特許第6610086号(P6610086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許6610086-積層セラミック電子部品 図000002
  • 特許6610086-積層セラミック電子部品 図000003
  • 特許6610086-積層セラミック電子部品 図000004
  • 特許6610086-積層セラミック電子部品 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6610086
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20191118BHJP
   H01G 4/22 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   H01G4/30 201F
   H01G4/30 500
   H01G4/30 311Z
   H01G4/22 200
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-166701(P2015-166701)
(22)【出願日】2015年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-115918(P2016-115918A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2018年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-251309(P2014-251309)
(32)【優先日】2014年12月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079577
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 全啓
(74)【代理人】
【識別番号】100167966
【弁理士】
【氏名又は名称】扇谷 一
(72)【発明者】
【氏名】大谷 真史
【審査官】 須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−278373(JP,A)
【文献】 特開2013−062550(JP,A)
【文献】 特開平08−203771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/00 −4/12
H01G 4/22
H01G 4/228−4/252
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極が埋設され、第1の主面と、前記第1の主面に相対する第2の主面と、前記第1の主面および前記第2の主面に接続する第1の側面と、前記第1の側面に相対する第2の側面と、前記第1の主面、前記第2の主面、前記第1の側面および前記第2の側面に接続する第1の端面と、前記第1の端面に相対する第2の端面とを有するセラミック素体と、
前記内部電極に電気的に接続される前記セラミック素体の前記第1の端面と前記第2の端面および、前記第1の主面、前記第2の主面、前記第1の側面および前記第2の側面に形成された外部電極と、を備えた積層セラミック電子部品であって、
前記外部電極は、前記セラミック素体側から順に、焼結金属層、導電性樹脂層およびめっき層を備え、
前記セラミック素体の第1の主面第2の主面、第1の側面、第2の側面、第1の端面、第2の端面の各面上にフッ素が存在することを特徴とする、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
内部電極が埋設され、第1の主面と、前記第1の主面に相対する第2の主面と、前記第1の主面および前記第2の主面に接続する第1の側面と、前記第1の側面に相対する第2の側面と、前記第1の主面、前記第2の主面、前記第1の側面および前記第2の側面に接続する第1の端面と、前記第1の端面に相対する第2の端面とを有するセラミック素体と、
前記内部電極に電気的に接続される前記セラミック素体の前記第1の端面と前記第2の端面および、前記第1の主面、前記第2の主面、前記第1の側面および前記第2の側面に形成された外部電極と、を備えた積層セラミック電子部品であって、
前記外部電極は、前記セラミック素体側から順に、焼結金属層、導電性樹脂層およびめっき層を備え、
前記セラミック素体の第1の主面第2の主面、第1の側面、第2の側面、第1の端面、第2の端面の各面上にTOF−SIMS分析により検出されるフッ素が存在することを特徴とする、積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記フッ素層は、フッ素が存在しない部分において電気的な導通が確保される、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
第1の主面と、前記第1の主面に相対する第2の主面と、前記第1の主面および前記第2の主面に接続する第1の側面と、前記第1の側面に相対する第2の側面と、前記第1の主面、前記第2の主面、前記第1の側面および前記第2の側面に接続する第1の端面と、
前記第1の端面に相対する第2の端面とを有するセラミック素体を準備する工程、
前記セラミック素体をフッ素溶液に浸漬して前記セラミック素体に付着したフッ素溶液を乾燥させることによりフッ素層を形成する工程、
前記積層体の両端部において前記フッ素層上に導電性ペーストを塗布して焼き付けることにより焼結金属層を形成する工程、
前記焼結金属層上に導電性樹脂を付与して硬化させることにより導電性樹脂層を形成する工程、および
前記導電性樹脂層上にめっき層を形成する工程を含む、積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記フッ素層は、フッ素が存在しない部分において電気的な導通が確保される、請求項4に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層セラミック電子部品に関し、特に、内部電極が埋設されたセラミック素体と内部電極に電気的に接続されるようにセラミック素体の端面に形成された外部電極とを有する、たとえば、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックサーミスタ、積層セラミック圧電部品などの積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層セラミック電子部品として、たとえば特許文献1に開示されているように、内部電極が埋設されたセラミック素体の表面において内部電極が露出したセラミック素体の両端面に、金属を主成分として含有する焼結型電極層と焼結型電極層の表面に形成された金属粒子を含有する導電性樹脂電極層と導電性樹脂電極層の表面に形成されためっき層とを有する外部電極を備えたものが知られている。この積層セラミック電子部品では、焼結型電極層およびめっき層間に導電性樹脂電極層が形成されているので、使用時の温度サイクルでセラミック素体にクラックが発生したり、基板に実装されている場合に基板のたわみに対して強度的に弱かったりするという欠点が、ある程度解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−284343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような積層セラミック電子部品では、セラミック素体の両端面に外部電極が形成されるが、基板への積層セラミック電子部品の実装性を考慮して、セラミック素体の端面からそれに隣接する主面に回り込むように外部電極が形成されている。ところが、セラミック素体の主面において、セラミック素体と外部電極の端部との間から水分が入り込みやすく、入り込んだ水分は導電性樹脂層に含まれる。
【0005】
このような積層セラミック電子部品は、リフローにより基板に実装される。このようなリフローによる実装時に、導電性樹脂層に含まれる水分が蒸発し、実装に用いられるはんだを飛び散らせる「はんだ爆ぜ」という問題が生じる。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、セラミック素体の主面における外部電極の端部から外部電極の内側に水分が浸入することを防止することができる積層セラミック電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる積層セラミック電子部品は、内部電極が埋設され、第1の主面と、第1の主面に相対する第2の主面と、第1の主面および第2の主面に接続する第1の側面と、第1の側面に相対する第2の側面と、第1の主面、第2の主面、第1の側面および第2の側面に接続する第1の端面と、第1の端面に相対する第2の端面とを有するセラミック素体と、内部電極に電気的に接続されるセラミック素体の第1の端面と第2の端面および、第1の主面、第2の主面、第1の側面および第2の側面に形成された外部電極と、を備えた積層セラミック電子部品であって、外部電極は、セラミック素体側から順に、焼結金属層、導電性樹脂層およびめっき層を備え、セラミック素体の第1の主面および第2の主面と導電性樹脂層との間にフッ素が存在することを特徴とする、積層セラミック電子部品である。
また、この発明にかかる積層セラミック電子部品は、内部電極が埋設され、第1の主面と、第1の主面に相対する第2の主面と、第1の主面および第2の主面に接続する第1の側面と、第1の側面に相対する第2の側面と、第1の主面、第2の主面、第1の側面および第2の側面に接続する第1の端面と、第1の端面に相対する第2の端面とを有するセラミック素体と、内部電極に電気的に接続されるセラミック素体の第1の端面と第2の端面および、第1の主面、第2の主面、第1の側面および第2の側面に形成された外部電極と、を備えた積層セラミック電子部品であって、外部電極は、セラミック素体側から順に、焼結金属層、導電性樹脂層およびめっき層を備え、セラミック素体の第1の主面および第2の主面と導電性樹脂層との間にTOF−SIMS分析により検出されるフッ素が存在することを特徴とする、積層セラミック電子部品である。
このような積層セラミック電子部品において、セラミック素体の第1の主面、第2の主面、第1の側面および第2の側面に形成された外部電極の先端部分にフッ素が存在することが好ましい。
ここで、フッ素は、焼結金属層と導電性樹脂層との間にも存在することができる。
また、フッ素は、素体と焼結金属層との間にも存在することができる。
この発明にかかる積層セラミック電子部品の製造方法は、第1の主面と、第1の主面に相対する第2の主面と、第1の主面および第2の主面に接続する第1の側面と、第1の側面に相対する第2の側面と、第1の主面、第2の主面、第1の側面および第2の側面に接続する第1の端面と、第1の端面に相対する第2の端面とを有するセラミック素体を準備する工程と、セラミック素体をフッ素溶液に浸漬してセラミック素体に付着したフッ素溶液を乾燥させることによりフッ素層を形成する工程と、積層体の両端部においてフッ素層上に導電性ペーストを塗布して焼き付けることにより焼結金属層を形成する工程と、焼結金属層上に導電性樹脂を付与して硬化させることにより導電性樹脂層を形成する工程と、導電性樹脂層上にめっき層を形成する工程とを含む、積層セラミック電子部品の製造方法である。
さらに、この発明にかかる積層セラミック電子部品の製造方法は、第1の主面と、第1の主面に相対する第2の主面と、第1の主面および第2の主面に接続する第1の側面と、第1の側面に相対する第2の側面と、第1の主面、第2の主面、第1の側面および第2の側面に接続する第1の端面と、第1の端面に相対する第2の端面とを有するセラミック素体を準備する工程と、積層体の両端部に導電性ペーストを塗布して焼き付けることにより焼結金属層を形成する工程と、焼結金属層が形成されたセラミック素体をフッ素溶液に浸漬してセラミック素体および焼結金属層に付着したフッ素溶液を乾燥させることによりフッ素層を形成する工程と、焼結金属層上に形成されたフッ素層上に導電性樹脂を付与して硬化させることにより導電性樹脂層を形成する工程と、導電性樹脂層上にめっき層を形成する工程とを含む、積層セラミック電子部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、セラミック素体の主面と導電性樹脂層との間に存在するフッ素の疎水性により、外部電極の端部からの水分の浸入を抑制し、リフローによる積層セラミック電子部品の基板上への実装の際のはんだ爆ぜを防止することができる積層セラミック電子部品を得ることができる。
【0009】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明にかかる積層セラミックコンデンサの一例を示す斜視図である。
図2図1に示す積層セラミックコンデンサの図1の線II−IIにおける断面図である。
図3図1に示す積層セラミックコンデンサのセラミック素体と外部電極との間の構成を示す図解図である。
図4図1に示す積層セラミックコンデンサのセラミック素体と外部電極との間の構成の他の例を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す積層セラミックコンデンサ10は、たとえば、長さ1mm、幅0.5mm、厚さ0.15mmの略直方体状のセラミック素体12を含む。セラミック素体12は、複数の積層されたセラミック層14を含み、互いに相対する第1の主面12aおよび第2の主面12bと、互いに相対する第1の側面12cおよび第2の側面12dと、互いに相対する第1の端面12eおよび第2の端面12fとを有する。第1の側面12cおよび第2の側面12dは、それぞれ、第1の主面12aおよび第2の主面12bに接続する。第1の端面12eおよび第2の端面12fは、それぞれ、第1の主面12a、第2の主面12b、第1の側面12cおよび第2の側面12dに接続する。このセラミック素体12には、コーナー部および稜部に丸みがつけられている。なお、セラミック素体12は、他の大きさや形状に形成されてもよい。
【0012】
セラミック素体12のセラミック層14のセラミック材料としては、たとえば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、CaZrO3などの主成分からなる誘電体セラミックを用いることができる。また、これらの主成分にMn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物などの副成分を添加したものを用いてもよい。また、セラミック素体12のセラミック層14の厚みは、たとえば、0.5μm〜10μmとすることができる。
【0013】
セラミック素体12の内部には、図2に示すように、たとえば略矩形状の複数の第1の内部電極16aおよび第2の内部電極16bが、セラミック素体12の厚み方向に沿って等間隔に交互に配置されるように埋設されている。
第1の内部電極16aおよび第2の内部電極16bの一端部には、セラミック素体12の第1の端面12eおよび第2の端面12fに露出した露出部18aおよび18bを有する。具体的には、第1の内部電極16aの一端部の露出部18aは、セラミック素体12の第1の端面12eに露出している。また、第2の内部電極16bの一端部の露出部18bは、セラミック素体12の第2の端面12fに露出している。
さらに、第1の内部電極16aおよび第2の内部電極16bのそれぞれは、セラミック素体12の第1の主面12aおよび第2の主面12bと平行である。また、第1の内部電極16aおよび第2の内部電極16bは、セラミック素体12の厚み方向において、セラミック層14を介して、互いに対向している。
第1の内部電極16aおよび第2の内部電極16bのそれぞれの厚さは、たとえば、0.2μm〜2μmとすることができる。しかしながら、第1の内部電極16aおよび第2の内部電極16bのそれぞれの厚さも、特に限定されない。
第1の内部電極16aおよび第2の内部電極16bは、たとえば卑金属であるNiを導電性材料として含んでいる。なお、第1の内部電極16aおよび第2の内部電極16bは、たとえば、Ni、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属や、これらの金属の1種を含むたとえばAg−Pd合金などの合金により構成することができる。
【0014】
セラミック素体12の第1の端面12eおよび第2の端面12f側には、第1の外部電極20aおよび第2の外部電極20bがそれぞれ形成されている。
第1の外部電極20aは、セラミック素体12の第1の端面12eから第1の主面12aおよび第2の主面12bと第1の側面12cおよび第2の側面12dとにわたって形成されている。この場合、第1の外部電極20aは、第1の内部電極16aの露出部18aと電気的に接続される。
また、第2の外部電極20bは、セラミック素体12の第2の端面12fから第1の主面12aおよび第2の主面12bと第1の側面12cおよび第2の側面12dとにわたって形成されている。この場合、第2の外部電極20bは、第2の内部電極16bの露出部18bと電気的に接続される。
【0015】
第1の外部電極20aは、図3に示すように、セラミック素体12側から順に、焼結金属層22a、フッ素層23、導電性樹脂層24aおよびめっき層26aを備える。同様に、第2の外部電極20は、セラミック素体12側から順に、焼結金属層22b、フッ素層23、導電性樹脂層24bおよびめっき層26bを備える。
【0016】
焼結金属層22aおよび22bは、それぞれ、卑金属であるCuを主成分として含有しており、セラミック素体12の外表面に、すなわち第1の端面12eおよび第2の端面12fなどの上に形成され、第1の内部電極16aおよび第2の内部電極16bと物理的かつ電気的に接続される。焼結金属層22aおよび22bは、それぞれ、Cu粉末およびガラス粉末を含有する導電性ペーストをセラミック素体12の外表面に塗布して焼き付けることによって形成されている。焼結金属層22aおよび22bの厚みは、それぞれ、たとえば、10μm〜30μmである。
【0017】
フッ素層23は、焼結金属層22aおよび22b上に形成されるが、このとき、焼結金属層22aおよび22bが形成されたセラミック素体12を覆うようにして、フッ素層23が形成される。フッ素層23は、焼結金属層22aおよび22bが形成されたセラミック素体12をフッ素溶液に浸漬することによって塗布され、この塗布されたフッ素溶液が乾燥させられて、フッ素層23が形成される。ここで用いられるフッ素溶液としては、例えば、フルオロ共重合体を含むフッ素溶液などが使用可能である。
【0018】
フッ素層23上に形成される導電性樹脂層24aおよび24bは、それぞれ、金属粉末を導電性材料として含む。導電性樹脂層24aおよび24bは、それぞれ、フッ素層23a上において、焼結金属層22aおよび22bを覆うように形成されており、金属粉末と熱硬化性樹脂との混合物を加熱して硬化した層である。導電性樹脂層24aおよび24bの厚みは、たとえば、セラミック素体12の大きさによって調整される。セラミック素体12の長さ方向Lの寸法×厚み方向Tの寸法×幅方向Wの寸法が、それぞれ0.6mm×0.3mm×0.3mmである場合、導電性樹脂層24aおよび24bの厚みは10μmに設定され、セラミック素体12の上述のそれぞれの寸法が1.0mm×0.5mm×0.5mmの場合、導電性樹脂層24aおよび24bの厚みは15μmに設定され、セラミック素体12の上述のそれぞれの寸法が3.2mm×2.6mm×2.6mmの場合、導電性樹脂層24aおよび24bの厚みは80μm〜100μmに設定される。
【0019】
導電性樹脂層24aおよび24bに含まれる熱硬化性樹脂としては特に制限されないが、たとえば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。
【0020】
めっき層26aは、Niめっき層28aおよびSnめっき層30aを含む。同様に、めっき層26bは、Niめっき層28bおよびSnめっき層30bを含む。
【0021】
Niめっき層28aおよび28bは、導電性樹脂層24aおよび24bなどの表面をNiでめっき処理することによって形成されており、それぞれの厚みは、たとえば、1μm〜5μmである。Niめっき層28aおよび28bは、半田食われを防止する保護層として機能する。
【0022】
Snめっき層30aおよび30bは、Niめっき層28aおよび28bの表面をSnでめっき処理することによって形成されており、それぞれの厚みは、たとえば、1μm〜5μmである。Snめっき層30aおよび30bは、はんだ付け性を向上させるように機能する。
【0023】
また、この積層セラミックコンデンサ10では、導電性樹脂層24aおよび24bが金属粉からなる金属粒子を含むので、導電性樹脂層24aおよび24bにおいて良好な導電性が確保される。
【0024】
さらに、この積層セラミックコンデンサ10では、焼結金属層22aおよび22bがCuを含むので、焼結金属層22aおよび22bにおいて良好な導電性が確保される。
【0025】
なお、焼結金属層22aと導電性樹脂層24aとの間および焼結金属層22bと導電性樹脂層24bとの間にフッ素層23が存在するが、焼結性金属層22aおよび22b上にフッ素溶液を付与し、フッ素溶液を乾燥させることによって、フッ素が存在する部分とフッ素が存在しない部分が生じる。したがって、フッ素が存在する部分において、フッ素の疎水性により外部からの水分の浸入が防止され、フッ素が存在しない部分において、焼結金属層22aと導電性樹脂層24aとの導通および焼結金属層22bと導電性樹脂層24bとの導通が確保される。なお、フッ素はプラズマ重合によるコーティングにより付与してもよい。
【0026】
また、この積層コンデンサ10では、めっき層26aがNiめっき層28aを含み、めっき層26bがNiめっき層28bを含むので、Niめっき層28aおよび28bによってめっき層26aおよび26bよりも内側の水分などを閉じ込めることができ、たとえばリフローによる実装時に、めっき層26aおよび26bよりも内側の水分などがはんだとともに外部に爆ぜるはんだ爆ぜが防止される。
【0027】
さらに、この積層セラミックコンデンサ10は、第1の外部電極20aおよび第2の外部電極20bがセラミック素体12の第1の主面12aおよび第2の主面12bに形成されているので、第1の主面12aおよび第2の主面12bのどちらの主面を実装面としても実装しやすい。
【0028】
また、この積層セラミックコンデンサ10では、第1の外部電極20aおよび第2の外部電極20bの端部において、セラミック素体12と焼結金属層22aと導電性樹脂層24aとの間および焼結金属層22bと導電性樹脂層24bとの間にフッ素層23が形成されている。フッ素層23は疎水性を有するため、セラミック素体12と第1の外部電極20aおよび第2の外部電極20bの端部との間から水分が入り込むことが防止される。そのため、導電性樹脂層24aおよび24bに外部から水分が浸入することが防止される。それにより、リフローによって積層セラミック電子部品10を基板に実装する際に、導電性樹脂層24aおよび24bに含まれる水分の蒸発によるはんだ爆ぜを防止することができる。なお、フッ素層23が存在するかどうかについては、セラミック素体12の主面側に形成された外部電極20aおよび20bを主面方向に向かって研磨し、アルゴンエッチングによって外部電極を除去し、表面をTOF−SIMS分析により、ピーク値を観察することでフッ素の存在を確認することができる。
【0029】
ここで、TOF−SIMS装置で検出されるフッ素は、BaF+、C33+、C24+、C25+、C35+のイオンであり、BaF+のイオンが最も大きい強度で検出される。なお、ION−TOF社製のTOF−SIMS装置:TOF.SIMS 5の場合、その測定条件は、次の通りである。
1次イオン:Bi3++ (1次イオンエネルギー:25kV)
2次イン極性:Positive ion
測定エリア:300μm×300μm
スキャン数:16回
ピクセル数:128 pixcel
【0030】
なお、焼結金属層22aおよび22bを形成する前に、セラミック素体12の表面にフッ素層23が形成されてもよい。この場合、図4に示すように、セラミック素体12の端部において、セラミック素体12と焼結金属層22aとの間およびセラミック素体12と焼結金属層22bとの間にフッ素層23が形成され、導電性樹脂層24aおよび24bの端部がフッ素層23で覆われる。また、導電性樹脂層24aおよび24bは、それぞれ焼結金属層22aおよび22bとめっき層26aおよび26bとで覆われているため、導電性樹脂層24aおよび24bに水分が浸入することが防止される。
【0031】
なお、フッ素層23は、セラミック素体12の端面全体や焼結金属層22aおよび22b全体を覆うように形成されている必要はなく、第1の外部電極20aおよび第2の外部電極20bの端部において、セラミック素体12と導電性樹脂層24aとの間およびセラミック素体12と導電性樹脂層24bとの間に形成されていれば、導電性樹脂層24aおよび24bへの水分の浸入を防止することができる。
【0032】
次に、上述の積層セラミックコンデンサ10を製造する方法の一例について説明する。
【0033】
まず、セラミック素体12内のセラミック層14を構成するためのセラミック材料を含むセラミックグリーンシートを用意する。
【0034】
次に、そのセラミックグリーンシートの上に、導電性ペーストを塗布することによって、導電パターンを形成する。なお、導電性ペーストの塗布は、たとえば、スクリーン印刷法などの各種印刷法によって行うことができる。導電性ペーストは、導電性微粒子の他に、公知のパインダーや溶剤を含んでいてもよい。
【0035】
そして、導電パターンが形成されていない複数枚のセラミックグリーンシートと、第1の内部電極または第2の内部電極に対応した形状の導電パターンが形成されているセラミックグリーンシートと、導電パターンが形成されていない複数枚のセラミックグリーンシートとをこの順番で積層し、積層方向にプレスすることによって、マザー積層体を作製する。
【0036】
それから、マザー積層体の上の仮想のカットラインに沿ってマザー積層体をカッティングすることによって、マザー積層体から複数の生のセラミック積層体を作製する。なお、マザー積層体のカッティングは、ダイシングや押切によって行うことができる。生のセラミック積層体に対しては、バレル研磨などを施し、稜線部や角部を丸めてもよい。
【0037】
そして、生のセラミック積層体の焼成を行う。この焼成工程において、第1の内部電極および第2の内部電極が焼成される。焼成温度は、使用するセラミック材料や導電性ペーストの種類により適宜設定することができる。焼成温度は、たとえば、900℃〜1300℃とすることができる。
【0038】
このようにして得られたセラミック積層体(セラミック素体)と焼結金属層との間にフッ素層を形成するために、セラミック素体がフッ素溶液に浸漬されて乾燥させられる。
【0039】
それから、ディッピングなどの方法によって、焼成後のセラミック積層体(セラミック素体)の両端部に導電性ペーストを塗布する。
【0040】
次に、セラミック積層体に塗布した導電性ペーストをたとえば60℃〜180℃の中で10分間熱風乾燥する。
【0041】
その後、乾燥した導電性ペーストを焼き付けて焼結金属層を形成する。
【0042】
なお、焼結金属層と導電性樹脂層との間にフッ素層を形成する場合には、セラミック素体のみをフッ素溶液に浸漬するのではなく、焼結金属層を形成したセラミック素体がフッ素溶液に浸漬される。
【0043】
それから、導電性樹脂層上にNiめっき層および、Niめっき層上に形成されたSnめっき層からなるめっき層を施すことによって、積層セラミックコンデンサ10を製造することができる。
【0044】
上述のように、このような構成を有する積層セラミックコンデンサ10のようなフッ素層が形成された積層セラミック電子部品では、セラミック素体の主面と導電性樹脂層との間に疎水性を有するフッ素が存在することにより、外部電極の端部からの水分の浸入を防止することができる。それにより、導電性樹脂層に水分が含まれることが防止され、積層セラミック電子部品をリフローにより基板上に実装する際におけるはんだ爆ぜを防止することができる。
このような積層セラミック電子部品において、フッ素が焼結金属層と導電性樹脂層との間に存在すれば、導電性樹脂層と外界との遮断をより強固なものとすることができ、導電性樹脂層への水分の浸入を防止することができる。
さらに、フッ素がセラミック素体と焼結金属層との間に形成されていても、導電性樹脂層と外界との遮断を強固なものとすることができ、導電性樹脂層への水分の浸入を防止することができる。
【0045】
(実験例)
まず、実施例として、セラミック素体と焼結金属層との間にフッ素層を形成した積層セラミックコンデンサを20個と、焼結金属層と導電性樹脂層との間にフッ素層を形成した積層セラミックコンデンサを20個作製した。
また、比較例として、フッ素層を設けていない積層セラミックコンデンサを20個作製した。
これらの積層セラミックコンデンサについて、リフローにより基板に実装したところ、比較例では、導電性樹脂層への水分の浸入がみられ、20個中15個ではんだ爆ぜが見られたが、実施例でははんだ爆ぜは発生しなかった。
【0046】
上述の実施の形態および実施例では、第1の外部電極および第2の外部電極がセラミック素体の側面にも形成されているが、1の外部電極および第2の外部電極は、セラミック素体の側面には形成されなくてもよい。第1の外部電極および第2の外部電極は、セラミック素体の両端面および少なくとも第1の主面または第2の主面に形成されていればよい。このようにして積層セラミック電子部品に第1の外部電極および第2の外部電極を形成すれば、これらの外部電極を形成した第1の主面または第2の主面を実装面として積層セラミック電子部品を実装しやすい。
【0047】
また、上述の実施の形態および実施例では、めっき層がNiめっき層およびSnめっき層で構成されているが、めっき層は、1層のめっき層または3層以上のめっき層で構成されてもよい。
【0048】
上述の実施の形態および実施例では、セラミック素体の材料として誘電体セラミックを用いたが、この発明では、積層セラミック電子部品の種類によっては、セラミック素体の材料として、フェライトなどの磁性体セラミック、スピネル系セラミックなどの半導体セラミック、PZT系セラミックなどの圧電体セラミックを用いることもできる。
積層セラミック電子部品は、セラミック素体として、磁性体セラミックを用いた場合は積層セラミックインダクタとして機能し、半導体セラミックを用いた場合は積層セラミックサーミスタとして機能し、圧電体セラミックを用いた場合は積層セラミック圧電部品として機能する。ただし、積層セラミック電子部品を積層セラミックインダクタとして機能させる場合には、内部電極はコイル状の導体となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明にかかるセラミック電子部品は、特にたとえば、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックサーミスタ、積層セラミック圧電部品などとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0050】
10 積層セラミックコンデンサ
12 セラミック素体
12a 第1の主面
12b 第2の主面
12c 第1の側面
12d 第2の側面
12e 第1の端面
12f 第2の端面
14 セラミック層
16a 第1の内部電極
16b 第2の内部電極
18a 露出部
18b 露出部
20a 第1の外部電極
20b 第2の外部電極
22a 焼結金属層
22b 焼結金属層
23 フッ素層
24a 導電性樹脂層
24b 導電性樹脂層
26a めっき層
26b めっき層
28a Niめっき層
28b Niめっき層
30a Snめっき層
30b Snめっき層
図1
図2
図3
図4