特許第6610073号(P6610073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6610073
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】点火装置
(51)【国際特許分類】
   F02P 3/00 20060101AFI20191118BHJP
   F02P 3/055 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   F02P3/00 B
   F02P3/055 Z
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-157618(P2015-157618)
(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公開番号】特開2017-36694(P2017-36694A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100080045
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100124752
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】竹田 俊一
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−014237(JP,A)
【文献】 特開昭62−233476(JP,A)
【文献】 特表2003−519739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 1/00−3/12、7/00−17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次コイル(2)および2次コイル(3)を有する点火コイル(4)と、前記2次コイルに接続する点火プラグ(5)とを備え、前記1次コイルへの通電のオンオフに伴う電磁誘導により前記点火プラグにエネルギーを投入して火花放電を発生させる内燃機関用の点火装置(1)において、
前記1次コイルへの通電をオンオフすることで、前記点火プラグに火花放電を開始させる第1回路(11)と、
この第1回路の動作によって開始した火花放電中に、前記第1回路による通電方向とは逆の方向に前記1次コイルに通電することで、前記2次コイルの通電を前記第1回路の動作で開始したのと同一方向に維持して前記点火プラグにエネルギーを投入し続け、火花放電を継続させる第2回路(12)と、
前記第1回路および前記第2回路の動作を制御する制御部(13、14、15)と、
前記第2回路の動作により前記1次コイルに流れた電流をバッテリ(20)に還流させる還流回路(35)と、
前記1次コイルの前記バッテリ側に接続し、前記1次コイルの前記バッテリ側の電圧を検出する電圧検出部(40)と、
前記バッテリ側の電圧を監視するとともに、前記バッテリ側の電圧が過大であると判断したときに前記第2回路によるエネルギーの投入を停止する動作停止部(42)とを備え
前記バッテリの電圧を昇圧して、コンデンサ(26)に蓄えさせる昇圧回路(23)を備え、
前記第2回路は、前記コンデンサに蓄えたエネルギーにより前記2次コイルの通電を維持して前記点火プラグにエネルギーを投入し続け、
前記動作停止部は、前記コンデンサに蓄えられたエネルギーを電源として利用し、
前記動作停止部は、前記コンデンサの充電電圧を検出する充電電圧検出部(41)を備え、前記充電電圧を監視するとともに、前記充電電圧が所定値より大きい間は、前記第2回路によるエネルギーの投入の停止を継続することを特徴とする点火装置。
【請求項2】
請求項1に記載の点火装置において、
前記動作停止部は、前記1次コイルの前記バッテリ側の電圧が過大であると判断したとき、前記昇圧回路による昇圧を停止することを特徴とする点火装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の点火装置において、
前記1次コイルの前記バッテリ側をアースに接続する接地回路(43)を備え、
この接地回路に、ツェナーダイオード(75)が設けられていることを特徴とする点火装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、点火装置では、1次コイルおよび2次コイルを有する点火コイルと、2次コイルに接続する点火プラグとを備え、1次コイルへの通電のオンオフに伴う電磁誘導により点火プラグにエネルギーを投入して火花放電を発生させるものが周知である。
さらに、点火装置では、一旦、発生した火花放電を継続させる技術として、次のような、第1、第2回路を備えるものが公知となっている。
【0003】
すなわち、第1回路は、1次コイルへの通電をオンオフすることで、点火プラグに火花放電を開始させるものであり、従来周知の点火回路である。そして、第1回路は、例えば、バッテリの+極と1次コイルの+端子とを接続するとともに、1次コイルの−端子をアースに接続し、1次コイルの−側に、放電開始用のスイッチを配置することで構成されている。
【0004】
また、第2回路は、第1回路の動作によって開始した火花放電を継続させるものであり、第1回路の動作によって開始した火花放電中に、第1回路による通電方向とは逆の方向に1次コイルに通電する。そして、第2回路は、2次コイルの通電を第1回路の動作で開始したのと同一方向に維持して点火プラグにエネルギーを投入し続け、火花放電を継続させる。また、第2回路は、例えば、第1回路に対し1次コイルと点火用のスイッチとの間に接続するとともに、昇圧回路から1次コイルへの電力供給をオンオフするスイッチを配置することで構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
このような構成により、昇圧回路の電気エネルギーを第2スイッチのオンオフにより1次コイルの−側から投入して火花放電を継続させることで、点火プラグの負担を軽減しながら、かつ、無駄な電力消費を抑えながら、火花放電を継続させることができるとしている。
【0006】
ところで、第2回路の動作により1次コイルに流した電流の還流先として、バッテリを採用した場合、次のように、他の機器に過電圧を与える問題が懸念される。
すなわち、還流先としてバッテリを採用した場合、点火装置には、第1、第2回路と併せて、1次コイルに流れた電流をバッテリに還流させる還流回路が設けられる。そして、このような点火装置において、還流回路とバッテリとの接続が接続不良またはバッテリ端子はずれなどにより切り離される、いわゆるロードダンプの状態が発生した場合を想定する。この場合、第2回路によるエネルギーの投入を継続すると、還流回路の電圧が上昇し、還流回路に接続する他の機器に過電圧を与える可能性がある。
【0007】
なお、特許文献2には、第1回路および昇圧回路を備える内燃機関用の点火装置に関し、次のような構成が開示されている。すなわち、特許文献2の点火装置によれば、バッテリから点火装置に供給される電圧の波形を監視し、この波形に基づき、オルタネータのレギュレータやバッテリに異常があるか否かを判定する。そして、異常があると判定したときに、点火装置への電力供給を停止するとともに、異常がないと判定したときに、点火装置への電力供給を再開する。
【0008】
これにより、特許文献2の点火装置によれば、異常発生後に正常電圧に戻るまでの期間、点火装置を過電圧から保護するとともに、正常電圧に戻ったときに、制御に関して人手による復旧作業などを必要とせず、直ちに点火装置を正常運転させることができる、としている。また、このような構成によれば、ロードダンプの状態が発生しても、点火装置を過電圧から保護することが可能であると考えられる。
【0009】
しかし、点火装置が第2回路を備え、かつ、還流先をバッテリとしている場合、ロードダンプの状態が発生したときの対策として、点火装置自身の保護以外にも他機器の保護に配慮する必要がある。この点、特許文献2の点火装置では、他機器に対する配慮がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2014−206068号公報
【特許文献2】特許第5412353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、第2回路の動作により1次コイルに流した電流の還流先としてバッテリを採用した内燃機関用の点火装置において、ロードダンプの状態が発生したときに、他機器を過電圧から保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の点火装置は、内燃機関用であり、1次コイルおよび2次コイルを有する点火コイルと、2次コイルに接続する点火プラグとを備え、1次コイルへの通電のオンオフに伴う電磁誘導により点火プラグにエネルギーを投入して火花放電を発生させる。
そして、点火装置は、以下の第1回路、第2回路、還流回路、電圧検出部、および、動作停止部を備える。
【0013】
まず、第1回路は、1次コイルへの通電をオンオフすることで、点火プラグに火花放電を開始させる。次に、第2回路は、第1回路の動作によって開始した火花放電中に、第1回路による通電方向とは逆の方向に1次コイルに通電することで、2次コイルの通電を第1回路の動作で開始したのと同一方向に維持して点火プラグにエネルギーを投入し続け、火花放電を継続させる。
【0014】
また、還流回路は、第2回路の動作により1次コイルに流れた電流をバッテリに還流させ、電圧検出部は、1次コイルのバッテリ側に接続し、1次コイルのバッテリ側の電圧を検出する。そして、動作停止部は、バッテリ側の電圧を監視するとともに、バッテリ側の電圧が過大であると判断したときに第2回路によるエネルギーの投入を停止する。
そして、点火装置は、バッテリの電圧を昇圧して、コンデンサに蓄えさせる昇圧回路を備え、第2回路は、コンデンサに蓄えたエネルギーにより前記2次コイルの通電を維持して前記点火プラグにエネルギーを投入し続ける。
ここで、動作停止部は、コンデンサに蓄えられたエネルギーを電源として利用し、コンデンサの充電電圧を検出する充電電圧検出部を備え、充電電圧を監視するとともに、充電電圧が所定値より大きい間は、第2回路によるエネルギーの投入の停止を継続する。
【0015】
これにより、ロードダンプの状態が発生したときに、第2回路によるエネルギーの投入を停止することができる。このため、第2回路の動作により1次コイルに流した電流の還流先としてバッテリを採用した点火装置において、ロードダンプの状態が発生したときに、他機器を過電圧から保護することができる。
また、点火装置は、バッテリの電圧を昇圧してコンデンサに蓄えさせる昇圧回路を備える。そして、第2回路は、コンデンサに蓄えたエネルギーにより2次コイルの通電を維持して点火プラグにエネルギーを投入し続け、動作停止部は、コンデンサに蓄えられたエネルギーを電源として利用する。
これにより、ロードダンプの状態が発生しても、動作停止部は、コンデンサに蓄えられたエネルギーにより動作することができる。
このため、動作停止部により、第2回路によるエネルギーの投入を停止することができる。また、コンデンサを電源として構成しているので、動作停止部によるエネルギーの投入を停止させることができない場合にも、コンデンサの電圧が十分に低い状態になっているため、他の機器に影響を与えることがない構成とすることができる。
さらに、動作停止部は、コンデンサの充電電圧VCを検出する充電電圧検出部を備え、充電電圧VCを監視するとともに、充電電圧VCが所定値より大きい間は、第2回路によるエネルギーの投入の停止を継続する。
このため、充電電圧VCが過大である期間は、動作停止部により、第2回路によるエネルギーの投入を停止することができる。これにより、他機器を過電圧から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】点火装置の構成図である(実施例)。
図2】点火装置および内燃機関を含む全体構成図である(実施例)。
図3】点火装置の正常時の動作を示すタイムチャートである(実施例)。
図4】電圧判定部、充電電圧判定部の説明図である(実施例)。
図5】点火装置のロードダンプ発生時の制御方法を示すフローチャートである(実施例)。
図6】点火装置のロードダンプ発生時の動作を示すタイムチャートである(実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、発明を実施するための形態を、実施例を用いて説明する。なお、実施例は具体的な一例を開示するものであり、本発明が実施例に限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0018】
〔実施例の構成〕
図1図2を参照して実施例の点火装置1を説明する。
点火装置1は、1次コイル2および2次コイル3を有する点火コイル4と、2次コイル3に接続する点火プラグ5とを備え、1次コイル2への通電のオンオフに伴う電磁誘導により点火プラグ5にエネルギーを投入して火花放電を発生させる。
ここで、点火装置1は、車両走行用の内燃機関6に搭載されるものであり、所定の点火時期に気筒7内の混合気に点火する。
【0019】
なお、点火プラグ5は、周知構造を有するものであり、2次コイル3の一端に接続される中心電極8と、内燃機関6のシリンダヘッド等を介してアース接地される接地電極9とを備え、2次コイル3に生じるエネルギーにより中心電極8と接地電極9との間で火花放電を生じさせる。
また、内燃機関6は、例えば、ガソリンを燃料とする希薄燃焼(リーンバーン)が可能な直噴式であり、気筒7内にタンブル流やスワール流等の混合気の旋回流が生じるように設けられている。
以下、点火装置1について詳述する。
【0020】
点火装置1は、次の第1、第2回路11、12、および、制御部13を備える。先ず、第1回路11は、1次コイル2への通電をオンオフすることで、点火プラグ5に火花放電を開始させる。また、第2回路12は、第1回路11の動作によって開始した火花放電中に第1回路11による通電方向とは逆の方向に1次コイル2に通電することで、2次コイル3の通電を第1回路11の動作で開始したのと同一方向に維持して点火プラグ5にエネルギーを投入し続け、火花放電を継続させる。
制御部13は、第1、第2回路11、12の動作を制御する部分であり、次の電子制御ユニット(以下、ECU14と呼ぶ。)および投入ドライバ15等により構成される。
【0021】
ここで、ECU14は、内燃機関6に対する制御の中枢を成すものであり、後述する点火信号IGtおよび放電継続信号IGw等の各種信号を出力して1次コイル2への通電を制御し、1次コイル2への通電を制御することで2次コイル3に誘導される電気エネルギーを操作して、点火プラグ5の火花放電を制御する。
【0022】
なお、ECU14は、車両に搭載されて内燃機関6の運転状態や制御状態を示すパラメータを検出する各種センサから信号が入力される。また、ECU14は、入力された信号を処理する入力回路、入力された信号に基づき、内燃機関6の制御に関する制御処理や演算処理を行うCPU、内燃機関6の制御に必要なデータやプログラム等を記憶して保持する各種のメモリ、CPUの処理結果に基づき、内燃機関6の制御に必要な信号を出力する出力回路等を備えて構成される。
【0023】
なお、ECU14に信号を出力する各種センサとは、例えば、内燃機関6の回転数を検出する回転数センサ17、内燃機関6に吸入される吸入空気の圧力を検出する吸気圧センサ18、および、混合気の空燃比を検出する空燃比センサ19等である。
そしてECU14は、これらセンサから得られるパラメータの検出値に基づき、内燃機関6における点火制御や燃料噴射制御を実行する。
【0024】
第1回路11は、バッテリ20の+極と1次コイル2の一方の端子とを接続するとともに、1次コイル2の他方の端子をアースに接続し、1次コイル2の他方の端子のアース側(低電位側)に、放電開始用のスイッチ(以下、第1スイッチ21と呼ぶ。)を配置することで構成されている。
【0025】
ここで、バッテリ20は、オルタネータ22と接続しており、オルタネータ22が駆動されることで充電される。
なお、オルタネータ22は、内燃機関6によって駆動され、電力を発生するものである。そして、オルタネータ22は、第1回路11のバッテリ20と1次コイル2の間に接続されている。
また、オルタネータ22と1次コイル2の間には、バッテリ20の電力の供給を受けて動作するECU14等の各種の他機器が接続されている。
なお、バッテリ20の容量は十分に大きく、充放電による電圧の変動は少なくなっている。
【0026】
第1回路11は、第1スイッチ21のオンオフにより、1次コイル2にエネルギーを蓄えさせるとともに、1次コイル2に蓄えたエネルギーを利用して2次コイル3に高電圧を発生させ、点火プラグ5に火花放電を開始させる。
以下、第1回路11の動作により発生した火花放電を主点火と呼ぶことがある。また、1次コイル2の通電方向(つまり1次電流の方向)は、バッテリ20から第1スイッチ21に向かう方向をプラスとする。
【0027】
より具体的には、第1回路11はECU14から点火信号IGtがハイ信号として与えられる期間に第1スイッチ21をオンすることで、1次コイル2にバッテリ20の電圧を印加してプラスの1次電流を通電し、1次コイル2に磁気的なエネルギーを蓄えさせる。その後、第1回路11は、第1スイッチ21のオフにより、電磁誘導によって2次コイル3に高電圧を発生させ、主点火を生じさせる。
なお、第1スイッチ21は、IGBT、MOS型トランジスタ、サイリスタ等である。また、点火信号IGtは、第1回路11において1次コイル2にエネルギーを蓄えさせる期間および点火開始時期を指令する信号である。
【0028】
第2回路12は、第1回路11に対し1次コイル2と第1スイッチ21との間に接続するとともに、昇圧回路23から1次コイル2への電力供給をオンオフするスイッチ(以下、第2スイッチ24と呼ぶ。)を配置することで構成されている。
ここで、昇圧回路23は、ECU14から点火信号IGtが与えられる期間においてバッテリ20の電圧を昇圧してコンデンサ26に蓄えるものである。
【0029】
より具体的に、昇圧回路23は、コンデンサ26、チョークコイル27、昇圧スイッチ28、昇圧ドライバ29、および、ダイオード30を備えている。
チョークコイル27は一端がバッテリ20の+極に接続され、昇圧スイッチ28によりチョークコイル27の通電状態が断続される。また、昇圧ドライバ29は、昇圧スイッチ28に制御信号を与えて昇圧スイッチ28をオンオフさせるものである。ここで、昇圧スイッチ28は、例えば、MOS型トランジスタである。そして、コンデンサ26は、昇圧スイッチ28のオンオフ動作により、チョークコイル27に発生した磁気的なエネルギーを、電気的なエネルギーとして蓄える。
【0030】
なお、昇圧ドライバ29は、ECU14から点火信号IGtが与えられる期間において昇圧スイッチ28を所定周期で繰り返しオンオフするように設けられている。また、ダイオード30は、コンデンサ26に蓄えたエネルギーがチョークコイル27の側へ逆流するのを防ぐものである。
【0031】
第2回路12は、第2スイッチ24およびダイオード34を備える。
第2スイッチ24は、例えば、MOS型トランジスタであり、コンデンサ26に蓄えるエネルギーを1次コイル2のマイナス側から投入するのをオンオフするものである。
ダイオード34は、1次コイル2から第2スイッチ24側への電流の逆流を阻止するものである。
そして、第2スイッチ24は、投入ドライバ15から与えられる制御信号によりオン動作することで、昇圧回路23から1次コイル2のマイナス側にエネルギーを投入する。
【0032】
投入ドライバ15は、放電継続信号IGwが与えられる期間において、第2スイッチ24をオンオフさせてコンデンサ26から1次コイル2に投入するエネルギーを制御することで、2次コイル3の通電量である2次電流を制御する。従ってコンデンサ26には1次コイル2の電圧よりも高い数百Vの電圧で充電されている。
ここで、放電継続信号IGwは、主点火として発生した火花放電を継続させる期間を指令する信号である。
【0033】
以上により、第2回路12は、第1回路11の動作によって開始した火花放電中に、第1回路11による通電方向とは逆の方向に1次コイル2に通電することで、2次電流を第1回路11の動作で開始したのと同一方向に維持して点火プラグ5にエネルギーを投入し続け、火花放電を継続させる。
ここで、1次コイル2とバッテリ20の間の回路は、第2回路12の動作により1次コイル2に流れた電流をバッテリ20に還流させる還流回路35となっている。
以下、第2回路12の動作により主点火に継続する火花放電を継続火花放電と呼ぶことがある。
【0034】
また、投入ドライバ15は、ECU14から2次電流の指令値を示す信号である電流指令信号IGaが与えられ、電流指令信号IGaに基づき2次電流を制御する。
ここで、2次コイル3の一端は先述したように点火プラグ5の中心電極8に接続し、2次コイル3の他端は、2次コイル3に発生する、2次電流を検出して制御部13にフィードバックするF/B回路36に接続している。
なお、2次コイル3の他端は、2次電流の方向を一方向に限定するダイオード37を介してF/B回路36に接続している。また、F/B回路36には、2次電流を検出するためのシャント抵抗38が接続している。
【0035】
そして、投入ドライバ15は、フィードバックされた2次電流の検出値と、電流指令信号IGaに基づき把握される2次電流の指令値とに基づき、第2スイッチ24のオンオフを制御する。すなわち、投入ドライバ15は、例えば、2次電流の検出値に対する上限下限の閾値を指令値に基づき設定し、検出値と上限、下限の閾値との比較結果に応じて制御信号の出力を開始したり、停止したりする。
より具体的には、投入ドライバ15は、2次電流の検出値が上限より大きくなったら制御信号の出力を停止し、2次電流の検出値が下限よりも小さくなったら制御信号の出力を開始する。
【0036】
次に、図3を参照して点火装置1の通常の動作を説明する。
また、図3において、「IGt」は点火信号IGtの入力状態をハイ/ローで表すものであり、「IGw」は放電継続信号IGwの入力状態をハイ/ローで表すものである。また、「1stSW」は第1スイッチ21のオンオフ状態を表し、「2ndSW」は第2スイッチ24のオンオフ状態を表し、「BstSW」は昇圧スイッチ28のオンオフ状態を表すものである。また、「VC」はコンデンサ26の充電電圧を表している。また、「I1」は1次電流(1次コイル2に流れる電流値)を表し、「I2」は2次電流(2次コイル3に流れる電流値)を表している。
【0037】
点火信号IGtがローからハイへ切り替わると(時間t01参照。)、点火信号IGtがハイの期間において、第1スイッチ21がオン状態を維持してプラスの1次電流が流れ、1次コイル2にエネルギーが蓄えられる。また、コンデンサ26の充電電圧が所定値を下回る場合、昇圧スイッチ28がオンオフを繰り返し、昇圧されたエネルギーがコンデンサ26に蓄えられる。
【0038】
やがて、点火信号IGtがハイからローへ切り替わると(時間t02参照。)、第1スイッチ21がオフされ、1次コイル2の通電が遮断される。これにより、電磁誘導によって2次コイル3に高電圧が発生し、点火プラグ5において主点火が発生する。
点火プラグ5において主点火が発生した後、2次電流は略三角波形状で減衰する(I2点線参照。)。そして、2次電流が下限の閾値に到達する前に、放電継続信号IGwがローからハイへ切り替わる(時間t03参照。)。
【0039】
放電継続信号IGwがローからハイへ切り替わると、第2スイッチ24がオンオフ制御されて、コンデンサ26に蓄えられていたエネルギーが、1次コイル2のマイナス側に順次投入され、1次電流は、1次コイル2からバッテリ20の+極に向かって流れる。
より、具体的には、第2スイッチ24がオンされる毎に1次コイル2からバッテリ20の+極に向かう1次電流が追加され、1次電流がマイナス側に増加していく(時間t03〜t04参照。)。
【0040】
そして、1次電流が追加される毎に、主点火による2次電流と同方向の2次電流が2次コイル3に順次追加され、2次電流は上限下限の間に維持される。
以上により、第2スイッチ24をオンオフ制御することで、2次電流が火花放電を維持可能な程度に継続して流れる。その結果、放電継続信号IGwのオン状態が続くと、継続火花放電が点火プラグ5において維持される。
【0041】
〔実施例の特徴〕
次に、実施例の特徴的な構成について説明する。
点火装置1は、さらに、電圧検出部40、充電電圧検出部41、動作停止部42、および、接地回路43を備える。
電圧検出部40は、1次コイル2のバッテリ20側に、すなわち、1次コイル2の+側に接続し、1次コイル2の+側の電圧を検出する。
以下、1次コイル2の+側を1次コイル+側と、1次コイル2の+側の電圧を電圧VBと呼ぶことがある。
【0042】
電圧検出部40は、抵抗44、45を有する。
抵抗44と抵抗45は直列に接続されており、抵抗45の一端はアースに接続されている。また、抵抗44の一端は1次コイル+側に接続している。
そして、抵抗44と抵抗45との間の電位が後述する動作停止部42に入力される。すなわち、電圧検出部40は、電圧VBを分圧した分圧電圧を、電圧VBの信号として出力するものである。
【0043】
充電電圧検出部41は、コンデンサ26と第2スイッチ24との間に設けられ、コンデンサ26の充電電圧(以下、コンデンサ26の充電電圧を充電電圧VCと呼ぶことがある。)を検出する。
充電電圧検出部41は、抵抗47、48を有する。
抵抗47および抵抗48は直列に接続されており、抵抗47の一端はコンデンサ26の+極に接続され、抵抗48の一端はアースに接続されている。すなわち、充電電圧検出部41は、充電電圧VCを分圧した分圧電圧を、充電電圧VCの信号として動作停止部42に出力するものである。
なお、昇圧ドライバ29は、充電電圧検出部41の出力する分圧電圧に基づき充電電圧VCを検出し、昇圧スイッチ28を所定周期でオンオフしている。
【0044】
動作停止部42は、電圧VBを監視するとともに、電圧VBが過大であると判断したときにバッテリ20への還流回路35に異常があると判断し、第2回路12によるエネルギーの投入を停止する。
動作停止部42は、例えば、以下に説明する電圧判定部50、充電電圧判定部51、停止指示部52を有する。
【0045】
電圧判定部50は、電圧検出部40の出力信号に基づき、電圧VBを監視する。そして、電圧VBが過大であるか否かを判定し、判定結果に応じてハイまたはローの信号を出力する。
電圧判定部50は、例えば、閾値電圧生成部55、コンパレータ56、定電圧源57等から構成されている(図4(a)参照。)。
【0046】
閾値電圧生成部55は、電圧VBに対して過大か否かを判定する基準の閾値電圧VBcの信号を生成して出力するものであり、抵抗58、59により構成される。
抵抗58および抵抗59は直列に接続されており、抵抗58の一端は定電圧源57に接続され、抵抗59の一端はアースに接続されている。すなわち、閾値電圧生成部55は、定電圧源57の電圧を分圧することで分圧電圧を、閾値電圧VBcの出力信号としてコンパレータ56に出力するものである。
【0047】
コンパレータ56は、非反転、反転入力端子に入力される電圧を比較し、非反転入力端子の電圧が反転入力端子の電圧を上回る場合にハイ信号、下回る場合にロー信号を出力する周知の構成である。ここで、コンパレータ56の非反転入力端子には、電圧検出部40からの電圧VBの出力信号が入力され、反転入力端子には、閾値電圧生成部55からの閾値電圧VBcの出力信号が入力される。
定電圧源57は、コンデンサ26の+極に接続される抵抗60により低電圧化され、ツェナーダイオード61により定電圧化された電圧を供給するものであり、コンパレータ56の駆動源でもある。
【0048】
この構成により、電圧判定部50は、電圧VBが、閾値電圧VBcを上回る場合には過大であると判定しハイ信号を出力し、閾値電圧VBcを下回る場合には過大でないと判定しロー信号を出力する。
なお、閾値電圧VBcは、ロードダンプ発生時のサージ電圧の大きさから設定される値である。また、通常時には、電圧判定部50は電圧VBが過大でないと判定しロー信号を出力している。
【0049】
充電電圧判定部51は、充電電圧検出部41の出力信号に基づき、充電電圧VCを監視する。そして、充電電圧VCが閾値充電電圧VCcを下回るか否かを判定し、ハイまたはローの信号を出力する。
充電電圧判定部51は、例えば、閾値充電電圧生成部62、コンパレータ63、定電圧源64等から構成されている(図4(b)参照。)。
【0050】
閾値充電電圧生成部62は、閾値充電電圧VCcの信号を生成して出力するものであり、抵抗68、69により構成される。
抵抗68および抵抗69は直列に接続されており、抵抗68の一端は定電圧源64に接続され、抵抗69の一端はアースに接続されている。すなわち、閾値充電電圧生成部62は、定電圧源64の電圧を分圧することで分圧電圧を、閾値充電電圧VCcの出力信号としてコンパレータ63に出力するものである。
【0051】
コンパレータ63は、非反転、反転入力端子に入力される電圧を比較し、非反転入力端子の電圧が反転入力端子の電圧を上回る場合にハイ信号、下回る場合にロー信号を出力する周知の構成である。ここで、コンパレータ63の非反転入力端子には、閾値充電電圧生成部62からの閾値充電電圧VCcの出力信号が入力され、反転入力端子には、充電電圧検出部41からの充電電圧VCの出力信号が入力される。
定電圧源64は、定電圧源57と同一の構成となっており、コンパレータ64の駆動源でもある。
【0052】
この構成により、充電電圧判定部51は、充電電圧VCが、閾値充電電圧VCcを下回る場合にはハイ信号を出力し、閾値充電電圧VCcを上回る場合にはロー信号を出力する。
また、閾値充電電圧VCcは、通常時の充電電圧VCよりも充分に低い数値に設定されている。より具体的に、閾値充電電圧VCcは、継続火花放電の終了後、次の主点火に備えてコンデンサの充電を始めるまでの間でも、充電電圧VCよりも充分に小さくなるように設定されている(図3のVCの推移において、時間t01以前または時間t04以後を参照。)。
【0053】
停止指示部52は、電圧判定部50および充電電圧判定部51から入力される信号に基づき、第2回路12によるエネルギーの投入を停止させるものである。
より具体的に、停止指示部52は、例えば、RSフリップフロップ回路(以下、FF回路72と呼ぶ。)、およびスイッチ73、74等から構成される。
【0054】
まず、FF回路72は、電圧VBが閾値電圧VBcよりも高く、かつ、充電電圧VCが閾値充電電圧VCcよりも高いときに、第2回路12によるエネルギーの投入、および、昇圧回路23による充電を停止し、その後に電圧VBが閾値電圧VBcよりも低くなっても、第2回路12によるエネルギーの投入停止、および、昇圧回路23の充電停止を続ける。
【0055】
より具体的に、FF回路72は、電圧判定部50から信号の入力を受けるS端子、充電電圧判定部51から信号の入力を受けるR端子、および、スイッチ73、74に信号を出力するQ端子を有する。そして、FF回路72は、電圧判定部50から入力される信号がロー(VB<VBc)、かつ、充電電圧判定部51から入力される信号がハイ(VC<VCc)のとき、スイッチ73、74にローの信号を出力する。また、FF回路72は、電圧判定部50から入力される信号がハイ(VB>VBc)、かつ、充電電圧判定部51から入力される信号がロー(VC>VCc)のとき、スイッチ73、74にハイの信号を出力する。
【0056】
さらに、電圧判定部50および充電電圧判定部51から入力される信号が両方ともロー(VB<VBc、VC>VCc)に切り替わったとき、スイッチ73、74に出力される信号は、切り替わる直前の状態を維持する。例えば、電圧判定部50から入力される信号がハイ、かつ、充電電圧判定部51から入力される信号がローの状態から、電圧判定部50および充電電圧判定部51から入力される信号が両方ともローの状態に切り替わったとき、スイッチ73、74に出力される信号はハイを維持する。
【0057】
これにより、FF回路72は、電圧VBが閾値電圧VBcよりも高く、かつ、充電電圧VCが閾値充電電圧VCcよりも高いときに、スイッチ73、74にハイの信号を出力して、第2回路12によるエネルギーの投入、および、昇圧回路23による充電を停止させる。さらに、その後に電圧VBが閾値電圧VBcより低くなっても、FF回路72は、スイッチ73、74にハイの信号を出力し続け、第2回路12によるエネルギーの投入停止、および、昇圧回路23による充電停止を続ける。
【0058】
スイッチ73は、自身のオン動作により、第2スイッチ24の動作状態を、投入ドライバ15からの指令に関わらず強制的にオフにするものである。具体的には、スイッチ73は、例えば、MOS型トランジスタであり、ドレインが第2スイッチ24のゲートに接続し、ソースがアースに接続し、ゲートにFF回路72の出力信号が入力される。これにより、スイッチ73は、FF回路72からハイの信号が入力されてオンすると、第2スイッチ24の動作状態を強制的にオフにして第2回路12によるエネルギーの投入を停止する。
【0059】
スイッチ74は、自身のオン動作により、昇圧スイッチ28の動作状態を、昇圧ドライバ29からの指令に関わらず強制的にオフにするものである。具体的には、スイッチ74は、例えば、MOS型トランジスタであり、ドレインが昇圧スイッチ28のゲートに接続し、ソースがアースに接続し、ゲートにFF回路72の出力信号が入力される。これにより、スイッチ74は、FF回路72からハイの信号が入力されてオンすると、昇圧スイッチ28の動作状態を強制的にオフにして昇圧回路23による充電を停止する。
【0060】
以上により、停止指示部52は、ロードダンプ発生により電圧VBが閾値電圧VBcよりも高くなったときに、第2回路12によるエネルギーの投入を停止させ、さらに、その後に電圧VBが閾値電圧VBcより低くなっても、第2回路12によるエネルギーの投入停止を続ける。
また、FF回路72およびスイッチ73、74は、コンパレータ56、63と同様に、ロードダンプ発生時にも、確実に動作するように、コンデンサ26のエネルギーを電源として利用する。
【0061】
ここで、動作停止部42全体の駆動電圧Vthは、FF回路72、スイッチ73、74、および、コンパレータ56、63等の駆動電圧から定められ、駆動電圧Vthの大きさは、閾値電圧VCcよりも小さな数値として設定されている。
これにより、内燃機関始動後、充電電圧VCが駆動電圧Vthに到達した時点で動作停止部42の動作が始まり、以後、ロードダンプが発生せずに通常運転が続く限り、第2スイッチ24、昇圧スイッチ28は、それぞれ、投入ドライバ15、昇圧ドライバ29からの指令に従って通常の動作を続ける。
【0062】
すなわち、内燃機関始動後、まず、充電電圧VCは駆動電圧Vthに達し、動作停止部42の動作が始まる。この際、VC<VCcであるため、充電電圧判定部51からFF回路72に入力される信号はハイとなる。また、ロードダンプも発生していないので、電圧判定部50からFF回路72に入力される信号はローである。このため、FF回路72は、スイッチ73、74にローの信号を出力するので、スイッチ73、74はオン動作せず、第2スイッチ24、昇圧スイッチ28は、それぞれ、投入ドライバ15、昇圧ドライバ29からの指令に従って通常の動作をする。
【0063】
その後、コンデンサ26の充電が進んでVC>VCcとなり、充電電圧判定部51からFF回路72に入力される信号がローに切り替わると、電圧判定部50および充電電圧判定部51から入力される信号が両方ともローになる。このため、FF回路72からスイッチ73、74に出力される信号は、切り替わる直前の状態であるローを維持する。このため、スイッチ73、74は引き続きオン動作せず、第2スイッチ24、昇圧スイッチ28は、それぞれ、投入ドライバ15、昇圧ドライバ29からの指令に従って通常の動作を続ける。
【0064】
以上により、内燃機関始動後、ロードダンプが発生せずに通常運転が続く限り、第2スイッチ24、昇圧スイッチ28は、それぞれ、投入ドライバ15、昇圧ドライバ29からの指令に従って通常の動作を続け、第2回路12によるエネルギーの投入、および、昇圧回路23による充電が繰り返される。
【0065】
接地回路43は、1次コイル+側をアースに接続する。
この接地回路43には、ツェナーダイオード75が設けられている。
より具体的には、ツェナーダイオード75は、アノード側が1次コイル+側に接続され、カソード側がアースに接続されている。
【0066】
[実施例の制御方法]
実施例のロードダンプ発生時の制御方法を図5および図6に基づいて説明する。
以下では、図6に示す時間t05でロードダンプが発生したものとして説明する。
なお、図6において、「VB」は電圧VBを表すものである。また、「GSW1」はスイッチ73のオンオフ状態を表すものであり、「GSW2」はスイッチ74のオンオフ状態を表すものである。
【0067】
まず、ステップS100において、電圧判定部50によって、電圧VBが、閾値電圧VBcを超えているか否かが判定される。
電圧VBが閾値電圧VBcを超えていると判定した場合(YES;図6の時間t05参照。)、ステップS110に移行する。また、電圧VBが閾値電圧VBcを超えていないと判定した場合(NO)、ステップS100の判定が繰り返される。
【0068】
なお、ロードダンプ発生時(図6の時間t05参照。)に電圧VBは、瞬時に増加しすぐに減少に転ずる。このため、電圧判定部50からFF回路72に入力される信号はローから、一旦ハイになり、すぐさまローへと切り替わる。
また、ECU14は、ロードダンプが発生しバッテリ20が外れたとしても、オルタネータ22等による電力供給を受け、すぐに停止できずしばらく機器の制御を続行する(図6の時間t05〜時間t06におけるIGt等参照。)。
【0069】
次に、ステップS110で、動作停止部42は、スイッチ73、74をオンする。
そして、スイッチ73、74をオンすることで(図6の時間t05〜時間t06におけるGSW1、GSW2参照。)、第2スイッチ24および昇圧スイッチ28を強制的にオフする(図6の時間t05〜時間t06における2ndSW点線、BstSW点線参照。)。このため、1次コイル2に電流は流れない(図6の時間t05〜時間t06におけるI1点線参照。)。
【0070】
次に、ステップS120で、充電電圧判定部51により、充電電圧VCが閾値充電電圧VCcを下回るか否かが判定される。
充電電圧VCが閾値充電電圧VCcを下回ると判定した場合(YES;図6の時間t06参照。)、ステップS130に移行する。
また、充電電圧VCが閾値充電電圧VCcを下回らないと判定した場合(NO)、ステップS110に移行して、スイッチ73、74のオン状態が維持される。
【0071】
次に、ステップS130で、スイッチ73、74をオフして(図6の時間t06参照。)、フローを終了する。
なお、スイッチ73、74がオフされると、第2スイッチ24、昇圧スイッチ28がオンする可能性が生じるが、閾値充電電圧VCcは十分に低く設定されているため、第2スイッチ24がオンしたとしても他機器等にほとんど影響を与えることはない。
【0072】
〔実施例の効果〕
実施例の点火装置1によれば、還流回路35は、第2回路12の動作により1次コイル2に流れた電流をバッテリ20に還流させ、電圧検出部40は、電圧VBを検出する。そして、動作停止部42は、電圧VBを監視するとともに、電圧VBが過大であると判断したとき、すなわち、電圧VBが閾値電圧VBcを上回ったときに第2回路12によるエネルギーの投入を停止する。
【0073】
これにより、バッテリ20への接続が切断された場合のいわゆるロードダンプの状態が発生したときに、第2回路12によるエネルギーの投入を停止することができる。このため、第2回路12の動作により1次コイル2に流した電流の還流先としてバッテリ20を採用した点火装置において、ロードダンプの状態が発生したときに、他機器を過電圧から保護することができる。
【0074】
実施例の点火装置1によれば、バッテリ20の電圧を昇圧してコンデンサ26に蓄えさせる昇圧回路23を備える。そして、第2回路12は、コンデンサ26に蓄えたエネルギーにより2次コイル3の通電を維持して点火プラグ5にエネルギーを投入し続け、動作停止部42は、コンデンサ26に蓄えられたエネルギーを電源として利用する。
これにより、ロードダンプの状態が発生しても、動作停止部42は、コンデンサ26に蓄えられたエネルギーにより動作することができる。
このため、動作停止部42により、第2回路12によるエネルギーの投入を停止することができる。また、コンデンサ26を電源として構成しているので、動作停止部42によるエネルギーの投入を停止させることができない場合にも、コンデンサ26の電圧が十分に低い状態になっているため、他の機器に影響を与えることがない構成とすることができる。
【0075】
実施例の点火装置1によれば、動作停止部42は、電圧VBが過大であると判断したとき、昇圧回路28による昇圧を停止する。
これにより、ロードダンプの状態が発生したときに、コンデンサ26の無駄な充放電動作を防ぐことができる。
【0076】
実施例の点火装置1によれば、動作停止部42は、コンデンサ26の充電電圧VCを検出する充電電圧検出部41を備え、充電電圧VCを監視するとともに、充電電圧VCが所定値より大きい間は、第2回路12によるエネルギーの投入の停止を継続する。
このため、充電電圧VCが過大である期間は、動作停止部42により、第2回路12によるエネルギーの投入を停止することができる。これにより、他機器を過電圧から保護することができる。
【0077】
実施例の点火装置1によれば、1次コイル+側をアースに接続する接地回路43を備え、接地回路43に、ツェナーダイオード75が設けられている。
これによりロードダンプの状態が発生したときに、自身の制御回路を保護するとともにスイッチ73、74の故障等の事態により第2回路12によってエネルギー投入がなされても、他機器に与える過電圧の電圧値を低減することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 点火装置 2 1次コイル 3 2次コイル 4 点火コイル 5点火プラグ
11 第1回路 12 第2回路 13 制御部 14 ECU 15 投入ドライバ
20 バッテリ 23 昇圧回路 35 還流回路 40 電圧検出部
42 動作停止部


図1
図2
図3
図4
図5
図6