【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、総務省、「巨大データ流通を支える次世代光ネットワーク技術の研究開発」研究開発委託契約に基づく開発項目「1テラビット級高速大容量光伝送技術」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誤り訂正符号エンコーダを備える第1の通信装置および前記第1の通信装置から受信する信号を処理する誤り訂正符号デコーダを備える第2の通信装置を含む光伝送システムであって、
前記誤り訂正符号エンコーダは、
第1の方式で誤り訂正符号化を行う第1のエンコーダと、
前記第1の方式よりも訂正能力の低い第2の方式で誤り訂正符号化を行う第2のエンコーダと、
前記第1の通信装置から前記第2の通信装置へ伝送される伝送信号の容量が所定の閾値以下であるときは、前記伝送信号の誤り訂正符号化を前記第1のエンコーダに実行させ、前記伝送信号の容量が前記閾値を超えるときは、前記伝送信号の誤り訂正符号化を前記第1のエンコーダおよび前記第2のエンコーダに実行させる符号化制御部と、を備え、
前記誤り訂正符号デコーダは、
前記第1の方式で誤り訂正を行う第1のデコーダと、
前記第2の方式で誤り訂正を行う第2のデコーダと、
前記伝送信号の容量が前記閾値以下であるときは、前記伝送信号の誤り訂正を前記第1のデコーダに実行させ、前記伝送信号の容量が前記閾値を超えるときは、前記伝送信号の誤り訂正を前記第1のデコーダおよび前記第2のデコーダに実行させる復号制御部と、を備え、
前記第2のデコーダの面積は、前記第1のデコーダの面積より小さい
ことを特徴とする光伝送システム。
前記第1の通信装置は、周波数の異なる複数のサブキャリアを使用して前記誤り訂正符号エンコーダの出力信号を前記第2の通信装置へ送信する送信信号処理部をさらに備え、
前記送信信号処理部は、前記第1のエンコーダの出力信号を前記複数のサブキャリアの中の品質の低いサブキャリアに割り当て、前記第2のエンコーダの出力信号を前記複数のサブキャリアの中の品質の高いサブキャリアに割り当てる
ことを特徴とする請求項2に記載の光伝送システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、光伝送システムの一例を示す。光伝送システム500は、通信装置510および通信装置520を備える。通信装置510と通信装置520との間は、光伝送路により接続されている。光伝送路は、光ファイバリンクにより実現される。光伝送路上には、1または複数の光増幅ノードが設けられていてもよい。
【0014】
通信装置510は、デジタル信号処理器(Tx_DSP)511、E/Oフロントエンド回路512、O/Eフロントエンド回路513、デジタル信号処理器(Rx_DSP)514を備える。デジタル信号処理器511は、入力データからシンボル列を生成する。E/Oフロントエンド回路512は、デジタル信号処理器511により生成されるシンボル列から変調光信号を生成する。この変調光信号は、光伝送路を介して通信装置520へ伝送される。
【0015】
通信装置520は、O/Eフロントエンド回路521、デジタル信号処理器(Rx_DSP)522、デジタル信号処理器(Tx_DSP)523、E/Oフロントエンド回路524を備える。O/Eフロントエンド回路521は、通信装置510から受信する変調光信号を電気信号に変換する。デジタル信号処理器522は、O/Eフロントエンド回路521から出力される電気信号からデータを再生する。
【0016】
光伝送システム500は、誤り訂正符号を利用して信号の誤りを訂正する。よって、デジタル信号処理器511は、送信信号に対して誤り訂正符号を付加するFECエンコーダを含む。また、デジタル信号処理器522は、誤り訂正符号を使用して受信信号の誤りを訂正するFECデコーダを含む。
【0017】
なお、O/Eフロントエンド回路513およびデジタル信号処理器514の機能は、O/Eフロントエンド回路521およびデジタル信号処理器522と実質的に同じなので、説明を省略する。同様に、デジタル信号処理器523およびE/Oフロントエンド回路524の機能は、デジタル信号処理器511およびE/Oフロントエンド回路512と実質的に同じなので、説明を省略する。
【0018】
図2は、光伝送システムにおいて使用される通信装置の一例を示す。
図2に示す通信装置600は、
図1に示す光伝送システム500では、通信装置510または通信装置520として使用され得る。そして、通信装置600は、信号処理器(DSP_LSI)610およびフロントエンド回路620を備える。
【0019】
信号処理器610は、送信信号処理部(Tx_DSP)611、D/Aコンバータ(DAC)612、A/Dコンバータ(ADC)613、受信信号処理部(Rx_DSP)614を備える。送信信号処理部611は、入力データからシンボル列を生成する。この例では、通信装置600は、偏波多重変調光信号を伝送する。よって、送信信号処理部611は、入力データからシンボル列Xおよびシンボル列Yを生成する。各シンボル列は、I成分信号およびQ成分信号で表される。すなわち、送信信号処理部611は、シンボル列Xを表す信号XI、XQ、およびシンボル列Yを表す信号YI、YQを生成する。D/Aコンバータ612は、送信信号処理部611の出力信号をアナログ信号に変換する。
【0020】
フロントエンド回路620は、E/Oフロントエンド部およびO/Eフロントエンド部を含む。E/Oフロントエンド部は、シンボル列から変調光信号を生成するために、ドライバ621、レーザ光源(LD)622、I/Q光変調器623X、623Y、偏波光合波器(PBC)624を備える。ドライバ621は、信号処理器610から出力されるアナログ信号XI、XQ、YI、YQから駆動信号XI、XQ、YI、YQを生成する。レーザ光源622は、所定の波長の連続光を生成する。I/Q光変調器623Xは、駆動信号XI、XQで連続光を変調して変調光信号Xを生成する。I/Q光変調器623Yは、駆動信号YI、YQで連続光を変調して変調光信号Yを生成する。そして、偏波光合波器624は、変調光信号Xおよび変調光信号Yを合波して偏波多重変調光信号を生成する。
【0021】
O/Eフロントエンド部は、コヒーレント受信により、受信光信号の電界情報を表す電気信号を生成する。したがって、O/Eフロントエンド部は、偏波光分波器(PBS)625、レーザ光源(LD)626、光90度ハイブリッド回路627H、627V、O/Eコンバータ628を備える。偏波光分波器625は、受信光信号を光信号Hおよび光信号Vに分離する。光信号Hおよび光信号Vの偏波は、互いに直交している。レーザ光源626は、局発光を生成する。局発光の波長は、受信光信号のキャリアの波長とほぼ同じである。光90度ハイブリッド回路627Hは、局発光を利用して、光信号Hから光成分HI、HQを生成する。光90度ハイブリッド回路627Vは、局発光を利用して、光信号Vから光成分VI、VQを生成する。O/Eコンバータ628は、光成分HI、HQ、VI、VQをそれぞれ電気信号に変換する。
【0022】
A/Dコンバータ613は、フロントエンド回路620において生成される電気信号HI、HQ、VI、VQをそれぞれデジタル信号に変換する。そして受信信号処理部614は、デジタル信号HI、HQ、VI、VQからデータを再生する。
【0023】
図3は、信号処理器(DSP_LSI)の機能を示すブロック図である。信号処理器100は、フレーマ1、FECエンコーダ2、送信信号処理部3、受信信号処理部11、FECデコーダ15、フレーマ16を備える。送信信号処理部3は、シンボルマッパ3および予等化器(TxEQ)4を含む。また、受信信号処理部11は、固定等化器(FEQ)12、適応等化器(AEQ)13、シンボルデマッパ14を含む。なお、
図3に示す信号処理器100は、
図2に示す信号処理器610に対応する。ただし、
図3においては、D/Aコンバータ612およびA/Dコンバータ613などは省略されている。
【0024】
フレーマ1は、入力データから所定長のフレームを生成する。FECエンコーダ2は、各フレームに誤り訂正符号を付加することにより符号語を生成する。なお、以下の記載では、誤り訂正符号を「パリティビット」または単に「パリティ」と呼ぶことがある。シンボルマッパ4は、指定された変調方式に従って、FECエンコーダ2の出力信号(すなわち、誤り訂正符号が付加されたビット列)をマッピングする。例えば、変調方式が16QAMであるときは、シンボルマッパ4は、4ビットのデータから1つのシンボルを生成する。このとき、生成されるシンボルは、4ビットのデータの値に対応する位相および振幅を表す。予等化器5は、光伝送路の特性に基づいて、シンボルマッパ4の出力信号に対して予等化を行う。
【0025】
固定等化器12および適応等化器13は、光伝送路において発生する分散などを補償するように、受信信号を等化する。シンボルデマッパ14は、変調方式に従って、シンボル毎に、等化された受信信号からビット列を再生する。FECデコーダ15は、誤り訂正符号合を利用して、符号語ごとに、シンボルデマッパ14の出力信号の誤りを検出して訂正する。フレーマ16は、ネットワーク内で伝送されるフレームをクライアント回線で伝送されるフレームに変換する。
【0026】
上記構成の信号処理器100において、FECデコーダ15の演算量は、他の回路要素と比較して多くなる。このため、信号処理器100を構成するLSIにおいて、FECデコーダ15のために使用される回路面積は大きい。特に、高い誤り訂正能力が要求される場合、または伝送容量が大きい場合には、LSI全体に対してFECデコーダ15が占有する面積の比率がかなり高くなる。
【0027】
図4〜
図5は、FECデコーダの構成例を示す。以下の記載では、光伝送システムの最大伝送容量が400Gbpsであるものとする、例えば、光伝送システムは、200Gbpsの信号および400Gbpsの信号を伝送するものとする。よって、信号処理器100は、200Gbpsの信号および400Gbpsの信号の双方を処理できることが要求される。なお、FECデコーダ15と比較して、FECエンコーダ2の回路規模は小さい。したがって、以下では、FECエンコーダ2の説明は省略する。
【0028】
図4に示す構成例1においては、FECデコーダ15は、400G高性能FECデコーダ15aにより実現される。「400G」は、200Gbps/400Gbpsの信号を処理できることを意味する。よって、構成例1のFECデコーダ15は、大容量(即ち、400Gbps)の信号を処理できる。「高性能」は、誤り訂正能力が高いことを意味する。よって、構成例1のFECデコーダ15は、伝送距離が長い光伝送システムにも適用可能である。ただし、構成例1においては、FECデコーダ15の回路規模が大きくなってしまう。
【0029】
図4に示す構成例1のFECデコーダの回路規模を削減するために、
図5に示す構成例2のFECデコーダ15は、200G高性能FECデコーダ15bおよび400G低性能FECデコーダ15cにより実現される。「200G」は、200Gbpsの信号を処理できるが、400Gbpsの信号を処理できないことを意味する。また、「低性能」は、「高性能」よりも誤り訂正能力が低いことを意味する。そして、構成例2においては、受信信号の伝送容量が200Gbpsであるときは、200G高性能FECデコーダ15bにより誤り訂正が行われる。よって、受信信号の容量が200Gbpsであるときは、構成例2のFECデコータ15は、伝送距離が長い光伝送システムにも適用可能である。一方、受信信号の伝送容量が400Gbpsであるときは、400G低性能FECデコーダ15cにより誤り訂正が行われる。このため、伝送信号の容量が400Gbpsであるときは、伝送距離が長い通信に構成例2のFECデコーダ15を適用することは困難である。
【0030】
図6〜
図7は、構成例2のFECデコーダの動作の一例を示す。なお、
図6〜
図7に係わる記載においては、説明を簡単にするために、FEC回路は以下の条件の下で動作するものとする。
【0031】
符号語ブロックの長さは40000ビットである。すなわち、FEC回路は、入力ビット列を40000ビット毎に分割して処理する。FEC回路が処理するデータ量(スループット)は、伝送容量を指定する動作モードに応じて変化する。例えば、200Gbpsで信号を伝送する200Gモードにおいては、FEC回路は、単位時間ごとに40000ビットを処理する。すなわち、200Gモードにおいては、FEC回路は、単位時間ごとに1つの符号語ブロックを処理する。一方、400Gbpsで信号を伝送する400Gモードにおいては、FEC回路は、単位時間ごとに80000ビットを処理する。すなわち、400Gモードにおいては、FEC回路は、単位時間ごとに2つの符号語ブロックを処理する。このケースでは、単位時間は200n秒である。
【0032】
信号処理器100が200Gモードで動作するときは、
図6に示すように、入力ビット列は200G高性能FECデコーダ15bにより処理される。この場合、FECデコーダ15は、単位時間ごとに、1つの符号語を処理する。
【0033】
信号処理器100が400Gモードで動作するときは、
図7に示すように、入力ビット列は400G低性能FECデコーダ15cにより処理される。この場合、FECデコーダ15は、単位時間ごとに、2つの符号語を処理する。
【0034】
図8は、高性能FECおよび低性能FECの特性の一例を示す。特性Aは、高性能FECを使用するデータ伝送における最大伝送距離を示す。特性Bは、低性能FECを使用するデータ伝送における最大伝送距離を示す。なお、最大伝送距離は、伝送容量に対してプロットされている。
【0035】
FEC回路が構成例1で実現されるときは、伝送容量100Gbps〜400Gbpsに対して特性Aが得られる。即ち、構成例1によれば、長距離伝送が実現される。FEC回路が構成例2で実現されるときは、伝送容量100Gbps〜200Gbpsに対して特性Aが得られるが、伝送容量200Gbps〜400Gbpsに対しては特性Bが得られる。即ち、構成例2によれば、伝送容量が大きいときは、最大伝送距離が短くなる。
【0036】
<実施形態>
図9は、本発明の実施形態に係わる信号処理器の一例を示す。実施形態の信号処理器20が備えるFECデコーダ15は、200G高性能FECデコーダ31および200G低性能FECデコーダ32により実現される。200G高性能FECデコーダ31は、
図5に示す200G高性能FECデコーダ15bと実質的に同じである。また、200G低性能FECデコーダ32の誤り訂正能力は、
図5に示す400G低性能FECデコーダ15cと実質的に同じである。ただし、200G低性能FECデコーダ32の回路規模は、
図5に示す400G低性能FECデコーダ15cの約半分である。すなわち、
図5に示す構成例2と比較して、実施形態の信号処理器20においては、FEC処理のために占有される面積が破線で囲まれる領域の分だけ削減される。
【0037】
このように、本発明の実施形態に係わるFEC回路は、誤り訂正能力の異なる複数のFECデコーダを備える。よって、以下の記載では、本発明の実施形態に係わるFEC回路の構成を「混合FEC構成」と呼ぶことがある。また、本発明の実施形態に係わるFEC方式を「混合FEC方式」と呼ぶことがある。
【0038】
図10〜
図11は、実施形態のFECデコーダの動作の一例を示す。なお、
図6〜
図7に示す例と同様に、
図10〜
図11に係わる記載においては、FEC回路は以下の条件の下で動作するものとする。符号語ブロックの長さは40000ビットである。すなわち、FEC回路は、入力ビット列を40000ビット毎に分割して処理する。FEC回路が処理するデータ量(スループット)は、伝送容量を指定する動作モードに応じて変化する。例えば、200Gbpsで信号を伝送する200Gモードにおいては、FEC回路は、単位時間ごとに1つの符号語ブロックを処理する。一方、400Gbpsで信号を伝送する400Gモードにおいては、FEC回路は、単位時間ごとに2つの符号語ブロックを処理する。このケースでは、単位時間は200n秒である。
【0039】
信号処理器20が200Gモードで動作するときは、
図10に示すように、入力ビット列は200G高性能FECデコーダ31により処理される。この場合、FECデコーダ15は、単位時間ごとに、1つの符号語を処理する。
【0040】
信号処理器20が400Gモードで動作するときは、
図11に示すように、入力ビット列は200G高性能FECデコーダ31および200G低性能FECデコーダ32により並列に処理される。一例としては、200G高性能FECデコーダ31および200G低性能FECデコーダ32は、それぞれ、40000ビットの入力信号を処理する。この場合、FECデコーダ15は、単位時間ごとに、2つの符号語を処理する。
【0041】
図12(a)は、実施形態に係わるFECエンコーダの構成の一例を示す。FECエンコーダ2は、200G高性能FECエンコーダ41、200G低性能FECエンコーダ42、FEC制御部43、合成器44を備える。200G高性能FECエンコーダ41は、第1の方式で誤り訂正符号化を行う。200G低性能FECエンコーダ42は、第1の方式よりも訂正能力の低い第2の方式で誤り訂正符号化を行う。誤り訂正符号化は、各符号語ブロックに対して誤り訂正符号(以下、パリティビット)を付加することにより実現される。この場合、200G高性能FECエンコーダ41により付加されるパリティビットの長さは、200G低性能FECエンコーダ42により付加されるパリティビットよりも長い。
【0042】
FEC制御部43は、モード制御情報により指定される動作モードに応じて、200G高性能FECエンコーダ41および200G低性能FECエンコーダ42を制御する。具体的には、伝送信号の容量が所定の閾値以下であるとき(例えば、信号処理器20が200Gモードで動作するとき)は、FEC制御部43は、入力ビット列の符号化を200G高性能FECエンコーダ41に実行させる。このとき、FEC制御部43は、入力ビット列を所定の長さごとに区切って200G高性能FECエンコーダ41に与えるようにしてもよい。一方、伝送信号の容量が上述の閾値を越えるとき(例えば、信号処理器20が400Gモードで動作するとき)は、FEC制御部43は、入力ビット列の符号化を200G高性能FECエンコーダ41および200G低性能FECエンコーダ42に並列に実行させる。このとき、FEC制御部43は、入力ビット列を所定の長さごとに区切って交互に200G高性能FECエンコーダ41および200G低性能FECエンコーダ42に与えるようにしてもよい。合成器44は、信号処理器20が400Gモードで動作するときに、200G高性能FECエンコーダ41の出力信号および200G低性能FECエンコーダ42の出力信号を合成する。
【0043】
図12(b)は、実施形態に係わるFECデコーダの構成の一例を示す。FECデコーダ15は、200G高性能FECデコーダ31、200G低性能FECデコーダ32、FEC制御部33、合成器34を備える。200G高性能FECデコーダ31は、第1の方式で誤り訂正を行う。200G低性能FECデコーダ32は、第2に方式で誤り訂正を行う。すなわち、200G高性能FECデコーダ31は、200G高性能FECエンコーダ41により符号化された信号の誤りを検出して訂正し、200G低性能FECデコーダ32は、200G低性能FECエンコーダ42により符号化された信号の誤りを検出して訂正する。
【0044】
FEC制御部33は、モード制御情報により指定される動作モードに応じて、200G高性能FECデコーダ31および200G低性能FECデコーダ32を制御する。なお、送信局のFECエンコーダおよび受信局のFECデコーダにおいて同じモード制御情報が使用される。そして、伝送信号の容量が所定の閾値以下であるとき(例えば、信号処理器20が200Gモードで動作するとき)は、FEC制御部33は、入力ビット列に対する誤り訂正処理を200G高性能FECデコーダ31に実行させる。このとき、FEC制御部33は、送信局の200G高性能FECエンコーダ41により生成された符号語を200G高性能FECデコーダ31に与える。一方、伝送信号の容量が上述の閾値を越えるとき(例えば、信号処理器20が400Gモードで動作するとき)は、FEC制御部33は、入力ビット列に対する誤り訂正処理を200G高性能FECデコーダ31および200G低性能FECデコーダ32に並列に実行させる。このとき、FEC制御部33は、送信局の200G高性能FECエンコーダ41および200G低性能FECエンコーダ42により生成された符号語を、それぞれ、200G高性能FECデコーダ31および200G低性能FECデコーダ32に与える。合成器34は、信号処理器20が400Gモードで動作するときに、200G高性能FECデコーダ31の出力信号および200G低性能FECデコーダ32の出力信号を合成する。
【0045】
このように、混合FEC方式においては、伝送容量が200Gbps以下であるときは、高性能FEC(誤り訂正能力の高いFEC)を使用して誤り訂正が実行される。よって、伝送容量が200Gbps以下であるときは、
図8に示す特性Aが得られる。これに対して、伝送容量が200Gbpsを越えるときは、高性能FECだけでなく、低性能FEC(誤り訂正能力の低いFEC)も使用して誤り訂正が実行される。よって、伝送容量が200Gbpsを越えるときは、
図8に示す特性Bとほぼ同じ特性が得られる。ただし、後で詳しく説明するが、実施形態の信号処理器20は、混合FEC方式の信号の品質を改善する機能を備えている。
【0046】
図13は、FECデコーダの回路面積の比較を示す。ここでは、説明を簡単にするために、以下の条件の下で、
図4に示す構成例1、
図5に示す構成例2、
図9に示す混合FEC構成を比較する。回路面積は、伝送容量に比例する。また、100Gbps当たりの高性能FECデコーダの回路面積が「3」であり、100Gbps当たりの低性能FECデコーダの回路面積が「1」である。
【0047】
この場合、構成例1のFECデコーダ15は、400G高性能FECデコーダ15aにより実現されるので、回路面積は「3×4=12」である。構成例2のFECデコーダ15は、200G高性能FECデコーダ15bおよび400G低性能FECデコーダ15cにより実現されるので、回路面積は「3×2+1×4=10」である。混合FEC構成のFECデコーダ15は、200G高性能FECデコーダ31および200G低性能FECデコーダ32により実現されるので、回路面積は「3×2+1×2=8」である。すなわち、構成例1と比較すると、実施形態の混合FEC構成によれば、FECデコーダの回路面積が約33パーセント削減される。また、構成例2と比較すると、実施形態の混合FEC構成によれば、FECデコーダの回路面積が約20パーセント削減される。
【0048】
このように、混合FEC構成によれば、構成例1および構成例2と比較して、FECデコーダの回路規模が削減される。特に、構成例1と比較すると、混合FEC構成のFECデコーダの回路規模は大幅に削減される。ところが、混合FEC構成においては、構成例1と比較したケースだけでなく、構成例2と比較した場合であっても、信号品質が劣化することがある。以下、混合FEC構成による信号品質の劣化について簡単に説明する。
【0049】
図14は、混合FEC構成による信号品質の劣化について説明する図である。
図14において、「低性能FEC」は、
図5に示す400G低性能FECデコーダ15cに対応する。また、「混合EFC」は、
図9に示す200G高性能FECデコーダ31および200G低性能FECデコーダ32の組合せに対応する。なお、この例では、高性能FECにおいては、40000ビットの入力ビット列に対して10200ビットのパリティが付加されるものとする。すなわち、ペイロードに対して25.5パーセントの誤り訂正符号が付加される。また、低性能FECにおいては、40000ビットの入力ビット列に対して8200ビットのパリティが付加されるものとする。すなわち、ペイロードに対して20.5パーセントの誤り訂正符号が付加される。また、単位時間(ここでは、200n秒)ごとに2個の符号語が伝送される。さらに、通信装置間でDP−16QAM光信号が伝送されるものとする。DP−16QAMにおいては、1シンボル時間に8ビットのデータが伝送される。なお、ペイロードに対してパリティを付加する誤り訂正方式においては、ペイロードに付加されるパリティが長さほど、誤り訂正能力は高くなる。
【0050】
上述の条件が適用される場合、低性能FEC方式においては、単位時間ごとに48200ビットの符号語が2つ伝送される。したがって、パリティを含むビット列の伝送レートは482Gbpsであり、シンボルレートは60.25Gbaudである。一方、混合FEC方式においては、単位時間ごとに48200ビットの符号語および50200ビットの符号語が1つずつ伝送される。よって、パリティを含むビット列の伝送レートは492Gbpsであり、シンボルレートは61.5Gbaudである。すなわち、低性能FEC方式と比較して、混合FEC方式のシンボルレートは高くなる。ここで、シンボルレートが高くなると、ビット誤りが発生しやすくなる。この結果、低性能FEC方式と比較して、混合FEC方式の受信信号の品質は劣化している。一例として、受信局における訂正前の受信信号の品質の低性能FEC方式と混合FEC方式との間の差分(すなわち、劣化量)は、下式で計算される。
【0051】
劣化量=10×log(61.5/60.25)=0.1dB
【0052】
混合FEC方式で受信信号の誤りが訂正されるときは、高性能FECで処理された符号語の品質は、低性能FECで処理された符号語の品質よりも高くなる。
図14に示す例では、低性能FEC方式と高性能FEC方式との差分は0.5dBである。ところが、例えば、最大伝送距離を評価する場合、信号品質は、最も低い品質で評価される。したがって、混合FEC方式の信号品質は、低性能FEC方式よりも低くなってしまう。
図14に示す例では、低性能FEC方式と比較して、混合FEC方式の信号品質は0.1dBだけ低くなっている。
【0053】
本発明の実施形態の信号処理器は、この問題を解決する機能を備える。以下、この問題を解決するための第1〜第6の実施形態について説明する。
【0054】
図15は、第1〜第6の実施形態の信号処理器の構成の一例を示す。第1〜第6の実施形態の信号処理器20は、フレーマ1、FECエンコーダ2、送信信号処理部3、受信信号処理部11、FECデコーダ15、フレーマ16、モード制御回路51を備える。フレーマ1、FECエンコーダ2、送信信号処理部3、受信信号処理部11、FECデコーダ15、フレーマ16は、
図9および
図15において実質的に同じである。なお、
図15においては省略されているが、FECエンコーダ2は、
図12(a)に示すFEC制御部43および合成器44を含み、FECデコーダ15は、
図12(b)に示すFEC制御部33および合成器34を含む。
【0055】
モード制御回路51は、不図示のネットワーク管理システムから与えられるモード指示に従って、FECエンコーダ2、送信信号処理部3、受信信号処理部11、FECデコーダ15を制御する。モード指示は、伝送容量を指定する情報を含む。さらに、モード指示は、FEC方式を指定する情報、変調方式を指定する情報などを含んでいてもよい。
【0056】
例えば、FECエンコーダ2は、モード制御回路51から与えられるモード制御情報に基づいて、起動すべきFECエンコーダ(41、42)を決定する。送信信号処理部3のなかに設けられるシンボルマッパ4は、モード制御情報に基づいてマッピング処理を制御する。受信信号処理部11のなかに設けられているシンボルデマッパ14は、モード制御情報に基づいてデマッピング処理を制御する。FECデコーダ15は、モード制御情報に基づいて、起動すべきFECデンコーダ(31、32)を決定する。
【0057】
なお、ネットワーク管理システムにより生成されるモード指示は、送信局および受信局に与えられる。例えば、
図1に示す光伝送システム500においては、通信装置510が備える信号処理器20および通信装置520が備える信号処理器20にそれぞれモード指示が与えられる。また、モード指示は、クライアントから与えられるようにしてもよい。この場合、送信局および受信局それぞれにおいて、ユーザがモード指示を生成して信号処理器20に与えるようにしてもよい。
【0058】
<第1の実施形態>
図16は、第1の実施形態の動作の一例を示す。
図16に示す実施例では、単位時間ごとに80000ビットのデータが伝送される。したがって、高性能FEC方式および低性能FEC方式によりそれぞれ40000ビットでデータが伝送される。なお、40000ビットのデータは、例えば、フレームのペイロードに格納されて伝送される。
【0059】
高性能FEC方式は、40000ビットのデータに対してパリティP1を付加して符号語Aを生成する。低性能FEC方式は、40000ビットのデータに対してパリティP2を付加して符号語Bを生成する。パリティP1のビット数は、パリティP2よりも多い。この実施例では、パリティP1のビット数は10200ビットであり、パリティP2のビット数は8200ビットである。
【0060】
送信局において、FECエンコーダ2は、高性能FEC方式で生成された符号語AにおいてパリティP1のビット数を削減する。すなわち、パリティP1に対してパンクチャリングが行われる。このパンクチャリングは、例えば、
図12(a)に示す合成器44により実行される。また、パンクチャリングにより削減されるビット数は、例えば、パリティP1のビット数とパリティP2のビット数との差分ΔPである。この場合、パリティP1から2000ビットが削減される。そして、送信局は、符号語Bおよびパンクチャリングが行われた符合語Aから変調光信号を生成して受信局へ送信する。なお、ここでは説明の簡単のためパリティP1に対してΔPビットを削減すると記載したが、誤り訂正符号の性質上、ペイロードとパリティを合わせた符号語の任意のビットからΔPビットを削減してもよい。
【0061】
受信局においては、FECデコーダ15は、200G高性能FECデコーダ31を用いて符号語Aを処理し、200G低性能FECデコーダ32を用いて符号語Bを処理する。ただし、200G高性能FECデコーダ31は、10200ビットのパリティを利用して誤り訂正を実行する構成である。したがって、FECデコーダ15は、受信した符号語Aにダミーパリティビットを付加する。ダミーパリティビットのビット数は、送信局においてパンクチャリングにより削減されたビット数と同じである。すなわち、この例では、2000ビットのダミーパリティビットが符号語Aに付加される。なお、ダミーパリティビットの付加は、例えば、
図12(b)に示すFEC制御33により行われる。
【0062】
このように、第1の実施形態では、高性能FEC方式により生成される符号語においてパリティビットの一部を削除することにより、送信局と受信局との間のシンボルレートが低下する。この結果、受信局における受信信号の品質が改善する。すなわち、パンクチャリングを行うことにより、受信局における訂正前の信号の品質が改善する。
【0063】
図17は、第1の実施形態による効果を示す。なお、
図17において、「単純な混合FEC」は、
図12に示す構成において第1の実施形態のパンクチャリングを行わないケースに相当する。
【0064】
単純な混合FECと比較すると、第1の実施形態では、送信局と受信局との間のシンボルレートが低くなる。このため、単純な混合FECと比較して、第1の実施形態においては、受信局が受信する信号の品質(即ち、受信局における訂正前の信号の品質)が高くなる。ここで、低性能FECのネット符号化利得(NCG:Net Coding Gain)は、単純な混合FECおよび第1の実施形態において実質的に同じである。したがって、低性能FECによる誤り訂正が行われた後の信号を比較すると、単純な混合FECよりも第1の実施形態の方が信号品質が高くなる。
【0065】
なお、第1の実施形態では、高性能FECのパリティビットの一部が削除されるので、高性能FECによるネット符合化利得が小さくなる。しかしながら、
図16を参照しながら説明したように、パンクチャリングされた後の高性能FECのパリティのビット数は、低性能FECのパリティと同じである。よって、第1の実施形態において、高性能FECによる訂正後の信号品質は、低性能FECによる訂正後の信号品質より低くなることはない。このように、第1の実施形態のFEC方式においては、高性能FECの符号化利得の一部を低性能FECに割り当てることで、最低信号品質が改善する。この結果、最大伝送距離が長くなる。
【0066】
<第2の実施形態>
図18は、第2の実施形態の動作の一例を示す。
図18に示す実施例では、高性能FEC方式および低性能FEC方式によりそれぞれ符号語Aおよび符号語Bが伝送される。また、符号語Aおよび符号語Bは、同じ変調方式で伝送されるものとする、
図18に示す例では、符号語Aおよび符号語Bは、16QAMで変調される。16QAMは、1つのシンボルで4ビットを伝送する。
【0067】
単純な混合FEC方式では、
図18(a)に示すように、高性能FEC方式で生成される符号語Aおよび低性能FEC方式で生成される符号語Bは、同じパワーで送信される。すなわち、符号語Aの中のシンボルAを構成する4ビットの値と、符号語Bの中のシンボルBを構成する4ビットの値とが同じであるときは、シンボルAの送信パワーおよびシンボルBの送信パワーは互いに同じである。以下の記載では、単純な混合FEC方式おいて実行されるシンボルマッピングを「中間パワーマッピング(中マッピング)」と呼ぶことがある。
【0068】
第2の実施形態では、
図18(b)に示すように、高性能FEC方式で生成される符号語Aの送信パワーと、低性能FEC方式で生成される符号語Bの送信パワーとは、互いに異なっている。具体的には、高性能FEC方式で生成される符号語Aの送信パワーは、低性能FEC方式で生成される符号語Bの送信パワーよりも低く設定される。各シンボルの送信パワーは、
図15に示すシンボルマッパ4によって指定される。なお、以下の記載では、高性能FECに対して実行されるシンボルマッピングを「小パワーマッピング(小マッピング)」と呼び、低性能FECに対して実行されるシンボルマッピングを「大パワーマッピング(大マッピング)」と呼ぶことがある。
【0069】
図19は、第2の実施形態で使用されるシンボルマッパ4の一例を示す。この実施例では、シンボルマッパ4は、マージ部61、マッピング回路62、小パワーマッピングテーブル63、中パワーマッピングテーブル64、大パワーマッピングテーブル65、タイミング制御回路66、選択回路67を備える。マージ部61は、FECエンコーダ2により生成される符号語Aおよび符号語Bをマージする。この例では、マージ部61は、高性能FEC方式で生成される符号語Aおよび低性能FEC方式で生成される符号語Bが交互に出力されるように、FECエンコーダ2により生成される符号語をマージする。なお、パリティP1のビット数はパリティP2よりも多いので、符号語Aのビット長は符号語Bよりも長い。マッピング回路62は、マッピングテーブル63〜65を利用して、入力ビット列をシンボルにマッピングする。小パワーマッピングテーブル63は、小パワーマッピングを行うためのマッピング情報を格納する。中パワーマッピングテーブル64は、中パワーマッピングを行うためのマッピング情報を格納する。大パワーマッピングテーブル65は、大パワーマッピングを行うためのマッピング情報を格納する。
【0070】
図20は、マッピングテーブルの実施例を示す。
図20(a)は、小パワーマッピングのためのマッピング情報を格納する小パワーマッピングテーブル63の一例を示す。
図20(b)は、中パワーマッピングのためのマッピング情報を格納する中パワーマッピングテーブル64の一例を示す。
図20(c)は、大パワーマッピングのためのマッピング情報を格納する大パワーマッピングテーブル65の一例を示す。この実施例では、変調方式は16QAMである。よって、各マッピングテーブル63〜65には、4ビットのデータに対してI成分値およびQ成分値のペアを表すマッピング情報が格納されている。
【0071】
タイミング制御回路66は、動作モードおよび入力符号語のタイプに応じて選択回路67に対して選択タイミング指示を与える。選択回路67は、タイミング制御回路66から与えられる選択タイミング指示に従って、マッピングテーブル63〜65を選択する。
【0072】
たとえば、200Gモードにおいては、選択回路67は、中パワーマッピングテーブル64を選択する。この場合、マッピング回路62は、4ビット毎に
図12(b)に示す中パワーマッピングテーブル64を参照し、対応するシンボルのI成分値およびQ成分値を決定する。400Gモードにおいては、選択回路67は、選択タイミング指示に従って、小パワーマッピングテーブル63および大パワーマッピングテーブル65を交互に選択する。すなわち、高性能FEC方式により生成される符号語Aに対しては、マッピング回路62は、4ビット毎に
図12(a)に示す小パワーマッピングテーブル63を参照して、対応するシンボルのI成分値およびQ成分値を決定する。また、低性能FEC方式により生成される符号語Bに対しては、マッピング回路62は、4ビット毎に
図12(c)に示す大パワーマッピングテーブル65を参照して、対応するシンボルのI成分値およびQ成分値を決定する。
【0073】
図21は、第2の実施形態による効果を示す。なお、
図21において、「単純な混合FEC」は、すべての符号語に対して中パワーマッピングが行われるケースに相当する。
【0074】
単純な混合FEC方式で符号化が行われるときは、高性能FEC方式で生成される符号語および低性能FEC方式で生成される符号語は、同じパワーでマッピングされる。したがって、高性能FECを使用して訂正された信号の品質は、低性能FECを使用して訂正された信号の品質よりも高くなる。この例では、高性能FECの符号化利得と低性能FECの符号化利得との差分は0.5dBである。そうすると、
図21に示すように、高性能FECを使用して訂正された信号の品質と低性能FECを使用して訂正された信号の品質との差分ΔQは0.5dBである。
【0075】
第2の実施形態においては、高性能FEC方式で生成される符号語は小さいパワーで送信され、低性能FEC方式で生成される符号語は大きいパワーで送信される。このとき、第2の実施形態の平均送信パワーは、単純な混合FEC方式が実行されるケースの平均送信パワーとほぼ同じになることが好ましい。例えば、高性能FEC方式で生成される符号語は、単純な混合FEC方式と比較して、差分ΔQの半分(すなわち、0.25dB)だけ小さいパワーで送信されるようにマッッピングされる。一方、低性能FEC方式で生成される符号語は、単純な混合FEC方式と比較して、差分ΔQの半分(すなわち、0.25dB)だけ大きいパワーで送信されるようにマッッピングされる。そうすると、高性能FECで訂正された信号の品質および低性能FECで訂正された信号の品質は、実質的に同じになる。具体的には、
図21に示すように、単純な混合FEC方式中の低性能FECで訂正された信号の品質と比較して、第2の実施形態のFECで訂正された信号の品質は0.25dBだけ高くなる。
【0076】
なお、すべてのデータ信号が低性能FECで訂正される場合(すなわち、
図7に示す構成例2の動作)は、
図14を参照しながら説明したように、単純な混合FEC方式と比較して、訂正前の信号の品質が0.1dBだけ高くなる。したがって、第2の実施形態により訂正された信号の品質は、
図7に示す構成例2の動作と比較して、0.15dBだけ改善することになる。
【0077】
このように、第2の実施形態では、高性能FECが付加される信号の送信パワーを小さくすると共に、低性能FECが付加される信号の送信パワーを大きくすることで、訂正後の最低品質が改善される。すなわち、第2の実施形態のFEC方式においても、高性能FECの符号化利得の一部を低性能FECに割り当てることで、最低信号品質が改善する。この結果、最大伝送距離が長くなる。
【0078】
<第3の実施形態>
図22は、第3の実施形態の動作の一例を示す。
図22に示す実施例では、入力ビット列は、40000ビット毎に分割されて符号化される。高性能FECエンコーダ41は、40000ビットのペイロードに10200ビットのパリティP1を付加して符号語Aを生成する。低性能FECエンコーダ42は、40000ビットのペイロードに8200ビットのパリティP2を付加して符号語Bを生成する。
【0079】
ここで、符号語Aおよび符号語Bがすべて16QAMで伝送されるものとする。この場合、各シンボルは、4ビットを伝送する。よって、符号語Aは12550個のシンボルで伝送され、符号語Bは12050個のシンボルで伝送される。
【0080】
第3の実施形態では、高性能FEC方式で生成される符号語Aを伝送するために必要なシンボル数と低性能FEC方式で生成される符号語Bを伝送するために必要なシンボル数とが同じになるように、高性能FEC方式で生成される符号語Aを伝送するために必要なシンボル数が削減される。具体的には、符号語Aが12050個のシンボルで伝送されるように、符号語Aの変調方式が制御される。
【0081】
上述の動作を実現するために、シンボルマッパ4は、低性能FEC方式で生成される符号語Bを第1の変調方式(ここでは、16QAM)でマッピングを行うと共に、高性能FEC方式で生成される符号語Aの少なくとも一部を、第1の変調方式よりも多値度の高い第2の変調方式(例えば、64QAM)でマッピングを行う。具体的には、50200ビットの符号語Aのうち、44200ビットが16QAMシンボルにマッピングされ、残りの6000ビットが64QAMシンボルにマッピングされる。この結果、高性能FEC方式で生成される符号語Aおよび低性能FEC方式で生成される符号語Bは、いずれも12050個のシンボルで伝送される。なお、受信局において、シンボルデマッパ14は、送信局のシンボルマッパ4のマッピングに応じて、デマッピング処理を制御する。
【0082】
このように、第3の実施形態によれば、送信局と受信局との間で伝送される信号のシンボルレートは、すべてのデータ信号が低性能FEC方式で符号化されるケースと同じである。すなわち、単純な混合FEC方式と比較して、第3の実施形態のFEC方式では、平均シンボルレートが低下する。したがって、
図14を参照しながら説明した問題は解決され、最大伝送距離が長くなる。
【0083】
<第3の実施形態の変形例1>
図22に示す実施例では、符号語Aおよび符合語Bがそれぞれ50200ビット、48200ビットの長さを持ち、変調方式として16QAMおよび64QAMが適用される。しかし、高性能FEC方式/低性能FEC方式の符号語長、または変調方式の選択によっては、第3の実施形態をそのまま適用することができない場合がある。
【0084】
例えば、シンボルマッパ4が、低性能FEC方式で生成される符号語Bを第1の変調方式(ここでは、16QAM)でマッピングを行うと共に、高性能FEC方式で生成される符号語Aの少なくとも一部を、第1の変調方式よりも多値度の高い第2の変調方式(例えば、128QAM)でマッピングを行う動作を考える。ところが、16QAMシンボルと128QAMシンボルとの組み合わせでは、高性能FEC方式で生成される符号語Aを、きっかり24100個のシンボルで伝送するためのシンボル数の組み合わせが存在しない。例えば、11384個の16QAMシンボルと666個の128QAMシンボルとを組み合わせると、合計ビット数は50198となり、11383個の16QAMシンボルと667個の128QAMシンボルとを組み合わせると、合計ビット数は50201となる。すなわち、合計シンボル数が24100個かつ合計ビット数が50200となる組み合わせが存在しない。
【0085】
この問題に対処するため、符合語Aまたは符合語B(ここでは、符合語A)に対して余剰ビットが追加される。例えば、50200ビットの符号語Aに対して1ビットの余剰ビットを追加して50201ビットの符合語を生成する。この符合語のうち、45532ビットを11383個の16QAMシンボルにマッピングし、残りの4669ビットを667個の128QAMシンボルにマッピングする。この結果、高性能FEC方式で生成される符号語Aおよび低性能FEC方式で生成される符号語Bは、いずれも12050個のシンボルで伝送される。なお、受信局において、シンボルデマッパ14は、送信局のシンボルマッパ4のマッピングに応じて、デマッピング処理を制御するが、その際、送信側で追加した余剰ビットを削除する。
【0086】
このように、第3の実施形態の変形例1によれば、送信局と受信局との間で伝送される信号のシンボルレートは、すべてのデータ信号が低性能FEC方式で符号化されるケースと同じである。すなわち、単純な混合FEC方式と比較して、第3の実施形態の変形例1のFEC方式では、平均シンボルレートが低下する。したがって、
図14を参照しながら説明した問題は解決され、最大伝送距離が長くなる。
【0087】
<第3の実施形態の変形例2>
第3の実施形態の変形例1の動作は、他の方法で実現することも可能である。即ち、第3の実施形態の変形例2によれば、符合語Aまたは符合語B(ここでは、符合語A)において一部のビットを削除する。すなわち、符号語Aに対してパンクチャリングが行なわれる。
【0088】
第3の実施形態の変形例2に基づく実施例では、50200ビットの符号語Aの一部のビットが削除される。以下の記載では、符合語Aから2ビットが削除される。即ち、パンクチャリングにより50198ビットの符合語が生成される。そして、50198ビットのうち、45536ビットが11384個の16QAMシンボルにマッピングされ、残りの4662ビットが666個の128QAMシンボルにマッピングされる。この結果、高性能FEC方式で生成される符号語Aおよび低性能FEC方式で生成される符号語Bは、いずれも12050個のシンボルで伝送される。なお、受信局において、シンボルデマッパ14は、送信局のシンボルマッパ4のマッピングに応じて、デマッピング処理を制御する。その際、送信側で削除したビットの位置に、ダミービットが付加される。
【0089】
このように、第3の実施形態の変形例2によれば、送信局と受信局との間で伝送される信号のシンボルレートは、すべてのデータ信号が低性能FEC方式で符号化されるケースと同じである。すなわち、単純な混合FEC方式と比較して、第3の実施形態の変形例2のFEC方式では、平均シンボルレートが低下する。したがって、
図14を参照しながら説明した問題は解決され、最大伝送距離が長くなる。
【0090】
なお、第3の実施形態の変形例1および変形例2は、同じ問題に対して類似の解決策を提供するものであるが、いずれの性能が優れるかは状況に依存し一概に結論付けることができない。たとえば、変形例1は、変形例2と比較して、多値度の高いシンボルをより大きな比率で送信することになるため、FEC訂正を行なう前のビット誤り率に関してはわずかに劣る。その一方で、変形例1は、変形例2と異なり、パンクチャリングを行なわないため、FEC訂正性能はわずかに優れることになる。したがって、総合的な性能の優劣は、使用する変調方式の組み合わせや伝送路特性といった要因により決定されることになる。
【0091】
<第4の実施形態>
図23は、第4の実施形態の動作の一例を示す。
図23に示す実施例では、高性能FECエンコーダ41は、単位時間毎に、40000ビットのペイロードに10200ビットのパリティを付加することで符号語Aを生成する。高性能FECエンコーダ42は、単位時間毎に、40000ビットのペイロードに8200ビットのパリティを付加することで符号語Bを生成する。単位時間は、この例では200n秒である。また、データ信号は、DP−16QAMで伝送されるものとする。
【0092】
ここで、高性能FEC方式で生成される符合語Aおよび低性能FEC方式で生成される符号語Bが同じシンボルレートで伝送されるケースを想定する。以下の記載では、この方式を「シンボルレート一定方式」と呼ぶことがある。
【0093】
シンボルレート一定方式においては、上述の条件の下では、
図23に示すように、符号語Aのシンボル列および符号語Bのシンボル列は、いずれも61.5Gbaudで伝送される。この場合、高性能FEC方式で処理される信号と比較して、低性能FEC方式で処理される信号の方が品質が低くなる。すなわち、光伝送システムの最低品質は、低性能FEC方式で処理される信号の品質で決まることになる。
【0094】
そこで、第4の実施形態では、送信信号処理部3は、シンボルレート一定方式と比較して、高性能FEC方式で生成される符合語Aのシンボルレートを高くすると共に、低性能FEC方式で生成される符合語Bのシンボルレートを高くする。好ましくは、送信信号処理部3は、シンボルレート一定方式の平均シンボルレートが維持されるように、高性能FEC方式で生成される符合語AのシンボルレートをΔRだけ高くし、低性能FEC方式で生成される符合語BのシンボルレートをΔRだけ低くする。
図23に示す例では、符号語Aのシンボル列は62.75Gbaudで伝送され、符号語Bのシンボル列は60.25Gbaudで伝送される。シンボルレートの変化量ΔRは、高性能FECおよび低性能FECのネット符号化利得の差分に基づいて決定してもよい。なお、受信局において、受信信号処理部11は、符号語Aを表すシンボル列を受信する期間と、符号語Bを表すシンボル列を受信する期間とで、信号処理の速度を切り替えるようにしてもよい。
【0095】
このように、第4の実施形態では、高性能FECおよび低性能FECのネット符号化利得の差分がシンボルレートに変換されて低性能FECに割り当てられる。したがって、低性能FEC方式で処理される信号の品質が改善され、光伝送システムの最低品質が改善する。
【0096】
<第5の実施形態>
図24は、第5の実施形態の動作の一例を示す。第5の実施形態では、1つのシンボルに対して、高性能FEC方式により生成される符号語中のビットおよび低性能FEC方式により生成される符号語中のビットのペアが割り当てられる。
【0097】
図24に示す実施例では、データ信号は16QAMで伝送される。16QAMにおいては、1つのシンボルにより4ビットが伝送される。したがって、送信信号処理部3は、高性能FEC方式により生成される符号語Aから2つのビット(以下、ビットa、b)を抽出し、低性能FEC方式により生成される符号語Bから2つのビット(以下、ビットc、d)を抽出する。そして、送信信号処理部3は、ビット列abcdの値に基づいてシンボルの電界情報を決定する。
【0098】
高性能FEC方式により処理される信号と比較して、低性能FEC方式により処理される信号においては、訂正後においてビット誤りが残りやすい。ここで、受信局においてデマッピングにより受信シンボルからデータを再生する際、各信号点を識別するよりも、コンスタレーションの象限を識別する方が、誤りが起りにくい。したがって、低性能FEC方式により生成される符号語Bから抽出されるビットcdは、コンスタレーションの象限を識別するために使用される。例えば、ビットcdの値が「00」であれば、第1象限が選択される。一方、高性能FEC方式により生成される符号語Aから抽出されるビットabは、選択された象限内の信号点を識別するために使用される。例えば、ビット列abcdが「0100」であれば、「cd=00」に基づいて第1象限が選択され、「ab=01」に基づいて、第1象限内で信号点Cが選択される。なお、受信局において、シンボルデマッパ14は、送信局のシンボルマッパ4のマッピングに応じて、デマッピング処理を制御する。
【0099】
このように、第5の実施形態では、低性能FEC方式で生成される信号の識別誤りが起こりにくくなるように、高性能FEC方式で生成される信号および低性能FEC方式で生成される信号から得られるビット列が1つのシンボルにマッピングされる。この結果、低性能FEC方式で処理される信号の品質が改善され、光伝送システムの最低品質が改善する。
【0100】
なお、高性能FEC方式で生成される符号語のビット数は、低性能FEC方式で生成される符号語のビット数よりも多い。このため、第5の実施形態のシンボルマッピングが実行される場合、高性能FEC方式で生成される符号語のビット列の一部がマッピングされずに残ってしまう。例えば、200G高性能FECデコーダ31がペイロードに10200ビットのパリティを付加し、200G低性能FECデコーダ32がペイロードに8200ビットのパリティを付加するケースでは、200G高性能FECデコーダ31により生成される各符号語中の2000ビットが残ることになる。したがって、この場合、FECエンコーダ2または送信信号処理部3は、200G高性能FECデコーダ31により生成される符号語のビット数と200G低性能FECデコーダ32により生成される符号語のビット数とが互いに同じになるように、200G低性能FECデコーダ32により生成される符号語にダミービット(例えば、パディング)を付加してもよい。或いは、残余ビットを通常の変調方式で伝送してもよい。例えば、残余ビットを4ビット毎に区切り、各4ビット信号を16QAMシンボルにマッピングしてもよい。
【0101】
<第6の実施形態>
図25は、第6の実施形態の動作の一例を示す。第6の実施形態に係わる光伝送システムにおいては、データは、周波数の異なる複数のサブキャリアを使用して伝送される。複数のサブキャリアは、例えば、1つの波長を利用して伝送される。
【0102】
各サブキャリアの特性は、既知であるものとする。例えば、送信局から受信局へサブキャリア毎にプローブ信号を送信することにより、各サブキャリアの特性が測定される。あるいは、シミュレーションにより各サブキャリアの特性を計算してもよい。なお、
図25に示す実施例では、サブキャリア0、3の特性が悪く、サブキャリア1、2の特性が良好であるものとする。
【0103】
送信局の送信信号処理部3は、
図25に示すように、サブキャリアマッパ71およびサブキャリア変調部72を備える。サブキャリアマッパ71は、シンボルマッパ4により生成されるシンボル列を対応するサブキャリアに割り当てる。具体的には、サブキャリアマッパ71は、高性能FEC方式の符号を含むシンボル列を特性の悪いサブキャリア0、3に割り当て、低性能FEC方式の符号を含むシンボル列を特性の良好なサブキャリア1、2に割り当てる。サブキャリア変調部72は、サブキャリアマッパ71により割り当てられるシンボル列に基づいて各サブキャリアを変調する。サブキャリア変調部72は、
図3に示す予等化器(Tx_EQ)4で実現してもよい。
【0104】
複数のサブキャリア変調信号を合成することによりマルチキャリア信号が生成される。フロントエンド回路は、このマルチキャリア信号でキャリア光を変調して出力する。尚、受信局において、受信信号処理部11は、送信局のサブキャリアマッパ71に対応するサブキャリアデマッパを備える。
【0105】
このように、第6の実施形態では、低性能FEC方式の符号を含むシンボルが特性の良好なサブキャリアに割り当てられる。したがって、低性能FEC方式で処理される信号の品質が改善され、光伝送システムの最低品質が改善する。
【0106】
図26は、FECデコーダの面積および信号品質の比較を示す。ここでは、
図4に示す構成例1、
図5に示す構成例2、単純な混合FEC構成、第1〜第4の実施形態が比較されている。「単純な混合FEC」は、
図9に示す構成において、第1〜第6の実施形態の処理を行わないケースを表す。ただし、「単純な混合FEC」も本発明の実施形態の1つである。送信局と受信局との間で伝送されるデータのビットレートは400Gbpsである。このデータ信号は、DP−16QAMで伝送される。
【0107】
本発明の実施形態によれば、構成例1または構成例2と比較して、FECデコーダの回路規模が削減される。特に、構成例1と比較すると、実施形態のFECデコーダの回路規模は大幅に削減される。
【0108】
単純な混合FEC方式の誤り訂正後の信号の品質は、構成例2よりも低くなることがある。ただし、第1〜第4の実施形態の処理を行う場合、誤り訂正後の信号の品質は、構成例2より悪くなることはない。すなわち、構成例2と比較すると、第1〜第4の実施形態によれば、信号の品質を劣化させることなくFECデコーダの回路規模を小さくできる。
【0109】
図27は、他の実施形態の動作の一例を示す。なお、
図27において、「高」は高性能FECエンコーダの出力信号がマッピングされたシンボルを表し、「低」は低性能FECエンコーダの出力信号がマッピングされたシンボルを表す。
【0110】
本発明の実施形態に係わる光伝送システムでは、伝送容量が大きいときは、高性能FEC方式で生成される符号語(高性能FEC符号語)および低性能FEC方式で生成される符号語(低性能FEC符号語)が伝送される。ここで、光伝送システムは、
図27(a)に示すように、高性能FEC符号語および低性能FEC符号語を交互に伝送してもよい。
【0111】
これに対して、他の実施形態では、光伝送システムは、
図27(b)に示すように、高性能FECエンコーダの出力信号がマッピングされたシンボルおよび低性能FECエンコーダの出力信号がマッピングされたシンボルを1シンボルずつ交互に伝送してもよい。この方式によれば、第2〜第3の実施形態において信号品質のさらなる改善が期待される。