(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持板部を前記タンク補強部材の外表面にスペーサを介して固定する固定部材を有し、前記遮音板に前記スペーサの外径より大きい内径を有する貫通孔を形成し、前記スペーサの外周側に前記第1弾性部材及び第2弾性部材を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の静止誘導電器。
前記支持部材は弾性部材で構成され、前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材は、スポンジシートで構成されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の静止誘導電器。
前記第1弾性部材及び前記第2弾性部材は、前記遮音板の前記支持部材と接触する外周縁を除く外周縁の外側で連結されていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の静止誘導電器。
前記遮音板の前記支持部材との接触位置に折り曲げ部を形成し、当該折り曲げ部を前記支持部材に接触させたことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の静止誘導電器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
また、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
まず、本発明の一の態様を表す静止誘導電器の一実施形態について説明する。
【0012】
静止誘導電器は、
図1及び
図2に示すように、例えば変圧器・リアクトル等で構成される静止誘導電器本体11と、この静止誘導電器本体11を収納するタンク12と、このタンク12の外側面に装着された遮音板13とで構成されている。
静止誘導電器本体11は、磁心11aに巻線11bを巻き付けた構成を有し、商用交流電源から周波数が50Hz又は60Hzの交流電力が供給される。
【0013】
タンク12は、天板12a、底板12b、前後側面板12c及び左右側面板12dで箱状に形成され、内部に静止誘導電器本体11を収納し、この静止誘導電器本体11の冷却効果や絶縁強度を高めるために、絶縁油やガス等の絶縁媒体が充填されている。
遮音板13は、例えば制振鋼板で形成され、タンク12の前後側面板12c及び左右側面板12dの外表面に装着されている。ここで、遮音板13のタンク12への取り付け構造について前側面板12cを例に取って説明する。
【0014】
前側面板12cには、
図1に示すように、前側面板12cの外表面に長方形の3枚の遮音板13が左右方向に短辺を上端及び下端として装着されている。
これら3枚の遮音板13のそれぞれは、
図2及び
図3に示すように、タンク12の上下端部側に左右方向に延長して配置されたタンク補強部材を兼ねる断面コ字状の遮音板支持部材14A及び14Bと、これら遮音板支持部材14A及び14B間に上下方向に延長して配置されたタンク補強部材を兼ねる断面コ字状の遮音板支持部材14C及び14Dとで構成される長方形枠状支持部14に装着されている。
【0015】
遮音板支持部材14A〜14Dのそれぞれは、軸方向に延長する中央板部14aと、この中央板部14aの長手方向に沿う両側縁直角方向に延長する一対の側板部14b及び14cとから断面コ字状に形成されている。そして、この遮音板支持部材14A〜14Dが一対の側板部14b及び14cの開放端側すなわち中央板部14aとは反対側の端部がタンク12の前側面板12cに溶接等の固定手段で固定され、取り付け面とは反対側の中央板部14aの外側側面に遮音板13が装着されている。
【0016】
すなわち、遮音板13は、その四方の外周縁がそれぞれ上支持部15a及び下支持15bと左支持部15c及び右支持部15dによって支持されている。ここで、支持部15a、15c及び15dは同一構成とされ、下支持部15bのみが支持部15a、15c及び15dとは異なる別構成とされている。
上支持部15a、左支持部15c及び右支持部15dは、上支持部15aを代表として説明する。この上支持部15aは、
図3(a)に拡大図示するように、遮音板支持部材14Aの上端側に固定される固定枠部17と、この固定枠部17の前面を覆って遮音板支持部材14Aの中央板部14aと平行に下方に中央板部14aの下端まで延長する支持板部18と、この支持板部18と中央板部14aとの間で遮音板13の上端縁側の前後側面に接触する第1弾性部材19及び第2弾性部材20とを備えている。
【0017】
ここで、固定枠部17は、所定の厚みを有し、遮音板13の短辺以上の長さを有する例えばステンレス鋼で形成されている。また、支持板部18も例えばステンレス鋼で形成されている。
そして、固定枠部17は、前後表面に帯状のガスケット21a及び21bを介在させ、ガスケット21aの前面側に支持板部18を配置した状態で、左右方向に所定間隔で複数の固定部材としてのボルト22によって中央板部14aに固定されている。
【0018】
第1弾性部材19及び第2弾性部材20は、遮音板13の前後方向の振動を吸収するように縦弾性係数が例えば0.1〜1.0MPaの制振スポンジシートが適用されている。この制振スポンジシートとしては、例えば原料ゴムに有機発泡剤、架橋剤、軟化剤、補強剤を練り込んで発泡処理したEPDM(エチレンプロピレン)系ゴムスポンジ、CR(クロロプレン)系ゴムスポンジなどが適用される。
これら第1弾性部材19及び第2弾性部材20は、遮音板13の表裏に接着するか又は第1弾性部材19を支持板部18の背面側に接着し、第2弾性部材20を中央板部14aの前面側に接着するようにしてもよい。
左支持部15c及び右支持部15dも上記上支持部15aと同様の構成を有する。
【0019】
一方、下支持部15bは、
図3(b)に示すように、基本的な構成は、上支持部15aと同様に固定枠部17、支持板部18、第1弾性部材19、第2弾性部材20、ガスケット21a,21b、ボルト22を備えており、これらが上支持部15aと上下面対象に形成されている。この下支持部15bは、上記構成に加えて固定枠部17の上面に、遮音板13の下端面と接触してその重量を受ける支持部材23が配置されている。この支持部材23は、例えば第1弾性部材19及び第2弾性部材20より縦弾性係数が大きく、各支持部15a〜dの固定枠部17、支持板部18より縦弾性係数が小さいシリコンゴム(縦弾性係数4.0〜40MPa)、樹脂や金属材料等で断面半円形に形成されている。そして、支持部材23は固定枠部17の上面に接着、溶接等の固定手段で固定されている。
【0020】
したがって、遮音板13の周縁部の表面が上支持部15a、下支持部15b及び左支持部15c及び右支持部15dの第1弾性部材19及び第2弾性部材20によって挟持された状態で支持されている。さらに、遮音板13の下端面が下支持部15bの支持部材23の円筒面で受けられている。
このため、静止誘導電器の商用交流電源の周波数fa(50Hz又は60Hz)の2倍の周波数2fa(100Hz又は120Hz)以上の静止誘導電器の振動の主要周波数成分を含んだ帯域の振動が遮音板支持部材14A〜14Dを介して上支持部15a、下支持部15b、左支持部15c及び右支持部15dに伝達されたときに、各支持部15a〜15d内で前後方向の振動が第1弾性部材19及び第2弾性部材20を介して遮音板13に伝達される。
【0021】
これら第1弾性部材19及び第2弾性部材20は縦弾性係数が0.1〜1.0MPaの制振スポンジシートで形成されているので、各支持部15a〜15dから遮音板13に伝達される振動が低減されて十分な騒音低減効果を発揮することができる。
しかも、遮音板13の重量は、下支持部15bの支持部材23で全て受けられ、遮音板13と支持部材23との接触面積は十分に小さいので、この支持部材23を介して遮音板13へ伝達される振動成分を少なくすることができる。
【0022】
なお、支持部材23をローラ状や球状に形成して、振動方向に移動可能とすることにより、この支持部材23を介して遮音板13に伝達される振動をより小さくすることができる。
このように、上記第1の実施形態によると、遮音板13を支持する上支持部15a、下支持部15b、左支持部15c及び左支持部15dを、固定枠部17、支持板部18、第1弾性部材19、第2弾性部材20、ボルト22及び支持部材23を備えるだけの簡単な構成で、遮音板13へ伝達される振動を低減して十分な騒音低減効果を発揮することができる。
【0023】
しかも、遮音板13の重量は第1弾性部材19及び第2弾性部材20に対して縦弾性係数が大きい支持部材23で受けるので、この支持部材23で遮音板13の荷重を確実に受けることができる。このため、第1弾性部材19及び第2弾性部材20の縦弾性係数を十分に小さくすることができ、遮音板13への振動伝達率をより減少させることができる。
なお、図示しないが外側の第1弾性部材19の内周面と遮音板13との接触面とを覆うように、雨水の侵入を防止するようにシール溶剤を塗布して固化させることにより、シール用皮膜を形成することが好ましい。
【0024】
また、上記第1の実施形態では、各支持部15a〜15cを、固定枠部17の外側に支持板部18を配置する場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、
図5に示すように、固定枠部17の内側にも支持板部18と同様の支持板部24を配置するようにしてもよい。この場合には、固定枠部17、支持板部18、第1弾性部材19、第2弾性部材20、ガスケット21a,21b、支持部材23を1つのユニットとして取り扱うことができ、遮音板13の周囲に各支持部15a〜15dを取付けた状態で、ボルト22で遮音板支持部材14A〜14Dに取付けることができ、遮音板13の取付作業を容易に行なうことができる。
【0025】
次に、本発明の第2の実施形態について
図6を参照して説明する。
この第2の実施形態では、遮音板と支持部材との摺動抵抗をより低減させるようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、
図6に示すように、遮音板13の下端面位置で後方に断面L字状に折り曲げた折り曲げ部25を形成し、この折り曲げ部25の下面を支持部材23の先端に接触させるようにしたものである。その他の構成は上述した第1の実施形態と同様の構成を有し、
図3(b)との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
【0026】
この第2の実施形態によると、遮音板13の端面は切断機で切断する際に、切断面が粗い面となるため、支持部材23との接触抵抗が大きくなり、振動伝達率が増加傾向となるが、第2の実施形態のように、遮音板13を折り曲げて折り曲げ部25の平坦な表面を支持部材23に接触させることにより、支持部材23との接触抵抗を低減して支持部材23から遮音板13への振動伝達率を低減してより騒音低減効果を向上させることができる。
【0027】
次に、本発明の第3実施形態の実施形態について
図7を伴って説明する。
この第3の実施形態は、支持部を構成する固定枠部と支持板部とを個別に遮音板支持部材14A〜14Dに固定するようにしたものである。
第3の実施形態では、各支持部15a〜15dの構成が第1及び第2実施形態とは変更されており、下支持部15bを代表として説明する。下支持部15bは、
図7に示すように、遮音板支持部材14Bの幅方向の外側(
図7において下側)に厚みが薄い固定枠部31が固定され、この固定枠部31の内側(
図7において上側)に支持板部32が固定されている。
【0028】
固定枠部31は、厚みが薄く遮音板支持部材14Bに沿って延長する帯板状に形成されている。この固定枠部31の長手方向に沿う一端は遮音板支持部材14Bの中央板部14aの下側に溶接等の固定手段で固定されている。そして、固定枠部31の上面には遮音板13の下端面を受ける支持部材33が形成されている。
支持板部32は、遮音板支持部材14Bの中央板部14aに沿って延長する厚みが固定枠部31と略等しい帯板状に形成されている。この支持板部32は、長手方向に所定間隔で複数の固定部材としてのボルト34によって中央板部14aの幅方向中央部に例えば円筒状のスペーサ35を介して固定されている。支持板部32は中央板部14aの固定状態で、長手方向に沿う下端が固定枠部31の固定側とは反対側の端部に所定隙間を保って対向し、この隙間にシール部材36が配置されている。
【0029】
一方、遮音板13には、スペーサ35に対応する位置にスペーサ35の外径より大きい内径の貫通孔37が形成されている。同様に、遮音板13の周縁部に接触する第1弾性部材38及び第2弾性部材39の遮音板の貫通孔37に対向する位置に同様の貫通孔40及び41が形成されている。
また、上支持部15a、左支持部15c及び右支持部15dでは、支持部材33が省略されていることを除いては下支持部15bと同様の構成を有し、遮音板13にはスペーサ35を接触することなく挿入する貫通孔37が形成されている。
【0030】
そして、遮音板13を遮音板支持部材14Bに装着するには、遮音板13の貫通孔37の周囲の表裏面に第1弾性部材38及び第2弾性部材39の貫通孔40を貫通孔37と同軸上とした状態で接着しておく。この状態で、遮音板13の下端面を固定枠部31の支持部材33上に載置する。次いで、支持板部32に形成した貫通孔32a内にボルト34を挿入し、このボルト34の支持板部32から突出した先端をスペーサ35に挿入した状態で、遮音板13の貫通孔37と第1弾性部材38の貫通孔40及び第2弾性部材39の貫通孔41内にスペーサ35を貫通孔37に触れることなく挿入する。この状態で、ボルト34を中央板部14aに螺合させて支持板部32及びスペーサ35を遮音板支持部材14Bに固定する。
【0031】
他の支持部15a、15c及び15dでも遮音板13の貫通孔37と第1弾性部材38の貫通孔40及び第2弾性部材39の貫通孔41内に、支持板部32の内側にボルト34で保持したスペーサ35を接触しないように挿入してボルト34を中央板部14aに螺合させて固定する。
なお、図示しないが、外側の第1弾性部材38の内周面、支持板部32の内周面及び遮音板13の貫通孔37の周囲を覆うようにシール材を塗布してシール皮膜を形成することが好ましい。
【0032】
この第3の実施形態によると、遮音板13の重量を固定枠部31に形成された支持部材33で受け、遮音板13の振動方向を固定枠部31とは独立した支持板部32及び遮音板支持部材14B間に介在させた第1弾性部材38及び第2弾性部材39で受けることができる。各支持部15a〜15dの支持板部32が直接ボルト34で遮音板支持部材14A〜14Dに確実に固定されるので、十分な騒音低減効果を発揮しながら支持部15a〜15dをより小型化することができる。さらに、上支持部15a、左支持部15c及び右支持部15dでは固定枠部31を省略することができ、より小型化を図ることができる。
【0033】
なお、上記第1〜第3の実施形態において、遮音板13の形状は同じ大きさのものを揃えた方が好ましいが、異なる大きさとすることもでき、また形状も長方形に限定されるものではなく、任意の形状の遮音板を組み合わせることができる。
また、上記第1〜第3の実施形態においては、遮音板13を制振鋼板で構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、通常の鋼板やアルミニウム合金板等任意の板材を適用することができる。
【0034】
また、上記第1〜第3の実施形態においては、第1弾性部材19(38)及び第2弾性部材20(39)が別体である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、下支持部15bを除く上支持部15a、左支持部15c及び右支持部15dでは、
図8に示すように、第1弾性部材19(38)及び第2弾性部材20(39)の外側端部を遮音板13の端部を跨ぐように連結部51で連結して一体化するようにしてもよい。この場合には、第1弾性部材及び第2弾性部材の何れか一方の装着忘れを防止することができるとともに、上支持部15aで使用する場合に、第1弾性部材及び第2弾性部材の落下を防止することができる。
【0035】
また、上記第1〜第3の実施形態では、遮音板支持部材14A〜14Dが断面コ字状に形成されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、断面角筒状や中実断面等の他の断面形状とすることができる。