特許第6610097号(P6610097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6610097
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】カバー部材の脱落防止構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/48 20060101AFI20191118BHJP
【FI】
   B60R19/48 W
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-173624(P2015-173624)
(22)【出願日】2015年9月3日
(65)【公開番号】特開2017-47810(P2017-47810A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩史
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−091502(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0066979(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の開口部を開閉可能に覆うカバー部材の脱落防止構造において、
記カバー部材の縁部には、係止片が設けられ、該係止片は、前記カバー部材が前記開口部を覆った状態で前記縁部から車体の内方に向かって延びる係止片基部を有し、
前記係止片基部端部には、第1帯状部と第2帯状部とを有する二股形状部が形成され、
前記第1帯状部と前記第2帯状部は、前記係止片基部の前記端部から前記車体の前記内方に向かって延びており、
前記第1帯状部の先端と前記第2帯状部の先端は所定の間隔を空けて配置され、
前記第1帯状部及び前記第2帯状部の少なくとも一方は弾力性を有しており、
前記第1帯状部と前記第2帯状部を介して前記カバー部材が前記車体に形成された係止穴に係合していることを特徴とするカバー部材の脱落防止構造。
【請求項2】
前記第1帯状部と前記第2帯状部は、前記第1帯状部に対して面直方向から見たとき、または前記第2帯状部に対して面直方向から見たとき、重ならないよう並置されていることを特徴とする請求項1に記載のカバー部材の脱落防止構造。
【請求項3】
前記第1帯状部と前記第2帯状部は、前記第1帯状部に対して面直方向から見たとき、または前記第2帯状部に対して面直方向から見たとき、少なくとも一部が重なるよう配置されていることを特徴とする請求項1に記載のカバー部材の脱落防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の車体に着脱可能に取り付けられる樹脂部品の脱落防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の車体には開口部を開閉可能に覆うキャップやカバー等の樹脂部品が取り付けられている。このキャップやカバー等の部品には、取り外し時に車体から完全に離脱しないよう保持するために、あるいは紛失を避けるために、脱落防止用の部材が設けられている。特許文献1及び特許文献2には、バンパーに形成された牽引フック用の開口部を開閉可能に覆うよう取り付けられるカバー部材の支持構造が記載されている。特許文献1のカバーには、矩形のカバー本体の1つの肩部に吊りワイヤが突出して設けられている。この吊りワイヤの先端にはアンカーが設けられており、吊りワイヤのアンカーが牽引フック用の開口の近傍に形成された取付孔に挿通され抜け止めされることにより、カバー本体は吊りワイヤに支持され、フロントバンパーからの不用意な落下が防止されている。また、特許文献2のカバー部材には係止紐が結合されており、係止紐の端部には係止フックが形成されている。バンパーの牽引フック用開口部のフランジ部に形成された係止穴に係止フックが係合することにより、カバー部材は係止紐を介して牽引フック用開口部のフランジ部に連繋され、脱落が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−91459
【特許文献2】特開2010−175019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアンカーや特許文献2の係止フックはいずれも矢印状や錨状の形状を有しているため、カバー部材を繰り返し着脱するたびにアンカーや係止フックに局所的な負荷がかかってしまう。その結果、構成する各部が折れ曲がったり、一部が破損して欠けてしまうという問題があった。すなわち、これらのアンカーや係止フックには、カバー部材の着脱を繰り返すと変形や破損が生じ、カバー部材の脱落を防止する機能が維持できないという問題があった。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、繰り返し使用しても脱落防止機能が維持される、カバー部材の脱落防止構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車体の開口部を開閉可能に覆うカバー部材の脱落防止構造において、カバー部材の縁部には、係止片が設けられ、該係止片は、カバー部材が開口部を覆った状態で縁部から車体の内方に向かって延びる係止片基部を有し、係止片基部端部には、第1帯状部と第2帯状部とを有する二股形状部が形成され、第1帯状部と第2帯状部は、係止片基部の端部から車体の内方に向かって延びており、第1帯状部の先端と第2帯状部の先端は所定の間隔を空けて配置され、第1帯状部及び第2帯状部の少なくとも一方は弾力性を有しており、第1帯状部と第2帯状部を介してカバー部材が車体に形成された係止穴に係合している。
【0007】
第1帯状部に対して面直方向から見たとき、または第2帯状部に対して面直方向から見たとき、第1帯状部と第2帯状部は重ならないよう並置されていてもよい。また、第1帯状部に対して面直方向から見たとき、または第2帯状部に対して面直方向から見たとき、第1帯状部と第2帯状部は少なくとも一部が重なるよう配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
上述のように、本発明に係るカバー部材の脱落防止構造は、カバー部材が開口部を覆った状態で車体の内方に向かって延びるよう、カバー部材の縁部に係止片が設けられ、係止片の先端には、第1帯状部と第2帯状部とを有する二股形状部が形成され、第1帯状部の先端と第2帯状部の先端は所定の間隔を空けて配置され、第1帯状部及び第2帯状部の少なくとも一方は弾力性を有しており、第1帯状部と第2帯状部を介してカバー部材が車体に形成された係止穴に係合している。すなわち、カバー部材を車体から取り外しても、係止片は係止穴を通過することはなく、弾力性を有する第1帯状部および/または第2帯状部により係止穴に係止される。この構成により、車体の開口部を露出させた状態を維持しながら、カバー部材は車体に保持され、車体から脱落することが防止される。そして、第1帯状部および/または第2帯状部の弾力性により係止片は係止穴に係合されるため、係止片の局所的な変形が相対的に小さく抑えられる。その結果、カバー部材の取り外しを繰り返すことに起因する係止片の破損が防止され、使用開始当初の脱落防止機能を長期にわたって維持することができる。
【0009】
第1帯状部に対して面直方向から見たとき、または第2帯状部に対して面直方向から見たとき、第1帯状部と第2帯状部が重ならないよう並置される構成とすれば、係止片の射出成型において型抜きスライド構造を採用する必要がないため、型抜きが容易に行えるとともに経費を節減することができる。また、係止片が係合穴に係合している状態において、係合穴と当接する領域を幅広く確保することができる。従って、カバー部材に対して外力が加えられ係止片が回動する方向に伝達されても、係止片と係合穴の係合を確実に維持することができる。
【0010】
第1帯状部に対して面直方向から見たとき、または第2帯状部に対して面直方向から見たとき、少なくとも一部が重なるよう第1帯状部と第2帯状部が配置される構成とすれば、第1帯状部および/または第2帯状部の弾性力が作用する方向の延長上に第2帯状部および/または第1帯状部が位置するため、第1帯状部および/または第2帯状部の弾性力を利用した係止穴との係合をより高められ、カバー部材の脱落をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るトーイングキャップが取り付けられたフロントバンパーを車両前方側から示す正面図である。
図2】トーイングキャップをフロントバンパーの開口部から取り外した状態のフロントバンパー車両前方向から示す斜視図である。
図3】トーイングキャップを裏面側から示す斜視図である。
図4】フロントバンパーの開口部を示す図である。
図5】トーイングキャップの係止片を示す側面図である。
図6】トーイングキャップの係止片を示す斜視図である。
図7】トーイングキャップを車体に取り付ける手順の一部を示す図である。
図8】トーイングキャップを車体に取り付ける手順の一部を示す図である。
図9】トーイングキャップを車体に取り付ける手順の一部を示す図である。
図10】トーイングキャップをフロントバンパーの開口部から取り外した状態をフロントバンパーの裏面側から示す斜視図である。
図11】本発明の変形例に係るトーイングキャップの係止片を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るトーイングキャップが取り付けられたフロントバンパーを車両前方から示す正面図であり、図2はトーイングキャップを取り外した状態を示す斜視図である。フロントバンパー1は車両の前方に配置されている。フロントバンパー1の下部には開口部2が形成されている。トーイングキャップ3は開口部2を開閉可能に覆うカバー部材である。通常、開口部2は図1に示すようにトーイングキャップ3により閉塞されているが、例えば車両を前方へ牽引するときには、図2に示すようにトーイングキャップ3がフロントバンパー1から外され、露出した開口部2に牽引ロープ(図示せず)が通されて、車両内部に設けられたトーイングフック(図示せず)に係合させる。
【0013】
図3は、トーイングキャップ3を裏面から示す斜視図である。トーイングキャップ3の本体31は、開口部2を閉塞するように取り付けられた状態(以下、キャップ取付状態)で車両の前面側を覆う前面部31Aと車両の底面側を覆う底面部31Bとを有する。前面部31Aと底面部31Bは所定のR(アール)で湾曲している接続部31Cにより接続されており、本体31は側面視で略L字状を呈している。
【0014】
キャップ取付状態で上側に位置する、トーイングキャップ3の本体31の前面部31Aの上側縁部31Uの略中央には、トーイングキャップ3の脱落防止のための樹脂成形部品である係止片32が設けられている。係止片32は上側縁部31Uからトーイングキャップ3の内方に向かって、すなわち底面部31Bが位置する側に向かって延びている。キャップ取付状態では、係止片32は上側縁部31Uから車体の内方に向かって延びることになる。係止片32の詳細な構成については後述する。
【0015】
上側縁部31Uにおいて、キャップ取付状態で係止片32の車幅方向右側に位置する領域には、2つの嵌合爪33A、33Bが所定の間隔をおいて設けられ、係止片32の車幅方向左側に位置する領域には、3つの嵌合爪33C、33D、33Eが所定の間隔をおいて設けられている。係止片32の左側に位置する嵌合爪33C、33D、33Eのうち上側縁部31Uの左端部に相対的に近い側に位置する2つの嵌合爪33D、33Eは、上側縁部31Uにおいて車両内方側にわずかに突出するフランジFに設けられている。キャップ取付状態で車幅方向の左右に位置する、本体31の前面部31Aの右側縁部31RA、左側縁部31LAには、それぞれ1つの嵌合爪33F、33Gが設けられている。キャップ取付状態で右側に位置する、本体31の底面部31Bの右側縁部31RBの車両後方側の端部には1つの嵌合爪33Hが設けられている。同様に、キャップ取付状態で左側に位置する、本体31の底面部31Bの右側縁部31LBの車両後方側の端部には嵌合爪33Iが設けられている。
【0016】
図4はフロントバンパー1の開口部2を車両前方から示す図である。図中、トーイングキャップ3は省略されている。開口部2の左右両側には車両上下方向に沿って縦方向取付枠21L、21Rが形成され、開口部2の上側には車幅方向に沿って横方向取付枠21Uが形成されている。横方向取付枠21Uは縦方向取付枠21L、21Rと連続して形成されている。縦方向取付枠21L、21Rは車両後方に向かって延びており、それぞれの後端部には、下方に延びるフランジ21LF、21RFが形成されている。
【0017】
横方向取付枠21Uの前面側の略中央には略矩形の係止穴22が形成されている。横方向取付枠21Uの前面側において係止穴22の車幅方向右側には、2つの略矩形の取付穴23A、23Bが所定の間隔をおいて形成されている。横方向取付枠21Uの前面側において係止穴22の車幅方向左側には、3つの略矩形の取付穴23C、23D、23Eが所定の間隔をおいて形成されている。縦方向取付枠21Rの前面側には略矩形の取付穴23Fが形成され、縦方向取付枠21Lの前面側には略矩形の取付穴23Gが形成されている。さらに、フランジ21RFには略矩形の取付穴23Hが形成され、フランジ21LFには略矩形の取付穴23Iが形成されている。
【0018】
図3に示されているように、トーイングキャップ3の係止片32の薄板状の基部32Aは略矩形を呈しており、相対的に短い方の辺が車幅方向に延び、相対的に長い方の辺が車両前後方向に延びるよう配置されている。基部32Aの長手方向の一方の端部は上側縁部31Uに接合されており、長手方向の他方の端部、すなわち係止片32の先端には二股形状部32Bが形成されている。二股形状部32Bは第1帯状部40と第2帯状部41とを有している。第1帯状部40および第2帯状部41は基部32Aの端部から、トーイングキャップ3の内方に向かって延びている。
【0019】
図5および図6に示すように、第1帯状部40の先端と第2帯状部41の先端は、フロントバンパー1の横方向取付枠21Uの係止穴22に係合するよう、所定の間隔を空けて配置されている。本実施形態では、第1帯状部40の先端と第2帯状部41の先端との間に形成され間隔が係止穴22の上下方向の幅よりも大きくなるよう、第1の帯状部40は上方に向けて傾斜している。
【0020】
さらに、第1帯状部40は基部32Aに対して上下方向に変位するよう弾力性を有している。第1帯状部40は、外力が加えられない状態では、図3図5図6に示されるように上方に向けた傾斜の姿勢を維持している。第1帯状部40に上方から外力が加えられると上方向への復元力が発生し、この復元力に抗する強い外力が上方から外力が加えられると、第1帯状部40は下方に向けて変位する。その結果、第1帯状部40に外力が加えられない状態に比べ、第1帯状部40の先端と第2帯状部41の先端との間の間隔は小さくなる。また、上方向からの外力が加えられているとき、第1帯状部40には上方向への復元力が常に発生している。従って、上方向からの外力が解除されると、第1帯状部40は、図3図5図6に示される傾斜の姿勢の位置まで復元する。
【0021】
第1帯状部40と第2帯状部41は、基部32Aの短手方向、すなわちキャップ取付状態において車幅方向に相当する方向において並置されており、第1帯状部40の短手方向の長さと第2帯状部41の短手方向の長さとを加えた長さは、基部32Aの短手方向の長さと略等しくなっている。従って、図3および図6に示すように、第1帯状部40と第2帯状部41は、第1帯状部40に対して交差する方向から見たとき、または第2帯状部41に対して交差する方向から見たとき、重ならずに並置されている。
【0022】
第1帯状部40の先端40Aは、底面は平坦に形成され上面は上方向に凸状に突出して形成されており、第1帯状部40の長手方向に沿って切断した断面形状は略三角形を呈している。第2帯状部41の先端41Aは、上面は平坦に形成され下面は下方向に凸状に突出して形成されており、第2帯状部41の長手方向に沿って切断した断面形状は略三角形を呈している。
【0023】
キャップ取付状態では、トーイングキャップ3の係止片32はフロントバンパー1の横方向取付枠21Uの係止穴22に挿入され、嵌合爪33A〜33Iはフロントバンパー1の取付穴23A〜23Iに嵌合している。詳述すると、嵌合爪33A、33B、33C、33D、33Eは、フロントバンパー1の横方向取付枠21Uの取付穴23A、23B、23C、23D、23Eにそれぞれ嵌合しており、嵌合爪33Fは、フロントバンパー1の縦方向取付枠21Rの取付穴23Fに嵌合しており、嵌合爪33Gは、フロントバンパー1の縦方向取付枠21Lの取付穴23Gに嵌合しており、嵌合爪33Hは、フロントバンパー1のフランジ21RFの取付穴23Hに嵌合しており、嵌合爪33Iは、フロントバンパー1のフランジ21LFの取付穴23Iに嵌合している。
【0024】
ここで、トーイングキャップ3をフロントバンパー1に取り付ける手順について説明する。図7に示すように、係止片32の二股形状部32Bの第1帯状部40に上方から下方向へ向けて外力を加え、第1帯状部40を下方向へ変位させる。そして、図8に示すように、第1帯状部40の先端40Aと第2帯状部41の先端41Aの上下方向の間隔の長さが係止穴22の上下方向の長さよりも小さくなるまで第1帯状部40を下方向へ変位させた状態でトーイングキャップ3を開口部21に近づけ、係止片32を係止穴22に挿入する。第1帯状部40は上述のように弾力性を有している。従って、トーイングキャップ3を車両後方へ移動させ、二股形状部32Bが係止穴22を通過し車両内方まで挿入されると、上方からの外力から解放された第1帯状部40は図9に示すように上方に傾斜した姿勢に復元する。
【0025】
図9の状態からさらにトーイングキャップ3を車両後方へ移動させ、係止片32の基部32Aを車両内部に位置付けるととともに、上述のように嵌合爪を対応する取付穴に嵌合させることにより、開口部2を閉塞するようトーイングキャップ3がフロントバンパー1に取り付けられる。
【0026】
上述のように牽引ロープを通すときは、フロントバンパー1に取り付けられたトーイングキャップ3を取り外し、開口部2を露出させる必要がある。その場合、嵌合爪33A〜33Iと対応する取付穴23A〜23Iとの嵌合状態を解除し、トーイングキャップ3をフロントバンパー1から離れる方向へ移動させて開口部2を露出させる。このとき、係止片32の二股形状部32Bの第1帯状部40の先端と第2帯状部41の先端の間隔は、係止穴22の上下方向の幅よりも大きく、かつ第1帯状部40は上述の弾性力を有している。従って、係止片32は係止穴22を通過することはなく、第1帯状部40に発生する上方向への復元力により、第1帯状部40および第2帯状部41を介して、図10に示すように係止穴32に係止される。従って、開口部2を露出させた状態を維持しながら、トーイングキャップ3はフロントバンパー1に保持され、フロントバンパー1から脱落することが防止される。
【0027】
本実施形態によれば、トーイングキャップ3をフロントバンパー1から取り外した場合の係止片32と係止穴22の係合は、係止片32の二股形状部32Bの第1帯状部40の復元力により実現される。従って、矢印形状、若しくは錨形状の先端部分を有し、当該先端部分を係止用の穴に係止させるよう構成された従来の係止部材と比較すると、本実施形態の係止片32は局所的な変形が相対的に小さく抑えられる。その結果、トーイングキャップ3の取り外しを繰り返すことに起因する破損が防止され、使用開始当初の脱落防止機能を長期にわたって維持することができる。
【0028】
本実施形態によれば、係止片32の二股形状部32Bにおいて第1帯状部40と第2帯状部42は、第1帯状部40と第2帯状部41は基部32Aの短手方向において並置され、第1帯状部40に対して交差する方向から見たとき、または第2帯状部41に対して交差する方向から見たとき、重ならないよう配置されている。従って、係止片32の射出成型において型抜きスライド構造を採用する必要がなく、型抜きが容易に行えるとともに経費を節減することができる。
【0029】
また、上述のように第1帯状部40と第2帯状部42を重ならないよう並置することにより、係止片32が係合穴22に係合している状態において、係合穴22と当接する領域を幅広く確保することができる。従って、トーイングキャップ2に対して車両の前後方向を軸心として回動する外力が加えられ、その外力が係止片32に伝達されても、係止片32と係合穴22の係合を確実に維持することができる。
【0030】
尚、本実施形態においては、係止片32の矩形状の基部32Aの相対的に短い方の辺が車幅方向に延びるよう配置され、係止片32の二股形状部32Bの第1帯状部40と第2帯状部41は、それぞれの先端の間に上下方向に間隔が形成されており、この間隔が係止穴42の上下方向の幅よりも大きくなるよう配置されているがこれに限るものではない。基部の相対的に短い方の辺が車両の上下方向に延びるよう配置し、二股形状部を構成する2つの帯状部を、それぞれの先端の間に車幅方向に間隔が形成され、この間隔が係止穴の車幅方向の幅より大きくなるよう配置してもよい。
【0031】
本実施形態においては、係止片32の二股形状部32Bの第1帯状部40が弾性力を有しているがこれに限るものではない。第2帯状部41が弾性力を有する構成としてもよく、また、第1帯状部40および第2帯状部41が共に弾性力を有する構成としてもよい。
【0032】
図11は、本実施形態の変形例に係るトーイングキャップの係止片を示す図である。係止片50は、上述の実施形態と同様の構成を有するトーイングキャップに同様の態様で設けられる。係止片50は、基部50Aと二股形状部50Bとを有し、二股形状部50Bは第1帯状部51と第2帯状部52とを有している。第1帯状部51及び第2帯状部52の基部50A側の端部の短手方向の幅は、それぞれ基部50Aの短手方向の幅と同じ長さを有しており、第1帯状部51及び第2帯状部52は基部50Aから上下方向に分かれるように配置されている。すなわち、第1帯状部51に対して交差する方向から見たとき、または第2帯状部52に対して交差する方向から見たとき、第1帯状部51と第2帯状部52は、少なくとも一部が重なるよう配置されている。
【0033】
第1帯状部51の先端51Aは、底面は平坦に形成され上面は上方向に凸状に突出して形成されており、第1帯状部51の長手方向に沿って切断した断面形状は略三角形を呈している。第2帯状部52の先端52Aは、上面は平坦に形成され下面は下方向に凸状に突出して形成されており、第2帯状部52の長手方向に沿って切断した断面形状は略三角形を呈している。
【0034】
この変形例によれば、第1帯状部51の弾性力が作用する方向の延長上に第2帯状部52が位置するため、第1帯状部51の弾性力を利用した係止穴との係合をより高められ、トーイングキャップの脱落をより確実に防止することができる。
【0035】
なお、この変形例においても、第1帯状部51のみ弾力性を有する構成、第2帯状部52のみ弾力性を有する構成、第1帯状部51および第2帯状部52がともに弾力性を有する構成としてもよい。また、この変形例においても、矩形状の基部50Aの相対的に短い方の辺が車両の上下方向に延びるよう配置し、第1帯状部51と第2帯状部52が車幅方向に分かれるよう配置してもよい。この場合、第1帯状部51の先端と第2帯状部52の先端の間隔が、係止片50が係合する係止穴の車幅方向の長さよりも長くなるよう、第1帯状部51と第2帯状部52は配置される。
【0036】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 フロントバンパー
2 開口部
22 係止穴
23A〜23I 取付穴
3 トーイングキャップ
31 トーイングキャップ本体
32、50 係止片
32A、50A 基部
32B、50B 二股形状部
33A〜33I 嵌合爪
40、51 第1帯状部
41、52 第2帯状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11