧が、正側に変化したり負側に変化するなどの誤差が生じる。またスイッチ素子SW1〜SW4を構成するトランジスターにはリーク電流が流れるため、このリーク電流が原因となって、電圧VSに誤差が生じる。この誤差には、プロセス変動や温度変動に起因するバラツキが発生する。そして選択回路30が、アンプ回路10の前段側に設けられると、この誤差が、アンプ回路10、20の信号増幅により更に増幅されてしまい、信号VQの出力特性に大きな悪影響を与えてしまう。
【0093】
この点、本実施形態では、
図5に示すように、選択回路30がアンプ回路10、20の間に設けられているため、選択回路30のスイッチ素子SW1〜SW4のオン抵抗やリーク電流に起因する悪影響を最小限に抑えることができる。即ち、スイッチ素子SW1〜SW4のオン抵抗やリーク電流は、アンプ回路10による増幅後の高振幅の信号QA1、QA2に対して影響を与えるだけであり、アンプ回路10の出力インピーダンスも小さい。従って本実施形態によれば、センサーデバイス50からの微少振幅の入力信号IS1、IS2に対して影響を与える比較例の手法に比べて、その悪影響の度合いは非常に小さくなる。従って、選択回路30のインピーダンス等による悪影響を抑制しながら、信号VQの出力極性の切替機能を実現できる回路装置の提供が可能になる。
【0094】
3.回路装置のシステム構成例
図8に本実施形態の回路装置の全体的なシステム構成例を示す。
図8の回路装置では、アンプ回路10、20、選択回路30に加えて、基準電圧調整回路60や制御部70やI/F部80などが更に設けられている。なお本実施形態の回路装置のシステム構成は、
図8の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0095】
基準電圧調整回路60は、基準電圧VCOMを調整し、調整後の基準電圧VCOMを出力する。例えば基準電圧調整回路60は、電源電圧間を電圧分割してレギュレートした電圧を、基準電圧VCOMとして生成する。この基準電圧VCOMは、回路装置から外部に出力される電圧であってもよいし、回路装置の外部に出力されない電圧であってもよい。また、基準電圧VCOMは、回路装置の端子による電圧設定や、I/F部80を介した設定情報(レジスター設定)などに基づいて、その電圧値が設定される。こうすることで、ユーザーが所望する電圧値の基準電圧VCOMを設定することが可能になる。
【0096】
制御部70は、各種の処理や回路装置の制御処理などを行う。制御部70は、例えばゲートアレイ等の自動配置配線手法で生成されたロジック回路や、或いはマイクロコンピューターなどの各種のプロセッサーにより実現できる。
【0097】
I/F(インターフェース)部80は、回路装置の外部デバイスとのインターフェース処理を行う回路である。例えばI/F部80は、外部デバイスが回路装置のレジスター部(不図示)にアクセスするための処理などを行う。そして、このI/F部80は、例えば第1、第2のモードの設定情報などを受け付ける処理を行う。
【0098】
不揮発性メモリー90は各種の情報を記憶する不揮発性のメモリーデバイスである。この不揮発性メモリー90は例えばI/F部80により受け付けられた第1、第2のモードの設定情報などを記憶する。
【0099】
不揮発性メモリー90としては、例えばEEPROMなどを用いることができる。EEPROMとしては例えばMONOS(Metal-Oxide-Nitride-Oxide-Silicon)型のメモリーを用いることができる。例えばMONOS型のメモリーを用いたフラッシュメモリーを用いることができる。或いはEEPROMとして、フローティングゲート型などの他のタイプのメモリーを用いてもよい。
【0100】
温度センサー62は温度を検出するセンサーである。具体的には温度センサー62は温度を検出して、温度(環境温度)に応じて変化する検出電圧VTMPを出力する。この温度センサー62は回路装置の内部に設けられるものであってもよいし、回路装置の外部に外付け部品として設けられるものであってもよい。温度センサー62は、例えばダイオードやサーミスター等の種々の回路素子により実現できる。
【0101】
本実施形態では、回路装置への入力信号IS1、IS2は、センサーデバイス50からの入力信号である。この場合に、基準電圧調整回路60は、温度センサー62からの検出電圧VTMPに基づいて、温度依存性を有する基準電圧VCOMを生成して出力する。
【0102】
即ち、基準電圧調整回路60が出力する基準電圧VCOMは、温度依存性を有しており、温度センサー62で検出された温度に応じた電圧値に設定される。具体的には基準電圧VCOMは、センサーデバイス50の出力電圧VS(=V1−V2)の温度特性を補償(相殺、キャンセル)するような温度特性を有している。例えば第1のモードに設定されていると共に、センサーデバイス50が、温度が上昇するにつれて出力電圧VSが増加するような温度特性(正の温度特性)を有していたとする。この場合には、基準電圧VCOMには、例えば温度が上昇するにつれて電圧が減少するような温度特性を持たせる。逆にセンサーデバイス50が、温度が上昇するにつれて出力電圧VSが減少するような温度特性(負の温度特性)を有していたとする。この場合には、基準電圧VCOMには、例えば温度が上昇するにつれて電圧が増加するような温度特性を持たせればよい。
【0103】
更に具体的には、基準電圧調整回路60は、温度センサー62からの検出電圧VTMPに基づいて、センサーデバイス50のオフセット電圧の温度依存性を補償(相殺、キャンセル)する基準電圧VCOMを出力する。
【0104】
例えばセンサーデバイス50の基準温度(ティピカル温度、例えば25度)でのオフセット電圧をVOFとし、アンプ回路10、20による差動増幅のゲインをGとする。この場合に基準電圧調整回路60は、基準温度(25度)において、第1のモード(正極性出力モード)では、調整後の基準電圧を、VCOM−G×VOFに補正して出力する。即ち、調整後の基準電圧から電圧G×VOFを減算した電圧を出力する。一方、基準電圧調整回路60は、基準温度において、第2のモード(負極性出力モード)では、調整後の基準電圧を、VCOM+G×VOFに補正して出力する。即ち、調整後の基準電圧に電圧G×VOFを加算した電圧を出力する。
【0105】
ここでオフセット電圧は、センサーデバイス50により検出される物理量が基準物理量(例えば物理量=0)である場合のセンサーデバイス50の出力電圧VSである。具体的にはセンサーデバイス50が圧力センサーである場合には、オフセット電圧は、圧力が基準圧力(例えば圧力=0)である場合のセンサーデバイス50(圧力センサー)の出力電圧VSである。またセンサーデバイス50が加速度センサーである場合には、オフセット電圧は、加速度が基準加速度(例えば加速度=0)である場合のセンサーデバイス50(加速度センサー)の出力電圧VSである。
【0106】
例えば上述した式(9)において、圧力=0(加速度=0)である場合(ダイアフラム600が撓んでいない場合)には、R1×R3=R2×R4となるため、原則的には、出力電圧はVS=0Vになるはずである。しかしながら、実際には、センサーデバイス50を構成する材料間の熱膨張係数の違いや、シリコンチップ表面におけるシリコンやシリコン酸化膜やアルミ配線の熱膨張係数の違いや、或いはピエゾ抵抗の温度係数のバラツキ等が原因となって、圧力=0の場合にも出力電圧はVS=0Vにならず、所与の電圧値のオフセット電圧がVSとして出力される。
【0107】
そして、このオフセット電圧には、プロセス変動によるバラツキや、温度変動によるバラツキが存在する。例えば同じ構造のセンサーデバイス50であっても、オフセット電圧には、プロセス変動に起因する個体差がある。また温度が変化すれば、オフセット電圧もそれに応じて変化する。
【0108】
一方、センサーデバイス50が圧力センサーである場合には、回路装置が出力する信号VQの電圧は、圧力に応じた電圧値となる。しかしながら、上述のようにセンサーデバイス50のオフセット電圧が変動すると、信号VQの電圧も変動してしまう。
【0109】
そこで本実施形態では、このようなオフセット電圧の変動に起因した信号VQの電圧変動を抑制する手法を採用する。
【0110】
例えば
図9は、センサーデバイス50である圧力センサーが検出する圧力と、回路装置が出力する信号VQの電圧の関係を示す図である。ここで、Gはアンプ回路10、20の差動増幅のゲインであり、例えばアンプ回路10、20のゲインをG1、G2とした場合に、例えばG=G1×G2の関係が成り立つ。
【0111】
図9において、センサーデバイス50のオフセット電圧が0Vである場合には、圧力とVQの電圧の関係はCLTに示す特性となる。
【0112】
例えば第1のモード(正極性出力モード)では、VQ=VCOM+G×(V1−V2)と表されるため、圧力が上昇するにつれてVQの電圧も増加する。これに対して第2のモード(負極性出力モード)では、VQ=VCOM−G×(V1−V2)と表されるため、圧力が上昇するにつれてVQの電圧は減少する。なお、ここでは、圧力が上昇するにつれて、センサーデバイス50の出力電圧VS=V1−V2が増加する場合を想定しているが、この逆(VSが減少)であってもよい。
【0113】
そして、基準温度(25度)におけるセンサーデバイス50のオフセット電圧をVOFとする。すると、
図9に示すように、第1のモードでは、圧力とVQの電圧の関係はCLHに示す特性となり、第2のモードでは、圧力とVQの電圧の関係はCLLに示す特性となる。
【0114】
即ち、圧力=0の場合のオフセット電圧が0Vであれば、第1のモードでは、圧力=0におけるVQの電圧はVQ=VCOM+G×(V1−V2)=VCOMになる。これに対して、オフセット電圧がVOFである場合には、圧力=0におけるVQの電圧はVQ=VCOM+G×VOFになる。
【0115】
同様に、オフセット電圧が0Vであれば、第2のモードでは、圧力=0におけるVQの電圧はVQ=VCOM−G×(V1−V2)=VCOMになる。これに対して、オフセット電圧がVOFである場合には、圧力=0におけるVQの電圧はVQ=VCOM−G×VOFになる。なお、ここではオフセット電圧VOFが正の電圧である場合を想定しているが、VOFは負の電圧であってもよい。
【0116】
このように、センサーデバイス50にオフセット電圧VOFが存在すると、VQの電圧は、CLH、CLLの特性に示すように、CLTの特性からずれてしまい、変動してしまう。
【0117】
そこで、このようなオフセット電圧に起因するVQの電圧の変動を補正するために、本実施形態では、基準電圧VCOMを補正する。具体的には、第1のモードでは、基準電圧を、VCOM−G×VOFに補正する。即ち、調整後の基準電圧から、G×VOFを減算する補正を行う。こうすることで、
図9において、特性CLHを下側にシフトして、特性CLTに略一致させることが可能になる。
【0118】
また第2のモードでは、基準電圧を、VCOM+G×VOFに補正する。即ち、調整後の基準電圧に対して、G×VOFを加算する補正を行う。こうすることで、
図9において、特性CLLを上側にシフトして、特性CLTに略一致させることが可能になる。
【0119】
このように本実施形態では、オフセット電圧に起因するVQの電圧の変動を抑制する補正処理を、基準電圧VCOMを補正することで実現している。
【0120】
即ち本実施形態では、基準電圧VCOMを基準として、入力信号IS1、IS2を差動増幅した信号VQが回路装置から出力されることに着目し、基準電圧VCOMを補正することで、オフセット電圧に起因するVQの電圧の変動を抑制する補正処理を実現している。こうすることで、簡素な回路構成で、当該補正処理を実現して、オフセット電圧の変動に依存しない電圧の信号VQを出力することが可能になる。
【0121】
また、本実施形態では、
図8に示すように、第1、第2のモードの設定情報を受け付けるI/F部80を設けている。そして、この第1、第2のモードの設定情報を、不揮発性メモリー90に記憶するようにしている。
【0122】
例えば電子機器の製造メーカー等であるユーザーは、例えば製品の開発時に、I/F部80を介して回路装置のレジスター部(不図示)にアクセスし、各種の設定情報をレジスター部に書き込んで、回路装置に各種の動作を行わせる。そして製品の出荷時には、当該設定情報が、不揮発性メモリー90に書き込まれる。これにより、回路装置は、不揮発性メモリー90に書き込まれた設定情報に基づいて動作するようになり、ユーザーが所望する回路装置の動作を実現できるようになる。
【0123】
そして、このような設定情報として、第1、第2のモードの設定情報が、I/F部80により受け付けられると共に、不揮発性メモリー90に書き込まれて記憶される。
【0124】
ここで、第1、第2のモードの設定情報は、回路装置を第1、第2のモードのいずれのモードで動作させるかを指定する情報を含むことができる。
【0125】
例えば、第1のモードを指定する設定情報が、I/F部80により受け付けられ、不揮発性メモリー90に書き込まれると、回路装置は、
図3で説明した正極性の出力モードで信号VQを出力する。具体的にはVQ=VCOM+(V1−V2)×Gとなるように信号VQを出力する。
【0126】
一方、第2のモードを指定する設定情報が、I/F部80により受け付けられ、不揮発性メモリー90に書き込まれると、回路装置は、
図3で説明した負極性の出力モードで信号VQを出力する。具体的にはVQ=VCOM−(V1−V2)×Gとなるように信号VQを出力する。
【0127】
なお、第1、第2のモードの設定情報は、このような第1、第2のモードの指定情報以外にも、例えば基準電圧VCOMの電圧調整情報や、オフセット電圧VOFの調整情報などの各種の情報を含むことができる。
【0128】
4.電子機器
図10に、本実施形態の回路装置200が適用された電子機器の構成例を示す。電子機器は、処理部300、記憶部310、操作部320、入出力部330、回路装置200、バス340、センサーデバイス50を含む。
【0129】
処理部300は、電子機器の各種の制御処理や演算処理を行うものであり、例えばMPU等のプロセッサーやASICなどにより実現される。記憶部310は、各種の情報を記憶するものであり、SRAMやDRAM等の半導体メモリーにより実現される。操作部320は、ユーザーの操作情報を受け付けるものである。入出力部330は、電子機器のインターフェース部となるものであり、例えば有線又は無線の通信方式により各種の情報を入力したり、出力する。
【0130】
本実施形態では、センサーデバイス50で検出された物理量の情報が出力信号として回路装置200から出力される。処理部300は、この出力信号や操作部320により受け付けられた操作情報に基づいて、各種の処理を行う。この場合には、処理部300は記憶部310をワーク領域として各種の処理を行う。
【0131】
なお本実施形態が適用される電子機器としては、例えば圧力センサー、加速度センサー或いはジャイロセンサーなどの種々のセンサーデバイス50を用いる種々の機器を想定できる。例えば電子機器としては、浴槽用機器、給湯器、携帯情報端末(スマートフォン、携帯電話機等)、車載機器、デジタルカメラ、ビデオカメラ、プリンター、或いは情報処理装置(PC、PDA)等の種々の機器を想定できる。
【0132】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また回路装置や電子機器の構成等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。