特許第6610411号(P6610411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6610411
(24)【登録日】2019年11月8日
(45)【発行日】2019年11月27日
(54)【発明の名称】導電部材
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20191118BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20191118BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   H01B7/00 306
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-86806(P2016-86806)
(22)【出願日】2016年4月25日
(65)【公開番号】特開2017-199461(P2017-199461A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤木 匡
【審査官】 山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−018672(JP,A)
【文献】 特開2015−088251(JP,A)
【文献】 実公昭36−001124(JP,Y1)
【文献】 特開2010−146739(JP,A)
【文献】 特開2010−176886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の素線を束ねてなり、可撓性を有する柔軟導体と、
形状保持性を有する剛性導体と、
前記剛性導体の端部に形成され、前記柔軟導体を包囲し且つ前記柔軟導体に固着された固着部と、
前記固着部の内周から突出した形態であり、前記素線が摺接可能な摺接部とを備え、
前記剛性導体が、前記剛性導体のうち前記固着部を除くほぼ全長の領域を構成する筒状本体と、前記剛性導体の端部に配されて前記固着部を構成する筒状端末部材とを有し、
前記筒状端末部材が前記筒状本体とは別体の部品であり、前記筒状本体と前記筒状端末部材を固着することで前記剛性導体が構成されている導電部材。
【請求項2】
複数本の素線を束ねてなり、可撓性を有する柔軟導体と、
形状保持性を有する剛性導体と、
前記剛性導体の端部に形成され、前記柔軟導体を包囲し且つ前記柔軟導体に固着された固着部と、
前記固着部の内周から突出した形態であり、前記素線が摺接可能な4つの摺接部とを備え、
前記4つの摺接部の突出端部同士が繋がることにより、前記4つの摺接部が十字形をなすように配されている導電部材。
【請求項3】
複数本の素線を束ねてなり、可撓性を有する柔軟導体と、
形状保持性を有する剛性導体と、
前記剛性導体の端部に形成され、前記柔軟導体を包囲し且つ前記柔軟導体に固着された固着部と、
前記固着部の内周から突出した形態であり、前記素線が摺接可能な摺接部とを備え、
前記摺接部が屈曲した形状をなしている導電部材。
【請求項4】
前記剛性導体が全長に亘って筒状をなし、
前記剛性導体の内周から全長に亘って前記摺接部が形成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の導電部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両においてバッテリー、モータ、インバータ装置等の機器間を配索する手段として、形状保持性を有するパイプと、可撓性を有する被覆電線とを備えた導電部材が開示されている。パイプと被覆電線の芯線を接続する手段として、芯線の端部をパイプの端部内に挿入し、パイプと芯線の端部を扁平状に潰す方法がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−88251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の接続方法では、パイプや芯線がアルミニウム製である場合に、表面の酸化皮膜を充分に除去することができない。特に、芯線が、複数本のアルミニウム製の素線からなる撚り線で構成されている場合は、酸化皮膜の除去は殆どできない。酸化皮膜が除去されないままでは、パイプと芯線との間の接触抵抗が高くなり、接触信頼性の点で問題が残る。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、接触信頼性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施例の導電部材は、
複数本の素線を束ねてなり、可撓性を有する柔軟導体と、
形状保持性を有する剛性導体と、
前記剛性導体の端部に形成され、前記柔軟導体を包囲し且つ前記柔軟導体に固着された固着部と、
前記固着部の内周から突出した形態であり、前記素線が摺接可能な摺接部とを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
柔軟導体に固着する前の状態の固着部に、柔軟導体を挿入すると、一部の素線が、固着部の内周面との摺接によって酸化皮膜を除去されるとともに、別の素線が、摺接部との摺接によって酸化皮膜を除去される。酸化皮膜は、柔軟導体を固着部に挿入する工程と、柔軟導体を固着部に固着する工程の少なくとも一方の工程で除去される。摺接部を設けたことにより、酸化皮膜を除去される素線の本数が増えるので、柔軟導体と剛性導体との間では、接触抵抗が低減され、接触信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の導電部材の部分側面図
図2図1のX−X線断面図
図3】被覆導体が未接続の状態をあらわす剛性導体の正面図
図4】実施例2の導電部材のX−X線相当断面図
図5】実施例3の導電部材のX−X線相当断面図
図6】実施例4の導電部材のX−X線相当断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の導電部材は、前記剛性導体が、前記剛性導体のうち前記固着部を除くほぼ全長の領域を構成する筒状本体と、前記剛性導体の端部に配されて前記固着部を構成する筒状端末部材とを備えていてもよい。この構成によれば、剛性導体のうち摺接部が形成されるのは、柔軟導体が挿入される固着部だけに限定することができる。これにより、剛性導体の軽量化と材料コストの低減を図ることができる。
【0010】
本発明の導電部材は、複数の前記摺接部の突出端部同士が繋がっていてもよい。この構成によれば、摺接部の突出長さを最大限に長く確保できるので、摺接部に摺接する素線の本数を増やすことができる。
【0011】
本発明の導電部材は、前記摺接部が屈曲した形状をなしていてもよい。この構成によれば、固着部を塑性変形させて柔軟導体に固着する際に、摺接部が変形し易くなるので、固着後の固着部の形状が安定する。
本発明の導電部材は、前記剛性導体が全長に亘って筒状をなし、前記剛性導体の内周から全長に亘って前記摺接部が形成されていてもよい。この構成によれば、摺接部を含む剛性導体の全体を、押出成形のみにより一体部品として製造することができる。
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図3を参照して説明する。本実施例1の導電部材Aは、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両においてバッテリー、モータ、インバータ装置等の機器(図示省略)間を配索する手段として用いられる。導電部材Aは、剛性導体10と、可撓性を有する被覆導体20とを備えて構成されている。
【0013】
剛性導体10は、アルミニウム又はアルミニウム合金製のパイプからなり、それ自体の剛性によって容易に変形しない形状保持性を有している。剛性導体10は、所定の形状に曲げ加工され、車両の床下に沿うように配索されている。剛性導体10は、全長に亘って断面が円形をなす筒状本体11と、筒状本体11の前後両端部に固着された一対の筒状端末部材12とを備えて構成されている。筒状本体11は、剛性導体10のうち両端部を除いた大部分の領域を構成する長尺の部材である。筒状本体11の内周の断面形状は、ほぼ真円であり、筒状本体11の内周には突起状部位等は形成されていない。
【0014】
筒状端末部材12は、被覆導体20との接続手段である固着部13としての機能を有する。筒状端末部材12は、筒状の本体部14と、本体部14の内周から径方向内向きに突出した4つの摺接部15とを有する単一部品である。図3に示すように、剛性導体10(固着部13)に被覆導体20(柔軟導体21)を接続する前の状態の本体部14は、外径及び内径が筒状本体11と同じ寸法の円筒形をなしている。
【0015】
本体部14の端面と筒状本体11の端面をレーザー溶接等によって同軸状に固着することにより、筒状端末部材12と筒状本体11とが一体化されている。剛性導体10と被覆導体20を接続する際には、本体部14が、カシメ加工により、略正六角形(正多角形)をなすように塑性変形させられる(図2を参照)。
【0016】
本体部14がカシメ加工されていない状態(剛性導体10と被覆導体20が未接続の状態)では、4つの摺接部15は、本体部14の周方向に等角度間隔を空けて配されている。尚、本実施例1では、摺接部15の数を4つとしたが、摺接部15の数は、3つ以下でもよく、5つ以上でもよい。剛性導体10の軸線と直角に切断したときの断面において、各摺接部15は、本体部14の中心に向かって径方向に直線状に延びた形状をなしている。
【0017】
各摺接部15は、壁状をなし、本体部14(筒状端末部材12)の全長に亘って連続して形成されている。4つの摺接部15の突出端部同士は、本体部14の中心部において互いに十字形をなすように繋がっている。したがって、剛性導体10と被覆導体20が未接続の状態では、筒状端末部材12(固着部13)の中空内が、4つの四半円弧形の接続空間16に仕切られている。
【0018】
被覆導体20は、複数本の素線22を撚り合わせた柔軟導体21(芯線)と、柔軟導体21を全周に亘って包囲する絶縁被覆23とを備えて構成されている。素線22(柔軟導体21)はアルミニウム又はアルミニウム合金からなる。つまり、被覆導体20の柔軟導体21は剛性導体10と同一の材料である。被覆導体20のうち剛性導体10(固着部13)に接続される端部では、絶縁被覆23が除去されて柔軟導体21が露出している。
【0019】
被覆導体20を剛性導体10に接続する際には、まず、被覆導体20の端部において絶縁被覆23を除去し、柔軟導体21を露出させる。そして、柔軟導体21のうち露出部分の素線22の撚りを解き、素線22をほぼ真っ直ぐにして束ねた状態にする。次に、柔軟導体21を4つに分割し、分割した柔軟導体21(素線22の束)を、夫々、固着部13(筒状端末部材12)の4つの接続空間16に個別に挿入する。
【0020】
挿入する過程では、素線22と接続空間16の内壁面とが摺接する。即ち、素線22と本体部14の内周面とが摺接するとともに、素線22と摺接部15とが摺接する。この摺接により、素線22の表面の酸化皮膜(図示省略)が擦り取られ、本体部14の内周面の酸化皮膜(図示省略)が擦り取られ、摺接部15の表面の酸化皮膜(図示省略)が擦り取られる。このように素線22と筒状端末部材12の酸化皮膜が除去された後、本体部14を円形から正六角形をなすように塑性変形させる。
【0021】
このとき、本体部14が縮径変形するので、接続空間16の容積(断面積)が小さくなり、本体部14と摺接部15が、素線22の束に対し径方向及び周方向に圧縮するように密着し、柔軟導体20と固着部13(剛性導体10)とが固着される。この固着工程でも、上記の挿入工程と同様、素線22の表面の酸化皮膜と、本体部14の内周面の酸化皮膜と、摺接部15の表面の酸化皮膜が擦り取られる。以上により、被覆導体20の柔軟導体21と剛性導体10とが導通可能に且つ離脱を規制された状態に接続される。
【0022】
本実施例1の導電部材Aは、複数本の素線22を束ねた柔軟導体21と柔軟導体21を包囲する絶縁被覆23とを一体化した可撓性を有する被覆導体20と、形状保持性を有する剛性導体10とを備えている。剛性導体10の端部には、柔軟導体21を包囲し且つ柔軟導体21に対し導通可能に固着された固着部13が形成されている。そして、剛性導体10は、固着部13の内周から突出した形態であり、素線22が摺接可能な摺接部15を備えている。
【0023】
柔軟導体21に固着する前の状態の固着部13に、柔軟導体21を挿入すると、一部の素線22が、固着部13の内周面との摺接によって酸化皮膜を除去されるとともに、別の素線22が、摺接部15との摺接によって酸化皮膜を除去される。摺接部15を設けたことにより、酸化皮膜を除去される素線22の本数が増えるので、柔軟導体21と剛性導体10との間では、接触抵抗が低減され、接触信頼性が向上する。
【0024】
また、剛性導体10は、剛性導体10のうち固着部13を除くほぼ全長の領域を構成する筒状本体11と、剛性導体10の端部に配されて固着部13を構成する筒状端末部材12とを備えている。このような構成としたことにより、剛性導体10のうち摺接部15が形成されるのは、柔軟導体21が挿入される固着部13だけに限定することができた。これにより、剛性導体10の軽量化と材料コストの低減を図ることを実現した。
【0025】
また、4つ(複数)の摺接部15の突出端部同士が繋がっているので、摺接部15の突出長さを最大限に長く確保できる。これにより、摺接部15に摺接する素線22の本数を増やすことができる。
【0026】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2を図4を参照して説明する。本実施例2の導電部材Bは、剛性導体30を構成する筒状端末部材31(固着部32)の摺接部34の形状を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0027】
本実施例2の筒状端末部材31は、筒状の本体部33と、本体部33の内周から径方向内向きに突出した4つの摺接部34とを有する単一部品である。剛性導体30に被覆導体20を接続する前の状態の本体部33は、外径及び内径が筒状本体と同じ寸法の円筒形をなしている。本体部33の端面と筒状本体の端面をレーザー溶接等によって同軸状に固着することにより、筒状端末部材31と筒所本体とが一体化されている。剛性導体30と被覆導体20を接続する工程では、本体部33が、カシメ加工により、略正六角形(正多角形)をなすように塑性変形させられる。
【0028】
本体部33がカシメ加工されていない状態(剛性導体30と被覆導体20が未接続の状態)では、4つの摺接部34は、本体部33の周方向に等角度間隔を空けて配されている。尚、本実施例2では、摺接部34の数を4つとしたが、摺接部34の数は、3つ以下でもよく、5つ以上でもよい。各摺接部34は、屈曲した壁状をなし、本体部33(筒状端末部材31)の全長に亘って連続して形成されている。
【0029】
剛性導体30の軸線と直角に切断したときの断面において、各摺接部34は、鈍角状に屈曲した形状(図示省略)をなしている。つまり、1つの摺接部34は、本体部33の内周から径方向に対して斜めに突出した周縁側壁部35と、周縁側壁部35の突出端縁から本体部33の中心に向かって突出した中心側壁部36とによって構成されている。周縁側壁部35と中心側壁部36は、斜めに繋がっている。
【0030】
また、4つの摺接部34は、本体部33の中心部において互いに繋がっている。即ち、4つの中心側壁部36の突出端部同士が、十字形をなすように繋がっている。これにより、筒状端末部材31(固着部32)の中空内は、4つの接続空間37に仕切られている。各接続空間37に素線22の束を挿入すると、素線22が、周縁側壁部35と中心側壁部36に摺接することにより、素線22と本体部33と摺接部34の酸化皮膜(図示省略)が擦り取られる。
【0031】
被覆導体20の柔軟導体21と剛性導体30を接続する工程で、本体部33を円形から正六角形をなすように塑性変形させると、各摺接部34が、周縁側壁部35と中心側壁部36とのなす角度を小さくするように屈曲変形する。これに伴い、各接続空間37の容積が小さくなるので、本体部33と摺接部34が、素線22の束に対し径方向及び周方向に圧縮するように密着する。以上により、被覆導体20の柔軟導体21と剛性導体30とが導通可能に且つ離脱を規制された状態に接続される。
【0032】
本実施例2の導電部材Bは、4つ(複数)の摺接部34の突出端部同士が繋がっているので、摺接部34の突出長さを最大限に長く確保できる。しかも、摺接部34が屈曲した形状をなしているので、摺接部34に摺接する素線22の本数を増やすことができる。また、互いに繋がった4つの摺接部34が、屈曲した形状をなしていることにより、固着部32を塑性変形させて柔軟導体21に固着する際に、摺接部34が変形し易くなる。したがって、固着後の固着部32(筒状端末部材31)の形状が安定する。
【0033】
<実施例3>
次に、本発明を具体化した実施例3を図5を参照して説明する。本実施例3の導電部材Cは、剛性導体40を構成する筒状端末部材41(固着部42)の摺接部44の形状を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0034】
本実施例3の筒状端末部材41(固着部42)は、剛性導体40と被覆導体20が未接続の状態で円形をなす本体部43と、本体部43の内周から周方向に等角度間隔を空けて配置された複数(例えば、8つ)の摺接部44とを備えている。各摺接部44は、本体部43の内周から中心に向かって径方向内向きに直線状に突出した壁状をなしている。
【0035】
摺接部44の突出長さは、円形状態の本体部43の半径よりも小さい寸法に設定されている。周方向に隣り合う摺接部44同士の間隔は、1本の素線22の外径よりも大きい寸法に設定されている。したがって、隣り合う摺接部44の間には複数本の素線22が収容される。また、剛性導体40と被覆導体20が接続されて本体部43が正六角形に塑性変形した状態でも、摺接部44の突出端同士は、非接触の状態を保つ。
【0036】
<実施例4>
次に、本発明を具体化した実施例4を図6を参照して説明する。本実施例4の導電部材Dは、剛性導体50を構成する筒状端末部材51(固着部52)の摺接部54の形状を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0037】
本実施例4の筒状端末部材51(固着部52)は、剛性導体50と被覆導体20が未接続の状態で円形をなす本体部53と、本体部53の内周から周方向に等角度間隔を空けて配置された複数(例えば、12)の摺接部54とを備えている。各摺接部54は、本体部53の内周から径方向内向きに突出したリブ状をなしている。
【0038】
即ち、各摺接部54の径方向への突出寸法と、周方向に隣り合う摺接部54同士の間隔とが、ほぼ同じ寸法に設定されている。また、摺接部54の突出寸法は、1本の素線22の外径とほぼ同じ寸法に設定されている。つまり、隣り合う摺接部54の間に収容される素線22の本数は、1本又は2本だけである。したがって、剛性導体50と被覆導体20を接続する際には、素線22が撚り合わされている状態(撚りを解かない状態)のままで柔軟導体21を筒状端末部材51(固着部52)内に挿入することができる。
【0039】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1〜4では、剛性導体が筒状本体と筒状端末部材とによって構成されているが、剛性導体を全長に亘って筒状とし、剛性導体の内周から全長に亘って摺接部を突出形成してもよい。この構成によれば、摺接部を含む剛性導体の全体を、押出成形のみにより一体部品として製造することができる。
(2)上記実施例1〜4では、摺接部を固着部(筒状端末部材)の内周に一体に形成したが、摺接部は、固着部とは別体の部品として成形したものを、固着部の内周に固着してものであってもよい。
(3)上記実施例1〜4では、剛性導体がアルミニウム製又はアルミニウム合金製であるが、剛性導体の材料は、アルミニウムやアルミニウム合金以外の材料(銅、銅合金等)であってもよい。
(4)上記実施例1〜4では、柔軟導体がアルミニウム製又はアルミニウム合金製であるが、柔軟導体の材料は、アルミニウムやアルミニウム合金以外の材料(銅、銅合金等)であってもよい。
(5)上記実施例1〜4では、剛性導体と被覆導体の柔軟導体を同一材料のものとしたが、剛性導体と柔軟導体は異なる材料のものとしてもよい。
(6)上記実施例1〜4では、周方向に隣り合う摺接部の間に、少なくとも1辺の素線が収容されるようになっているが、これに限らず、本体部の内周にローレット加工を施し、複数の摺接部が、周方向において素線の外径よりも小さいピッチで並ぶようにしてもよい。この場合も、実施例4と同様、素線の撚りを解かずに柔軟導体を固着部内に挿入することができる。
(7)上記実施例1〜4では、剛性導体(固着部)に被覆導体(柔軟導体)を接続する前の状態では、本体部と筒状本体の断面形状が円形であるが、本体部と筒状本体の断面形状は非円形であってもよい。
(8)上記実施例1〜4では、剛性導体を中空のパイプ状としたが、剛性導体のうち固着部(筒状端末部材)以外の領域は、中実の棒状であってもよい。
(9)上記実施例1〜4では、柔軟導体を固着部に挿入する工程と柔軟導体を固着部に固着する工程の両工程で、酸化皮膜が除去されるようにしたが、酸化皮膜の除去は、挿入工程と固着工程のいずれか一方の工程だけで行われるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0040】
A,B,C,D…導電部材
10,30,40,50…剛性導体
11…筒状本体
12,31,41,51…筒状端末部材
13,32,42,52…固着部
15,34,44,54…摺接部
20…被覆導体
21…柔軟導体
22…素線
23…絶縁被覆
図1
図2
図3
図4
図5
図6