(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記環状オレフィン系樹脂(b1)は、前記第I層〜前記第III層からなる積層体全体を基準として、5〜40重量%含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の易引裂性多層フィルム。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(a2),前記エチレン・α−オレフィン共重合体(b3),又は前記エチレン・α−オレフィン共重合体(c2)は、密度が0.900〜0.940g/cm3のエチレン・α−オレフィン共重合体であることを特徴とする請求項1〜3にいずれか1項に記載の易引裂多層フィルム。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(a2),前記エチレン・α−オレフィン共重合体(b3),又は前記エチレン・α−オレフィン共重合体(c2)は、190℃におけるメルトフローレイトが0.1〜2.0g/分のエチレン・α−オレフィン共重合体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の易引裂多層フィルム。
前記第II層を構成する前記エチレン・α−オレフィン共重合体(b3)として、密度又はメルトフローレイトの異なる2種以上のエチレン・α−オレフィン共重合体(b3)を用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の易引裂性多層フィルム。
前記第I層〜前記第III層からなる積層体において、JIS K7128−2に準拠して測定したエルメンドルフ引裂強度が、縦方向及び横方向において、それぞれ100N/mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の易引裂性多層フィルム。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン製のインフレーションフィルムは、包装用途に多く用いられている。その中で、重量物包装袋は数十キロ単位といった大量の肥料や穀類などの重量物を包装しても破れないことが求められ、通常フィルム厚みを60−200μm程度にして生産されている。特にフィルム端部をヒートシールして袋化した際のヒートシール強度や、ダート落下衝撃強度と呼ばれる、落下時の耐衝撃強度については高い数値を満たすことが求められている。
【0003】
このような物性要求を満たす材料として、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられる。これらを用いることにより、フィルム端部をヒートシールして袋化した際のヒートシール強度や、ダート落下強度と呼ばれる耐衝撃強度に優れ、重量物包装用フィルムとしての優れた性能を持つ反面、フィルム包装された内容物を取り出す際には、伸びが大きく引裂開封がしにくいという欠点があった。
また、市販のエチレン・α−オレフィン共重合体(LLDPE)には加工性改良のため、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)が配合されていることが多い。この場合、縦方向には、引裂開封がしやすくなるものの、横方向には引裂開封がしにくいという欠点は依然としてあった。
現在でも、重量物包装袋から内容物を取り出すためには、鋭利な刃物を用いなければならず、怪我の原因や作業性の悪化につながっている。
【0004】
一方、包装用フィルムの中でも、主に軽包装と呼ばれる菓子等の軽量物を包装する用途のフィルムにおいて、易引裂性を付与するために、環状オレフィン系樹脂を用いることによりカット性を付与しようとする試みがなされている。
例えば、中間層が、環状オレフィン系樹脂層からなり、その表面に、それぞれ少なくとも1層ずつ設けられた線状中密度ポリエチレンおよび/または線状低密度ポリエチレン樹脂層が積層された易カット性積層フィルム(特許文献1参照)、特定の線状低密度ポリエチレンからなる外層、線状低密度ポリエチレン60〜90重量%と環状ポリオレフィン10〜40重量%との混合物からなる中間層及び特定の線状低密度ポリエチレンからなるヒートシール層を構成する内層が、順に積層されてなることを特徴とする透明性に優れた積層ポリオレフィンフィルム(特許文献2)が知られている。
更に改良のため、特定のポリエチレンからなる外層、環状オレフィン系樹脂60〜90重量%と、特定の直鎖状低密度ポリエチレン10〜40重量%とからなる中間層及び密度が特定のポリエチレンからなる内層が、順に積層されてなることを特徴とする易引裂性多層フィルム(特許文献3)が提案されている。
【0005】
しかしながら、肥料や米袋等の10kg以上の重量物を包装する重量物包装用フィルムにおいては、落袋強度等の厳しい基準を満たす必要があり、特に、環状オレフィン系樹脂の添加によってフィルム伸びが悪くなる問題に起因し、このように重量物包装用フィルムが満たすべき性能と、易引裂性という両者の性能を両立することは難しかった。
たとえば、従来の層構成でインフレーション法により成形したフィルムを用いて袋状に加工し、中に10kgの水を入れ90cmの高さから落下させると、破袋してしまうことがあった。
したがって、縦方向及び横方向の引裂性に優れ、さらに、縦方向及び横方向の引裂性のバランスに優れ、高ヒートシール強度、衝撃強度、落袋強度等の重量物包装用フィルムに必要とされる特性も併せ持つ、包装材に好適な易引裂性フィルムが望まれていた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の易引裂性多層重量物包装用フィルムについて、各項目ごとに詳細に説明する。
本発明の易引裂性多層重量物包装用フィルムは、高圧法低密度ポリエチレン(a1)1〜50重量%と190℃におけるメルトフローレイトが0.1〜3g/分のエチレン・α−オレフィン共重合体(a2)50〜99重量%を含有する第I層、環状オレフィン系樹脂(b1)10〜60重量%を必須とし、これに高圧法低密度ポリエチレン(b2)と、190℃におけるメルトフローレイトが0.1〜3g/分のエチレン・α−オレフィン共重合体(b3)を合計で100重量%となるよう(b1)〜(b3)が配合された第II層及び高圧法低密度ポリエチレン(c1)1〜50重量%と190℃におけるメルトフローレイトが0.1〜3g/分のエチレン・α−オレフィン共重合体(c2)50〜99重量%を含有する第III層が順に積層されており、第I層又は第III層を構成する材料は下記測定法で測定した溶融張力が3.5g以上であることを特徴とする。
<溶融張力の測定法>
室温23℃環境下において、炉内で190℃で加熱安定された材料を内径2.095mm、長さ8mmのオリフィスから1cm/minのピストン速度で押し出し、押し出された溶融樹脂を4m/minの速度で引っ張り、その時に生じた抵抗力(g)を溶融張力値とする。
【0022】
1.易引裂性重量物包装用フィルムを構成する層
【0023】
(1)第II層
本発明の易引裂き性多層重量物包装用フィルムにおける第II層は環状オレフィン系樹脂(b1)10〜60重量%を必須とし、これに高圧法低密度ポリエチレン(b2)と、190℃におけるメルトフローレイトが0.1〜3g/10分のエチレン・α−オレフィン共重合体(b3)を合計で100重量%となるよう(b1)〜(b3)を配合することを特徴とする。
すなわち、第II層は、環状オレフィン系樹脂(b1)10重量%以上からなることが必要である。より好ましくは、環状オレフィン系樹脂(b1)20〜50重量%と、高圧法低密度ポリエチレン(b2)と190℃におけるメルトフローレイトが0.1〜3g/10分のエチレン・α−オレフィン共重合体(b3)を合計で100重量%となるよう配合することが好ましい。環状オレフィン系樹脂が10重量%未満であると十分な易引裂性が得られない恐れがあり好ましくない。
【0024】
(a)環状オレフィン系樹脂(b1)
本発明の易引裂性フィルムの第II層で用いる環状オレフィン系樹脂(b1)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」ともいう。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα−オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」ともいう。)等が挙げられる。また、COP及びCOCの水素添加物も用いることができる。
【0025】
COCとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンなどの直鎖状モノマーとテトラシクロドデセン、ノルボルネンなどの環状モノマーとから得られた環状オレフィン共重合体が挙げられる。さらに具体的には上記直鎖状モノマーと炭素数が3〜20のモノシクロアルケンやビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(ノルボルネン)及びこの誘導体、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]−3−デセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1.
2,5.1
7,10]−3−ドデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.1
3,6.0
2,7.0
9,13]−4−ペンタデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.1
2,5.1
9,12.0
8,13]−3−ペンタデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.1
2,5.1
9,12.0
8,13]−3−ヘキサデセン及びこの誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.1
3,6.0
2,7.0
9,14]−4−ヘキサデセン及びこの誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−4−ヘプタデセン及びこの誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.1
2,9.1
4,7.1
11,17.0
3,8.0
12,16]−5−エイコセン等およびこの誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.1
3,6.1
10,17.1
12,15.0
2,7.0
11,16]−4−エイコセン及びこの誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.1
2,9.1
4,7.1
11,18.0
3,8.0
12,17]−5−ヘンエイコセン及びこの誘導体、オクタシクロ[8.8.0.1
2,9.1
4,7.1
11,18.1
13,16.0
3,8.0
12,17]−5−ドコセン及びこの誘導体、ノナシクロ[10.9.1.1
4,7.1
13,20.1
15,18.0
2,10.0
3,8.0
12,21.0
14,19]−5−ペンタコセン及びこの誘導体等の環状オレフィンとの共重合体からなる環状オレフィン共重合体などが挙げられる。直鎖状モノマー及び環状モノマーは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。また、このような環状オレフィン共重合体は単独であるいは組み合わせて使用することができる。また、環状オレフィン系樹脂(b1)に、前記COPとCOCを併用することもできる。その場合は、COPとCOCのそれぞれの異なった性能を付与することができる。
【0026】
本発明においては、ポリエチレンに対する分散性の理由により、環状オレフィン系樹脂(b1)はCOCであることが好ましい。また、COCとしては、直鎖状モノマーがエチレンである、エチレン・環状オレフィン共重合体であることが好ましい。さらには、環状モノマーは、ノルボルネン等であることが好ましい。
【0027】
また、本発明においては、エチレン・環状オレフィン共重合体は、エチレン/環状オレフィンの含有割合が重量比で15〜40/85〜60のものであることが好ましい。より好ましくは30〜40/70〜60のものである。エチレンが15重量%未満であると、剛性が高くなりすぎ、インフレーション成形性および製袋適正を悪化させるため好ましくない。一方、エチレンが40重量%以上であると、十分な易引裂性、剛性が得られないため好ましくない。含有比率がこの範囲にあれば、フィルムの剛性、引き裂き性、加工安定性、衝撃強度が向上するため好ましい。
さらにまた、エチレン・環状オレフィン共重合体は、ガラス転移点が60℃以上であることが好ましい。より好ましくは70℃以上のものである。環状オレフィンの含有量が上記範囲を下回ると、ガラス転移点が前記範囲を下回るようになり、例えば、芳香成分のバリアー性が低下するようになる、十分な剛性が得られず、高速包装機械適正に劣る等の恐れがある。一方、環状オレフィンの含有量が上記範囲を上回ると、ガラス転移点が高くなりすぎ、共重合体の溶融成形性やオレフィン系樹脂との接着性が低下する恐れがあり好ましくない。
また、環状オレフィン系樹脂(b1)の重量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
【0028】
環状オレフィン系樹脂(b1)は、易引裂性多層フィルム全体を基準として、5〜40重量%含まれることが好ましい。より好ましくは、10〜25重量%である。5重量%より少ないと、十分な易引裂性が得られないので好ましくない。一方、40重量%より多いと、剛性が高くなりすぎ、インフレーション成形性および製袋適正を悪化させるため好ましくない。
【0029】
環状オレフィン系樹脂(b1)として用いることができる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。本発明においては、ノルボルネン系単量体の含有比率が、前述の範囲にあること、加工性等の理由から、TOPASのグレード8007が好ましい。
【0030】
(b)高圧法低密度ポリエチレン(b2)
本発明において用いる高圧法低密度ポリエチレン(b2、以下、「LDPE(b2)」ともいう。)は、ホモのポリエチレンであって、有機過酸化物によりラジカル重合されたものである。190℃におけるメルトフローレイトが0.1g/10分〜5g/10分の範囲で選ばれるが、本発明において好ましくは0.1〜2g/10分であることがあげられる。第II層へメルトフローレイトが0.1g/10分未満の高圧法低密度ポリエチレンを用いると、フィルム成形時に穴あきが発生しやすくなり、外観が良好なフィルムが得られない恐れがある。一方、メルトフローレイトが5g/10分を超える場合は、重量物包装用フィルムとしての耐衝撃性、機械的強度等が低下する恐れがある。
なお、本発明において、メルトフローレイトは、JIS K 7210に準拠して測定する値である。
【0031】
また、高圧法低密度ポリエチレン(b2)の密度は0.915〜0.935g/cm
3の範囲から選ばれるが、本発明において好ましくは、0.920〜0.930g/cm
3であることがあげられる。第II層へ密度が0.915g/cm
3未満の高圧法低密度ポリエチレンを用いると、フィルム成形時に穴あきが発生しやすくなり、外観が良好なフィルムが得られない恐れがある。
一方、密度が0.935g/cm
3を超える場合は、易引き裂き性が得られない恐れがある。なお、本発明において、密度は、JIS K 6922−2に基づいて測定する値である。
第II層を構成する、高圧法低密度ポリエチレン(b2)の含有量は、好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは1〜15重量%の範囲が挙げられる。
【0032】
(c)エチレン・α−オレフィン共重合体(b3)
第II層を形成するのに用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(b3、以下、「LLDPE(b3)」ともいう。)は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であって、メタロセン触媒、Ziegler触媒、Phillips触媒等により重合されたもののいずれであっても良いが、190℃におけるメルトフローレイトが0.1g/10分〜3g/10分であることが必要である。より好ましくは、エチレン・α−オレフィン共重合体(b3)の190℃におけるメルトフローレイトが0.1〜2.5g/10分であることが望ましく、さらに好ましいのは、エチレン・α−オレフィン共重合体(b3)の190℃におけるメルトフローレイトが0.1〜2.0g/10分であることが望ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体(b3)の190℃におけるメルトフローレイトが低すぎると成形加工性が劣り、一方、メルトフローレイトが高すぎると、耐衝撃性、機械的強度等が低下する恐れがある。
なお、本発明において、メルトフローレイトは、JIS K 7210に準拠して測定する値である。
【0033】
また、エチレン・α−オレフィン共重合体(b3)の密度は0.900〜0.940g/cm
3であることが望ましい。好ましくは0.900〜0.935g/cm
3である。密度が0.900g/cm
3未満の場合は、剛性が低く、自動製袋機適性が悪化する。また、ポリエチレン樹脂組成物の密度が0.940g/cm
3より高いと、フィルムの強度が低下するため、好ましくない。
なお、本発明において、密度はJIS K 6922−2に基づいて測定する値である。
【0034】
本発明において用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(b3)は、具体的には以下のようなものである。すなわち、エチレンと共重合するα−オレフィンは、0.1〜15モル%、好ましくは0.5〜10モル%、特に好ましくは0.5〜5モル%の量で共重合しているものであり、α−オレフィンの種類としては、通常は炭素数3〜8のα−オレフィンであり、具体的にはプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1を挙げることができる。
本発明で、特に好ましくは、第II層に用いるエチレン・α−オレフィン(b3)として、エチレンと1−ヘキセンの共重合体であるエチレン・α−オレフィン共重合体(C6−LLDPE)、エチレンといわゆるHAO(ハイアー・α−オレフィン)と呼ばれる1−ヘキセンもしくは1−オクテン等のC6以上のα−オレフィンとの共重合体であるエチレン・α−オレフィン共重合体(HAO−LLDPE)を用いることが、環状オレフィン共重合体の添加による耐衝撃性低下を防ぐ目的で好ましい。
更に、本発明の好ましい態様として、第II層に用いるエチレン・α−オレフィン(b3)として、密度又はMFRの異なる2種以上のエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることが、環状オレフィン共重合体の添加による耐衝撃性低下を防ぐ目的で好ましい。
第II層を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(b3)の含有量(2種以上エチレン・α−オレフィン共重合体(b3)を用いる場合はその合計量)は、層を構成する樹脂組成物中、好ましくは20〜89重量%、更に好ましくは25〜85重量%の範囲が挙げられる。
【0035】
(2)第I層
本発明の易引裂性多層重量物包装用フィルムにおける第I層は高圧法低密度ポリエチレン(a1)1〜50重量%と190℃におけるメルトフローレイトが0.05〜10g/分のエチレン・α−オレフィン共重合体(a2)50〜99重量%を含有することを特徴とする。
【0036】
(a)高圧法低密度ポリエチレン(a1)
本発明において用いる高圧法低密度ポリエチレン(a1、以下、「LDPE(a1)」ともいう。)は、ホモのポリエチレンであって、有機過酸化物によりラジカル重合されたものである。190℃におけるメルトフローレイトが0.1g/10分〜5g/10分の範囲で選ばれるが、本発明において好ましくは0.1〜2g/10分であることがあげられる。第I層へメルトフローレイトが0.1g/10分の高圧法低密度ポリエチレンを用いると、フィルム成形時に穴あきが発生しやすくなり、外観が良好なフィルムが得られない恐れがある。一方、メルトフローレイトが5g/10分を超える場合は、フィルム成形時の成形安定性や、重量物包装用フィルムとしての耐衝撃性、機械的強度等が低下する恐れがある。
なお、本発明において、メルトフローレイトは、JIS K 7210に準拠して測定する値である。
【0037】
また、高圧法低密度ポリエチレン(a1)の密度は0.915〜0.935g/cm
3の範囲から選ばれるが、本発明において好ましくは、0.920〜0.930g/cm
3であることがあげられる。第I層へ密度が0.915g/cm
3未満の高圧法低密度ポリエチレンを用いると、フィルム成形時に穴あきが発生しやすくなり、外観が良好なフィルムが得られない恐れがある。
一方、密度が0.935g/cm
3を超える場合は、易引き裂き性が得られない恐れがある。
なお、本発明において、密度は、JIS K 6922−2に基づいて測定する値である。
【0038】
(b)エチレン・α−オレフィン共重合体(a2)
第I層を形成するのに用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(a2、以下、「LLDPE(a2)」ともいう。)は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であって、メタロセン触媒、Ziegler触媒、Phillips触媒等により重合されたもののいずれであっても良いが、190℃におけるメルトフローレイトが0.1g/10分〜3g/10分であることが必要である。より好ましくは、エチレン・α−オレフィン共重合体(a2)の190℃におけるメルトフローレイトが0.1〜2.8g/10分であることが望ましく、さらに好ましいのは、エチレン・α−オレフィン共重合体(a2)の190℃におけるメルトフローレイトが0.1〜2.5g/10分、最も好ましくは0.1〜2.0g/10分であることが望ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体(a2)の190℃におけるメルトフローレイトが低すぎると成形加工性が劣り、一方、メルトフローレイトが高すぎると、耐衝撃性、機械的強度等が低下する恐れがある。
なお、本発明において、メルトフローレイトは、JIS K 7210に準拠して測定する値である。
【0039】
また、エチレン・α−オレフィン共重合体(a2)の密度は0.900〜0.940g/cm
3であることが望ましい。好ましくは0.900〜0.935g/cm
3である。密度が0.900g/cm
3未満の場合は、剛性が低く、自動製袋機適性が悪化する。また、ポリエチレン樹脂組成物の密度が0.940g/cm
3より高いと、フィルムの強度が低下するため、好ましくない。
なお、本発明において、密度はJIS K 6922−2に基づいて測定する値である。
【0040】
本発明において用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(a2)は、具体的には以下のようなものである。すなわち、エチレンと共重合するα−オレフィンは、0.1〜15モル%、好ましくは0.5〜10モル%、特に好ましくは0.5〜5モル%の量で共重合しているものであり、α−オレフィンの種類としては、通常は炭素数3〜8のα−オレフィンであり、具体的にはプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1を挙げることができる。
【0041】
(3)第III層
本発明の易引裂性多層重量物包装用フィルムにおける第III層は高圧法低密度ポリエチレン(c1)1〜50重量%と190℃におけるメルトフローレイトが0.1〜3g/10分のエチレン・α−オレフィン共重合体(c2)50〜99重量%を含有することを特徴とする。
【0042】
(a)高圧法低密度ポリエチレン(c1)
本発明において用いる高圧法低密度ポリエチレン(c1、以下、「LDPE(c1)」ともいう。)は、ホモのポリエチレンであって、有機過酸化物により重合されたものである。190℃におけるメルトフローレイトが0.1g/10分〜5g/10分の範囲で選ばれるが、本発明において好ましくは0.1〜2g/10分であることがあげられる。第III層へメルトフローレイトが0.1g/10分の高圧法低密度ポリエチレンを用いると、フィルム成形時に穴あきが発生しやすくなり、外観が良好なフィルムが得られない恐れがある。一方、メルトフローレイトが5g/10分を超える場合は、フィルム成形時の成形安定性や、重量物包装用フィルムとしての耐衝撃性、機械的強度等が低下する恐れがある。
なお、本発明において、メルトフローレイトは、JIS K 7210に準拠して測定する値である。
【0043】
また、高圧法低密度ポリエチレン(c1)の密度は0.915〜0.935g/cm
3の範囲から選ばれるが、本発明において好ましくは、0.920〜0.930g/cm
3であることがあげられる。第III層へ密度が0.915g/cm
3未満の高圧法低密度ポリエチレンを用いると、フィルム成形時に穴あきが発生しやすくなり、外観が良好なフィルムが得られない恐れがある。
一方、密度が0.935g/cm
3を超える場合は、易引き裂き性が得られない恐れがある。なお、本発明において、密度は、JIS K 6922−2に基づいて測定する値である。
【0044】
(b)エチレン・α−オレフィン共重合体(c2)
第III層を形成するのに用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(c2、以下、「LLDPE(c2)」ともいう。)は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であって、メタロセン触媒、Ziegler触媒、Phillips触媒等により重合されたもののいずれであっても良いが、190℃におけるメルトフローレイトが0.1g/10分〜3分/10分であることが必要である。より好ましくは、エチレン・α−オレフィン共重合体(c2)の190℃におけるメルトフローレイトが0.1〜2.8g/10分であることが望ましく、さらに好ましいのは、エチレン・α−オレフィン共重合体(c2)の190℃におけるメルトフローレイトが0.1〜2.5g/10分、最も好ましくは0.1〜2.0g/10分であることが望ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体(c2)の190℃におけるメルトフローレイトが低すぎると成形加工性が劣り、一方、メルトフローレイトが高すぎると、耐衝撃性、機械的強度等が低下する恐れがある。
なお、本発明において、メルトフローレイトは、JIS K 7210に準拠して測定する値である。
【0045】
また、エチレン・α−オレフィン共重合体(c2)の密度は0.900〜0.940g/cm
3であることが望ましい。好ましくは0.900〜0.935gである。密度が0.900g/cm
3未満の場合は、剛性が低く、自動製袋機適性が悪化する。また、ポリエチレン樹脂組成物の密度が0.940g/cm
3より高いと、フィルムの強度が低下するため、好ましくない。
なお、本発明において、密度はJIS K 6922−2に基づいて測定する値である。
【0046】
本発明において用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(c2)は、具体的には以下のようなものである。すなわち、エチレンと共重合するα−オレフィンは、0.1〜15モル%、好ましくは0.5〜10モル%、特に好ましくは0.5〜5モル%の量で共重合しているものであり、α−オレフィンの種類としては、通常は炭素数3〜8のα−オレフィンであり、具体的にはプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1を挙げることができる。
【0047】
本願発明の特徴の一つとして、該第I層及び第III層を構成する樹脂組成物が、下記測定法で測定した溶融張力値が3.5g以上であることを特徴とする。かかる溶融張力値が3.5g以上である樹脂層を、中間層の両側に採用することにより、成形安定性が向上する。
<溶融張力の測定法>
室温23℃の環境下にて、炉内で190℃で加熱安定された材料を内径2.095mm、長さ8mmのオリフィスから1cm/minのピストン速度で押し出し、押し出された溶融樹脂を4m/minの速度で引っ張り、その時に生じた抵抗力を溶融張力(g)とする。
【0048】
本発明において、第I層、第II層及び第III層には、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。特に、フィルム成形時の加工適性、充填機の包装適性を付与するため、第I層及び第III層にはアンチブロッキング剤、帯電防止剤を適宜添加することが好ましい。
【0049】
2.易引裂性多層重量物包装用フィルム
本発明の易引裂性多層重量物包装用フィルムは、前述したように特定の第I層/特定の第II層/特定の第III層との構成からなるものである。
図1に本発明の易引裂性多層重量物包装用フィルムの一例の断面の概略図を示す。1は第I層、2は第II層、3は第III層を示す。
易引裂性多層重量物包装用フィルム全体の厚みとしては、60μm以上のものが好ましい。より好ましくは60μm〜200μmである。多層フィルムの厚みが60μm以上であれば、優れた耐衝撃性及び落下強度を発現する。
【0050】
また、本発明の易引裂性多層重量物包装用フィルム中の第II層の厚さは、易引裂性多層重量物包装用フィルム全体を基準として、20〜70%であることが好ましい。より好ましくは20〜50%である。すなわち、外層(A)/中間層(B)/内層(C)が1:0.5:1の厚さ〜1:4:1程度の厚さをとることができる。中間層(B)が20%より薄いと、十分な易引裂性が得られないので好ましくない。一方、70%より厚いと、剛性が高くなりすぎ、インフレーション成形性および製袋適正を悪化させるため好ましくない。中間層(B)がこの範囲であれば、易引裂性に優れる上に、コスト的に有利であり、易引裂性多層フィルムの透明性、引き裂き性、耐ピンホール性が向上するため、好ましい。
【0051】
本発明の易引裂性フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、第I層に用いる高圧法低密度ポリエチレン(a1)及びエチレン・α−オレフィン共重合体(a2)と、第II層に用いる環状オレフィン系樹脂(b1)、高圧法低密度ポリエチレン(b2)及びエチレン・α−オレフィン共重合体(b3)と、第III層に用いる高圧法低密度ポリエチレン(c1)及びエチレン・α−オレフィン共重合体(c2)とを、それぞれ別の押出機で加熱融解させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で第I層/第II層/第III層の順で積層した後、インフレーション法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。
【0052】
本発明の易引裂性フィルムは、JIS K7128−2に準拠して測定したエルメンドルフ引裂強度が、縦方向及び横方向において、それぞれ100N/mm以下であることが好ましい。より好ましくは、50N/mm以下である。
【0053】
3.包装材
本発明の易引裂性多層重量物包装用フィルムは耐衝撃性に特に優れ、剛性が高く、かつシール強度に優れており、縦方向及び横方向においても易引裂性を有するため、自動製袋機適性に優れ、特に大量生産に適し、紙袋の内袋やゴミ袋など寸法規格の定まった規格袋や大量の肥料や穀類などの重量物を包装しても破れにくく、かつ内容物を取り出す際に手で切り裂くことの出来る易引裂性重量物包装袋などに使用することが出来る。
【0054】
本発明の易引裂性フィルムを用いた包装材には、初期の引き裂き強度を弱め、開封性を
向上するため、シール部にVノッチ、Iノッチ、ミシン目、微多孔などの任意の引き裂き
開始部を形成すると好ましい。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明の実施例及び比較例を示す。
1.物性測定法
(1)メルトフローレイト(MFR)
MFRはJIS K 7210に準拠して測定した。
(2)密度
試験温度23℃で、JIS K 6922−2に準拠して測定した。
(3)溶融張力
東洋精機製作所製キャピログラフを用い、炉内で190℃で加熱安定された樹脂を内径2.095mm、長さ8mmのオリフィスから1cm/minのピストン速度で押し出し、押し出された溶融樹脂を4m/minの速度で引っ張り、その時に生じた抵抗力を測定し、溶融張力値とした。
【0056】
1.フィルム物性評価方法
(1)エルメンドルフ引裂強度
JIS K7128−2を参考にし、以下の装置を用いてエルメンドルフ引裂強度を評価した。なお、MDは流れ方向(MD:Macine Direction)であり、TDは垂直方向(TD:Transverse Direction)の値である。
装置:デジタルエルメンドルフ引裂試験機 型式SA(株式会社東洋精機製作所製)
測定環境:温度23℃、湿度50%
(2)ヒートシール強度
インフレーション成形フィルムを2枚重ね、温度:200℃の条件で、ヒートシールを行い、15mm幅の180度剥離強度を測定した。
(3)ダート落下衝撃強度
JIS K 7124 1 A法に準拠して測定した。
(4)引張弾性率
JIS K 7127に準拠してMD方向を測定した。
【0057】
3.インフレーションフィルムの成形
以下の成形装置、成形条件によりインフレーションフィルムを成形した。
成形機:3層インフレーションフィルム成形機(株式会社プラコー製)
押出機スクリュー径:50mmφ×2、55mmφ×1
ダイ径:200mmφ
押出量:64kg/hr
ダイリップギャップ:3mm
引取速度:13m/分
ブローアップ比:1.5
成形樹脂温度:220℃
フィルム厚み:130μm
冷却リング:2段式風冷リング
【0058】
4.使用原料
(1)高圧法低密度ポリエチレン
・LDPE:日本ポリエチレン(株)製、商品名ノバテックLD、MFR=0.3g/10分、密度=0.922g/cm
3
(2)エチレン・α−オレフィン共重合体
・ZN−C4LLDPE−1:エチレン・α−オレフィン共重合体、MFR=0.4g/10分、密度=0.919g/cm
3のチーグラー・ナッタ触媒下で重合したエチレン・ブテン−1共重合体
・ZN−C4LLDPE−2:エチレン・α−オレフィン共重合体、MFR=0.9g/10分、密度=0.922g/cm
3のチーグラー・ナッタ触媒下で重合したエチレン・ブテン−1共重合体
・ZN−C4LLDPE−3:エチレン・α−オレフィン共重合体、MFR=3.1g/10分、密度=0.920g/cm
3のチーグラー・ナッタ触媒下で重合したエチレン・ブテン−1共重合体
・ZN−C6LLDPE:エチレン・α−オレフィン共重合体、MFR=0.5g/10分、密度=0.922g/cm
3のチーグラー・ナッタ触媒下で重合したエチレン・ヘキセン−1共重合体
・Me−C6LLDPE−1:エチレン・α−オレフィン共重合体、MFR=1.0g/10分、密度:0.906g/cm
3のメタロセン触媒下で重合したエチレン・ヘキセン−1共重合体
・Me−C6LLDPE−2:エチレン・α−オレフィン共重合体、MFR=1.5g/10分、密度:0.921g/cm
3のメタロセン触媒下で重合したエチレン・ヘキセン−1共重合体
(3)環状オレフィン系樹脂
・COC:ポリプラスチックス(株)製、商品名TOPAS「8007」、ノルボルネン含有量 36mol%
【0059】
5.実施例及び比較例
上記記載の樹脂を用いて、表1表2に記載の配合で厚み130μm、層比1:2:1のインフレ―ションフィルムを得た。評価結果を下記表1〜表3に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
6.評価
以下、本願実施例と比較例の説明を表1〜3に示すデータをもとに説明する。
比較例1はダート衝撃強度、ヒートシール強度、フィルム剛性は満足しているものの、MD及びTD方向の易カット性が不十分である。比較例2はダート衝撃強度、易カット性、フィルム剛性は満足しているものの、成形安定性、ヒートシール強度が不十分である。
比較例3はヒートシール強度、フィルム剛性は満足しているものの、ダート衝撃強度はわずかに不十分であり、MD及びTD方向の易カット性は不十分である。比較例4は易カット性、フィルム剛性は満足しているものの、ダート衝撃強度は不十分である。比較例5はダート衝撃強度、ヒートシール強度、フィルム剛性は満足しているものの、易カット性は不十分である。
それに対し、本発明による実施例1〜4ではダート衝撃強度、ヒートシール強度、フィルム強度に優れ、かつ十分な易カット性が見られており、易カット性重量物包装用フィルムとして好適なものとなることが明らかとなった。