(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
難燃性の光ケーブルなどの難燃性ケーブルは、出荷する際には輸送用の大型のドラムに巻いて出荷を行っている。輸送用の大型のドラムは、樹脂では大型のドラムが作れないため、通常木製ドラムが用いられる。出荷の際には、木製ドラムに難燃性ケーブルを巻き、ケーブルを巻いた木製ドラムの両側の鍔部に、周方向へわたって複数の小割板を釘で打ち付け、胴部に巻かれたケーブルを囲っている。
【0005】
このような難燃性ケーブルが巻かれた木製ドラムを遠隔地へ輸出する場合などは、通常コンテナに入れ、船舶輸送を実施している。船舶輸送では、輸送中に気温や湿度が高い地域を通過する場合があり、この際、船内およびコンテナ内が高温、高湿度状態となる場合がある。そして、この際、昼夜の温度差等により、木製ドラムに含まれる水分や大気中の水分が結露してケーブル表面に付着する。
【0006】
難燃性ケーブルには、外被の成分として例えば水酸化マグネシウムが使われており、これが水分と反応すると炭酸マグネシウムとなり、白くなることが確認されている。このため、難燃性ケーブルでは、上記のように水分がケーブル表面に付着すると、外被材料の水酸化マグネシウムと反応して炭酸マグネシウムが生成され、外被が白化し、外観不良となる。
【0007】
上記のような船舶輸送時の結露を防ぐために、上記特許文献1の収納装置を用いた場合は、輸送する大型の木製ドラム毎に、これを覆うような大型の収納装置がそれぞれ必要となる。船舶輸送時には、通常、多数の木製ドラムを輸送するため、多数の収納装置および大量の乾燥ガスが必要となり現実的ではない。また、上記特許文献2のように、ケーブルそのものに断熱層を設けることも、困難である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、難燃性ケーブルを出荷する際に巻く木製ドラムに含まれる水分、大気中の水分が結露し、ケーブル表面に付着するのを防止することができる難燃性ケーブルの梱包方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る難燃性ケーブルの梱包方法は、
ポリエチレン樹脂に水酸化マグネシウムを添加した外被を有する難燃性ケーブルの梱包方法であって、
胴部と該胴部の軸方向両端に形成される鍔部とを有する
船舶輸送用木製ドラムに対し、前記胴部の表面と前記鍔部の内側の面とに発泡体からなる防水部材を貼りつける工程と、
前記防水部材が貼り付けられた前記木製ドラムの前記胴部に、難燃性ケーブルを巻き付ける工程と、
前記木製ドラムに巻き付けられた前記難燃性ケーブルの表面に乾燥材を貼り付けて、前記難燃性ケーブルおよび前記乾燥材と前記鍔部の内側の面とを覆うように防水シートを巻き付ける工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、難燃性ケーブルを出荷する際に巻く木製ドラムに含まれる水分、大気中の水分が結露し、ケーブル表面に付着するのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。
本発明の実施形態に係る難燃性ケーブルの梱包方法は、
(1)
ポリエチレン樹脂に水酸化マグネシウムを添加した外被を有する難燃性ケーブルの梱包方法であって、
胴部と該胴部の軸方向両端に形成される鍔部とを有する
船舶輸送用木製ドラムに対し、前記胴部の表面と前記鍔部の内側の面とに発泡体からなる防水部材を貼りつける工程と、
前記防水部材が貼り付けられた前記木製ドラムの前記胴部に、難燃性ケーブルを巻き付ける工程と、
前記木製ドラムに巻き付けられた前記難燃性ケーブルの表面に乾燥材を貼り付けて、前記難燃性ケーブルおよび前記乾燥材と前記鍔部の内側の面とを覆うように防水シートを巻き付ける工程と、を有する。
【0013】
木製ドラムには、その胴部の表面と鍔部の内側の面とに発泡体からなる防水部材が貼りつけられているので、木製ドラムに含まれる水分が、難燃性ケーブルを巻き付ける部分に出てくることを防止できる。また、難燃性ケーブルの上から防水シートを巻き付けた状態となるので、大気中の水分が結露し、難燃性ケーブルの表面に付着するのを防止することができる。
また、防水シートと難燃性ケーブルとの間に乾燥材があるので、防水シート内を乾燥した状態に保つことができる。これらにより、安価な方法で、難燃性ケーブルを出荷する際に巻く木製ドラムに含まれる水分、大気中の水分が結露し、難燃性ケーブルの表面に付着するのを防止することができる。
【0014】
(2) (1)の難燃性ケーブルの梱包方法において、前記発泡体は、架橋ポリエチレン発泡体である。
防水部材の発泡体が架橋ポリエチレン発泡体であるので、発泡スチレン(発泡スチロール)等の発泡体に比べ、吸水性、吸湿性に優れており、且つ、柔軟で曲げやすく、容易に加工することができる。
【0015】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る難燃性ケーブルの梱包方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
本実施形態の難燃性ケーブルの梱包方法は、製造された難燃性ケーブル(例えば、難燃性の光ケーブルなど)を出荷する際に、輸送用の大型(例えば、径が約1m以上など)のドラムに巻きつけて梱包を行う方法である。
樹脂などの素材では大型のドラムを作れないため、輸送用の大型のドラムとしては、通常、
図1に示すような木製ドラム1が用いられる。
図1に示すように、木製ドラム1は、円筒状の木製の胴部2と、この胴部2の軸方向両端に、例えば木製の円板を嵌め込むようにして形成された木製の鍔部3とを有している。
以下、
図1から
図6を参照しつつ、本実施形態の難燃性ケーブルの梱包方法の手順を説明する。
【0017】
(第一工程)
図2は、木製ドラム1において、防水部材4を貼りつけた後の状態を示す図である。
図1で示した木製ドラム1に対し、
図2に示すように、数mm(例えば、5mm)厚の発泡体からなるシート状の防水部材4(例えば、架橋ポリエチレン発泡体)を、胴部2の表面2aと、両端の鍔部3の内側の面3aとに、それぞれ貼り付ける。このとき、1枚の防水部材4で上記の面を全て覆うのは難しいので、複数枚の防水部材4を貼り付けて、防水部材4同士を接合させる。この接合部に隙間が生じるため、ガラステープ5を貼るなどして隙間を塞ぎ、防水部材4の隙間からの水分の侵入を防ぐ。
【0018】
(第二工程)
図3は、
図2の状態の木製ドラム1に対して、胴部2に難燃性ケーブルを巻き付けた後の状態を示す図である。
前記第一工程により防水部材4を貼った木製ドラム1に、
図3に示すように、所定の長さ(例えば、約3000m〜5000m)の難燃性ケーブル6を巻き付ける。難燃性ケーブル6は、難燃性を持たせるために、ポリエチレン樹脂に水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)を添加した外被を有するケーブルである。
【0019】
(第三工程)
図4は、
図3の状態の木製ドラム1に対して、難燃性ケーブル6の表面に乾燥材7を貼り付けた後の状態を示す図である。
前記第二工程により木製ドラム1に巻き付けた難燃性ケーブル6の表面に、
図4に示すように、乾燥材7(例えば、100g程度のシリカゲルを入れた袋)を、複数箇所(例えば8〜10箇所程度)にそれぞれ貼り付ける。さらに、
図5に示すように、防水シート8(例えば、ポリエチレン製の防水シート)により、木製ドラム1に巻き付けた難燃性ケーブル6および乾燥材7と、両側の鍔部3の少なくとも内側の面3aとを覆う。なお、鍔部3の外側の面3bの一部も防水シート8で覆うようにしてもよい。
【0020】
(第四工程)
図6は、
図5の状態の木製ドラム1に対して、小割板9で覆われて梱包が完了した状態を示す図である。
図6に示すように、
図5で示した状態の木製ドラム1に対し、両側の鍔部3の径方向の端部に、周方向へわたって複数の小割板9を釘等で打ち付けるなどして取り付ける。これにより、木製ドラム1の胴部2に巻き付けられた難燃性ケーブル6の表面およびそれを覆う防水シート8が外部に露出しないように小割板9で覆われた状態(梱包が完了した状態)となる。
【0021】
以上詳述した本実施形態の難燃性ケーブルの梱包方法によれば、木製ドラム1の胴部2の表面2aと鍔部3の内側の面3aとに発泡体からなる防水部材4が貼りつけられているので、木製ドラム1に含まれる水分が、難燃性ケーブル6を巻き付ける部分に出てくることを防止できる。
【0022】
また、難燃性ケーブル6の上から防水シート8を巻き付けた状態となるので、大気中の水分が結露し、難燃性ケーブル6の表面に付着するのを防止することができる。また、防水シート8と難燃性ケーブル6と間に乾燥材7が入れられているので、防水シート8内を乾燥した状態に保つことができる。これにより、安価な方法で、難燃性ケーブル6を出荷する際に巻く木製ドラム1に含まれる水分、大気中の水分が結露し、難燃性ケーブル6の表面に付着するのを防止することができる。
【0023】
また、防水部材4の発泡体を架橋ポリエチレン発泡体とすることにより、良好な防水性を発揮することができる。
【0024】
[実施例]
(実施例の梱包方法)
実施例の梱包方法では、木製ドラム1(
図1参照)のサイズが、鍔部3の径が2400mm、胴部2の径が1200mm、内幅が1020mm、外幅が1200mmのものを使用した。なお、上記内幅とは、一方の鍔部3の内側の面3aから他方の鍔部3の内側の面3aまでの長さである。また、外幅とは、一方の鍔部3の外側の面3bから他方の鍔部3の外側の面3bまでの長さである。
【0025】
図1に示した木製ドラム1に対して、第一工程の手順により、胴部2の表面2aおよび鍔部3の内側の面3aに5mm厚のシート状の防水部材(架橋ポリエチレン発泡体)を貼りつけた(
図2参照)。
次に、第二工程の手順により、外被に対しポリエチレン樹脂に水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)が添加された長さ5000mの難燃性ケーブル6を、木製ドラム1に巻き付けた(
図3参照)。
次に、第三工程の手順により、難燃性ケーブル6の表面に、乾燥材7として100g程度のシリカゲルを入れた袋を、1袋ずつ10箇所にそれぞれ貼り付け、その上をポリエチレン製の防水シート7で覆った(
図4、
図5参照)。
次に、第四工程の手順により、木製ドラム1を小割板9で覆われた状態とした(
図6参照)。
【0026】
(比較例の梱包方法)
比較例の梱包方法では、
図1に示した木製ドラム1(サイズは実施例のドラム1と同じもの)に対して、防水部材4を貼り付けずに、実施例と同じ材質で長さが等しい難燃性ケーブル6を巻き付け、両側の鍔部3の径方向の端部に、周方向へわたって複数の小割板9を取り付けて覆った。
【0027】
上記実施例の梱包方法によって木製ドラム1に巻かれた難燃性ケーブル6と、上記比較例の梱包方法によって木製ドラム1に巻かれた難燃性ケーブル6とを、それぞれ船舶に搭載して、(船内およびコンテナ内が高温、高湿度状態となる)赤道を越えるルートで輸送を行った後、難燃性ケーブル6の表面の白化率(外被に白化が生じる確率)を調べた。その結果、比較例の梱包方法によって木製ドラム1に巻かれた難燃性ケーブル6の白化率は100%であったのに対し、実施例の梱包方法によって木製ドラム1に巻かれた難燃性ケーブル6の白化率は0%であった。