(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示手段に表示された前記目標交通状態に対する修正指示、前記目標交通状態を算出するための関数或いは制約式に対する修正指示、又は予測モデルの変更指示、を前記オペレータから受け付けるように構成された指示受付手段を更に備える、
請求項2に記載の渋滞予防システム。
前記渋滞の発生が予測される渋滞予測時刻が近づくにつれて、前記複数の地点の内、前記渋滞予測地点に遠い地点から近い地点へと、交通状態の制御を実行する地点を変更する、
請求項9または10に記載の渋滞予防システム。
前記算出手段は、前記複数の地点における交通状態から前記渋滞予測地点における渋滞予測時刻の交通状態を予測するための予測モデルを用いて、前記目標交通状態を算出するように構成された、
請求項9から11のいずれか1項に記載の渋滞予防システム。
前記算出手段は、前記複数の地点における現在時刻の交通状態、及び、現在時刻より後、かつ、前記渋滞予測時刻より前の交通状態の予測値から前記渋滞予測地点における前記渋滞予測時刻の交通状態を予測するための予測モデルを用いて、前記目標交通状態を算出するように構成された、
請求項12に記載の渋滞予防システム。
前記算出手段は、前記複数の地点において前記目標交通状態を達成するためのコストが最小になるように、前記複数の地点における前記目標交通状態を算出するように構成された、
請求項9から13のいずれか1項に記載の渋滞予防システム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施の形態)
はじめに、本発明の第1の実施の形態の構成を説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態における、交通管理システムの構成を示す図である。
図1を参照すると、交通管理システムは、渋滞予防システム10、渋滞予測装置20、交通状態制御装置30、及び、表示装置40を含む。渋滞予防システム10、渋滞予測装置20、及び、交通状態制御装置30は、ネットワーク等を介して相互に接続される。また、表示装置40は、ネットワーク等を介して、渋滞予防システム10に接続される。
【0020】
交通状態制御装置30は、道路網上の交通状態の監視、制御対象である、複数の地点(位置や区間)の各々に配置され、当該交通状態制御装置30が有する交通状態制御手段(以下、制御手段とも記載する)を用いて、当該地点における交通状態を制御する。
図1の例では、地点X1、X2、…の各々に、交通状態制御装置30が配置されている。
【0021】
本発明の第1の実施の形態では、交通状態として、例えば、車両速度や、単位時間あたりの通過台数、車両密度等を用いる。以下、交通状態を、交通流とも記載する。また、交通状態の内の、単位時間あたりの通過台数を、交通量とも記載する。
【0022】
渋滞予測装置20は、1以上の地点の交通状態をもとに、各地点における渋滞発生を予測する。
【0023】
渋滞予防システム10は、特定の地点(対象地点)における、特定の時刻(対象時刻)の渋滞発生を防ぐために、各地点で達成すべき交通状態(目標交通状態)を算出し、交通状態制御装置30を介して、各地点の交通状態を制御する。
【0024】
図2は、本発明の第1の実施の形態における、渋滞予防システム10の構成を示す図である。
図2を参照すると、渋滞予防システム10は、受信部11、予防処理部12、制御処理部13、交通状態DB(データベース)14、送信部15、表示制御部16、指示受付部17、ログ生成部18、及び、ログ格納部19を含む。
【0025】
受信部11は、各地点の交通状態の測定値を収集する。ここで、受信部11は、例えば、各地点に配置されているセンサーにより、所定の収集間隔で、交通状態の測定値を収集する。なお、受信部11は、車載端末から送信されるプローブデータをもとに、交通状態の測定値を収集してもよい。また、受信部11は、渋滞予測装置20等の他の装置から交通状態の測定値を収集してもよい。
【0026】
図5は、本発明の第1の実施の形態における、交通状態の例を示す図である。
図5の例では、交通状態として、収集時刻毎の、各地点の車両密度が収集されている。
【0027】
交通状態DB14は、受信部11により収集された、各地点の交通状態の測定値を格納する。
【0028】
また、受信部11は、渋滞予測装置20等から、渋滞予測に用いられる、各地点の交通状態の予測モデル(または、予測式とも記載する)を収集する。
【0029】
予測モデルは、各地点における交通状態から、特定の地点(予測地点)における、特定の時刻(予測時刻)の交通状態を予測するためのモデルである。
【0030】
予測モデルは、例えば、各地点の交通状態の時系列をもとに、機械学習技術を用いて生成される。予測モデルは、例えば、非特許文献1、2に開示されている異種混合学習技術を用いて生成される。また、予測モデルは、線形回帰モデルや、自己回帰モデル、自己回帰移動平均モデル等、一般的な時系列モデルでもよい。
【0031】
本発明の第1の実施の形態では、交通状態の内の車両密度を予測する、数1式のような予測モデルを用いる。
【0033】
ここで、ρ
i(t)は、地点xi(i=1、2、…、N;Nは監視、制御対象の地点の数)における、現在時刻tの車両密度である。また、ρ'
j(t+T)は、予測地点xj(j=1、2、…、N)における、予測時刻t+Tの車両密度の予測値である。α
ijは、ρ
i(t)に乗じるパラメータ(重み係数)である。
【0034】
図6は、本発明の第1の実施の形態における、予測モデルの例を示す図である。
図6の例では、各地点について、0.5時間後(T=0.5h(hour))、1時間後(T=1h)、1.5時間後(T=1.5h)、2時間後(T=2h)、…の予測モデルが生成されている。
【0035】
なお、予測モデルとして、数1式のような線形関数に限らず、交通状態が説明変数である任意の関数が用いられてもよい。また、同じ予測地点に対して、複数の予測モデルが生成されてもよい。この場合、これらの予測モデルは、天候や、曜日、時間帯等、予測時刻の状況毎に使い分けられてもよい。
【0036】
予測モデルDB122は、受信部11により収集された、予測モデルを格納する。
【0037】
また、受信部11は、渋滞予測装置20等から、渋滞予測情報を収集する。ここで、受信部11は、例えば、所定の時間間隔で渋滞予測情報を収集する。
【0038】
図7は、本発明の第1の実施の形態における、渋滞予測情報の例を示す図である。
図7の例では、渋滞予測情報は、予測を行った時刻(予測実施時刻)、渋滞発生の有無、渋滞の発生が予測される時刻(渋滞予測時刻)、及び、渋滞の発生が予測される地点(渋滞予測地点)が示されている。
【0039】
予測情報DB121は、受信部11により収集された、渋滞予測情報を格納する。
【0040】
さらに、受信部11は、渋滞予測装置20等から、渋滞予測に用いられる、各地点のファンダメンタルダイアグラムを収集する。
【0041】
図8は、本発明の第1の実施の形態における、ファンダメンタルダイアグラムの例を示す図である。ファンダメンタルダイアグラムは、交通状態の解析に用いられる表現方法であり、道路網上の各地点における、車両密度と車両速度や通過台数との関係を示すダイアグラム(グラフ)である。車両密度が特定されれば、ファンダメンタルダイアグラムにより、その地点における車両速度や通過台数を推定できる。ファンダメンタルダイアグラムでは、車両密度がある値(密度閾値)を超えると、車両速度や通過台数が減少し、交通流が自由流から渋滞状態に遷移することが示される。本発明の実施の形態では、この密度閾値を、渋滞予防の指標に用いる。
【0042】
ダイアグラム格納部125は、受信部11により収集された、各地点に対するファンダメンタルダイアグラムを格納する。
【0043】
予防処理部12は、予測情報DB121、予測モデルDB122、制御手段DB123、交通状態算出部124(または、算出部とも記載する)、及び、ダイアグラム格納部125を含む。
【0044】
制御手段DB123は、制御手段情報を格納する。
図9は、本発明の第1の実施の形態における、制御手段情報の例を示す図である。
図9の制御手段情報には、各地点に配置された交通状態制御装置30による交通状態の変更に係るコストの情報(コスト情報)、当該交通状態の制御可能量(最大値、最小値)が設定されている。
図9の例では、コスト情報として、交通状態の単位あたりの変更に伴うコストを表す、コスト係数が設定されている。また、コスト情報として、後述するようなコスト関数が設定されていてもよい。
【0045】
制御手段情報は、各地点の目標交通状態を算出するために用いられる。制御手段情報における制御可能量やコスト情報は、後述する制御モデルの制御特性やコスト情報をもとに、制御処理部13により設定(変換)される。
【0046】
交通状態算出部124は、各地点の交通状態と予測モデルとをもとに、渋滞予測地点における渋滞予測時刻の渋滞を防ぐための、各地点の目標交通状態を算出する。
【0047】
制御処理部13は、制御モデルDB131、及び、状態制御部132を含む。
【0048】
制御モデルDB131は、各地点に配置された交通状態制御装置30が有する制御手段の特性を表す、制御モデルを格納する。
図10は、本発明の第1の実施の形態における、制御モデルの例を示す図である。
図10の制御モデルには、各地点に配置された交通状態制御装置30が有する制御手段の種類、当該制御手段による制御内容と交通状態との関係(制御特性)、当該制御内容の変更に係るコストの情報(コスト情報)が設定されている。ここで、コストとして、制御内容の変更に伴う費用や電力、必要人員等、制御内容の変更に伴い、道路管理やユーザに対して発生しうるデメリットを表す任意のコストを用いることができる。
【0049】
制御モデルは、各地点の交通状態制御装置30の仕様等をもとに、道路管理のオペレータにより設定されてもよいし、交通状態制御装置30から収集した情報をもとに、制御処理部13により設定されてもよい。
【0050】
状態制御部132は、制御モデルDB131に格納された制御モデルをもとに、各地点の目標交通状態を実現するための制御情報を生成し、各地点の交通状態が目標交通状態となるように(目標交通状態に近づくように)、交通状態制御装置30を制御する。
【0051】
送信部15は、制御処理部13により生成された制御情報を、各地点の交通状態制御装置30へ送信する。
【0052】
表示制御部16は、各地点の目標交通状態等が表示装置40に表示されるように、表示装置40を制御する。
【0053】
指示受付部17は、表示装置40から、各地点の目標交通状態の修正指示等を受け付ける。
【0054】
ログ生成部18は、目標交通状態と交通状態の測定値の時系列とを示す状態ログ181を生成する。
【0055】
ログ格納部19は、ログ生成部18により生成された状態ログ181を格納する。
【0056】
なお、渋滞予防システム10は、CPU(Central Processing Unit)とプログラムを記憶した記憶媒体を含み、プログラムにもとづく制御によって動作するコンピュータであってもよい。
【0057】
図3は、本発明の第1の実施の形態における、コンピュータにより実現された渋滞予防システム10の構成を示すブロック図である。
【0058】
この場合、渋滞予防システム10は、CPU101、ハードディスクやメモリ等の記憶デバイス102(記憶媒体)、キーボード、ディスプレイ等の入出力デバイス103、及び、他の装置等と通信を行う通信デバイス104を含む。CPU101は、受信部11、交通状態算出部124、状態制御部132、送信部15、表示制御部16、指示受付部17、及び、ログ生成部18を実現するためのプログラムを実行する。記憶デバイス102は、予測情報DB121、予測モデルDB122、制御手段DB123、ダイアグラム格納部125、制御モデルDB131、交通状態DB14、及び、ログ格納部19のデータを記憶する。通信デバイス104は、他の装置等から、渋滞予測情報や予測モデル、各地点の交通状態、ファンダメンタルダイアグラムを受信する。また、通信デバイス104は、制御情報を、各地点の交通状態制御装置30へ送信する。入出力デバイス103は、オペレータ等から、渋滞予測情報や予測モデル、各地点の交通状態、ファンダメンタルダイアグラムの入力を受け付けてもよい。また、入出力デバイス103が、オペレータ等へ、各地点の交通状態制御装置30に設定すべき制御情報を出力してもよい。
【0059】
また、渋滞予防システム10の各構成要素は、論理回路で実現されていてもよい。この場合、複数の構成要素が、1つの論理回路で実現されていてもよいし、それぞれ、複数の独立した論理回路で実現されていてもよい。
【0060】
また、渋滞予防システム10の各構成要素は、有線または無線で接続された複数の物理的な装置に分散的に配置されていてもよい。この場合、渋滞予防システム10は、複数のコンピュータによる分散処理により実現されていてもよい。
【0061】
また、渋滞予防システム10による渋滞予防のサービスが、SaaS(Software as a Service)形式で、オペレータに提供されてもよい。
【0062】
次に、本発明の第1の実施の形態の動作について説明する。
【0063】
ここでは、
図1のように道路網の地点X1、X2、…、に交通状態制御装置30が配置されており、交通状態DB14には、
図5の交通状態が格納されていると仮定する。地点間の距離は、例えば、10キロメートルであると仮定する。また、予測モデルDB122、予測情報DB121、及び、ダイアグラム格納部125には、それぞれ、
図6の予測モデル、
図7の渋滞予測情報、
図8のファンダメンタルダイアグラムが格納されていると仮定する。さらに、制御手段DB123、及び、制御モデルDB131には、
図9、
図10のような制御手段情報、及び、制御モデルが格納されていると仮定する。
【0064】
図4は、本発明の第1の実施の形態における、渋滞予防処理を示すフローチャートである。
【0065】
はじめに、予防処理部12の交通状態算出部124は、渋滞予測情報から、渋滞予測地点、及び、渋滞予測時刻を取得する(ステップS11)。
【0066】
例えば、交通状態算出部124は、
図7の現在時刻「2015/08/01 10:00」の渋滞予測情報から、渋滞予測地点「X6」、渋滞予測時刻「2015/08/01 12:00」(2時間後)を取得する。
【0067】
交通状態算出部124は、予測モデルDB122から、各地点について、渋滞予測時刻の交通状態を予測するための予測モデルを取得する(ステップS12)。
【0068】
例えば、交通状態算出部124は、
図6の予測モデルから、各地点について、2時間後(T=2h)の交通状態を予測するための予測モデルを取得する。
【0069】
交通状態算出部124は、取得した予測モデルを用いて、渋滞予測地点における渋滞予測時刻の渋滞を防ぐための、現在時刻の各地点の目標交通状態を算出する(ステップS13)。
【0070】
ここで、交通状態算出部124は、例えば、数2式の目的関数、数3式、数4式の制約式で表される最適化問題の解を求めることにより、各地点の目標交通状態を算出する。
【0074】
数2式において、ρ
*i(t)は、地点xiにおける、現在時刻tの目標交通状態(車両密度)を示す。c
iは、地点xiに配置されている交通状態制御装置30のコスト係数を示す。この目的関数は、現在時刻tの交通状態の測定値と渋滞を防ぐための目標交通状態との差分(交通状態の制御量)にコスト係数を乗じた値の総和が最小になるように、現在時刻の目標交通状態ρ
*i(t)を決定することを示す。
【0075】
なお、目的関数として、数2式以外の式が用いられてもよい。例えば、各地点における交通状態が振動しないように、目的関数として、前の時刻t−1における交通状態と現在時刻tにおける交通状態との差分に係る式が用いられてもよい。また、このような交通状態の差分と数2式との組み合わせ等、道路管理で許容される、または、好ましい状態を示す、他の目的関数が用いられてもよい。
【0076】
また、コスト係数の代わりに、地点毎に、制御量を入力として用いる任意のコスト関数が定義されてもよい。また、地点と時間帯等の条件に応じて、異なるコスト係数やコスト関数が定義されてもよい。また、制御量の正負に応じて異なるコスト関数が定義されてもよい。
【0077】
数3式において、ρ
THjは、地点xjにおける密度閾値を示す。この制約式は、全地点において、渋滞発生予測時刻t+Tの交通状態(車両密度)の予測値が密度閾値以下であるように、目標交通状態が制限されることを示している。この制約式は、渋滞予測地点の渋滞を防ごうとした結果、他の地点に渋滞が発生することを避けるために設定される。なお、数3式を全地点について定義する代わりに、渋滞予測地点を含む、1以上の任意の地点について定義してもよい。
【0078】
また、数3式では、現在時刻の車両密度から、予測時刻の車両密度を予測する予測モデルを用いているが、例えば、通過台数等、他の交通状態、あるいは、複数の交通状態の組み合わせから、予測時刻の車両密度を予測する予測モデルを用いてもよい。また、制約式として、道路網上の全交通量(車両数)が制御後も保存されるような交通量保存制約等、道路管理において許容される、または、好ましい状態を示す、他の制約条件が付加されてもよい。
【0079】
数4式において、d
MAXiは、地点xiに配置されている交通状態制御装置30による、交通状態の制御可能量の最大値を示す。この制約式は、全地点において、制御量が制御可能量の最大値以下であるように、目標交通状態が制限されることを示している。制御可能量の最小値が定義されている場合、最小値について、同様の制約式が用いられてもよい。なお、これらの制御可能量についても、地点と時間帯等の条件に応じて異なる値が定義されていてもよい。また、制御量の正負に応じて異なる制御可能量が定義されていてもよい。
【0080】
図11は、本発明の第1の実施の形態における、目標交通状態の算出結果の例を示す図である。
【0081】
例えば、交通状態算出部124は、ステップS12で取得した予測モデル、
図5における現在時刻「2015/08/01 10:00」の交通状態、
図8の密度閾値、及び、
図9の制御手段情報を用いて、
図11のように、各地点の目標交通状態を算出する。
【0082】
次に、表示制御部16は、各地点の目標交通状態等を表示するための表示画面161を生成し、当該表示画面161を、表示装置40に表示させる(ステップS14)。
【0083】
図12、
図13、及び、
図14は、本発明の第1の実施の形態における、表示画面161の例を示す図である。
図12の表示画面161では、交通状態表示領域162に、予防対象の渋滞に係る渋滞予測時刻と渋滞予測地点、現在時刻における各地点の交通状態の測定値、及び、目標交通状態が表示されている。また、
図13、
図14の表示画面161では、交通状態表示領域163に、渋滞予測時刻、渋滞予測地点、現在時刻に各地点に目標交通状態が設定された場合の、それぞれ、1時間後、2時間後の交通状態の予測値、及び、渋滞発生の予測結果が表示されている。これらの予測値は、例えば、交通状態算出部124において、目標交通状態と予測モデルにより算出される。また、渋滞発生の予測も、例えば、交通状態算出部124において、交通状態の予測値と密度閾値を用いて行われる。
図14の表示画面161では、渋滞予測時刻(2時間後)に、渋滞予測地点(地点「X6」)において、渋滞が発生しないことが示されている。
【0084】
例えば、表示制御部16は、オペレータによる切替ボタン165a〜eの操作に応じて、
図12〜
図14のような表示画面161を、表示装置40に表示させる。
【0085】
なお、表示画面161には、各地点の目標交通状態とともに、後述するステップS16で生成されるような、制御手段による制御内容が表示されてもよい。
【0086】
オペレータは、表示装置40に表示された表示画面161を参照し、各地点の交通状態の制御による、渋滞予防の効果を確認できる。また、オペレータは、これらの表示画面161を参照し、目標交通状態の値や渋滞予防の効果に問題がある場合、目標交通状態を修正(変更)する。ここで、オペレータは、例えば、表示画面161上の目標交通状態を上書きし、修正ボタン164を操作することにより、目標交通状態を修正する。
【0087】
指示受付部17は、表示装置40から、目標交通状態の修正を受け付ける(ステップS15)。
【0088】
ステップS15で、例えば、表示画面161を表示してから一定時間以内に目標交通状態の修正がある場合(ステップS15/Y)、表示制御部16は、修正された目標交通状態に対して、ステップS14からの処理を行う。
【0089】
なお、指示受付部17は、ステップS15で、目標交通状態の修正以外に、目標交通状態を算出するための目的関数や制約式に係る修正を受け付けてもよい。例えば、指示受付部17は、目的関数の形式や、目的関数で用いられるコスト(コスト係数やコスト関数)等のパラメータの修正を受け付けてもよい。また、指示受付部17は、制約式の形式や、制約式で用いられる密度閾値、交通状態の制御可能量(最大値、最小値)等のパラメータの修正を受け付けてもよい。また、指示受付部17は、予測モデルの変更を受け付けてもよい。
【0090】
これら、目的関数や制約式に係る変更が行われた場合は、ステップS13からの処理が行われる。
【0091】
ステップS15で、例えば、表示画面161を表示してから一定時間以内に目標交通状態の修正がない場合や修正なしが指示された場合(ステップS15/N)、制御処理部13の状態制御部132は、各地点について、制御情報を生成する(ステップS16)。ここで、状態制御部132は、制御モデルの制御特性をもとに、各地点の目標交通状態に対応する制御情報の内容を決定する。目標交通状態の種類(例えば、車両密度)と制御モデルで表される交通状態の種類(例えば、車両速度)が異なる場合、状態制御部132は、他の種類の交通状態(例えば、通過台数)等の測定値や推定値を用いて種類を変換し、制御情報の内容を決定してもよい。
【0092】
図15は、本発明の第1の実施の形態における、制御情報の例を示す図である。
図15の例では、制御情報は、各地点の交通状態制御装置30の制御手段で実施すべき制御内容が、目標交通状態とともに示されている。
【0093】
例えば、状態制御部132は、
図11の目標交通状態に対して、
図10の制御モデルを用いて、
図15のような制御情報を生成する。
【0094】
次に、送信部15は、制御処理部13により生成された制御情報を、各地点の交通状態制御装置30へ送信し、交通状態の制御実行を指示する(ステップS17)。
【0095】
各地点の交通状態制御装置30は、制御情報の制御内容に従って、制御手段による交通制御を実行する。
【0096】
例えば、渋滞予測地点の50キロメートル手前の地点X1の交通状態制御装置30は、通過可能なゲート数が「2」となるように料金所のゲートを制御する。渋滞予測地点の40キロメートル手前の地点X2の交通状態制御装置30は、点灯パターンが「点灯パターンA」となるように運転支援灯を制御する。渋滞予測地点の30キロメートル手前の地点X3の交通状態制御装置30は、「提示情報A」を案内板等に表示する。
【0097】
次に、ログ生成部18は、各地点の目標交通状態や制御実行後の交通状態を示す状態ログ181を生成する(ステップS18)。ログ生成部18は、生成した状態ログ181を、ログ格納部19に保存する。
【0098】
図16は、本発明の第1の実施の形態における、状態ログ181の例を示す図である。
図16の状態ログ181では、予防対象の渋滞に係る渋滞予測時刻と渋滞予測地点、制御実行時刻、各地点の制御内容、目標交通状態とともに、所定の収集間隔で収集された交通状態の測定値が記録されている。
【0099】
例えば、ログ生成部18は、
図16のような状態ログ181を生成する。
【0100】
ログ生成部18は、生成された状態ログ181を、オペレータ等からの指示に応じて、表示装置40に表示する。オペレータは、表示装置40に表示された状態ログ181を参照し、各地点の制御手段により目標交通状態に従った制御が行われているかどうかを確認することができる。ここで、指示受付部17は、上述のステップS15と同様に、目標交通状態の修正や目標交通状態を算出するための目的関数や制約式に係る修正、予測モデルの変更を受け付けてもよい。
【0101】
以降、渋滞予測時刻までの間、例えば、所定の制御間隔で、ステップS12〜S18の処理が繰り返し実行される。
【0102】
例えば、渋滞予防システム10は、時刻「2015/08/01 10:30」に、1.5時間後(T=1.5h)に対応する予測モデルとその時点の交通状態をもとに、各地点の目標交通状態を算出して、交通状態を制御する。同様に、渋滞予防システム10は、時刻「2015/08/01 11:00」、「2015/08/01 11:30」に、それぞれ、1時間後(T=1h)、0.5時間後(T=0.5h)に対応する予測モデルを用いて、交通状態を制御する。
【0103】
図17は、本発明の第1の実施の形態における、交通制御の例を示す図である。
【0104】
例えば、
図17に示すように、渋滞予測時刻に近づくにつれて、渋滞予測地点に近い地点で、適切な交通状態の制御が行われ、渋滞予測地点における渋滞予測時刻の渋滞の発生が抑止される。
【0105】
なお、指示受付部17は、ステップS15に限らず、ステップS12〜S18の処理を繰り返し実行中の任意のタイミングで、目標交通状態等の修正を受け付けてもよい。
【0106】
また、上述の説明では、渋滞予測地点における渋滞予測時刻の渋滞発生が予測されたことを契機に交通状態を制御する場合の例を説明した。しかしながら、これに限らず、所定の制御間隔で、監視、制御対象の全地点、あるいは、1以上の任意の地点における、所定時間後の渋滞が発生しないように、目的交通状態の算出、及び、交通状態の制御が繰り返されてもよい。
【0107】
また、上述の説明では、1つの渋滞(渋滞予測時刻と渋滞予測地点の1つの組み合わせ)に対して、交通状態を制御する場合の例を説明した。しかしながら、これに限らず、複数の渋滞(渋滞予測時刻と渋滞予測地点の複数の組み合わせ)に対して、交通状態を制御してもよい。この場合、例えば、数3式の制約式は、当該複数の渋滞について生成される。また、表示画面161や状態ログ181でも、当該複数の渋滞に係る渋滞予測時刻と渋滞予測地点が示される。
【0108】
また、上述の説明では、監視、制御対象の地点間の距離が10キロメートルの場合の例を説明した。しかしながら、これに限らず、各地点における交通状態から他の地点の交通状態を予測できれば、地点間の距離は、数十メートルや数百メートル、数キロメートル、数十キロメートル等、どのような距離でもよい。
【0109】
また、上述の説明では、交通状態算出部124が、数2式の目的関数、数3式、数4式の制約式で表される最適化問題の解を求めることにより、目標交通状態を算出した。すなわち、対象地点における対象時刻の渋滞を防ぐために対象地点と異なる地点において達成すべき目標交通状態を算出した。ここで、対象地点と異なる地点として、数3式では、監視、制御対象の全地点(地点i)を用いているが、対象地点と異なる地点として、現在時刻と対象時刻との間で、交通状態が対象地点と高い相関を有する地点を選択して用いてもよい。例えば、制限速度が時速80キロメートルの高速道路において、現在時刻と対象時刻との時間差が2時間であれば、対象地点から手前約160キロメートまでの範囲に存在する地点の交通状態は、対象地点における対象時刻の交通状態と高い相関を有すると考えられる。したがって、これらの範囲に存在する地点について、目標交通状態を算出して用いてもよい。このような相関は対象地点、対象時刻に対応する予測モデルにおいて、説明変数として用いられる各地点の交通状態の重み係数α
ijとして表現される。高い精度を持つ予測モデルでは、相関の無い地点について非常に小さい重み係数α
ijが得られる。この場合、これらの地点に対して得られる目標交通状態は、現在の交通状態とほぼ同一の値となり、上記のような高い相関を有する地点の選択が実現できる。明示的に高い相関を有する地点を選択する場合、例えば一定の値以下の重み係数α
ijを持つ地点の目標交通状態については最適化変数から削除し、現在の交通状態の値を固定値として用いて、最適化問題を解いてもよい。
【0110】
また、上述の説明では、進行方向の渋滞予測地点より手前側の地点の交通状態が制御される場合の例を説明した。しかしながら、これに限らず、進行方向の渋滞予測地点より手前側の地点に加えて渋滞予測地点より先側の地点の交通状態が制御される等、交通状態算出部124により目標交通状態が算出された、道路網上の各地点の交通状態が制御されてもよい。
【0111】
以上により、本発明の第1の実施の形態の動作が完了する。
【0112】
次に、上述の制御手段の例を説明する。各地点の交通状態制御装置30が有する制御手段として、例えば、以下が利用できる。
【0113】
(1)料金制御
料金制御では、特定の地点(区間)の利用料金を上げる、または、下げることにより、当該地点(区間)に流入する交通量を制御する。この場合、制御モデルの制御特性として、例えば、各地点(区間)の料金と交通量との関係が記述される。また、曜日等のカレンダ属性や時間帯に応じた複数の制御特性が設定される。状態制御部132は、このような制御特性をもとに、目標交通状態に対応する料金を決定し、制御情報に設定する。
【0114】
(2)走光型運転支援灯による制御
走光型運転支援灯による制御では、路側に配置されたLED(Light Emitting Diode)照明等の照明の点灯パターンを操作し、車両の走行速度を制御する。すなわち、走行車両と並走するように照明を点灯させ、走行車両との相対速度を上げる、または、下げることにより、運転者の速度感覚に影響を与え、走行速度を制御する。例えば、運転者にとって光が遅く見える場合、走行速度が上昇するような錯覚をもたらし、速度抑制を促すことができる。逆に、運転者にとって光が速く見える場合、速度回復を促すこともできる。走光型運転支援灯が配置された区間であれば、細かい時間粒度で、速度を制御できる。この場合、制御特性として、例えば、ある速度で区間に進入する車両に対して、点灯パターンが与える速度上の影響の確率分布や、その期待値、平均値等が設定される。状態制御部132は、このような制御特性をもとに、目標交通状態に対応する点灯パターンを決定し、制御情報に設定する。
【0115】
(3)料金所ゲートの制御
料金所ゲートの制御では、料金所のゲート総数やETC(Electronic Toll Collection system)ゲート数を変更することで、料金所から流入する交通量を制御する。料金所を通過する車両にETC端末を搭載する車両が一定割合で存在する場合、料金所を通過する交通量は、ETCゲート数と比例する。すなわち、単位時間あたりの料金所の通過台数は、ETCゲート数が増加すると上昇し、ETCゲート数が減少すると下降する。また、料金所のゲート総数も、より直接的に、料金所の通過台数に影響を与える。この場合、制御モデルの制御特性として、例えば、料金所のゲート総数やETCゲート数と交通量との関係が記述される。また、制御特性は、料金所の交通量と、そのうちのETC端末を搭載する車両の割合や推定量等との条件毎に設定されていてもよい。また、料金所のゲート総数やETCゲート数の変更には、人による直接労働が必要、あるいは、交通量が途切れるまで変更が難しい等のコスト要因が存在するため、これらのコスト要因が制御モデルのコストに反映されてもよい。状態制御部132は、このような制御特性をもとに、目標交通状態に対応するゲート総数やETCゲート数を決定し、制御情報に設定する。
【0116】
(4)ETCゲートの開閉タイミングの制御
ETCゲートの開閉タイミングの制御では、ゲートバーの操作設定(開閉タイミングや開閉速度)を変更することで、料金所を通過する交通量を制御する。ETCゲートを通過する車両の運転者は、ゲートの開閉状況を確認しながら走行速度を制御する。このため、車両が料金所に進入し、ゲートバーを開くと判断されてからバーを上げ始めるまでの時間(タイミング)やバーの開閉速度によって、ゲート近傍での車両速度が変化する。ゲートバーの操作は機械により行われるため、細かい時間粒度で設定を変更できる。この場合、制御モデルの制御特性として、例えば、ETCゲートへの進入速度とゲートバーの操作設定(開閉タイミングや開閉速度)に対する料金所通過時間や車両間隔(交通量に関連づけられた間隔)が記述される。また、制御特性として、ゲートバーの操作設定に対する、料金所を通過する交通量が記述されていてもよい。状態制御部132は、このような制御特性をもとに、目標交通状態に対応するゲートバーの操作設定を決定し、制御情報に設定する。
【0117】
(5)SA(Service Area)/PA(Parking Area)への誘導制御
SA/PAへの誘導制御では、車両の運転者や同乗者に対して、SAやPAの利用を促すことにより、交通量を制御する。車両にSAやPAを利用させる場合、その車両を道路上から退避させることになるため、道路上に存在する車両数を削減できる。SA/PAへの誘導手段としては、道路に配置された案内板や、車両に搭載された端末への情報提示、運転者や同乗者が所持するモバイル端末への情報提示等が考えられる。提示する情報の内容としては、渋滞予防のためという目的を明示する等、直接的に誘導を促す情報や、SA/PA内の店舗によるキャンペーンやインセンティブに係る、間接的に誘導を促す情報が考えられる。この場合、制御モデルの制御特性として、例えば、提示した情報とその内容に従ってSA/PAを利用した車両の割合との関係が記述される。状態制御部132は、このような制御特性をもとに、目標交通状態に対応する提示情報を決定し、制御情報に設定する。
【0118】
(6)情報板への提示情報による制御
情報板への提示情報による制御では、道路に配置されている情報板に表示する情報により、交通量を制御する。情報板に表示可能な情報は、その量は限定されているものの、文字により表示可能である。このため、情報板に表示する情報により、多様な運転者の誘導が可能である。情報板への表示内容としては、渋滞が予想されているために速度向上や抑制を促す内容や、車線変更を控えるように促す内容等が考えられる。この場合、制御モデルの制御特性として、例えば、表示内容とその内容に従った車両の割合との関係が記述される。状態制御部132は、このような制御特性をもとに、目標交通状態に対応する表示内容を決定し、制御情報に設定する。
【0119】
(7)ペースメーカーによる制御
ペースメーカーによる制御では、道路管理会社等が保有するパトロール車両やメンテナンス車両等をペースメーカー車両として用いることにより、交通状態を制御する。これらの車両は道路管理会社の制御下にある車両であるため、指示通りの速度や、運転挙動を実現できる。例えば、ペースメーカー車両に、制限速度を厳密に守るような運転や、制限速度をやや下回る速度での走行を指示することにより、後続する車両の挙動をある程度制御できる。また、パトロールやメンテナンス場所への移動等、ペースメーカー車両の本来の目的と交通状態の制御を兼ねることで、コストを増やすことなく、交通状態を制御できる。この場合、制御モデルの制御特性として、例えば、ペースメーカー車両の運転パターンとその運転パターンが近傍の他の車両に与える影響との関係が記述される。状態制御部132は、このような制御特性をもとに、目標交通状態に対応する運転パターンを決定し、制御情報に設定する。
【0120】
(8)自律走行車による制御
自律走行車による制御では、自律走行車に対して、車両速度や車両間隔等の走行パターンの切り替えを促すことにより、交通状態を制御する。ここで、自律走行車は、例えば、人の操作なく完全に自動運転が可能な車両でもよい。また、自律走行車は、例えば、前方車両追尾走行機能(クルーズコントロール)等を搭載した、部分的に自動運転が可能な車両でもよい。クルーズコントロールを搭載した車両の場合、前方追尾の設定、すなわち追尾距離や反応速度等を変更することにより、走行パターンを制御できる。また、前方に車両がいない場合であっても、ある程度の走行パターンが可能な車両も存在する。このような走行パターンの制御は、自動運転技術の搭載車の普及により、多くの車両で利用可能となっており、大きな効果が見込める。さらに、クルーズコントロール機能を持つ車両による車両群、すなわち、隊列走行が構成できる場合、車両群の後続車両に与える影響が大きいため、走行パターンにより制御可能な交通量を増やすことができる。この場合、制御モデルの制御特性として、例えば、走行パターンと、その走行パターンが近傍の交通量に与える影響と、の関係が記述される。制御特性は、近傍の交通量に関連づけられて設定されていてもよい。状態制御部132は、このような制御特性をもとに、目標交通状態に対応する走行パターンや当該走行パターンを適用する車両を決定し、制御情報に設定する。
【0121】
なお、交通状態を制御できれば、上述の制御手段の他に、交通信号の制御等、他の制御手段を用いてもよい。
【0122】
また、上述の説明では、各地点の制御手段の種類が1つであり、交通状態算出部124が、各地点の制御手段のコストを考慮した目的関数を用いて、目標交通状態を算出する場合について説明した。しかしながら、これに限らず、各地点に複数の制御手段が存在する場合、状態制御部132が、各地点の制御手段の内の1以上の組み合わせを選択してもよい。この場合、状態制御部132は、例えば、小さい制御量しか得られないが、短時間で効果が生じる制御手段を優先して選択する。そして、状態制御部132は、その手段で得られる交通状態と目標交通状態との差分について、効果が生じるまで時間を要するが、大きい制御量が得られる、料金制御等の制御手段を選択してもよい。また、状態制御部132は、各制御手段の制御モデルや制約にもとづき、目標交通状態が達成できる確率が高く、交通状態の変更に係るコストが低くなるように、制御手段を選択してもよい。
【0123】
次に、本発明の第1の実施の形態の特徴的な構成を説明する。
図18は、本発明の実施の形態の特徴的な構成を示すブロック図である。
図18を参照すると、渋滞予防システム10は、交通状態算出部124(算出部)、及び、表示制御部16を含む。交通状態算出部124は、対象地点における対象時刻の渋滞を防ぐために対象地点と異なる地点において達成すべき交通状態である目標交通状態を算出する。表示制御部16は、各地点における目標交通状態が表示手段に表示されるように、当該表示手段を制御する。
【0124】
また、
図19は、本発明の実施の形態の他の特徴的な構成を示すブロック図である。
図19を参照すると、渋滞予防システム10は、交通状態算出部124(算出部)、及び、ログ生成部18を含む。交通状態算出部124は、対象地点における対象時刻の渋滞を防ぐために対象地点と異なる地点において達成すべき交通状態である目標交通状態を算出する。ログ生成部18は、各地点における目標交通状態と当該地点の交通状態の測定値とを示すログを生成し、出力する。
【0125】
次に、本発明の第1の実施の形態の効果を説明する。本発明の第1の実施の形態によれば、対象地点における対象時刻の渋滞をより確実に防ぐことができる。その理由は、交通状態算出部124が、対象地点における対象時刻の渋滞を防ぐために対象地点と異なる地点において達成すべき交通状態である目標交通状態を算出するためである。算出された目標交通状態を用いて、各地点の交通状態を制御することにより、広範囲において制御が行われ、局所的な制御を行う場合に比べて、各地点の交通状態の制御量が少量であっても、より確実に渋滞を防ぐことができる。
【0126】
また、本発明の第1の実施の形態によれば、オペレータ等が、より確実に渋滞を防ぐように、システムを調整できる。その理由は、表示制御部16が、各地点の目標交通状態が表示手段に表示されるように制御する、あるいは、ログ生成部18が、各地点の目標交通状態と交通状態の測定値とを示すログを生成し、出力するためである。これにより、オペレータは、より適切な目標交通状態が設定されるように、目標交通状態の値や、目標交通状態を算出するための目的関数や制約式の形式やパラメータ、予測モデルを変更できる。
【0127】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0128】
本発明の第2の実施の形態においては、各地点の現在時刻の交通状態、及び、将来時刻の交通状態の予測値から予測地点における予測時刻の交通状態を予測する予測モデルを用いる点において、本発明の第1の実施の形態と異なる。
【0129】
本発明の第2の実施の形態では、数5式のような予測モデルを用いる。
【0131】
ここで、t
0は起点の時刻、t
0+t
k(k=1、2、…、M
k;M
kは、1以上の整数)は、起点時刻t
0と現在時刻tとの間の過去の時刻、t
0+t
l(l=1、2、…、M
l;M
lは、1以上の整数)は、現在時刻tと予測時刻t
0+Tとの間の将来の時刻を表す。また、α
ij、β
k,ij、γ
l,ijは、それぞれ、ρ
i(t)、ρ
i(t
0+t
k)、ρ’
i(t
0+t
l)に乗じるパラメータである。
【0132】
数5式の右辺第1項、第2項、及び、第3項では、それぞれ、過去時刻の交通状態、現在時刻における交通状態、及び、将来時刻の交通状態の予測値が説明変数として用いられている。予測値ρ’
i(t
0+t
l)は、時刻t
0の交通状態をもとに、t
l時間後の交通状態を予測する予測モデルにより算出される。予測値ρ’
i(t
0+t
l)は、受信部11により、渋滞予測装置20等の他の装置から収集され、交通状態DB14に保存されていてもよい。
【0133】
交通状態算出部124は、上述のステップS13において、数6式の目的関数、数7式、数8式の制約式で表される最適化問題の解を求めることにより、各地点の目標交通状態を算出する。
【0137】
数6式の目的関数は、現在時刻tの交通状態制御量と将来時刻t
0+t
lの交通状態の見込み制御量にコスト係数を乗じた値の総和が最小になるように、現在時刻t、将来時刻t
0+t
lの目標交通状態ρ
*i(t)、ρ
*i(t
0+t
l)を決定することを示す。
【0138】
このように、将来時刻を含む、複数の時刻おける交通状態を説明変数として用いた予測モデルにもとづいて、渋滞を防ぐための目標交通状態を算出することにより、現在時刻の交通状態の制御量だけでなく、将来の見込み制御量を考慮して、交通状態を制御できる。そのため、現在時刻における交通状態の制御のみを考慮した場合と比較して、より少ない制御量で、渋滞を防ぐことができる。
【0139】
なお、数6式の目標関数では、コストとして、地点毎のコスト係数が用いられているが、第1の実施の形態と同様に、時間帯等の条件に応じて、異なるコスト係数やコスト関数が定義されてもよい。さらに、将来時刻における見込み制御量は、現在時刻と将来時刻の時間差が大きいほど、予測誤差に起因したより大きな誤差を含むと考えられる。したがって、数6式の目標関数では、現在時刻と将来時刻の時間差が大きいほどコストを大きくする等、将来時刻に応じたコストが用いられてもよい。
【0140】
本発明の第2の実施の形態によれば、本発明の第1の実施の形態と比べて、より少ない制御量で、渋滞を防ぐことができる。その理由は、交通状態算出部124が、各地点の現在時刻の交通状態、及び、現在時刻より後、かつ、対象時刻より前の交通状態の予測値から対象地点における対象時刻の交通状態を予測する予測モデルを用いて、目標交通状態を算出するためである。
【0141】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。