(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリカ粒子が、粘度1000cSt以上50000cSt以下のシロキサン化合物により表面処理され、前記シロキサン化合物の表面付着量が0.01質量%以上5質量%以下のシリカ粒子である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
【0022】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、「トナー」と称する)は、トナー粒子と、圧縮凝集度が60%以上95%以下であり粒子圧縮比が0.20以上0.40以下であるシリカ粒子(以下「特定シリカ粒子」とも称する)、及びPTFE粒子を含む外添剤と、を有するトナーである。
【0023】
ここで、従来、トナー粒子に、シリカ粒子を外添したトナーにおいて、シリカ粒子の外添構造(シリカ粒子がトナー粒子に付着した状態)が変化すると、トナーの流動性が低下し、帯電維持性が低下することがある。この外添構造の変化が生じるのは、シリカ粒子が、トナー粒子上を移動し偏在すること、トナー粒子から遊離すること等が原因として挙げられる。特に、平均円形度が0.98以上1.00以下と円形度が高く、真球に近いトナー粒子を適用した場合、トナー粒子上での移動及びトナー粒子からの遊離が生じやすく、外添構造の変化も生じやすい。
【0024】
また、平均円形度が0.98以上1.00以下と円形度が高く、真球に近いトナー粒子を適用すると、同じ画像を繰り返し形成したとき、クリーニングブレードからトナー粒子のすり抜けが生じやすくなる。トナー粒子が真球に近い形状であると、表面も平滑に近く、クリーニング部(クリーニングブレードと感光体(像保持体)との接触部)で掻き取られ難くなる。このため、同じ画像を繰り返し形成され、トナー粒子が多量に同じクリーニング部の領域に到達すると、トナー粒子のすり抜けが生じ易くなる。
【0025】
一方、トナー粒子に外添されているシリカ粒子は、現像手段内での撹拌、クリーニング部での掻き取り等による機械的負荷で、トナー粒子から遊離することがある。遊離したシリカ粒子は、クリーニング部に到達すると、クリーニング部の先端(クリーニングブレードと感光体の接触部の回転方向下流側の部位)において、堰き止められ、クリーニングブレードからの圧力により凝集した凝集体(外添ダム)を形成する。この外添ダムは、クリーニング性の向上に寄与する。
【0026】
また、外添剤としてシリカ粒子と共にPTFE粒子を併用した場合、トナー粒子からPTFE粒子が遊離することがある。遊離したPTFE粒子も、クリーニング部に到達すると、クリーニング部の先端において、堰き止められ、前記外添ダムの一部を構成することとなる。PTFE粒子はシリカ粒子に比較して潰れやすく付着しやすいため、PTFE粒子がシリカ粒子同士を結着させることで、前記外添ダムの強度が高まる。そのため、クリーニング性がより向上すると共に、PTFE粒子の優れた潤滑性によりクリーニングブレードの摩耗が抑制される。
【0027】
しかし、PTFE粒子は感光体の表面にも付着しやすく、特にトナーを大量に消費するベタ画像を形成する際には感光体の表面にPTFE粒子が付着しやすく、像流れ由来の画像欠陥が発生することがある。像流れが発生するのは、感光体の表面に付着したPTFE粒子に放電生成物が付着するためと推察される。
【0028】
さらに、トナー粒子のすり抜けが生じたとき、クリーニング部で堰き止められていたシリカ粒子(前記外添ダムのシリカ粒子)も多量にすり抜け、シリカ粒子による感光体の傷が発生することがある。なお、この感光体の傷は、シリカ粒子がクリーニングブレードをすり抜けるときに生じる感光体への摺擦により生じると考えられる。
【0029】
そこで、本実施形態に係るトナーでは、特定シリカ粒子とPTFE粒子とをトナー粒子に外添することにより、像流れの発生を抑制する。その理由は明確ではないが、次の通り推測される。
【0030】
圧縮凝集度及び粒子圧縮比が上記範囲を満たす特定シリカ粒子は、流動性及びトナー粒子への分散性が高く、かつ凝集性及びトナー粒子への付着性も高いという性質を有するシリカ粒子である。
【0031】
ここで、シリカ粒子は、一般的に、流動性が良い半面、嵩密度が低いため、付着性が低く、凝集し難い性質を有する。
一方、シリカ粒子の流動性と共に、トナー粒子への分散性を高めることを目的として、疎水化処理剤を用いてシリカ粒子の表面を表面処理する技術が知られている。この技術によれば、シリカ粒子の流動性、及びトナー粒子への分散性は向上するが、凝集性は低いままである。
また、疎水化処理剤とシリコーンオイルとを併用してシリカ粒子の表面を表面処理する技術も知られている。この技術によれば、トナー粒子への付着性が向上すると共に、凝集性が向上する。しかし逆に、流動性及びトナー粒子への分散性は低下し易くなる。
つまり、シリカ粒子において、流動性及びトナー粒子への分散性と、凝集性及びトナー粒子への付着性は相反する関係にあると言える。
【0032】
これに対し、特定シリカ粒子は、上述のように、圧縮凝集度及び粒子圧縮比を上記範囲とすることで、流動性、トナー粒子への分散性、凝集性及びトナー粒子への付着性の4つの特性が良好となる。
【0033】
次に、特定シリカ粒子の圧縮凝集度及び粒子圧縮比を上記範囲とする意義について、順に説明する。
【0034】
まず、特定シリカ粒子の圧縮凝集度を60%以上95%以下とする意義について説明する。
圧縮凝集度は、シリカ粒子の凝集性及びトナー粒子への付着性を示す指標となる。この指標は、シリカ粒子を圧縮することでシリカ粒子の成形体を得た後、このシリカ粒子の成形体を落下させた際の前記成形体のほぐれにくさの程度で示される。
よって、圧縮凝集度が高い程、シリカ粒子は、嵩密度が高まり易く、凝集力(分子間力)が強まる傾向があり、かつトナー粒子への付着力も強まる傾向があることを示す。なお、圧縮凝集度の算出方法の詳細については後述する。
このため、圧縮凝集度を60%以上95%以下と高く制御した特定シリカは、トナー粒子への付着性及び凝集性が良好となる。但し、トナー粒子への付着性及び凝集性を良好にしつつ、流動性及びトナー粒子への分散性を確保する観点から、圧縮凝集度の上限値は95%としている。
【0035】
次に、特定シリカ粒子の粒子圧縮比が0.20以上0.40以下であることの意義について説明する。
粒子圧縮比は、シリカ粒子の流動性を示す指標となる。具体的に、粒子圧縮比は、シリカ粒子の固め見掛け比重及びゆるみ見掛け比重の差と、固め見掛け比重との比((固め見掛け比重−ゆるみ見掛け比重)/固め見掛け比重)で示される。
よって、粒子圧縮比が低い程、シリカ粒子は流動性が高いことを示す。また、流動性が高いと、トナー粒子への分散性も高まる傾向がある。なお、粒子圧縮比の算出方法の詳細については後述する。
このため、粒子圧縮比を0.20以上0.40以下と低く制御した特定シリカ粒子は、流動性及びトナー粒子への分散性が良好となる。但し、流動性及びトナー粒子への分散性を良好にしつつ、トナー粒子への付着性及び凝集性を向上させる観点から、粒子圧縮比の下限値を0.20としている。
【0036】
以上のことから、特定シリカ粒子は、流動、トナー粒子に分散しやすい上、さらに凝集力、トナー粒子への付着力が高いという特異な性質を有する。したがって、圧縮凝集度及び粒子圧縮比が上記範囲を満たす特定シリカ粒子は、流動性及びトナー粒子への分散性が高く、かつ凝集性及びトナー粒子への付着性も高いという性質を有するシリカ粒子となる。
【0037】
次に、特定シリカ粒子とPTFE粒子とをトナー粒子に外添したときの推定作用について説明する。
まず、特定シリカ粒子は、流動性及びトナー粒子への分散性が高いため、トナー粒子に外添すると、トナー粒子の表面に均一に近い状態で付着され易い。そして、一旦、トナー粒子に付着した特定シリカ粒子は、トナー粒子への付着性が高いため、現像手段内での撹拌等による機械的負荷では、トナー粒子上での移動及びトナー粒子からの遊離が生じ難くなる。つまり、外添構造の変化が生じ難くなる。これにより、トナー粒子自体の流動性が高まり、かつ、その高い流動性が維持され易くなる。その結果、外添構造が変化し易い、真球に近いトナー粒子を適用しても、帯電維持性の低下が抑制される。
【0038】
一方、クリーニング部での掻き取り等による機械的負荷で、トナー粒子から遊離し、クリーニング部の先端に供給された特定シリカ粒子は、凝集性が高いため、クリーニングブレードからの圧力により凝集し、強固な外添ダムを形成する。さらに、外添剤として特定シリカ粒子とPTFE粒子とを併用することで、特定シリカ粒子により形成された強固な外添ダムの強度が更に向上する。これにより、前記強固な外添ダムによるクリーニング性が更に高まり、感光体の表面に付着したPTFE粒子が除去されやすくなる。その結果、像流れ(ディレッション)の発生が抑制される。
さらには、前記強固な外添ダムによりクリーニング性が更に高まり、同じ画像を繰り返し形成され、真球に近いトナー粒子が多量に同じクリーニング部の領域に到達しても、トナー粒子のすり抜けが抑制される。その結果、トナー粒子がすり抜けたときに生じる、シリカ粒子(外添ダムのシリカ粒子)の多量のすり抜けも抑えられ、シリカ粒子による感光体の傷の発生が抑制される。
【0039】
以上から、本実施形態に係るトナーによれば、像流れ(ディレッション)の発生が抑制されるものと推察される。さらには、繰り返し同じ画像を形成したときに生じる感光体の傷の発生が抑制されると推測される。
【0040】
本実施形態に係るトナーにおいて、特定シリカ粒子は、さらに、粒子分散度が90%以上100%以下であることが好ましい。
【0041】
ここで、特定シリカ粒子の粒子分散度が90%以上100%以下であることの意義について説明する。
粒子分散度は、シリカ粒子の分散性を示す指標となる。この指標は、一次粒子状態でのシリカ粒子のトナー粒子への分散のしやすさの程度で示される。具体的に、粒子分散度は、シリカ粒子によるトナー粒子表面への計算上の被覆率をC
0とし、実測の被覆率をCとしたとき、付着対象物への実測の被覆率Cと、計算上の被覆率C
0との比(実測の被覆率C/計算上の被覆率C
0)で示される。
よって、粒子分散度が高い程、シリカ粒子は凝集しにくく、一次粒子の状態でトナー粒子に分散しやすいことを示す。なお、粒子分散度の算出方法の詳細については後述する。
【0042】
特定シリカ粒子は、圧縮凝集度及び粒子圧縮比を上記範囲に制御しつつ、粒子分散度を90%以上100%以下と高く制御することで、トナー粒子への分散性がさらに良好となる。これにより、さらに、トナー粒子自体の流動性が高まり、かつ、その高い流動性が維持され易くなる。その結果、さらに、特定シリカ粒子は、トナー粒子の表面に均一に近い状態で付着され易くなり、帯電維持性の低下が抑制され易くなる。
【0043】
本実施形態に係るトナーにおいて、上述のような、流動性及びトナー粒子への分散性が高く、かつ凝集性及びトナー粒子への付着性も高いという性質を有する特定シリカ粒子としては、比較的大きい重量平均分子量を持つシロキサン化合物が表面に付着したシリカ粒子が好適に挙げられる。具体的には、粘度が1000cSt以上50000cSt以下のシロキサン化合物が表面に付着(好ましくは表面付着量0.01質量%以上5質量%以下で付着)したシリカ粒子が好適に挙げられる。この特定シリカ粒子は、例えば、粘度が1000cSt以上50000cSt以下のシロキサン化合物を用いて、表面付着量が0.01質量%以上5質量%以下となるように、シリカ粒子の表面を表面処理する方法で得られる。
ここで、表面付着量は、シリカ粒子の表面を表面処理する前のシリカ粒子(未処理のシリカ粒子)に対する割合とする。以下、表面処理前のシリカ粒子(つまり未処理のシリカ粒子)を単に、「シリカ粒子」とも称する。
【0044】
粘度が1000cSt以上50000cSt以下のシロキサン化合物を用いて、表面付着量が0.01質量%以上5質量%以下となるように、シリカ粒子の表面を表面処理した特定シリカ粒子は、流動性及びトナー粒子への分散性と共に、凝集性及びトナー粒子への付着性も高まり、圧縮凝集度及び粒子圧縮比が上記要件を満たしやすくなる。そして、帯電維持性の低下、及び像流れの発生が抑制され易くなる。この理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと考えられる。
【0045】
粘度が上記範囲である比較的高い粘性を有するシロキサン化合物を、シリカ粒子表面に上記範囲で少量付着させると、シリカ粒子表面のシロキサン化合物の特性に由来する機能が発現する。そのメカニズムは明確では無いが、シリカ粒子が流動しているときには、比較的高い粘性を有するシロキサン化合物が上記範囲で少量付着していることにより、シロキサン化合物に由来する離型性が発現し易くなるか、または、シロキサン化合物の立体障害による粒子間力の低減によりシリカ粒子同士の付着性が低減する。これにより、シリカ粒子の流動性及びトナー粒子への分散性がさらに高まる。
一方で、シリカ粒子が加圧されたときは、シリカ粒子表面のシロキサン化合物の長い分子鎖が絡み合い、シリカ粒子の最密充填性が高まり、シリカ粒子同士の凝集が強まる。そして、このシロキサン化合物の長い分子鎖が絡み合うことによるシリカ粒子の凝集力は、シリカ粒子を流動させると解除されると考えられる。これに加え、シリカ粒子表面のシロキサン化合物の長い分子鎖により、トナー粒子への付着力も高まる。
【0046】
以上のことから、粘度が上記範囲のシロキサン化合物をシリカ粒子表面に上記範囲で少量付着させた特定シリカ粒子は、圧縮凝集度及び粒子圧縮比が上記要件を満たしやすくなり、粒子分散度も上記要件を満たしやすくなる。
【0047】
以下、トナーの構成について詳細に説明する。
【0048】
(トナー粒子)
トナー粒子は、例えば、結着樹脂を含む。トナー粒子は、必要に応じて、着色剤、離型剤、その他添加剤等を含んでもよい。
【0049】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられる。
【0051】
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0052】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0055】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0056】
ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0057】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0058】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0060】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0061】
−離型剤−
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0062】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0063】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0064】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0065】
−トナー粒子の特性等−
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0066】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0067】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)
1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)
1/2として算出される。
【0068】
トナー粒子の平均円形度は、0.95以上1.00以下であることが好ましく、より好ましくは0.98以上1.0以下である。つまり、トナー粒子は、真球に近い形状であることが好ましい。トナーの平均円形度は、Sysmex社製FPIA−3000で測定することが好ましい。本装置では、水などに分散させた粒子をフロー式画像解析法によって測定する方式が採用されており、吸引された粒子懸濁液はフラットシースフローセルに導かれ、シース液によって偏平な試料流に形成される。その試料流にストロボ光を照射することにより、通過中の粒子は対物レンズを通して、CCDカメラで、静止画像として撮像される。撮像された粒子像を、2次元画像処理して、投影面積と周囲長から円相当径及び円形度を算出した。円相当径は、撮影された各々の粒子に対して、2次元画像の面積から同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出した。円形度に関しては、少なくとも4,000個以上各々画像解析を行い、統計処理することによって平均円形度を求めた。
円形度=円相当径周囲長/周囲長=[2×(Aπ)
1/2]/PM
上式においてAは投影面積、PMは周囲長を表す。
なお、測定にはHPFモード(高分解能モード)を使用し、希釈倍率は1.0倍とした。また、データの解析に当たっては、測定ノイズ除去の目的で、個数粒径解析範囲を2.0μm以上30.1μm以下とし、円形度解析範囲を0.40以上1.00以下の範囲とした。
【0069】
(外添剤)
外添剤は、特定シリカ粒子とPTFE粒子とを含む。外添剤は、特定シリカ粒子及びPTFE粒子以外の他の外添剤を含んでもよい。つまり、トナー粒子は、特定シリカ粒子及びPTFE粒子が外添されていてもよいし、特定シリカ粒子及びPTFE粒子と他の外添剤とが外添されていてもよい。
【0070】
[特定シリカ粒子]
−圧縮凝集度−
特定シリカ粒子の圧縮凝集度は、60%以上95%以下であるが、特定シリカ粒子における、凝集性及びトナー粒子への付着性を良好にしつつ、流動性及びトナー粒子への分散性を確保する観点(特に、像流れの抑制の観点)から、好ましくは65%以上95%以下、より好ましくは70%以上95%以下である。
【0071】
圧縮凝集度は、以下に示す方法により算出される。
直径6cm、円盤状(ディスク状)の金型に、特定シリカ粒子を6.0g充填する。次いで、圧縮成型機(前川試験機製作所社製)を用いて圧力5.0t/cm
2で金型を60秒圧縮し、圧縮された円盤状の特定シリカ粒子の成形体(以下、「落下前の成形体」と称する)を得る。その後、落下前の成形体の質量を測定する。
次いで、落下前の成形体を目開き600μmのふるい網上に配置し、振動ふるい機(筒井理化学器械社製:品番VIBRATING MVB−1)により、落下前の成形体を振幅1mm、振動時間1分の条件下で落下させる。これにより、落下前の成形体から前記ふるい網を介して特定シリカ粒子が落下し、前記ふるい網上に特定シリカ粒子の成形体が残存する。その後、残存した特定シリカ粒子の成形体(以下、「落下後の成形体」と称する)の質量を測定する。
そして、以下の式(1)を用いて、落下後の成形体の質量と落下前の成形体の質量との比から、圧縮凝集度を算出する。
・式(1):圧縮凝集度=(落下後の成形体の質量/落下前の成形体の質量)×100
【0072】
−粒子圧縮比−
特定シリカ粒子の粒子圧縮比は、0.20以上0.40以下であるが、特定シリカ粒子における、凝集性及びトナー粒子への付着性を良好にしつつ、流動性及びトナー粒子への分散性を確保する観点(特に、像流れの抑制の観点)から、好ましくは0.24以上0.38以下、より好ましくは0.28以上0.36以下である。
【0073】
粒子圧縮比は、以下に示す方法により算出される。
パウダーテスター(ホソカワミクロン社製、品番PT−S型)を用いて、シリカ粒子のゆるみ見掛け比重と固め見掛け比重とを測定する。そして、以下の式(2)を用いて、シリカ粒子の固め見掛け比重及びゆるみ見掛け比重の差と、固め見掛け比重との比から粒子圧縮比を算出する。
・式(2):粒子圧縮比=(固め見掛け比重−ゆるみ見掛け比重)/固め見掛け比重
【0074】
なお、「ゆるみ見掛け比重」とは、容量が100cm
3の容器へシリカ粒子を充填し、秤量することで導き出される測定値であって、特定シリカ粒子を容器中に自然落下させた状態の充填比重をいう。「固め見掛け比重」とは、ゆるみ見掛け比重の状態から、ストローク長18mm、タッピング速度50回/分で、180回繰り返し容器底部に衝撃を与える(タッピング)ことにより、脱気され、特定シリカ粒子が再配列し、より密に充填された、見掛け比重をいう。
【0075】
−粒子分散度−
特定シリカ粒子の粒子分散度は、トナー粒子への分散性をさらに良好にする観点(特に、像流れの抑制の観点)から、好ましくは90%以上100%以下であり、より好ましくは95%以上100%以下であり、さらに好ましくは100%である。
【0076】
粒子分散度とは、トナー粒子への実測の被覆率Cと、計算上の被覆率C
0との比であり、以下の式(3)を用いて算出される。
・式(3):粒子分散度=実測の被覆率C/計算上の被覆率C
0
【0077】
ここで、特定シリカ粒子によるトナー粒子表面への計算上の被覆率C
0は、トナー粒子の体積平均粒径をdt(m)、特定シリカ粒子の平均円相当径をda(m)、トナー粒子の比重をρt、特定シリカ粒子の比重をρa、トナー粒子の重量をWt(kg)、特定シリカ粒子の添加量をWa(kg)としたとき、下記式(3−1)で算出することができる。
・式(3−1):計算上の被覆率C
0=√3/(2π)×(ρt/ρa)×(dt/da)×(Wa/Wt)×100(%)
【0078】
特定シリカ粒子によるトナー粒子表面への実測の被覆率Cは、X線光電子分光装置(XPS)(「JPS−9000MX」:日本電子(株)製)により、トナー粒子のみ、特定シリカ粒子のみ、及び特定シリカ粒子が被覆(付着)したトナー粒子について、それぞれ特定シリカ粒子に由来するケイ素原子のシグナル強度を測定し、下記式(3−2)で算出することができる。
【0079】
・式(3−2):実測の被覆率C=(z−x)/(y−x)×100(%)
(式(3−2)中、xは、トナー粒子のみの特定シリカ粒子に由来するケイ素原子のシグナル強度を示す。yは、特定シリカ粒子のみの特定シリカ粒子に由来するケイ素原子のシグナル強度を示す。zは、特定シリカ粒子が被覆(付着)したトナー粒子についての特定シリカ粒子に由来するケイ素原子のシグナル強度を示す。)
【0080】
−平均円相当径−
特定シリカ粒子の平均円相当径は、特定シリカ粒子における、流動性、トナー粒子への分散性、凝集性、及びトナー粒子への付着性を良好にする観点(特に、像流れの抑制の観点)から、40nm以上200nm以下が好ましく、50nm以上180nm以下がより好ましく、60nm以上160nm以下がさらに好ましい。
【0081】
特定シリカ粒子の平均円相当径D50は、トナー粒子に特定シリカ粒子を外添させた後の一次粒子を、走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)装置((株)日立製作所製:S−4100)により観察して画像を撮影し、この画像を画像解析装置(LUZEXIII、(株)ニレコ製)に取り込み、一次粒子の画像解析によって粒子ごとの面積を測定し、この面積値から円相当径を算出する。得られた円相当径の体積基準の累積頻度における50%径(D50)を特定シリカ粒子の平均円相当径D50とする。なお、電子顕微鏡は1視野中に特定シリカ粒子が10個以上50個以下程度写るように倍率が調整され、複数視野の観察を合わせて一次粒子の円相当径が求められる。
【0082】
−平均円形度−
特定シリカ粒子の形状は、球形状、異形状のいずれであってもよいが、特定シリカ粒子の平均円形度は、特定シリカ粒子における、流動性、トナー粒子への分散性、凝集性、及びトナー粒子への付着性を良好にする観点(特に、像流れの抑制の観点)から、0.85以上0.98以下が好ましく、0.90以上0.98以下がより好ましく、0.93以上0.98以下がさらに好ましい。
【0083】
特定シリカ粒子の平均円形度は、以下に示す方法により測定される。
まず、特定シリカ粒子の円形度は、トナー粒子にシリカ粒子を外添させた後の一次粒子を、SEM装置により観察し、得られた一次粒子の平面画像解析から、下記式により算出される「100/SF2」として得られる。
・式:円形度(100/SF2)=4π×(A/I
2)
〔式中、Iは画像上における一次粒子の周囲長を示し、Aは一次粒子の投影面積を表す。
そして、特定シリカ粒子の平均円形度は、上記平面画像解析によって得られた一次粒子100個の円形度の累積頻度における50%円形度として得られる。
【0084】
ここで、トナーから、特定シリカ粒子の各特性(圧縮凝集度、粒子圧縮比、粒子分散度、平均円形度)を測定する方法について説明する。
まず、トナーから特定シリカ粒子を次のように分離する。
メタノール中にトナーを入れて分散させ、撹拌後、超音波バスにて処理することで、トナーから外添剤を分離することができる。外添剤の分離のしやすさは、外添剤の粒径・比重により決まり、大径であるPTFE粒子が分離しやすい為、超音波処理条件を弱く設定することでPTFE粒子のみをトナー表面から分離することができる。次に超音波処理を強条件に変更することで、特定シリカ粒子をトナー表面から剥がすことができる。それらを都度、遠心分離によってトナーを沈降させて外添剤を分散したメタノールのみを回収し、その後、メタノールを揮発させることで特定シリカ粒子やPTFE粒子を取り出すことができる。この超音波処理条件は、特定シリカ粒子とPTFE粒子によって、調整する必要がある。
そして、分離した特定シリカ粒子を用いて、上記各特性を測定する。
【0085】
以下、特定シリカ粒子の構成について詳細に説明する。
【0086】
−特定シリカ粒子−
特定シリカ粒子は、シリカ(即ちSiO
2)を主成分とする粒子であり、結晶性でも非晶性でもよい。特定シリカ粒子は、水ガラスやアルコキシシラン等のケイ素化合物を原料に製造された粒子であってもよいし、石英を粉砕して得られる粒子であってもよい。
特定シリカ粒子として、具体的には、ゾルゲル法で作製されるシリカ粒子(以下「ゾルゲルシリカ粒子」)、水性コロイダルシリカ粒子、アルコール性シリカ粒子、気相法により得られるフュームドシリカ粒子、溶融シリカ粒子等が挙げられ、これらの中でも、ゾルゲルシリカ粒子が好ましい。
【0087】
−表面処理−
特定シリカ粒子は、圧縮凝集度、粒子圧縮比、及び粒子分散度を上記特定の範囲とするためには、シロキサン化合物により表面処理されていることが好ましい。
表面処理方法としては、超臨界二酸化炭素を利用し、超臨界二酸化炭素中でシリカ粒子の表面を表面処理することが好ましい。なお、表面処理方法については後述する。
【0088】
−シロキサン化合物−
シロキサン化合物としては、分子構造中にシロキサン骨格を有するものであれば特に制限されない。
シロキサン化合物としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーン樹脂が挙げられる。これらの中でも、シリカ粒子表面を均一に近い状態で表面処理する観点から、シリコーンオイルが好ましい。
【0089】
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が挙げられる。中でも、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイルが好ましい。
上記シロキサン化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0090】
−粘度−
シロキサン化合物の粘度(動粘度)は、特定シリカ粒子における、流動性、トナー粒子への分散性、凝集性、及びトナー粒子への付着性を良好にする観点(特に、像流れの抑制の観点)から、1000cSt以上50000cSt以下が好ましく、2000cSt以上30000cSt以下がより好ましく、3000cSt以上10000cSt以下がさらに好ましい。
シロキサン化合物の粘度は次の手順で求められる。特定シリカ粒子にトルエンを加え超音波分散機で30分間分散させる。その後、上澄みを回収する。このとき1g/100ml濃度のシロキサン化合物のトルエン溶液とする。このときの比粘度〔η
sp〕(25℃)を下記式(A)により求める。
【0091】
・式(A):η
sp=(η/η
0)−1
(η
0:トルエンの粘度、η:溶液の粘度)
【0092】
次に、比粘度〔η
sp〕を下記式(B)に示すHugginsの関係式に代入し、固有粘度〔η〕を求める。
・式(B):η
sp=〔η〕+K’〔η〕
2
(K’:Hugginsの定数 K’=0.3(〔η〕=1〜3の適応時))
【0093】
次に、固有粘度〔η〕を下記式(C)に示すA.Kolorlovの式に代入し、分子量Mを求める。
・式(C):〔η〕=0.215×10
−4M
0.65
【0094】
分子量Mを下記式(D)に示すA.J.Barryの式に代入してシロキサン粘度〔η〕を求める。
・式(D):logη=1.00+0.0123M
0.5
【0095】
−表面付着量−
シロキサン化合物の特定シリカ粒子表面への表面付着量は、特定シリカ粒子における、流動性、トナー粒子への分散性、凝集性、及びトナー粒子への付着性を良好にする観点(特に、像流れの抑制の観点)から、シリカ粒子(表面処理前のシリカ粒子)に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.10質量%以上2質量%以下がさらに好ましい。
表面付着量は、以下に示す方法により測定される。
特定シリカ粒子100mgを、クロロホルム1mL中に分散し、内部標準液としてDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)を1μL加えた後、超音波洗浄機で30分間超音波処理し、クロロホルム溶媒中へシロキサン化合物の抽出を行う。その後JNM−AL400型核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)で水素核スペクトル測定を行い、DMF由来ピーク面積に対するシロキサン化合物由来ピーク面積の比からシロキサン化合物の量を得る。そして、このシロキサン化合物の量から表面付着量を得る。
【0096】
ここで、特定シリカ粒子は、粘度1000cSt以上50000cSt以下のシロキサン化合物により表面処理され、かつ、シロキサン化合物のシリカ粒子表面への表面付着量が0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
上記要件を満たすことで、流動性及びトナー粒子への分散性が良好であると共に、凝集性及びトナー粒子への付着性が向上した特定シリカ粒子が得られ易くなる。
【0097】
[特定シリカ粒子の製造方法]
特定シリカ粒子は、シリカ粒子に対して、表面付着量が0.01質量%以上5質量%以下となるように、粘度1000cSt以上50000cSt以下のシロキサン化合物により、シリカ粒子の表面を表面処理することで得られる。
特定シリカ粒子の製造方法によれば、流動性及びトナー粒子への分散性が良好であると共に、凝集性及びトナー粒子への付着性が向上したシリカ粒子が得られる。
【0098】
前記表面処理方法としては、超臨界二酸化炭素中で、シロキサン化合物によりシリカ粒子の表面を表面処理する方法;大気中で、シロキサン化合物によりシリカ粒子の表面を表面処理する方法;が挙げられる。
【0099】
前記表面処理方法としては、具体的に、例えば、超臨界二酸化炭素を利用して、超臨界二酸化炭素中にシロキサン化合物を溶解させて、シリカ粒子表面にシロキサン化合物を付着させる方法;大気中において、シロキサン化合物とシロキサン化合物を溶解する溶媒とを含む溶液をシリカ粒子表面に付与(例えば噴霧、塗布)して、シリカ粒子表面にシロキサン化合物を付着させる方法;大気中において、シリカ粒子分散液にシロキサン化合物とシロキサン化合物を溶解する溶媒とを含む溶液を添加して保持した後、シリカ粒子分散液及び前記溶液の混合溶液を乾燥させる方法;が挙げられる。
【0100】
中でも、前記表面処理方法としては、超臨界二酸化炭素を利用して、シリカ粒子表面にシロキサン化合物を付着させる方法が好ましい。
前記表面処理を超臨界二酸化炭素中で行うと、超臨界二酸化炭素中にシロキサン化合物が溶解した状態となる。超臨界二酸化炭素は界面張力が低いという特性を持つことから、超臨界二酸化炭素中に溶解した状態のシロキサン化合物は、超臨界二酸化炭素と共に、シリカ粒子の表面の孔部の深くまで拡散して到達し易くなるものと考えられ、シリカ粒子の表面のみならず、孔部の奥深くまで、シロキサン化合物による表面処理がなされると考えられる。
このため、超臨界二酸化炭素中でシロキサン化合物により表面処理されたシリカ粒子は、シロキサン化合物により表面が均一に近い状態(例えば薄膜状に表面処理層が形成されている状態)に処理されたシリカ粒子になると考えられる。
【0101】
また、特定シリカ粒子の製造方法では、超臨界二酸化炭素中でシロキサン化合物と共に疎水化処理剤を用いてシリカ粒子の表面に疎水性を付与する表面処理を行ってもよい。
この場合、超臨界二酸化炭素中にシロキサン化合物と共に疎水化処理剤が溶解した状態となり、超臨界二酸化炭素中に溶解した状態のシロキサン化合物及び疎水化処理剤は、超臨界二酸化炭素と共に、シリカ粒子の表面の孔部の深くまで拡散して到達し易くなるものと考えられ、シリカ粒子の表面のみならず、孔部の奥深くまで、シロキサン化合物及び疎水化処理剤による表面処理がなされると考えられる。
この結果、超臨界二酸化炭素中でシロキサン化合物及び疎水化処理剤により表面処理されたシリカ粒子は、シロキサン化合物及び疎水化処理剤により表面が均一に近い状態に処理されると共に、高い疎水性が付与され易くなる。
【0102】
また、特定シリカ粒子の製造方法では、シリカ粒子の他の製造過程(例えば、溶媒除去工程等)において、超臨界二酸化炭素を利用してもよい。
他の製造過程において超臨界二酸化炭素を利用する特定シリカ粒子の製造方法としては、例えば、ゾルゲル法によって、シリカ粒子とアルコール及び水を含む溶媒とを含有するシリカ粒子分散液を準備する工程(以下、「分散液準備工程」と称する)と、超臨界二酸化炭素を流通させ、シリカ粒子分散液から溶媒を除去する工程(以下、「溶媒除去工程」と称する)と、超臨界二酸化炭素中で、溶媒を除去した後のシリカ粒子の表面をシロキサン化合物により表面処理する工程(以下、「表面処理工程」と称する)と、を有するシリカ粒子の製造方法が挙げられる。
【0103】
シリカ粒子分散液からの溶媒除去を、超臨界二酸化炭素を利用して行うと、粗粉の発生が抑えられ易くなる。
この理由は定かではないが、1)シリカ粒子分散液の溶媒を除去する場合、超臨界二酸化炭素が「界面張力が働かない」という性質から、溶媒を除去する際の液架橋力による粒子同士の凝集もなく溶媒を除去できるものと考えられる点、2)超臨界二酸化炭素の「臨界点以上の温度・圧力下においた状態の二酸化炭素であり、気体の拡散性と液体の溶解性との双方を持つ」といった性質により、比較的低温(例えば250℃以下)で、超臨界二酸化炭素に効率良く接触し、溶媒を溶解することから、この溶媒を溶解した超臨界二酸化炭素を除去することで、シラノール基の縮合による2次凝集体等の粗粉を生じることなくシリカ粒子分散液中の溶媒を除去できるものと考えられる点、等が理由として考えられる。
【0104】
ここで、溶媒除去工程、及び表面処理工程は、個別に行なってもよいが、連続(つまり大気圧下に開放しない状態で各工程を実施)して行うことが好ましい。これら各工程を連続して行うことで、溶媒除去工程後において、シリカ粒子が水分を吸着する機会を無くし、シリカ粒子への過剰な水分の吸着が抑えられた状態で、表面処理工程を行える。これにより、大量のシロキサン化合物を使用したり、過剰な加熱を行い高温で、溶媒除去工程及び表面処理工程を行う必要がなくなる。その結果、より効果的に、粗粉の発生が抑えられ易くなる。
【0105】
以下、特定シリカ粒子の製造方法の詳細について、各工程別に詳細に説明する。
なお、特定シリカ粒子の製造方法は、これに限られるわけではなく、例えば、1)表面処理工程のみ超臨界二酸化炭素を使用する態様、2)各工程を個別に行う態様等であってもよい。
【0106】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0107】
−分散液準備工程−
分散液準備工程では、例えば、シリカ粒子とアルコール及び水を含む溶媒とを含有するシリカ粒子分散液を準備する。
具体的には、分散液準備工程は、例えば、湿式(例えば、ゾルゲル法等)によりシリカ粒子分散液を作製して、これを準備する。特に、湿式としてゾルゲル法、具体的には、テトラアルコキシシランを、アルコール及び水の溶媒にアルカリ触媒存在下で、反応(加水分解反応、縮合反応)を生じさせてシリカ粒子を生成し、シリカ粒子分散液を作製することがよい。
【0108】
なお、シリカ粒子の平均円相当径の好ましい範囲、及び平均円形度の好ましい範囲は既述のとおりである。
分散液準備工程において、例えば、シリカ粒子を湿式により得る場合、シリカ粒子が溶媒に分散された分散液(シリカ粒子分散液)の状態で得られる。
【0109】
ここで、溶媒除去工程に移行する際、準備するシリカ粒子分散液は、そのアルコールに対する水の質量比が例えば0.05以上1.0以下であることがよく、好ましくは0.07以上0.5以下、より好ましくは0.1以上0.3以下である。
シリカ粒子分散液において、そのアルコールに対する水の質量比を上記範囲とすると、表面処理後にシリカ粒子の粗粉の発生が少なく、良好な電気抵抗を有するシリカ粒子が得られ易くなる。
アルコールに対する水の質量比が0.05を下回ると、溶媒除去工程において、溶媒を除去する際のシリカ粒子表面のシラノール基の縮合が少なくなることから、溶媒除去後のシリカ粒子表面への吸着水分が多くなることで、表面化処理後のシリカ粒子の電気抵抗が低くなり過ぎることがある。また、水の質量比が1.0を超えると、溶媒除去工程において、シリカ粒子分散液中の溶媒除去の終点付近で水が多く残留し、液架橋力によるシリカ粒子同士の凝集が生じ易く、表面処理後に粗粉として存在することがある。
【0110】
また、溶媒除去工程に移行する際、準備するシリカ粒子分散液は、そのシリカ粒子に対する水の質量比が例えば0.02以上3以下であることがよく、好ましくは0.05以上1以下、より好ましくは0.1以上0.5以下である。
シリカ粒子分散液において、そのシリカ粒子に対する水の質量比を上記範囲とすると、シリカ粒子の粗粉の発生が少なく、良好な電気抵抗を有するシリカ粒子が得られ易くなる。
シリカ粒子に対する水の質量比が0.02を下回ると、溶媒除去工程において、溶媒を除去する際のシリカ粒子表面のシラノール基の縮合が極端に少なくなることから、溶媒除去後のシリカ粒子表面への吸着水分が多くなることで、シリカ粒子の電気抵抗が低くなり過ぎることがある。
また、水の質量比が3を超えると、溶媒除去工程において、シリカ粒子分散液中の溶媒除去の終点付近で水が多く残留し、液架橋力によるシリカ粒子同士の凝集が生じ易くなることがある。
【0111】
また、溶媒除去工程に移行する際、準備するシリカ粒子分散液は、当該シリカ粒子分散液に対するシリカ粒子の質量比が例えば0.05以上0.7以下がよく、好ましくは0.2以上0.65以下、より好ましくは0.3以上0.6以下である。
シリカ粒子分散液に対するシリカ粒子の質量比が0.05を下回ると、溶媒除去工程において、使用する超臨界二酸化炭素の量が多くなり、生産性が悪くなってしまうことがある。
また、シリカ粒子分散液に対するシリカ粒子の質量比が0.7を超えると、シリカ粒子分散液中においてシリカ粒子間距離が近くなり、シリカ粒子の凝集やゲル化による粗粉が発生し易くなることがある。
【0112】
−溶媒除去工程−
溶媒除去工程は、例えば、超臨界二酸化炭素を流通させ、シリカ粒子分散液の溶媒を除去する工程である。
つまり、溶媒除去工程では、超臨界二酸化炭素を流通させることにより、超臨界二酸化炭素をシリカ粒子分散液に接触させて、溶媒を除去する工程である。
具体的には、溶媒除去工程では、例えば、密閉反応器内に、シリカ粒子分散液を投入する。その後、密閉反応器内に、液化二酸化炭素を加えて加熱し、高圧ポンプにより反応器内を昇圧させ、二酸化炭素を超臨界状態とする。そして、密閉反応器内に超臨界二酸化炭素を導入すると共に、排出し、密閉反応器内、つまりシリカ粒子分散液に流通させる。
これにより、超臨界二酸化炭素が溶媒(アルコール及び水)を溶解しつつ、これを同伴してシリカ粒子分散液の外部(密閉反応器内の外部)へと排出され、溶媒が除去される。
【0113】
ここで、超臨界二酸化炭素とは、臨界点以上の温度・圧力下においた状態の二酸化炭素であり、気体の拡散性と液体の溶解性との双方を持つものである。
【0114】
溶媒除去の温度条件、つまり超臨界二酸化炭素の温度は、例えば、31℃以上350℃以下がよく、好ましくは60℃以上300℃以下、より好ましくは、80℃以上250℃以下である。
この温度が上記範囲未満であると、溶媒が超臨界二酸化炭素に溶解し難くなるため、溶媒の除去がし難くなることがある。また溶媒や超臨界二酸化炭素の液架橋力により粗粉が生じ易くなることがあると考える。一方、この温度が上記範囲を超えると、シリカ粒子表面のシラノール基の縮合により2次凝集体等の粗粉が生じ易くなることがあると考えられる。
【0115】
溶媒除去の圧力条件、つまり超臨界二酸化炭素の圧力は、例えば、7.38MPa以上40MPa以下がよく、好ましくは10MPa以上35MPa以下、より好ましくは15MPa以上25MPa以下である。
この圧力が上記範囲未満であると、超臨界二酸化炭素に溶媒が溶解し難くなる傾向にあり、一方、圧力が上記範囲を超えると、設備が高額となる傾向となる。
【0116】
また、密閉反応器内への超臨界二酸化炭素の導入・排出量は、例えば、15.4L/分/m
3以上1540L/分/m
3以下であることがよく、好ましくは77L/分/m
3以上770L/分/m
3以下である。
導入・排出量が15.4L/分/m
3未満であると、溶媒除去に時間がかかるため生産性が悪くなり易くなる傾向となる。
一方、導入・排出量が1540L/分/m
3を超えると、超臨界二酸化炭素がショートパスし、シリカ粒子分散液の接触時間が短くなってしまい、効率的に溶媒除去でき難くなる傾向となる。
【0117】
−表面処理工程−
表面処理工程は、例えば、溶媒除去工程と連続して、超臨界二酸化炭素中で、シロキサン化合物によりシリカ粒子の表面を表面処理する工程である。
つまり、表面処理工程では、例えば、溶媒除去工程から移行する前に、大気開放を行わず、超臨界二酸化炭素中で、シロキサン化合物によりシリカ粒子の表面を表面処理する。
具体的には、表面処理工程では、例えば、溶媒除去工程における密閉反応器内への超臨界二酸化炭素を導入・排出を停止した後、密閉反応器内の温度、圧力を調整し、密閉反応器内に、超臨界二酸化炭素が存在する状態で、シリカ粒子に対して一定の割合のシロキサン化合物を投入する。そして、この状態を維持した状態、つまり超臨界二酸化炭素中で、シロキサン化合物を反応させて、シリカ粒子の表面処理を行う。
【0118】
ここで、表面処理工程は、超臨界二酸化炭素中で(つまり超臨界二酸化炭素の雰囲気下で)、シロキサン化合物の反応を行えばよく、超臨界二酸化炭素を流通(つまり密閉反応器内への超臨界二酸化炭素を導入・排出)させながら表面処理を行ってよいし、非流通で表面処理を行ってもよい。
【0119】
表面処理工程において、反応器の容積に対するシリカ粒子の量(つまり仕込み量)は、例えば、30g/L以上600g/L以下がよく、好ましくは50g/L以上500g/L以下、より好ましくは80g/L以上400g/L以下である。
この量が上記範囲より少ないとシロキサン化合物の超臨界二酸化炭素に対する濃度が低くなりシリカ表面との接触確率が低下し、反応が進み難くなることがある。一方で、この量が上記範囲よりも多いと、シロキサン化合物の超臨界二酸化炭素に対する濃度が高くなり、シロキサン化合物が超臨界二酸化炭素へ溶解しきれず分散不良となり、粗大凝集物を発生させ易くなる。
【0120】
超臨界二酸化炭素の密度は、例えば、0.10g/ml以上0.80g/ml以下がよく、好ましくは0.10g/ml以上0.60g/ml以下、より好ましくは0.2g/ml以上0.50g/ml以下である。
この密度が上記範囲より低いと、超臨界二酸化炭素に対するシロキサン化合物の溶解度が低下し、凝集物を発生させる傾向がある。一方で、密度が上記範囲よりも高いと、シリカ細孔への拡散性が低下するため、表面処理が不十分となる場合がある。特に、シラノール基を多く含有しているゾルゲルシリカ粒子に対しては上記密度範囲での表面処理を行うことがよい。
なお、超臨界二酸化炭素の密度は、温度及び圧力等により調整される。
【0121】
シロキサン化合物の具体例は前述のとおりである。また、シロキサン化合物の粘度の好ましい範囲も既述のとおりである。
シロキサン化合物の中でも、シリコーンオイルを適用すると、シリカ粒子表面にシリコーンオイルが均一に近い状態で付着され易くなり、シリカ粒子の流動性、分散性及び取り扱い性が向上し易くなる。
【0122】
シロキサン化合物の使用量は、シリカ粒子に対する表面付着量を0.01質量%以上5質量%以下に制御し易くする観点から、例えば、シリカ粒子に対し、0.05質量%以上3質量%以下がよく、好ましくは0.1質量%以上2質量%以下、より好ましくは0.15質量%以上1.5質量%以下である。
【0123】
なお、シロキサン化合物は、単独で使用してもよいが、シロキサン化合物が溶解しやすい溶媒との混合液として使用してもよい。この溶媒としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0124】
表面処理工程では、シロキサン化合物と共に疎水化処理剤を含む混合物によりシリカ粒子の表面処理を行ってもよい。
【0125】
疎水化処理剤としては、例えば、シラン系疎水化処理剤が挙げられる。シラン系疎水化処理剤としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を持つ公知の珪素化合物が挙げられ、具体例には、例えば、シラザン化合物(例えばメチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシランなどのシラン化合物、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等)等が挙げられる。疎水化処理剤は、1種で用いてもよいし、複数種用いてもよい。
シラン系疎水化処理剤の中でも、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)などのトリメチル基を有する珪素化合物、特にヘキサメチルジシラザン(HMDS)が好適である。
【0126】
シラン系疎水化処理剤の使用量は、特に限定はされないが、例えば、シリカ粒子に対し、例えば、1量%以上100質量%以下がよく、好ましくは3質量%以上80質量%以下、より好ましくは5質量%以上50質量%以下である。
【0127】
なお、シラン系疎水化処理剤は、単独で使用してもよいが、シラン系疎水化処理剤が溶解しやすい溶媒との混合液として使用してもよい。この溶媒としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0128】
表面処理の温度条件、つまり超臨界二酸化炭素の温度は、例えば、80℃以上300℃以下がよく、好ましくは100℃以上250℃以下、より好ましくは120℃以上200℃以下である。
この温度が上記範囲未満であると、シロキサン化合物による表面処理能力が低下することがある。一方で、温度が上記範囲を超えると、シリカ粒子のシラノール基間による縮合反応が進み、粒子凝集が発生することがある。特に、シラノール基を多く含有しているゾルゲルシリカ粒子に対しては上記温度範囲での表面処理を行うことがよい。
【0129】
一方、表面処理の圧力条件、つまり超臨界二酸化炭素の圧力は、上記密度を満足する条件であればよいが、例えば、8MPa以上30MPa以下がよく、好ましくは10MPa以上25MPa以下、より好ましくは15MPa以上20MPa以下である。
【0130】
以上説明した各工程を経て、特定シリカ粒子が得られる。
【0131】
[PTFE粒子]
本実施形態に用いられるPTFE粒子は、特に限定されるものではない。PTFE粒子の平均粒子径としては、100nm以上500nm以下が好ましく、より好ましくは、200m以上400nm以下である。上記粒子径を有するPTEF粒子としては、乳化重合法で製造されたものを用いてもよいし、市販品(例えば、ダイキン工業社製、ルブロンL−2)としても入手可能である。
PTFE粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(S−4700型、日立株式会社製)を用いて、100視野(50000倍)の観察を実施し、PTFE粒子の画像面積に相当する粒子を円として近似して粒径(長径と短径の平均値)を1000箇所測定し、その平均値をPTFE粒子の個数平均一次径とすることにより測定される。
本実施形態に用いられるPTFE粒子の組成は、テトラフルオロエチレンの単独重合体であることが好ましいが、例えば、フッ化ビニリデン、モノフルオロエチレン、などを10質量%以下程度含むものであってもよい。
【0132】
ここで、トナーから、PTFE粒子の平均粒子径を測定する方法について説明する。
まず、トナーからPTFE粒子を次のように分離する。
メタノール中にトナーを入れて分散させ、撹拌後、超音波バスにて処理することで、トナーから外添剤を分離することができる。外添剤の分離のしやすさは、外添剤の粒径・比重により決まり、大径であるPTFE粒子が分離しやすい為、超音波処理条件を弱く設定することでPTFE粒子のみをトナー表面から分離することができる。次に超音波処理を強条件に変更することで、特定シリカ粒子をトナー表面から剥がすことができる。それらを都度、遠心分離によってトナーを沈降させて外添剤を分散したメタノールのみを回収し、その後、メタノールを揮発させることで特定シリカ粒子やPTFE粒子を取り出すことができる。この超音波処理条件は、特定シリカ粒子とPTFE粒子によって、調整する必要がある。
そして、分離したPTFE粒子を用いて、平均粒子径を測定する。
【0133】
[他の外添剤]
他の外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、特定シリカ粒子以外のSiO
2、TiO
2、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)n、Al
2O
3・2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等が挙げられる。
【0134】
他の外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0135】
他の外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩)等も挙げられる。
【0136】
−外添量−
特定シリカ粒子の外添量(含有量)は、像流れの抑制の観点から、トナー粒子に対して、0.1質量%以上6.0質量%以下が好ましく、0.3質量%以上4.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上2.5質量%以下が更に好ましい。
PTFE粒子の添加量は、像流れの抑制の観点からは、トナー粒子に対して、0.05質量%以上0.7質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.4質量%以下であることがより好ましい。
特定シリカ粒子とPTFE粒子との含有比率(特定シリカ粒子/PTFE粒子)としては、質量基準で、2.0以上30.0以下が好ましく、4.0以上20.0以下がより好ましく、5.0以上10.0以下が更に好ましい。
他の外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。
【0137】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0138】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
【0139】
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0140】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0141】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0142】
−樹脂粒子分散液準備工程−
まず、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0143】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0144】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0145】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0146】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0147】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0148】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0149】
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0150】
−凝集粒子形成工程−
次に、樹脂粒子分散液と共に、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0151】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0152】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0153】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0154】
−融合・合一工程−
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0155】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0156】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0157】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レ−ディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0158】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0159】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0160】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0161】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0162】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0163】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0164】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、像保持体の表面をクリーニングするクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0165】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、像保持体の表面をクリーニングブレードによりクリーニングするクリーニング工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0166】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0167】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0168】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0169】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0170】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0171】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0172】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去するクリーニングブレード6Y−1を有する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0173】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10
−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0174】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0175】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で撹拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0176】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0177】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0178】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0179】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0180】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0181】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0182】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0183】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0184】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0185】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及びクリーニングブレード113−1を有する感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0186】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0187】
なお、
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0188】
以下、本実施形態を実施例により具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお以下の説明において、特に断りがない限り、「部」「%」は全て「質量部」「質量%」を意味する。
【0189】
[トナー粒子の作製]
(トナー粒子(1)の作製)
−ポリエステル樹脂粒子分散液(1)の調製−
・エチレングリコール〔和光純薬工業(株)製〕: 37部
・ネオペンチルグリコール〔和光純薬工業(株)製〕:65部
・1,9−ノナンジオール〔和光純薬工業(株)製〕:32部
・テレフタル酸〔和光純薬工業(株)製〕: 96部
上記モノマーをフラスコに仕込み、1時間をかけて温度200℃まで上げ、反応系内が攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを1.2部投入した。更に、生成する水を留去しながら同温度から6時間をかけて240℃まで温度を上げ、240℃で更に4時間脱水縮合反応を継続し、酸価が9.4mgKOH/g、重量平均分子量13,000、ガラス転移温度62℃であるポリエステル樹脂Aを得た。
【0190】
次いで、ポリエステル樹脂Aを溶融状態のまま、キャビトロンCD1010((株)ユーロテック製)に毎分100部の速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクに試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で上記ポリエステル樹脂溶融体と共に上記キャビトロンに移送した。回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm
2の条件でキャビトロンを運転し、体積平均粒径160nm、固形分30%、ガラス転移温度62℃、重量平均分子量Mwが13,000の樹脂粒子が分散されたポリエステル樹脂粒子分散液(1)を得た。
【0191】
−着色剤粒子分散液の調製−
・シアン顔料〔PigmentBlue15:3、大日精化工業(株)製〕:10部
・アニオン性界面活性剤〔ネオゲンSC、第一工業製薬(株)製〕: 2部
・イオン交換水: 80部
上記の成分を混合し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー〔HJP30006、(株)スギノマシン製〕により1時間分散し、体積平均粒径180nm、固形分20%の着色剤粒子分散液を得た。
【0192】
−離型剤粒子分散液の調製−
・カルナバワックス〔RC−160、溶融温度84℃、東亜化成(株)製〕:50部
・アニオン性界面活性剤〔ネオゲンSC、第一工業製薬製〕: 2部
・イオン交換水: 200部
上記成分を120℃に加熱して、IKA社製、ウルトラタラックスT50で混合・分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径が200nm、固形分20%の離型剤粒子分散液を得た。
【0193】
−トナー粒子(1)の作製−
・ポリエステル樹脂粒子分散液(1): 200部
・着色剤粒子分散液: 25部
・離型剤粒子分散液: 30部
・ポリ塩化アルミニウム: 0.5部
・イオン交換水: 100部
上記の成分をステンレス製フラスコに投入し、IKA社製のウルトラタラックスを用い混合、分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら46℃まで加熱した。46℃で30分保持した後、ここにポリエステル樹脂粒子分散液(1)を70部追加した。
【0194】
その後、濃度0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを8.0 に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、攪拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら86℃まで加熱して5時間保持した。反応終了後、降温速度を2℃/分で冷却し、濾過、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行った。これをさらに30℃のイオン交換水3Lを用いて再分散し、15分間300rpmで攪拌・洗浄した。この洗浄操作をさらに6回繰り返し、濾液のpHが7.54、電気伝導度6.5μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5A ろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続してトナー粒子(1)を得た。
トナー粒子(1)の体積平均粒径D50vは4.8μmであり、平均円形度は0.964であった。
【0195】
−トナー粒子(2)の作製−
・ポリエステル樹脂粒子分散液(1): 200部
・着色剤粒子分散液: 25部
・離型剤粒子分散液: 30部
・ポリ塩化アルミニウム: 0.4部
・イオン交換水: 100部
上記の成分をステンレス製フラスコに投入し、IKA社製のウルトラタラックスを用い混合、分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で30分保持した後、ここにポリエステル樹脂粒子分散液(1)を70部追加した。
【0196】
その後、濃度0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを8.0 に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、攪拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら90℃まで加熱して8時間保持した。反応終了後、降温速度を2℃/分で冷却し、濾過、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行った。これをさらに30℃のイオン交換水3Lを用いて再分散し、15分間300rpmで攪拌・洗浄した。この洗浄操作をさらに6回繰り返し、濾液のpHが7.54、電気伝導度6.5μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5A ろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続してトナー粒子(2)を得た。
トナー粒子(2)の体積平均粒径D50vは5.8μmであり、平均円形度は0.982であった。
【0197】
−トナー粒子(3)の作製−
・ポリエステル樹脂粒子分散液(1): 200部
・着色剤粒子分散液: 25部
・離型剤粒子分散液: 30部
・ポリ塩化アルミニウム: 0.4部
・イオン交換水: 100部
上記の成分をステンレス製フラスコに投入し、IKA社製のウルトラタラックスを用い混合、分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で30分保持した後、ここにポリエステル樹脂粒子分散液(1)を70部追加した。
【0198】
その後、濃度0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを8.7 に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、攪拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら85℃まで加熱して6時間保持した。反応終了後、降温速度を2℃/分で冷却し、濾過、イオン交換水で洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行った。これをさらに30℃のイオン交換水3Lを用いて再分散し、15分間300rpmで攪拌・洗浄した。この洗浄操作をさらに6回繰り返し、濾液のpHが7.54、電気伝導度6.5μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5A ろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続してトナー粒子(3)を得た。
トナー粒子(3)の体積平均粒径D50vは5.9μmであり、平均円形度は0.948であった
【0199】
[シリカ粒子の作製]
(シリカ粒子分散液(1)の調製)
撹拌機、滴下ノズル、温度計を具備した1.5Lのガラス製反応容器にメタノール300部、10%アンモニア水70部を添加して混合し、アルカリ触媒溶液を得た。
このアルカリ触媒溶液を30℃に調整した後、撹拌しながら、テトラメトキシシラン185部と8.0%アンモニア水50部とを同時に滴下を行い、親水性のシリカ粒子分散液(固形分濃度12.0%)を得た。ここで、滴下時間は30分とした。
その後、得られたシリカ粒子分散液をロータリーフィルターR−ファイン(寿工業社製)で固形分濃度40%まで濃縮した。この濃縮したものをシリカ粒子分散液(1)とした。
【0200】
(シリカ粒子分散液(2)〜(8)の調製)
シリカ粒子分散液(1)の調製において、表1に従って、アルカリ触媒溶液(メタノール量、及び10%アンモニア水量)、シリカ粒子生成条件(アルカリ触媒溶液へのテトラメトキシシラン(TMOSと表記)及び8%アンモニア水の総滴下量、並びに、滴下時間)を変更した以外は、シリカ粒子分散液(1)と同様にして、シリカ粒子分散液(2)〜(8)を調製した。
【0201】
以下、表1に、シリカ粒子分散液(1)〜(8)の詳細をまとめて示す。
【0202】
【表1】
【0203】
(表面処理シリカ粒子(S1)の作製)
シリカ粒子分散液(1)を用いて、以下に示すようにして、シリカ粒子に対し超臨界二酸化炭素雰囲気下でシロキサン化合物による表面処理を行った。なお、表面処理には、二酸化炭素ボンベ、二酸化炭素ポンプ、エントレーナポンプ、撹拌機付きオートクレーブ(容量500ml)、圧力弁を具備した装置を用いた。
【0204】
まず、撹拌機付きオートクレーブ(容量500ml)へ、シリカ粒子分散液(1)を250部投入し、撹拌機を100rpmで回転させた。その後、オートクレーブ内に液化二酸化炭素を注入し、ヒーターにより昇温しながら二酸化炭素ポンプにより昇圧し、オートクレーブ内を150℃、15MPaの超臨界状態とした。圧力弁でオートクレーブ内を15MPaに保ちながら二酸化炭素ポンプより超臨界二酸化炭素を流通させ、シリカ粒子分散液(1)からメタノールと水を除去し(溶媒除去工程)、シリカ粒子(未処理のシリカ粒子)を得た。
【0205】
次に、流通した超臨界二酸化炭素の流通量(積算量:標準状態の二酸化炭素の流通量として測定)が900部となった時点で、超臨界二酸化炭素の流通を停止した。
その後、ヒーターにより温度150℃、二酸化炭素ポンプにより圧力15MPaを維持し、オートクレーブ内で二酸化炭素の超臨界状態を維持させた状態で、上記シリカ粒子(未処理のシリカ粒子)100部に対して、予め疎水化処理剤としてヘキサメチルジシラザン(HMDS:有機合成薬品工業社製)20部に、シロキサン化合物として、粘度10000cStであるジメチルシリコーンオイル(DSO:商品名「KF-96(信越化学工業社製)」)0.3部を溶解した処理剤溶液をエントレーナポンプにてオートクレーブ内に注入した後、撹拌しながら、180℃で20分間反応させた。その後、再度超臨界二酸化炭素を流通させ、余剰の処理剤溶液を除去した。その後、撹拌を停止し、圧力弁を開けてオートクレーブ内の圧力を大気圧まで開放し温度を室温(25℃)まで下げた。
このように、溶媒除去工程、シロキサン化合物による表面処理を順次行い、表面処理シリカ粒子(S1)を得た。
【0206】
(表面処理シリカ粒子(S2)〜(S5)、(S7)〜(S9)、(S12)〜(S17)の作製)
表面処理シリカ粒子(S1)の作製において、表2に従って、シリカ粒子分散液、表面処理条件(処理雰囲気、シロキサン化合物(種、粘度及びその添加量)、疎水化処理剤及びその添加量)を変更した以外は、表面処理シリカ粒子(S1)と同様にして、表面処理シリカ粒子(S2)〜(S5)、(S7)〜(S9)、(S12)〜(S17)を作製した。
【0207】
(表面処理シリカ粒子(S6)の作製)
表面処理シリカ粒子(S1)の作製で用いたシリカ粒子分散液(1)を用いて、以下に示すようにして、シリカ粒子に対し大気雰囲気下でシロキサン化合物による表面処理を行った。
シリカ粒子分散液(1)の作製に用いた反応容器にエステルアダプターと冷却管を取り付け、シリカ粒子分散液(1)を60℃以上70℃以下の範囲に加熱しメタノールを留去したところで水を添加し、さらに70℃以上90℃以下の範囲に加熱しメタノールを留去しシリカ粒子の水性分散液を得た。この水性分散液中のシリカ固形分100部に対し室温(20℃)でメチルトリメトキシシラン(MTMS:信越化学工業社製)3部を添加し2時間反応させてシリカ粒子表面の処理を行った。この表面処理分散液にメチルイソブチルケトンを添加した後、80℃以上110℃以下の範囲に加熱しメタノール水を留去し、得られた分散液中のシリカ固形分100部に対し室温(20℃)でヘキサメチルジシラザン(HMDS:有機合成薬品工業社製)80部と、シロキサン化合物として粘度10000cStであるジメチルシリコーンオイル(DSO:商品名「KF-96(信越化学工業社製)」)1.0部を添加し、120℃で3時間反応させ、冷却した後、噴霧乾燥(スプレードライ)により乾燥し、表面処理シリカ粒子(S6)を得た。
【0208】
(表面処理シリカ粒子(S10)の作製)
シリカ粒子分散液(1)の代わりにヒュームドシリカOX50(AEROSIL OX50、日本アエロジル社製)を用いた以外は、表面処理シリカ粒子(S1)と同様にして、表面処理シリカ粒子(S10)を作製した。すなわち、表面処理シリカ粒子(S1)の作製と同じ撹拌機付きオートクレーブへOX50を100部投入し、撹拌機を100rpmで回転させた。その後、オートクレーブ内に液化二酸化炭素を注入し、ヒーターにより昇温しながら二酸化炭素ポンプにより昇圧し、オートクレーブ内を180℃、15MPaの超臨界状態とした。圧力弁でオートクレーブ内を15MPaに保ちながら、予め疎水化処理剤としてヘキサメチルジシラザン(HMDS:有機合成薬品工業社製)20部に、シロキサン化合物として粘度10000cStであるジメチルシリコーンオイル(DSO:商品名「KF-96(信越化学工業社製)」)0.3部を溶解した処理剤溶液をエントレーナポンプにてオートクレーブ内に注入した後、撹拌しながら、180℃で20分間反応させ、その後、超臨界二酸化炭素を流通させ、余剰の処理剤溶液を除去し、表面処理シリカ粒子(S10)を得た。
【0209】
(表面処理シリカ粒子(S11)の作製)
シリカ粒子分散液(1)の代わりにヒュームドシリカA50(AEROSIL A50、日本アエロジル社製)を用いた以外は、表面処理シリカ粒子(S1)と同様にして、表面処理シリカ粒子(S11)を作製した。すなわち、表面処理シリカ粒子(S1)の作製と同じ撹拌機付きオートクレーブへA50を100部投入し、撹拌機を100rpmで回転させた。その後、オートクレーブ内に液化二酸化炭素を注入し、ヒーターにより昇温しながら二酸化炭素ポンプにより昇圧し、オートクレーブ内を180℃、15MPaの超臨界状態とした。圧力弁でオートクレーブ内を15MPaに保ちながら、予め疎水化処理剤としてヘキサメチルジシラザン(HMDS:有機合成薬品工業社製)40部に、シロキサン化合物として粘度10000cStであるジメチルシリコーンオイル(DSO:商品名「KF-96(信越化学工業社製)」)1.0部を溶解した処理剤溶液をエントレーナポンプにてオートクレーブ内に注入した後、撹拌しながら、180℃で20分間反応させ、その後、超臨界二酸化炭素を流通させ、余剰の処理剤溶液を除去し、表面処理シリカ粒子(S11)を得た。
【0210】
(表面処理シリカ粒子(SC1)の作製)
表面処理シリカ粒子(S1)の作製において、シロキサン化合物を添加しない以外は、表面処理シリカ粒子(S1)と同様にして表面処理シリカ粒子(SC1)を作製した。
【0211】
(表面処理シリカ粒子(SC2)〜(SC4)の作製)
表面処理シリカ粒子(S1)の作製において、表3に従って、シリカ粒子分散液、表面処理条件(処理雰囲気、シロキサン化合物(種、粘度及びその添加量)、疎水化処理剤及びその添加量)を変更した以外は、表面処理シリカ粒子(S1)と同様にして、表面処理シリカ粒子(SC2)〜(SC4)を作製した。
【0212】
(表面処理シリカ粒子(SC5)の作製)
表面処理シリカ粒子(S6)の作製において、シロキサン化合物を添加しない以外は、表面処理シリカ粒子(S6)と同様にして表面処理シリカ粒子(SC5)を作製した。
【0213】
(表面処理シリカ粒子(SC6)の作製)
シリカ粒子分散液(6)をろ過、120℃にて乾燥後、電気炉に入れ、400℃にて6時間焼成し、その後HMDSをシリカ粒子100部に対して10部、スプレードライにて噴霧、乾燥して表面処理シリカ粒子(SC6)を作製した。
【0214】
(表面処理シリカ粒子の物性)
得られた表面処理シリカ粒子について、平均円相当径、平均円形度、未処理のシリカ粒子に対するシロキサン化合物の付着量(表中「表面付着量」と表記)、圧縮凝集度、粒子圧縮比、及び粒子分散度を既述の方法で測定した。
【0215】
以下、表2〜表5に、表面処理シリカ粒子の詳細を一覧にして示す。なお、表2〜表5中の略称については、次の通りである。
・DSO :ジメチルシリコーンオイル
・HMDS:ヘキサメチルジシラザン
【0216】
【表2】
【0217】
【表3】
【0218】
【表4】
【0219】
【表5】
【0220】
[PTFE粒子の作製]
−PTFE粒子1の作製−
ステンレス製アンカー型撹拌翼と温度調節用ジャケットを備えたオートクレーブに、脱イオン水及びパーフルオロオクタン酸アンモニウム、パラフィンワックスを仕込み、加熱しながら窒素ガス、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという)で系内を置換した後に、TFEを圧入し、撹拌を250rpmで行いつつ内温を80℃に保った。過硫酸アンモニム水溶液およびジコハク酸パーオキサイド水溶液を圧入しながら、TFEを槽内圧力が一定になるように供給した。重合開始から60分間撹拌した後に、TFEの供給および撹拌を停止し、反応を終了させた。得られたラテックスに、ハイドロパーフルオロノナン酸アンモニムの水溶液を注入し、管内の温度が50℃になるように温水を入れ調整した。次に、硝酸を添加すると同時に撹拌速度250rpmで凝析を開始し、ポリマーと水を分離した後、1時間撹拌した後、水を除去し、乾燥させて個数平均粒径350nmのPTFE粒子1を得た。
【0221】
−PTFE粒子2の作製−
PTFE粒子1の作製において、重合開始から40分撹拌し、凝析時の撹拌速度を500rpmにした以外は、PTFE粒子1と同様の製法で個数平均粒径100nmのPTFE粒子2を得た。
【0222】
−PTFE粒子3の作製−
PTFE粒子1の作製において、重合開始から90分撹拌し、凝析時の撹拌速度を100rpmにした以外は、PTFE粒子1と同様の製法で個数平均粒径500nmのPTFE粒子3を得た。
【0223】
−PTFE粒子4の作製−
PTFE粒子1の作製において、重合開始から150分撹拌し、凝析時の撹拌速度を500rpmにした以外は、PTFE粒子1と同様の製法で個数平均粒径800nmのPTFE粒子4を得た。
【0224】
[実施例1〜26、比較例1〜7]
表6及び表7に示すトナー粒子100部に、表6及び表7に示すシリカ粒子及びPTFE粒子を表6及び表7に示す部数で添加し、ヘンシェルミキサーにて2000rpmで3分間混合し、各例のトナーを得た。
【0225】
そして、得られた各トナーとキャリアとを、トナー:キャリア=5:95(質量比)の割合でVブレンダーに入れ、20分間撹拌し、各現像剤を得た。
【0226】
なお、キャリアは次のように作製されたものを用いた。
・フェライト粒子(体積平均粒子径:50μm) 100部
・トルエン 14部
・スチレン−メチルメタクリレート共重合体 2部
(成分比:90/10、Mw=80000)
・カーボンブラック(R330:キャボット社製) 0.2部
まず、フェライト粒子を除く上記成分を10分間スターラーで撹拌させて、分散した被覆液を調製し、次に、この被覆液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリアを得た。
【0227】
[評価]
各例で得られた現像剤について、トナー画像の像流れの発生を評価した。その結果を表6及び表7に示す。
【0228】
(像流れ評価)
各例で得られた現像剤を、画像形成装置「富士ゼロックス(株)社製DocuCentre color 400」の現像器に充填した。この画像形成装置により、温度30℃、湿度85%RHの環境下で、画像密度が100%のベタ画像を1万枚作成したあとそのまま放置し、次の日、画像密度100%のベタ画像の像流れ度合いを評価した。像流れはX−rite404による濃度測定で評価でき、画像密度100%のチャートの面内の濃度を5点測定し、濃度差が0.1以上ある場合を問題ありとし、像流れを確認できなくなるまで連続出力し、確認できなくなる枚数で評価した。同じ操作を1万枚ごとに3万枚まで実施した。
G5:像流れが確認できない。
G4:像流れが確認でき、2枚目で確認できない。
G3:像流れが確認でき、3〜5枚目で確認できなくなる。
G2:像流れが確認でき、6〜9枚目で確認できなくなる。
G1:像流れが確認でき、10枚目でも確認できる。
なお、3万枚終了時にG2以上であれば、許容できるものとした。
【0229】
【表6】
【0230】
【表7】
【0231】
上記結果から、本実施例は、比較例に比べ、像流れの発生が抑制されていることがわかる。
特に、圧縮凝集度が70%以上95%以下、粒子圧縮比が0.28以上0.36以下であるシリカ粒子を外添剤として適用した実施例1〜5、14は、実施例6〜13、15〜17に比べ、像流れの発生が抑制されていることがわかる。