(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料タンクで発生する蒸発燃料を吸着するキャニスタと前記燃料タンクとを接続する通路上に密閉弁が介装され、前記キャニスタとエンジンの吸気系とを接続する通路上にバイパス弁が介装された密閉タンク式の蒸発燃料処理装置において、
前記燃料タンクのタンク圧に応じて前記密閉弁を開放し、前記タンク圧を減圧する高圧パージを実施する第一制御部と、
前記エンジンの作動中に前記バイパス弁を開放し、前記キャニスタに吸着した前記蒸発燃料を前記吸気系に吸入させるキャニスタパージを実施する第二制御部と、
前記キャニスタパージの終了後かつ前記エンジンが停止する前に、前記タンク圧の大小に関わらず前記密閉弁を開放し、前記タンク圧を減圧する低圧パージを実施する第三制御部とを備え、
前記第三制御部が、直近の給油時からの経過時間に応じて、前記低圧パージの要否を判断する
ことを特徴とする、蒸発燃料処理装置。
燃料タンクで発生する蒸発燃料を吸着するキャニスタと前記燃料タンクとを接続する通路上に密閉弁が介装され、前記キャニスタとエンジンの吸気系とを接続する通路上にバイパス弁が介装された密閉タンク式の蒸発燃料処理装置において、
前記燃料タンクのタンク圧に応じて前記密閉弁を開放し、前記タンク圧を減圧する高圧パージを実施する第一制御部と、
前記エンジンの作動中に前記バイパス弁を開放し、前記キャニスタに吸着した前記蒸発燃料を前記吸気系に吸入させるキャニスタパージを実施する第二制御部と、
前記キャニスタパージの終了後かつ前記エンジンが停止する前に、前記タンク圧の大小に関わらず前記密閉弁を開放し、前記タンク圧を減圧する低圧パージを実施する第三制御部とを備え、
前記第三制御部が、前記燃料タンクに残留する燃料量に応じて、前記低圧パージの要否を判断する
ことを特徴とする、蒸発燃料処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、実施形態としての蒸発燃料処理装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
[1.装置構成]
本実施形態の蒸発燃料処理装置が適用された車両の構成を
図1に例示する。この車両は、走行用モータの駆動力で走行するEV(Electric Vehicle)モードと、エンジン21の駆動力を使用(又は併用)して走行するHEV(Hybrid Electric Vehicle)モードとを備えたハイブリッド車両である。エンジン21の作動時には、燃料タンク5の内部から燃料がポンプで吸い上げられ、車両の走行状態に応じた量の燃料がインジェクタ22から噴射される。また、吸入空気量は、吸気通路23に介装されたスロットルバルブ25で制御される。
【0014】
このエンジン21には、燃料タンク5で発生する蒸発燃料をキャニスタ6で回収して吸気系に導入するためのパージ用通路10が装備される。パージ用通路10には、燃料タンク5とエンジン21の吸気系とを接続するタンク通路7と、タンク通路7からキャニスタ6に向かって分岐形成されたキャニスタ通路8とが設けられる。タンク通路7の一端は、燃料タンク5の例えば天井面付近や側面上部に接続され、他端は吸気通路23に接続される。タンク通路7の接続位置は、スロットルバルブ25よりも下流側(エンジン21のシリンダに近い側)に設定される。また、キャニスタ通路8の一端は、キャニスタ6の上面に接続され、他端はタンク通路7に対して三叉路を形成するように接続される。
【0015】
パージ用通路10には、通路内における空気の流れを制御するための弁として、密閉弁1,バイパス弁2,パージ弁3が介装される。
密閉弁1は、燃料タンク5を密閉するための電磁制御弁であり、タンク通路7とキャニスタ通路8との分岐点よりも燃料タンク5に近い位置に配置される。密閉弁1は、基本的には常にタンク通路7を閉鎖して、燃料タンク5の密閉状態を維持するように機能する。また、燃料タンク5の内部圧力が所定値を超える場合には開放される。本実施形態の密閉弁1は、制御信号の種類や大きさに応じてオン・オフ作動(開作動又は閉作動)する二位置切替弁である。
【0016】
バイパス弁2は、キャニスタ通路8を開放又は遮断するための電磁制御弁であり、タンク通路7とキャニスタ通路8との分岐点に配置される。バイパス弁2は、キャニスタ6に蒸発燃料を吸着させたいときや、キャニスタ6で吸着された蒸発燃料をパージさせたいときに開放される。本実施形態のバイパス弁2は、密閉弁1と同様に、制御信号の種類や大きさに応じてオン・オフ作動する二位置切替弁である。
【0017】
パージ弁3は、吸気通路23に対してタンク通路7を開放又は遮断するための電磁制御弁であり、タンク通路7とキャニスタ通路8との分岐点よりも吸気通路23に近い位置に配置される。パージ弁3は、基本的にはエンジン21の作動中に、吸気通路23に対してタンク通路7を開放するように制御される。また、エンジン21の停止時には、タンク通路7を閉鎖するように制御される。本実施形態のパージ弁3は、制御信号の大きさに応じた開度でタンク通路7を開放する可変開度制御弁である。パージ弁3の開度は、エンジン21の運転状態やキャニスタ6に吸着されている蒸発燃料量,燃料タンク5に残留する燃料量などに応じて設定可能である。
【0018】
図1中に示すように、キャニスタ6の上面には、キャニスタ6と外部とを接続する大気開放通路9が取り付けられる。大気開放通路9は、燃料蒸気をキャニスタ6に吸着させる際の圧抜き通路として機能するとともに、キャニスタ6に吸着している燃料蒸気を吸気通路23へと流出させる際の外気取り込み通路として機能する。大気開放通路9にはエアフィルタ20が介装され、ここで外気中の異物が除去される。
【0019】
また、密閉弁1を迂回して密閉弁1の上流側と下流側とを接続するように形成された迂回通路上には、リリーフ弁4が介装される。リリーフ弁4は、燃料タンク5の内部圧力の上限値P
MAXを規定する安全弁である。密閉弁1よりも燃料タンク5側におけるタンク通路7の圧力が所定の上限値P
MAX以下のときには、リリーフ弁4が閉鎖状態とされる。一方、密閉弁1よりも燃料タンク5側におけるタンク通路7の圧力が上限値P
MAXを超えるとリリーフ弁4が開放され、燃料タンク5が圧抜きされる。これにより、燃料タンク5の内部圧力が上限値P
MAXを越えて上昇することが防止される。
【0020】
また、燃料タンク5には給油用の給油通路19が設けられ、その先端がフィラーキャップ17で閉塞されるとともに、フューエルリッド16の内側まで延設される。燃料の給油時には、車両の乗員によってフューエルリッド16が開放された後に、フィラーキャップ17が回動操作されて取り外される。また、給油通路19には、燃料の逆流や燃料蒸気の流出を防止するための逆止弁18が設けられる。逆止弁18は、車両の外部から燃料タンク5に向かう方向への流体の流入を許容し、逆方向への流体の流出を阻止するように機能する。
【0021】
上記の密閉弁1,バイパス弁2,パージ弁3の開閉状態(開度)は、コンピュータとして機能する制御装置30で制御される。制御装置30は、CPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory),不揮発メモリ等を集積した電子デバイスである。ここでいうプロセッサとは、例えば制御ユニット(制御回路)や演算ユニット(演算回路),キャッシュメモリ(レジスタ)等を内蔵する処理装置(プロセッサ)である。また、ROM,RAM及び不揮発メモリは、プログラムや作業中のデータが格納されるメモリ装置である。制御装置30で実施される制御の内容は、ファームウェアやアプリケーションプログラムとしてROM,RAM,不揮発メモリ,リムーバブルメディア内に記録される。また、プログラムの実行時には、プログラムの内容がRAM内のメモリ空間内に展開され、プロセッサによって実行される。
【0022】
この制御装置30には、インマニ圧センサ12,タンク圧センサ13,エンジン回転数センサ14,リッド開放センサ15が接続される。インマニ圧センサ12は、吸気通路23においてスロットルバルブ25よりも下流側に設けられたサージタンク24の内部圧力を「インマニ圧P
IM(吸気系圧力)」として検出するものである。ここでは、吸気通路23とタンク通路7との接続箇所近傍における圧力(負圧の大きさ)が検出される。
【0023】
タンク圧センサ13は、燃料タンク5の内部圧力(気体部分の圧力)を「タンク圧P」として検出するものである。タンク圧センサ13は、燃料液面よりも上方となる位置に取り付けられる。また、エンジン回転数センサ14は、エンジン21の回転速度(エンジン回転数Ne)を検出するものである。リッド開放センサ15は、フューエルリッド16が開放されたことを検出する近接センサである。これらの各種センサ12〜15で検出された情報は、制御装置30に伝達される。なお、インマニ圧センサ12,タンク圧センサ13のそれぞれで検出される圧力は、絶対圧であってもよいし、大気圧P
ATMを基準としたゲージ圧であってもよい。
【0024】
[2.制御の内容]
本実施形態の制御装置30は、タンク密閉制御,圧抜き制御,キャニスタパージ制御,高圧パージ制御,低圧パージ制御という五種類の制御を実施する。タンク密閉制御及び圧抜き制御は、エンジン21が作動していない状態で実施可能な制御である。これに対し、残りの三種類の制御は、エンジン21の作動中であって、エンジン21の運転状態が比較的安定している場合に実施される。本実施形態では、エンジン21の停止中にタンク密閉制御,圧抜き制御の何れかが実施され、エンジン21の作動中には、基本的にはキャニスタパージ制御,高圧パージ制御の何れかが実施されるものとする。また、低圧パージ制御は、キャニスタパージ制御に付随して(すなわち、必要に応じてキャニスタパージ制御の終了後に)実施されるものとする。
【0025】
ここで、本実施形態におけるエンジン21の作動条件を以下に例示する。
・エンジン21の駆動力を利用した発電時(走行用バッテリの充電量が所定量以下になったとき、登り坂の走行時、急加速時など)
・エンジン効率のよい走行状態になったとき(高速走行時、中高速低負荷走行時など)
・走行用モータの駆動系装置を保護したいとき(走行用モータやインバータの温度が所定範囲外になったとき、エアコン使用時など)
・エンジン21の駆動系装置を保護したいとき(エンジン21が長時間使用されていないときなど)
【0026】
エンジン21は、上記の何れかの作動条件が成立したときに駆動され、その作動条件が不成立になったときに停止するように制御される。ただし、キャニスタパージ制御に続いて低圧パージ制御が実施される場合に限り、エンジン21の作動状態が維持される。つまり、低圧パージ制御は、エンジン21の作動条件を拡張してエンジン21を作動させ続けるように機能する。
【0027】
[2−1.タンク密閉制御]
タンク密閉制御は、エンジン21の停止中に密閉弁1を閉鎖することで、燃料タンク5で発生した燃料蒸気の流出を防止する制御である。このとき、パージ弁3も閉鎖状態に制御される。これにより、燃料タンク5は、エンジン21の吸気通路23に対して密閉弁1とパージ弁3とで二重に遮断される。なお、バイパス弁2の開閉状態は任意であり、本実施形態では開放状態に制御される。
【0028】
[2−2.圧抜き制御]
圧抜き制御は、エンジン21の停止中に、燃料タンク5の内部圧力が大気圧P
ATMに比して過剰に大きくならないように、密閉弁1とバイパス弁2を開放して燃料タンク5を圧抜きする制御である。圧抜き制御は、燃料タンク5への給油の直前に実施される。このとき、パージ弁3は閉鎖状態に制御される。密閉弁1とバイパス弁2とを開放することで、燃料タンク5からキャニスタ6の大気開放通路9を介して、外部へと向かう空気の流れが生じる。これにより、燃料タンク5のタンク圧Pが低下するとともに、燃料タンク5及びパージ用通路10内に存在する燃料蒸気がキャニスタ6で回収される。
【0029】
[2−3.キャニスタパージ制御]
キャニスタパージ制御は、エンジン21の作動中にバイパス弁2を開放し、キャニスタ6に吸着している燃料蒸気を吸気通路23へと吸い込ませることで、キャニスタ6を浄化(パージ)する制御である。キャニスタパージ制御は、エンジン21の安定作動中であって、圧抜き制御,高圧パージ制御が実施されていないときに実施される。また、エンジン21の作動条件が不成立になると、キャニスタパージ制御は終了する。なお、燃料噴射量の学習中や高負荷時(インマニ圧P
IMが負圧でないとき)においても、キャニスタパージ制御を不実施としてもよい。
【0030】
キャニスタパージ制御では、燃料蒸気をエンジン21に消費させるべく、パージ弁3が開放状態に制御される。パージ弁3の開度は、エンジン21の運転状態に応じて調節される。一方、密閉弁1は閉鎖状態に制御される。つまり、吸気通路23に対してキャニスタ6が連通した状態となり、燃料タンク5は遮断される。これにより、パージ用通路10から吸気通路23へと導入される燃料蒸気は、キャニスタ6からの燃料蒸気のみとなるため、燃料蒸気量の推定精度が向上し、エンジン21の制御性が向上する。
【0031】
[2−4.高圧パージ制御]
高圧パージ制御は、エンジン21の作動中に、タンク圧Pに応じて密閉弁1を開放し、燃料タンク5内の燃料蒸気を吸気通路23へと吸い込ませることで、燃料タンク5をパージ(浄化)する制御である。この制御では、パージ弁3が開放状態に制御されるとともに、バイパス弁2が閉鎖状態に制御される。つまり、吸気通路23に対して燃料タンク5が連通した状態となり、キャニスタ6は遮断される。これにより、パージ用通路10から吸気通路23へと導入される燃料蒸気は、燃料タンク5からの燃料蒸気のみとなるため、燃料蒸気量の推定精度が向上し、エンジン21の制御性が向上する。
【0032】
本実施形態における、高圧パージ制御の開始条件,終了条件を以下に例示する。
=高圧パージ制御の開始条件=
A.エンジン21が作動中、かつ、運転状態が安定している
B.タンク圧Pが第一圧力P
1以上である(ただしP
1<P
MAX)
=高圧パージ制御の終了条件=
C.エンジン21が停止、又は、運転状態が安定していない
D.タンク圧Pが第二圧力P
2未満である(ただしP
2<P
1)
高圧パージ制御は、条件A,Bがともに成立した場合に開始され、条件C,Dの何れかが成立した場合に終了する。なお、条件Aは、例えばエンジン21の冷却水温が所定値以上であり、エンジン回転数Neが安定している場合に成立するものとする。
【0033】
[2−5.低圧パージ制御]
低圧パージ制御は、エンジン21の作動中に、タンク圧Pの大小に関わらず密閉弁1を開放し、燃料タンク5内の燃料蒸気を吸気通路23へと吸い込ませることで、燃料タンク5をパージ(浄化)する制御である。この制御では、パージ弁3が開放状態に制御されるとともに、バイパス弁2が閉鎖状態に制御される。この低圧パージ制御は、キャニスタパージ制御の終了後であって、エンジン21が停止する前に実施される。また、高圧パージ制御とは異なり、低圧パージ制御では少なくとも制御が終了するまではエンジン21が停止しないように、エンジン21の作動状態が積極的に制御される。したがって、キャニスタパージ制御が終了する際に、エンジン21の作動条件が不成立になるような状況であっても、エンジン21の作動状態が維持されて低圧パージ制御が開始される。
【0034】
低圧パージ制御の開始条件,終了条件を以下に例示する。低圧パージ制御は、条件E,Fがともに成立した場合に開始され、条件Gが成立した場合に終了する。低圧パージ制御で密閉弁1を閉鎖するための上限閾値P
3(第三圧力P
3)は、高圧パージ制御で密閉弁1を閉鎖するための上限閾値P
2(第二圧力P
2)よりも高く設定されている。つまり、低圧パージ制御の終了条件は、高圧パージ制御の終了条件よりも緩和されている。
=低圧パージ制御の開始条件=
E.キャニスタパージ制御が実施された直後である
F.直近の給油時からの経過時間が所定時間未満である
=低圧パージ制御の終了条件=
G.タンク圧Pが第三圧力P
3未満である(ただしP
2<P
3<P
1)
【0035】
本実施形態における制御の名称と密閉弁1,バイパス弁2,パージ弁3の開閉状態との関係をまとめると、以下の通りである。
【表1】
【0036】
[3.制御構成]
上記の各種制御を実施するための制御構成として、制御装置30には、高圧パージ制御部31,キャニスタパージ制御部32,低圧パージ制御部33が設けられる。これらは、制御装置30で実行されるプログラムの一部の機能を示すものであり、ソフトウェアで実現されるものとする。ただし、各機能の一部又は全部をハードウェア(電子制御回路)で実現してもよく、あるいはソフトウェアとハードウェアとを併用して実現してもよい。
【0037】
高圧パージ制御部31(第一制御部)は、高圧パージ制御を司るものであり、高圧パージ制御の開始条件,終了条件はここで判定される。高圧パージ制御部31は、タンク圧Pが第一圧力P
1以上である場合に密閉弁1を開放することで、タンク圧Pを減圧する機能を持つ。また、高圧パージ制御部31は、タンク圧Pが第一圧力P
1以上である場合に、そのタンク圧Pが第二圧力P
2未満になるまで密閉弁1を開放する機能を持つ。なお、パージ弁3の開度は、エンジン21の運転状態や燃料タンク5に残留する燃料量などに応じて設定可能である。
【0038】
キャニスタパージ制御部32(第二制御部)は、キャニスタパージ制御を司るものであり、キャニスタパージ制御の開始条件,終了条件はここで判定される。キャニスタパージ制御部32は、エンジン21の作動中にバイパス弁2を開放することで、キャニスタ6に吸着した蒸発燃料を吸気通路23に吸入させる機能を持つ。なお、パージ弁3の開度は、エンジン21の運転状態やキャニスタ6に吸着されている蒸発燃料量などに応じて設定可能である。
【0039】
低圧パージ制御部33(第三制御部)は、低圧パージ制御を司るものであり、低圧パージ制御の開始条件,終了条件はここで判定される。低圧パージ制御部33は、キャニスタパージ制御の終了後かつエンジン21の作動中に、タンク圧Pの大小に関わらず密閉弁1を開放することで、タンク圧Pを減圧する機能を持つ。低圧パージ制御では、タンク圧Pが第一圧力P
1を越えていなかったとしても燃料タンク5が減圧されるため、燃料タンク5の平均圧力が低下しやすくなり、燃料給油前の圧抜き時間が短縮されるとともに部品保護性が向上する。
【0040】
また、低圧パージ制御部33は、低圧パージ制御の実施中におけるエンジン21の作動状態を維持する機能を持つ。例えば、キャニスタパージ制御の実施中にエンジン21の作動条件が不成立になった場合には、エンジン21を直ちに停止させるのではなく、エンジン21の作動状態を維持した上で、低圧パージ制御を実施する。これにより、エンジン21が作動している機会を利用して、タンク圧Pを減圧することができる。このような制御構成は、エンジン21を長時間作動させずに走行しうるハイブリッド車両に好適な制御である。
【0041】
また、低圧パージ制御部33は、タンク圧Pが第二圧力P
2よりも高い第三圧力P
3未満になるまで密閉弁1を開放する機能を持つ。低圧パージ制御は、高圧パージ制御と比較して終了条件が緩和されており、高圧パージ制御の終了時よりもやや高い圧力で終了する。これにより、低圧パージ制御の実施時間が高圧パージ制御よりも短時間となる。なお、パージ弁3の開度は、エンジン21の運転状態や燃料タンク5に残留する燃料量などに応じて設定可能である。
【0042】
さらに、低圧パージ制御部33は、直近の給油時からの経過時間に応じて、あるいは、燃料タンク5に残留する燃料量に応じて、低圧パージ制御の要否を判断する機能を持つ。
例えば、直近の給油時からの経過時間が所定時間未満の場合に低圧パージ制御を実施し、経過時間が所定時間以上の場合に低圧パージ制御を不実施とする。つまり、直近の給油時から所定時間以上が経過している場合には、燃料がいわゆる「枯れた」状態(揮発成分の全体に占める割合が低下し、燃料が蒸発しにくくなった状態)となっている可能性が高いものと判断し、キャニスタパージ制御が実施された直後であっても低圧パージ制御を止める。
【0043】
燃料タンク5内の燃料量に応じて密閉弁1の開閉状態を制御する場合、低圧パージ制御部33は、燃料タンク5に残留する燃料量が所定量以上ならば低圧パージ制御を実施する。一方、燃料量が所定量未満ならば、たとえ燃料タンク5内で燃料が蒸発したとしてもタンク圧Pが上昇しにくいものと判断し、低圧パージ制御を不実施とする。これにより、残り少ない燃料が燃料タンク5内の減圧によってさらに蒸発してしまうことが抑制される。
【0044】
[4.フローチャート]
図2,
図3は、上記の各種制御を実施するための制御手順を例示するフローチャートである。
図2はおもにエンジン21の停止中の制御内容に対応し、
図3はおもにエンジン21の安定作動中の制御内容に対応する。これらのフロー中の制御フラグFは、高圧パージ制御又は低圧パージ制御の実施状況を示すものであり、何れかの制御の実施中にはF=1に設定される。また、制御フラグGは、キャニスタパージ制御の実施状況を示すものであり、キャニスタパージ制御の実施中及びその直後にはG=1に設定される。さらに、制御フラグHは、低圧パージ制御のみの実施状況を示すものであり、低圧パージ制御の実施中にはH=1に設定される。
【0045】
図2に示すように、まず各種センサ12〜15で検出された情報が制御装置30に入力され(ステップA1)、エンジン21の作動条件が成立するか否かが判定される(ステップA2)。ここで、エンジン21の作動条件が成立すればエンジン21が駆動され、あるいはエンジン21が作動中であればその作動状態が維持される(ステップA3)。また、続くステップA4ではエンジン21の運転状態が安定しているか否かが判定され、安定している場合には、
図3中のステップA14に進む。一方、エンジン21の運転状態が安定していない場合には、ステップA10に進み、制御フラグFがF=0に設定されて、この演算周期での制御が終了する。なお、エンジン21の運転状態は、エンジン回転数Ne,インマニ圧P
IM,冷却水温,車速,要求トルク,燃料噴射量,吸入空気量などに基づき、公知の手法を用いて判定される。
【0046】
一方、ステップA2でエンジン21の作動条件が成立しない場合には、制御フラグGがG=0であることを条件としてエンジン21を停止させ、あるいはエンジン21が停止中であればその停止状態が維持される(ステップA5,A6)。なお、制御フラグGがG=1の場合は、少なくともその直前にキャニスタパージ制御が実施されているため、
図3のステップA20に進む。
エンジン21の停止中に実施されるステップA7では、フューエルリッド16が開放されているか否かが判定され、開放されていれば圧抜き制御が実施される(ステップA8)。圧抜き制御では、密閉弁1とバイパス弁2とが開放され、燃料タンク5が圧抜きされる。一方、フューエルリッド16が開放されていなければ、タンク密閉制御が実施される(ステップA9)。タンク密閉制御では、密閉弁1とパージ弁3とが閉鎖され、燃料タンク5で発生した燃料蒸気の流出が防止される。ステップA8,A9に続くステップA10では制御フラグFがF=0に設定され、この演算周期での制御が終了する。
【0047】
図3のステップA14では、制御フラグFがF=0であるか否かが判定され、この条件が成立する場合にはステップA15に進み、成立しない場合にはステップA23に進む。なお、ステップA15〜A22では高圧パージ制御,キャニスタパージ制御,低圧パージ制御の開始条件が判定され、ステップA23〜A31では高圧パージ制御,低圧パージ制御の終了条件が判定される。
【0048】
ステップA15では、高圧パージ制御の開始条件Bが判定される。ここで、P<P
1であれば高圧パージ制御の開始条件が成立せず、キャニスタパージ制御が開始される(ステップA16)。このとき、密閉弁1が閉鎖状態に制御されるとともに、バイパス弁2及びパージ弁3が開放状態に制御される。また、直近の給油時からの経過時間が所定時間未満であることを条件として(ステップA17)、制御フラグGがG=1に設定される(ステップA18)。なお、直近の給油時からの経過時間が所定時間以上の場合には、キャニスタパージ制御が実施されたとしても制御フラグGがG=0のままとなるため、低圧パージ制御は不実施とされる。
【0049】
ステップA15でP≧P
1であれば、高圧パージ制御が実施され(ステップA19)、密閉弁1及びパージ弁3が開放状態に制御されるとともに、バイパス弁2が閉鎖状態に制御される。その後、制御フラグFがF=1に設定される(ステップA22)。これにより、次回以降の演算周期では、エンジン21の作動条件が成立している限り、ステップA14からステップA23へと進み、タンク圧Pが第二圧力P
2未満となるまで高圧パージ制御が継続される(ステップA24〜A27)。
【0050】
一方、キャニスタパージ制御の実施中にエンジン21の作動条件が不成立になると、ステップA2からステップA5に進む。このとき、制御フラグGがG=1となっているため、ステップA20に進んで低圧パージ制御が実施される。つまり、直前にキャニスタパージ制御が実施されていた場合には、高圧パージ制御の代わりに、比較的実施時間の短い低圧パージ制御が選択されることになる。その後、制御フラグHがH=1に設定されるとともに、制御フラグFがF=1に設定される(ステップA21,A22)。
【0051】
次回の演算周期では、エンジン21の作動条件が成立している限り、ステップA14からステップA23を経由してステップA28へと進み、タンク圧Pが第三圧力P
3未満となるまで低圧パージ制御が継続される(ステップA28〜A31)。また、低圧パージ制御の実施中には、ステップA5からステップA6へと制御が進行しないため、エンジン21の作動状態が維持される。なお、低圧パージ制御の終了条件が成立したときには、全ての制御フラグF,G,Hの値がゼロにリセットされ(ステップA31)、ステップA5からステップA6へと進むことができるようになる。したがって、エンジン21の作動条件が不成立ならばステップA2からステップA5,A6に進み、エンジン21が停止する。
【0052】
[5.作用,効果]
(1)上記の蒸発燃料処理装置では、高圧パージ制御とは別個に低圧パージ制御が用意され、キャニスタパージ制御が終了する際に低圧パージ制御が実施される。この低圧パージ制御は、高圧パージ制御とは異なり、タンク圧Pが第一圧力P
1未満であっても実施されうる。したがって、低圧パージ制御を実施しない場合と比較して、燃料タンク5の平均圧力を低下させることができ、部品保護性を向上させることができる。また、燃料タンク5の平均圧力が低下することから、燃料給油前の圧抜き時間を短縮することができる。さらに、圧抜き制御の実施時間が短縮されることから、エンジン21が停止した状態での密閉弁1の閉鎖状態をより長時間維持することができ、燃料タンク5内における燃料の蒸発を抑制することができる。
【0053】
(2)低圧パージ制御では、高圧パージ制御と比較して、終了条件(密閉弁1を閉鎖するための条件)が緩和されている。これにより、タンク圧Pを低下させつつ低圧パージ制御が実施される時間を短縮することができ、エンジン21の作動時間を短縮して燃費の悪化を抑制することができる。
(3)低圧パージ制御では、高圧パージ制御と比較して、密閉弁1が閉鎖される閾値としての圧力が高く設定されている(すなわち、第二圧力P
2<第三圧力P
3である)。このような条件設定は、より高圧の状態で燃料タンク5の圧抜きを停止させることに寄与するものであり、制御の実施時間を短縮することができる。したがって、エンジン21の作動時間を短縮して燃費の悪化を抑制することができる。
【0054】
なお、高圧パージ制御は、比較的大きな振り幅で、かつ、できるだけ少ない実施回数でタンク圧Pを管理する制御手法であるといえる。これに対し、低圧パージ制御は、比較的小さな振り幅で、実施回数を増やしてタンク圧Pを管理する制御手法である。何れの手法も、タンク圧Pの振り幅と実施頻度とを調節することで、同等の平均圧力を実現することができる。しかし、エンジン21を長時間作動させずに走行することが可能なハイブリッド車両においては、蒸発燃料をエンジン21に消費させる機会が少ないため、実施頻度の高い低圧パージ制御の方が制御上有利である。
【0055】
(4)直近の給油時からの経過時間に応じて密閉弁1の開閉状態を制御することで、燃料の枯れ具合(燃料の蒸発しやすさ)と燃料タンク5の減圧頻度とを対応させることができ、タンク圧Pの上昇が見込まれる状況下で減圧を開始することができる。一方、タンク圧Pが上昇しにくい状況下(例えば、前回の給油から数ヶ月が経過しているような状況下)では減圧を不実施とすることで、燃料タンク5内における燃料のさらなる蒸発を抑制することができる。
(5)燃料タンク5内の燃料量に応じて密閉弁1の開閉状態を制御した場合も同様であり、燃料タンク5内に残留している燃料量と燃料タンク5の減圧頻度とを対応させることができる。
【0056】
[6.変形例]
上述の実施形態では、密閉弁1及びバイパス弁2が二位置切替弁であり、パージ弁3が可変開度制御弁となっているが、これらの弁の種類は任意に変更可能であり、弁開度の設定についても同様である。例えば、エンジン21の運転状態やキャニスタ6に吸着されている蒸発燃料量,燃料タンク5に残留する燃料量などに応じたそれぞれの開度を設定することで、燃料蒸気の流通量(すなわち、エンジン21への導入量)を精度よく調節することができる。
【0057】
また、上述の実施形態では、エンジン21の停止中にタンク密閉制御,圧抜き制御の何れかが実施され、エンジン21の作動中にはキャニスタパージ制御,高圧パージ制御,低圧パージ制御の何れかが実施されるものを例示したが、具体的な制御の組み合わせ(エンジン21の作動状態と制御内容との対応関係)はこれに限定されない。例えば、エンジン21の停止中におけるタンク密閉制御,圧抜き制御を省略してもよいし、エンジン21の停止中だけでなく安定作動中にも圧抜き制御を実施してもよい。少なくとも、キャニスタパージ制御の終了後、エンジンが停止する前に低圧パージ制御を実施するような制御構成を採用することで、上述の実施形態と同様の作用,効果を奏するものとなる。