(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記硬化樹脂は、分子内にアクリロイル基およびメタクリロイル基の少なくともいずれかを含む重合性モノマーが重合した構造を有する化合物である、請求項2に記載の電子写真感光体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施の形態に係る電子写真感光体の表面を構成する層は、シリコン純度が95%以上である粒子を含むこと以外は、公知の技術を適用できる。例えば、感光層の上に表面層を有する電子写真感光体である場合には、表面層に粒子が含有されており、表面層を有さない電子写真感光体の場合には、感光層(電荷輸送層)に粒子が含まれる。
【0015】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施の形態について説明する。
【0016】
(感光体の構成)
図1は、本発明の一実施の形態に係る感光体32の部分拡大断面図である。
図1に示されるように、感光体(電子写真感光体、有機感光体)32は、導電性支持体32aと、導電性支持体32aの上に配置された、電荷発生材料および電荷輸送材料を含む感光層32bと、感光層32bの上に配置された表面層32cとを有する。なお、感光体32は、導電性支持体32aおよび感光層32bの間に中間層32dを有していてもよい。また、感光層32bは、電荷輸送物質と電荷発生物質とを含有する単層であってもよいし、電荷発生物質を含有する電荷発生層32eと、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層32fとを含む2層構造であってもよい。本実施の形態では、感光層32bは、電荷発生層32eと、電荷発生層32e上に配置された電荷輸送層32fとを有する2層構造である。すなわち、本実施の形態では、感光体32の表面を構成する層は、表面層32cであり、この表面層32cに粒子が含まれている。
【0017】
(導電性支持体の構成)
導電性支持体32aは、中間層32dを介して感光層32bを支持し、かつ導電性を有する部材である。導電性支持体32aの種類の例には、金属製のドラム、金属製のシート、金属箔がラミネートされたプラスチックフィルム、導電性物質が蒸着されたプラスチックフィルム、ならびに導電性物質を含む塗料を塗布された金属部材やプラスチックフィルム、紙などが含まれる。金属の種類は、導電性を有していれば特に限定されない。金属の種類の例には、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛およびステンレス鋼が含まれる。また、導電性物質の例には、金属、酸化インジウムおよび酸化スズが含まれる。本実施の形態では、導電性支持体32aは、アルミニウム製のドラムである。また、導電性支持体32aの周壁の厚さは、例えば0.1mmである。
【0018】
(中間層の構成)
中間層32dは、導電性支持体32aのバリア機能および接着機能を有する層である。中間層32dは、例えば、中間層用のバインダー樹脂と、中間層用のバインダー樹脂に分散された導電性粒子(金属酸化物粒子)とを有する。中間層32dの厚さは、例えば、0.1〜15μmであり、より好ましくは0.3〜10μmである。
【0019】
中間層用の樹脂バインダーの例には、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリウレタンおよびゼラチンが含まれる。導電性粒子は、中間層32dの抵抗を調整するために添加される。導電性粒子の例には、アルミナや酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマスなどの金属酸化物粒子、および、スズをドープした酸化インジウムやアンチモンをドープした酸化スズ、酸化ジルコニウムなどの超微粒子が含まれる。導電性粒子は、前述した物質を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。導電性粒子の平均粒径は、0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。
【0020】
中間層32dは、例えば、導電性粒子が分散された樹脂バインダーを所定の溶媒に溶解させた第1塗布液へ導電性支持体32aを浸漬する浸漬塗布法により塗布し、乾燥させることで得られる。また、中間層32dは、導電性支持体32aの表面に第1塗布液を塗布し、乾燥させることでも得られる。
【0021】
第1塗布液に含まれる溶媒の例には、導電性粒子を良好に分散し、中間層用のバインダー樹脂を溶解するものが好ましい。溶媒の例には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノールなどの炭素数1〜4のアルコール類が含まれる。また、第1塗布液は、保存性および分散性を向上させる観点から、助溶媒をさらに添加してもよい。助溶媒の例には、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランなどが含まれる。第1塗布液中における中間層用のバインダー樹脂の濃度は、中間層の膜厚や生産速度に合わせて適宜選択されうる。また、中間層用のバインダー樹脂に対する導電性粒子の配合割合は、中間層用のバインダー樹脂100質量部に対して導電性粒子20〜400質量部の範囲内であることが好ましく、50〜350質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0022】
導電性粒子の分散方法は、特に限定されない。導電性樹脂の分散方法の例には、超音波分散機、ボールミル、サンドミルおよびホモミキサーなどを用いて、溶媒および中間層用のバインダー樹脂に分散する方法などが含まれる。
【0023】
(感光層の構成)
感光層32bは、電子写真方式の画像形成において、露光により所期の画像の静電潜像をその表面に形成するための層である。本実施の形態では、感光層32bは、電荷発生層32eおよび電荷輸送層32fを有する。
【0024】
電荷発生層32eは、例えば、電荷発生層用のバインダー樹脂と、電荷発生層用のバインダー樹脂に分散された電荷発生物質とを有する。電荷発生層32eの厚さは、特に限定されない。電荷発生層32eの厚さは、0.01〜5μmの範囲内であることが好ましく、0.05〜3μmの範囲内であることがより好ましい。
【0025】
電荷発生層用のバインダー樹脂の例には、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、これらの樹脂のうち2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂)、およびポリビニルカルバゾール樹脂などが含まれる。
【0026】
電荷発生物質の例には、スーダンレッドやダイアンブルーなどのアゾ原料、ピレンキノンやアントアントロンなどのキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴやチオインジゴなどのインジゴ顔料、およびフタロシアニン顔料などが含まれる。
【0027】
電荷発生層32eは、例えば、電荷発生物質が分散され、電荷発生層用のバインダー樹脂が溶解した第2塗布液に、中間層32dが形成された導電性支持体32aを浸漬する浸漬塗布法により塗布し、乾燥させることで得られる。また、電荷発生層32eは、中間層32dが形成された導電性支持体32aの表面に第2塗布液を塗布し、乾燥させることでも得られる。
【0028】
第2塗布液に含まれる溶媒の例には、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸t−ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンなどが含まれる。電荷発生層において、電荷発生層用のバインダー樹脂に対する電荷発生物質の配合割合は、電荷発生層用のバインダー樹脂100質量部に対して電荷発生物質1〜600質量部の範囲内であることが好ましく、50〜500質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0029】
溶媒に対して電荷発生物質を分散させる方法は、特に限定されない。電荷発生物質を分散させる方法の例には、超音波分散機、ボールミル、サンドミルおよびホモミキサーなどを用いて、溶媒に分散する方法などが含まれる。
【0030】
(電荷輸送層32fの構成)
電荷輸送層32fは、例えば、電荷輸送層用のバインダー樹脂と、電荷輸送性物質とを有する。電荷輸送層32fの厚さは、5〜40μmの範囲内であることが好ましく、10〜30μmの範囲内であることがより好ましい。
【0031】
電荷輸送層用のバインダー樹脂の例には、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、ジメチルビスフェノールAおよびビスフェノールA−ジメチルビスフェノールA共重合体などが含まれる。
【0032】
電荷輸送物質の例には、4,4’−ジメチル−4”−(β−フェニルスチリル)トリフェニルアミンや、CTM−1〜CTM−10で表される化合物が含まれる。
【0034】
電荷輸送性物質は公知の合成方法、例えば、特開2010−26428号公報、特開2010−91707号公報などに記載の既知の方法により合成できる。
【0035】
電荷輸送層32fは、例えば、溶媒に電荷輸送物質および電荷輸送層用のバインダー樹脂を溶解した第3塗布液に、電荷発生層32eが形成された導電性支持体32aを浸漬する浸漬塗布法により塗布し、乾燥させることで得られる。また、電荷輸送層32fは、電荷発生層32eが形成された導電性支持体32aに第3塗布液を塗布し、乾燥させることでも得られる。
【0036】
第3塗布液に含まれる溶媒の例には、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンなどが含まれる。電荷輸送層32fにおける電荷輸送層用のバインダー樹脂に対する電荷輸送性物質の配合割合は、電荷輸送層用のバインダー樹脂100質量部に対して電荷輸送性物質10〜500質量部の範囲内であることが好ましく、20〜250質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0037】
なお、電荷輸送層32f中には、酸化防止剤、電子導電剤、安定剤、シリコーンオイルなどを添加してもよい。酸化防止剤については特開2000−305291号公報、電子導電剤については特開昭50−137543号公報、特開昭58−76483号公報などにそれぞれ記載されている化合物を使用できる。
【0038】
(表面層の構成)
表面層32cは、感光層32bの上に配置されており、感光層32bを保護する。表面層32cは、硬化樹脂(バインダー樹脂)と、シリコン純度が95%以上の粒子と、を含む。表面層32cの厚さは、15μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0039】
硬化樹脂は、重合性モノマーに、必要に応じて重合開始剤を添加した後に、紫外線や電子線などの活性線照射により重合(硬化)して、ポリスチレン、ポリアクリレートなど、一般に感光体32のバインダー樹脂として用いられる樹脂である、重合性モノマーの例には、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタアクリル系モノマー、ビニルトルエン系モノマー、酢酸ビニル系モノマー、N−ビニルピロリドン系モノマーが含まれる。重合性モノマーは、少ない光量あるいは短時間で硬化できる観点から、アクリロイル基(CH
2=CHCO−)またはメタクリロイル基(CH
2=CCH
3CO−)などの重合性不飽和基を有するラジカル重合性モノマーまたはこれらのオリゴマーであることが好ましい。重合性モノマーは、前述した物質を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
重合性モノマーは、例えば、以下のM1〜M15の化合物である。
【0043】
なお、重合性モノマーM1〜15におけるRは、アクリロイル基であり、R’はメタクリロイル基である。
【0044】
本発明では、重合性モノマーを硬化反応させて表面層が形成されるが、電子線開裂反応を利用する方法や光や熱の存在下でラジカル重合開始剤を利用する方法等により硬化反応を行うことができる。ラジカル重合開始剤を用いて硬化反応を行う場合、重合開始剤として光重合開始剤、熱重合開始剤のいずれも使用することができる。また、光、熱の両方の重合開始剤を併用することもできる。
【0045】
重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(イルガキュアー369:BASFジャパン株式会社)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼンなどののベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。
【0046】
その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0047】
本発明に用いられる重合開始剤としては光重合開始剤が好ましく、アルキルフェノン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物が好ましく、更に好ましくはα−ヒドロキシアセトフェノン構造、あるいはアシルフォスフィンオキサイド構造を有する開始剤が好ましい。
【0048】
粒子におけるシリコン純度は、95%以上である。また、粒子におけるシリコン純度は、98%以上であることがより好ましい。シリコン純度が95%以上であれば、粒子内に酸素原子が混在していても、酸素原子の存在を無視することができる。粒子におけるシリコン純度は、JISG 1256に基づいて測定できる。このように、粒子は、酸素原子を含んでいないため、親水化することなく、画像形成時における放電生成物の吸着が生じにくい。
【0049】
また、粒子は、高い光透過性および高い電荷移動度の観点から、結晶性のシリコン粒子であることが好ましい。
【0050】
粒子は、ドーパント原子を加え、n型の半導体粒子としてもよいし、p型の半導体粒子としてもよい。n型の半導体粒子にするために加えられるドーパンド元素の例には、P、N、As、Sbなどの第V族(第15族)の元素および第VI族(第16族)の元素が含まれる。また、p型の半導体粒子にするために加えられるドーパンド元素の例には、B、Al、Ga、Inなどの第II族(第2族)の元素および第III族(第3族)の元素が含まれる。
【0051】
金属リシコンを粒子化する方法は、特に限定されない。金属シリコンを粒子化する方法の例には、金属シリコンを熱プラズマにより気層で粒子化する方法や、シリコンウェハなどを粉砕する方法が含まれる。なお、金属リシコンを粒子化する方法は、粒径を制御する観点から、熱プラズマにより粒子化することが好ましい。
【0052】
シリコン純度が95%以上の粒子の配合量は、硬化樹脂100質量部に対して20〜70質量部の範囲内であることが好ましい。また、シリコン純度が95%以上の粒子の配合量は、電荷輸送の観点から、硬化樹脂100質量部に対して、20質量部超であることがより好ましく、40質量部超であることがさらに好ましい。また、シリコン純度が95%以上の粒子の配合量は、分散性の観点から、硬化樹脂100質量部に対して、70質量部以下であることがより好ましく、透過性の観点から、50質量部以下であることがさらに好ましい。シリコン純度が95%以上の粒子の配合量は、硬化樹脂100質量部に対して20質量部未満の場合、表面層32cの強度が低くなることにより耐摩耗性が低くなってしまうおそれがあるとともに、電気特性が不良となるおそれがある。一方、シリコン純度が95%以上の粒子の配合量は、硬化性樹脂100質量部に対して70質量部超の場合、表面層32cが脆くなってしまうことにより耐摩耗性が低くなってしまうおそれがあるとともに、光の膜透過性が悪化するおそれがある。
【0053】
シリコン純度が95%以上の粒子の粒径は、10〜1000nmの範囲内である。また、シリコン純度が95%以上の粒子の粒径は、30〜200nmの範囲内であることがより好ましい。粒径が10nm未満のシリコン純度が95%以上の粒子を作製することは、困難である。一方、シリコン純度が95%以上の粒子の粒径が、1000nm超の場合、光を散乱させて透過性が低下するおそれがある。粒子の数平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(JSM−7500F;日本電子株式会社)により100000倍の拡大写真を撮影する。次いで、撮影した写真をスキャナーにより取り込んだ写真画像(凝集粒子は除いた)について、自動画像処理解析装置(LUZEXAP;株式会社ニレコ)ソフトウエアバージョン Ver.1.32を使用して、粒子について2値化処理する。次いで、粒子の任意の100個についての水平方向フェレ径を算出し、その平均値を数平均一次粒径とする。ここで、「水平方向フェレ径」とは、粒子の画像を2値化処理したときの外接長方形のx軸に平行な辺の長さをいう。
【0054】
表面層32cは、例えば、硬化樹脂および重合開始剤と、粒子とを溶媒に溶解させた組成物(第4塗布液)を電荷輸送層32fが形成された導電性支持体32aに塗布して、乾燥または硬化させることで得られる。
【0055】
第4塗布液に含まれる溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンなどが含まれる。
【0056】
本発明では、表面層32cの硬化は、塗布膜に活性線を照射してラジカルを発生して重合させ、かつ分子間及び分子内で架橋反応による架橋結合を形成して硬化し、硬化樹脂を生成することが好ましい。活性線としては、紫外線、可視光などの光や電子線であることが好ましく、紫外線であることが特に好ましい。
【0057】
紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば特に限定されない。紫外線の光源の例には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノン、紫外線LEDなどが含まれる。紫外線の照射条件は、光源によって異なるが、活性線の照射量は、通常1〜20mJ/cm
2の範囲内であることが好ましく、5〜15mJ/cm
2の範囲内であることが特に好ましい。光源の出力電圧は、0.1〜5kWであることが好ましく、0.5〜3kWの範囲内であることが特に好ましい。
【0058】
電子線源としては、電子線照射装置に格別の制限はなく、一般にはこのような電子線照射用の電子線加速機として、比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式のものが有効に用いられる。電子線照射の際の加速電圧は、100〜300kVであることが好ましい。吸収線量としては0.005Gy〜100kGy(0.5〜10Mrad)であることが好ましい。
【0059】
活性線の照射時間は、活性線の必要照射量が得られる時間であり、具体的には0.1秒間〜10分間の範囲内であることが好ましく、硬化効率または作業効率の観点から、1秒間〜5分間の範囲内であることがより好ましい。
【0060】
また、粒子は、所定の表面処理剤で処理した表面処理粒子であってもよい。
【0061】
表面処理粒子は、架橋性の反応性基を有する表面処理剤の残基で構成されている表面層を有する。「架橋性の反応性基を有する表面処理剤の残基」とは、金属酸化物粒子と化学結合するとともに、樹脂バインダーとも化学結合した、金属酸化物粒子および樹脂バインダー間の構造を言う。表面処理粒子を作成するために使用される表面処理剤は、反応性有機基を有する化合物である。表面処理剤としては、粒子の表面に存在する水酸基などとの反応性を有する化合物が用いられ、ラジカル重合性官能基を有するものが好ましい。ラジカル重合性官能基は、重合性不飽和基を有する硬化型モノマーとも反応して強固な保護膜を形成することができる。ラジカル重合性官能基の例には、ビニル基、アクリロイル基またはメタクリロイル基などが含まれる、これらのラジカル重合性官能基を有する表面処理剤の例には、以下のS−1〜S−36の化合物が含まれる。
S−1:CH
2=CHSi(CH
3)(OCH
3)
2
S−2:CH
2=CHSi(OCH
3)
3
S−3:CH
2=CHSiCl
3
S−4:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)(OCH
3)
2
S−5:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(OCH
3)
3
S−6:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(OC
2H
5)(OCH
3)
2
S−7:CH
2=CHCOO(CH
2)
3Si(OCH
3)
3
S−8:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)Cl
2
S−9:CH
2=CHCOO(CH
2)
2SiCl
3
S−10:CH
2=CHCOO(CH
2)
3Si(CH
3)Cl
2
S−11:CH
2=CHCOO(CH
2)
3SiCl
3
S−12:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2Si(CH
3)(OCH
3)
2
S−13:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2Si(OCH
3)
3
S−14:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(CH
3)(OCH
3)
2
S−15:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(OCH
3)
3
S−16:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2Si(CH
3)Cl
2
S−17:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
2SiCl
3
S−18:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(CH
3)Cl
2
S−19:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3SiCl
3
S−20:CH
2=CHSi(C
2H
5)(OCH
3)
2
S−21:CH
2=C(CH
3)Si(OCH
3)
3
S−22:CH
2=C(CH
3)Si(OC
2H
5)
3
S−23:CH
2=CHSi(OCH
3)
3
S−24:CH
2=C(CH
3)Si(CH
3)(OCH
3)
2
S−25:CH
2=CHSi(CH
3)Cl
2
S−26:CH
2=CHCOOSi(OCH
3)
3
S−27:CH
2=CHCOOSi(OC
2H
5)
3
S−28:CH
2=C(CH
3)COOSi(OCH
3)
3
S−29:CH
2=C(CH
3)COOSi(OC
2H
5)
3
S−30:CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3Si(OC
2H
5)
3
S−31:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)
2(OCH
3)
S−32:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)(OCOCH
3)
2
S−33:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)(ONHCH
3)
2
S−34:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
3)(OC
6H
5)
2
S−35:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(C
10H
21)(OCH
3)
2
S−36:CH
2=CHCOO(CH
2)
2Si(CH
2C
6H
5)(OCH
3)
2
【0062】
表面処理剤の粒子への処理量は、粒子100質量部に対して、表面処理剤0.1〜200質量部の範囲内であることが好ましく、7〜70質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0063】
表面処理粒子は、粒子を前述の表面処理剤を用いて表面処理することによって得られる。表面処理は、粒子100質量部に対して、表面処理剤0.1〜200質量部、より好ましくは7〜70質量部、溶媒50〜5000質量部を、湿式メディア分散型装置を使用して処理することが好ましい。例えば、粒子と表面処理剤とを含むスラリー(固体粒子の懸濁液)を湿式粉砕することにより、粒子を微細化すると同時に粒子の表面処理が進行する。その後、溶媒を除去して粉体化することで、表面処理された粒子を得ることができる。なお、表面処理粒子は、シロキサン結合(Si−O−Si)を含むが、表面には表面処理剤の有機基が位置するため、良好な撥水性を示す。
【0064】
前述した湿式メディア分散型装置の例には、サンドミル、ウルトラビスコミル、パールミル、グレンミル、ダイノミル、アジテータミル、ダイナミックミルなどが含まれる。
【0065】
このように、本発明に係る感光体32は、表面層32cにシリコン純度が95%以上の粒子を含でいる。すなわち、本発明に係る感光体32は、その表面にほとんど酸素原子を有していない。このため、感光体表面において、水酸基化が生じにくく、かつ放電生成物の吸着を起こしにくい。そのため、高温高湿下においても画像流れが発生しにくい。また、粒子の粒径は、10〜1000nmの範囲内である。これにより、画像形成装置内の可視光から赤外光の範囲内である書き込み光に対して、良好な光透過性と、表面層32cの高硬度化を両立することができる。
【0066】
なお、表面層32cを有さない感光体32においては、シリコン純度が95%以上の粒子は、感光体32の表面を構成する電荷輸送層32fまたは感光層32bに含まれる。この場合も、粒子の配合割合は、電荷輸送層用または感光層用のバインダー樹脂100質量部に対して20〜70質量部の範囲内であることが好ましい。
【0067】
(画像形成装置)
次いで、前述した一実施の形態に係る感光体が組み込まれる装置の一例として、電子写真方式の画像形成装置について説明する。
図2は、本発明の一実施の形態に係る画像形成装置10の構成を示す模式図である。
【0068】
図2に示されるように、画像形成装置10は、画像読み取り部20と、画像形成部30と、中間転写部40と、定着装置60と、記録媒体搬送部80と、を有する。
【0069】
画像読み取り部20は、原稿Dから画像を読み取り、静電潜像を形成するための画像データを得る。画像読み取り部20は、給紙装置21と、スキャナー22と、CCDセンサー23と、画像処理部24と、を有する。
【0070】
画像形成部30は、例えば、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色に対応する四つの画像形成ユニット31を含む。画像形成ユニット31は、感光体(電子写真感光体)32と、帯電装置33と、露光装置34と、現像装置35と、クリーニング装置36と、を有する。
【0071】
感光体32は、光導電性を有する負帯電型の有機感光体である。感光体32は、帯電装置33により帯電される。帯電装置33は、帯電ローラーや帯電ブラシなどの接触帯電部材を感光体32に接触させて帯電させる接触式の帯電装置であり、例えば、帯電ローラーにより接触帯電させるローラー帯電装置である。なお、帯電装置33は、例えば、コロナ放電を利用したコロナ帯電器であってもよい。
【0072】
感光体32は、導電性支持体32aと、電荷発生層32eと、電荷輸送層32fと、表面層32cとを有する。感光体32は、前述した電子写真感光体を使用できる。表面層32cには、粒径が10〜1000nmの範囲内であり、シリコン純度が95%以上の粒子が含有されている。
【0073】
露光装置34は、帯電した感光体32に光を照射して静電潜像を形成する。露光装置34は、例えば、半導体レーザーである。現像装置35は、静電潜像が形成された感光体32にトナーを供給して静電潜像に応じたトナー画像を形成する。現像装置35は、例えば、電子写真方式の画像形成装置における公知の現像装置である。クリーニング装置36は、感光体32の残留トナーを除去する。ここで、「トナー画像」とは、トナーが画像状に集合した状態を言う。
【0074】
トナーは、公知のトナーを用いることができる。トナーは、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。一成分現像剤は、トナー粒子から構成される。また、二成分現像剤は、トナー粒子およびキャリア粒子から構成される。トナー粒子は、トナー母体粒子およびその表面に付着したシリカなどの外添剤から構成される。トナー母体粒子は、例えば、結着樹脂、着色剤およびワックスから構成される。
【0075】
中間転写部40は、一次転写ユニット41と、二次転写ユニット42と、を含む。
【0076】
一次転写ユニット41は、中間転写ベルト43と、一次転写ローラー44と、バックアップローラー45と、複数の第1支持ローラー46と、クリーニング装置47と、を有する。中間転写ベルト43は、無端状のベルトである。中間転写ベルト43は、バックアップローラー45および第1支持ローラー46によって張架される。中間転写ベルト43は、バックアップローラー45および第1支持ローラー46の少なくとも一つのローラーが回転駆動することにより、無端軌道上を一方向に一定速度で走行する。
【0077】
二次転写ユニット42は、二次転写ベルト48と、二次転写ローラー49と、複数の第2支持ローラー50と、を有する。二次転写ベルト48は、無端状のベルトである。二次転写ベルト48は、二次転写ローラー49および第2支持ローラー50によって張架される。
【0078】
定着装置60は、定着ベルト61と、加熱ローラーと、第1加圧ローラーと、第2加圧ローラー64と、ヒータと、温度センサーと、気流分離装置と、案内板と、案内ローラーと、を有する。
【0079】
定着ベルト61は、基層と、弾性層と、離型層とがこの順番で積層されている。定着ベルト61は、基層を内側とし、離型層を外側にした状態で、加熱ローラーと第1加圧ローラーとによって軸支される。
【0080】
加熱ローラーは、回転自在なアルミニウム製のスリーブと、その内部に配置されたヒータ65と、を有する。第1加圧ローラーは、例えば、回転自在な芯金と、その外周面上に配置された弾性層と、を有する。
【0081】
第2加圧ローラー64は、定着ベルト61を介して第1加圧ローラーに対向して配置されている。第2加圧ローラー64は、第1加圧ローラーに対して接近、離間自在に配置されており、第1加圧ローラーに対して接近したときに、定着ベルト61を介して第1加圧ローラーの弾性層を押圧し、定着ベルト61との接触部である定着ニップ部を形成する。
【0082】
気流分離装置は、定着ベルト61の移動方向の下流側から定着ニップ部に向けて気流を生じさせて、定着ベルト61からの記録媒体Sの分離を促すための装置である。
【0083】
案内板は、未定着のトナー画像を有する記録媒体Sを定着ニップ部に案内するための部材である。案内ローラーは、トナー画像が定着された記録媒体を定着ニップ部から画像形成装置10外へ案内するための部材である。
【0084】
記録媒体搬送部80は、三つの給紙トレイユニット81および複数のレジストローラー対82を有する。給紙トレイユニット81には、坪量やサイズなどに基づいて識別された記録媒体(本実施の形態では規格紙、特殊紙など)Sが予め設定された種類ごとに収容される。レジストローラー対82は、所期の搬送経路を形成するように配置されている。
【0085】
このような画像形成装置10では、まず、帯電させた感光体32に光を照射して静電潜像を形成した後、感光体32にトナーを供給して静電潜像に応じたトナー画像を形成する。記録媒体搬送部80により送られてきた記録媒体Sに、中間転写部40で記録媒体Sにトナー画像が転写される。中間転写部40でトナー画像が転写された記録媒体Sは、定着装置60で記録媒体Sに定着される。トナー画像が定着された記録媒体は、レジストローラー対82により、画像形成装置10外に向けて案内される。
【0086】
感光体32の表面を構成する層は、本発明に係るシリコン純度が95%以上の粒子を含んでいる。これにより、画像形成装置10は、高温高湿下においても、安定して画像を形成できる。また、画像形成装置10は、放電生成物を生じやすい帯電装置33を有していても放電生成物が感光体32の表面に吸着することによる画像流れの発生を十分に抑制することができ、安定して画像を形成できる。また、粒径が10〜1000nmの範囲内であるため、耐摩耗性を発揮できる。
【0087】
また、非接触式の帯電装置を用いた画像形成装置でも同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を挙げて本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0089】
1.感光体の作製
(No.1の感光体の作製)
(1)導電性支持体の準備
ドラム状のアルミニウム支持体(外径φ30mm、長さ360mm)の表面を切削加工し、表面粗さRzが1.5μmの導電性支持体を準備した。
【0090】
(2)中間層の形成
次いで、下記の成分を下記の量で分散し、第1塗布液を調製した。このとき、分散機としてはサンドミルを用い、バッチ式で10時間の分散を行った。
中間層用のバインダー樹脂 1質量部
金属酸化物粒子 1.1質量部
エタノール 20質量部
【0091】
中間層用のバインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂(X1010;ダイセル・エボニック株式会社)を使用した。金属酸化物粒子としては、酸化チタン(SMT500SAS;テイカ株式会社)を使用した。使用した酸化チタンの数平均一次粒子径は、0.035μmであった。
【0092】
調製した第1塗布液を導電性支持体の外周面に、浸漬塗布法で塗布し、オーブン内において110℃で20分間乾燥させた。これにより、導電性支持体の表面に膜厚2μmの中間層を形成した。
【0093】
(3)電荷発生層の形成
次いで、下記の成分を下記の量で混合、分散して第2塗布液を調製した。このとき、分散機としてはサンドミルを用い、10時間の分散を行った。
電荷発生層用のバインダー樹脂 10質量部
電荷発生物質 20質量部
酢酸t−ブチル 700質量部
4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300質量部
【0094】
電荷発生層用の電荷発生物質として、チタニルフタロシアニン顔料(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で、少なくとも27.3°の位置に最大回折ピークを有する)を使用した。また、バインダー樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂(#6000−C;電気化学工業株式会社)を使用した。
【0095】
調製した第2塗布液を中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、オーブンにおいて室温で10分間乾燥させた。これにより、中間層の表面に膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0096】
(4)電荷輸送層の形成
次いで、下記成分を下記の量で混合、溶解して第3塗布液を調製した。
電荷輸送層用のバインダー樹脂 300質量部
電荷輸送物質 225質量部
酸化防止剤 6質量部
テトラヒドロフラン 1600質量部
トルエン 400質量部
シリコーンオイル 1質量部
【0097】
電荷輸送層用のバインダー樹脂としては、ポリカーボネート(Z300;三菱ガス化学株式会社)を使用した。電荷輸送物質としては、4,4’−ジメチル−4”−(β−フェニルスチリル)トリフェニルアミンを使用した。酸化防止剤としては、Irganox(登録商標)1010(BASFジャパン株式会社)を使用した。シリコーンオイルとしては、KF−54(信越化学工業株式会社)を使用した。
【0098】
調製した第3塗布液を電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、オーブンにおいて120℃で70分間乾燥させた。これにより、電荷発生層の表面に膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0099】
(5)表面層の構成
次いで、下記の成分を下記の量で混合、分散して第4塗布液を調製した。
バインダー樹脂 100質量部
酸化防止剤 2質量部
粒子 50質量部
テトラヒドロフラン 400質量部
トルエン 100質量部
シリコーンオイル 1質量部
【0100】
バインダー樹脂として、ポリカーボネート樹脂(Z300;三菱ガス化学株式会社)を使用した。酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤(Irganox(登録商標)1010;BASFジャパン株式会社)を使用した。シリコーンオイルとして、KF−54(信越化学工業株式会社)を使用した。
【0101】
粒子としては、数平均一次粒子径100nmの上記式(S−2)示される化合物で表面処理された粒子を用いた。
【0102】
(粒子の調製)
粒子は、Si(98.0%)を原料として、熱プラズマにより気相で粒子化した。具体的な条件は、キャリアガスとしてアルゴンを用いた。また、プラズマトーチの高周波発振用コイルには、約4MHz、約80kVAの高周波電圧を印加した。また、プラズマガス供給源からは、プラズマガスとして、アルゴン80L/分、水素5L/分の混合ガスを導入し、プラズマトーチ内にアルゴン・水素熱プラズマ炎を発生させた。なお、反応温度が約8000℃になるように制御し、材料供給装置のキャリアガス供給源からは、10L/分のキャリアガスを供給した。原料(Si)を、キャリアガスであるアルゴンとともにプラズマトーチ内の熱プラズマ炎中に導入した。気体導入装置によって、チャンバ内に導入される気体には、気体射出口から射出されるガスにはアルゴン150L/分を使用した。また、気体射出口から射出されるガスには、アルゴン50L/分を使用した。このときのチャンバ内流速は、0.25m/秒であった。なお、チャンバ内の圧力は、50kPaとした。
【0103】
表面処理された粒子は、以下の方法により得た。下記の成分を下記の分量で混合し、ジルコニアビーズとともにサンドミルに入れ約40℃で、回転速度1500rpmで撹拌した。さらに、上記処理混合物を取り出し、ヘンシェルミキサーに投入して回転速度1500rpmで15分間撹拌した後、120℃で3時間乾燥した。
【0104】
粒子 100質量部
表面処理剤 100質量部
トルエン 150質量部
イソプロピルアルコール 150質量部
【0105】
粒子の表面が表面処理剤により被覆されていることを、示差熱分析測定機(DTG−60/60H;島津製作所製)にて表面処理剤の燃焼曲線より確認した。
【0106】
この第3塗布液を前記電荷輸送層の上に浸漬塗布法で塗布し、乾燥膜厚5μmの表面層を形成した。
【0107】
(No.2の感光体の作製)
(1)導電性支持体の準備、中間層の形成、電荷発生層の形成、電荷輸送層の形成は、No.1の感光体と同様にした。
【0108】
(2)表面層の形成
次いで、遮光下において、重合性モノマー、粒子および溶媒を下記の量で混合した。このとき、分散機としてはサンドミルを用い、10時間の分散を行った。次いで、遮光下において、重合開始剤を下記の量でさらに混合し、撹拌し、溶解させることで第4塗布液を調製した。
バインダー樹脂(重合性モノマー) 100質量部
重合開始剤 10質量部
粒子 30質量部
sec−ブタノール 400質量部
メチルイソプロピルケトン 100質量部
【0109】
バインダー樹脂(重合性モノマー)としては、上記式M4に示される化合物を使用した。重合開始剤としては、イルガキュア(登録商標)819(Irg819;BASFジャパン株式会社)を使用した。
【0110】
調製した第4塗布液を電荷輸送層の表面に浸漬塗布法で塗布し、室温で20分間自然乾燥させた。
【0111】
次いで、乾燥後の感光体を軸方向に搬送しつつ、紫外光を照射することにより表面層を形成した。紫外光の照射条件を以下に示す。なお、紫外光の波長範囲は、ショートパスフィルターを使用して調整した。
ワークと光照射装置の光出射窓との距離:100mm
ワークの搬送速度:20mm/秒
紫外光の光源、出力:キセノンランプ、4kW
紫外光の波長:250〜400nm
紫外光の照射時間:2秒間
ワーク表面における紫外光の照射エネルギー:3J/cm
2
【0112】
(No.3の感光体の作成)
バインダー樹脂として前述のM1を使用し、純度99.9%、粒径が50nmの粒子を使用し、表面処理剤として前述のS−15を使用し、粒子の配合量を50質量部としたこと以外は、No.2の感光体と同様にして、No.3の感光体を得た。
【0113】
(No.4の感光体の作成)
バインダー樹脂として前述のM1を使用し、純度99.9%、粒径が800nmの粒子を使用し、表面処理剤として前述のS−15を使用し、粒子の配合量を20質量部とし、電荷輸送材として前述したCTM−10を10質量部配合したこと以外は、No.2の感光体と同様にして、No.4の感光体を得た。
【0114】
(No.5の感光体の作成)
バインダー樹脂として前述のM1を使用し、純度99.9%、粒径が20nmの粒子を使用し、表面処理剤として前述のS−15を使用し、粒子の配合量を70質量部とし、電荷輸送材として前述したCTM−10を10質量部配合したこと以外は、No.2の感光体と同様にして、No.5の感光体を得た。
【0115】
(No.6の感光体の作成)
純度99.9%、粒径が200nmの粒子を使用し、表面処理剤として前述のS−2を使用し、粒子の配合量を50質量部とし、150℃で1時間加熱することで最表面層を形成したこと以外は、No.2の感光体と同様にして、No.6の感光体を得た。
【0116】
(No.7の感光体の作成)
純度99.9%、粒径が800nmの粒子を使用し、粒子の配合量を70質量部とし、電荷輸送材として前述したCTM−1を30質量部配合したこと以外は、No.1の感光体と同様にして、No.7の感光体を得た。
【0117】
(No.8の感光体の作成)
粒子を配合せず、電荷輸送材として前述したCTM−1を75質量部配合したこと以外は、No.1の感光体と同様にして、No.8の感光体を得た。
【0118】
(No.9の感光体の作成)
純度99.9%、粒径が2000nmの粒子を使用したこと以外は、No.1の感光体と同様にして、No.9の感光体を得た。
【0119】
(No.10の感光体の作成)
Siに替えて、粒径が100nmのSiO
2粒子を使用し、表面処理剤として前述したS−15を使用し、粒子の配合量を100質量部としたこと以外は、No.2の感光体と同様にして、No.10の感光体を得た。
【0120】
表1に感光体1〜10の最表面層の組成を示す。
【0121】
【表1】
【0122】
2.感光体の評価
感光体1〜10について、光透過性、膜厚の減少量および画像流れの回復性の評価を行った。
【0123】
(1)光透過性の評価
PETシートにNo.1〜10の感光体の最表面層のみを塗布法により形成し、紫外可視近赤外分光光度計(UH4150;日立ハイテクサイエンス株式会社)にて可視光領域(波長;500〜800nm)の平均透過率を調べた。そして、以下の基準により感光体1〜10を評価した。
◎:平均透過率が90%以上
○:平均透過率が80%以上、90%未満
△:平均透過率が70%以上、80%未満
×:平均透過率が70%未満
【0124】
(2)膜厚の減少量の評価
感光体1〜10を画像形成装置「Bizhub(登録商標) C554(コニカミノルタ株式会社)」の改造機にそれぞれ搭載し、放電電流を通常の2倍(3000μA)に設定し、感光体を10万回回転させた前後の最表面層の厚みの差を調べた。そして、以下の基準により感光体1〜10を評価した。
◎:減少量が0.4μm未満
○:減少量が0.4μm以上、1.0μm未満
△:減少量が1.0μm以上、2.0μm未満
×:減少量が2.0μm以上
【0125】
(3)画像流れの回復性の評価
膜厚の減少量の評価後の感光体を高温高湿度環境下にて、1000枚印刷し、その後一晩放置した。翌日、画像濃度T.D 0.29程度のハーフ画像設定でA3印刷し、画像流れの回復性を調べた。そして、以下の基準により感光体1〜10を評価した。
◎:3枚目までに画像流れが回復している。
○:7枚目までに画像流れが回復している。
△:20枚目までに画像流れが回復している。
×:20枚印刷しても画像流れが回復しない。
【0126】
感光体1〜10について、区分、感光体番号、各評価結果を表2に示す。
【0127】
【表2】
【0128】
表2に示されるように、粒子を含有していないNo.8の感光体は、光透過性は良好であったが、膜厚の減少量が不良であった。また、粒子の粒径が2000mmのNo.9の感光体は、光透過性が不良であった。これは、粒径が大きいため、光が反射してしまったためと考えられる。SiO
2を含むNo.10の感光体は、画像流れの回復性が不良であった。これは、SiO
2が水酸基化してSiOHとなり、感光体が放電生成物を吸着したためと考えられる。
【0129】
一方、粒径が10〜1000nmの範囲内であり、シリコン純度が95%以上の粒子を含むNo.1〜7の感光体は、光透過性、膜厚の減少量および画像流れの回復性のいずれにおいても良好であった。