(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、設計意図に沿った破壊挙動を示す衝撃吸収体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、中空部を有する中空成形体からなる衝撃吸収体であって、荷重が入力される荷重入力面と、前記荷重入力面と離間されて対向する対向面と、前記荷重入力面及び前記対向面を連結する連結面と、を備え、前記連結面には、前記対向面が前記荷重入力面に向けて凹まされて形成された第1及び第2対向面溝リブと、前記荷重入力面が前記対向面に向けて凹まされて形成された第1及び第2荷重入力面溝リブが設けられ、第1対向面溝リブと第1荷重入力面溝リブの互いの先端部が溶着された第1溶着部と、第2対向面溝リブと第2荷重入力面溝リブの互いの先端部が溶着された第2溶着部が設けられ、前記第2溶着部の最薄部の厚さは、前記第1溶着部の最薄部の厚さよりも薄い、衝撃吸収体が提供される。
【0006】
本発明に係る衝撃吸収体は、2つの溝リブに設けられる溶着部の厚さを異ならせるように構成している。これにより、衝撃吸収体に荷重が入力された際に、薄い方の溶着部が先に破壊され、かかる箇所は「くの字」変形することにより衝撃を吸収する。そして、厚い方の溶着部を備える溝リブが「じゃばら」変形により衝撃を吸収することにより、好適に搭乗員を保護することが可能となる。換言すると、薄い方の溶着部は溝リブの破壊を誘発するためのものであり、厚い方の溶着部は剛性を向上させるためのものである。かかる構成により、「くの字」変形と「じゃばら」変形を共存させ、設計意図に沿った破壊挙動を示す衝撃吸収体を提供することが可能となる。なお、「くの字」変形及び「じゃばら」変形については後述する。
【0007】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記第1及び第2溶着部は、前記連結面に含まれる同一平面に設けられる。
好ましくは、前記第1対向面溝リブ及び前記第1荷重入力面溝リブの深さが、前記第2対向面溝リブ及び前記第2荷重入力面溝リブの深さよりも深い。
好ましくは、前記第2溶着部の最薄部の厚さに対する前記第1溶着部の最薄部の厚さの比の値が1.5以上である。
好ましくは、前記中空形成体は、パーティングラインを有するブロー成形体であり、前記第1及び第2溶着部は、前記パーティングライン上に形成される。
好ましくは、前記対向面又は前記荷重入力面にリブが形成されており、前記第1対向面溝リブ又は前記第1荷重入力面溝リブが、前記リブと連通する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る衝撃吸収体1の右側面2m側から見た前方斜視図である。
【
図2】本発明に係る衝撃吸収体1の背面斜視図であり、(a)は右側面2m側から見た背面斜視図、(b)は左側面2l側から見た背面斜視図である。
【
図3】(a)は本発明に係る衝撃吸収体1の背面図であり、(b)は(a)の破線で示される領域Xの拡大図である。
【
図4】(a)は本発明に係る衝撃吸収体1の前面図、(b)は右側面図である。
【
図5】本発明に係る衝撃吸収体1の種々の方向における端面図であり、(a)は
図4(a)のA−A線切断部端面図、(b)は
図4(a)のB−B線切断部端面図、(c)は
図4(b)のC−C線切断部端面図である。
【
図6】「じゃばら」変形及び「くの字」変形を説明するための概念図であり、(a)は変形前、(b)は「じゃばら」変形、(c)は「くの字」変形中における
図4(b)の領域Yの模式図、(d)は変形前、(e)は「じゃばら」変形、(f)は「くの字」変形中における
図4(b)の領域Yにおける第2溶着部9を通過する図面の鉛直方向における切断部端面図の模式図である。
【
図7】荷重Fの入力により荷重入力面に対する底部BPの角度θが変化する様子を表すための、
図5(b)の領域Zの拡大模式図であり、(a)は荷重Fの入力前、(b)は荷重Fの入力中の様子を示す図である。
【
図8】本発明に係る衝撃吸収体1の変形例における領域Xの拡大図(
図3参照)であり、(a)は変形例1、(b)は変形例2について示す図である。
【
図9】本発明に係る衝撃吸収体1の変形例における領域Xの拡大図(
図3参照)であり、変形例3について示す図である。
【
図10】「じゃばら」変形と「くの字」変形の共存を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
図1〜
図7を用いて、一実施形態に係る衝撃吸収体1について説明する。衝撃吸収体1は、搭乗員の腰付近からの荷重Fの入力によって変形し、腰付近への衝撃を吸収する中空形成体からなる。中空形成体は中空部を有し、例えばブロー成形により形成されるブロー成形体である。
【0011】
<衝撃吸収体1の構成>
本実施形態に係る衝撃吸収体1は、荷重が入力される荷重入力面と、荷重入力面と離間されて対向する対向面と、荷重入力面及び対向面を連結する連結面と、を備える。具体的には、
図1に示されるように、衝撃吸収体1は、互いに離間されて対向する前面2f及び背面2rと、前面2f及び背面2rを繋ぎ且つ互いに対向する右側面2m及び左側面2lを備える。右側面2mは、車両等の屋内側を向く面であり、事故などの際に搭乗員が激突する面である。また、前面2f及び背面2rを繋ぎ且つ互いに対向する上面2u及び底面2bを備える。そして、前面2f、上面2u、背面2r及び底面2bを通ってパーティングラインPLが形成される。ここで、本実施形態では、車両の衝突時において搭乗員が衝撃吸収体1に激突した場合を想定しており、右側面2mが荷重入力面に相当する。また、左側面2lが対向面に相当する。また、前面2f及び背面2r並びに上面2u及び底面2bが連結面に相当する。そして、本実施形態では、衝撃吸収体1を車両構成部材に取り付けるための取付部13が3つ設けられる。なお、本明細書においては、上下・左右・前後は、右側面2mを右、左側面2lを左とした場合における視点で表記する。
【0012】
図1に示されるように、衝撃吸収体1は、右側面2m及び前面2fに跨るように凹陥リブ10が形成される。本実施形態では、2つの凹陥リブ10が互いに略並行に延びるように形成されている。なお、凹陥リブ10は溝リブの一形態である。
図1及び
図5に示されるように、凹陥リブ10は、凹陥リブ10が延びる方向に沿って設けられた底部BPと、底部BPと荷重入力面(右側面2m)が接する部分における荷重入力面(右側面2m)の延長線ELと、の間の角度が10〜85度となるように設けられる。また、凹陥リブ10は、衝撃吸収体1の前面2fに形成されたパーティングラインPLまで到達しないように構成される。
【0013】
図2に示されるように、衝撃吸収体1は、背面2rに第1右溝リブ5m及び第1左溝リブ5l、第2右溝リブ6m及び第2左溝リブ6l、第3右溝リブ7m及び第3左溝リブ7lを有する。ここで、各構成要素の末尾のmは、右側面2mが左側面2lに向けて凹まされて形成された溝リブであることを示す。また、各構成要素の末尾のlは、左側面2lが右側面2mに向けて凹まされて形成された溝リブであることを示す。以下の説明における他の構成要素の末尾のm及びlについても同様である。以下、第1右溝リブ5m及び第1左溝リブ5lをまとめて第1溝リブ5、第2右溝リブ6m及び第2左溝リブ6lをまとめて第2溝リブ6、第3右溝リブ7m及び第3左溝リブ7lをまとめて第3溝リブ7という。そして、
図3(b)に示されるように、第1右溝リブ5mと第1左溝リブ5lの先端部の少なくとも一部を溶着させた第1溶着部8が形成される。また、第2右溝リブ6mと第2左溝リブ6lの先端部の少なくとも一部を溶着させた第2溶着部9が形成される。本実施形態では、第1溶着部8及び第2溶着部9は、連結面に含まれる同一平面(背面2r)に設けられる。ここで、
図2及び
図3に示されるように、第1溶着部8及び第2溶着部9は、パーティングラインPL上に形成される。なお、本実施形態では、第1左溝リブ5l及び第2左溝リブ6lが「対向面が荷重入力面に向けて凹まされて形成された第1及び第2対向面溝リブ」に相当し、第1右溝リブ5m及び第2右溝リブ6mが「荷重入力面が対向面に向けて凹まされて形成された第1及び第2荷重入力面溝リブ」に相当する。
【0014】
さらに、
図1及び
図2に示されるように、衝撃吸収体1は、右側面2mに右丸リブ4mが1つ、斜め溝リブ11が2つ設けられる。一方、左側面2lに左丸リブ4lが1つ、斜め溝リブ11が3つ設けられる。そして、上面2uに半月リブ12が1つ、底面2bに半月リブ12が2つ設けられる。本実施形態では、第1右溝リブ5mが右側面2mに形成された右丸リブ4mと連通している。これらのリブの形成箇所、形状、大きさ、向き及び個数は任意であり、所望の特性に応じて適宜形成される。
【0015】
<第1溶着部8及び第2溶着部9>
次に、
図3を用いて第1溶着部8及び第2溶着部9について説明する。
図3(a)は本発明に係る衝撃吸収体1の背面図であり、
図3(b)は
図3(a)の破線で示される領域Xの拡大図である。
【0016】
図3(b)に示されるように、第1右溝リブ5mと第1左溝リブ5lの先端部の少なくとも一部を溶着させた第1溶着部8が形成される。また、第2右溝リブ6mと第2左溝リブ6lの先端部の少なくとも一部を溶着させた第2溶着部9が形成される。第1溶着部8は、リブ5m,5lの幅方向の中央部8aにおいて肉厚が最小となり、中央から離れるにつれて肉厚が大きくなっている。一方、第2溶着部9は、リブ6m,6lの幅方向の全体において略一定の厚さであるが、第2溶着部9にはリブ6m,6lの深さ方向に延びる薄肉部9aが設けられている。このため、本実施形態では、リブ5m,5lの幅方向の中央部8aが第1溶着部8の最薄部であり、薄肉部9aが第2溶着部9の最薄部となっている。第2溶着部9の最薄部(薄肉部9a)の厚さd1(図示せず)は、第1溶着部8の最薄部(中央部8a)の厚さDより薄くなっている。また、第2溶着部9の、薄肉部9a以外の部分の厚さdも第1溶着部8の最薄部(中央部8a)の厚さDより薄くなっている。荷重Fが荷重入力面(右側面2m)に入力されると、薄肉部9aが破壊されて、衝撃吸収体1の「くの字」変形が誘起される。
【0017】
厚さdに対する厚さDの比の値は、例えば1.5以上である。好ましくは、かかる比の値が1.7以上である。さらに好ましくは、かかる比の値が2以上である。かかる比の値は具体的には、1.5、1.55、1.6、1.65、1.7、1.75、1.8、1.85、1.9、1.95、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は10より大きい値であってもよい。
【0018】
また、厚さDは、例えば1mm〜10mmである。好ましくは、1.5mm〜8mmである。さらに好ましくは、2mm〜5mmである。かかる厚さDは具体的には、1.5、1.55、1.6、1.65、1.7、1.75、1.8、1.85、1.9、1.95、2、2.05、2.1、2.15、2.2、2.25、2.3、2.35、2.4、2.45、2.5、2.55、2.6、2.65、2.7、2.75、2.8、2.85、2.9、2.95、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は10より大きい値であってもよい。
【0019】
また、厚さdは、例えば0.1mm〜6mmである。好ましくは、0.3〜5mmである。さらに好ましくは、0.5〜3mmである。かかる厚さdは具体的には、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は6より大きい値であってもよい。また、薄肉部9aの厚さd1は、例えば0.01mm〜3mmである。好ましくは、0.03〜2mmである。さらに好ましくは、0.05〜1mmである。かる厚さは具体的には、0.01、0.015、0.02、0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、0.06、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.7、0.8、0.85、0.9、0.95、1、1.5、2、2.5、3mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は3より大きい値であってもよい。
【0020】
第2右溝リブ6の平面視における幅及び深さは、例えば1mm〜20mmである。好ましくは、1.5mm〜15mmである。さらに好ましくは、2mm〜10mmである。かかる幅及び深さは、具体的には、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は20より大きい値であってもよい。
【0021】
また、本実施形態では、第1溝リブ5の深さ(中空形成体の内部へ向かう深さ)が、第2溝リブ6の深さよりも深くなっている。第2溝リブ6の深さに対する第1溝リブ5の深さの比の値は、例えば、1.01以上である。好ましくは、1.03以上である。さらに好ましくは、1.05以上である。かかる比の値は、具体的には、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は2より大きい値であってもよい。このように構成することにより、第1溝リブ5の剛性が向上し、衝撃を好適に吸収することが可能となる。
【0022】
さらに、
図2に示されるように、第1右溝リブ5mが右側面2mに形成された右丸リブ4mと連通している。かかる構成により、第1右溝リブ5mの剛性をさらに向上させることが可能となる。なお、第1右溝リブ5mに代えて、第1左溝リブ5lが左側面2lに形成された左丸リブ4lと連通するように構成してもよい。また、第1右溝リブ5mが右丸リブ4mと連通し、第1左溝リブ5lが左丸リブ4lと連通するように構成してもよい。
【0023】
このように構成することにより、荷重入力面である右側面2mに荷重Fが入力された際に、第1溝リブ5よりも先に第2溝リブ6の第2溶着部9(及び薄肉部9a)が破壊され、「くの字」変形することにより衝撃を吸収することが可能となる。さらに、第2溶着部9(及び薄肉部9a)が破壊された後においても、第1溝リブ5の第1溶着部8が破壊されるまでは、第1溝リブ5が「じゃばら」変形することにより荷重Fを好適に吸収することが可能となる。ここで、「じゃばら」変形及び「くの字」変形について説明する。
【0024】
図6は、「じゃばら」変形及び「くの字」変形を説明するための概念図である。ここで、
図6(a)〜
図6(c)は、
図4(b)の領域Yの模式図であり、荷重Fは図面の手前から奥方向に向けて入力される。また、
図6(e)〜
図6(g)は
図4(b)の領域Yにおける第2溶着部9を通過する図面の鉛直方向における切断部端面図の模式図であり、荷重Fは図面の下方向に入力される。
【0025】
図6(a)及び(e)に示すように、右側面2mに荷重Fが入力されると、(b)及び(f)に示されるように、衝撃吸収体1は「じゃばら」状に変形し、荷重Fを吸収する。その後、さらに荷重Fが入力され、第2溶着部9の一部を構成する薄肉部9aが破壊されると、薄肉部9a周辺は
図6(g)において「くの字」型に変形し、第2溶着部9の残りの部分は「じゃばら」変形する。換言すると、薄肉部9aが破壊されることによる「くの字」変形と、第2溶着部9の残りの部分による「じゃばら」変形が共存することにより、適切に荷重Fを吸収することができる。ここで、説明の都合上、第2溶着部9周辺における「くの字」変形及び「じゃばら」変形の共存について説明したが、これに限定されない。第2溝リブ6の第2溶着部9が破壊されると、第2溶着部9周辺において「くの字」変形が生じ、第1溝リブ5の第1溶着部8が破壊されるまでは第1溶着部8周辺で「じゃばら」変形が生じる。かかる状態を模式的に示したのが
図10である。ここで、ベクトルB1は、「じゃばら」変形のみが続いた場合における「変位」と「荷重F」の関係を表し、ベクトルB2は「くの字」変形のみが生じる場合における「変位」と「荷重F」の関係を表す。本実施形態では、第2溶着部9に起因する「くの字」変形と第1溶着部8に起因する「じゃばら」変形が共存することにより、ベクトルB1及びB2を合成した向きに荷重Fが略一定とすることができる。そして、第1溶着部8及び第2溶着部9が破壊されると、荷重Fが増大する。なお、荷重Fの吸収率は、「じゃばら」変形よりも「くの字」変形の方が大きい。
【0026】
したがって、荷重入力面(右側面2m)に荷重Fが入力されると、第2溶着部9(及び薄肉部9a)が破壊されるまでは第2溝リブ6が「じゃばら」変形し、第2溶着部9(及び薄肉部9a)が破壊されてからは第2溝リブ6が「くの字」変形することで、好適に荷重Fを吸収することができる。加えて、第2溝リブ6の第2溶着部9(及び薄肉部9a)が破壊された後においても、第1溶着部8が破壊されるまでは第1溝リブ5が「じゃばら」変形することにより、さらに好適に荷重Fを吸収することができる。
【0027】
以上説明したように、破壊を誘発するための第2溶着部9を有する第2溝リブ6と、剛性を向上させるための第1溶着部8を有する第1溝リブ5を隣接して配置することにより、設計意図に沿った破壊挙動を示す衝撃吸収体1を提供することが可能となる。つまり、本実施形態に係る衝撃吸収体1は、第2溶着部9に起因する「くの字」変形と第1溶着部8に起因する「じゃばら」変形を組み合わせることにより、荷重を好適に吸収することが可能となる。なお、本実施形態において説明した衝撃吸収体1の形状及び大きさは単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。例えば、第1溶着部8よりも第2溶着部9の方が厚くなるように形成してもよい。また、第2溝リブ6に第2溶着部9を形成し、第1溝リブ5及び第3溝リブ7に第2溶着部9よりも薄い溶着部を形成してもよい。
【0028】
<凹陥リブ10>
次に、
図4及び
図5を用いて、凹陥リブ10について説明する。
図4(a)に示されるように、本実施形態では、前面2f及び右側面2mに跨って2つの凹陥リブ10が互いに略並行に延びるように設けられる。凹陥リブ10は、荷重Fに対する剛性を弱める働きをするものである。これは、荷重入力面である右側面2mの剛性が大きすぎると、右側面2mに衝突した搭乗員の体への負担が大きくなるので、適度に右側面2mを変形させることにより搭乗員の体を保護するためである。
【0029】
図4及び
図5に示されるように、凹陥リブ10は、凹陥リブ10が延びる方向に沿って設けられた底部BPを通過する端面において、底部BPと、底部BPと荷重入力面(右側面2m)が接する部分における荷重入力面(右側面2m)の延長線ELと、の間の角度が10〜85度となるように設けられる。ここで、
図5(a)は
図4(a)のA−A線切断部端面図であり、
図5(b)は
図4(a)のB−B線切断部端面図であり、
図5(c)は
図4(b)のC−C線切断部端面図である。なお、
図4(a)のB−B線切断部端面図が凹陥リブ10が延びる方向に沿って設けられた底部BPを通過する端面に相当する。延長線ELと底部BPの間の角度θは、例えば10°〜80°である。好ましくは、20°〜70°である。さらに好ましくは、30°〜60°である。かかる角度θは、具体的には、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80°であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本実施形態では、かかる角度θは45°である。
【0030】
また、凹陥リブ10は、衝撃吸収体1の前面2fに形成されたパーティングラインPLまで到達しないように構成される。これは、パーティングラインPLは剛性が高いので、凹陥リブ10がパーティングラインPLまで到達すると、後述の凹陥リブ10の変形が生じづらくなり、右側面2mの剛性を弱めるという目的に反することになるためである。
【0031】
また、
図4、
図5(a)及び
図5(c)に示されるように、凹陥リブ10は、凹陥リブ10の縁から底部BPに向けて幅が狭まるように構成される。また、凹陥リブ10は、その長さ方向の端に向かって、凹陥リブ10の縁における幅が狭くなるように構成される。また、凹陥リブ10は、凹陥リブ10が延びる方向に垂直な断面が略V字状である。
図5(a)に示されるように、凹陥リブ10は、A−A線切断部端面図において断面が略V字状となっている。また、
図5(c)に示されるように、凹陥リブ10は、C−C線切断部端面図において断面が略V字状となっている。そして、2つの凹陥リブ10が互いに略並行に延びるように設けられる。このような構成により、
図7に示されるように、荷重入力面(右側面2m)に荷重Fが入力されると、底部BPを軸として凹陥リブ10が折れ曲がるように変形しつつ延長線ELに対する底部BPの角度θが減少する向きに変形することが可能となり、右側面2mの剛性が弱められる。さらに、2つの凹陥リブ10を互いに並行に延びるように設けることにより、一方の凹陥リブ10の変形と他方の凹陥リブ10の変形が互いに干渉し、さらに右側面2mの剛性を弱めることが可能となる。
【0032】
そして、凹陥リブ10は、衝撃吸収体1のうちの剛性が大きい箇所に設けられる。具体的には、
図4(a)に示されるように、パーティングラインPLと、前面2f及び右側面2mが形成する稜線RLと、の距離が小さい箇所に設けられる。例えば、パーティングラインPLと稜線RLとの距離のうち最大の距離となるL1よりも、下側の凹陥リブ10とパーティングラインPLの距離L2の方が小さくなるように凹陥リブ10が設けられる。また、L1と比べて、上側の凹陥リブ10とパーティングラインPLの距離L3の方が小さくなるように凹陥リブ10が設けられる。これは、パーティングラインPLからの距離が小さいほどブロー比が小さく、パーティングラインPLからの距離が大きいほどブロー比が大きいので、パーティングラインPLからの距離が小さい箇所の方が、パーティングラインPLからの距離が大きい箇所と比べて中空形成体の肉厚が厚くなり、剛性が大きくなるためである。したがって、このような剛性が大きい箇所に凹陥リブ10を設けることにより、荷重Fに対する剛性を弱めることが可能となる。
【0033】
ここで、L1に対するL2の比の値及びL1に対するL3の比の値は、例えば、0.95より小さい値である。好ましくは、0.9より小さい値である。さらに好ましくは、0.85より小さい値である。かかる比の値は、具体的には、0.95、0.94、0.93、0.92、0.91、0.9、0.89、0.88、0.87、0.86、0.85、0.84、0.83、0.82、0.81、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は0.1未満であってもよい。
【0034】
また、L1に対応する箇所におけるブロー比(中空形成体のうちの最大のブロー比)に対する凹陥リブ10が設けられる箇所におけるブロー比の比の値は、例えば、0.95より小さい値である。好ましくは、0.9より小さい値である。さらに好ましくは、0.85より小さい値である。かかる比の値は、具体的には、0.95、0.94、0.93、0.92、0.91、0.9、0.89、0.88、0.87、0.86、0.85、0.84、0.83、0.82、0.81、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は0.1未満であってもよい。
【0035】
<変形例>
次に、本発明に係る衝撃吸収体1の種々の変形例について、
図8及び
図9を用いて説明する。
図8及び
図9は、本発明に係る衝撃吸収体1の変形例における領域Xの拡大図(
図3参照)であり、
図8(a)は変形例1、
図8(b)は変形例2、
図9は変形例3について示す図である。なお、
図3における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
<変形例1:スリット>
第2溶着部9に薄肉部9aを設けることなく、第2溶着部9に幅Gのスリット9bを設けてもよい。スリット9bは、例えば、第2溶着部9の一部をカットすることによって形成することができる。スリット9bは厚さが0であるので、第2溶着部9にスリット9bを設けた場合は、第2溶着部9の最薄部の厚さが0となる。本変形例では、スリット9bが広がることによって、衝撃吸収体1の「くの字」変形が誘起される。
【0037】
<変形例2:薄肉部なし>
第2溶着部9に薄肉部9aを設けることなく、第2溶着部9を略均一の厚さとしてもよい。この場合、第2溶着部9の厚さdが第2溶着部9の最薄部の厚さとなる。本変形例では、第2溶着部9が破壊されることによって、衝撃吸収体1の「くの字」変形が誘起される。
【0038】
<変形例3:D<d>
本実施形態では、第2溶着部9の、薄肉部9a以外の部分の厚さdが第1溶着部8の最薄部(中央部8a)の厚さDより厚くなっている。一方、第2溶着部9の最薄部(薄肉部9a)の厚さd1(図示せず)は、第1溶着部8の最薄部(中央部8a)の厚さDより薄くなっている。このため、本実施形態では、薄肉部9aが破壊されることによって、衝撃吸収体1の「くの字」変形が誘起される。
【0039】
以上、本発明に係る衝撃吸収体1について説明したが、本発明はこれらに限定されない。例えば、第1溝リブ5、第2溝リブ6、第3溝リブ7を前面2fに設けてもよい。また、第1溝リブ5を背面2r又は前面2fに、第2溝リブ6を上面2u又は下面2bに設けてもよい。また、第1溝リブ5を上面2u又は下面2bに、第2溝リブ6を背面2r又は前面2f上に設けてもよい。また、第1溝リブ5、第2溝リブ6、第3溝リブ7、右丸リブ4m、左丸リブ4l、斜め溝リブ11及び半月リブ12の形状、大きさ、数等は任意であり、適宜設計することが可能である。また、凹陥リブ10の数を1、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれ以上の個数とすることができる。また、前面2fと背面2r、右側面2mと左側面2l、上面2uと底面2bは互いに対向する構成としたが、互いに並行である必要はない。例えば、対向する面同士が略並行であればよい。さらに、これらの面に加えて、面同士を接続する傾斜面を設けてもよい。また、「中空部を有する中空成形体からなる衝撃吸収体であって、荷重が入力される荷重入力面と、前記荷重入力面と離間されて対向する対向面と、前記荷重入力面及び前記対向面を連結する連結面と、を備え、前記連結面には、前記対向面が前記荷重入力面に向けて凹まされて形成された第1及び第2対向面溝リブと、前記荷重入力面が前記対向面に向けて凹まされて形成された第1及び第2荷重入力面溝リブが設けられ、第1対向面溝リブと第1荷重入力面溝リブの互いの先端部が溶着された第1溶着部と、第2対向面溝リブと第2荷重入力面溝リブの互いの先端部が溶着された第2溶着部が設けられ、前記第2溶着部の最薄部の厚さは、前記第1溶着部の最薄部の厚さよりも薄い、衝撃吸収体」と、「中空部を有し且つパーティングラインを有する中空成形体からなる衝撃吸収体であって、荷重が入力される荷重入力面と、前記荷重入力面と離間されて対向する対向面と、前記荷重入力面及び前記対向面を連結する連結面と、を備え、前記連結面にはパーティングラインが形成されており、前記荷重入力面及び前記連結面に跨るように延びる溝状の凹陥リブが設けられ、前記凹陥リブが延びる方向に沿って設けられた底部を通過する端面において、前記底部と、前記底部と前記荷重入力面が接する部分における前記荷重入力面の延長線と、の間の角度が10〜85度となるように前記凹陥リブが設けられ、前記凹陥リブは、前記連結面に設けられた前記パーティングラインまで到達しないように構成される、衝撃吸収体」はそれぞれ独立した発明であり、いずれか一方のみでも独自の効果を奏する。